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実験的面接における言語応答の認知水準に及ぼす発 達的介入の効果

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実験的面接における言語応答の認知水準に及ぼす発 達的介入の効果

著者 玉瀬 耕治, 光武 健介

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 42

号 1

ページ 167‑181

発行年 1993‑11‑25

その他のタイトル Effect of Developmental Intervention on Cognitive Levels of Verbal Responses in an Experimental Interview

URL http://hdl.handle.net/10105/1735

(2)

実験的面接における言語応答の認知水準に 及ぼす発達的介入の効果

玉 瀬 耕 治・光 武 健 介*

(奈良教育大学心理学教室) (平成5年4月30日受理)

カウンセリングの技法は、その根拠となる理論によってさまざまなものが開発されている (Cormier & Cormier, 1985; Larson, 1984)。カウンセラーが1つの理論枠にこだわりすぎると、

クライエントが置かれている状況に合わせて異なる技法を効果的に用いることができなくなる。

とりわけ、カウンセリングを学ぶ初心者はこの点に留意する必要があるといえる。たとえば、ク ライエントの内的世界にこだわりすぎて、クライエントの現実的行動への対処が遅れたり、不適 切になったりしている事例が見受けられる。また、クライエントが述べている言葉と、カウンセ

ラーが使っている言葉の水準がかみ合っていないと思われる場合もあるIvey (1986; 1991)が 提唱する発達カウンセリング・療法においては、クライエントの認知的な発達水準に合わせてカ ウンセリングの技法を選び、その水準にもっとも通した介入を行うべきことが強調されている。

この考え方は、技法は技法として習得し(Ivey & Authier, 1978; Ivey & Gluckstern, 1982)、

可能なかぎりクライエントの状態に合わせてあらゆる技法を適用しようとするものである (Ivey, 1991)c ただ、クライエントの状態に合わせるといっても、それはどういう視点で捉えた 状態かが問題になるであろう。この点についてIvey (1991)は、すでに確立されているさまざ まな発達理論を参考にすべきであると考えている。彼は、カウンセリングを発達援助の手段とみ なしており、カウンセリングによってクライエントの発達を促進できると考えている(Ivey, 1991; Ivey & Goncalves, 1989; Ivey & Ivey, 1990)。発達理論にもさまざまなものがあるが (村井、 1986;村田、 1989)、カウンセリングを発達援助の技法であるとする観点に立てば、これ らの多様な発達理論に基づいてクライエントの状態を捉えることができよう。

本研究は、 Ivey (1986, 1991)の発達カウンセリング・療法(Developmental Counseling &

Therapy, DCT)の考え方に従って、発達的介入の効果を実験的に検討しようとするものである。

まず、これに関連するわれわれの先行研究について述べることにする。玉瀬・加藤(1990)は大 学生を面接の対象として、印象に残った過去の出来事に関する質問を行い、質問の仕方を3通り に変えて事前と事後の査定における変化を調べた。処遇段階における質問の仕方については、叱 られた過去の事実だけを尋ねる事実質問群、叱られた場面での本人の心情を尋ねる本人心情質問 群、および叱られた場面での叱った相手の心情を尋ねる他人心情質問群が設けられた。このよう

な処遇によって得られた興味ある結果は、他人心情質問群の事後査定において、事実応答の割合 が減少し、心情応答の割合が増加したことである。この結果は、限定された数の質問ではあって も、質問の仕方によって被面接者の応答を変化させることができることを示唆している。

'現在 奈良教育大学大学院教育学研究科修士課程

167

(3)

しかし先の研究では、応答の認知的な発達水準を査定することや発達水準に合わせて質問を配 列し、処遇において発達的介入を行うという発想は含まれていない。玉瀬(1991)は、基本的な 手順は先の研究にならって、処遇段階で異なる発達水準に適合する質問を行った場合にどのよう な効果が見られるかを検討した。大学生を対象にして、自分にとって大切な過去の出来事を尋ね (事前、事後査定)、処遇段階ではIvey, Rigazio‑DiGilio, and Ivey (1987)に模した発達水準 の異なる処遇質問を行った。処遇質問には、客観/具体的質問、般化/形式的質問、および視点 変換的質問の3種類が用いられた。般化/形式的質問群では客観/具体的質問に加えて般化/形式 的質問が行われた。視点変換的質問群ではより低い2つの水準の質問に加えて視点変換的質問が 行われた。その結果、いずれの群でも事後質問において事前質問よりも応答の発達水準は高く なったが、統計的に有意な変化は般化/形式的質問群においてのみ認められた。このことは、事 前質問での発達査定で、参加者の多くが客観/具体的水準以下に留まっていたこと(83%)と関 連づけて考察された。すなわち、視点変換的質問は参加者にとって、処遇の水準が高すぎたため に効果が現われなかったものと考えられた。われわれは、この研究(玉瀬、 1991)で初めて参加 者の言語的応答に基づく認知的発達水準の査定を試みたのである。

玉瀬(1992a)は先の2つの研究のパラダイムを踏襲し、さらに質問の仕方の問題を探究した。

すなわち自分の性格に関連づけて過去の出来事を想起させる際に、その出来事の肯定的側面に焦 点をあてて質問した場合と否定的側面に焦点をあてて質問した場合では、前後で述べる査定質問 においてどのような発達水準の違いが見られるかを検討した。その結果、いずれの処遇質問も発 達水準を変化させるのに有効であったが、否定的側面に焦点をあてた質問の方がより大きな変化 をもたらした。このことは、 Ivey and Ivey (1990)が取り上げている水平的発達と垂直的発達 の問題に関連して興味深い。水平的発達とはクライエントの現在置かれている発達水準を機能的 に拡充することであり、垂直的発達とは、より上位または下位の水準へと発達水準を移行させる ことである。クライエントの現状を肯定し支持することは、機能的拡充を促すと仮定される。ま た、クライエントの現状を否定し新たな課題に直面させることは、発達的移行をもたらすと仮定 される。これらのことを実際のカウンセリング場面で実現するのには、多くの問題を考慮しなけ ればならないことは言うまでもない(Lyddon, 1990)。

玉瀬(1992b)は、同様のパラダイムで、内省発達的面接(Tamase, 1989)で用いられてい る質問と内観療法(三木、 1976;吉本、 1965)で用いられている質問の効果を比較した。その結 果、事実想起に焦点をあてた内省発達的質問の方が内観療法的質問よりも事後査定における発達 水準により大きな変化をもたらした。内観療法の事態はここで行われたような即時的応答を意図 するものではないので、得られた結果は必ずしも両者の効果性の違いを意味しないが、質問の仕 方によって発達水準の査定で異なる結果が得られたことは注目される。

以上のような先行研究をふまえて、本研究ではより効果的な発達的介入の方法について検討す る。先行研究では、面接における主題として、自分にとって大切な過去の出来事(玉瀬、 1991)、

性格(玉瀬、 1992a)、母子関係(玉瀬、 1992b)が扱われている。本研究では主題として、 "友 人関係"をとりあげる。発達水準を査定するにあたって、現段階ではさまざまな領域での査定基 準を作成する必要があり、その試みとして大学生にとっては発達課題としても重要であり、多様 な発達水準が得られると期待される主題として友人関係を取り上げることにした。発達的介入の 方法については、玉瀬(1991)とは異なり、事前査定の水準と同じかもしくは近い水準のみで介 入を行う場合、より遠い水準のみで介入を行う場合、および近い水準から遠い水準への移行を行

(4)

う場合について比較する。 Ivey and Ivey (1990)の考えに従えば、参加者の事前の発達水準と 同等の質問を行う場合は水平的発達を促すものと期待される。参加者の事前の発達水準よりも高 い(遠い)水準の質問を行う場合は垂直的発達を促すものと期待される。うつ病患者を用いた Rigazio‑DiGilio and Ivey (1990)や子どもを用いたIvey and Ivey (1990)では、被面接者は かなり発達的介入に応じて応答を変化させている。本研究の参加者は大学生であるので、 Piaget (1966)の発達理論に従えば形式操作的段階にあると仮定され、潜在的には形式操作的水準の介 入を受け入れることができると考えられる。垂直的発達をより効果的に促すためには、事前の水 準と同じ水準から始めてより高次の水準へと移行する方法が適していると推測される。また、本 研究では、発達的介入とは無関係な質問を行う統制群を設けて処遇の効果を検討する。なお、本 研究で発達水準(developmental level)という場合は、主に発達の機能的側面に焦点をあてて おり、構造的な意味での発達段階(developmental stage)とは異なるものとして用いている。

先行研究の結果から、大学生を参加者とした場合でも、主題にかかわらず事前応答の認知的水 準は具体操作的水準にある者が大多数であると予想される。そこで、具体操作的水準を基本的な 水準と仮定し、その水準での介入を行う場合(具体操作的質問群)、それよりも高い水準での介 入を行う場合(形式操作的質問群)、および具体操作的水準から形式操作的水準へ移行する介入 を行う場合(混合質問群)を設けた。具体操作的質問では、過去の特定の友人との出来事を具体 的に述べることを求める。形式操作的質問では、過去の数人の友人との出来事に対する共通性を 述べることを求める。混合質問では、質問の前半部は異体操作的質問を行い、質問の後半部は形 式操作的質問を行う。このような発達水準の異なる処遇質問によって、友人関係の捉え方にどの ような変化が見られるかを検討する。

方   法

実験計画  4 × 2の要因計画が用いられた。第1の要因は質問内容(具体操作的質問、形式 操作的質問、混合質問、統制質問)で、被験者(参加者)間要因であった。第2の要因は発達査 定(事前、事後)で被験者内要因であった。

参加者 国立大学教育学部の1回生から4回生までの学生80名(男子32名、女子48名) が実験に参加した。これらの参加者は、 20名ずつ異体操作的質問群(男子8名、女子12名)、

形式操作的質問群(男子5名、女子15名)、混合質問群(男子8名、女子12名)、統制質問群 (男子11名、女子9名)のいずれかへ割り当てられた。

材 料 (1)質問項目の作成 質問項目はIvey (1991)の標準認知発達的面接の質問 項目と玉瀬(1991)の内省的面接における処遇質問を参考にして作成された。実験的処遇の効果 を査定するための、事前質問と事後質問は同じ質問であり、参加者の"友人関係"について報告 させるものであった。参加者は、その事について"できるかぎり詳しく"話すように求められた。

実験的処遇段階における質問は、友人関係における参加者の発達水準を変化させるように試み られたもので、 4通りの質問リストが作成された。これらの質問リストは友人関係における出来 事について具体的に尋ねるもの、共通性を尋ねるもの、および友人関係とは無関係なことを尋ね

るもので、 4問ずつ作成された。

具体操作的質問(以降具体質問と略す)では、過去の友人関係の中で、最も親しい友人との出 来事について貝体的に述べるように求められた。形式操作的質問(以降形式質問と略す)では、

(5)

過去の友人関係の中で、親しい数人の友人との出来事についてその共通点を述べるように求めら れた。混合質問では、 4つの質問のうち、前半2問は異体質問、後半2問は形式質問の形式で尋 ねられた。統制質問では、友人関係とは無関係な分野で、興味を持った事柄について4つ尋ねら れた。

以上、口頭による全質問終了の後に、自分がどのような応答をしたかについて質問紙による内 省報告を求めた。表1は本実験で使用した質問項目のリストを示したものである。

(2)発達査定基準の設定 Ivey (1991)およびわれわれの従来の研究における発達水準査 定基準を参考にして、 4つの発達水準および各水準を前期と後期に分けた合計8つの発達水準に 関する査定基準を設定した。表2に各水準の定義と応答例を示す。応答例は本研究結果の予備評 定に基づいて作成されたものである。

手続き  本実験は個別的に行われた。参加者は面接室へ案内され、実験者と90度の角度 で向き合って椅子に座るように求められた。次に以下の教示が与えられた。 "これから私はあな たにいくつかの質問をします。その質問の答えに良い答えとか、悪い答えとかはありませんので、

あなたはその質問に対して恩う通りに答えて下さい。なお、結果の処理のために会話は録音させ て頂きますが、結果は統計的な処理のためだけに用いますので、個人資料については公開される ことはありません。あなたのプライバシーは守られますので、安心してお話し下さい。"実験に 入る前に、参加者の緊張を和らげるために、また集中して取り組ませるために、参加者に"まず、

目を閉じてリラックスして下さい。"という教示が与えられ、 20‑30秒の沈黙が置かれた。こ の後、実験者によってテープレコーダーのスイッチが入れられ、実験が開始された。実験者は、

会話を自然なものにするために、参加者の応答に対してうなずきや、相づちなどの、最小限の励 まし(Ivey, 1983)を行った。

事前質問では、 "あなたの友人関係についてお聞きします。あなたはこれまでどういうふうに 友人と接してきましたか。できる限り詳しく話して下さい。"という質問が行われた。参加者が 応答を終えた後で、実験者は処遇段階に移行した。

処遇段階では、事前段階終了後直ちに処遇質問に入った。各群の参加者は処遇条件に従って質 問された(表1)。質問項目が全て終了し、それに対する参加者の応答が終了した後、事後質問 に移行した。

事後質問では、事前質問と同様の質問が行われた(表1 )。事後質問に対する参加者の応答が 終了した時点で、録音テープが止められ、口頭による実験が終了した。その後、参加者には筆記 用具と内省報告の用紙が手渡され、記入するよう求められた。

記録と分析  録音された全会話について録音テープが再生され、事前質問及び事後質問の応 答について逐語記録が作成された。この逐語記録をもとにして、各応答における発達水準の査定 が行われた。各応答の発達水準査定では、前述の発達水準査定基準に基づいて、応答を8つの水 準に分類した。発達の最も低い水準には1点を与え、最も高い水準には8点を与えた。水準の決 定には、応答全体を考慮しながらその中で最も優位な発達水準を選び、その参加者の応答に対す る水準として決定した。発達水準の査定は、 2段階に別けて行われた。まず、実験者(第2著 者)と、実験者以外の2名の評定者により評定が行われた。評定者の2名は心理学専攻の学部4 回生であり、実験者とは別に用意された逐語記録と査定基準用紙を用いて、査定基準の説明と評 定訓練を十分受けた後、それぞれ独立に評定を行った。その後、 3人の評定が一致しなかったも のについては、評定者2名が一致したものを優先しっつ、話し合いにより、最終的に合意しうる

(6)

表1 質問項目リスト 1事前段階

事前質問(全群共通)

・あなたの友人関係についてお聞きします。あなたはこれまでどういうふうに友人と接してきまし たか。できるかぎり詳しく話して下さい。

2 処遇段階 具体操作的質問群

・あなたの高校時代の友人の中で、あなたが一番親しくしてきた人を一人思い浮かべて下さい。あ なたはその人とどのようにして親しくなりましたか。具体的に話して下さい。

・あなたはその人に対して、どのように接してきましたか。具体的なでき事に即して話して下さ い。

・あなたはその人から、どんな影響を受けましたか。具体的に話して下さい。

・その人との良い友人関係を維持する為に、あなたはどんな行動を取るように努めてきましたか。

具体的に話して下さい。

形式操作的質問群

・あなたの高校時代の友人の中で、あなたが親しくしてきた人を数人恩い浮かべて下さい。あなた はその人達と、どのようにして親しくなりましたか。できるだけ共通している所を話して下さ い。

・あなたはその人達に対して、どのように接してきましたかoできるだけ共通している所を話して 下さい。

・あなたはその人達から、どんな影響を受けましたか。できるだけ共通している所を話して下さ い。

・その人達との良い友人関係を維持する為に、あなたはどんな行動を取るように努めてきました か。できるだけ共通している所を話して下さい。

混合質問群

・あなたの高校時代の友人の中で、あなたが一番親しくしてきた人を一人思い浮かべて下さい。あ なたはその人とどのようにして親しくなりましたか。具体的に話して下さい。

・あなたはその人に対してどのように接してきましたか。具体的なでき事に即して話して下さい。

・次に先程の人に加えて、あと数人思い浮かべて下さい。あなたはその人達からどんな影響を受け ましたかOできるだけ共通している所を話して下さいo

・その人達との良い友人関係を維持する為に、あなたはどんな行動を取るように努めてきました か。できるだけ共通している所を話して下さい。

統制質問群

・最近のでき事の中で、特に興味を持った事について、どんな事でも良いですから、そのことにつ いて話して下さい。

・最近の学校間題の中で特に興味を持った事について、あなたの意見を話して下さい。

・環境問題の中で特に興味を持った事について、あなたの考えを話して下さい。

・ E]本の国際協力について、他の国に対し、 E]本は何をしたらよいと恩いますか。

3 事後段階

事後質問(全群共通)

・今まで話して下さったことを参考にして、もう一度あなたの友人関係についてお聞きします。あ なたは、どのように友人と接してきましたか。できるかぎり詳しく話して下さい。

発達水準を決定した。次に指導者(第1著者)が3名の評定者とは独立に評定を行った。先の3 名の評定者による評定と指導者の評定が不一致な部分については再度実験者と指導者が独立に評 定をし直した。これを2度繰り返し最終的に不一致な部分についてのみ、合意できるまで2人で 話合いを行い、最終的な発達水準を決定した。

応答時間として、参加者が応答を初めてから、応答を終えるまでの時間が測定された。応答を 始める前の間投詞や、応答の初めの部分における質問項目への問い直しや質問内容の繰り返しは、

応答として取り上げられなかった。しかし、いったん応答が始まってからの間投詞、質問内容の

(7)

表2 発達水準査定基準と各水準の応答例 感覚運動的水準

・外面的な状況説明に留まっている。

・主観的、自己中心的に述べられている。

・因果的に述べられていない。

・感覚的、感情的に述べられている。

・断片的な事実の羅列に留まっている。

初期(1‑1)

・話の内容が首尾一貫していない。

・全体が要約されていない。

・外面的要素の羅列に留まっている。

・話していることが断片的で因果的でない。

・感情的要素が強い。

(応答例)友人と仲を保つというか、あまり、引くところは引くっていうか。仲良くやってます。

後期(1‑2)

・事実の外面的な事だけが述べられている。

・友人関係の捉え方が自己中心的で、不合理なものである。

(応答例)学校で一緒に講義受けたり、御飯食べたりとか、そういうのが中心で、家に帰ってから というのはあまり付き合いがなかったO

Ⅱ 具体操作的水準

・因果的に述べられている。

・友人に対する自己の接し方が客観的に述べられている。

・特定の友人との関係について具体的説明がなされている。

・友人との関係において、内面的な感情や思考が述べられている。

・特定場面の分析に留まっている。

初期(n‑3)

・友人関係における具体的な例が述べられている。

・友人に対する自己の接し方が具体的に述べられている。

・友人に対する自己の接し方の根拠がはっきりしていて、因果的である。

・友人関係における自己の複雑な内面の感情や思考は述べられていない。

(応答例)自分から相手のほうに合わせていくっていうか、あまり自分の意見は前に出さないよう にしています。例えば、友達と話をしてて、友達と自分の意見が違う時には、できるだけ意見の衝突 が起こらないように、相手の言うことを否定しないようにしています0

後期(n‑4)

・友人関係についての具体的経験が自分の視点で整理されている.

・友人関係における、自己の内面的な感情や思考が述べられている。

・友人との接し方について、感情や思考の分析が行われ、その根拠(因果関係)が示されている。

・特定場面の分析のみで、他の場面との比較などの分析はされていない。

・友人との接し方について、自己の思考や行動のパターンを発見するには至っていない。

く応答例)一番最初にくるのは、喧嘩をしたくないっていうか、喧嘩をしたら相手も自分も嫌な気持 ちになるから当たり障りの無いようにっていう付き合い方で、でも、まったく自分の為だけにその当 たり障りの無いようにするんじゃなくって、やっぱり相手も傷つけたくないっていうのんから(中 略)喧嘩したくないなぁ、当たり障りないようにしたいなっていうのは一番前面にあったと思いま す。

Ⅱ 形式操作的水準

・親密度によって友人関係が比較され、新しい場面を想定して分析されている。

・特定の友人との関係について、幾つかの場面を比較して説明されている。

・友人関係に関わる、自己の内的で複雑な性格特徴について具体的に述べられている。

・友人関係に関わる自己の思考や行動パターンが兄いだされている。

※パターンについては異体的事実の裏づけが必要である。

初期(Ⅲ‑5)

・親密度の異なる複数の友人との関係が比較され分析されている。

・特定の友人との関係について幾っかの場面が比較され分析されている。

・友人との接し方について、自己の思考や行動のパターンが述べられている。

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く応答例)親しい友人に対しては、その友達が困っている事があったら、自分が可能な限りの手助 けはしてやりたいという気持ちが常にあるんです。でも、その反対に、そうでない友人に対しては、

対人関係を損わないように、会ったら話したりとかはするんですけど、自分の事おいてそいっの為に 何かしてやろうという気はなくって‑0

旧姻[fQBffi

・過去の具体的経験を通して友人関係が分析され、現在との関わりが述べられている。

・友人との接し方についての自己の思考や行動について、様々なパターンが述べられているO く応答例)親しい友達とは一緒に映画を見に行ったり、飲みに行ったりとかはするんですが、そう でない友人とは適当に会って話したり、挨拶したりっていう感じで、分けて付き合っています。でも 基本的にはどっちの友達に対しても自分の意見はきちんと伝えるようにはしています。

Ⅳ 後形式的水準

・他者の視点から自己の友人関係が述べられている。

・自己の思考や行動のパターンが分析され、それをどのように変えるかが述べられているo

・新しい場面への適応の為に、自分の行動をどのように変えていくかが述べられている。

初期(IV‑7)

・友人との接し方について、他者の視点から述べられている。

・友人との接し方について、自己の考えとは違う考えにも立って考えられている。

・自己の思考や行動のパターンが分析され、自己の欠点や改善すべき点が兄いだされている。

(応答例)大学に入ってからは、特に親しい友人を作ろうという気持ちよりも沢山の人と話して、

沢山の考えに触れたいと思ってるんです。その中で、気の合う人と巡り合いたいという気持ちがあり ます。唯これは広く浅くの付き合いと取られるかも知れないんですけど‑0

後期(Ⅳ‑8)

・他者の視点から自己が見直され、その上で自分はどうしていくのかについて述べられている。

・自己の思考や行動パターンが様々な視点から分析され、新しい場面での自己をどのように統制すべ きかが述べられている。

く応答例)僕の友達に対して、今まで僕は"それ間違ってるんちゃうか"と思った時に、 "そんなこ とするなよ"と強く言えなかったんです。そんなことを言ったら友達が離れていくと思ってたんで す。でも、それって結局事無かれ主議っていう感じですよね。 (中略)他の人は卑怯だと感じると恩

うんです。だから、急には無理だと思うから、徐々に友人に対して、言わなければいけない事ってい うのを言っていこうと恩います。

繰り返し、および言い直しは応答として採用された。応答時間の測定には、 1/100秒単位で測定 可能なデジタル式ストップウォッチが使用された。測定はそれぞれ2度ずつ行われ、その平均値 が算出された。 1/10秒以下を切り捨てた値が測定値として使用された。

結   果

発達水準の評定  事前および事後査定における評定の最終段階の一致率を測定するために、

Hill (1985)のkappa係数が用いられた。各群のkappa係数は次の通りである。具体群の事前 応答においてk‑.80、事後応答においてk‑.43、形式群の事前応答において*‑.67、事後応 答においてk‑.68、混合群の事前応答においてk‑.74、事後応答においてk‑.67、統制群の 事前応答においてk‑.58、事後応答においてfc‑.85であった。全体ではk‑.69という一致 率が得られた。従って、査定の段階の客観性についてははぼ満足しうるものであったと言える。

表3は、各群の参加者それぞれの応答について、発達水準(8水準)の評定を行った結果をまと めたものである。また、表3の下欄は各群の事前および事後における評定の平均と標準偏差を示 したものである。事前応答における評定の結果を各水準の前期と後期を込みにした4水準査定法 で示せば、感覚運動的水準(8水準法の1と2)に含まれる者が33%、異体的水準(同3と4)

(9)

表3 8水準査定における各群の発達水準得点

.A∴二il.二 二∴:‑二'*'‑ ‑."‑‑‑^ 蝣*蝣‑ 三∴三

i

I

 

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3

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5 3

L O   C O 3 4

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l O   T

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T

9^K^i

co

 r

0   n U

KM ‖1

5

00 nU

c

に含まれる者が50%、形式的水準(同5と6)に含まれる者が17%となる。

発達水準の変化  処遇の効果を調べるため、表3の平均値について4(処遇)×2(査定)の分 散分析を行った。その結果、処遇の主効果(F‑ 0.36, df‑3/76)および交互作用(F‑ 0.08, df

‑3/76)は有意にはならず、査定の主効果のみが有意となった(F‑ 5.50, d/‑l/76, p<.05)。

平均値の上ではどの群でも事後の得点の方が高くなっているので、さらに各群ごとに変化の有意 性についてWilcoxonのTを用いて検定した。その結果、具体群については10%水準(N‑

ll, T‑ 14.0)で有意な変化の傾向が認められた。他の3群については有意な傾向は認められな かった。

次に、事前の水準の高さによって処遇の効果が異なる可能性があると考えられたので、統制群 を除く3群を込みにして、事前応答(4水準査定)の発達水準ごとに参加者を分類し、変化の有 意性を検討した。新たな群は、それぞれ感覚運動的水準群(N‑ 19)、具体操作的水準群(Ⅳ‑

29)、形式操作的水準群 OV‑ 12)と名付けられた。これらの各群について事前から事後‑の変 化得点(事後一事前)について検尽したところ、感覚運動的水準群(M‑0.68)ではK18)‑

3.64で1%水準で有意であった。形式操作的水準群(M‑‑0.67)では、 t{U)‑‑3.55で 1 %水準で有意であった。具体操作的水準群(〟‑0.03)では有意な変化は得られなかった(∫

‑ 0.37, df‑ 28)c

応答時間  表4は各群の事前と事後における応答時間の平均と標準偏差を示したものである。

粗点について1雷で開平変換した上で、 4(処遇) ×2(査定)の分散分析を行った結果、処遇の主効 果(F‑ 0.63, df‑3/76)および交互作用(F‑ 0.76, d/‑3/76)はいずれも有意ではなく、査定

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衷4 各群の事前および事後質問に対する応答時間の 平均(秒)と標準偏差

群 \ 質 問 事 前 事 後

具 体 質 問 群 28.30 29.60

SD 21.87 18.84

形 式 質 問 群 23.15 34.85

SD 14.02 22.4

混 合 質 問 群 32.05 39.60

SD 18.31 35.54

統 制 質 問 群 23.40 2.05

SD 17.32 19.49

の主効果(F‑ 8.72, d/‑l/76)のみが 1%水準で有意であった。これは事前よ りも事後の応答時間がより長かったことを 示している。

各発達水準の事例とコメント  応答に おける発達水準の変化が認められた事例を 各群から1例ずつ取り出し、若干のコメン トを加える。括弧内の番号は表3の個人番 号と対応している。

異体操作的質問群(No. 1 )

事前:と‑、他の人に比べて特に親し いっっつう人がおらんというか、そういう感じで接してきています。えーつと‑、だから、友達 はいるけど、距離は置いてるのが多いなっていう感じです。 (評定: 2)

事後:と、他の人に比べてやっぱりちょっと不器用に接してきたと思います。ちょっと遠慮す るっつうか、こんなことしゃべったらアカンのかなあなんていうふうに考えたりして喋らんかっ たりしてちょっと‑。 (評定: 3)

コメント:事前応答では、距離を置いた接し方という表現で友人との関係が述べられているが、

それ以上には具体的に述べられておらず、主観的な捉え方であるいえる。事後応答では、まと まった陳述にはなっていないが、自己の内面的な恩考が述べられた上で、遠慮するという表現で 友人関係が捉えられている。したがって、事前は感覚運動的水準、事後はそれよりもやや高い具 体操作的水準に入るものとみなされた。

形式操作的質問群(No. 5)

事前: (省略)いろいろ相談にのってもらったりとか、後、やっぱり友達はいて楽しい存在で すから、いっも楽しく賑やかにいてたりとか‑0 (評定: 2)

事後:やっぱり友達同士といっても、お互いにやっぱり言って良いこと、悪いことあるし、

入って良いところ、はいっちゃいけない人のパーソナルスペースみたいなものもあるだろうし、

そういうところはちゃんとわきまえなきゃいけないなぁ、ていうのと、それからやっぱり、割と 自分本位に考えてしまうところ私にあるんですけど、やっぱりもうちょっと思いやりをもって行 動するとか‑。 (評定: 7)

コメント:事前応答では、話は具体的には述べられているが、断片的で外面的な事柄に終始し ており、自己の友人関係の在り方が明確にされているわけではない。事後応答では、自己の内的 な思考が具体的に述べられており、自己の欠点についても具体的に指摘している。したがって、

事後は事前応答と比べるとかなり高い水準の応答であり、後形式的水準に達しているとみなされ る。

混合質問群(No. 20)

事前':まずは、周りの近くの子から喋っていって、それから、まぁ、そっからまた新しく友達 ができるていうー。だんだん広がっていくっていう感じで、友達はできてきました。まぁ、最初 やっぱりよく喋る子と喋り出して、それからだんだんおとなしい子でも喋れるようになっていっ た。 (評定: 2)

事後: (省略)僕もどっちかって言うたら喋っていくタイプなんで、話とって気が合う子から、

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していって‑。 (省略)ちょっと顔合わせただけでも気軽に喋れるっていうか、そういう関係で、

クラス全体と喋れるようになったって言うか。 (省略)親しい子にはやっぱり自分の気持ちを真 剣に喋れるっていう子いたし、やっぱりなんかちょっと冗談ぼく喋って、自分の本心なんかあん まり言わずに、唯なんかジョークとか言うて、笑ってたいうのもありましたけどね。人によって 使い分けてたっちゅう感じです。 (評定: 5)

コメント:事前応答では、友人をつくる順序のようなものが述べられており、話は全体として まとまっているが、内容的には外面的な事実だけが述べられており、具体性にも欠ける。また内 面的な感情や思考は含まれていない.事後応答では、 "人によって使い分けてだ'や、そのこと についての自己の内面的な思考も含まれていることから、事前よりも事後応答の方が発達水準が 高いといえる。事後応答では異なる種類の友人との対応の仕方がそれぞれ述べられているので形 式操作的水準に達しているものとみなされる。

統制質問群(No. 20)

事前:友人と‑。なるべく、まぁ、仲良くというか‑。そうですね、だから自分がその場を盛 り上げるように頑張ろうと接してきました。 (評定: 3)

事後:とりあえず友達と話してて、意見とかが食い違ったりするんです。で、僕はあんまりそ ういうふうなんで我を通さないっていうか、だから、その、友達は友達の意見として、だから、

対立ていうか、口論にあまりならないように、消極的なんですけど、すごい‑。でも、あのその 友達の意見は意見として、だから、その友達の意見は聞いて、自分の意見は殺すみたいな感じで

‑。そういうふうになるべくしてます。 (評定: 4)

コメント:事前応答では、短い陳述ではあるが友人との接し方の根拠が述べられている。しか し、自己の内的な思考についての記述や分析は行われていない。事後では、友人関係の陳述が一 貫していて、友人との接し方が貝体的に述べられ、自己の内的な思考についても触れられている。

したがって、異体操作的水準内ではあるが、事前よりも事後応答の方が水準が高いといえる。

議   論

本研究では、実験的面接において質問のテーマを友人関係とし、発達的介入を意図する処遇質 問を行って処遇の効果を検討した。処遇では、過去の友人関係について貝体的に想起させる具体 操作的質問、共通する部分について想起させる形式操作的質問、または具体質問と形式質問を半 分ずつ用いた混合質問を行った。事前質問と事後質問によって発達水準の査定を行い、処遇にお ける質問の違いによる事後の応答の変化を比較した。その結果、全体としては、事前応答よりも 事後応答の方が発達水準は有意に高くなったが、処遇による群差は認められなかった。各群ごと に分析してみると、いずれの群でも統計的に有意な変化は認められないが、具体質問群では、変 化の傾向が示されている。また、統制質問群を除いた3群について、事前応答の発達水準ごとに、

参加者を再分類し、事前と事後の変化を調べたところ感覚運動的水準群では、事後応答の発達水 準が有意に上昇し、形式操作的水準群では、事後応答の発達水準が有意に下降していることが分 かった。

まず処遇の効果について考察する。本研究では、形式質問群および混合質問群においては、事 後応答における発達水準の上昇が認められるものと期待された。しかし、結果としては、統制質 問群を含めたどの群においても類似した傾向が示され、全体として事後応答での有意な上昇が認

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められるに留まった。形式質問群の事後応答で発達水準の上昇が見られなかったことについては、

玉瀬(1991)の結果とは矛盾している。玉瀬は異体操作的質問よりも形式操作的質問によって、

発達水準が変化しやすいことを報告している。このことは事前の発達水準よりも、やや上位の水 準で介入を行うことが有効であることを示唆している。しかし、本研究と玉瀬(1991)の研究に は手続き上の違いがある。玉瀬(1991)は、どの発達水準に位置する参加者に対しても、最も低 い水準から処遇質問を始め、その後処遇条件によって異なる水準まで質問を付加している。この 手続きはRigazio‑DiGilio and Ivey (1990)と同様である。したがって、参加者にとって現在 もっとも優位な発達水準もしくはそれよりも下位の水準をまず活性化させ、その後により上位の 水準へと移行しているといえる。この手続きでは本研究とは異なり、形式操作的水準において、

事後応答における発達水準の上昇が認められたのである。このことは、基礎となるより下位水準 の発達を促すことがより上位への垂直的な発達を促す前提となることを示唆している。本研究は 事前応答で、具体操作的水準に位置する者が全体の半数を占めている。このような参加者に対し ていきなり形式操作的水準の質問によって介入を行うことは、あまり適切でなかったのかもしれ ない。

次に混合質問群について考えてみたい。混合質問群は、質問の前半と後半を2問ずつに分け、

具体質問と形式質問をそれぞれ行っている。したがって、上述のように、まず事前水準に合わせ た介入から始めて上位の水準に移行する操作を行っているといえる。にもかかわらず、この群に おいても結果は期待に沿うものではなかった。このような結果について考えられることは、本研 究ではそれぞれの水準での発達を促す質問の数が少なすぎたということである。本研究のように 質問数が4間程度であれば、参加者の現在優位な発達水準内での質問のみを行った方が効果的で あるかもしれない。 Ivey (1991)も述べているように、カウンセリングにおいて水平的な発達 を促すことは重要であり、これを十分に行うことによって、近接する水準への移行が得られやす くなると考えられる。本研究と玉瀬(1991)の結果を合わせて考えれば、参加者の発達水準より も上位の水準の処遇を行うことが有効なのではなく、参加者の持っている発達水準をまず十分機 能させた上で、発達的移行を促すことが重要であると考えられる。実験的研究においては、質問 数は限定されており、面接の進め方もかなり機械的であるので、実験者と参加者の関係は実際の カウンセリング場面とは著しく異なっている。しかし、実際のカウンセリング面接においてもク ライエントの発達水準に合わせて話し合いを進め、カウンセリングの進展とともにより高い水準 での会話を行うことが可能である。例えば、 Fukuhara (1987)はマイクロ技法(Ivey, 1983) を用いて面接し、カウンセリング中の応答の発達水準を感覚運動的水準から異体操作的水準、形 式操作的水準へと高めて、最終的には後形式操作的水準にまで移行させてカウンセリングを終了 した事例を報告している。また、 Ivey and Ivey (1990)は、披虐待児童に発達カウンセリン グ・療法を適用した事例を報告し、どのような質問によって発達水準を高めていったかを述べて いる。

次に、事前応答における発達水準ごとにまとめた3群の応答の変化について検討する。分析の 結果、感覚運動的水準群における事後の上昇、形式操作的水準群における事後の下降が認められ、

具体操作的水準群においては変化が認められなかった。この分析では、人数が少ないため(表3 参照)やむを得ず処遇条件を込みにしている。 3群に共通していることは、どのような処遇に よっても結果的には具体操作的水準に移行していることである。このことは、本研究およびわれ われの従来の研究のいずれにおいても、もっとも優位な応答の水準が具体操作的水準であったこ

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とを考え合わせると、この水準が大学生にとってもっとも安定した発達水準であることを示唆す るといえる。このことは、 Piagetの発達理論では単に大学生では形式操作的な認識が可能であ ることを示すのみで、実際の日常事象に関してはほとんどその水準での認識をしていないことを 実証するものとして興味深い。彼/彼女らにとって、形式操作的水準で応答することは可能であ るが、例えばパターン発見的な応答は会話の中で常に必要なわけではない。今後この種の研究を 進めるにあたって、日常もしくはカウンセリング中の会話において、どの程度の頻度でそれぞれ

の発達水準の応答が出現するのかを検討しておく必要があろう。 1回の面接中の会話においても 発達水準はさまざまに変化する。カウンセリング場面では、必要に応じてもっとも適切な発達水 準で応答できるように促していくことが重要であると思われる。本研究の統制群の役割について も再検討する必要があろう。統制群は時事的話題について尋ねたが、事後応答の評定で実験群と 類似のわずかな変化が見られた。このことは、単にしばらくの間面接者と会話を交わすことでも 応答の発達水準が変化する可能性を示唆している。従って、実験的処遇の効果を問題にするのに は、かなり慎重な条件設定が必要であるといえよう。統制群の設定の仕方には、本研究のように 実験群とはやや異なる活動をさせる場合や、単に待たせておく場合などいくつかの方法が考えら れるが(Baker, Daniels, & Greeley, 1990)、どのような統制群が適切であるかについてさらに 検討する余地があろう。

最後に、本研究では友人関係に関して、面接において得られた応答がかなり具体的に示されて いる。発達水準の査定については、一応の基準は作成しえたもののさらに基準を改訂し明確なも のにする必要があろう。われわれの一連の研究ではIvey (1991)らの基準を参考にしているが、

異なる理論に基づく査定基準がWeinstein and Alschuler (1985)やHamachek (1988)に よっても示されており、これらを参考にして別の基準を設定することも可能であろう。複数の評 定者による評定についても、今回はまだ十分信頼しうるものとはなっていない。 kappa係数に ついてはk‑.61程度でもカウンセリングの専門誌に報告されているので(Borders, 1991)、本 研究の結果は許容範囲内にあるといえるが、通例ではk‑.70以上の値が望ましいと考えられる (Hill, 1987)。査定基準そのものの問題と同時に、評定者の訓練の問題も今後さらに検討してい かなければならない。

要   約

大学生を面接の参加者として、事前および事後に過去の友人関係に関する質問を行い、その間 にIvey (1991)の理論に基づく発達的処遇を行って、応答の認知的な発達水準がどのように変 化するかを検討した。処遇段階では、実験条件によって4種類の異なる処遇質問が行われた。貝 体質問群では1人の友人との出来事を具体的に述べるように求められた。形式質問群では数人の 友人との出来事について共通点を述べるように求められた。混合質問群では前半に貝体質問、後 半に形式質問が行われた。統制質問群では友人関係とは無関係な事柄について尋ねられた。事前 および事後質問への応答について発達水準の査定を行い、群問の成績を比較した。その結果、全 体としては事後の方が事前よりも発達水準は上昇していたが、群ごとにみると変化は有意ではな く、群間でも有意差は認められなかった。処遇の如何に拘らず、事前査定で感覚運動的水準にあ る参加者は事後で有意に発達水準が上昇し、形式操作的水準にある参加者は事後で有意に発達水 準が下降していることが明らかとなった。これらの結果に基づいて、参加者の日常的な認知的発

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達水準の考え方、発達的介入に関する理論的問題、発達水準の評定の方法、処遇操作の問題点な どが議論された。

引 用 文 献

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{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 30, 1993)

According to Ivey's (1991) developmental intervention strategies which use develop‑

mental questioning sequences in counseling the present study examined the effects of differential questioning sequences on the cognitive developmental level of the parti‑

cipant's verbal responses in an experimental interview. Four groups of undergraduate students were constructed : concrete, formal, concrete‑formal and control groups. In the pretest phase of the interview participants were asked to remember and talk about the relationship with their friends in the past. In the treatment phase which immediately followed the pretest participants in the concrete group were asked to talk about concrete examples which represented their friendship in highschool age. The participants in the formal group were asked to talk about common patterns which represented their friend‑

ship in highschool age. The participants in the concrete‑formal group were asked to talk about concrete examples first and then to talk about common patterns in their friendship in highschool age. The participants in the control group were asked to talk about their opinion to some general issues in the present life. Immediately after the treatment the participants were asked the same question about their relationship with their friends as the pretest. According to Ivey's (1991) developmental assessment system, the participants'verbal responses which were recorded by audiorecorder and transcribed were assessed by trained judges in terms of developmental levels. Results indicated that although all groups slightly increased the developmental level of verbal responses from pretest to posttest, no increment difference was found among the groups.

The strong tendency of the participants to stay at the concrete operational level when they describe their daily life was discussed.

参照

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