奈良教育大学学術リポジトリNEAR
本邦新生代層の花粉層序学的研究? 神戸層群およ び明石層群
著者 島倉 巳三郎
雑誌名 奈良学芸大学紀要
巻 8
号 2
ページ 65‑75
発行年 1959‑02‑15
その他のタイトル Pollenstratigraphical Studies of the Japanese Cenozoic Formations III. The Kobe Group and the Akashi Group.
URL http://hdl.handle.net/10105/4842
(65)
本邦新生代層の花粉暦序学的研究 Ⅲ 神戸暦群および明石暦群
島 倉 巳 三 郎 (地学教室) (昭和33年10月20日受理)
Misaburo Shimakura : Pollenstratigraphical Studies of the Japanese Cenozoic Formations HI. The Kobe Group and the Akashi Group.
1.緒 言
神戸層群は神戸市西北方の丘陵地に,明石層群は明石市酉北方の海岸に発達する新第三系で, 瀬戸内地質区の代表的地層としてよく知られHI!著は中新統上部乃至鮮新統下部(Letter Nomト nationの ‑G),後者は鮮新疏上部乃至更新統下部CIi)とされている。古くから多くの学者によ って研究されてきたが,前島俊郎(1935),鹿間時夫(1936,1937,1938),上治寅次郎(1935,193' 6,1938),高井冬二・棚井敏雄(1949).三木茂(了9.96)等諸氏の地質学的または古生物学的研究 が著しいO近時も安藤保二(1956),笠間太郎・藤田和夫(1957),池辺.展生(1953)小品信夫,
市原実・小黒譲次(1958)その他の諸氏によって再検討されつつあり,いろいろの事実が知ら れ,また新しい問題も生じているようである。
これらの地層には貝殻.枝葉・種子等の大形化石のほか,花粉・胞子・珪藻等の微化石も多く
今まおていt:,が・ ,;!iit ^!こ告.はモだなし、ト、T章二・Ln:'蝣">・1‑ !!>r,ヾ1‑1二f't: i'1蝣"> ¥")叩'.it¥ こいて‑
試料を授集し,花粉化石をしらべてみた。研究がすんだわけではないが,ひとます分ったことを ここに報告し,問題解決の資料とするO この研究を行うにあたり,安藤保二氏からいろいろの御 便宜と御教示をうけ,池辺展生氏にも御世話になったO 厚く謝意を表する次第である。な患この 研究に要した費用の一部は文部省科学研究聾によった。
粁究J:杵‡;V.宇土・了jJ'!甘V‑'君∴蝣・:wv岩・葦。、二号t'l'古I I, J‑JiYJ‑V錆I.相∴.浴.LU、、守rc'蝣 二二‑蝣it‑rj叩 方法はこの∬報にのべてある。ここにその要点を再録すると
試料,約)0‑60g,粗く砕く
J
IO^KOH (三角フラスコ中)
1
∴ ・ ‥ ・,f‑ ‑'.'・「.・H t
傾・蝣蝣&;こよい1¥¥骨Il‑(潤(二・̲T帖七・cilか‑><>∵、〕
心
根物性微化石の分離(茶腕中)
J
HCl蝣HNO3混液(遠沈管中言湯煎数十秒)
↓
水洗後IO^KOH
J
水洗後植物性額化石の濃縮
↓
HF (ポリェチレン容器)
↓
(66) 島 倉 巳 三 郎
↓
Acetolysis (遠沈管中,数十秒)
〕
氷酢酸洗,水洗を経て封入,
または再びKOH→氷酢酸‑ナ水洗処理を行って封入,永久プレノヾラート
わが国で一般に行われている花粉分析の方虎はこれと異るが,上の操作のどれを省いても微量 の花粉を十分集めたり,植物性爽雑物の大部分を除いて艮好な永久プレパラ‑トに仕上げたりす
ることは雅かしレ、o 爽雑物の多い汚ないプレパラートでは花粉の識別や算定に誤りを生するおそ れがある。
2.神 戸 層・群
(5)
神戸層群は桧下教授の著書によると次のように区分されている。
前 島 氏(1934)
洪 積 層
層
畑
那畑 君
藍奥 i 多
層(150m) 層(100m) 層(150m+)
麿 間 氏(1938)
iS ぎ r3 テ
多井畑且化石層(15m) 断 層 白 川 層(200m)
断 層
多井畑層(150m)・丸山層(140m)
ヽ
‑ ヽ
神戸層群
このうち奥地層.白川層,多井畑層,多井畑貝化石層その他から9試料を採集したが,その地
第1図神戸層群花粉分析試料採集地点( x印)
点は第1図に示した通りである。試料N0.1 は須磨区軍北方の道路傍の崖から得た褐炭質
(3
;'i:.告で ‑C‑'*風壇.二一L㌧、ii‑ト昌ft‑1'詳しい記 述がある N0.2 は白川峠頂上広場の白色凝 灰岩に爽っている灰黒色凝灰質頁岩, No.3 Aは多井畑丘陵北面の崖に露出するうすい褐 炭で, SBはその約3mTの砂質頁岩で,何れ も細粒軟質の砂岩中に爽まれている N0.4 は鹿問氏の多井畑貝化石産地らしく,灰色泥 岩乃至砂質泥岩で貝殻のcastを多く含む。
No.うは安藤氏より分譲された含貝化石灰黒 色泥岩で神戸市水道局が多井畑厄神の北側に 工事を行ったとき採集されたものであるとい う。 N0.6は多井畑小学校西の道を北‑下り る路面上で,表土が侵蝕されて露われた含炭 質砂泥岩で,神戸層群に属するかどうか分ら ないものである。 No.7およびN0.8はN0.6 よりづこし上方の崖から採集した砂質貢岩 で,地層は殆ど垂直に近い。
本邦新生代層の花粉層序学的研究 Ⅲ (67) これらの試料から検出した花粉の種類は次の通りで,図版1に代表的のものを示してある。た だしN0.7と8から得た花粉はあまり少いので省略するO
賢 賢 芸 ...、.I.I.、、 奥晶層 .和 子一層
花 、、八 \ 点
粉 、、ト \ 車 溜 ー一望
3 A 3 B
多 井 畑 層 4 5 多 井 畑 且 層
! 6
近似する葉化石(9) 多 井 畑 多井畑 多井畑厄 神
V一・'!蝣蝣」 小学校西 北 属 \で 憧 炭望l‑
凝灰質
…頁 岩
褐 炭 歴 頁 蛋誤 憎 賃 L
含炭質 :'l. :蝣] 〜 Abies
Picea Pinus lsuga Taxodiac.
Juglan pter。c芸ryaj Carya Air, Fagus Quercus Betula
Ci. Corylus Carpin us Zelkova
ulmus l ersicaria
Ct. Celosia Nyssa Ti lia btaphylea Liq uidamb ar
d. Rhus
Ji laeagnus Ci. Iipilobium Cf. Malva Ericaceae Symploeos
llex Viburnum Lonicera Cf. J atrinia Compositae
+ + +
+ 十 + + +
十
十
十
十
+ + + 十 十
+ +
+ + 十 十 + 十 十
+ 十 十
十 十
十 + 十 十 十 十 十 + 十 十 十
+ +
十 十 十 十 + 十 十 十 十
十 + 十 十 十 十 十 十 + + + 十
十 十
十
+ 十 + 十
十 十 十 十 十 十 + + + + 十
十 十 十 +
+ 十
十 十 十 + 十
+ + 十 十 + 1
十 十 +
十 十 十 十 十
Iinus sp.
Sequoia , Taxodium
Alnus sp.
Fagus antipofi
Quercus alba, Q. giauca
Carpinus grandis, C.sp.
為Ikova serrata
Ulmus Longifolia, 'i.spp.
Tilia sp.
Liquidambar formosana
Ilex sp.
V iburnum wrightii
次にAP 19種, NAP 5種の花粉300内外について百分率を求め, Pollendiagramで示すと第2 図のようになる。
C68) 島 倉 巳 三 郎
白川層の試料No.7, N0.2と多井畑層の試料No.3A, No.3BはQuercusやZelkovaの量におい ていくらかの相違はあるが, Picea‑Pinusにとみ, Cory如状のものやZelkova, Liquidambar も多く Lonicera, Cf.Epilobiumなどあまり普通でないものも含まれ類似性が認められる。
NyssaはN0.2とNo..SBのほか多井畑貝化石層の試料にも見出されるが,禍炭質のN0.7とNo.3A からは検出できなかった。このことはNyssaの生者とこの褐炭層の堆積環鄭⊂開如ゞあるように
∵
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白 川 層 21 〜
多井畑屈3A 3β
‑ i i
‑ 岩井畑は 覇 4
Y .P 】民情 5
= 〃 i
6 hI
第2図 神戸層群のPollen diagram 思われる。なお禍責質試料はFilicales胞子が圧倒的に多く含まれているO
多井畑貝層に属するN0.4とNo・射ま構成花粉の種類,出現率ともや」類似し, Liquidambar, Nyssa等花粉として特徴のはっきりした,かつ地層の対比に重要なものを含んでいるO
試料No・糾ま花粉構成が上記のものと著しく興りPiceaが殆ど半分を占め, Ericaceaeが多く, Ci.CelosiaやPersicaria, Patrinia, Compositae等の草木性花粉があるo これらは鮮新銃上部 乃至第四系の試料からはしばしば横田されるものであるから, N0.6は神戸層群ではなく新期の 堆積物と思われるO鹿問氏の層序の表では上部に第四系の播磨層群がくることになっている。し
かしこの試料を含む部分が果して地層としてつづき,うすく佃戸層群を被虐しているものである かはまだしらべてない。
(13,ll)
多井畑貝化石層の地質時代に関しては洪積世説と中新他説とがあり,安藤氏がまとめたところ によると"洪積世説(上治氏)の理由は(a) Trapa macropoda MIKIシリブトビシを共に産出 する (b) Trapezium japonica PILS‑ウネナシトヤマガイのような新しい貝を含んでいるo 中新他説(鹿問氏)揺(a)明かに中新世と見なされる多井畑植物化石層と岩質がよく似て区別 がつかない (b)新第三紀と見られる淡路島の岩屋層と対比して両者共に海貝化層であり,同 一の海侵時代と解釈する、"とのべている。
(1
この地層から産する貝化石として安藤氏はCerithium sp. , Calyptraea yokoyamai Kuroi〕A Nattea sp., Barbatia sp., Anadara sp. Volsella sp. ,Ostrea sp, Corbicula sp.
(3)
Trapezium nipponicumYOK.? , Cardium sp., Macoma sp.をあげている。小品氏による と"鹿間氏はこれを(読:多井畑貝化石層をさす)白川層よりも上としたが,その理由が判然とし ない,上治氏はこの化石群が舞子の貝化石群に矧以している点などから,本層を下部洪積層即ち 明石層群のものと考えた。然しこの分布が非常に局部的であり,また地層の状態からも明石層群 とは考えにくい。筆者(註:小品氏をさす)は多井畑層'J)上部に含まれるのであろうと予想する。
然しこのところに海成層を爽むことは神戸層群'D地史を考察する場合興味のある事実である"と レ、う。
さて花粉化石からみると白川層と同じくNyssa‑Liquidambar‑Fiora.を含み両者密接な関係が
本邦新生代層の花粉層序学的研究 Ⅲ C6.9)
(10〕 (2)
ある.このFloraは、瀬戸内地質区に於ては二上層群原用具層が該当し,笠間・藤田両氏は二上層 群下部と神戸層群上部をほぼ同時代に対比してあられるo Lたがって花粉層序学上は多井畑貝化 石層は神戸層群の一部であり,小島氏の予想と一致する。
(7)
三木氏はわが国の26産地より得られたNyssaの種子化石について詳細な研究を華表されたが, 共存する代表的な属のうち,しばしば見出されるものはPinus trifolia, Seq〝oia,Metasequoia, Glyptostrobus, Carya, Liquidambar, Styrax等であるという,これは花粉の場合とよく似
ているO葉の印痕化石に基く白川Floraとして88種の植物があげられ,そのうち絶滅属の百分率 はnoo/で中新世後期を示すといわれているO このうち裸子および被子植物の属は47あり,花粉に
よって示された属と共通のものは僅かに12,枝葉化石では存在の知られなかったもの15属あり, そのうちNyssaのような本邦での絶滅属やCf. Epilobiumのようなものも含まれている。したが って葉化石のみで絶滅属の百分率を求め時代を決定することは危険であろう。
3.明 石 屠 群
第3図 明石層群および播磨層群花粉分析試料採集地点
(70) 島 倉 巳 三 郎
明石層群はその上位の播磨層群とともに明石市の西北海岸,林崎〜東二見問に露出し,その層 序は前頁ようになっているという。
午、ご層\試
了'I‑''嘱 Abies
多\ 纏
1 icea Pin us u suga Aff. Larix Taxodiaceae Juglan s I terocarya Carya
Alnus Quercus tagus
6Whォ
Carpin us Corylus
iJ lmus Zelkova Pers icana A maran thus Nuphar Ti lia
Acer Berchemia Rhus E laeagn弘S Gera nium Iiux us Sapium Ludwigia Styrax Trapa Ericaceae
Ilex
範mplocos
¥ iburnum Lon icera
Patr in ia Compositae
3 一 十 十 十 + +
⊥
5 一 十 十 + 十 十 十
.. .
林 崎 層
犀風捕層
+ 十 十
+ 十 +
十 十 十 十 十 + + 十
←
西八木層
7
一
+
+
+
+
‑
+
‑
+
十 十 十 + + + + + + + +
十 十
+ 十 十 十 十
じ s m
^
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+ 十 十 十 +
+ ! 十
十 十 + 十 十 十 十 十 + + + 十 十 + +
+ +
+
十 十 十 十 十 十 十
近似する種子・枝葉化石(5)
Abies firma Picea polita
Pinus parviflora, P. sp.
Metasequoia japonicα, M. distica
Juglans cinerea, J. Sieboldia I terocarya stenoptera Carya akashiana
Quercus crispula, Q. serrata lagus crenata, F. microcarpa Betula carpinifolia
ulmus parvifolia Zelkova I ngeri
Nuvhar sp.
Acer Nordenskioldi, A. rufine Berchemia racemosa
hlaeagnus akashiensis
Jluxus japonica
Sapium sebiferum var. pleistoeana Styr伽japonica, S. Obassia Trajpa incisa
llex rornot紬
Symplocos crataegoides
これらの地層から不特定の間隔で47試料を採集したが,その位酎ま第3図に示してあるO試料 の層準は鹿聞氏の附図を現場で対照して決めた。試料の殆ど全部から美事な花粉胞子化石を多数(8)
本邦新生代層の花粉層序学的研究 Ⅲ (71)
分離することができたが,その主なものあげると前頁の通りで図版2に代表的なものを示した。
なあ花粉の種類は極めて多く未決定のものも少くないOつぎに適当な35試料について500内外 /j主要花粉の百分率を求めたが,そのPollendiagramを示すと第4図のようになるo
林崎層の試料は凝灰岩層のすぐ上から採集したものでAbies,Picea等大形のvesculate‑pollen が比較的少く, Zelkova‑Ulmusが著しく多いほか,大多数の試料ではLoniceraもかなり含まれ ているO ただN0.8とNo.36ではZelkova‑Ulmusが極めて少なく更にN0.8ではIlexが甚だ多
く,いすれもほかのものと異っているO
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第4図 明石層群および播磨層群のPollendiagram
界風滴層の試料は粘土質の部分から採集したもので変化が著しく一定の傾向は認められない が,大ざっぼに分けると3つの型になるようである。第1はNo.17,No.18のどとくAbiesが圧 倒的に多くZelkova‑Ulmusが極端に少いもの,第2はPicea‑Pinus等小形vesculate‑pollenがやや 多くZelhova‑Ulmusは普通量のもので,東南部地域の試料に見られる。第:3はvesculate‑pollen が比較的少く, Zelkova‑Ulmusのやや多いもので西北部地域の試料に多い。しかしこまかく見 るとある1‑2種の花粉が特に多くなっていることがある。すなわちNos.14,15はJlex‑Viburnum
C72) 島 倉 巳 三 郎
が, No.16はTaxodiaceaeが, Nos.19, 20, 21は Tsugaが, Nos.22, 24はSapiumが著し く多くなっている No.17は垂直方向の変化をみるため次のような崖から採集したものである が,その分析結果はよく類似している。
表 土 (4m) 偽層著しい砂層 (3m)
炭質砂質泥岩 (0.2m) 試料No.17C 砂 質 泥 岩 (1.0m)
砂 層 0‑5m)
砂質泥岩,流木を含む(0.2m‑・‑・)試料No.lTB 砂 層 (0.3m)
砂 質 泥 岩 (0.5m)
やや炭質の砂質泥岩(0.3m) ‑‑ No.lTA やや硬い青色泥岩(2.0m+)
なおNo.19にはSponge‑spiculeらしいものが含まれており,前者の中にはCymbella,Cyclotella,.
Gomphonema, Melosira等が見出された。
藤江層の試料はAbiesが甚だ少く,Zelkova‑Ulmus, Sapium, Ilex, Lonicera等がかなり多く なっているが, N0.4はPicea‑Pinusが極めて多く, Sapium, Ilex, Loniceraがごく僅かで前者 とは著しく異っているO安藤氏によると,この試料は藤井層に属するかやや凝わしいものである。
東二見層の試料は砂層中にうすく爽まれている粘土質の部分でAbiesが多く, Zelkova‑Ulmus が少ないという共通性はあるものの, No.25はElaeagnusが, No.26はPinusが, No.27は Taxodiaceaeが著しく多くなっている。 TaxodiaceaeはこれがMetasequoiaであるかCrypt0‑
mertaであるか今のところ確定できないO
西八木層の試料は砂磯層の上にある粘土質の部分から採集したものでAbies‑Pinusおよび了もu‑
ga等のConifer‑pollenが極めて多く, Zelkova‑ulmusは甚だ少い Persicarisa, Amarantus, Compositae等の草本花粉も多くなっており,下位の地層のものと著しい相違を示しているo Ta‑‑
xodiaceaeの花粉もかなり含まれ形態学的証明ではないがCryptomeriaであろうo なあ珪藻化石' も含まれており, Cyclotella, Naviculla?等のほかCossinodiscusが見出されたo
さて花粉分析の結果に基いて,従来の層序関係を検討してみると,林崎層は1‑2の興る試料も, あるが共通の特徴が認められ,一つの層として差し支えなかろう。犀風浦層はかなり複雑で前述
・ I : :・、''蝣)・蝣' ' ・,‑1 ・kj..・.蝣1' ∴'・)、 一・I !'ll二 、 ∴ ∴一一
あまり連続しない。第2,寡.3型はその東南部および西北部にあり,いろいろ変化を示すO この ことは当時の森林構成が近距離でも異なり,堆積物にその林況を反映したためによるものか,也, 層成立の際の運搬堆積現象によるものか決定できないが, i′まかの地層と比較した場合前者とは考
(ll)
えにくいO 高井・棚井両氏は界風滴層と上位層との不整合問題を論じたとき次のように述べてあ られる。
"大久保町西八木附近の海岸に於ては,一見すると犀風ケ浦層の号於泥岩が凹状地を為し,それ を砂磯及び黒色泥〜泥質砂が埋めているのが認められる。従来,本地点に於ては洪泥岩と砂磯及 びそれより上部層とは不整合とされ,面も之が一応古生物学的にも根拠付けられ両者の間隙は比 較的大きいと考えられていた。然し乍ら,演者等は之に疑問を懐き,此の所謂凹地の西端の部分 の著しい崩土を取除いた結果,之等は横に岩相が漸移している事が明になったo即ち本地点は堆 積当時水底に於て大きな底流が存在し,その底流によって他と異る堆積物が徐々に累積的に運搬
本邦新生代層の花粉層序学的研究 Ⅲ (73) 堆積されたものであろうo此の他,海岸に於て淡泥岩中のSand‑lens,及び凝灰岩の厚薄等の状 態より見ても,海叉は湖の中の水の連動による堆積が考えられる。"
この底流・再堆積が界風滴層の生成当時にも行われたとするならば,多少説明がつくように思 われる。
播磨層群の藤江層は層位疑問の1伊腫除けばZelkova‑Ulmus, Sapium, Loniceraに富むとい う共通性があり,この特徴は犀風滴層の西北部の試料に殆ど一致し林崎層のあるものにもやや似 るO鹿間氏は藤江闇を舞子貝層に対比し,藤田氏は舞子貝層を明石層群に含まれるものとしてお
られ,池辺,市原,小黒氏等は谷八木砂磯層と同じものとされているが,後者から花粉の検出を していないから何とも決められないO 東二見層は鹿聞氏によって藤江層に対比されているが, vesculate‑pollenが甚だ多く, Sapiumを含ます後者とは著しく異なり,むしろ界風涌層の第1 型にいくぶん類似する。東二見層と藤江層は地域的に最も離れ,積成盆地も違って患ったかもし れないから,花粉構成の相違をもってただちに対̀比を云々することはできないが,とにかく考慮 する必要がある。
西八木層の花粉構成は独特で,そ,D上保存状態も生々しい感じがあり,下位のすべての地層群 のものとは著しく異なるから,この間に地史的変化があったものと思う。花粉分析によって不整 合をきめるべきではないが,西八木層と下位地膚群との境界は,藤江層と界風滴境との問のそれ にくらべて著しい。
明石層群の地質時代については,示準となるような重要な花粉化石を検出できなかったからナ いままでの見解に対してつけ加えることはない。ただ大阪層群や古琵琶湖層群などの下部層から
(6)
普通に見出されているLiquidambarを欠くことは,木屑群が鮮新統上部であるとしてもその最
(3)
上方を示すものではあるまいか。むしろ一部の人々が書いておられるように木屑群を洪積疏下部
(12;
またはI2,あるいはIlを洪積世と見ることも花粉層序学上差し支えない。この場合Metasequoia の消長が問題となるo IlとI9を区別する決め手と考えられているMetasequoia を花粉によって 確実に識別することは今のところむすかしいから,これに代わる特Jt属または花粉フロラを確立 することが望ましいC
藤江層からはOstreaやSaxidomus等の貝化石を産し‑一部は海戒と考えられているが,扱化石 上の証拠は得られなかった。西八木層に於てはCossinodiscusを達し,少くとも一時海水の影響
(6)
をうけたものと思われる。以前三木氏は西八木層を浅海性の堆積物とされたが,奈良盆地周辺の一
XX
大阪層群相当闇も野口氏によれば時々海水の影響をうけたことが含有珪藻から推察できるという から,瀬戸内地質区の淡水性積成盆地に於ては,このような現象はそう稀ではなかったであろ
う。
4.摘 要
v I ・j、 ‑・
(1)神戸層群の花粉構成はNyssa‑Liquidambaγフロラで,白川層・奥畑層と多井層とは小異 はあるもの大きく見ればよく顛似する。
(2)多井畑貝化石層もNyssa‑Liquidambarフロラを含み,神jj層群の一員としてよい。
(3)明石暦群犀風滴層の花粉構成はある群毎に著しく変化L,この地層は特別な運搬.再堆蹟 をうけたもののように思われる。
(4)藤江闇と束二見層とは花粉構成が甚だ異るO藤江層は弊風滴層の‑1・部乃至林崎の一部に嬢
74) 島 倉 巳 三 郎 似するところがある。
(5)西八木層は特別な花粉相を示し,下位の地層とは大きな隔たりがある。なあ本層は部分的 に海水の影響をうけたと思われる。
引 用 文 献
(1)安藤保二(1956):多井畑且化石層の再出現(予報).兵庫生物in, 3‑
(2)笠間太郎・藤田和夫(1957):日本の新生代の堆積区とその変遷(1).新生代の研究24‑25号 (3)小畠信夫(1956) :神戸市白川峠化石採集及び神戸市周縁の地質見学案内,日本地学教
育研究会第10回全国大会見学案内p・7‑20.
( 4 ) Noguchi.Y. (1956) : Studies on the Fossil Diatom and Diatom‑bearing Strata near Nara Citv. Graduation thesis of Nara GaKugei Univ, No.9
(5)松下 進(1953):日本地方地質誌 近畿地方
(6)三木 茂(1936):明石旧象化石含有層内の植物化石'地球XW, 3.
( 7 ) Mlki,S. (1956) : Endocarp Remains of Alangiaceae, Cornaceae and Nyssaceae. J.
Inst. Polytechnics, Osaka City Univ., Ser. D, 7, p.286‑289‑
(8)鹿問時夫(1936):明石層群について,地質学雑誌, XLHI, 515‑
(9) ‑‑ (1938):神戸層群と其の植物群,同上, XLY, 539.
(10)島倉巳三郎(1957) =本邦新生代層の花粉層序学的研究Ⅲ,二上層欝原川累層.奈良学芸 大学紀要1. 2.
(ユ1)高井冬二・棚井敏雄(1949) =明石累層に於ける所謂不整合の問題(漬旨),地質学雑誌, LT, 648‑649
02)高橋英太郎・河野通弘・長尾恵・大浜適郎(1958〕 :宇部地域の洪積層,山口大学教育 学部研究論叢l廿 pt.2.
(13)上治寅治郎(1935) :神戸市須磨区多井畑化石層,地球XX附, 1
(14) ‑‑‑ (1953) :六甲山塊地質構造の再検討,地質学雑誌 LIX, 694.
(15)池辺展生(1953) :地質学的軒こみた日本のいわゆる第4紀編年について,第4紀小委員 会日本支部連絡紙 No.1
追記:本報印刷中,市原某・小黒譲司:明石層群・播磨層群について,地球科学40, 1958.
が発表になり,文献(13)のあることも知ったOその層序は69頁に追記したが,主をこ野外観察から 決められたものらしく古生物学上の資料については述べてないo Lかしその結論は花粉層序学上 の結果と大綱においてかなりよく一致している。
本邦新生代層の花粉層序学的研究 Ⅲ 図 版 説 明
第I図版 神戸層群産主要花粉胞子化石(×350)
1. Lygodium type (Loci) 2. Mohria type (Loc.4)
3. Abies CLoc.2) 4. Jsuga (Loc.5) 5. I'inus (Loci) 6. Taxodiaceae (Loc.2) 7. Cf. Pterocarya (Loc.2) 8. Betula (Loc.5)
9. 10. d. Corylus (9‑Loc.2; 10‑Loc.1)
ll. Alnus (Loc.2) 12, 1‑ersicaria (Loc.2)
13,14,15,16, Jelkva (Partly <′蝣fcnws?) (13,
14‑Loci; 15‑Loc.2; 16‑Loc.5) 17,18,19,20. 1‑iquidambar (17,18.Loc.5;
19‑Loc.4; 20‑Loci)
21,22,23,24,25. Nyssa (21,22‑Loc.5 ; 23‑
Loc.2 ; 24‑Loc.4 ; 25‑Loc.B 3)
26,30. ′^ymplocos (26‑Loc.4 > 30‑Loc.5)
(75)
27. Staphylea (Loc.2) 28. Lonicera (Loc.4) 29‑ Cf. 1'Aaeagnus (Loc.5)
31. Tilia (Loc.5) 32. Cf. Lonicera (Loci) 33. Cf. Ilex (Loc.5)
34. Cf. Syけivlocos (Loc.1)
1 35,36.バPollenites laesus R. Potonie"
(Loc i)
37‑ Aff.砧Nyssa" of ThieiもGAtえt 1940(Loc.1)
38. Ericaceae (Loc.5) 59. Lonicera (Loc.5) 40. Compositae (Loc.21
41. Cf. BMlobium ("Iollenites oculus noctis ThiebqaRt 1940) (Loci)
42,42,43,44,45. (41‑Loci; 42‑Loc3;
43‑Loc.1; 44‑Loc.4) 45. Tetrads of. hpilobium (Loci〕
第Ⅱ図版 明石層群,播磨層群産主要花粉化石(×350) 46. 'lsuga (Loc.16,塀風浦層)
47. Taxodiaceae (Loc.27サ東二見層) Carpinus (Loc.22,犀風浦層) 49,50. Quercus (49こ‑Loc.26,東二見層;
50‑Loc.40,酉八木層) 蝣51. Ci.Fagus (Loc.26,東二見層) 52,53. Ci.Celosia (Loc.32,藤紅層) 54,55‑ Geranium (54‑Loc26,東二見層;
55‑Loc.37,林崎層) 56. Larix? (Loc.4,藤江層) 57‑ Zelkova (Loc.32,藤江層)
58. Aff. Amarantus (Loc.ll,西八木層) 59,60,51,62,63.ォapium, (59,62‑ニLoc.22,扉風
浦層; 63‑Loc.26,東二見層; 61‑Loc.
33,藤江層) 64. Acer (Loc.30,林崎層) 蝣65,66‑ iStyrax (Loc.I6,醇風浦層)
67,68. Nuphar (67‑Loc33,藤江層;
58‑Loc.40,西八木層)
69,70. klaeagrius (69‑Loc. 25,東二見層;
70‑Loc.33,藤荘層)
'1,72. Hex (71‑Loc.4,藤江層 72‑Loc.25, 東二見層)
73. Cf. viburnum (Loc.40,西八木層) 74. Tilia (Loc.16,醇風浦層)
75. Cf. Buxus (Loc.33,藤江層) 76, Khusi (Loc.20,醇風浦層)
77,78. Lonicera (77‑Loc.33,藤江層; 78
‑Loc.27,東二見層)
79,80‑ Ericaceae (Loc.16,醇風浦層) 81・ Aff. Berberis? (Loc.19,醇風浦層) 83. Trapa (Loc.19,犀風浦層)
84. Compositae (Loc.25,東二見層) 85. lersicaria (Loc22,犀風浦層) 86,87. Indeterminable (Loc.13,西八木層)