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ピグーとケインズの雇用理論 : 雇用理論の学史的 研究の一部

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(1)

ピグーとケインズの雇用理論 : 雇用理論の学史的 研究の一部

その他のタイトル Pigou's and Keynes' Theories of Employment

著者 三谷 友吉

雑誌名 關西大學經済論集

2

4

ページ 1‑25

発行年 1953‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/15851

(2)

( 1 )  

A.C

・ピグーが一九==︱‑年に公にした﹁失業の理論﹂はマアシャルの労働需要論の基礎をなしている限界純生産

力説をうけついで︑労働需要の水準および変動を考察し︑ひいて失業およびその変動の因果関係を説明しているので

あるが︑失業の原因とその対策についての考え方において伝統的理論の見地を代表するものと見なされている︒

ピグーは同害の序文において次のように書いている︒

・・・・・・実質的側面から始めることもできる︒両研究は︐これを完全に行いかつ正しく遂行するならば︑それらの分析は

中央において合致し︑それは必然的に同一の結果に到達するにちがいない︒

. . . . . .  

近年においては︑貨幣的無秩序の時

期には当然に予期されるように︑経済学者たちは貨幣的側面に注意を集中する傾きがあった︒私見によれば︑その結

果は貨幣がもつと正常な時期に演ずる役割をやや強調しすぎ︑

ることとなった︒なかんづくこの理由から︑わたくしは本書を実質的側面から書き起し︑かなり後の段階にいたつて

ピグーとケインズの雇用理論(‑=谷︶

問 題 の 提 起

雇 用 理 論 の 学 史 的 研 究 の

ズの一雇用理論

非貨幣的性質のすこぶる重要な要因を背後に押しや ﹁失業問題の研究は貨幣的側面から始めることもできるし︑ ︐ ︐ ︐ 

' ̲ l

古口

(3)

ピグーとケインズの雇用理論(‑=谷︶

( 2 )  

はじめて貨幣的要因を導入することを選んだ︒﹂ピグーのこのような実質的分析の重視も伝統的なものであるが︑

( 3 )  

そのためにかれがとくに賃銀財単位による測定を考案していることに注意すべきであろう︒

さてピグーは同書第一篇﹁一般的考察﹂のなかで﹁だいたい所与の状況において賃銀取得者たらんと欲するものの

( 4 )  

数を一定の与件となし︑したがつて失業撒と雇用批とは相互の単純な余数であると見なす﹂と述ぺている︒屈用訛は

労働需要量とかならずしも相等しくない

0

なぜなれば﹁充されざる空席﹂が存在しうるからである︒これを無視する

( 5 )  

かぎり両者は相等しい

0

ピグーは﹁充されざる空席﹂を重視しているが︑しかしかれにとつてはやはり︑労働盟要量

がいかにして定まるかが雇用理論の︑ひいては失業理論の基本問題なのである︒

かくてピグーは第二編﹁実質労働需要の弾力性﹂について述べたのちに︑第三篇﹁実質労働需要の水準とその水準の

変動に影響する貨幣以外の諸要因﹂︑第四編﹁実質榮働需要函数の水準の変動に影響する貨幣的諸要因﹂について詳説

し︑最後に第五編﹁失業および失業変化の因果関係﹂に論及している︒

一定の努働供給量に努働雇用董が等 に︑かれの議論はきわめて多岐にわたつているのであるが︑その要点はわりあいに簡単である︒それは次のごときものである

0

それぞれの実質賃銀李に対して一定の努働糊要量が対応する︒そして前者の低下につれて後者は増加す

C 6 ) C 7 )  

る︒もし貨幣賃銀が引下げられるならば︑実質賃銀率が低下するから︑努働需要最は増加することになる︒そして労

働者の間に完全な自由競争が存在し︑努働が完全な移動性をもつている場合には︑賃銀李の下落にもとづく︑完全雇

用への強い傾向があり︑安定状態ではそれが実現されうるのである

0

しくなるのである︒それに反し︑完全な自由競争が欠けている場合には︑賃銀李は十分に下落せず︑多かれ少かれ失

業が存在しうるのである︒そして努働者間の完全な自由競争が行われないのは努働組合または国家の賃銀政策によっ ︶の編別と題名によってもあきらかなよう

(4)

( 9 )  

J.M

・ケインズはその著﹁雇用︑利子および貨幣の一般理論﹂のなかで右のごときピグ1の見解にまつこうから

反対した︒かれによれば︑努働者と企業者との賃銀協約において貨幣賃銀を引下げてもけつして実質賃銀を引下げる

ことはできない︒一般に貨幣賃銀は実質賃銀の大きさを決定するものではない︒実質賃銀の一般水準を決定するもの

( 1 0 )  

は或る他の賭力である︒これらの諸力がなにであるかを説明することこそ根本問題なのである︒ケインズのこの見地

はかれの新しい雇用理論の確立をうながした︱つの理由となっているのである︒

定する諸々の力の研究を主とするものにまで発展した︒⁝・・・貨幣経済は・・・・・・本質上︑将来についての見込みの変化が

雇用の方向のみならずその量にも影響しうるところの経済である︒しかし将来についての予想の変化の影響のもとに

ある現在の経済の動きを分析するわれわれの方法は需要と供給の相互作用に依存するものであり︑このようにしてゎ

れわれの基本的な価値理論に結びつく

0

かくてわれわれは︑われわれの熟知する古典派理論を特殊の場合として包括

c )  

するいつそう一般的な理論に到達するのである︒﹂一定の資源の諸用途

への配分と完全雇用状態における所得の分配をもつばら研究し︑また予想の問題をほとんど考慮にいれなかった伝統

的理論にくらべてまったく新しい問題提起をしめしていることは明白である︒

そしてケインズは第一編﹁緒論﹂のなかでまずいわゆる古典派経済学の批判を試みる︒すなわち︑古典派理論の二

つの公準のうち︑とくに第二の公準︑すなわち賃銀の放用と雇用の限界不放用の均等という公準をしりぞけて︑

自発的﹂失業の範疇を強調し︑つづいて古典派理論の販路の法則に反対して︑いわゆる有放需要の原理を力説してい

(11

)れによつてみれば︑ケインズの理論が︑ ケインズは同書の序文のなかで次のように述べている︑﹁本書は全体としての産出量および雇用の規模の変化を決

( 8 1  

てそれが阻止されるからである︒

(5)

(‑l

一 谷 ︶

かれの基本的な考え方によれ る︒それからケインズは第一・一編﹁定義および基礎掘念﹂のなかで単位の選定︑所得︑貯蓄および投査の定義などについて述べたのちに︑第四編﹁消費性向﹂および第五編﹁投資誘因﹂において有妓需要の理論を展開している︒かれによれば︑有放需要︑すなわち消費と投資によって雇用量と国民所得が決定される

0

かくて消費が依存する消費性向と

投査誘因としての資本の限界放李表および利子率が経済体制の﹁独立変数﹂であり︑雇用と賃銀単位をもつて表わし

a )  

た国民所得は﹁従属変数﹂である︵賃銀単位と貨幣数量は与えられているものと見なされる︶︒ケインズは右の二編

においてそれらの狭立変数について詳細な分析を行っている

0

この有放需要の理論にもとづいて不完全雇用均衡を説

(18) 

明せんとしたところに﹁一般理論﹂の最も大きな特色が見出されるのである︒

第五編﹁貨幣賃銀および価格﹂第十九章﹁貨幣賃銀の変動﹂においてはケインズは前述のごときピグーなどの学脱

を批判し︑さらに貨幣賃銀と雇用との関係についてのかれ自身の見解を述べている︒

ば︑賃銀協約によつて貨幣賃銀を定めても︑これによって実質賃銀を決定することはできない︒したがつて貨幣賃銀

の引下げが実質賃銀の低下によつて雇用を増加せしめるということはできない

0

それぞれの雇用量に対応する賃銀財

a )  

産業における努働の限界生産力が存在し︑これが実質賃銀を決定するのである

0

それゆえに︑雇用量がなにによって

定まるかが先決問題であるが︑それはまった<有放需要に依存するのである︒そしてその雇用量はかならずしも完全

(15) 雇用の状態を意味しないのである︒

右によってあきらかなように︑ピグーとケインズとの間には展用問題について根本的な意見の対立が存在するので

ある︒ピグーにおいては貨幣賃銀←実質賃銀←雇用量という関係がみとめられる

0

ケインズにあっては有放需要←雇

用量←実質賃銀という関係が強調される︒後者では貨幣賃銀はその関係のなかに入りこまない

0

ただそれが有放需要

(6)

ピグーとケインズの雇用理論︵三谷︶

( M )  

( 6 )   ( 7 )   ( 8 )   ( 9 )  

( 1 ) ( 2 )   ( 3 )   ( 4 )   ( 5 )  

昭和二十六年︒

( 1 6 )  

におよぼしうる或る影響のみが問題とされる°すなわち︑貨幣賃銀←有妓需要という関係が考えられるのである︒

以下においてわれわれはとくに貨幣賃銀と雇用の問題に重点をおいてピグーとケインズの理論を考察することと

(17) 

(

1 0 )   ( 1 1 )   ( 1 2 )   ( 1 3 )  

篠原泰三訳﹁失業の理論﹂

A .  

C .  Pi go u, h  T e  Th eo ry f     oU ne mp lo ym en t,

1

 

9 3 3 .  

I b i d . ,   p .   v .   訳書序文一ーニ頁︒

I b i d . ,   p p.  

17 

f f .   訳 章

1

六頁以下︒

I b i d

` .  

p p.  

7  , 

8 .  

I

充されざる空胎は現行貨銀をもつて雇用者がそれに対して労働者を見出さんと欲するが見出しえない地位である°総種用 撮を

E

︑総労働需要緻を

D︑充されざる空席の総斌を>とすれば︑

E1 1( D V)

<1 10

なる場合には

E1 1D C f. i b i d . ,   p .   g ̲ 訳書八頁︒

I b i d . ,   p p.  

3 5

‑ 3 6 .  

I b i d . ,   p p.  

1 0 1

1 0 2

.

1 1 0

I b i d . ,   p p .  

2 5 2

  1 2 5 3 .  

0ーニ七二頁︒

J .

M•  

Ke yn es ,  T he   Ge ne ra l  T he or y  o f  Em pl oy me nt ,  I nt e r es t  a nd   Mo ne y,

1

 

9 3 6 .   玲 主 野 谷

I九

H

用・刹二子及び

貨幣の一般理論﹂昭和十六年︒

I b i d . ,   p .  

1 3 .  

訳書一七頁︒

I b i d . ,   p .   v i i .  

0

I b i d . ,   p p.  

2 4 5

︐ 2

4 7 .  

訳帯二九六ーニ九八頁︒

クラインはケイン︐ス革命は有放儒要の浬論︑すなわち全体としての生産高水準決定の理論を癸展せしめた点にあったと述

べている。

Cf•

L.R•

K le i n ,  Th e  Ke yn es ia n  R e vo l u ti o n , 

1 9 4 7 ,  

p .  

5 6 .  

篠芦犀︑宮沢訳﹁ケイン暑ス革命﹂七1

Ke yn es ,  o p .  c i t . ,   p .  

2 9 .  

訳奪三六頁︒

(7)

( 1 5 )  

I b i d . ,  

p . 

3  0

( 1 6 )

ケインズにおいては︑有孜需要が増加し︑雇用量が増大するときに︑賃銀財産業における労働の限界生産物が減退するなら ば︑賃銀財の価格が騰貴して︑実質貸銀率が低減しなければならないのである︒

C f.

i b i d . ,  

p . 

17 

f o o t

  , n

o t e .

  訳書ニニ頁註︒

中山伊知郎著﹁発展過程の均衡分析﹂のなかではケインズ﹁一般理論﹂第五編第十九章補論におけるピグーの失業理論の 批判を中心としてピグーとケインズの比較がなされている︒本論文とは問題の重点を異にするが︑示唆するところ少くな

︑ ︒

われわれの問題において︑まずピグーの﹁失業の理論﹂のなかの実質賃銀と努働需要との関係に関する学説を考察

することにしよう

0

右の関係についてのピグーの根本的見地は同害第二編﹁実質労働需要の短期弾力性﹂︑第二章﹁

ピグーによれば︑個女の職業についても全体としての産業についても﹁努働者の要求するそれぞれの実質賃銀率に

( 1 )  

対して一定の努働需要量が対応するがごとき︑ある一定の実質努働需要函数が存在する︒﹂

でしめされる︵ここで

X

は努働需要彙︑

F

( 2 )  

は実質努働需要函数と実質賃銀李に依存すると考えられる︒かりに努働需要函数が不変であって賃銀率が変動するよ

うな場合には︑努働需要彙の変動は賃銀の変動の大きさと努働需要函数の弾力性に依存する︒また賃銀率が一定であ

つて努働需要函数が変化する場合には︑努働需要童の変動はその需要曲線が現行賃銀の水準において移動する水乎の

0 3 )  

距離に依存するのである︒それゆえに︑当面の問題についても︑ 需要函数と需要の弾力性﹂のなかに見られる︒

( 1 7 )

 

ピグーとケインズの種用理論︵三谷︶

ピ グ ー の 理 論

︵一︶努働需要函数の弾力性がいかにして決定さ

は実質労働需要函数︑

W

は実質賃銀李を表わす︶︒かくて努働需要量 この関係は

F(

X)

 

1 1 W  

 

9

(8)

位の加工を生ずる努働単位数をガとし︑したがつて

y 1

1

[N)

これは加工に関する努働の生産力函数であ ︵二︶その需要函数そのものはいかにして変化するか︑が考究されなければならない︒

ピグーは第二編において実質努働需要の短期弾力性について詳論しているのであるが︑その第三章で﹁自由競争状

態のもとにおける一定の実質賃銀率についての個別職業の努働需要の短期弾力性の決定﹂について説明するさいにま

一職業における﹁一定の実質賃銀率での努働需要量は︑その限界純生産物:

. .

. .  

の賃銀財で

表わした価値がその賃銀率にほぼ等しくなるように定まる︒﹂そしてを一職業における努働雇用量とし︑

に等しく︑したがつて

dx

.  dF

︑ へ a )

•F

、 (a) ` 

賃銀財で測った賃銀率とするならば︑実質努働需要の弾力性

E

つづいてピグーは言う︑いまかりにただ一種の努働のみが存在し︑さらに完成生産物の各単位は原料の同一量︑た

とえば一単位を使用するものと仮定する︒しかるときは︑完成生産物の各単位は︑原料の一単位に︑加工︑すなわち現

在の資本設備の助をかりて努働が原料に対してなした仕事の一単位を加えたものから成る

0

工の︑賃銀財で測った一単位あたり需要価格は︑

y単位の原料の供給価格とするならば︑ の一単位あたり供給価格を差引いたものに等しい

0

かくて↑︑

( y )

︑ ︑

9

単位の加工の需要価格はウ

r

︑o

y)

Jf

︑(y

9)︸である︒それから

0

そこで華働一単位あたり需要価格︑すなわち賃銀財で表わした一単位あたり支払高は

ピグーとケインズの雇用瑾論︵一︳︳谷︶

( 4 )  

F

( x )

xF

"

(x

) 

Ea

1 1    

ず次のように述べている︒

y単位の完成生産物の一単位あたり需要価格から︑ F

( N )

y

単位の加

y単位の原料

y単位の完成生産物の需要価格とし︑f

( y )

( 1 )  

(9)

ピグーとケインズの雇用廻論︵=一谷︶

U C )

l d

f

( x

)

s l l

によって表わされる︒単位の努働の一単位あたり需要価格をF

( N )

とすれば

( R ) }

df

︷ も

x

︶ } 1

F

8 1 1 {

なる方程式をうる︒この右辺はもちろん︷ d

紅 吠 翌 ー

4 g

5

立 を

( N

)

と害くことができる︒右の方程式にも

とづいて︑ある一定の実質賃銀李に関する努働需要の︵短期︶弾力性の公式がえられる

0

すなわち︑それを①に代

入すれば次のようになる︒ d

ょ 委

09

d

i N

( N ) }

df {c p( x) J

Ed

  1 1 { d x d R }  

g

(R )+ R[

︷ 念 翠 戸 急

g }

(x ) 11 1

令 ︵

R)

( R )

d2

R)

︸ }

r g 1

+ t d

a)2

2

この式はあまりにも複雑であるから次のごとくもつとわかりやすい形にかえる︒

を完成生産物の需要の弾力性︑

E f

E s

を原料の供給の弾力性︑

E P

を加工に対する需要の弾力性とし︑さらに7を加工に関する努働の生産力函数の弾

力性とすれば︑左の諸方程式がえられる︒

dv {c f>

(x )}

 

d9 v[ cf

>( x) }  bf 11

喜 ︑

d

( x ) 1

足 (R)2

d/ {c f>

(x )}   dB /{ cp (x )}  

( O d

( R ) +

N)2

d

Es

= 

・ 

(

2

)

 

(10)

1 q

が小なるほど︑

C 6 )  

ますます大である︒

︵ 五 ︵ 四

刀が︵絶対値において︶大なるほど︑ この方程式から次のごとき一般的な推論を引きだすことができる

0

すなわち

Ed Ej

正または負であり︑またm>l

E d

は絶対値において

( ‑

︱ ‑

︶  

︵ 二 ︵ 一

v O  

E l

が︵絶対値において︶大なるほど︑すなわち完成生産物の需要の弾力性が大なるほど︑

E S

が正であれば大なるほど︑負であれば小なるほど︑すなわち原料の供給が弾力的であるほど︑

mが大であるほど︑すなわち完成生産物の生産裁において原料の演ずる役割が小なるほど︑

これまでピグーは努働需要の弾力性の分析において生産が瞬間的であると仮定して︑生産に時間を要する事実を無

i 1 1 m ]  

I

ー を

. 

心,~

I  I 

+ 

~II-'

ぷれらの諸式を②に代入して整理すれば︑左の最終の方程式をうる︒

m

をもつて完成生産物の需要価格を原料の需要価格で除したものを表わし︑

( x )

R

も ︑

︑ ︵ さ

7 1 1  

Ep

 

1 1 8 1  

{ 4

写 ︵ さ ︸ ー

df

︷ 支 さ ︸ 一

d

( x ) d

合 (

5

d冬 ︷

( x ) }

ー を

2

/ {   <f>(x)}} 

t d

( x ) 2 d

(x )2

りは負であり︑

E S

最後にと置 B

も ︑

( x )

" " "  

x ) q

(11)

i i

かとする︒

か︱つに変化が起れば︑変動するであろう︒ この方程式からあきらかなように︑ある一定の実質賃銀率での労働需要量は︐

る ︒ するさいに労働需要函数の変化にふれている︒ で ︑

f

のなかでピグーは次のように論じてい 視して来たのであるが︑この事実を考慮にいれたらどうなるであろうか

0

かれによれば努働の賃銀を支払つてから完

成生産物の産出するまでの︑いわゆる生産期間が存在する場合には︑前述の労働一単位あたり需要価格は修正を要す

ることとなるが︑この修正は生産期間の長さと賃銀財で表わした利子率に依存する︒かくてかりに生産期間が

K

一日の利子率が.ヽであるとすれば労働需要方程式は

‑ K

r ) }

d f

{

< / >  

( x ) ) }  

dR

S I I ‑ t i  

( 8 )

となる︒すなわち﹁需要曲線は︑生産が瞬間的であった場合にくらべれば︑全城にわたつて・・・・・・同一の割合で引下げ

( 7 )  

られる︒このことはいかなる一定の労働量についても需要の弾力性は瞬間生産の場合と同一であることを意味する︒﹂

さてつぎに第二の問題に移ることにしよう︒ビグーは第二編で実質労働需要の水準とその水準の変動についつ考察

同編第二章﹁個別職業における一定の実質賃銀率での労働需要量の変動﹂

労働が原料を完成品に変ずるその加工をも

( a

)

とし︑その完成品の需要函数をナとし︑その原料の供給函

数を

f

とする

0

しかるときは実質賃銀率が

最初の労働量を

X

とし︑三つの函数を

(3

)1

18

d去支

R )

Idf

︷ も

︵ x )

t

d

o d

N)

は次の労働需要方程式によってあたえられる︒

そこでこれら三つの函数の変化について吟味しなければならない︒

1 0  

(12)

人の総産出量が眼界産出量よりも大なる割合で増加する

1

0

(X )l

d~_QQ]

のときには、d

( X )

> 

d

( X )

のときには︑原料の供給に改善があったといいうる︒

d f1 0

1( X) J d/ 1l 4>

1( X) } 

^ 

d

(X)・dq,1(X)

t2(X) 

q>

3(

X)

のときには労動の生産力に改善があったといいうる

0

右の三つの改善は次のような意味を有する︒ 完成品の需要に改善があったといいうる︒もし

f i

f f l

に変化して

すなわち︑完成品の需要における改善は賃銀財で表わした一単位あたり価格が騰貴するから︑原料の供給の改善は一

単位あたり価格が低落するから︑生産力の改善は現存の労働量の総産出量︵かならずしも限界産出量ではない︶が増

u8) 

加するから︑生ずるのである︒

ところで︑完成品の需要の改善が必然的に一定の実質賃銀率wでの労働需要量の増加を意味することは明白である︒

このことは原料の供給の改善についても同様である︒しかし労働の生産力函数の改善の場合においてはかならずしも

労働需要量の増加を来すとはいえない︒その結果は労働の加工に対する需要の弾力性と労働の限界産出量のいかんに

依存する︒通俗の著者たちが一般に想像するところによれば︑労働の加工に対する需要の弾力性が一よりも大きいと

きは︑生産力の改善は必然的に現行の実質賃銀率での労働需要量を増加し︑需要の弾力性が一より小さいときは︑これ

を減少するという︒しかしこのことは生産力の特殊な型の改善︑すなわち雇用の全城にわたつて総産出量と限界産出

量とを同一の割合で増加せしめるような改善の場合にのみ︑正しい︒

小なる割合で増加するような改善の場合には︑労働のなす加工に対する需要の弾力性が絶対値において一より大きい

ときのみならず︑それが一より小さくても或る大きさ以上に小さくならないときには︑現行の実質賃銀での労働需要量

は増加するであろう

0

反対の型の改善︑すなわちもとの

ピグーとケインズの雇用理論︵三谷︶

人の総産出量が限界産出量よりも

(13)

されえようと︑かた<固定されていようと︑だいたいにおいて同じてあろう︒しかしあきらかにこの種のことはすべ

賃銀財の全量にはまったく変化がないのである︒ ﹁協定実質賃銀李が与えられているならば︑あらゆる これにふれておこう︒この場合にピグーが ような改善の場合には︑労働需要量の増加に対する条件は︑ただに労働の用役︹加工︺に対する需要の弾力性が絶対値において一よりも大きいというだけでなく︑それが一に或るものを加えたもよのりも大きくなければならないとい

( 9 )  

ピグーは函数←

f中の変化が労働需要量におよぼす影響について右のごとく説明しているのであるが︑ここで

ついでに利子李変動の影響について述べておく︒ピグーによれば生産期間の存在する場合には︑労働の需要価格は限

界純生産物の割引価値に等しく︑この割引価値は生産期間の長さと賃銀財で測った利子率に依存するのであるから︑

実質利子率が変化するときには︑労働需要函数も必然的に変化する

0

かくて利子率が下れば労働需要量は増大し︑利

G 1 0 )  

子李が上ればそれは減少することになるのである︒

これをもつて労働需要函数の変化の問題に関する考察をおえることにするが︑なおピグーは第三編第九章において

総実質労慟需要の問題についての基本的な考え方をしめしているから︑

労賃基金説をとつているのは注目にあたいする︒かれは言う︑

産業の総体における労働需要量は︑利用しうべき︑かつ賃銀支払にあてられる賃銀財の量に正確に比例して変動し︑

またかようにのみ変動しうる

0

個々の職業においては︑ある攪乱原因がその職業の労働需要彙の変動をもたらすが︑

この変動は賃銀財が他の職業の賃銀取得者から移転されることによって行われるのであって︑賃銀支払にあてられる

一定の攪乱原因がその職業の労働需要量に惹起する変動は︑賃銀支払いに用いうべき賃銀財の総量が容易に増大 ピゲーとケインズの種用理論︵=︳谷︶

またその職業が総労働力の一小部分を犀用するにすぎない場合に

(14)

かったものとすれば︑

( 1 8 )  

の労働需要量は依然として変化しない︒

労働生産力の改 ての産業の総体における労慟需要量については言われえない

0

賃銀基金ー│・われわれはかく呼びうるのであるがーー︑

の職業における需要量のまった<等しい減少︵または増大︶によつて必然的に相殺されるのである︒したがつて総体

一職業で燿用する労働量を増大または減少せんとする決意が︑他の職業にお

ける労働需要量にこれと等量の相殺作用を惹起することなしに︑みたされうるのは︑総賃銀基金が増大または減少し

a )  

うる場合にかぎられる︒﹂

この見地からビグーは個々の非賃銀産業および非輸出産業における変化︑賃銀財産業における変化︑人々の異った

組の間における購買力の移転︑輸出産業に関する生産力の改善︑財貨または証券の輸入の排斥と総労働需要量との関

( 1 2 )  

係について詳述している︒

ピグーの労働需要に関する学説はだいたい以上のごときものであるが︑その要点を摘記するならば︑次のようにな

る︒すなわち︑労働需要量は労働需要函数と実質質銀李とに依存する︒それゆえに﹁労働需要量の変動は︑実質需要函数の変化、または協定実質賃銀率の変動、またはまった<相互に相殺することなき両~の変動が存する場合に、起

. . . . . .   る ︒

もし二つの時期の間で実質需要函数の状態に変化がなかったものとすれば︑労働需要量に起つたいかなる変

動もすべて直接には協定実質賃銀率に生じた変動によつて惹起されたのである。…

•9•

もし協定実質賃銀率に変動がな

︹労働需要量に︺起った変動はすべて直接には実質需要函数に生じた変化によって惹起された

すなわち︑ピグーによつては労働需要函数の変化︑たとえば商品需要の改善︑

ピグーとケインズの糧用珊論︵三谷︶

がかた<固定されている場合には︑

原料供給の改善︑

(15)

し︑それは貨幣賃銀率が下落し︑

かくて総労働需要も増加するであろう︒

貨幣 そしてか 善︑または利子李の低下にもとづく労働需要最の増加がみとめられているが︑しかしまた協定賃銀李の引下げが労働需要童を増加せしめるということも︑主張されるのであるcそしてもしも賃銀財産業において実質賃銀率の低下によ

り労働需要量が増加するならば︑さらにその結果として非賃銀財産業においても労働需要量が増加しうるのである︒

けだし﹁賃銀財産業で要求される実質賃銀率が変動するならば︑賃銀財産業で労働に支払われる総実質賃銀を超えて

生産される賃銀財の剰余にも変動が生ぜしめられる︒それゆえに︑賃銀財産業において実質賃銀率が減少すれば強力

c )  

な反作用が起つて︑非賃銀財産業の労働需要が増大するのである︒﹂

ピグーの︑実質賃銀李と労働需要量との関係についての見解はあきらかになったが︑最後にかれが

貨幣賃銀と雇用の問題に関していかなる意見をいだいていたかについてみなければならない︒

前掲の諸引用文においてもそうであるが︑ピグーはしばしば協定実質賃銀李について去々している︒しかし労働者

( 1 5 . )  

が企業者と直接に協定するのは貨幣賃銀李である︒しかるにピグーが協定実質賃銀率について語るのは貨幣賃銀李の

引上げまたは引下げがかならず実質賃銀李の引上げまたは引下げをともなうと考えているからにほかならない︒そし

てまたかれは或る箇所ではその関係を論証しようとつとめている︒ビグーは︑貨幣賃銀李の引下げがただそれに比例

する諸価格の低落を生ずるにすぎず︑したがつて実質賃銀率も労働需要菰もなんら影響をうけないという主張に反対

しかも届用量が変化しなかった場合にあてはまるにすぎないと考える︒

れは貨幣賃銀率の引下げは実質賃銀率の切下げによって労働屈用の増大にみちびきうることを次のように説明してい

る︒すなわち﹁はじめに非賃銀取得者の貨幣所得が

Q

賃銀取得者の貨幣所得が

W X

であると仮定しよう︒

賃銀率が

W

から

(W 1k )1

ここでもちろん

K

W

より小であるーーに低下する︒そして雇用董は影響されなか

(16)

ったとする

0

はじめは非賃銀取得者の貨幣所得になにも起らなかった︒したがつて︑変化せざる実質所得に対して糞

される総貨幣所得は

(Q +

W X )

から

{Q

+

︵ W

K ) X J

に減少する︒かくて実質所得一単位あたりの価格はもとP

となる︒それゆえに︑もし賃銀財と他の財貨の相対的価値が変化しないとすれば︑実質

Q

が零でないならば︑すなわち人口のいくぶんかが非賃銀取得者から成立つているならば︑実質賃銀率が減少する

か︑または賃銀財に対する非賛銀財の相対的価値が勝貴することになる︒ゅえに︑体系は均衡状態にない︒追加的な

( 1 6 )

労働が雇用されなければならず︑追加的な産出童が生じなければならない︒﹂

つ ︑ )

しかしピグーのこの説明に対してはR.F・ハロッドが害評のなかで批判を加えた︒かれはピグーの議論の前提に

矛盾があることを指摘し︑さらに︑すべての所得が賃銀と利潤より成る封鎖的経済においては︑賃銀の引下げは︑利

潤取得階級がその引下げにともなって個人的消費を増加するということがないかぎり︑価格と利潤の比例的な低落を

ケインズも﹁一般理論﹂第五編第十九章補論のなかでピグーの所説を批判している︒かれは言う︑ピグーは︑もし

限界生産主要費用が限界賃銀費用に等しいならば︑非賃銀取得者の所得は︑貨幣賃銀の引下げられた場合に︑賃銀取

得者の所得と同一の割合で変化するであろうという主張に反対する︒その反対の根拠は︑かかる主張は服用董が不変

にとどまる場合においてのみ妥当するというにある︒ところで︑かれは後に﹁はじめは非賃銀取得者の貨幣所得にな

にも起らなかった﹂と仮定することによって同じ誤謬をおかしている︒この仮定は︑かれがたったいましめしたよう

(11

生ずるということを主張した︒

w

K

w x  

+

W

K ) X

賃銀は以前の

. .  

倍となる︒︹原文では

Q +

w x

 

 

Q +

W

K ) X

(W ー K)•,

; ・

P

Q +

W

K ) X

Q +

w x

 

 

(17)

( 1 6 )   ( 1 7 )   ( 1 8 )

  (18) 

ピグーとケインズの雇用珊論︵三谷︶1

に︑雇用量が不変にとどまつていない場合においてのみ妥当する︒それが実は論点なのである︑と

0

そしてケインズ

によれば︑非賃銀取得者の貨幣所得も結局は減少せざるをえないのである︒

増加は起らないのである︒この問題については後にもつと詳しく考察するであろう︒

( 1 ) ( 2 )   ( 3 )   ( 4 )   ( 5 )   ( 6 )   ( 7 )   ( 8 )   ( 9 )   ( 1 0 )   ( 1 1 )   ( 1 2 )   ( 1 3 )   ( 1 4 )   ( 1 5 )  

11

Pi go u, h  T e  Th eo ry ,  p .   ~-訳書一

l- ==頁。

実質賃銀率は貨幣賃銀率を賃銀財単位の価格で除したものである︒

C f.

ibid••

p p.  

1 9  

1

ゞ)•

1 3 1 .   訳書1

10

I bi d . ,  p .  

2 7 3 .  

訳書二九四頁︒

I bi d

.

4p . L

0

lhicl••

pp

••

 

4 2 ‑ 4 5 .  

0

I b i d , ,   p p.   5 7 ‑ 5 8 .  

訳奪〖五八ー五九頁。

I b i d . ,   p p.  

5 9 ‑ 6 0 .  

訳書六一頁︒

I bi d , ,  p p.  

1 1 0 ‑ 1 1 2 .  

訳書l1九ー

1 1 1 1

I b i d . ,  

p p .  

1 1 2 ‑ 1 1 5 .  

訳傘〖 1111

11二四頁︒ここでは原料費は無諷されている︒

I bi d

̀ 

.  

p p.  

1 8 0

1 8 2 .

[ 1

九五ー1 I b i d . ,   p p.  

1 4 3 ‑ 1 4 4 .  

訳書一五三ー一五四頁︒

総労働需要量の問題については詳細な考察が必要であるが︑ここでは省略しなければならない︒

I b i d . ,   p p.  

2 7 2  

2 7 3 .  

訳書二九四頁︒

I b i d . ,   p .  

7 3 .  

訳書七六頁︒

このことはピグーも明言している

0

曰く﹁貨幣経済においては実質賃銀率を変えようとする決意は直接的には行われない︒

賃銀契約の題目となるものは貨幣賃銀率であって︑実質賃銀率ではない︒﹂

( Ib i

d .

1 0 0 p .

.  

訳書10 I b i d . ,   p p.  

1 0 1

1 0 2

.

[

10

八ー

11

0

R•F•

Ha rr od ,  P ro f.   Pi go

u 

̀ 

Th eo ry f  o  U ne mp lo ym en t  ( Ec on om ic   Jo ur na l,   Ma rc h,  1 9 3 4 )

・  

Ke yn es ,  T he   Ge ne ra t  T he or y,   p .  

2 7 6 .  

実質賃銀の減少︑雇用の

(18)

1 ケインズが﹁一般理論﹂のなかで主張した根本命題は雇用はまった<有放需要に依存するということである︒それ

ゆえに︑われわれの問題においても当然かれの有放需要の理論を取扱わなければならないのであるが︑ここでそれに

たちいる余裕はないので︑ただちに同害第五編第十九章﹁貨幣賃銀の変動﹂におけるかれの所説について考察する

貨幣賃銀の引下げは直接に雇用の増大にみちびくと説く伝統的理論にケインズはだんぜん反対する︒

ば︑それらの理論は種々の誤った考え方に依拠しているのである︒

ケインズはそれらの誤った考え方を指摘して次のように述べている︒第一︑貨幣賃銀の引下げは需要になんら影響

しないと考えられる

0

総需要は貨幣量にその所得速度を乗じたものに依存するものであるが︑貨幣賃銀の引下げがこ

れら二つのいづれをも低減せしめる明白な理由は存しないのであるから︑需要が影響をう<ぺき理由はないと主張さ

れる︒あるいは賃銀が下落したのであるから利澗は必然的に増加するであろうと論じられる︒さらに次のような見解

もある︒すなわち︑貨幣賃銀の引下げは若干の労働者の購買力を引下げることによつて総需要にある影響をもつであ

ろうが︑貨幣所得の引下げられなかった他の諸要因の実質需要は諸価格の低落によつてかえつて剌救されるであろう

し︑また貨幣賃銀の変化に対応する労働需要の弾力性が一よりも小でないかぎり︑労働者自身の総需要も層用量の増

加の結果として増加するであろう

0

かくのごとくして新しい均衡のもとにおいては雇用は以前よりも増加することと

C 1 )  

なるのである︒

の 理 論

かれによれ

参照

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