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サブプライムローン融資におけるリスクの重層化

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サブプライムローン融資におけるリスクの重層化

――独立系金融会社を中心に――

豊 福 裕 二

はじめに

米国においてサブプライムローン問題が顕 在化した 2007 年から,すでに5年あまりが 経過した。問題の影響が拡大し,また長期化 するもとで,サブプライムローン問題の発生 原因を巡って,この間,米国内を中心に数多 くの研究が蓄積され,その検証が進められて きた。なかでも,いかなる特徴を有する融資 において債務不履行が急増したのか,という 点については,個別の融資案件に関するミク ロデータを用いた分析が進んだ結果,今日で は一定の共通認識ができつつあるといえ (1)。一連の研究が示しているのは,サブプ ライムローンにおいて,複数のリスク要因が 幾重にも積み重なるリスクの重層化(risk layering)と呼ばれる事態が進行したこと,

そして,それらが住宅価格の下落を契機とし て一度に顕在化したことが,債務不履行の大 量発生の原因であるということである。

しかしながら,サブプライムローンの借り 手についての分析が進む一方で,貸し手側の 要因,すなわち,サブプライムローンの融資 を巡る金融機関間の競争関係や,ローンの証 券化を通じた資本市場との関係,およびそれ らがリスクの重層化に及ぼした影響などにつ いては,依然として十分な解明がなされてい

ないのが実状である。サブプライムローンの 融資には,独立系の金融会社に加えて,欧米 の大手銀行持株会社およびその子会社が積極 的に関与していたことが知られているが,果 たしてこれらが一様に高リスク融資に傾斜し ていたのかどうか。また,サブプライムロー ン問題の発生後,独立系金融会社の多くが経 営破綻に陥り,その高リスク融資に特化した 経営体質が問題とされることになるが,なぜ 金融会社はそのような高リスク経営に傾斜し ていくことになったのか。これらの問いに答 えることが,本稿の課題である。

以下では,まずサブプライムローン市場の 形成過程について,金融機関間の競争関係に 注目しつつ振り返ったうえで,次に,金融機 関別のサブプライムローン融資の特徴につい て,住 宅 モ ー ゲ ー ジ 情 報 開 示 法(Home Mortgage Disclosure Act:HMDA)の開示 データを用いて分析を行う。筆者はすでに別 稿において,同データを用いてサブプライム ローンの借り手の特徴を明らかにした(2)。本 稿では,同じデータについて貸し手側からの 分析を試みる。最後に,ケーススタディとし てニューセンチュリー・ファイナンシャル社 を取り上げ,その融資の実態を明らかにする。

独立系の金融会社であり,サブプライムロー ン専業であった同社の融資行動は,サブプラ

(2)

イムローン市場におけるリスクの重層化 の実態を明らかにするうえで,好個の素材を 提供しているからである。

1.サブプライムローン市場の形成過

1)サブプライムローンの起源

サブプライムローンとは,sub(下位の)

prime(最優遇)のローン,すなわち信用

度が劣るため,最優遇の条件では融資できな い借り手に対するローンの総称である。具体 的には,金融機関が融資を行う際,借り手の 信用度に応じて A,A−,B,C,D といった 格付けがなされるが,このうちの A がプラ イム,A−以下がサブプライムにあたる。

また,近年は借り手のクレジット・スコア(信 用度点数)を用いた与信審査が普及しており,

最も代表的なフェア・アイザック社の FICO スコアでは,概ね 620 から 660 点以下がサブ プライムとされる。ただし,これはあくまで 目安であり,プライムとサブプライムの境界 について,金融機関の共有する客観的,統一 的な基準があるわけではない。なお,プライ ムとサブプライムの中間区分としてオルト A(Alternative A)と呼ばれる格付けも存在 するが,広義にはオルト A までをサブプラ イムに含める場合もある。

米国においてサブプライムローンという商 品が登場するのは 1980 年代以降のことであ る。それ以前にも,信用度の低い個人向けの ローンという意味では,連邦政府の信用保証 にもとづくローンなどが存在していたが,借 り手の信用度に応じて金利を上乗せするタイ プのローンは存在しなかった。各州の州法に

より,この種の高金利ローンの販売が規制さ れていたからである。

しかし,1980 年代以降に進展した一連の規 制緩和や制度改革が,こうした制約を取り払 う役割を果たした。一般的には,以下の3つ の法律がその契機となったといわれている。

すなわち,1980 年に成立した預金金融機関規 制緩和・通貨管理法(Depository Institutions Deregulation and Monetary Control Act:

DIDMCA)と 1982 年 の代替的モーゲージ取 引均等法(Alternative Mortgage Transaction Parity Act:AMTPA),及び 1986 年の税制 改革法(Tax Reform Act of 1986)である(3)

DIMDCA は預金金融機関の金利規制の撤 廃と業務規制の緩和を目的としたもので,こ れにより,第1抵当の住宅ローンに対する上 限金利規制が撤廃されるとともに,州法に対 する連邦法の優越から,あらゆる預金金融機 関は州法の定めた上限金利規制を超えて金利 を設定できるようになった。次に AMTPA は,住宅ローンの返済方法として,変動金利 やバルーン返済,マイナス償還(negative amortization)などを認めたもので,その後,

多様な住宅ローン商品が登場する契機となっ (4)。最後に,税制改革法は,それまで認め られていたクレジットカードや自動車ローン などの利子控除を廃止し,一方で住宅を担保 とするローンについては引き続き利子控除を 認めたもので,住宅の所有者に対し,従来の 消費者ローンよりも住宅を担保とするローン を割安にする役割を果たした(5)

これら一連の制度改革は,サブプライム ローンが登場する制度的条件を整えたといえ るが,それが直ちにサブプライムローン市場 の拡大をもたらしたわけではない。米国にお

(3)

いてサブプライムローンが目立ち始めるのは 1990 年代に入ってからであり,またそれが急 拡大するのは 2000 年代以降である。図 1-1 は,サブプライムローンの組成額と,代表的 な政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)

レートの推移を示したものである。それによ ると,両者の動向によってサブプライムロー ン市場の拡大過程にいくつかの画期を認める ことができる。第1に,市場金利の低下とと もにサブプライムローンが目立ち始め,一般 に第1次ブームと呼ばれる 1990 年代の時期,

第2に,2000 年の IT バブル崩壊後,市場金 利の大幅な低下によって再び市場が拡大に転 ずる 2000 年から 2003 年の時期,第3に,市 場金利の上昇にも関わらず,市場が急拡大し,

第2次ブームと呼ばれる 2004 年から 2006 年 の時期である。以下,金融機関の動向に注目 しつつ,各時期の特徴をみていくことにした い。

2)サブプライムローン市場の形成と第1 次ブーム(1990 年代)

サブプライムローンといえば,一般には住 宅購入目的のローンというイメージが強く,

実際,2007 年以降に問題となったのはこうし たローンである。しかし,サブプライムロー ン市場の形成期において,その主流となった のは借り換え目的のローンであり,なかでも キャッシュアウト・リファイナンスと呼 ばれる借り換えがその大半を占めていた。

キャッシュアウト・リファイナンスとは,借 り換えを行う際,住宅の純資産(住宅資産価 値と負債額の差額)を担保に追加的な借り入 れを行い,それを既存債務の返済や消費に充 当するものである。つまり,クレジットカー ド・ローンや自動車ローンなどの返済が滞り,

プライムローンでの借り入れが困難になった 人々が,サブプライムローンを活用して既存 の債務を住宅を担保とするローンに置き換え たわけである(6)

図 1 -1

サブプライムローンの組成額の推移

出所:Inside Mortgage Finance Publications [2009], p. 4.

FF レートは,U.S. Census Bureau,Stastistical Abstract of the U S 2009.

(4)

当時,このような借り換えローンの供給を 中心的に担ったのは,S&L(貯蓄貸付組合)

や商業銀行のような伝統的な預金金融機関で はなく,ノンバンクの金融会社であった。そ の大半は,大手銀行持株会社などの傘下に属 さない独立系の金融会社であるが,こうした 会社がサブプライムローン市場に参入できた 背景には,上述の制度的条件に加え,以下の ような技術革新が存在していた。

第1に,上述したクレジット・スコアリン グの普及である。これは,過去の信用データ の統計的分析にもとづき,借り手の信用履歴 等から信用度点数を算出して,そのリスクに 応じて金利を設定するというものである。こ れにより,与信審査が簡素化され,代理店や ブローカーが融資を仲介することが容易に なった。実際,金融会社の多くはブローカー から融資を買い取る卸売業務を主力としてお り,ブローカー経由の融資の割合は,2000 年 には約 55%を占めるにいたった(7)

第2に,住宅ローンの証券化手法の発展で ある。米国における住宅ローンの証券化は,

従来,連邦抵当金庫,連邦住宅金融抵当金庫 と い っ た 政 府 関 連 企 業 体(Government Sponsored Enterprise:GSE)が主要な担い 手となってきたが,政府の監督下にある GSE には債権の買い取りに一定の基準があり,サ ブプライムローンのような高リスク債権を証 券化することはできなかった。しかし,1990 年代以降,高リスクのローン債権を担保に,

格付けや利率の異なる複数の債券を発行して リスクを分散する優先劣後構造と呼ばれ る手法が発展し,これによって GSE を通さ ずとも民間の発行主体によってサブプライム ローンを証券化することが可能になった(8)

資金調達力の乏しい金融会社は,融資を行っ た後直ちに債権を証券化することで,貸し倒 れのリスクを投資家に転嫁するとともに,新 たな融資のための資金を獲得することができ た。

初期のサブプライムローンには,後に問題 化するような数年後に返済額が急増するタイ プのものは少なく,借入期間 30 年 の固定金 利ローンが中心であった。しかし,1990 年代 の後半になると,市場への新規参入が相次い だことで貸し手間の競争が激化し,金融会社 は次第にリスクの高い低所得層やマイノリ ティへと融資を拡大していった。民間調査会 社である LoanPerformance 社のデータを用 いた分析によると,この時期,変動金利型の ローンが増加すると同時に,借り手のクレ ジットスコアが顕著な低下傾向を占めている ことが確認できる(9)

しかし,こうした高リスク融資への傾斜は,

必然的にサブプライムローンの債務不履行率 の上昇を招いた。折しも,1997 年 のアジア通 貨危機と翌年のロシア財政危機が重なり,高 リスク債券への投資が減少した結果,金融会 社が発行する証券は敬遠され,金融会社の多 くは,資金調達の行き詰まりによって倒産す るか,大手金融機関の傘下に入ることを余儀 なくされた。後にサブプライムローン関連で 巨額の損失を抱えることになる HSBC や CITI といった欧米の大手銀行持株会社が,

当時の金融会社の上位企業を次々に買収し,

傘下に収めるのはこの時期のことである。

3)IT バブルの崩壊と超低金利(2000∼

2003 年)

債券市場の暴落に伴って株式市場に流入し

(5)

た国際的な資金は,IT 関連株の投機的な高 騰と急落を招き,いわゆるIT バブルの崩 壊を引き起こした。FRB は段階的な利下げ を行い,FF レートは 6.5%から最終的に 1.0%へと大幅に引き下げられた。歴史的な 低金利政策に伴う住宅ローン金利の低下は,

低利の借り換え需要と,住宅の購入あるいは 投資を目的とする需要の両面において住宅 ローン市場の拡大をもたらした。同時に,IT バブル崩壊後に新たな高利回り商品を求めて いた機関投資家は,サブプライムローン担保 証券やその派生商品への投資を拡大し,住宅 ローンへの資金供給を支える役割を果たし た。

また,この時期には,固定金利型に変わっ て変動金利型ローンの割合が拡大したほか,

利子オンリーローン短期固定型変動金

利ローンなど,当初数年間はきわめて低い 返済額で,後に返済額が大幅に切り上がる新 型の住宅ローン商品が急速に普及した。これ らの商品は住宅購入を目的としたものである

が,長期保有というよりも投資目的の短期保 有を前提としたものであり,その主たる対象 はプライムの資格を有する投資家や富裕層で あった。サブプライムローンにおいても,低 金利を背景に住宅購入目的の割合が上昇した が,依然としてその中心はキャッシュアウト を目的とした借り換えであった。

一方,サブプライムローンの貸し手の動向 をみると,この時期には上位企業への集中が 進み,貸し手の寡占傾向が顕著となった。図 1-2 は,サブプライムローン組成額上位企業 によるシェアの推移を示したものであるが,

1990 年代後半以降上昇傾向にあったシェア が,2000 年代に入ってさらに高まり,その後 高止まり傾向にあることが確認できる。これ ら上位企業には,1990 年代末の第1次ブーム の終焉を生き延びた一部の独立系金融会社 と,上位企業の買収によって市場に参入した 大手銀行持株会社が含まれていた。

図 1 -2

サブプライムローン組成額上位企業によるシェア

の推移

出 所:Inside Mortgage Finance Publications [2009], pp.

214-227 より作成.

(6)

4)金融引き締めと第2次ブーム(2004∼

2006 年)

歴史的低金利に伴う住宅需要の増大は,一 方で,投機的な取引の増加と相まって住宅バ ブルを引き起こし,住宅価格は物価上昇率を 上回る高騰を示した。直接的にはこうした住 宅バブルへの対処を意図したものではない が,2004 年6月以降,FRB はそれまでの低 金利政策を転換し,段階的な利上げを実施し (10)。しかし,その結果,サブプライムロー ン市場は縮小するどころか,むしろ 2004 年 以降に拡大傾向を示し,住宅ローン全体に占 める割合は,2003 年 の 7.9%から 2004 年の 18.5%へと顕著な上昇を示した(11)。その背景 には次のような要因が存在していた。

第1に,サブプライムローン債権に対する 資本市場からの需要の存在である。2000 年 代初頭の低金利下で発行額が急増したサブプ ライムローン担保証券やその派生商品は,高 利回り商品を求める機関投資家によってすで に運用対象に組み込まれていた。膨れ上がっ た投資家の需要に応えるため,投資銀行は証 券の担保となるサブプライムローン債権を金 融会社等から買い集め,さらにリーマンブラ ザーズのような一部の企業は自ら融資業務に まで乗り出した(12)

第2に,こうした資本市場からの旺盛な需 要と,一方での金利上昇に伴う借り換え需要 の減少に直面した金融機関は,住宅購入目的 のローンに新たな需要を見出した。金融機関 は,元々投資家や富裕層向けの商品であった 新型住宅ローン商品をアフォーダブル商 ,すなわち低負担(affordable)で住宅を 購入できる商品として売り込むようになり,

より信用度の低いオルト A 層やサブプライ

ム層へと顧客層を拡大した。

以上のような資金供給側の事情は,必然的 に住宅ローンの審査基準のなし崩し的な緩和 をもたらした。審査に際して所得証明書類は 不要となり,購入対象の住宅の資産価値に対 する融資額の比率(loan to value ratio:LTV)

は引き上げられ,さらに頭金部分を第2抵当 で貸し付けるピギーバック・ローンと呼ばれ る 商 品 ま で 登 場 し た。表 1-1 は,Loan Performance 社のデータをもとに,プライ ム,オルト A,サブプライムのそれぞれにつ いて,変動金利型ローンの特徴の推移を示し たものである。いずれも 2004 年以降,購入 目的の割合が目立って上昇するとともに,ピ ギーバック・ローンの併用割合も上昇し,そ の 結 果,CLTV(combined loan to value ratio),すなわち第1抵当と第2抵当を合算 した総貸付比率も上昇したことがわかる。と くに CLTV90%以上の割合はオルト A とサ ブプライムにおいて顕著である。また,利子 オンリーローンについてみると,プライムか らオルト A,サブプライムへと,順を追って その利用割合が上昇していく様子がみてとれ る。なお,FICO スコアをみると,とくにサ ブプライムローンにおいてその上昇傾向が目 立っている。これは,信用履歴という点では より信用度の高い借り手の割合が増大したこ とを示しているが,逆にいえば,LTV などそ の他のリスク要因が増した結果,相対的にク レジットスコアの高い借り手しか融資を受け られなくなったことを示しているといえる。

以上のように,第2次ブーム期のサブプラ イムローン市場においては,購入目的でかつ 利子オンリーローン,ピギーバック・ローン との併用といった,リスク要因が幾重にも重

(7)

なるリスクの重層化(risk layering)と呼 ばれる事態が進行した。では,個々の金融機 関は,こうしたリスクの重層化にいかに関 わっていたのだろうか。章を改めてみていく ことにしたい。

2.金融機関別のサブプライム融資の 特徴

1)第2次ブームの担い手の特徴

第1次ブームから第2次ブームへの移行期 において,サブプライムローンの担い手の再 編が生じ,市場の寡占化が進んだことはすで に述べた。そこで改めて,サブプライムロー ン組成額の上位企業とその変遷をみたのが表 2-1 である。それによると,まず 1998 年時点 での上位企業のほとんどがその後買収ないし 倒産によって姿を消していること,次に,こ

の時期に上位企業を子会社化した HSBC や CITI といった大手銀行持株会社が,2006 年 時点で上位を占めていること,さらに,2006 年にはこれら大手銀行持株会社と並んで,

New Century Financial や Countrywide Financial といった独立系の金融会社が上位 を占めていることが確認できる。これらの データは,大手銀行持株会社も独立系の金融 会社も,一様に高リスクのサブプライムロー ンに深く関与していたことを示しているよう にみえる。そこで,金融機関の融資データを 分析することで,改めてこの点を検証してみ たい。

本稿で分析に用いるデータは,住宅モー ゲ ー ジ 情 報 開 示 法(Home Mortgage Disclosure Act:HMDA)にもとづく開示デー タである。HMDA とは,1975 年に金融機関 による融資差別,すなわち黒人などのマイノ

表 1 -1

格付け別の住宅ローン(変動金利型)の特徴の推移

(単位:%)

2001 2002 2003 2004 2005 2006

プライムローン

購入目的の割合 32 28 34 52 56 49

利子オンリーローンの割合 25 50 52 71 83 90

ピギーバック・ローンの併用割合 0 1 10 23 27 30

CLTV90%以上の割合 3 2 7 15 17 18

FICO スコア 729 733 733 734 739 737

オルト A ローン

購入目的の割合 47 46 50 61 64 60

利子オンリーローンの割合 17 30 57 76 83 82

ピギーバック・ローンの併用割合 2 4 24 39 48 53

CLTV90%以上の割合 16 15 27 40 45 49

FICO スコア 704 707 708 709 713 710

サブプライム ローン

購入目的の割合 34 33 35 40 46 46

利子オンリーローンの割合 0 1 6 21 33 20

ピギーバック・ローンの併用割合 4 4 11 20 29 34

CLTV90%以上の割合 25 27 38 45 51 56

FICO スコア 598 605 613 619 626 623

注:CLTV=combined loan-to-value ratio(第1抵当と第2抵当を合わせた総貸付比率)

出所:Goodman, Li, Lucas, Zimmerman and Fabozzi [2008], p. 19.

原資料:Loan Performance

(8)

リティを意図的に融資対象から排除する行為 を是正する目的で制定されたもので,同法に より,大都市統計区域内で融資実績のある金 融機関は,個々の融資案件について借り手の 居住地区や所得,人種等の情報を開示するこ とが義務づけられた。さらに 2004 年からは,

年率換算した住宅ローンの金利(annual pricing rate:APR)が,償還期限が同等の財 務省証券の金利を3ポイント(第2抵当ロー ンの場合は5ポイント)以上上回るローン(以 下,高金利ローンと略す)については,その

貸付金利を開示することが求められた。すで に別稿で詳しく述べたように,この高金利 ローンとサブプライムローンを同一視するこ とはできないが,サブプライムローンの大半 は高金利ローンに含まれると考えられること から,高金利ローンの特徴を分析することで,

サブプライムローンの融資実態に迫ることは 可能である(13)

HMDA データには,個々の融資案件ごと に貸し手の情報(金融機関コード)が含まれ ており,金融機関コードをもとに,金融機関 表2-1

サブプライムローン組成額上位企業とその変遷

(単位:百万ドル)

組成額 備考

19 98

1 Household Financial Services 11,050 2003年に親会社のHousehold InternationalをHSBCが買収 2 Associates First Capital 10,475 Citigroupにより買収

3 ContiMortgage Corp 7,695 2000年5月に倒産

4 IMC Mortgage Company 6,500 債権をCitiFinancial Mortgageに売却 5 The Money Store 6,317 First Union Corpにより買収 6 Green Tree Financial 5,216 Consecoにより買収 7 Advanta Mortgage 4,978

8 GMAC/RFC 4,887

9 Commercial Credit Co. 4,840

10 Firstplus 4,600 1999年2月に倒産

上位10社計 66,557

総計に占める割合(%) 44.4

総計 150,000

20 06

1 HSBC Finance 52,800

2 New Century Financial 51,600 2007年4月に連邦破産法11条申請 3 Countrywide Financial 40,596 2008年1月にBank of Americaにより買収 4 CitiMortgage 38,040

5 WMC Mortgage 33,157 GEが2004年に買収。2007年に業務停止 6 Fremont Investment & Loan 32,300 2008年6月に連邦破産法11条申請

7 Ameriquest Mortgage 29,500 2007年8月末に業務停止。債権はCitiに売却。

8 Option One Mortgage 28,792 2007年12月に業務停止。債権はウィルバー・ロス氏に売却。

9 Wells Fargo Home Mortgage 27,869

10 First Franklin Financial Corp 27,666 Merrill Lynchの子会社。2008年3月に業務停止。

上位10社計 362,320

総計に占める割合(%) 60.4

総計 600,000

出所:Inside Mortgage Finance Publications [2009] p. 214,p. 225をもとに筆者作成.

(9)

名,本社所在地,親会社名,監督機関の別な どを知ることができる。周知の通り,米国で は金融機関の業態やその根拠法(州法か国法 か)によって主たる監督機関が異なっており,

例えば,国法銀行は通貨監督官庁(OCC),連 邦準備制度に加盟する州法銀行は連邦準備制 度(FRS),非加盟の州法銀行は連邦預金保険 公社(FDIC),貯蓄金融機関は貯蓄金融機関 監督庁(OTS)などとなっている(14)。預金を 扱わない金融会社の場合,基本的には州法の 規制下にあるが,連邦法によって住宅都市開 発省(HUD)の規制も受けるため,HDMA では HUD の監督下に分類されている。ただ し,銀行持株会社傘下の金融会社の場合,監 督機関は FRS となる。

また,HDMA データでは,個々の融資案 件をその利用目的によって,①住宅購入,② 住宅修繕,③借り換えの3つに区分している。

上述の通り,このうち最もリスクが高いと考 えられるのが住宅購入目的のローンである。

図 2-1 は,これらの監督機関別,利用目的 別に,金融機関の融資案件に占める高金利

ローンの比率をみたものである。それによる と,いずれの利用目的においても高金利比率 が高いのが,HUD 監督下の金融機関であり,

次いで高いのが FRS 監督下の金融機関と なっている。ただし,FRS の場合住宅購入目 的での高金利比率はそれほど高くなく,OTS や FDIC 監督下の金融機関と同等の比率と なっている。以上の結果は,独立系の金融会 社における高金利ローンへの特化度の高さを 示す一方で,FRS 監督下の銀行持株会社にお いても,その子会社を通じて高金利ローンの 融資が積極的に行われた可能性を示唆してい る。そこで次に,さらに立ち入って個別金融 機関の融資動向をみていくことにしたい。

2)融資額上位企業における融資の特徴 ここでは,表 2-1 で 2006 年の組成額上位 4社について,2006 年の HMDA データをも とに,その融資の特徴をみていくことにする。

すなわち,銀行持株会社の傘下企業である HSBC Finance と CitiMotgage の2社,およ び 独 立 系 金 融 会 社 で あ る New Century

図 2-1

金融機関の監督機関別・利用目的別の高金利ローン比率

出所:FFIEC,HMDA Raw Data 2006, より作成.

(10)

Financial,Countrywide Financial の2社で ある。ただし,HSBC と CITI については,

他の傘下企業と比較するため,グループ全体 の 融 資 動 向 を,ま た New Century と Countrywide についても,複数の部門を所有 していることから,それら全体の動向をみる ことにする。

まず表 2-2,表 2-3 によって,銀行持株会 社 2 社 の 融 資 動 向 を み て み よ う。表 は,

HDMA のデータから,1∼4 世帯住宅向けの 非政府保証住宅ローンのうち,自ら組成した 融資のみに限定し,それを金融機関別に集計 したものである。ただし,銀行持株会社の傘 下企業でも,融資件数がごく少ないものは省 略してある。

それによると,まず HSBC グループでは,

全体としては借り換え目的の融資の割合が高 い が,Decision One Mortgage や HSBC Mortgage Corporation では購入目的の割合 が高くなっている。しかし,同じ購入目的で も,HSBC Mortgage Corporation では高金利 比率が 7.8%と低いのに対し,Decision One Mortgage では 93.7%ときわめて高く,ほぼ 高金利ローンに特化している様子が確認でき る。なお,Decision One Mortgage は,HSBC Finance の 前 身 で あ る Household International が 1999 年に買収した金融会社 である。

次に CITI グループについてみると,全体 としては住宅修繕や借り換え目的が中心であ り,住 宅 購 入 目 的 の 割 合 が 高 い の は CitiMortgage のみである。しかし,その高金

表2-2

HSBCグループの主要企業別・利用目的別の住宅ローン件数及び高金利比率

通常金利 高金利 目的別構成(%) 高金利比率(%)

BENEFICIAL COMPANY LLC 36,388 62,216 98,604 100.0 63.1

住宅購入 6 50 56 0.1 89.3

住宅修繕 26,360 24,598 50,958 51.7 48.3

借り換え 10,022 37,568 47,590 48.3 78.9

HFC COMPANY LLC 20,721 41,461 62,182 100.0 66.7

住宅購入 39 867 906 1.5 95.7

住宅修繕 12,550 18,184 30,734 49.4 59.2

借り換え 8,132 22,410 30,542 49.1 73.4

DECISION ONE MORTGAGE 5,721 73,379 79,100 100.0 92.8

住宅購入 2,812 41,869 44,681 56.5 93.7

住宅修繕 1 11 12 0.0 91.7

借り換え 2,908 31,499 34,407 43.5 91.5

HSBC MORTGAGE CORPORATION 42,282 2,804 45,086 100.0 6.2

住宅購入 21,902 1,851 23,753 52.7 7.8

住宅修繕 2,935 129 3,064 6.8 4.2

借り換え 17,445 824 18,269 40.5 4.5

合計 105,112 179,860 284,972 100.0 63.1

住宅購入 24,759 44,637 69,396 24.4 64.3

住宅修繕 41,846 42,922 84,768 29.7 50.6

借り換え 38,507 92,301 130,808 45.9 70.6

注:1∼4世帯住宅向けの非政府保証ローンのうち,自ら組成したものの融資件数.

出所:FFIEC,HMDA Raw Data 2006, より作成.

(11)

利比率をみると 4.6%にとどまっており,グ ループ全体として,住宅購入目的の高金利 ローンの比率は高くないことが確認できる。

次に,表 2-4,表 2-5 によって,独立系金融 会 社 の 融 資 動 向 を み る と,ま ず New Century Financial では,全体として住宅購 入目的の割合が高く,また高金利比率も高い ことがわかる。とくに同社の融資の大半を占 める New Century Mortgage Corporation で は,89.6%を高金利ローンが占めるなど,総 じて住宅購入目的の高金利ローンに特化して いる状況が確認できる。一方,Countrywide Financial の場合,総じて住宅購入目的の割

合が高い点では共通しているが,高金利比率 については New Century Financial ほど高く はなく,最も高い Countrywide Home Loans でも,住宅購入目的で 28.7%となっている。

以上の結果はあくまで4社のみの事例にす ぎないが,図 2-1 で示した結果と照らし合わ せると,次のような傾向を読み取ることがで きる。すなわち,大手銀行持株会社はサブプ ライムローンの組成額で上位を占めるもの の,全体としては高リスクの住宅購入目的 ローンへの関与は必ずしも大きくないこと,

ただし,HSBC の Decision One Mortgage の ように,一部の傘下金融会社にはこの種の 表2-3

CITIグループの主要企業別・利用目的別の住宅ローン件数及び高金利比率

通常金利 高金利 目的別構成(%) 高金利比率(%)

CITIBANK 99,168 6,125 105,293 100.0 5.8

住宅購入 19,459 1,691 21,150 20.1 8.0

住宅修繕 23,357 1,550 24,907 23.7 6.2

借り換え 56,352 2,884 59,236 56.3 4.9

CITICORP TRUST BANK, FSB 3,598 26,462 30,060 100.0 88.0

住宅購入 10 10 20 0.1 50.0

住宅修繕 149 819 968 3.2 84.6

借り換え 3,439 25,633 29,072 96.7 88.2

CITIFINANCIAL, INC. 4,232 56,407 60,639 100.0 93.0

住宅購入 6 11 17 0.0 64.7

住宅修繕 1,421 21,576 22,997 37.9 93.8

借り換え 2,805 34,820 37,625 62.0 92.5

CITIFINANCIAL MTG CO, INC 2,463 9,830 12,293 100.0 80.0

住宅購入 45 421 466 3.8 90.3

住宅修繕 428 639 1,067 8.7 59.9

借り換え 1,990 8,770 10,760 87.5 81.5

CITIMORTGAGE, INC 117,858 6,575 124,433 100.0 5.3

住宅購入 59,919 2,889 62,808 50.5 4.6

住宅修繕 3,454 129 3,583 2.9 3.6

借り換え 54,485 3,557 58,042 46.6 6.1

合計 227,319 105,399 332,718 100.0 31.7

住宅購入 79,439 5,022 84,461 25.4 5.9

住宅修繕 28,809 24,713 53,522 16.1 46.2

借り換え 119,071 75,664 194,735 58.5 38.9

注:1∼4世帯住宅向けの非政府保証ローンのうち,自ら組成したものの融資件数.

出所:FFIEC,HMDA Raw Data 2006, より作成.

(12)

ローンへの特化傾向がみられること。一方,

独立系金融会社の場合,総じて住宅購入目的 ローンへの特化傾向がみられるが,高金利 ローンへの特化度については企業によって相 違がみられること,また,この点では New Century Financial の特化傾向が目立ってい ることである。そこで最後に,同社をケース スタディとして取り上げ,なぜこのような特 化傾向が生じたのか,章を改めて検証するこ

とにしたい。

3.独立系金融会社の融資構造―New Century Financial を事例として 1)New Century Financial における高リ

スク融資の拡大

New Century Financial(以下,NCF と略 す)は,1995 年にデラウェア州で設立された 表2-4

New Century Financialの部門別・利用目的別の住宅ローン件数及び高金利比率

通常金利 高金利 目的別構成(%) 高金利比率(%)

HOME123 24,462 24,419 48,881 100.0 50.0

住宅購入 15,660 6,241 21,901 44.8 28.5

住宅修繕 707 2,268 2,975 6.1 76.2

借り換え 8,095 15,910 24,005 49.1 66.3

New Century Mortgage Corporation 26,171 192,913 219,084 100.0 88.1

住宅購入 12,171 104,942 117,113 53.5 89.6

住宅修繕 492 4,775 5,267 2.4 90.7

借り換え 13,508 83,196 96,704 44.1 86.0

合計 50,633 217,332 267,965 100.0 81.1

住宅購入 27,831 111,183 139,014 51.9 80.0

住宅修繕 1,199 7,043 8,242 3.1 85.5

借り換え 21,603 99,106 120,709 45.0 82.1

注:1∼4世帯住宅向けの非政府保証ローンのうち,自ら組成したものの融資件数.

出所:FFIEC,HMDA Raw Data 2006, より作成.

表2-5

Countrywide Financialの部門別・利用目的別の住宅ローン件数及び高金利比率

通常金利 高金利 目的別構成(%) 高金利比率(%)

COUNTRYWIDE BANK, N.A. 136,707 40,317 177,024 100.0 22.8

住宅購入 60,677 19,858 80,535 44.4 24.7

住宅修繕 13,235 2,574 15,809 9.7 16.3

借り換え 62,795 17,885 80,680 45.9 22.2

COUNTRYWIDE HOME LOANS 581,909 209,073 790,982 100.0 26.4

住宅購入 279,103 112,486 391,589 48.0 28.7

住宅修繕 27,533 8,275 35,808 4.7 23.1

借り換え 275,273 88,312 363,585 47.3 24.3

合計 718,616 249,390 968,006 100.0 25.8

住宅購入 339,780 132,344 472,124 47.3 28.0

住宅修繕 40,768 10,849 51,617 5.7 21.0

借り換え 338,068 106,197 444,265 47.0 23.9

注:1∼4世帯住宅向けの非政府保証ローンのうち,自ら組成したものの融資件数.

出所:FFIEC,HMDA Raw Data 2006, より作成.

(13)

金融会社である。創業初年度の従業員数は約 300 名,ローン組成額は 35 万7千ドルであっ たが,第1次ブームに乗って順調に成長を遂 げ,1999 年には従業員数 1,740 名,融資額 408 万ドルに達した(15)。他の独立系金融会社 と同様,1990 年代末にはロシア財政危機を契 機とする債券市場の収縮によって資金不足に 陥ったが,U. S. Bank からの出資によって危 機を回避し(16),大手の金融会社が軒並み姿を 消すか,あるいは銀行持株会社の傘下に入る なか,独立を維持した。

NCF がサブプライムローン市場において 急成長を遂げるのは,2000 年代初頭の低金利 期と,その後の第2次ブーム期である。同社 の融資額は,2000 年時点では 415 万2千ドル であったが,ピーク時の 2005 年には 5,610 万8千ドルと,わずか5年間に 13 倍以上の 成長を示した。同社の特徴は,住宅ローンの なかでもとりわけサブプライムローンに特化 していたことであり,2005 年の年次報告書に よると,組成額のうち 93.7%がサブプライム ローンであり,プライムローンおよびオルト A ローンは6%にとどまっていた(17)

では,NCF の組成したサブプライムロー ンは,子細にみるとどのような特徴を有して いたのだろうか。表 3-1 は,第2次ブーム期 における同社の融資の特徴を示したものであ る。それによると,まず貸付条件別では,全 体の7割程度を変動金利型が占めているこ と,さらにそのなかで,伝統的な期間 15∼30 年のタイプではなく,利子オンリーローンや 期間 40 年 のバルーン返済の割合が上昇して いることがみてとれる。また,固定金利型に おいても,若干ではあるが,利子オンリーロー ンなどの割合が上昇している。次に,利用目

的別にみると,購入目的別の割合が顕著に上 昇しており,さらに所得証明の別では,傾向 として変化はないものの,全体の 40%以上を 自己申告,すなわち所得証明が不要のローン が占めていることが確認できる。

こうしたリスク要因の拡大に加えて,NCF の融資においては,ピギーバック・ローンの 併用が拡大したことが指摘されている。上述 の通り,ピギーバック・ローンとは,例えば まず LTV80%まで第1抵当で貸し付けを行 い,さらに残りの 20%についても第2抵当で 貸し付けるといったローンのことであり,そ の特徴から80/20などと呼ばれる。2003 年3月時点では,同社の融資における 80/20 の割合は 7.9%にすぎなかったが,第2次 ブーム期にその割合が拡大し,ピーク時の 2005 年12 月には 35.23%に達した(18)

以上の事実は,NCF の融資においてリス クの重層化が典型的に進行したことを示し ている。ではなぜ,同社はこのような高リス ク融資へと傾斜していったのだろうか。

その主要因として考えられるのが,同社の 事業構造,あるいは融資手法である。NCF の事業部門には,大別して卸売部門と小売部 門とがあり,前者を担うのが New Century Mortgage Corporation(以下,NCMC と略 す),後者を担うのが Home123 Corporation

(以下 H123 と略す)である。小売部門とは,

販売店やウェブサイトを通じて直接顧客に融 資を行うもので,これに対し卸売部門とは,

独立系のブローカーが持ち込んだ融資案件を 審査して自らの組成とするものである。

H123 は 2004 年に小売部門を統括する部門 として新設されたものであるが,NCF の融 資額全体に占める比重は小さく,同社の主力

(14)

部門は,融資額の 87.7%(2005 年)を占める NCMC である(19)

このような卸売部門を主力とする融資手法 は,融資額を拡大するうえでは効率的である が,きわめて高リスクのローンを拡大しやす いという性質を持っている。なぜなら,一般 にブローカーの報酬は,融資額の一定割合か らなる取引手数料と,貸付金利によって上乗 せされる利鞘プレミアムからなっており,し かもブローカー自身は融資を仲介するだけで 貸付リスクを負うことはないため,必然的に より高額で高金利のローンを顧客に紹介しよ うとする誘因が働くからである。また,第2

次ブーム期のように,金融機関が相互に融資 を拡大しようと競争している際には,ブロー カーは複数の金融会社に融資案件を持ち込 み,より高額・高金利のローンを受け入れて くれる金融会社と取引をしようとする。つま り,ブローカーを通じて融資額を拡大するた めには,金融会社は審査基準を引き下げざる をえず,こうしたブローカーにとっての売 り手市場の形成が,結果としてより多くの 高リスク融資を生み出すことになった(20)

しかしながら,このような高リスク融資は,

その債権を買い求める需要が存在しなけれ ば,際限なく拡大し続けることはできない。

表3-1

New Century Financialの組成した住宅ローンの特

(単位:%)

2004年2005年2006年

〈条件別〉

固定金利 26.3 26.7 30.7

15-30年26.3 24.6 23.0

利子オンリー 1.2 2.4

40年0.9 5.3

ホームエクイティローン

変動金利 73.7 73.3 69.3

15-30年 54.4 37.8 20.2

利子オンリー 19.3 29.6 14.6

40年 5.9 34.4

ホームエクイティローン 0.1

総計 100.0 100.0 100.0

〈目的別〉

購入 35.3 42.0 44.1

借り換え 64.7 58.0 55.9

キャッシュアウト 59.5 48.4 44.8

通常 5.2 9.6 11.1

総計 100.0 100.0 100.0

〈所得証明別〉

完全 51.0 54.2 55.7

不完全 4.8 2.7 2.0

自己申告 44.2 43.1 42.3

総計 100.0 100.0 100.0

出所:Missal [2008] p. 57より作成.

(15)

債権の売却によって得た資金を新たな融資に 充当するということが,他の金融会社と同様,

NCF の基本的な事業構造となっているから である。上述の通り,第2次ブーム期におい ては,証券の担保となるサブプライムローン 債権に対して投資家からの旺盛な需要が存在 していた。これらの投資家と金融会社との仲 介をしていたのが,ウォール街,すなわち投 資銀行である。

2)New Century Financial の資金調達構

NCF は,住宅ローンを組成すると,その債 権を次の3つの方法で流動化していた。すな わち,第1に,債権の売却(whole loan sales)

であり,競売を通じて債権を投資銀行等に売 却する方法である。第2に,売却としての証 券化(securitization structured as sales)で あり,証券発行のために特別目的会社を組織 し,そこに債権を売却するという形式で証券 化を行う方法である。第3に,資金調達とし て の 証 券 化(securitization structured as financings)であり,債権を自社で保有し続 け,その元利収入を担保に自ら証券を発行す るという方法である(21)。このうち,前二者で は 債 権 が 貸 借 対 照 表 か ら 除 か れ る(off- balance)のに対し,第3の方法では貸借対照 表上にとどまる(on-balance)という違いが あるが,いずれも,投資家からの資金によっ て債権を現金化するという点では共通してい る。

もっとも,このような債権の現金化が,常 に円滑に進行するとは限らず,またローンを 組成してから売却するまでには一定のタイム ラグが生じる。このため,NCF はその間の

運転資金として,卸売融資(warehouse loans)

と呼ばれる短期融資を利用していた。卸売融 資とは,主に商業銀行や投資銀行が提供する もので,通常,金融会社が保有するローン債 権を買い戻し条件付きで商業銀行等に提供 し,その見返りに信用供与枠を設定するとい う方法で行われる(22)。この短期融資は,上述 した3つの方法による債権の売却代金によっ て返済されることになるが,投資銀行から卸 売融資を受けていた場合,債権の売却先が卸 売融資の提供先と重なることもある。実際,

NCF は債権の売却先を選定する際,相手が 卸売融資の提供先かどうかを考慮していたと いわれている(23)。このことは,投資銀行が高 リスクのサブプライムローン債権を積極的に 購入するだけでなく,卸売融資という運転資 金を提供することで,NCF による高リスク 融資の拡大を支えていたことを示している。

しかしながら,ここで示した資金調達構造 は,ひとり NCF にのみ当てはまるものでは なく,他の金融会社にも多かれ少なかれ共通 したものである。NCF が第2次ブーム期に 高リスク融資へと傾斜した要因としては,さ らに同社に固有の要因が指摘されねばならな い。これにはいくつかの要因が指摘できる (24),とくに重要な契機になったと考えられ るのが,2003 年から 2004 年にかけての,同 社の事業戦略の転換である。

NCF は3通りの方法で債権を流動化して いたと述べたが,従来,NCF は第1ないし第 2の方法で債権を売却することを主たる事業 戦略としてきた。しかし,2003 年以降,同社 はこうした組成―売却(originating and selling)戦略から,組成したローン債権の 20∼25%を自社で保有し続けるポートフォ

(16)

リオ(portfolio)戦略へと転換し,さらに 2004 年には同社の税法上の資格を不動産投 資信託(real estate investment trust:REIT)

へと転換した。REIT とは,年間の課税所得 の少なくとも 90%以上を株主に配当するこ とを条件に,法人税を非課税とする税制上の 仕組みのことである。2004 年の年次報告書 において,同社はその事業目的を住宅ロー ン関連資産のポートフォリオの拡大とその運 用を通じて,株主への配当を安定かつ増大さ せることにあるとし,さらに 2005 年には,

新 種 の 優 良 株(A New Shade of Blue Chip)となることを自社のブランド戦略と して位置づけるなど,総じて株主重視,配当 重視の戦略を打ち出した(25)。REIT への転換 は,こうした事業戦略の一環と考えられる。

実際,REIT への転換後,NCF の1株当たり の配当額は,2005 年1月末の 1.5 ドルから,

2007 年1月末の 1.9 ドルへと,着実な増加傾 向を示した(26)

しかしながら,課税所得の 90%以上を配当 するという REIT の要件は,一方で NCF に 対し,手元流動性の不足をもたらした。この ため,融資額を拡大するための資金を得るに は,住宅ローン債権の売却や証券化をより迅 速に,滞りなく進める必要があり,債権の買 い手である投資銀行,ひいては投資家のニー ズに合った債権を供給することが求められ た。そのニーズとは,言うまでもなく,より 高利回りの証券の担保となる住宅ローン債権 を提供することである。実際,2005 年当時,

NCF の住宅ローン債権を担保とする証券は,

財務省証券の 2∼3 倍の利回りをもたらすな ど人気が高く,投資銀行は買い取り基準を引 き下げてでも同社の債権を買い取ろうとした

といわれている(27)。こうして,資本市場の ニーズに合った債権を供給し続けるなかで,

NCF はますます高リスク融資への傾斜を強 めていったと考えられる。

少なくとも住宅価格が高騰し続けている間 は,こうしたリスクは顕在化することはなく,

またそのリスク自体,当事者の間でも十分に 認識されてはいなかった。前掲の表 1-1 に示 した通り,FICO スコアでみる限り,この時 期,サブプライムローンの借り手の信用度は 上昇傾向を示しており,また実際,サブプラ イムローンの延滞率は,2001 年第4四半期の 15.59%から 2005 年第1四半期の 9.48%へ と一貫して下落傾向を示していた(28)。当時,

サブプライムローンの主流をなしていたの

は,2/283/27など,当初 2∼3 年間は

きわめて低い固定金利で,その後変動金利に 切り替わる短期固定型のローンであり,数年 後に返済額が急増するリスクがあった。しか し,住宅の資産価値が上昇し続ける限り,そ れを担保に借り換えを行えば,再び低い固定 金利を享受することが可能であり,これによ り,債務不履行の発生が抑制されていたと考 えられる。

このような状況は,2006 年以降に一変し た。FRB による断続的な利上げにより,住 宅ローン金利が上昇し始めると,住宅価格も 下落基調へと転じた。それは金利切り替え時 の返済額の急増をもたらす一方で,資産価値 を担保とする借り換えを困難にし,サブプラ イムローンにおける債務不履行の増加をもた らした。

債務不履行率の上昇は,次のような経路で NCF の経営を圧迫した。第1に,住宅ロー ン 債 権 の 売 却 先 か ら の買 い 戻 し 契 約

参照

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