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such substance”)場合には20年を下限とする収容刑を命令刑として定めて

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(1)

海外法律事情

アメリカ刑事法の調査研究(140)

米 国 刑 事 法 研 究 会

(代表 椎 橋 隆 幸)

Burrage v. United States, 134 S. Ct. 881; 187 L. Ed. 2d 715 (2014)

堤    和   通**

 薬物乱用防止法が頒布・販売にかかる薬物の使用により人が死亡した場 合の加重処罰を定める規定の適用には薬物使用が死亡結果の条件であると いう証明を要し,条件関係がない場合に結果への寄与だけで加重処罰を適 用することは許されない,とされた事例。

《争点》

 規制薬物法は特定の薬物を不法に頒布販売する行為について,その薬物 使用により人が死亡しまたは重傷害を負った(“results from the use of

such substance”)場合には20年を下限とする収容刑を命令刑として定めて

いる。本件の問いは,被告人の行為が人の死傷結果に寄与していれば,結 果との条件関係を欠く場合にも規制薬物法の加重処罰規定が適用されるか 否かである。

 所員・中央大学法科大学院教授

**

 所員・中央大学総合政策学部教授

(2)

《事実の概要》

 Joshua Bankaは薬物使用を続けた二日目の朝に遺体で発見された。

Banka

の薬物使用は,一日目の朝にマリフャナを吸引し,麻酔性アルカロ

イドを注射したのに始まり,本件申請人

Burrage

から ₁ グラムを購入し たヘロインは,深夜に及ぶまでこれを数度にわたって注射している。

Banka

の遺体が発見された後の捜索で,注射器,ヘロイン,精神安定剤,

抗痙攣薬,麻酔性アルカロイドの錠剤他の薬物が

Banka

の住居並びに自 動車から見つかっている。

 起訴事実のうち本日の争点は,Burrageがヘロインを頒布・販売し,そ のヘロインの使用により人が死亡した(“death

resulted from the use of th [at] substance”)という,加重処罰の要件事実である。

 公判で証言をしたふたりの鑑定人のうち一人は,第一に,死亡時に

Banka

の体内には,ヘロインの代謝産物,アルカロイド,精神安定剤,抗

痙攣薬等の薬物があったこと,第二に,ヘロインの摂取がなかったとすれ

Banka

は生存していたであろうとはいえないこと,第三に,ヘロイン

の摂取は

Banka

の死亡に寄与していること,を証言し,別の鑑定人も,

同様に,ヘロインの摂取について,死亡との条件関係を否定したうえで,

死亡の寄与要因であることを証言している。

 District Courtは,ヘロイン摂取と死亡との条件関係の証明がないとす る,無罪判決を求める被告人側の申立てを却下している。District Court は,被告人側が求めた,ヘロイン摂取と死亡の因果関係の近因性を要件と する陪審説示を拒絶したうえで,因果関係に関して政府側が証明責任を負 うのは,ヘロインの摂取が死亡に寄与する要因であったことである,とす る説示を行った。Burgess は有罪判決の言渡しを受け,第 ₈ 巡回区

Court

of Appeals

は,本件陪審説示が第 ₈ 巡回区の裁判例に合致するとしたうえ

で,有罪判決を確認した。被告人が行った薬物犯罪にかかる薬物の使用が 死亡に寄与している場合に,死亡結果の予見可能性に関する特段の説示な しに1),加重処罰規定に基づく有罪判決を下すことが許されるのか否かを

1) 本件では,条件関係を要しないとして有罪判決を確認した第 ₈ 巡回区 Court

(3)

争点として,合衆国最高裁判所はサーシオレイライを認容した。

《判旨・法廷意見》

₁  Scalia裁判官執筆の法廷意見2)

破棄差戻し

 ⑴ 規制薬物法は,当初,薬物犯罪の量刑を薬物の種類と量に結びつけ るものであったが,1986年薬物乱用防止法(Anti─Drug Abuse Act)によ り,人が死亡した場合の加重処罰規定が定められ,本件のような,少量の 薬物の頒布・販売行為には20年を上限とする収容刑が定められるととも に,「薬物使用により人が死亡しまたは重傷害を負った(death or serious

bodily injury results from the use of

…)場合」には,下限を20年とする収 容刑が命令刑として定められた。加重処罰の要件事実が存在することは,

合理的な疑いを容れない程度に証明されなければならない。

 ⑵ 規制薬物法は「より(結果が)生じた(results from)」という文言 を定義していないので,我われは,通常の用語法にしたがって,被告人の 行動に事実上の因果関係があること(actual causality),言い換えれば,

被告人の行動がなければ結果(the harm, Nassar, 186 L.Ed. 2d 503 at 514)

が生じていなかったであろうという証明を要件とする(以下,本稿で「条 件関係」)ものと解する。

 被告人の行為が他の要因と結びついて結果が生じている場合でも,他の 要因だけではその結果が生じていなかったであろうと考えられるのであれ ば,このような条件関係は認められる。

 Nassarで当法廷は,不法な雇用差別に対する被用者の不服申立て

(complaints)を理由とする(because of)雇用上の措置を禁止する,報復

of Appeals の判断を因果関係論の誤りを理由に破棄している。そのため,サー

シオレイライ認容時に挙げられたもう一つの争点である予見可能性については 判断をしていない。

2) Alito 裁判官は法廷意見Ⅲ─B(本稿≪判旨・法廷意見≫「1」「⑷」)を除く

部分に参加。

(4)

的雇用措置の禁止規定について,報復意図が雇用上の措置と条件関係にあ ることを要件とするものであると解している。同様に,Grossは,年齢を 理由とする雇用差別について条件関係を要件とするものとしている。この ような理解は,「理由とする」という文言に限定されたものではなく,州 裁判所は,刑事法の領域で同様の解釈をしてきており,例えば,「死亡の 結果が生じた(…

results in the death of another person)」場合を定める罰

則規定,人種などを「理由とする(because of the personʼs race …)」攻撃 を禁止する定め,警察官の違法行為の「結果得られた(obtained as a

result of)」証拠の排除を要件とする規定,いずれについても条件関係を

定めるものと解している。

 合衆国政府は,薬物の過剰摂取の問題に特有の特徴を指摘する。

National Center for Injury and Control

によれば,2010年には薬物の過剰摂 取による死亡のうち少なくとも46%が二つ以上の薬物の使用に関連してい る。政府は,加重処罰規定の適用に,違法に頒布・販売した薬物使用に条 件関係を要件とするのではなく,その薬物使用が寄与した集積的効果

(aggregate force)に条件関係があれば足りるとすべきであるという。

 確かに,それぞれ単独で原因としての十分な因果関係があり,結果の原 因である複数の要因が認められる場合には,条件関係を要しない例外が認 められてきている。しかし,本件ヘロインの使用について単独で十分な因 果関係があるという証明はなく,この例外の是非は本件で問われていない。

 政府側は,結果に相当の影響を与えたか否かで因果関係の有無を決める 相当性基準,並びに,結果の発生に寄与したか否かで因果関係を決める寄 与基準の採用を求める。しかし,不法行為の領域でも,条件関係がない場 合に相当性の充足で因果関係を認めた裁判例はない。また,加重処罰規定 が定められる ₂ 年前の時点で,寄与基準を採用した裁判例はない。加重処 罰規定は,違法に頒布・販売した薬物使用により死亡したこと(“result

from” use of the unlawfully distributed drug)を要件としているのであっ

て,その薬物使用が寄与した諸要因が結びついた結果が要件となっている わけではない。

(5)

 ⑶ 政府側は,通常の用語法に従った,加重処罰規定の解釈が健全な政 策に合致しないというが,条件関係を要件とすることが政府に不可能を強 いているということはできない。かえって,相当性基準や寄与基準の内容 について裁判例が示す理解は一致しておらず,政府側も明確な内容を具体 的に示していないのであるから,政府の立場を採用する方が健全な政策に 合致しないであろう。これほど不確定なものを刑事法に持ち込むことはで きない。

 合衆国最高裁判所の役割は,定められた法律を適用することであって,

このような政策論を展開することにあるのではない。

₂  Ginsburg裁判官の結論賛成の補足意見(Sotomayor裁判官参加)

 Nassarの反対意見で説明したように,雇用差別の理由に関する解釈に ついて本件法廷意見が引用する見解には与しないが,本件は寛大解釈を採 用すべき事例であると考えるので法廷意見の結論に賛成する。

《解説》

1 米国は1986年薬物乱用防止法(Anti─Drug Abuse Act of 1986)によ り,薬物乱用に対する包括的な法規制を導入した。同法のうち,乱用の危 険性が高い薬物(別表Ⅰ:ヘロインなど,「乱用の危険性が高く」,「医療 での使用が認められ」ず,「医師の監督下でも」「安全な使用方法がない」

薬物(§812b⑴);別表Ⅱ:メタアンフェタミンなど,「乱用の危険性が 高く」,「心理的または身体的な重度の依存に陥らせる傾向がある」薬物)

の頒布・販売行為について,その薬物使用により人が死亡または重傷害を 負う結果を生じた場合に刑を加重する規定が,薬物使用と死亡または重傷 害の結果の間に要求する因果関係が本件で問われている。本件の犯罪事実 はヘロインの頒布・販売行為であり,その相手は死亡している。なお,こ こでの加重処罰は刑の下限を命令刑とするもので,そのため,「命令刑に 反対する家族の会」がアミーカス・キューリエ・ブリーフを提出してい 3)

3) Brief of Families against Mandatory Minimums As Amicus Curiae in Support

(6)

2 一定の結果を犯罪成立要件とする犯罪類型について,被告人の行為と 結果との間に条件関係を要する,というのは米国で確立した法理といえる であろう4)。すなわち,被告人の行為がなければ結果が生じなかったであ ろうということを政府側は証明しなければならない。

 また,条件関係を要するというのが原則であるのに対し,それぞれが単 独で結果を惹起させるのに十分な,結果の「原因」といえる複数の要因が 認められる場合がその例外になるというのも定着した考えであるといえる であろう5)。その場合には複数の原因の一つである,被告人の行為がなか ったとしても他の原因で結果が生じたであろうという関係にあるので,被 告人の行為には条件関係がないことになるが,例外的に因果関係の要件は 充足していると評価される。

 因果関係については,このように,条件関係を原則として要すること と,複数の原因が認められる場合には例外的に条件関係なしに因果関係が 充足するとされることが広く定着しているのに加えて,米国では,原則と して要求される条件関係に加えて何らかの要件が求められる場合について 多く議論されてきている。条件関係が事実上のものとされるのに対して,

条件関係を上回る要件は規範的なものとされている。本件法廷意見は,

Lafave

並びに

Model Penal Code

を引用して,前者を事実上の因果(actual

cause),後者を法的な因果(legal cause,または近因(proximate cause))

と読んでいる6)。その議論でよく引用される,Hart & Honoréの因果関係

of Petitioners (http://www.americanbar.org/content/dam/aba/publications/

supreme_court_preview/briefs─v2/12─7515_pet_amcu_famm.authcheckdam.pdf, last visit on April 28, 2014).

4) See e. g., George P. Fletcher, Rethinking Criminal Law (2000, Oxford University Press), pp. 360─2.

5) 本件法廷意見の表現では,この場合の条件関係の例外は,「依然稀ながら,

最も一般的な(the most common, still rare)」例外である。

6) 「事実的因果」,「法的因果」という表現は広くみられる。See e. g., Joshua

Dressler&Stephen P. Garvey, Cases and Materials on Criminal Law (6

th

ed.,

2007), pp. 213─232; John Kaplan, Robert Weisberg& Guyora Binder, Aspen

(7)

論では,被害者や第三者が自由で熟慮による選択をしている場合には被告 人の行為が及ぶ因果関係が中断することが説かれており,その立場に立つ と,条件関係にある被告人の行為について,他者の選択の介在により因果 関係が中断するとみる場合と,他者の選択が介在してもなお因果関係が中 断しないとみる場合を区別するために,後者の場合に条件関係に加えて求 められる要件が何であるのかが問われることになる。この問いは,被告人 の行為後の他者の選択が介在する場合に生じるが,このほかにも,例え ば,被告人の行為と前後するものを含めて,他者の選択が集積して有害結 果が生じている場合についても,条件関係だけで常に因果関係が認められ るのかが問われてきた。

3 本件は,「2」で最後に挙げた,被告人の行為に加えて,他者の選択が 相俟って集積した結果,薬物使用で致死の結果が生じている。

 この問いについて一石を投じたのが第 ₈ 巡回区であった。第 ₈ 巡回区で は,本件の

Court of Appeals

の判示のように,集積的な有害結果について は被告人の行為が結果発生に寄与している場合には因果関係が認められる としている7)

 これに加えて,合衆国の基本権法上の雇用差別に関する裁判例で,条件 関係とは異なる因果関係論が問われた。それが

Nassar

である。「判旨・法 廷意見」で紹介したように,Nassarでは,基本権法が禁止する報復措置 について原告が証明すべき因果関係が争われた。原告側は,同じ基本権法

Casebook Series: Criminal Law, Cases and Materials (7

th

ed., 2012) p. 283.

7) 第 ₈ 巡回区と異なる立場を採るものとして,see e. g., United States v. Hartfield, 591F. 3d 945 (7

th

Cir. 2009). 薬物の過剰摂取事案に対処する,条件関係の修正を 説くものとして,see, Benjamin Ernst, A Simple Conception in a Complicated World:

Actual Causation, Mixed─Drug Deaths and the Eighth Circuitʼs Opinion in United States v. Burrage, 55 Boston College Law Review 1 (2014). 被告人の行為が一部 を成す集積的効果で有害結果が生じている場合について,帰属論(imputation)

を含めた因果関係論の問いを投げかけるものとして,see, Andrew von Hirsch,

Extending the Harm Principle: ʻRemoteʼ Harms and Fair Imputation, Simester

and Smith, eds., Harm and Culpability (1995, Oxford University Press).

(8)

上の雇用差別禁止が差別的な動機の存在について原告に証明責任を負わせ るもので,原告がその責任を果たせば,雇用上の不利益について正当な理 由があることを被告が証明する責任が発生するとする,裁判例を引用し て,同様の理解を報復措置に求めたが,合衆国最高裁判所がその理解を退 け,条件関係の証明を原告に求めたのであった。

 本件で,合衆国最高裁判所がサーシオレイライを認容したときにはこの ような法状況があった。そのため,条件関係を要件とする因果関係の原則 を修正するか否かの点で本件は注目できるものであったが,法廷意見が示 したのは,因果関係には条件関係を要するという,従来からの確立した法 理を確認するに止まるものであった。その何よりの要因は,本件で被告人 が頒布・販売した薬物の使用が致死の結果と条件関係にあるという証明が ないことにある。刑事法の領域で,条件関係を要件とする原則の例外とし て定着しているのは,被告人の行為を含めて複数の原因が認められる場合 であるが,本件はこれに当たらない。そのため,本件は少なくとも条件関 係が求められる原則的な事例である。ところが,本件では,その条件関係 の証明がないとされているのだから,その証明がないために端的に無罪と されるべき事例であって,事実的な因果関係を上回る規範的な因果関係

(近因)が要件になるのか,その場合に条件関係に加えて必要な要件は何 か,また,集積的に有害結果が生じている場合に被告人の行為に求められ る因果関係は何か,といった問いは生じない。

 理論的な可能性としては,条件関係を要件とする原則の例外を複数原因 の場合以外に見出す余地はあるであろうが,条件関係のないところで結果 への寄与,あるいは相当の影響を基準に因果関係を認めたものは,民事法 を含めて薬物乱用防止法の制定時にないことを法廷意見は指摘する。そう した法状況が本法の解釈が導き出されるとしたら,この理論的な可能性は 立法者の採用するところではないのであるから,寄与,あるいは相当性の 基準を論じる余地はなくなる。

 このようにみると,本件は,条件関係を要件とする原則を堅持すること を示した点に意義がある一方で,複数原因がある場合以外にその例外が認

(9)

められる場合がみられない法状況の中で,その条件関係の証明自体がない 事例,すなわち,他者の選択の介在や集積的効果による結果が発生した場 合に,条件関係に加えて何が要件になるのかをそもそも論じる余地のない 事例を選んでいる点で,当然とされてきたことをそのまま認めるに止まる ものといえるだろう。

 ただ,そうであるために,かえって,条件関係がある場合に他者の選択 の介在や集積的効果による結果の扱いは今後に残されている。本件では,

Ginsburg

並びに

Sotomayor

各裁判官が結論のみに賛成し,もう一人,

Alito

裁判官が,法廷意見のうち,寄与,あるいは相当性基準に関する,

法政策上の含意を含んだ懐疑論の部分(Ⅲ─

B)に加わっていないのは,

その点で着目してよいであろう。本件法廷意見の中では,薬物乱用防止法 の立法に関連して,被告人の行為が「相互に関連がある」出来事の一部を なしている場合に,それぞれの出来事を結びつけて,全体で一つの行動と みたときにその行動が結果の条件になっているか否かを問うものとして寄 与基準を説明している一方で,政府側主張の問題点として,寄与の有無を 決める基準が明確にされていないことと,薬物使用による死亡の場合に死 亡の蓋然性が数値で評価されることが多く,そのためにかえって適用の線 引きが困難であることを挙げていることを付言しておこう。

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