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仲介的金扁卑機関と金融統制仲介的金融機関と金融統制
−J了r
金 森恒 利
1.問題 の提起
・−、
われわれ軋,前稿「貸付資金の創造またほ仲介と金融機関の役割」紅おい て,簡単な経済循環と金融構造のモデルを用いて,貸付資金の創造の機構を明 らかにするとともに,従来もっぱら信用または貸付資金の仲介機関と.のみみな
されでいた商業銀行以外の金融機関(finananci云1intermediaries)も,特に.貯
蓄銀行も,ある意味において商業銀行と同様に,貸付資金を創造しうる可能性(二、
のあることを説明した。さて,その場合にも少し言及したように,このような 貯蓄銀行の貸付資金創造の機能は,商業銀行の貨幣創造機能を統制するこ小とに よって,もっぱら金融調節を行ってきたところの伝統的な金融政策,特にこの 場合は金融引締政策,の効果を減殺するものと解された。
たとえば,いま経済活動の水準が上昇し,企業の資金需要が旺盛となって,
景気が過熱化の傾向に・ある場合に,中央銀行ほこの景気の行過ぎを未然に防ぐ ために,金融引締政策に踏み切り,伝統的な量的統制手段の一つである公開市 場売操作を実施したものとしよう。との操作ほ一般に商業銀行の支払準備を削 減し,商業銀行の貸出と貨幣供給の能力を抑制するこ.と紅なる。その潜果,こ れ孝で景気過熱化の原因となっていた企業の旺盛な資金需要も削減せられ,景 気の過度の行過ぎも阻止せられろことになるであろう。このように,伝統的な 金融政策観ほ,金融政策の対象を貨幣供給屋なりとし,もっぱら商業銀行の流 動性ポジションと貨幣創造機能を規制することによって,その金融政策の効果 を十分に発揮しうるものと解したわけである。
しかし,このような公開市場操作ほ,一方において長短証券の利廻りを上昇
(1)香川大学経済論叢,36巻5号,1963年,pp4∬・34
(2)拙和,前掲誌,p.28
770.
第36巻 第6号
−2−
せしめ,また金利水準を一般的に上界せしめることになる。このこ.とほ,また 貯蓄金融機関の利子率や配当をも上昇せしめる傾向をもち,南米鋭行とその他 の金融機関の預金金利の格差射拡大するこよこになるであろう。したがって,個 人や企業のうちに.ほ,その要求払預金に、対する需要を減らして−,こ.れらの貯蓄 性預金に資金を移動せしめるものも現われでくる。その場合,商業銀行組織全 体の支払準備ほ必ずしも減少をみるわけでなく,したがって商業銀行としてほ 貸出またほ証券保有を減少せしめる必要も起らない・であろう。しかし,貯蓄銀
行としては,このことによって一新しく追加的貸出を行いうる資金を狸得したわ
けである。ここに,いわゆる貯蓄銀行による貸付資金の創造が行われること は,嗣稿紅.て述べた通りである。その結果,貨幣数鼻紅増減ほみられないが,
その〜一部が支出の増大につれて:活発に使用されて,貨幣の流通速度の上昇がも
(3)
たらされる。したがって:,金融引締期に,商業銀行において保有されていた不 活動貨幣が貯蓄銀行への移転によって活動化されることは,伝統的な金融政策 の効果を減殺するものといわねばならない。なるはど,金融引締によって,商 業銀行からの貨幣創造による貸付資金の供給は抑制されるかもしれないが,−
l
方その他の仲介的金融機関からの貸付資金の創造が行われるために,全体とし て一企業への貸付資金の供給ほ.減退をみることなく,経済活動の高水準がそのま ま維持されることになるからである。
そこで,以上の分析からの当然の帰結として,このような貯蓄鋭行,また朋 商業銀行以外の金融機関の貸付資金創造の機能を蚤祝する人々は,特に今日の 商英銀行以外の金融機関の頸著な発展紅注目して,従来のように貨幣数藍の統 制のみを重視して,もっぱら南濃銀行を対象としてきた伝統的な金融政策で は.,もはや金融調節の効果を十分紅発揮することは期待されないとし,金融政
(3)総賃幣患財ほ,活動貨幣忍城と不活動貸幣愚城とからなるものとし,それぞれの 流通速度なy,Vl,V2(これは仮定によってゼロ)とすると,総貨幣愚の流通速度yは
次の式で表わされるo
y=ニyl一−
したがっ・て,ylが叫定
とすると,不活動貨幣から活動貨幣へ切移動は,意・の増加,すなわちγを上昇せし
める。
771
仲介的金融機関と金融統制 て−β−−策の対象を拡大して,その他の仲介的金融機関にまで商業鏡石と同様の統制を
(4)
及ぼすべきであると主張する。たとえば,.支払準備率制度の適用とかグ利子率 規制の種闊の拡大などがあげられる。
しかし,この新しい主張に㌧対して,これまでのような貨幣数届の統制で十分 であるという伝統的な見解の支持者もまたないわけでほ.なく,これをめぐって 種々論争が展開されてきている。小稿は,これらの論争・の過程を詳細紅分析し て,とれに対して何らかの解答を与えようとするものでほない。ただ,こうし
(5)
た論争を背景にしながら,アメーリカにおけるCMC報告を中心に,金融統制の 対象を貯蓄銀行にまで拡大すべきか否かの問題に対して,いささか反省を加え てみよ■うとするに過ぎない。したがって,これからの議論は,アメリカの金融 制度や金融構造およぴその歴史的発展の現状を前提とするものであって,これ
らの議論がそのま−ま直ちにわ声;国の問題として適用されえないことほいうまで
もない。2・CMC報告の卑解
アメリカにおける金融制度の調査報告書としてのCMC報告ほ,「商英銀行
(6)
い主張に対して否定的態度をとっている。その理由として■,まず次の「経験的 事実」を指摘する。すなわち,一−■L般に金融引締期において,個人および企菜の 資金が商業銀行の要求払預金から,相互貯蓄銀行,商業銀行および貯蓄貸付組 合などの貯蓄性預金に組織的に移動するという主張があるが,こうした主張ほ 全く過去の「経験的事実」の裏付けを欠いでいるという。第一山に,企業の要求 払預金からの資金移動ほ,要求払預金と貯蓄率よび定期預金との間に起るより
鳩=..GLGurley and E.,S.Shaw, FinancialAspects of Economic Development,
Ame。Econ.Rev.,Septu,1955,Pp.534−538
(5)CoznmissiononMoney and Credit,Moneyand Credii,TheirInfluenceonJobs,
魚よ以ね,〃朋d(封・〃紺玖。Tun.,1961‖ 日本銀行調査局訳,『通貨と信用一一をの雇傭,物価お
よび成長に及ぼす影野』,昭和37年。
(6)日本銀行調査局,『通貨と信用射 p117。なお,以下の説明については,「簡三者 金
融政策」を参照。
772 第36巻 第6号
ー・4−
ほ.,主として政府短期証券との間に腐る。したがっ■てニ,銀行以外の民間金融槻 開に.対し規制を加えたとしても,それほ流通速度に・影響を与えるかかる重要な 要因に対しては,なんの効果を及ばしえない。次に,個人についても最近の資 料によると,貯蓄機関に周けて:大きな資金の動きが生ずるのほ,景気後退期に 限られており,しかもその資金は.,証券投資に向け一られていた資金が,公社債 利廻りの低下,株式市況の先行き見通し難などのため,その運用先を転換せし められたものが多い。そして,景気上昇期に.貯蓄預金の利廻りが上昇しても,
それに.よって個人の資金が大屋に要求払預金から引出されて貯蓄預金に・転換さ れ,そのため貯蓄預金の増加率に著しい影響を与えるようなことほない。それ ゆえに,以上の事実が正しいとするならば,展気変動に伴う貯蓄機関に対する 資金流入の作用ほ,呆気上昇期よりは下降期に・流通速度を上昇せしめる公算が 大きく,したがって金融政策の効果を減殺するよりは,むしろそれを支援する 方向に作用する可能性が大きい。しかも,景気上昇期紅生ずる流通速度の上昇 の主因は,商巣銀行から貯蓄銀行への資金の移動よりも,むしろ主として一企業 の現金残高が収益資産に振り向けられるこ.とと,個人の現金残高が財∴および サ−ビスの購入紅当てられて減少するこ.とによる,と述べている。以上のよう に,CMC報告ほ,金融引締政策の効果が資金移動によって減殺されるという 見解に対して,それほ全く「事実の裏付け」を欠ぐものとして,否定的態度を
とっている。
しかし,ここ紅想起されねばならないことは,貯蓄銀行の貸倒資金ゐ創造の 機構,すなわち流通速度の上昇をもたらす機構としては,もう一つのタイプが 存在したことである。それほわれわれが,「非貨幣的資産型放出金融」と呼ん
(7) 逼ものである。すなわち,貯蓄銀行ほ,資金需要の強いとき,預金や債券発行
の増加に・革って資金を得るばかりでなく,保有する財廟省証券や他の証券を売 却するこ.とによっても資金を獲得し,それを高い収益の得られる貸出に向ける であろう。もし,これらの証券を購入した人が,不活動貨幣でもって購入した
けノ 拙柄,前掲詫,pノノ26.
仲介的金融機関と金融統制
773 1− 5 −・−
のであれぼ,貯蓄銀行ほこの資金を貸出すことに.よって不活動貨幣を活動化せ しめることになる。ここ紅貯蓄銀行による貸付資金の創造が可能となるわけ で,流通速度の上昇がみられるであろう。しかし,このような貯蓄銀行の行動 も現実には行われない,とCMC報告は述べている。とういうのは,これらの 貯蓄銀行の中には,政府証券及びその他の証券の保有が比較的少ないために,
これを処分すると流動性ポジ1/ヨソを悪化さすため大量の処分を行うことので
きないものがあること,また十分な流動性を保持している機関でさえも比較的
長期の債券を売って−,資本損失を家ることをあまり好まない傾向があること,
とのためである。したがって−,金融引締期に‥おいて,貯蓄銀行が保有証券の調 整(portfolio adjustmentlを行って貸付資金を創造し,金融統制の効果を減殺 するという現象も,また実際の問題としてほ一般的に認められない。むしろ,
金融が引締まるにつれて,こうした貯蓄銀行の貸出意慾と能力も,商業銀行の
それと同様に減退するのが普通である。それゆえ.,この点紅おいても,商業銀 行以外の金融機関を直接に統制する必要ほ認められないといえよう。なお,上 記の分析ほ.,景気循環の過程に・おける流通速度の変動に対する貯蓄銀行の影響 を考察したものであるが,流通速度の趨勢的な変動に対しても,報告は,銀行 以外の金融機関が戦後の流通速度の上昇転若干の影饗を与えたことほ認めてい るが,しかし,資料も十分ではなく,その影響力ほ.どれはど重要であったか,
また将来それがどうなるかについても,意見の−・致をみなかったと述べてい る。また,商集銀行に比して,これらの金融機関が今後も発展をつづけると,
銀行の安全がそこなわれるおそれがあるとの理由から,とれらへの直接統制の 必要を主張する意見に対しても,その根拠が必ずしも十分でないし,またそれ は数巌的調節で対処できるとして,その必要を認めない。
要するに,過去の景気循環期をとってみても,また長期的趨勢についてみて も,南米銀行以外の金融機関に対して直接紅金融的規制を及ばすべしという提 案を,実証的に袈付けるような資料は存在しない。しかも,これらの金融機関 が流通速度の循環的変動に対して与える影響力は,もしあったとしてもあまり にも小さく,こうした措置を正当化するこ.とはできない。また,流通速度の長
第36巻 第6号
774期的変化紅対する影響力についても,通貨盈の長期的調整策を遂行する瞭に,
これを考慮に入れていくことに.よって,容易に解決のつく問題である,との理 由から,結局委員会ほ,前記の勧告をなす紅至ったわけである。
さて,商業銀行以外の金融機関が金融政策の効果を減数するという機構を原 理的に.備えてこいることと,現実にその機構がそのように作用しているかどうか
(8)
とほ,また別個の問題といわねばならない。具体的な現実の政策の提案者とし てほ,このことほ十分紅考慮すべきであり,委員会がとれらの金融機関を直接 に統制する必要なしと勧告したことも,かかる機構が現実に作用していないと すれは,当然の勧告というこ・とができよう。しかし,鱒去においてかかる事実 が認められなかったという単なる理由から,将来もこのような事実が発生しな いであろうと推測して,ガーレイ・ショク紅よってイ℃表される前記の新しい立 場を否定することほ,理論的態度とレてこは消極的であり,必ずしも十分説得的 とは思われない。かかる意味においてか,CMC報告は・−・方において,槙極的 紅伝統的な金融政策によってもさ 十分にその効果の発揮しうるという根拠を主 張している。次に,これについて触れておくことも,CMC報告の金融政策観
(9)
を知る上で有意義と思われる。
しかしとこで,われわれは,また前稿にて説明した貸付資金の創造の機構に
(10)
っいて,さらに別のタイプのあったことを想起しなければならない。いわゆる 不活動貨幣の活動化は,貯蓄銀行の存在によってのみ可能とされるものでほな かった。商巣銀行もまたその「保有証券の調整」によって,貸付資金の創造を 行いうる可能性をもっていた。また,家計や企巣が直接に不活動貨幣を活動化 する迫も残されていた筈である。特紅金融引締期において,商機感行が手持ち の財務省証券の売却によってこ貸出を拡大することは,金融引締の貸出に及ばす 影響を弱めるものといわねばならない。すでに説明したように,商業銀行以外 の金融機関がかかる方法によって流通速度を上昇せしめるようなことは,はと
(8)日本銀行調査局,調査月報, 商英銀行以外の金融機関の発展と金融政策 pl5・
(9)日本銀行調査局,軒通貨と信用弟 ppl・66∬69
仏0)拙稿,前掲誌,p129
仲介的金融機関と金融統制
775 ーー 7 一
んど行われていない。循環的な流通速度の変動紅対しては,商巣銀行のかかる 行動の与え.る影響の方が大きいものと考えられる。金融引締期払おける流通速
度の上昇は,企業の要求払預金と財務省証券との間の資金移動によってこ引起さ
れるとCMC報告も述べているが,それはかかる商業銀行の行動によるもので\‖\
ほなかろうか。それでほ,このような商業銀行の保有証券の謂整によって生ず
る貸付資金の創造を規制するには,果して伝統的な金融政策で十分に.達成され
るのであろうか。この問題に対して,(1j支払準備の基準を銀行資産におこうとするもの,(2)預金の回転にもとづいて所要準備を算定しようとするもの,(3)そ
の他特別の第二線準備を国債で保有さ吏ようというもの,など権々の提案がな(12)
されている。しかし,委員会はそれらの提案のもつ欠点をそれぞれ指摘して,
結局,純要求払預金に対する部分的支払準備制度という現行制度で十分紅その
効果を達成できるとの見解から,追加的な統制手段の必要を認めていない。
それでは,−一・般に金融政策の効果を減殺すると考えられている商英銀行の流
動資産の売却に伴う流通速度の上昇に対して,委員会ほとのように考えている(川 スミスは1955岬−・57年のアメリカの金融引締期に,鶴英銀行は民間への信用供与の64・4
%を政府証券の売却によ
って書かなったが,そ・の他の金融機関のそれほわずかに1フ%
にすぎなかったと記している。したがって,これによると,・その他の金融機関よりもむ しろ商業銀行の方が,金融政策の効果を減殺する上で大きな影響力をもっていたといえ よう。通貨統制をより有効ならしめるには,他の金融痍関に対して統制を追加するより も,商英銀行のかかる保有証券の調整による不安定要因に対して,何らかの規制を加え ねばならないかもしれない。スミスは,こ.の対策として次のことを指摘する。それはま ず,商業銀行紅おいてかかる不安定要因となる,政府短期証券の供給を抑制することで
ある。そのために,景気後退期に,金融緩和政策を不必要なほど極端脛・遂行しないこと が好ましい。とれは極めて興味ある提案と思われる。というのは,不徳動貨幣の蓄積が
実ほ不況期における金融政策に遠因することをホすからである。しかし,スミスほかか る措置で不十分の場合紅は,第二次準備要求dような,銀行のポートフォーリオの構成 を直接に統制するような方法も考えら叫るであろうという0なお,この提案紅対して,
アルハデフは,市場性のない政府証券を銀行に売却するこ・とを・提案し,これをめぐっ てローズンとの間に論争がなされた。(Warren LSmith, FinanCialIntermediaries
andMoェIetaryControIs, 6?uaY i.▲Jour Fco7l・,Nov・,1959,pP 546・h551.DlAh Al・,
hadeff, CIedit Contro!s and FinancialInt9rmediaries, Ame.Econ.RevSept ,
1960.M.E.Rozen,〃Credit ControIs and FinancialIntermediaries:Comment ; D.A.Alhadeff,=Reply, AmeEconRev.,March1962.)
n2)甘木銀行調査局閥瀾と侶用』,pp9トー981
776 第36金 策6号
−・− β−・
のであろうか。委員会は,金融引締に.際して二商業銀行が手持ちの財務省証券を 売却して:貸出を拡張することが,その引締政策の効果を削減するであろうとい うことは十分に認めている。しかし,このことは決して望ましくないことばか りでないと反駁する。というのは,一つ紅ほ銀行の政府証券の売却ほ,金融引 締の効果を銀行部門から他の部門へ波及するのを助長せしめるからである。す
なわち,この証券の売却ほ,その他の貸手および公衆の保有現金現高の一部を 吸収し,その貸出および支出能力を減殺するであろう。またもう一つにほ,銀 行の証券売却ほ.,金融引締政策の影響をこ・のように他の部門に−・郡転換すると いうばかりでなく,銀行の貸出態度に重要な影響をも与えるからでもある。す なわち,銀行による証券の売却それ自体が,かかる売却を困難にするような事 情を発生せしめるであろ・う。たとえば,金融引締期には,一・方では銀行が証券 を・売却するため,また他方で咋信用に対する需要が高まるため,金利は上昇 し,債券価格は一腰に低下する。銀行ほその保有する短期または長期の証券 を,損失なしに.あるいほどくわずかの損失で売却することができる。しかし,
銀行ほ自行のポジう/ヨンの流動性をおもんばかるために,短期の投資物件をす べて処分してしまおうとはしない。銀行ほ,いつ行われるかもしれない預金の 引出に備えて,い?でも売却しうる資産を十分保有しようとするセあろ・う。
た,銀行は通常その損失が税法上課税所得から控除できるとの理由から,若干 の長期債券を損失を出しても処分しようとするかもしれない。しかし,他方で は.多くの銀行は,配当政策の関係から,どの年度においても損失の計上を最小 にとどめようとする。また,他の銀行ほ,損失額を評価損準備金の範細内にと
どめようとする。さらに,高利回りの短期貸付に.転換するために.長期債券を売
って,大きな損失を招くのは得簸でないと1甘ずる銀行もいくらかあるかもしれ ない。結局,大部分の銀行は,保有流動資産および比較的長期の投資物件を使 い尽く/してしまうよりほ.るか以前に・,貸出の膨張を抑制する諸手段をとるであ ろう。このように,商業銀行の証券売却に伴う金利の上昇ほ,はじめの間はあるい は流通速度を上昇せしめるかもしれないが,結局これに伴う証券価格の下落ほ
仲介的金融機関と金融統制
77r7 ー9 −・・
銀行のアヴェイラビリティー,すなわち貸出能力と意欲を減殺し,銀行の信用 供与を抑制することになる。要するに,連邦準備制度の伝統的な金融調節の諸 手段は,このようにして,銀行の信用供与を十分に統制できるとみるのが,委 員会の見解である。したがって流通速度の増大は決して金融政策の効果を消滅 せしめてしまうものでなく,いわばその効果の速度を遅延せしめるだけであっ て,ただ流通速度の増大のない場合よりもより弾力的紅,貨幣屋の増加を抑制
(13)
する必要があるというにすぎないと主張する。
5.私見と残された問題
以上,われわれは,CMC報告を中心に銀行以外の金融機関,殊に貨幣代替 的な間接負債,すなわちnear moムeyを供給する貯蓄銀行が,金融政策の効 果を減殺しうるとの理由から,商業銀行と同様な統制をそれ紅対しても加える 必要があるのでないかという問題宰考察してきた。そして,そこに偏られた結 論ほ,実際上の間題としては,かかる貯蓄機関ほそのような効果を減殺すると いうような働きを営んでいないこと,また銀行の流動性ポ汐ジョンを規制する という伝統的な貨幣統融(monetarycontIOIs)に.よって,流通速度の変動の可
n3)CMC報告は,「銀行が比較的短期の証券を相当患保有し,しかも過剰準備をもってい る場合,その他の貸出機関が十分な流動性を保持している場合,ならびに個人および企
業が遊休通貨や流動資産を相当盛もっている場合などに.は,金融引締政策ほ信用拡張紅
対してしばらくの問,効果を及ぼさない」と述べている。したがって,上記と反対の場 合には,引締の衝撃は一層早く現われるであろうという。(『通貨と信用』,p‖姐・)
なお,スミスは,1955−57年の金綿引締について興味深い事実を報倭している。それ は,まず金融引締政策の効果を減殺するようなportfolioadiustmentほ,商業銀行に
よって大規模に行われたのであって,その他の金融機関でなかったことを指摘するとと
もに,次の事実を述べている。すなわち,1955年に商業銀行が74億ドルの攻府証券を売
却したが,その見事は40佗ドルが金融機関以外の法人,18倍ドルが宏封であった。次の
1956年には,商業銀行は政府証券の売却をつづけたが,その額ほ低下するとともに,今
度は法人も資金稚から45億ドルの政府証券を売却し,これらの証券の買手の大部分は連
邦政肝自体であって,その剰余金から42億ドルを倍還した。その次の1957年の前半も同
様であったと報告している。この事実ほ,金融引締の初期像.おいては,流通速度効果が
現われるが;それが進行するにつれてアルノ、デフのアブ,エイラビリティー効果が現われ
てきたこと,しかもそれを財務省が級和したことを示すのでほなかろうか。今後の研究
にまちたい。(W.LSmith,OP.cit・,p547・)
ーーーJ∂−
第36巻 籍6号
778能性妃.もかかわらず,十分に金融調節の効果を発揮しうること,との理由から かかる金融機関に.値按的統制を加える必要ほ.ないということであった。
次に,以上の問題について若干私見を述べ,なお論じ残した問題などを・指摘
しておきたいと思う。まず注意すべきことは,・一・般的交換手段としての貨幣は
価値貯蔵手段としての機能を兼ねるこ.とができるが,価値貯蔵手段ほ−・般的交 換手段の機能を兼ねるこ.とができないことである。その意味において,われわ
れは,貨幣はあくまでもnear moneyと異なったlユLニ・N・クな存在と考える。貨幣数長の規制を重視するCMCの見解は,その意味紅おいて正当である。し かし,貨幣を,貯蓄・投資の過程において貸付資金を仲介すべき間接負債の山 痙と理解する,ガー・レイ・Vヨウ流の立場からほ,貨幣とnearmoneyとの 間に区別がなされない。貨幣もまた金融資産の−・種に・すぎない。しかし,これ ほあくまでも価値貯蔵手段としての貨幣に.ついでであっ七,活動貨幣について でないことば.注意されねばならない。この意味紅おいて,われわれほ,貨幣を 供給する商東銀行とnearmoneyを供給するその他の金融機関とほ,全く性 格の異なったものとして区別する。しかし,これらが,不活動貨幣を活動化せ
しめるとし、う意味で,貸付資金の創造能力をもつという点においてほ,商業銀 行と同様の性格をもつこともまた認めなければならない。さらに,貨幣の超過 供給は相対的な現象であったこ・とも忘れてはならないであろう0 したがって,
実際上の問題としてほ,これらの金融機関が景気変動に及ぼした積極的な影響 力ほ,商業銀行に此べて小さかったかもしれないが,原理的にはかかる金融機 関が貸付資金の創造能力をもち,インフレ要因や引締効果の減殺要因となるこ
とも,また否定するこ.とはできない。しかも,そのような働きほ.,不活動貨幣 や流動的資産がどれはど存在するか,またその国の金融構造や金利構造がどの
ような状態にあるかによって−,全く異なった影響力を持つことば.明らかであ る。また,不活動貨幣の拓哉は平常の場合は景気の後退期における金融政策の 在方に.よっても大きな影響をうけるものと考えられる。われわれは単に過去に おいてこれらの機関の影響が弱かったという理由で,これを全く鱒祝してよい 筈もなく,いつなんどき,かかる金融機関が流通速度に能動的に働きかけない
仲介的金融機関と金融統制 ー ヱユー・
779
とも限らない。したがってこ.れらの金融機関の流通速度常与える影響力は,今 後も・十分に注意して:観察される必要があるものと思われる。特に,すべての金 融機関がこのようなnearmoneyを創造し七いるわけでなく,その性格によ
って流通速度軋与えうる影響力もまた異なる筈である。もし,今後これらの機 関が金融政策の効果を遅らせるという理由から何らかの統制を必要とする場合 にほ,その方法や対象を決定するためにも,個々の金融機関匿ついて,その性 格や影響力を研究しておく必要があろう。いわば,これらはすでに死火山なの か,それとも休火山に.すぎないのか,休火山としても爆発のおそれがあるのか
どうか。といった問題はやはりわが国においても実証的に検討されて言おく必要 があろう。
次に・,CMC撃告における金融政策の分析ほ,どちらかといえば景気循環対 策の方に重点が置かれているように思われる。しかし,mOnetary COntrOlよ
りもfinanciarcontrolの必要を強調したガ−レイ・Vヨクの見解は,短期的 な景気対策としてよりも,むしろ長期的な成長政策に重点があったものと思わ
れる。一・般に経常的な貯蓄・投資の流れの過程においては,南米銀行以外の金 融機関ほ眉付資金の単なる仲介機関と考えられているよ・うであるが,前稿にも ふれたように,eX anteには貸付資金を創造しうる可能性もあるよう紅思われ
(14)
る。経済の成長発展の原動力となる貨幣の超過供給は相対的な概念であって,
商業銀行の貨幣創造のみでなく,貨幣に対する需要の変化に.よっても影響をう ける。その意味で,かかる貨幣に対して代替的なnear moneyを供給する金 融機関の長期的な発展の動向ほ.,長期金融政策の観点からも十分重視されねば
ならないのでなかろうか。成長貨幣をいくら供給すべきかも,他の金融機関の 成長と全く醸関係ではない筈だからである。CMC報告ほ,長期の金融政策に ついても述べているが,かなり楽観的であって,かならずしも十分に説得的と ほい思われない。われわれほ短期の循環的な金融政策と長期の成長的な金融政策
とを区別すると同時に,両者の関係を統一劇に把据しうるよぅな理論ないし政
掴 拙稿,前掲詰,ppい21−25
・−ヱ2 −・
第36巻 第6号
780策を必要としているのでなかろうか。特に流通速度効果とそれに対する統制の 問題ほ,長短の雨期について混乱しないように議論されねはならない。
次に,流通速度の変化について反省しておきたい。・一腰匿金融引締のもとで の流通速度の上昇はこれまで度々指摘したように取引活動を金融面からささえ る㌧という意味で,金融引締効果を遅らせ,あるいは.その効果を相殺する可能性 をもつものとして厄介視され,非難のまととなってきた。しかし,「こ.の流通 速度の上昇は金融政策軋とって必ずしもマイナ・スの効果ぼかりでない。なぜな らば,通貨流通速度の上昇ほ,引締の衝撃を適切に緩和するバッファ−として の役割を果たす面があるからである。つまり金融を引締める場合,通貨の流通
(柑)
速度が上昇するからこそ,金融政策は果敢な行動にでることができる。」プレ
−・キは効かなくてこはならない。しかし,余り紅効きすぎるブレーキもまた危険
であり,急停車は再たび発車するために・多くの・エネルギ−の浪費を必要とする。その意味で流通速度の変化は必ずしもマイナスとはいえないであろう。そ しで,一腰に金融引締の場合の流通速度ゐ上昇は.,金利の上昇を伴うぁが普通 であり,ある意味に・おいでそれは.金融引締の効果が各部門に蓼透して行くのを 助長するものといえよ・う。金融政策がこのような流通速度の変動を伴うものと すれば,そうした変動を予め十分計算した上で,適時に通貨統制を行うことに
よっで十分金融政策の効果が期待されるというCMCの考え方もまた十分理解 される。しかしなるはど,こ.のよう紅流通速度の上昇ほマイナスの面ばかりで ないにしても,もしも流通速度の上昇が伝統的な貨幣統制手段に.よって阻止さ れえ.ないような過剰流動性の状態が文革するならば,やはりこれに対して何ら かの対策が試ぜられる必要があるように思われる。金融政策の拠点として,貨 幣数愚よりも「一般的流動性」を重視するラドクリフ報告の考え方には,国儀 残高が非常に多く,かつ広範園に分布しているというような英国特有の過剰流
(18,)
動性の金融構造がその背景にあるものといわれている。そして伝統的な数鼻的 貨幣統制を重視するCMC報告の考え方には,やはりアメリカ特有の金融構造
(15)日本銀行調査局,前掲誌,p7り(昭和38年11月号)
(用 日本銀行調査局,前掲詫,p6
781
仲介的金融機関と金融統制 ーーJ3−が前提となっているこ.とほいうまでもな斗㌧なお,この場合,流通速度の上昇 ほ,それの誘引となる流動資産,たとえば政府短期証券や貯蓄性預金が問題な のか,それとも流通速皮の上昇の前提となる不活動貨幣の存在そのものが重要
(17)
なのか。いずれに暮点が置かれるべきかが問われねばならない。おそらく,火 と抽との関係のように,両者灘使って作用、するのであろう。火渡あっても油が なければ燃え上らず,また抽があっても火がなけれほ燃え二上らない。.しかし,も しどちらかといえば後者すなわち不活動貨幣に重点が置かれるとすれば,やほ りかかる不活動貨幣の蓄積の過程が研究されねばならないであろう。そして,
不活動貨幣の過剰を防ぐには,恩気後退期常.おける金融緩和政策が,過度に数 患的な貨幣政策に.依存しないことが必要であろう。しかしその場合,かかる貨 幣政策が完全雇傭や高度の経済成長率を目標とする現実の経済政策と果して矛 盾することなく,そ・め効果を十分に発揮しうるかどうかが疑問として残る。そ
して,もし両者が両立しえず経済政策が優先されるとすれば,そのために滞積す る不活動貨幣の削減を企てるよりも,それを活動化せしめないように,流動資 座そのもの紅対する何らかの新しい統制手段を,たとえばそれのnonmarket・
abilityやnonshiftabilityなどの工夫を試みなければならないかもしれない0 伝統的な鼠的金融政策ほ屑検討を要請されるであろう。
次に,われわれはnearmoney,す・なわち流動資産とアヴェイラビリディ・一 効果と.の関係について,CMC報告とは別の角度から考察を加えてみようムそ のためには,スミスが公式化を試みたところの商業銀行と貯蓄銀行の間の要求 払,定期および貯蓄性の預金の移動が貸付資金の供給並び紅貨幣供給に対して
(18)
与える効果の分析が参考になる。算1表はそれを示したものである。
現金通貨が商業銀行の要求払預金またほ定期預金として預入れたとき,・それ の乗数倍の信用創造が可能となることは周知の通りである(第1表(1),(2)を参 照)。しかし,商業銀行の要求払預金が同定期預金に,あるいほ貯蓄銀行の貯蓄 性預金に.移動された場合,あるいは蘭英銀行の定期預金が貯蓄銀行の貯蓄性預
(用 矢尾次郎, ふたつの金融政策観, 国民経済雑誌,105巻6号,p・39,
第軍巻 努6号
782−JJ・−
金に移動された場合にも,貸付資金の創造が可能となる。もっとも,後者の(6)
め場合にはスミスの数値例が示すように,その額ほ極めて僅かであって−影響闇 小さいようである。しかも貨幣供給も同額増加する。しかし,前者の(4),(5)の 場合に.ほ,数倍例によると,貸付資金の供給が0,586,0.679と増加している。
しかし,ここで注目すべきことほ,その結果貨幣の供給がそ・れぞれ減少してい ることである。たとえば,要求払預金が1ドル貯蓄預金に預け番えられたとす
第1表 各棒請求権(cJα∠∽5)間の移動の貸付資金の供給と貨幣供給への効果(18)1)
例4)
数 値
γd=.2 γ才芸い05c=、1
移琴の性軍 から へ
貸付資金供 給への効果
係数2)
1−J 、J
貨幣供給へ
の効果係数3) ∵∴ 二∴.
$2,857 $2,857
−1 3;393 2,393
−1 3,536 2,536
岬1 .536 一.464
−1
.679 −一・+.321143 143
1−㌢ d
ノニニiし了二〜iT云、
1・−′−才
1現金通貨 要求払預金 2 現金通貨 定期預金
3現金通貨姦智管蟄
4 要求払預金 定期預金
5要求払預金姦智管蜜
6定期預金γd(1−C)十C l−㌢J
γd(1鵬け十C
トーJ▲Jり
宕そr二万了J
J二i ̄■J一ナ 石てi二こ・ナ手7
7・d(1一タr)
γd(1−C)+c
l−−タ.JJr rd(トーC)十√
J.「 ̄Jr
γd(1−C)+c
上吐±
.,
γd(1−C)十C
㌢・ど(1−7d)
‥・:∴、・
ヱ追ヒ塑L
γ虎(1−C)十C
γd(1−C)十C
u8)WL・Smith, Reseve RequiIementSin the American Monetary System, in
肋〝βfαタ・,γ肋紹αge㈹♂〝≠,1963,p.311
1)記号の意味‥7・か=要求払預金の準備率,タ羊=定期預金と仲介的金融機関預金の債 務に対する準備率,C=現金通貨の総貨幣供給(要求払預金十現通貨)紅対する限界比率,
準備率ほ銀行の定期預金と仲介的金融機関の債務とに対しては同一・と仮定する。Jしか し,定期預金紅対する支払準備は現金通貨または中央銀行預金の形態でなされるが,仲
介的金融機関の債務に対する準備は商業銀行の要求払預金の形態でなされる。2)貸付資金の供給の変化は,銀行と仲介的金融機関とを結合した全体の収益資産の 変化を表わす。すなわち,いいかえれほ,貨幣供給,定期預金および仲介的金融親閲債
務全体の変化でもある。3)貨幣供給ほ.公衆の保有する要求払預金と現金通貨を表わす。
4)数値例は示された各種請求権間近1ドルが外生的に移動した場合の,貸付資金と
貨幣供給とに与える効果を示す。・一一J5−−
仲介的金融機関と金融統制
783
ると,貯蓄銀行ほr−だけを準備とし,残りの(トーγ )を貸出すことができる。
この給果公衆保有の貨幣鼠ほグ・−だけ減少する。しかし,この(ト㌢七)の貸出増 加はスミスによると,それほ南東銀行の要求払預金が預金通貨で引出される可 q 髄性せ生ずる。それ隠仮定によって(トーれ)・Cである。したがって,この現金
(トーγ・d) 通貨の流出の結果,商業銀行はそれの乗雛潤,すなわら−研二不洋さ→倍の
貸出と貨幣供給の減少な企てなければならない。貯蓄鋭行の貸山堰から摘発鋸 行のかかる貸出減を引いた純増が,スミスのいう貸付資金の供給である。われ われは前号において1tデルの移動に対して−1ドルの貸付資金の創造がな挙れる
ように.述べたが,・それほ単純化したためで,実際の問題としては全額が供給増 加となるわけでない。殊に,現金流出率が高いわが国の現状を考えるとき,そ の額はかなり小さいもの紅なるのでないかと思われる。しかも,そのためにか なりの貨幣供給鼠の減少を伴うとすれば,金融政策に与え.る効果も単純に答え ることは困難に.なるであろう。しかし,とにかく,かかる場合,もし商米銀行 に二自由準備があればともかく,完全貸出がなされているとすると,商業銀行は 貸出またほ有価証券の保有を減少しなければならない。このことはある意味 で,金融引締政策を支援するものと考えられるであろう。しかし,問題ほ後に 述べるように,この場合の商某銀行の態度と中央銀行並びに・政府との関係であ
り,また市場に不活動貨幣が蓄積されていて,商業銀行の証券売却が容易に行 われうるかどうかである。
さて−,これだけを前置として次の問題に移る。金融引締における流通速度の 上昇ほ.,実ほ.引締に伴う金利の上昇またほ上昇率の格差によって,上記のよう に金融機蘭の間に資金の移動がなされるために生ずるものであった。しかし,
いかなる性質の資金がどのような機関に移動するかによって,貸付資金の創造 螢の異なって−くることは注意されねぼならないであろう。すで紅述べたよう 紅,CMC報告は,金利の上昇のもとづくこのような流通速度の上昇について は,現実の問題として−その意輩を認めず,むしろ金利上昇ないし証券価格の下 落に伴うアヴ.ェイラビリディ・−効果または流動性効果を重視する。しかし,注
意すべきは,ここにいうアヴ‡イラビリディ−・効果,または流動性効果は,い
欝頸巻 欝6号 784
一−ヱ6・−
ずれも,かかる証券価格の下落が,機関投資家または支出者の貸出またほ支出の 能力と意欲に与える影響を注目しているに.すぎない。いわゆるlock・ineffect
についてである。さて金融引締はCMC報告が述べているように,まず銀行の
∫
流動性ポ汐ジョンと貨幣数星の減少を伴うのであるが,これは支出主体に貨幣 に対する超過需要(excess demand董or money)を生ぜしめる。この超過需要 に対して,企業,家計,金融械関はいかなる反応を示し,貸付資金の供給や支出に.どのような変化をなすかほ,理論的並びに実証的に研究される必要があ
(19)
る。各経済主体は,この貨幣に対する超過需要,すなわち貨幣の供給不足を平
等に受けるわけでほなく,また必ずしも−・様な反応を示すとほ.限らない。人々
の中には,貨幣供給の不足の衝撃を直接に受けることなく,金利構造の変化に
よって,甘一・トフヵーリオの調整を行うかもしれない(利子率効果)。しかし,
中には貨幣の供給不足を克服しようとして,その資産の構成を変更するものも
現われる。このような働きを,アルハデフはアグェイラビ.リティL−・効果と呼ん
(20)
でいる。それほ,金融引締の結果,貯蓄性預金が要求払預金へ連接に移動せし められる働きの生ずることを意味する。このことほ,従来の資金源からの信用
を却否されたり,金利の上昇によって信用のコストが高くなったために.貨幣不
足の影響を受けた人々が,貨幣琴高を回復しようとするために起るのである。このような貯蓄性預金,または短期証券から貨幣への移動が,貸付資金の市場
にどのような影響を与えるかは,移動される資金の性質とそ・の方法によって異
なる。しかし,これまでの議論やスミスの例からも推測されるよう紅,それは 商業銀行の要求払預金が貯蓄性預金紅移動せしめられた場合の逆の現象であって,貸付資金の消滅,すなわちその供給を減少せしめるであろう。しかもそれ
に.よって増加した貨幣または要求払預金ほ不満動化されるのでなく,支出紅向
けられるとすれば,商業銀行からの貸付資金の供給はさらに減少するかもしれない。いいかえれば,金融引締紅よってかかる貯蓄性預金から貨幣へ・の移動が
(19)D,A.Alhadeff,Ob‖Cit・,p・667
但0)D.A.Alhadeff,OPCit・,p.661仲介的金融挽関と金融統制
785 − ヱ7−「・
発生するときほ,商業銀行および貯諮銀行ほ,流動性の不足に悩まされること になり,保有証券の売却乃至貸出残高の減少を試みねばならなくなる。もちろ ん,このような証券の売却は,不活動貨幣が存在しないときはさらに証券価格
の下落を引起、し,いわゆるlock・・in効果の意味のアヴ.ェイラビツタィー・効果
を誘発するものと解されるが,いずれの影響力が強いかほ検討を要するであろ う。とにかく,独断的ながらあえて私見を述べれば,金融引締がすすむにつれ て,もしもアルハデフの意味のアグヱ.イラビリティー効果が利子効果よりも次 箪に強く現われるとすると.,かかるnearmムneyを供給する金融機関の ほ,金融引続のある段階後にほ,却って引締政策を助品する傾向を生ずるので ないかと思われる。near mOneyの存在は,金融引締の効果をある期までほ遅 らせるかもしれないが,その期を鱒ぎると急に加速化せしめるのでなかろう か。今後の実証的な検討をまたねはならない問題であろう。
なお,ここで問題となるのは,先にも触れたように銀行流動性の不足または これら紅伴う政府証券の価格変動に対する中央銀行と政府の態度であろう。特 に,金融機関の安全性,支払能力,誠実性及び社会的責任に対する保証を主要 な目的とする王ast resortとしての中央銀行ほ,このような商業銀行並びに,そ の他の金融機関の流動性の危機に対して,引締政策を果して果敢に続行できる であろうか。経済の実態がなお引締政策を必要とするにもかかわらず,金融簡 における秩序を維持するために引締を緩和せざるをえないような事態が生じな いとも限らない。しかも,このような商業銀行の流動性の不足ほ商業銀行自体 が過度の貸出拡張を行った結果でなく,その他の金融機関の貸出拡張の波及効 果に.すぎない。ここにいわばIast resortとしての中央銀行と経済政策の〜胡 当者としての中央銀行との間にディレンマが生ずる。そして万一・1astI■eso工t としての中央銀行に対する過イ言が一・般に支配的となっているような金融構造の もとでは,果して伝統的な罷的金融政策によって十分にその効果が発揮されう
るのか,あるいは何らかの追加的統制手段を必要とするのか,それともさら把
金融構造の改革たまで発展しなければならないのか,がやはり検討されねほな
第36巻 第6号 786
・一−J∫ −
らなくなるのではなかろうか。nearmOneyを発行する銀行以外の金融機関が 貯蓄・投資の過程に.おいて単に仲介機関であるからといって,その活動を自 由に二1放任することは,短期的に.ほともかく,長期の観点からは.,かかるnear
moneyの蓄積が中央銀行の短期の伝統的な鼠的統制手段の遂行をも困難に.陥
れるようなことはないであろうか。長期の金融政策に.ついては,CMC報告よ
りほガリ・・・・・レイ・ショウ両教授の見解に,なお傾聴すべきものがあるように思わ れる。
最後に残された問題は,貯蓄銀行等の仲介的金融機関の多くは.,形式的に見 れば商業銀行と同様の部分的支払準備組織(fractionalreservesyestem)であ
る羊とから,商業銀行と同じく,・一億や支払準備の増加の乗数倍の信用創造能 力をもっているのでないかという議諭である。両者の相異については,スミス の説明は示唆に.富む。・その要点は,(1)準備金が貸出されて再たび銀行組織に回 帰する期間に.ついて,両者に相異がある。商業銀行の場合はそれは支払・回転 期間(payment−tur′nOVer peridd)であり,仲介的金融機、関の場合にほ所得・
回転期間(income−turnOVer period)である。(2)仲介的金融機関にも商業銀行 と同様の信用拡張係数の公式が適用されるとしても,実際上の問題として.,現 金流出率が大きいためにその拡張係数はせいぜい1に等しく,商業銀行のよう に数倍の値をもっていない。(3)商業銀行と仲介的金融機関はその経済的意義に おいても非常に.異なっている。商業銀行の信用拡張は,経常的な所得の流れか ら生ずる資金を超過した支出を,賄うための資金を造り出すのに対して,仲介 的金融機関は.,経常的な貯蓄を集めて投資に向けるのに役立つにすぎない。こ のように,スミスは全く異なった現象を,両者の形式的な類似から−一㌦つにまと めて,信用創造分析を仲介的金融械関に適用することは.,混乱を接ずると反対 する。要するに,fractionalreserve system という形式的な類似から,仲介 的金融機関も南米銀行と同様に信用の創造能力を有するのでないかという問題 た対↓て,スミスは仲介的金融機関は文字通り仲介的機関にすぎないことを強 調する。仲介的金融機関のfractionalreserveゐ問題ほ,上記の信用創造能 力とは別の角度から,すなわちこれらの金融機関に対する統制手段としてもと
l
仲介的金融機関と金融統制
787
− ヱ9 −−り上げられる。たとえ仲介的金融機関が単にミクロ的に信用の仲介機関にすぎ ないとしても,不満動貨幣を活動化せしめるという意味での,マクロ的な貸付 資金の創造能力をもっていることは,すでに指摘した通りである。そこで,か かる窓昧の貸付資金の創造能力を抑制するためにっ仲介的金融機関の負横,た とえば貯蓄性預金の増加を規制することが,統制手段として選ばれることもま た当然かもしれない。 そこでその負債またほ預金の残高を統制するために,商 業銀行に対すると同様な支払準備率制度が,仲介的金融機関に対して課せられ るぺきであるという議論がなされる。しかし,このような仲介的金融機関に対 する支払準備制度に.ついて,アルハデフの批判がある。もし仲介的金融機関の 支払準備が,現行のように商業銀行に設けられるのであれば,その効果は期待 できない。というのほ,仲介的金融機関は,準備率の引上げによ.って不足する 支払準備を,自己の保有する証券の売却などに.よって容易に.回復する通が残さ れているからである。したがっで,仲介的金融機関の支払準備を中央銀行に預 金せしめる案が考えられるが,スミスはこ.の場合には商業銀行と仲介的金融機 関との区別がなくなってしまうであろうと述べている。またその場合には,商 業銀行に圧力が強くかかりすぎるという可能性も生ずる。いずれにせよ,CMC 報告のように,仲介的金融機関に対する統制が必要でない場合には,このよう な支払準備率制度の仲介的金融機関に対する拡張の問題も起らないわけである が,ここでの問題は,万山・その統制が必要となったとき,果して支払準備率制 度ほかかる統制技術として適当かどうかという問題が残されていることを指摘
し21、
したまでである。