問題の提起II I III (1) 月
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(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 6 8 5. 行政訴訟における文書提出命令 0 ). ー 喝. 5‑ ‑. ほとんど唯一の手段であり,したがって,右のような紛争事件においては,こ の文書提出命令に当事者の実質的対等を回複させる手段としての役割が期待さ れるのは自然のとととい払」のである。行政事件訴訟法(以下行訴法と略す〉 には文書提出命令の規定がない,ただ行訴法 7条により「行政事件訴訟に関し, この法律に定めがない事項については,民事訴訟の例によると」としているの みである。ところが「現行民事訴訟法(以下民訴法と略す)上,文書提出命令 は,民訴法312条各号所定の場合,すなわち, 同法312条 I号は,当事者が訴訟 において引用した文書を自ら所持するとき,同法同条 2号は,挙証者が文書の 所持者に対しその引渡または閲覧を求めるとき,同法同条 3号前段は,文書が 挙証者の利益のため作成されたものであるとき,または同法同条 3号後段は, 文書が挙証者と文書所持者との閣の法律関係につき作成されたものなるとき, にのみ発せられると定めている。したがって文書所持者の証拠調べへの協力義 務としての文書提出義務は,証人尋問への協力義務である民訴法 2 7 1条に規定 する証人義務のごとき一般的義務ではなく,限定された範囲におい℃のみ認め られているに過ぎないのである。」明治憲法下の行政訴訟における文書提出命令. r. については,行政裁判法4 3条が, 行政訴訟手繍ニ闘志/此法律ニ規程ナキモノハ 行政裁判所ノ定ムノレ所ニ依リ民事訴訟に関スノレ規程ヲ適用ス l レコトヲ得Jと規 定され,民事訴訟法規定については一般的に非適用説がとられて'いたのである。 現 行 の 行 訴 法 は 前 記 し た ど と し 行 訴 法 7条 を 根 拠 に 民 事 訴 訟 の 例 に よ る と. (2) 竹下守夫・野村秀敏・「民事訴訟における文書提出命令(ー) J ( f 判例時報7 0 8 号J1 1 6 頁 〉 。 (3) 竹下守夫・野村秀敏・「民事訴訟における文書提出命令(一 ) J C f 判例時報. 7 0 8号J1 1 6 頁。)尚詳細な解釈については菊井維大・村松俊夫・「民事訴訟法HJ3 7 6 頁‑379 頁 。 (4) 行政訴訟の証拠方法に関しては,行政裁判所は刑事訴訟と同様に,その職権によっ て自由にこれを収集し,裁判の資料とすることができた。美濃部逮吉・「日本行政法 総論J5 9 1頁。織田寓・「日本行政法原理J6 6 8 頁 。 「是ノ、当然民事訴訟法ノ適用アノレコトヲ定メタノレモノニ非ズ。行政裁判所ニオイテ適 用スト定ムルモノアルトキハ之ユ依 Jレトス Jレノミ。故ニ,民事訴訟法中イカナノレ規定 ガ行政訴訟手続ニツイテ適用セラ VJレカハ全然随時行政裁判所ノ裁量ニ一任セラレ, 何等一般的ノ標準アノレナ νJ C 佐々木惣ー・「日本行政法論(総論) J767頁〉と説かれ ている。.
(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑ 6ー. 第53 巻 第 3号. 6 8 6. 「行政事件訴訟手続は,本来民事訴訟手続とは性格を具にするから,民事訴訟 に関する法規が本来当然には適用されるものではないことを前提として,その 性質に反しないかぎり,. 右の民事訴訟に関する法規が準用されるという趣旨. である」 と解されている。すなわち,. 行政事件訴訟特例法(以下行特法と略. す〕のごとく民事訴訟法に対する特別法ではなく,行訴法 1条は「行政事件訴 訟法については,他の法律に特別の定めがある場合を除くほか,この法律の定 めるところによる」と規定し,行政訴訟に関しては行訴法が基本法であること を明確にしている。更に,行訴法がなお自己完結i 的な手続法として完全に完成 されたものではなく,行訴法第 7条は「行政事件に関し,との法律に定めがな い事項については,民事訴訟の例による Jと規定し,法制的にも整備された民 事訴訟の例によることを示したものであるが,それは,行政事件訴訟の本質に 反しない限りにおいてであって,今後の判例学説の発展に委ね℃いるといえよ う。行政訴訟における文書提出命令も,その論点の一つである。 小稿では,今後,行訴法の本質が解明される一つの手掛として,我国の行政 訴訟における文書提出命令に関する学説及び判例について若干の試論を展開す町 るものである。. I I 行政訴訟における文書提出命令に関する学説 行政訴訟における文書提出命令に関する学説は,大別して三つに分ける. ζ. と. ができる。第ーは,行訟法第 24 条の職権証拠調を根拠として,民訴法第 3 1 2条 各号所定の場合以外にも文書提出命令を発するととができるとする学説であ る。第こには,行訟法には文書提出命令の規定がないから,行訴法 7条により 民事訴訟の例によるべきである。行訴法24 条にいう. r職権Jというのは,民事. 訴訟では当事者の『申立て』によるべきところを,その事項(申立て〉につい. (5) 杉本良吉・「行政事件訴訟法の解説J28 頁 (6) 問中二郎・「新版行政法上巻J286 頁。磯崎辰五郎・「新行政事件訴訟法について」 ( f阪大法学4 4・4 5 巻J50頁‑51頁 〉 。.
(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 行政訴訟における文書提出命令(I). 687. ‑ 7. ‑. てだけ職権による,ということである」と解し,しかも,民訴法に定める範閤 k:.限定し,限定的に解釈すべきであるとする学説である。第三は,第二の立場, すなわち行訴法 7条によりながら,しかも民訴法のごとく限定的な解釈ではな しむしろ行政訴訟・行政過程の特質に照し,文書提出命令の範囲を拡張すべ きだとする学説である。. r. 第一の学説は.,高林克巳判事である。判事は, 民事訴訟は,対等当事者たる 私人閣の権利関係に関する私法上の紛争を解決する手続であるのに対し,行政 訴訟の対象とするところは公法上の法律関係であり,その中で特に抗告訴訟は 行政庁の公権力の行使?と関する不服の訴訟であって,. ζ. の点に民事訴訟と根本. 的に異なるところがあるのであり.そこでは弁論主義が妥当するがゆえに,訴 訟上は形式的には原宮対被告という対等な当事者の対立があるごとく見えなが らも,実体法的には行政行為といろ国または公共団体と私人との閣の不対等な 法律関係を審理の対象とするものであるから,そこに本来民事訴訟とは本質的 に異なったところがあるとみるべまものである。このことは,審理において弁 論主義をとるか職権探知主義をとるかによってあまり差異のないことであると 考える。しかるに,行政事件訴訟法第 7条が『行政事件訴訟に闘し,この法律 に定めがない事項については,民事訴訟の例による』と規定しているのを理由 に,従来, ともすれば安易に,行政訴訟に民訴の規定を無批判に適用する傾向 があったのではないかと考えられる。 民事訴訟法における,文書の所持者の文書提出義務の原因はきわめて限定的 であり,・ ・・ . .( 3 1 2 条〉がこれである。文書提出命令についての右の規定が仮 H. H. に行政訴訟においてもそのまま適用されるものとするならば,よほどこれを拡. r 問題は「職権で」ということの解釈に係るわけであるが,現行法の構造会体は弁 論主義を基調とし℃いるというべきであり,職権証拠調代の本条の規定もその構造の 中で補充的な役割を担うものと解せられ,行政裁判法のように「行政裁判所ノ定ム N 所ニ依リ」民事訴訟に関する規定を適用する旨の明文もないのであるから,証拠調べ の方法・手続については, 7条により,民事訴訟の例によるべきである。すなわち, というのは,民事訴訟では当事者の「申立て」によるべきところを,その 「職権で Jr 事項(申立て)につい℃だけ職権による,というのである」と説かれる。南博方・「註 頁‑25 頁 。 釈行政事件訴訟法J24. (7).
(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑8‑. 第5 3 巻 第 3号. 6 8 8. 張解釈しないかぎり相手方所持の文書を取得しうる可能性はまずないといわざ るをえない(実務においては,民事訴訟においてさえ,文書提出命令が出され る場合はきわめて稀である。それは,民訴の規定が右のように;提出命令を求め うべぎ場合を限定していることに原因があることはいうまでもない。)現に有名 な教科書訴訟において,東京高等裁判所は,被告文部大臣のした教科書検定不 合格処分の取消を求める原告から被告に対する,教科書調査官の調査意見書, 同原稿評定書,教科用図書検定調査会の審議録,問答申書等の文書提提命令申 請を却下した。その理由とするところは,右の文書はその作成が各機関の義務 的なものであるとしても,それはいずれも内部的資料であるに止まり,その公. 1 2条第 3号(前掲〉にいう文 開は法令上義務とされておらず,民事訴訟法第 3. ‑ " 0 .ここで検 書には該当しない,というのである。私はこの決定は!不当である・ . 定しなければならないのは,行政訴訟における文書提出命令に民訴の条文その まま適用して文書提出の可否を論ずることの適否である。文書提出命令が得ら れるか否かということが訴訟の勝敗を決する大ぎな鍵となることは行政訴訟に 限十ったことではない。しかしながら,訴訟における原・被告の攻撃防禦手段の 公平といラ理由(弁論主義をとるわが行政訴訟において もやはり貫かるべきで l. ある。〉からすれば,ほとんどなんらの攻撃手段も有していない抗告訴訟におけ る原告に対して,民訴理論を厳格に適用することによって救済の途を閉してし まラようなことが果たして正当といえるかどうか,はなはだ疑問に感ぜざるを えないのである。行政訴訟の分野において,文書提出命令についての裁判例は 我が国でははなはだ少ないのであるが,前記決定のような考え方がとられるか 管り行政訴訟における個人の権利の救済というものはいちじるしく制限される ことになってくる。」と述べ,最後に総括として「イギリス十では,なお行政庁に 有利に,原告に非常に不利に取扱われているが,このことに対する批判は強く, いずれは立法により,あるいは判例によりこれが改められることが期待されて いる。ただここでも注意しなければならないことは,イギリスの判例において (8) 高林克巳・「行政訴訟における文書提内命令J( f 一橋論議65 巻 1号J1頁'‑3頁 〉 。.
(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 6 8 9. 行政訴訟における文書提出命令(I). ‑ ‑9 ‑. も,文書提出命令の拒否を正当化すべき「公益」に害があるとの認定は行政庁 がなすべきであるとしているのみであって,公益になんの影響も及ぼさないよ ろな書類の提出拒否まで認めているのではないというととである。提出さるべ き文書の種類,性質がいかなるものであるかも考察す刷るととなしまたその提 出が公益にいかなる影響を及ぼすものであるかについての思いも致さず,単に その文書が,わが民訴第 3 1 2条に該当するものであるか否かを考察するのみで 満足するがごとさは,行政訴訟の民事訴訟に対する特殊性をまったく閑却した ものとして,まさに笑うべきものであるといわねばならない。行政訴訟は,す べからく民訴の呪縛から脱却す!べきものである。私は,わが国における行政訴訟. t 乞おいて,裁判所は民事訴訟法第 3 1 2条の制限を受けることなく文書提出命令 を発しうるとする形式的な根拠は,裁判所の職権証拠調について規定した行政 事件訴訟法第 24 条にこれを求めることができると信ずる」と言われる。すなわ ち,第ーには,民事訴訟は私人聞の権利関係に関する私法上の紛争を解決する 手続であるが,行政訴訟は公法上の法律関係であってわけても抗告訴訟は行政 庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であっ て,民事訴訟と根本的に異なると I. 雷わねばならない。第こには,民事訴訟も行政訴訟も,共に原告対被告という 対等な当事者の対立があり,弁論主義がとられているが,実体的には行政行為 という国・公共団体と私人との閣の不対等な法律関係を審理の対象とする点で は第一点と同様に民事訴訟とは本質的に異なるのである。第三には,行訴法 7 条の「行政事件訴訟に関し,この法律に定めがない事項については,民事訴訟 の例による」の規定を根拠に,従来安易に行政訴訟に民訴の規定を無批判に適 用する傾向があり,その結果は行政訴訟における国民の権利保障はいちじるし. 1 2条各号における,文書の所持 く制限されるととになる。第四には,民訴法 3 者の文書提出義務の原因はきわめて限定的であり,文書提出命令について行政 訴訟にそのまま適用されるものとすれば,これを拡張解釈しない限り相手方所 持の文書を取得しうる可能性はない。第五には,訴訟における原・被告の攻撃 (9) 高林克巳・「前掲番J( f 一橋論議6 5 巻 1号J2 ゆ頁 ‑21 頁 ) 。.
(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑ 10ー. 第5 3 巻 第 3号. 6 9 0. 防禁事手段の公平といラ立場から,抗告訴訟において,ほとんどなん等の攻撃手 段も有していない原告に対し'C,民訴理論も厳格に}適用することにより,国民 の権利救済の途を閉してしまうことは,行政訴訟における個人の救済が,いち じるしく制限されることになってくる。第六には,提出されるべき文書の種類, 性質がいかなるものであるかも考察することなくその提出が公益にいかなる影. 1 2 響を及ぼすものであるかについての思いもいたさず,単にその文書が,民訴 3 条に該当するものであるか否かを考察するのみで満足するがごときは,行政訴 訟の民事訴訟に対する特殊性をまったく閑却したものといちべきである。第七 には,ヨーロツパ大陸型・英米型の行政訴訟における文書提出命令を比較検討 される(本稿ではこれを省略する〉。そのなかでも,イギリスでは,行政庁に 有利に扱われているが,批判は強く,判例は,文書提出命令の拒否を正当化す べき「公益」に害があるとの認定は行政庁のみがするが,公益に影響を及ぼさ ない書類の提出拒否までは認めてはいないと論じられている。以上の諸点、か. 1 2条の制限を受けることなく文書提 ら,行政訴訟においては,裁判所は民訴 3 条に求めることができると結ぼれるの 出命令を発する形式的な根拠を行訴法24 である。. r. 第二の学説は,武田正彦検事である。検事は, 行政事件訴訟法には文書提出 命令の規定がないから,行政訴訟における文書提出命令について は,同法 7条 i. により民事訴訟の例によって処理される。この民事訴訟の例によるとは,行政 訴訟の性質に反しないかぎり,民事訴訟に関する法規が準用されるといラ趣旨 であると解されている。モこで行政訴訟の場合には,その特質に照らし,文書. r. 提出義務の範囲が拡張されるべきか否かが問題になる」とされ, 文書提出命令 は,本来弁論主義の例外である。それが弁論主義をとる民訴法において認めら. 1 2条 1号 れたのは,民訴法 3. 2号および 3号前段の文書を見て分るように,. 当該訴訟の当事者が当該文書を証拠として提出するととを表明しているかある いは挙証者が当該文書について閲覧または引渡請求権を有しているか若しくは ( 1 0 ) 長田正彦・「行政訴訟における文書提出命令J ( f 行政訴訟の課題と展望別冊判例 タイムズ第 2号J166 頁 ) 。.
(8) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 6 9 1. 行政訴訟における文書提出命令(I). ‑11ー. 当該文書が挙証者の利益のために作成されている関係上公平の見地からその使 用が強く要請されるからにほかならない。しかして,民訴法の法律関係文書の 意義を解するにあたっては,右の趣旨が考慮されるべきであり,モちすると, 法律関係文書の範囲には自ずから限界があることを認めざるを得ないと思われ. 1 2 条が,文書提出命令の申立には文書の趣旨 (2号), る。このことは,民訴法3 証すべぎ事実 (4号〉等を明らかにすることを要すと規定し℃いることおよび 同法 316条が,当事者が文書提出命令に従わないときは,裁判所は,相手方の 文書の J性質・内容についての主張を真実と認めることがでまると規定している こと等からも窮える。…家永訴訟(損害賠償請求事件〉の第一審決定(東京地 裁昭和4 3年 9月1 4日〉が,この点について, ~民事訴訟法312条 3 号…は…前段 について具体的かつ限定的な内容規定をし,これと後段の文書とを同列に結ん で認定しているので…法律関係になんらかの意味で関係ありと考えられる事項 を記載した一切の文書というように包括的ないし,もうら的な内容のものと解 すべきではなしその法律関係と文書の記載事項との関連性や文書作成の目的 などにてらして,限定的に解すべさである』と判示していることが想起される. 12条 3号後段を適用すれば, べきである。しかして,行政訴訟において民訴法3 法令上行政庁に作成が義務づけられていない文書であって,行政庁が自己固有 の目的に使用する内部文書は,法律関係文書に当たらないと解しえよう。そこ. 1 2条を機械的に適用しなければならな で進んで,行政訴訟の場合にも民訴法 3 いかについて白は,行訴法 7条が,行訴法に規定のない事項については民事訴訟 の例によると規定していることを実定法上の根拠にして,~行政訴訟と行政過程. の特質を考慮して,多かれ少なかれその要件を大胆に緩和して解釈されること が許される』とする説がある。……..,'...行政訴訟の特質とは,要するに,行政 庁は,自ら行政が法律どおり行なわれていることを明らかにすべきであるとい うことであろう。確かに,行政訴訟の特質としてとのととが考えられる降して も,行政訴訟においても,その基調は弁論主義であることおよび次の事情から して,行政訴訟において法律関係文書の意義を解釈するにあたっては,慎重の うえにも慎重であるべきでちる。すなわち,ひとたび文書提出命令が発せられ.
(9) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑12ー. 第5 3 巻 第 3号. 6 9 2. ると,一般私人と異なり,行政庁とし℃はこれに従うほかたいと恩われること, 当該文書を提出することにより,行政に大きな影響を与えることが予想される こと……および当該文書が公開されることにより,公益ないし第三者の秘密の 保持が損われる恐れがある等の事情がそれであ. 4 1 〉…・・」と言われる。すなわ. ち,行政訴訟における文書提出命令については,行訴法 7条により民事訴訟の 例によるが,とれは,行政訴訟の性質に反しないかまり,民事訴訟に関する法 規が適用されるという趣旨である。第一に,行政訴訟の性質(特質〉とは,行 政庁は,自ら行政が法律どおり行なわれるととである。その行政訴訟の基調は 弁論主義であるとと。第二に,文書提出命令は,弁論主義の例外であって,民. 1 2条の各条項からみて, 訴法3. 当該訴訟の当事者が当該文書を証拠として提出. することを表明しているか,挙証者が当該文書について閲覧または引渡請求権 を有しているか等,公平の見地から使用が強く要請されていること,その他!民. 1 3条の文書提出申立の方式及び民訴法 3 1 6条の当事者の不提出の効果の 訴法 3 規定からも窺えるように,その提出すべき文書の範囲には自ずから限界がある ことを認めていること。第三に,家永訴訟の第一審決定を引用して,その法律 関係と文書の記載事項との関連性や文書作成の目的にてらして,限定的に解す. 1 2条 8号後段を適用すれば, べきであるとして,行政訴訟においてらも民訴法 3 行政庁が自己固有の目的に使用する内部文書は,法律関係文書に当たらないと 解するべきである。第四には,裁判所から文書提出命令が発せられると,行政 庁はとれに;従うほかはないと思われること。しかも,当該文書を提出するとと により,行政に;大ぎな影響を与え,更に,当該文書が公開される. ζ. とにより,. 公益ないし第三者の秘密の保持が損われる恐れがあるとされるのである。以上 の諸点から,行政訴訟における具体的事案にあたって,その範囲を定めるのは 至難というべきであり,行政訴訟における判例の集積が期待されるが,終局的 には,行政訴訟の文書提出義務の範囲を民訴法に定める限定的範囲l'C止めるべ きだとされるのである。. ( 1 1 ) 武悶正彦・「前掲香J(f行政訴訟の課題と展望別冊判例タイムズ第 2号J1 6 7 頁 〉 。.
(10) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 6 9 3. 行政訴訟における文書提出命令(1). ‑13‑. r. 第三の学説は,原田尚彦教授である。教授は, 正式に文書提出命令を発する 条にその直接の根拠を求めることには問題があ というのであれば,行訴法24 る」とされ「一般の解釈によると,職権証拠調べとは,当事者が証拠調べの申 立てをしなくても,それに代って裁判所が職権で証拠調べのイニ vヤテイプを とることができるとする趣旨をもつにとどまるものと解されている。この解釈 によれば,文書提出命令によって相手方に文書の提出を強制するととろまでは, 条は許していないと解さざるをえないのであって,文書提出命令の実 行訴法24 条の規定にのみ求めることは許されていないと解する 定法上の根拠を行訴法24 ほかないのである。したがって,行政訴訟におい℃も,正式に文書提出命令を 発するには,モの手掛りは,いちおラ民訴法 311条 , 312 条の規定によらざるを えない」とされ,さらに続けて,. r この法条の適用にあたって,民事訴訟で従来. 扱われてぎたのと同様の厳格な文意解釈を行政訴訟にも機械的に適用しなけれ ばならないものかどうかは,問題である。判例は,この点,行政訴訟の場合に も,民事訴訟と別段意識的に区別することなく扱ってきている。けれども,筆 者は,行政事件訴訟に民訴法 312条を類推適用する場合には,行政訴訟と行政 過程の特質を考慮、して,多かれ少なかれその要件を大胆に緩和して解釈するこ とが許されるものと考える。というのは,行政上の法律関係は民事上のそれと 実体法的性質において差異をもつから,法律関係の意味内容を広く解すべきも のであると考えるためであるが,訴訟法的にみても,行訴法 7条は,行訴法に 規定のない事項は『民事訴訟の例による』として民事訴訟法の規定の機械的適 用を要求するのではなく,行政訴訟の本質に適合した民訴法の類推解釈を認め る趣旨を示している。そこで,まず,かかる観点を踏まえて民訴法 312条の規 定をみると,同条は,一方で証拠資料の獲得という訴訟の必要と,他方では文 書所持者の私的利益とくにプライグァ νーの保護という相反する利益の調和を はかるため,文書提出義務の範囲を一定の範囲に限定しているものと解され. ( 1 2 ) 原田尚彦・「行政訴訟における文書提出命令J( f判例タイムズ・ 3 2 5 号J1 6 頁 〉 。.
(11) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ .‑14‑. 第5 3 巻 第 3号. 694. る。ととろが,他方,行政文書については,先にも述べたような特質があって, れている。しかも,行政機関には 私文書以上に公益上その公開性が強く要求さF 私人のように自己の有する情報を何らの正当な理由もないのに他人に知らせず におくという自由,つまりプライグァ νーの利益は存しないといえる。し、いか えれば,行政訴訟の実体的真実解明の要求は一般の民訴よりもいっそう大まい ものがあると同時に,行政には,公益ないし第三者の秘密保持の必要が具体的 に認められる場合のほかは,資料を関係人に秘匿する自由はないというべきな ので忘る。それゆえ,行政訴訟で行政処分の成立過程の適否が争われ,それに 関連ある文書の提出が問題とされている場合には,行政と行政訴訟の特質から. 1 2条の要件の緩和拡張解釈が行政訴訟の特質からいっても容易 いって民訴法 3 1 2条の立法趣旨に反する に許さるべきであり,かかる解釈はけっして民訴法 3 と言われる。すなわち, ものではない JJ. 第二の立場に立ちつつ,. 行訴法 7条. は,行訴法に規定のない事項については,民事訴訟の例によると規定している. 4 条の職権証拠調べの規定は,相手方に ことを根拠とされる。第一に,行訴法2 文書の提出を強制するとこるまでは認め℃いないこと。したがって,正式に文 書提出命令を発する手掛りは,民訴法3 1 1 条. 3 1 2 条によらなければならない。 第二に,行政訴訟で・は,民事訴訟で扱われているごとく厳格な文意解釈を機械 的に適用することは問題である。判例も,行政訴訟と民事訴訟とを別段意識的 に区別していないことに問題がある。すなわち,行政法上の法律関係は民事上 の法律関係と実体法的性質において差異がある。したがって,訴訟法的にも,民 訴法の規定の機械的適用を要求するのではなく,行政訴訟の本質に適合した民 訴法の類推解釈を認める趣旨であること。第三に,行政訴訟の実体的真実解明 の要求は民訴法のそれより一層大きいのではないか。わけても行政文書は,私 文書以上に公益上その公開性が強く要求されるのである。第四に,行政に は,公益ないし第三者}の秘密保持の必要が具体的に認められる場合のほかは, 資料を関係人に秘匿する自由はないというべきであるとされる。以上の諸点、か. ( 1 3 ) 原田尚彦・「前掲書J. ( i判例タイムズ・ 3 2 5 号J1 6 . 頁‑ 17 頁 〉 。.
(12) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 行政訴訟における文書提出命令(1). 6 9 5. ‑15ー. ら,行政訴訟における文書の提出が問題とされている場合,行政訴訟の特質 からいって,民訴法の要件の緩和・拡張解釈が行政訴訟の特質から許されるの であると結論される。 以上のごとく行政訴訟における学説は大別して三つに分かれる。第一の学説 条の職権証拠調べに である,行政訴訟に おける文書提出命令の根拠を行訴法24 l. 4 条の規定の趣旨は よるべきだとする見解は傾聴に値する学説である。行訴法2 厳格な意味での職権証拠調べ,すなわち裁判所が証拠方法の収集についてだけ 職権ですることができる旨を規定したもので,現行法の構造全体は弁論主義を 基調としているのであっ‑C,職権証拠調べの本条の規定もその構造の中で補充 的な役割を担うもので,行政裁判法のように「行政裁判所ノ定ム/レ所ニ依リ J 民事訴訟に関する規定を適用する明文もないのであるから,証拠調べの方法・ 手続については,行訴法 7条により,. r 民事訴訟の例による Jべきであると言う. ことになる。それは,民事訴訟のように,その審理を弁論主義に委ねるととな しこれを補充するために,職権で証拠調べを行なうことを認めているのであ る。すなわち,当事者!の主張する事実だけでは証拠が不十分で司心証がえがたい 場合には,裁判所は,職権で証拠調べをすることがでまるものとしているにす ぎないのである。しかしながら,職権による証拠調べの方法及びその手続につ いては具体的には行訴法にはなん等の規定のないところから見て,文書提出命. 4 条の職権証 令によっ℃相手方に文書の提出を強制するところまでは,行訴法2 拠調べの規定でも認めていないと解せざるをえない。したがって文書提出命令 条の規定に求めることはできないのである。すな の実定法上の根拠を行訴法24. 4条の職権証拠調べの規定に求め わち提出命令につき,その法的根拠を行訴法2 ることは無理であって,職権証拠調べというのは,当事者の申出がなくても裁判 所が職権で証拠調べができるということを意味するにとどまるものであって, 証拠調べの手続方法は民訴の例によるというほかはないのである。であるか ら残念ながらこの説を支持することはできない。次に,第二の行政訴訟にお ける文書提出命令は,行訴法第 7条により民事訴訟の例によるとして,行政訴 訟の文書提出義務の範囲を民訴法に定める範囲?と限定しようとする学説と,第.
(13) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑16‑. 第5 3 巻 第 3号. 6 9 6. 三の行政訴訟における文書提出義務の範囲を行政訴訟の本質に適合するよう拡 張して解釈する学説を検討する。 第一に,現行行政事件訴訟法の体系乃至位置づけからみて,後来の行特法と. r. は明確に民訴法との関係において相違しているととである。その一つは, 行政 事件訴訟特例法Jから「特例Jのニ字が削られ,現行行訴法は特例的性格を脱 却したととである。他は,行訴法の第一条及び第七条の規定により裏づけされ る点である。すなわち,行特法第一条は「…訴訟については,この法律?とよる の外,民事訴訟法の定めるととるによる Jと規定し,行政事件訴訟には原則と して民事訴訟法の適用があり,特例法はただ例外的にのみ適用があることを明 示していたが,とれに対して行訴法第一条は「行政事件訴訟法については,他 の法律に特別の定めがある場合を除くほか,この法律の定めるととろによる」 と規定して,行訴法が行政事件訴訟に闘して基本法であるととを明確に してい i. る。更に,行訴法七条は「行政事件訴訟に闘し, ζ の法律に定めがない事項につ いては,民事訴訟の例?とよる Jと規定し,行訴法も民訴法によって補充される のであるが,その補充は民訴法そのものが適用されるのではなし磯崎辰五郎. r. 教授によれば, 例用さ必」と言うととである。すなわち,行政事件訴訟の本 質に反しない限りにおいて準用されるという趣旨である。換言すれば,行政事 件訴訟は民事訴訟とは異なるがゆえに,民事訴訟に適用ある民訴法をそのまま これに 適用することは許されないのである。したがって,提出する文書提出義 l. 務の範囲を民訴法に定める範囲に限定して,その文書の種類・性質が民訴法に 該当す るものか否かを考察する第二の学説は,行訴法の体系乃至位置づけを閑 i. 却したものというべきである。第二に,行政事件訴訟の中心をなす抗告訴訟は その行政訴訟の特殊性に鑑み,国・公共団体(行政庁〉と私人(国民〉との閣 の不対等な法律関係を審理の対象とするもので,. 原告(私人) と被告(行政. 庁〉との聞には攻撃防禦手段の公平といラととはありえない。第二説の言うが ( 1 4 ) 緒方民澄・「行政訴訟制度の歴史的研究J7 9 頁。緒方真澄「注解行政事件訴訟法 ( I ) J( r 香川大学経済論叢42 巻 6号J6 7 頁j。 ( 1 5 ) 磯崎辰五隊・「新行政事件訴訟法につい‑C:J( r阪大法学4 4・4 5 巻J5 1 頁 。.
(14) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 697. 行政訴訟における文書提出命令(I). ‑17ー. ごとし審理をたんに弁論主義に委ねるのでは,その裁判の公平・適正を欠く ととになる。との結果,行政訴訟の目的である国民の権利を保障することがで 条の職権証拠調 きない。そのために弁論主義を補充するものとして行訴法第24 べの規定があるが,文書提出命令等を強制する点、まで認めていないとすると, 行政訴訟の本質から充分に,原告(私人)と被告(行政庁〉両当事者双方の武 器対等を実質的に保証しなければならないこと,また行政訴訟における実体的 真実解明のため民訴法 3 12条等の制限を大胆に緩和し拡大すべきであるといラ ことになる。第三に,行政文書を提出することにより,行政に大きな影響を与 えその公開されることにより,公益ないし第三者の秘密の保持が損われる恐れ があるという点であるが,行政文書は,公益上モの公開性が強く要求され,行 政機関では"私人のように自己の有する情報を何ら正当な理由もなく,他人に; 知らせずにおくことはむしろ現代においては認められないといえる。いいかえ れば,行政訴訟の実体的真実解明の要求は一般の民事訴訟よりも一層大きいも のがある。反面,行政には,公益ないし第三者の秘密保持の必要が具体的に認 められる場合のほかは,. 資料を関係人に秘匿する自由はないというべきであ. る。更に,行政訴訟で争っている場合,訴訟当事者とし‑c.,勝敗を競うばかり ではなしあくまでも行政権の主体として自己の行なった行政処分の攻撃を受 けているのであるから,行政訴訟の特殊性としての客観的真実を求める立場か ら訴訟行政庁を通じて原告国民に知りたいところには十分答えてやるべき)であ る。最少限,行政処分の適正公平を担保するために作成されたものは公開され るべきであると言いえるので怠る。 以上のとおりであるから,第一の学説である行政訴訟における文書提出命令. 4 条の職権証拠調べに求める見解は傾聴に値する学説である の根拠を行訴法2 が,現行法上具体的規定に欠け慣行・運用されていないこと,第二の学説であ る行訴法第 7条により民事訴訟の例によるとして,行政訴訟の文書提出義務の ( 1 6 ) 渡辺吉隆判事が行政訴訟担当裁判官から訴訟当事者への要望として「行政庁は訴訟. 当事者であるとはいえ,単l'L,勝敗を競うことに終始するだけでなく,あくまでも行政 権の主体として,自分の行なった行政処分の攻撃を受けているのでありますから,訴.
(15) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑ 18ー. 第5 3 巻 第 3号. 698. 範囲を民訴法に定める範囲に限定しようとする学説は共に妥当でない。第三の 学説である行政訴訟における文書提出義務の範囲を行政訴訟法体系及びその本 質に適合するよう拡張することができるとする学説が正当であると考える。. 訟の機会を通じて,法律上の主張・立証責任のいかんにかかわらず,原告の知りたい ところには十分答えてやる'べきだ川 Jとの発言は注目される。「行政訴訟の実務と理論 fジコリスト 527 号J41 頁 〉 。 研究会」で述べ℃いる。 (.
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