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会社機関改正試案に.おける株主の質問権

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(1)

研究ノート  

会社機関改正試案に.おける株主の質問権  

末  永  敏  和  

Ⅰ ほじめに   

昭和53年12月に法務省民事局参事官塞から「株式会社の機関に関する改正試案」が公表   されてから1年余りが経過したが,これに対する各界の意見もようやく出揃ったか把思え.  

(1) る。ところで,今回の改正試案の源流を今一度たどれば,昭和49年の監査制度の改革を内  

容とする商法改正に際し行なわれた衆参両院の決議に.まで遡ることができよう。この決議  

を受けて法務省ほ会社法の根本改正に.とりかかることを決意し,昭和50年d月に「会社法   改正に関する意見照会」が各界に向けてなされた。そして昭和52年6月にほ,まず「株式   制度に関する改正試案」が公表されたが,機関改正試案は・そ∵れに続くものであり,さらに  

最近ほ「株式会社の計静粗よび公開紅関する改正試案」が公表されるに至ってこいる0 この  

間,昭和54年7月にほ,現在までに公表されている株式制度,機関,計算・公開の3つの  

(2)  

試案をまとめて,会社法の他の部分を切り離し,別に.立法審議を行なうことが決定され,  

会社法の全面改正から部分改正への方向転換が行なわれている。   

さて,今回の機関改正試案を概観すると,試案の中心課題ほ取締役,取締役会紅あると   いって:よいだろう。計算畜類の確定権限が株主総会から取締役会に移され,営業譲渡につ  

いても取締役会が決定権を有するなど取締役会の総限強化が図られるとともに,他面では,  

取締役の競業避止義務に関して:取締役会の承認で足りるとし,また介入権の制度を廃止す  

るなど茸任軽減の傾向が見られる。各取締役の招集権限が強化されているが・これが社長の   ワンマン経営に対するコントロ−ルとして,あるいほ取締役会の権限強化に対する抑制と   しての機能を果たしうるであろうか。また,取締役会議事録の閲覧については裁判所の許  

(1)参照・稲葉威雄ほか「株式会社機関改正試案に対する各界意見の分析」商事法務857    号(昭和54年)以下。  

(2)参照,元木伸「株式会社法の早期改正方針の決定紅ついて」商事法務844号(昭和   

54年)2ぺ−ジ以下。   

(2)

会社機関改正試案に.おける株主の質問権   −7β−  

609  

可を要し,ディスクロー・汐ヤ−・の緩和の傾向も垣間見られる。わずかに.取締役会社間の取   引紅ついて∴業務報告苔へ.の記載が要求されてディスクロージャー・の強化が図られているの   が救いである。   

次に,株主総会紅関しては,改正の主眼ほ.株主総会の形骸化の対処に置かれているよう   である。利益供与の禁止や罰則の強化など総会屋排除のための規定ほこれをめぎす−もので  

ある。しかし,株主総会の権限という面でほ,計罫書凝の確定権限の喪失に象徴されるよ  

(3)  

うにむしろ縮小の傾向を読み取ることができよう。また,定足数を法定せず,仮決議の制   度を創設し,あるいほ決議の噸症に閲して二無効範囲を縮小し取消梅周な拡大して,現状   追認,塀症温存を図るなどして.,総会強化とほ裏腹な面を見せている。一方,株主の提案  

権や質問権な法定して総会の形骸化防止と株主権の強化を図ろうとしているが,それらの   権利が真に.機能しうるような行使要件,内容となってこいるだろうか。あるいほ,単なる目   玉商品としての意味に層まって.いないだろうか。質問権についてほ本稿の主題とするとこ   ろである。   

最後に.監査役紅ついて:は,率直に.いって二強化の方向紅ある。複数監査役による組織的監   査体制の充実,会計監査人候補者の指名権の帰属,経営委員会への出席梅の付与など紅改   酋の意図をうかがうととができよう。   

以上のような機関改正試案に対する各界の意見のうち紅は,試案全体に.ついて概括的評   価を述べているものも少なくないが,その中紅ほ.試案の基本的立場に賛成するものがかな  

りある−・方で,経済団体の意見は概ね現状維持を是とし,法規制の強化把.異論を唱えてこいる  

(4) のが特徴的である。その典型例として経団連の意見を挙げることができよう。経団連は,  

試案は,株主総会および取締役会かいずれも形骸化しており,監査役制度も十分機能して   いないとの前提に.たっているが,この形骸化論ほ,所有と経営の分離の進展および企業運   営の実態を無視した観念的なものであると断じ,しかも試案は,会社の自治に屡ねられる   べき経営組織等の領域にまで立ち入っており,また欧米諸国の制度を安易に導入してこいる   きらいがあり,日本的風土紅定着してきた,よき経営慣行に.悪影響をおよぼしかねない。  

また,そもそ・も企業の組織ほ.,事業環境の変化に迅速紅対応しうるような弾力的なもので   あるぺきところ,−・部企巣の例外的な不正事件のために.一・般の企業にまで過度の規制を課  

(3)数少ない例外の1つは,会計監査人の選任を株主総会に.委ねていることである。  

(4)経済団体連合会「『株式会社の機関に関する改正試薬』粧対する意見」商事法務843  

号(昭和54年)27ぺ−ジ。   

(3)

第52巻 欝6号  

−74−   610  

すならば,企業の機動的かつ円滑な運営に支障なきたすことになる。会社運営の適正化に   は,試案のような厳格な法規制に.よっででほなく,情報開示の充実紅よって対応していく   のが基本であるが,ただし,この情報開示も,企業機密との関連およびコスト・ベネフィ  

ットの観点から,その開示すべき範囲に.ついてほ惧妥紅検討すべきである,として試秦に  

対し極めて二消極的な態度を示してこいる。この経団連の試案に対する基本的見解について詳   細に.論評する余裕を持たないが,少なくともこの見解は,昭和49年商法改正に.際してこの衆  

参両院決議の,株式会社の業務運営を厳正かつ公正なものに.し,株主の一層の保護を図る   とともに.,社会的安住を全うするように商法の改正を図るぺきとする趣旨とほ相容れない   ものであるとほいえよう。   

それでほ,試案に盛られた各規定が上述の決議の趣旨を具体化したものといえるであろ  

(6)  

うか。ここでは,筆者の従来の研究の行きがかりから,株主の質問梅に焦点を当でて若干   の考察を加えてみようと思う。   

ⅠⅠ試案における質問権の検討  

(1)質問梅の趣旨   

試案ほ株主紅質問権を保障する規定を置いてル、る(試薬第一・・ニ3)。現行法の下でも,  

総会で決議す  べき事項についての会社理事者に対する質問樅ほ,鵬・般に解釈上当然の権利   として認められでいる。しかし,その内容が実定法上明確紅されていないため,その適正   な行使を図るこ.とが困難な状況が生じて:きて:いる。そこで試案は,質問梅の適正行使の保   障と濫用防止の見地から質問権に.枠をはめようとしている。そして,質問は株主と会社経  

営者との間のコミニュケーショソの手段として,総会を生き生きとしたもの紅するために  

(6)  

不可欠なものであるという。  

試案の質問植樹する各界の反応は概ね好意的であ去三)試案紅賛成する理由としては,  

質問権の明定が株主と経営者との間における意思疎通の円滑化に資するので,株主総会の  

(5)拙稿「株主の解説請求権(一)(ニ)完」民商法雑誌71巻3号,4号(昭和49年,50    年),同「西独の株主解説請求権の裁判上の行使」商事法務778号(昭和52年),同「株    主質問権の法定」番大経済論叢50巻5・6号(昭和53年),同「株主権の強化」企業法    研究281輯(昭和53年)。  

(6)以上,稲葉「株主総会一株主総会の運営(一)」商事法務827号(昭和54年)15ぺ   

」−・ジ以下。  

(7)日本弁護士連合会,東京証券取引所・大阪証券取引所,日本監査役協会。   

(4)

会社機関改正試案における株主の質問権   −7∂−  

611  

t8、  

機能強化に.役立つことが挙げられている。−・方,試案に消極的な意見はやはり経済団体に  

(9)   (10)  

多く見られる。質問権については,現行通り判例,学説紅委ねておくことで充分であり,  

また質問権を明定すればかえって試案の意図に反し,議事の混乱やいやがらせ紅悪用され  

(11) る恐れがあるので,質問権ほことさらに朋定する必要はないというのが主な理由である。   

現行法上も質問権は認められているから明文化ほ必要ないという消極的意見の理由に対   しては,筆名がかつて,第1に質問権は議事進行の動議軋基づく多数決濫・より排斥すること   ができ,寛2に眉間権そのものの裁判による追求も不可能であり,第3に眉間権の侵害は   ただち紅決議取消原因となるのではなく,決議方法が「著レク不公正」と認められる限り   においてこのみ決議取消原因となる紅すぎない,と解されている現在の−・般的法律状態の下  

〈12)  

では,現行法上の質問権ほ権利としで不充分であると指摘したことをこ.こでも反論の根拠   に挙げるととができよう。」ニ述の3つの問題性は,現行法の解釈論によっても克服できる  

と思われるが,明文によりはっきりさせる方が望ましいことはいうまでもなく,その意味   で試案紅おける質問権の明定は,評価紅値するものといえる。ただし,試案ほ贋2の問題   点の克服を意識的粧放棄している。   

次に.,質問権の明定がかえって株主による悪用ないし濫用という弊害を招くという消極   的意見の籍2の理由については,そのような弊害ほ,そのようないやがらせのための質問   をする総会屋ばかりでなく,−・般株主の正当な質問の抑圧を頼まれた与党派総会屋をも含   めたすぺての総会屋を排除するための方策をまず籍1に講じること紅上ってなくすべきで   あって:,質問権の明定を否定する根拠にはならないのではないか。また,明定された後紅  

(13)  

おいても,質問権の悪用ないし濫用が許されないことは明定前と同じである。そもそも,  

そのような反対理由が出てくる根底に.は,現在の株主総会が必ずしも形骸化してほいない  

との認識,もしくは質問のない株主給金がよい株主総会であるという経営者の意識が依然   存在しているからではないかと思われる。しかし,そのような現状認故や価値判断が我々の  

(8)東京証券取引所・大阪証券取引所,代行リポート48号(昭和54年)参照。  

(9)経済団体連合会,東京商工会議所,東京株式懇話会,関西経済連合会,大阪工業会。  

(10)経済団体連合会。  

(11)東京株式懇話会。同旨,東京商工会議所,商事法務851号(昭和54年)38ぺ−ジ。  

(12)拙稿・前掲,番犬経済論叢50巻5・6号116ぺ・−汐以下。  

(13)ただ,規定の仕方によって,悪用もしくは濫用される範囲ほ異なってくるが,その   

場合には,どの規定のどの文言が悪用もしくほ濫用されるおそれがあるかを明らか紅  

すべきである。   

(5)

俸52巻 欝6号  

−・76・−   612  

し14) 常識からほかけ離れたものであることはいうまでもない。  

(2)質問梅者および答弁義務者   

質問権ほ,試薬においてこも単独株主権としです、ぺての株主に認められている(試案博一・  

・ニ3a)。したがって,各株主の質問権ほ,定款の定めもしくは総会の多数決によってこも   奪うことのできない株主権と解すべきである。議決権なき優先株主が含まれるかどうかに   ついてこは,文言の上からほ必ずしも明らかでほないが,質問権の要件として「株主権の行  

使に必要な限り」と,議決権の行使把限定されでいないところから,肯定的に解すべきで   ある。   

次紅,答弁義務者に関してほ,取締役もしくは監査役またはそ・の職務代行者が一・定の場   合に答弁を拒絶できることを定める規定(試案第一・ニ3b)の反面として,試案はこれ  

らの者の答弁義務(およぴその前提としてこの総会出席義務)をも間接的町定めたものとい  

える。また会計監査人についてこも説明義務な認めるかどうかは今後の検討課題であるとい  

(15ヽ  

う。西ドイツでほ,旧株式綾上,監査役も解説義務を負うかどうかについで議論があった   ところから,現株式法は取締役を義務者と明示するに至ったが,我国における立法論とし   ては,試案のように取締役のはか監査役や会計監査人にも答弁義務を課すのが望ましいと   いえる。  

(3)質問の対象および範囲一質問権の要件   

質問の対象および範囲に関して,試案ほ「会談の目的たる事項」に.ついて,かつ「株主   権の行使に必要な限り」においてのみ賀問できるものとしてかなりの限定を加えている。  

これを西ドイツ株式法と比較すると,株式法131粂では,解説の対象は「会社の諸事情」  

であり,その範囲は「会議の目的たる事項紅ついてう温切な判断をする上に必要な限り」と  

く16)  

されている。旧株式法では「会議の目的たる事項に関連する」「会社の諸事情」に.関して二質  

(1r7) 問することが許されていたために.,実務上質問の範囲が余りに広過ぎると感ぜられてこいた  

ところから,現株式法のような限定が設けられたのであり,実際上も必要以上に眉間権に.  

(14)参照,毎年発表される株主総会自苔,稲葉・前掲,商事法務857号5ぺ−ジ。  

(15)稲葉・前掲,商事法務827号17ぺ一−・ジ。  

(16)なお,西ドイツでほ,株主紅質問梅を認める趣旨として,抹主にその権利の適切な    行使を可能とさせることが挙げられている。  

(17)判例上も株主勝訴に終った判決が多い。参照,拙稿・前掲,香大経済論叢50巻5・  

6号106ぺ−ジ。   

(6)

会社機関改正試案における株主の質問権   −77・−  

613  

し18) 対する制約の機能を果たしている。このように哉国と現在の西ドイツとでほ,質問の対象  

および範囲把関して文言上差異を示して:いるが,しかし対象と範囲を総合的に勘案する場  

合の両者の差異ははとんどないのではないかと思われる。ただ,質問の範闘の限定方法が   我国では主観的であるのに対して,西ドイツでは客観的である点ほ,問題紅しえ.ないでほ  

ない。後者が,質問の効果が総会出席者全員紅およぶところから,質問権の客観的性格に  着目した表現をとっているのに対して,前者で牲,質問魔という権利の個人的,主観的性  

(19)  

格が浮きぽりにされる結果となっている。   

次に.試案では.,「会議の目的たる事項」について質問できるものとされて:いるので,会議   の目的たる事項の種類は問わないと解される。したがって,決議事項についてこは勿論のこ   と,報告事項匿.ついても報告が不充分と思われる場合紅は,質問しで補足説明を求めるこ   とができることほいうまでもない。   

以上のように.,試案紅おいてほ,総会での株主による質問樅の行使匿ほ現西ドイツ法と   同感の制約が課せられているが,我国における総会の現状からすれば,私見としては,総   会での討議および報告とは関係のない事項であってこも,会社の営巣に.関するこ.とであれば   質問を認めてもよく,少なくともドイツ旧株式法程度の限定で充分なのではないかと考え  

る。  

(4)答弁拒絶事由   

試薬は,取締役もしくほ監査役またほその職務代行者は,イ.質問に対して答弁するこ   とにより,会社またほその親会社もしくほ子会社に.実質的な損害が生ずるとき,ロ.質問   紅対して答弁すること紅より,会社または自己が刑事訴追を受仇,またほ有罪判決を受け   るおそれがあるときにほ.,理由を示して答弁を拒絶することができると定めている(試薬   第一‥ニ3b)。この2つの拒絶事由ほ,EC会社法90条3項ならびに西ドイツ株式法131   条3項1号およぴ5号紅梅げる事由とほぼ同じである。   

イほ,企業秘密に隠する事項である。そし・て損害の程度ほ,実質的なものでなければな   らず,単に世間体が悪いとか,−・般的概念としての会社のイメ一汐,信用が毀損されるか  

(如) らという程度では正当な答弁拒絶の理由紅はならないという。実質的な損害の判断基準紅  

(18)参照,拙稿・前掲,番犬経済論叢50巻5・6号115ぺ−ジ。  

(19)従って,山村忠平「質問権」金融・商事判例572号(昭和54年)35ぺ−・ジは,西ド   イツの方式がよいとする。  

(20)元木「『株式会社の機関に関する改正試案』に.関する質疑応答」代行リボー†・亜号7  

ぺノー汐 

(7)

第52巻 第6号  

−7β・−   614  

ついては,試案は特に示してほいない。西ドイツ株式法紅おいては,「合理的な商人の判断   に.よれば」として,一応の基準を明示しでいる点が注目されよう。それはともかく,試案   で問題なのは,損害の程度紅つき「実質的な」ものでなければならないとしたことである。同  

じくこれについて,西ドイツ株式法でほ,「少なくない不利益(einennichtunerheblichen   Nachteil)」という用語を用いている。ところで「英資的な」という用語は.,英米法上の  

● materialの訳語として.最近用いられているが,我国の法令用語としてはなじみ.の薄いも  

く21)  

のであり,むしろ「重大な」あるいは「著しい」という言葉に置き換え.るべきである。   

ロほ,自己負罪の陳述免除の思想に基づくものであるという(怠法38条,刑訴法146   条,民訴法280条)。EC会社法90条3項(b)および西ドイツ株式法131条3項5号は,こ   れよりも狭く,答弁をすること紅.より取締役が処罰される場合紅答弁拒絶を認めている。  

その典型的な適用事例ほ,解説を与えることによって国家秘密が漏らされる場合である。  

そのはか,解説の付与が刑法の侮辱罪もしくほ株式法404条の,経営,営業上の秘密保持  

(22)  

義務違反による罰則に該当する場合がある。これに対して試案では,こ.のような場合のは   かに,総会での答奔以前に.取締役またほ会社が刑罰に催する行為を既に行なっていて.,答  

弁によりそれが明らか紅なるような場合に・も答弁を拒絶することができるとしているので   ある。実際上は,ロの事由把.より答弁を拒絶することほ,自己またほ会社の有罪を自認す  

ること紅なるので活用されるかどうかほ腰間であろう。しかし,既に.行なった犯罪行為  

(しかも自己ばかりでなく会社の)を法廷ではなく総会場においても黙秘できるとするの  

(23)  

は,割り切れない感じがしないではない。   

さて,試案のように,答弁を拒絶できる場合を特に規定することに対して:は,−・部に異   論がある。すなわち,拒絶理由紅ついて,具体的に.内容を示すことは困難であり,かつそ  

の判断基準が不明確常なり,その存否をめぐってかえって混乱を起こすこと紅なりかねな  

(餌)  

いから,この問題は,・一・般理論に.よる運用でまかなうべきである,とする意見である。傾   聴紅値する意見である。  

(21)厳密に・いえば,前者が亜害の種類,性質を問題にし,後二者が板書の木小に重点を    置く点で,両者は損害の範囲を若干異にサーるだろう。その場合,利益調整の要素をよ  

り含魂うる後二者の方が妥当である。  

(22)Barz,Groβkommentarzum Aktiengesetz,1972,§131Anm.19.  

(23)しかも,法廷に.おける証言拒否については刑罰紅よる制裁が課されるのに対して.,   

総会場に.おける役員の答弁拒絶ほ,必ずしも罰則(行政罰)による制裁を問われるわ   けではない(参照,商法498粂1項5号)。  

(24)日本弁護士連合会,代行リボー・ト亜号参照。   

(8)

会社機関改正試案に.おける株主の質問梅   ・−7β−  

615  

(5)実効性の確保   

株主の正当な質問権の行使が拒まれた場合の救済については,個別の裁判に.より,質問   に対する答弁を追求していく直接的強制の方法と,株主総会決議の取消事由紅することに   よる間接的強制の方法とを考えることができるが,試案ほ後者の方法のみを採用してこい   る。ちなみに西ドイツ株式法は,132条に.おいて,解説を強制する特別の非訟事件手続を   定めて紛争の迅速な解決を図り,さらに243条により,質問権侵害が決議取消訴訟の取消   事由にもなる,というようにこ段構えの方法を採用しでおり,しかも両手続が有機的に結  

(25)  

合している。   

さで,試案のように,正当な理由がないのに.答弁をしないときに総会決議の取消理由  

(2町  

となることに対して.ほ,決議が不安定な状態におかれるとか,総会の運営が著しく困難紅   

(27)   (28)  

なるとか,あるいほかえって議事運営の萎縮化・形骸化の原因となるおそれがあるという   理由で反対する意見もある。しかし,そのような実効性のない質問権に.おいてこは,経営者   の答弁は恩恵に過ぎヂ,そのような権利ほ,権利の名に値するものとほとうてい言えない   のではないか。   

ところで,試案の問題点として.は,第1に,報告事項についての株主の正当な質問梅の   行使が拒まれた場合には,虚偽の答弁もしくは事実の隠蔽の場合を除いて:救済の通がない  

こと,第2に,決議取消の訴が裁蛍棄却された場合紅も同様に質問権の実効性が失われる   ことを挙げるこ.とができる。   

そこで次に,試案の規定の具体的検討に移ると,試案第一・・四1aニにより,総会紅お   いて正当な理由がないの紅質問の機会を与えず,または答弁をしない場合紅.ほ,株主,取  

締役またほ監査役ほ,決議取消の訴卑提起することができるが,このような場合は,試薬   第一‥四1aイの決議方法の違法にあたることに.なるので,試案第⊥・・四1aニは注意規   定と見るべきものである。それによって二,株主の質問権の保障を明確化しようとしてい  

(紬)  

る。さてここでは,株主,取締役および監査役が取消権者となっている。西ドイツ株式法  

(25)この解説強制手続ほ.,株主の不満の一次的なはけロとなっており,従って西ドイツ    流の方法は,株主の質問紅対して答弁することは淡々認めるにしても,決議取消だけ   ほなんとしても防ぎたい,という経営者の意図に応うものである。  

(26)東京株式懇話会,代行リボ・−・ト48号参照。  

Q7)東京商工会議所,商事法務851号38ぺ一一汐。  

(28)大阪工業会,商事法務839号32ぺ−・ジ。  

(29)同旨,倉沢康一部「株主総会の決議の塀庇」金融・商事判例572号58ぺ一一・ジ。   

(9)

算52巻 第6弓  

ー∂0−   616  

245条では,株主のうちでも,総会に出席し,かつ決議に対して二議事録に展議をとどめた   ものに.限定されている。次に,試案は,この場合の決議取消の訴についてこは,請求の理由   があると認められる場合においても,その塀庇が軽微で,決議の結果紅影響をおよぼさな   いときは,裁判所は請求を棄却することができるものとするが(第一‥四1b),どのよう   な質問権の侵害が噸庇が軽微で,決議の結果紅影響をおよぽさないのかの判定は,極めて:  

困難なものとなろう。それだけに.,規定の運用によって:ほ,多くの質問権の侵害が畷庇が   軽微で,決議の結果に.影響をおよばさないと判定されるおそれも充分ある。   

さて.,試案はさらに.,取締役等の答奔義務者が虚偽の答奔をし,または事実を曙蔽した   ときほ,商法498条1項5号に.より,30万円以下の過料に.処せられることを明示している。  

同様な行為について3年以下の禁錮および(またほ)罰金軋処すことを規定する西ドイツ   株式法(400条1号)と比較すると,余りに.差があり過ぎるのでは.なかろうか(我国欄こお   いては,刑罰ではなく,行政罰としてこの過料に.過ない)。これで質問樅の実効性の確保に役   立つのだろうか。   

最後に,試案は,正当な理由がないのに,株主に眉間の機会を与えなかった議長に対し   てこ過料の制裁が課せられることを規定しでいる(寛一・ニ3c)。質問の機会を与え.なかっ   たというなかには,正当な質問軋つきこれを正当なものとして:取扱わなかった(取締役等  

(80)  

に.答弁させなかった)場合も含まれる。さて:,この規定に対しても,議長に対し制裁を加  

く31)  

えることは,彼らに.総会議場の混乱をもたらし,あるいはかえって議事運営の萎縮化,形  

(32)  

骸化の原因となるおそれがあるとの反対意見が存在する。しかし,株主総会の正常な運営   の保障という観点からは.,この程度の制裁ほ必要というべきである。   

さらに西ドイツでは,解説義務違反紅より取締役が会社もしくは株主に対して民法上の   損寄席償責任を負う場合があるが,我国に.おいても同様に解してこよい,と思われる。  

(6)書面に.よる質問事項の通告   

試案は,株主が総会前に質問事項を会社に凄面で通告できることを規定している(第一・  

・ニ3d)。これに.よっで,正当な理由なく質問の機会が与えられなかったことの立証を容   易にし,また会社理事者に対して答弁のための準備の余裕を与えることにより,総会にお  

(30)稲柴・前掲,商事法務827号17ぺ−・汐。  

(31)関西経済連合会,商事法務839号30ぺ−ジ。  

(32)大阪工業会,商事法務839号32ぺ−ジ。   

(10)

会社機関改正試案に.おける株主の質問権   −βユー   617  

(33)  

いてこより実質的な討議がなされることを期待しようとする。同じく立証の容易という趣旨   の下に,西ドイツ株式法131条5項は,妹主が解説を拒絶された場合に.,自己の質問と解   説拒絶の理由を議事録に眉己戟するよう請求できると定めている。試薬の場合,株主に対し  

て.質問の機会さえも与.え.られないことが充分考えられる我国の総会の実情を反映した規定   となっでいるといえ.よう。   

上述のように.,書面通告は,質問梅行使の要件でほない。むしろこれに.よって:,株主の   正当な質問権の行使が保障されるのである。それに対しで,このような事前通望制度は,  

(341  

一郎株主により濫用される危険があるとしてその明文化に反対する意見がある。さらに進   んで,株主による質問権の悪用ないし濫用を防ぐために,質問をしたい株主にはあらかじ  

(35)  

め質問の趣意書を会社に.提出することを要求する意見もー・部濫.ある。しかし,常に番面通   告を要件とすることは,不当に株主の権利を抑圧するものであるといえる。総会場におけ  

r36)  

る臨機の質問は,許されて.しかるべきであるからである。  

(7)質問権と議長   

試案は,第一‥ニ6aにおいて,議長ほ,総会に.おいて議事の進行について秩序を乱す   者に対し,会場からの退去を命ずることができることを規定している。この規定は,総会   議長は,一・般の会議体の議長が議事進行に.閲しで有する権限を当然有しており,これを行   使することができることを前提としており,その意味では現行法の下でも解釈上こ.のよう   な退去命令権を認めることは可能であろうが,質問権を保障したことから,これを特殊株主  

が濫用することを避ける意味からも,議長の退去命令樅(会議体の秩序維持権)を明定す  

(37)  

ることが相当であるという趣旨から設けられたという。  

(38)   

試案のこの規定についての各界の意見は−・般に積極的であり,さら紅質問の許否,議事  

(89)  

整理等紅ついて議長の樅限を明確にすべきであるとする意見もある。しかし,公正な議事運  

営についての秩序違反に対しでではなく,単紅議事進行についての秩序違反だけで規制さ  

(40) れることは,議事進行と株主の質問権保障との関係で問題を生ずるだけでなく,単なる議  

(33)稲葉・前抱,商事法務827号17ぺ−ジ。  

(34)関西経済連合会,商事法務839号30ぺ・一汐,大阪工業会,商事法務839号32ぺ一汐。  

(35)東京商工会議所,商事法務851号38ぺ一汐。  

(鎚)稲葉・前線,商事法務鑓7号17ぺ−・ジ。  

(37)稲葉「株主総会一株主総会の運営(ニ)」商事法務828号13ぺ−ジ以下。  

(38)日本弁護士連合会ほか多数。  

(39)東京商工会議所,商事法務851号38ぺ−ジ。  

(40)柿崎栄治「株主総会の改善策と問題点」法療のひろば32巻4号(昭和54年)18ぺ・−・ジ。   

(11)

第52巻 第6号  

闘−β2−・   618  

事進行上の便宜が,質問擬制限の当否につき正当理由として判断される方向に廣極的に働  

(41) く蓋然性を増大させることも懸念される。特殊株主対処を名目に.した議長権限の肥大化  

は,改善されるほずの総会の形骸化をむしろ促進する結果を生みかねず,したがって退去   命令権の行使に.は,詳細な前提条件を付けるぺきであるとともに.,商法266条や266条の3  

(42)  

のような,議長の茸任を明確にする規定を置くぺきである。  

ⅠⅠⅠ株主総会のあり方と質問権  

(1)総会権限の縮小に.よる形骸化対策−一読案の立場とその批判   

試案は,株主総会の形骸化という現状認識に.基づき,質問権や提案権等の株主権の強化   を保障し,総会屋排除のための改善策を盛り込むなどして,株主総会について株主の参加   意識を高めようとしている。しかし他方において,試案は,計算寄類の確定権限を総会か  

ら取締役会に.移すなど総会の権限を逆紅絹小する方向を目指して.いる。すなわち,現状よ   りさらに積極的な業務執行への関与を株主に期待することは無理だと判断し,総会の決議   事項は絞るが,その代わり絞られた決議事項紅ついて:は実効的な審議をさせようというの  

(43)  

が試案の基本的な立場であるということができよう。   

しかし,このように−・方で質問権および提案権を明定し,他方で総会権限を縮小するこ   とによって形骸化対策を図る場合には,制度として作った質問擬なり提案権が行使される   場がなくなり実際上無意味化してしまう,という批判を免れないだろう。  

(2)決議をするための総会からコミュニケ−ションおよびディスクロ−・汐ヤ−の場とし   

ての給金ヘー経団蓮の立場と・その批判   

経団連は,試薬に対する意見の中で,経営者は,株主総会を「無言■の権威ある機関」と   認識し,周到な準備をした上で総会に屈んでおり,また経営が異常な事態でない限り,株   主から多くの発言ほ出ないのが当然である,として形骸化論を否定した後紅,アメリカの   株主総会に言及し,その実憩は,我国の株主総会と株主懇談会を合わせたものであるとす   る。そして,株式の−・般大衆への分散がすすみ,多くの株主が議決権の行使に関心を示さ   ず,多数株主の集合も物理的に不可能である,というような近代的株式会社の状況を考慮   すれば,株主総会は決議機関としてよりは報告的色彩の強いものとしで性格づけていくべ  

(41)福岡博之「議長等・特別利害関係」金融・商事判例572号45ぺ−ジ。  

(42)福岡・前掲,金融・商事判例572号45ぺ一汐。  

(43)参照,稲葉「株主総会叫株主総会の権限(一つ」商事法務825号33ぺ−・ジ。   

(12)

会社機関改正試案における株主の賀問樅   −ββ−−  

619  

(44)  

きである,といっている。   

このように決議をするための場としてよりは,コミュニケーションを通じたディスクロ   一汐ヤーの場として総会を位置づける立湯は,前述(1)の総会権限を縮′トナること紅よっ   て:形骸化に対処するという,試案が取っている甘場をさらに発展させたものとJ、うことが   できようが,また従来から経済界で唱えられていた見解でもある。たとえば,現在の総会   の運営ほ,議案の決をとる方にクェー・トがかかり過ぎるためとかく説明が簡略となり,決議   もお座なりとなるので,総会を実のあるもの紅するには,むしろ決算の確定や利益処分等   紅ついては,取締役会の権限に.移し,総会ではこ.れ紅ついて取締役に報告を義務づけ■,か   つそれ紅ついて∴充分の質疑応答が行なわれるように.株主に眉間擬を与えることに.した方が  

(45)  

よい,というような議論も同一・線上に.あるものと思われる。しかし,そのように.して与え   られた質問権が果たして中味のあるものといえるのであろうか。決議が前提となっている   からとそ質問に対する説明を充分尽くさなか・つたことに対する法的制裁が加えられるので  

(46)  

あって:,それによってまた説明義務が担保されるのである。なるはど報告総会において   も,質問権行使に対する取締役等の説明義務違反に対して,決議取消に代わるような制裁   手段が用意されておれほ,説明義務が担保され,そのような会議にもー応の意味があると   ほいえよう。しかし,果たしてそのような説明義務を担保するような措置を経営者が甘ん  

(47)  

じて受け容れるかどうかほ旋問である。加えて,そもそも,総会をコミュニケージョンを   通じてのディスクロ一汐ヤ−の場としてとらえる考え方そのものに問題がありそう紅思え   る。すなわち,このような考え方は,少数派株主を基本的に蘭祝するものである。   

株式会社においてほ所有と経営は制度的に.分離しているが,この所有と経営を連結する  

(4も)  

場が株主総会であり,株主総会の主たる存在理由もそこにある。すなわち,所有の側から   の経営のコントロ−ルの湯が株主総会である。しかし,所有の側のうちの多数派に・とって:  

は,役員任免権娠が総会多数決を通じて確保されておれば,以後,経営者と多数派との実  

(44)商事法務843号27ぺ一汐。  

(45)新春座談会「商法・証取法におけるディスクロ一汐ヤ−の位置付け」における竹中    発言,商事法務722号(昭和51年)21ぺ一汐。  

(46)前掲座談会に.おける龍田発言,商事法務722号23ぺ−ジ。  

(47)質問権の明定に反対し,正当な理由がないの紅株主紅賀問の機会を与えなかった議    長に対し相当額の過料を処すものとする試案の規定紅反対している経済界の姿勢を想   起せよ。  

(48)西原寛一イ株主総会の運営」株式会社法講座3巻(昭和31年)833ぺ一一汐。   

(13)

第52巻 欝6号   620  

−ざ・メー  

質的同一・関係の継競が保障されるので,その後の総会決議は,支配者行動の正当化のため   の儀式(そして他面ではめんどうな手続)でしかなくなり,こうして.総会の権限をできる   だけ経営者に移転しようとする動きが必然的紅生ずる。そしで総会は,−・般株主を会社に   つなぎとめておくための対話の場として.位置づけられる。しかし,このような論理は,会   社のもう十方の実質的共同所有者である少数派株主の存在を実質的に腰祝するものであ  

り,総会の本質的機能が単に会社としでの意思決定に.あるというよりも,むしろ業務執行  

(49) に対する株主としての共同利益を担保する組織的統制にあることを理解しない議論であ   る。   

ⅠⅤ 試案における質問梅の地位一結びに代えて   

以上に.おいて,試案に.盛られた質問権の内容を具体的把.検討し,また株主総会のあり方   と質問権との関連を探ってきた。その結果,試案の質問権ほ,それだけを取り出して魂る   と,様々の問題点をはら衣つつも,現行より柁−・歩前進と評価しうる内容を有するもので  

あることがわかった。したがって:,質問権の明定それ自体ほ,株主地位の強化紅役立つと  

いえよう。しかし,また質問権は,株主総会において行使される権利であるから,株主総   会のあり方,特に.その権限との閑適の申で総冶的に.とらえなければ意味がないことも確認   できた。・そのような視角から試案を全体として:見ると,試魔ほ,総会権限の縮小と取締役   会の権限の拡大による形骸化克服策を採用するなかで,質問権の明定(および提案艇の法   定)を打ち出しで釆ており,このように牒主総会の制御機能の限界がさら紅狭められた状   況下での質問権の行使は,せいぜい経営者の安易な経営姿勢に対する歯止めとしてこの意義  

(50) を認めうるにとどまるといわねばならない。以上,きめの荒い議論を展開してきたが,大  

方の御批判を仰ぎたい。(1980年1月4日脱稿)  

(49)福岡・前掲,金融・商事判例572号胡ぺ一汐。参照,柿崎・前掲,法律のひろば32   巻4号15ぺノー汐。  

(50)筆者とは問題視角が違うが同旨の意見として,久保欣哉「独禁法との関係から魂た   

試案」金融・商事判例572号142ぺ一−ジ。   

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