数理解析学4・講義ノート
第3回
(2020
年10
月21
日(
水)
配信分)
4 Rosenberg-Toubiana
の仕事極小曲面の構成もしくは存在証明において、避けて通れないのは次の項目である。
(1)
定義域を決める。指定された種数と
ends
の個数、さらに追加の条件に対して、どのcompact Riemann
面を選ぶか、さらにどこに穴を空けてends
とするか? すなわち、曲面が属する共形類 をどう選ぶか?(2)
指定されたends
を実現する。埋め込まれた
ends
とするには、ds
の発散の位数が− 2
となるよう、g
とη
の各ends
における 位数を指定する。ends
の大きさを決めるには、さらにその係数を調節する。(3)
計量が退化しないようにする。
deg g
がぎりぎりでないと、分岐点が発生してしまう。大雑把に言うと、例えばη
の零 点がg
2η
の零点とならないためには、g の極がη
の零点である必要があるが、g のdegree
が小さいと、これができない。実はこれが結構面倒。(4)
そして、そもそも曲面がwell-defined
各閉曲線に対し、積分の実部が消えている。これは
ends
周りでは留数が実数であるこ とに相当している。その他1
次homology
群の生成元について、周期が消えていること が必要なので、一般には種数が大きいほど確認事項が増えるし、対称性が高いほど自然に クリアされやすい傾向がある。このことを、あまり新しい論文ではないが、極小
herisson
に関するPlateau
問題を扱っ た、Rosenberg-Toubianaの結果を例に見てみよう。どう言う論文か、簡単に紹介しておくと、全曲率
4π
の完備極小曲面を極小herisson
と1
呼ぶ。これはすなわち
deg g = 1
ということで、g
自身を座標にとってしまえば、C ˆ
上で 定義されたg(z) = z
を満たす完備極小曲面と言うことであり、catenoid
とEnneper
曲面 以外は必然的に分岐点を持つ。一般に二つの完備極小曲面
X
1, X
2 があったとする。今、C ˆ ∋ z
に対し、g
1= z
となるX
1 の点全てとg
2= z
となるX
2 の点全ての座標を足し合わせたものに対応させる写像を 考える。それらの点がg
1, g
2 の分岐点でないような一般的な点においては、g
1, g
2 が局所 座標としてとれて、その近傍においては、X
1, X
2 共に、g(z) = z
を満たす曲面となって おり、結局上記の和はη
達の和によって実現される。従って、この和は極小herisson
を 与える。特に、極小
herisson
全体は、この演算によって群となる。と言うわけで、極小herisson
についていろいろ調べているのだが、その中に、次のような定理がある。定理
4.1.
任意のv
1, . . . , v
n∈ S
2 に対し、G(q
j) = v
j を満たすn
個のcatenoid
型ends
を持つ極小herisson
が存在するための必要十分条件は、∑
nj=1a
jv
j= 0
を満たすa
1, . . . , a
n∈ R
が存在することである。(と書かれているが、実際にはもっと強く、大きさ
a
1, . . . , a
n のends
が実現されることを示している。)(証明) 必要なことは
flux
公式から直ちにわかる。十分であることを示す。この定理では、
compact Riemann
面としては、Riemann
球面C ˆ
を選んでいる。
g(z) = z
を仮定してよい。すると、q
j= σ(v
j)
でなければならない。と言うわけで(1)
は自動的に決まる。それと同時に(3)
は始めからあきらめている。η =
∑
nj=1
{ b
j(z − q
j)
2+ c
jz − q
j}
+ f(z)
dz
但し
f (z)
は正則関数とする。このように選んだのは、(2)
のためである。ここで、ds = (1 + | g |
2) | η | ≥ max {| η | , | g
2η |}
で、
η =
∑
nj=1
{ b
j(z − q
j)
2+ c
jz − q
j}
+ f (z)
dz
=
∑
nj=1
{ b
jz
(z − q
j)
2+ c
jq
jz − q
j}
+
∑
n j=1c
j+ zf(z)
dz z
2
が
z = ∞
で発散しないためには、∑
n j=1c
j= 0, f(z) = 0
でなければならない。((注)
z
−1= w
とおけば− z
−2dz = dw.
よってdz
z = − zdw = − dw w
より、dz
z
はz = ∞
で1
位の極を持つ。)η =
∑
nj=1
{ b
j(z − q
j)
2+ c
jz − q
j}
dz
より、
zη =
∑
nj=1
{ b
jz
(z − q
j)
2+ c
jz z − q
j}
dz
=
∑
nj=1
{ b
jz − q
j+ b
jq
j(z − q
j)
2+ c
j+ c
jq
jz − q
j}
dz,
さらに、
z
2η =
∑
nj=1
{ b
jz
2(z − q
j)
2+ c
jz
2z − q
j}
dz
=
∑
nj=1
{
b
j+ 2b
jq
jz − q
j+ b
jq
j2(z − q
j)
2+ c
j(z − q
j) + 2c
jq
j+ c
jq
j2z − q
j}
dz
=
∑
nj=1
{ b
jq
j2(z − q
j)
2+ (2b
jq
j+ c
jq
j2)q
jz − q
j}
+
∑
n j=1(2b
jq
j+ c
jq
j2) +
∑
n j=1(b
j+ c
jq
j)z +
∑
n j=1c
jz
2
dz z
が
z = ∞
で発散しないためには、∑
n j=1(2b
jq
j+ c
jq
j2) = 0,
∑
n j=1(b
j+ c
jq
j) = 0,
∑
n j=1c
j= 0
でなければならない。
(2)
におけるends
の大きさの指定と、(4)
におけるwell-defined
を両立させるために は、次の連立方程式を満たせばよい。留数が実数となることが、well-defined
に対応し、実数の値が
ends
の大きさを決める。H
1( ˆ C) = { 0 }
なので、他に確認事項は無い。Res
qj(1 − z
2)η = c
j− (2b
jq
j+ c
jq
j2) = − b
j{ 2q
j− (1 − q
j2)c
j/b
j} = a
j· 2Re q
j| q
j|
2+ 1 Res
qj√
− 1(1 + z
2)η = √
− 1 { c
j+ (2b
jq
j+ c
jq
j2) } = √
− 1b
j{ 2q
j+ (1 + q
j2)c
j/b
j} = a
j· 2Im q
j| q
j|
2+ 1 Res
qj2zη = 2(b
j+ c
jq
j) = 2b
j{ 1 + q
jc
j/b
j} = a
j· | q
j|
2− 1
| q
j|
2+ 1
3
これを
b
j, c
j について解くと、b
j= − a
j2 , c
j= a
jq
j| q
j|
2+ 1
を得る。 (証明終)
ここで、上の
3
条件は0 =
∑
n j=1(
− a
jq
j+ a
j| q
j|
2q
j| q
j|
2+ 1
)
=
∑
n j=1a
j− q
j| q
j|
2+ 1 0 =
∑
n j=1(
− a
j2 + a
j| q
j|
2| q
j|
2+ 1
)
= 1 2
∑
n j=1a
j| q
j|
2− 1
| q
j|
2+ 1 0 =
∑
n j=1a
jq
j| q
j|
2+ 1 =
∑
n j=1a
jq
j| q
j|
2+ 1
で、
flux
公式そのものに他ならない。これは∞
に余分なend
が発生しないことを条件に 課していることと同等であると考えられる。参考文献