運動部活動の意義と運営上の課題
−運動部顧問の在り方を探る−
The Significance of Sports Club Activities and Issues with the Conduct of those Activities:Examining the role of sports club advisors
松 井 慎 一 Shinichi MATSUI
Ⅰ.は じ め に
運動部活動は、スポーツに興味・関心のある同 好の生徒の自主的・自発的な参加により、顧問の 指導の下、学校教育の一環として行われ、体力や 技能の向上を図る目的以外にも、異年齢との交流 の中で、生徒同士や生徒と教師等との好ましい人 間関係の構築を図ったり、学習意欲の向上や自己 肯定感、責任感、連帯感の涵養に資するなど、生 徒の多様な学びの場として、教育的意義が大きい。
しかしながら、今日においては、社会・経済の変 化等により、教育等に関わる課題が複雑化・多様 化するとともに、運動部活動においては、従前と 同様の運営体制では維持が難しくなってきてい る。
このような状況の中、平成 30 年 3 月にスポーツ 庁が「運動部活動の在り方に関する総合的なガイ ドライン」を示した。このガイドラインは、
1 適切な運営のための体制整備
2 合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進の ための取組
3 適切な休養日の設定
4 生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備 5 学校単位で参加する大会等の見直し
の 5 項目からなるが、作成過程においては、運 動部活動の法的位置付けの曖昧さ、指導者の質・
量の確保、少子化、衰退する地域等を踏まえなが ら、どのように子供のスポーツ権を保障するのか という点を重視したという報告があった。
今回の研究においては、子供のスポーツ権の保 障という点を意識しながら、このことに大きな影 響を与える運動部活動顧問の在り方について、今 後の方向性等を探ることとした。
Ⅱ.研 究 方 法
・国士舘大学体育学部学生 359 名を対象にしたア ンケートの実施
・文献研究
国士舘大学体育学部(Faculty of Physical Education, Kokushikan University)
AND SPORT SCIENCE VOL.37, 37-41, 2018
報告書(体育研究所プロジェクト研究)
1.アンケートの内容
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Ⅲ.研究結果概要
1.アンケートの結果概要
・運動部活動を引き受けるかという質問では、98
%の学生が引き受けると回答している。無条件 で校長の打診を受けるという回答が一番多か ったが、条件等が合えば引き受けるという回答 も多かった。
・どのような運動部活動運営を目指すのかという 質問では、部員の人格等形成、競技力向上、体 力向上、勝利最優先という順であった。勝利を 目指すプロセスに教育的価値があると考える 学生が多いということであろう。
・ 生徒の多様なニーズへの対応に関する質問で は、他の部員との関係性に配慮して回答してい る様子が感じられる。
・ 指導を受けた顧問に関する回答では、 約 90%
の学生が顧問を信頼して部活動に取り組んで きたと回答している。
・運動部活動の顧問として、部員から信頼される ために何が必要だと考えますかという質問で は、部員の意見をよく聞く、高い専門性、情熱 の 3 つが上位を占めた。生徒たちの主体的活動 を担保するとともに、部活動顧問には高い専門 性と熱心に向き合うことが重要であり、そのよ うな顧問に指導を受けてきた経験を踏まえた 回答結果だと感じる。
2.アンケート自由記述(中学校における運動部 活動の課題と解決策)の概要
・教員の負担過重。教材研究や校務分掌がおろそ かになってしまうことなどから教員の負担を 軽減する必要がある。そのためには、外部指導 員の積極的導入、地域スポーツへの移行等が考 えられる。
・体罰やハラスメントの防止。講習会を実施した り、複数の顧問で管理したりするなどが考えら れる。ハラスメントは受け手の感じ方なので、
部員に必要な負荷を与えることに顧問がため
らってしまうことなどは心配である。コミュニ ケーションが重要である。
・生徒の多様なニーズへの対応。競技力を高めて 結果を残したい生徒、仲間たちと競技を楽しみ たい生徒、健康で過ごすための体力を身に付け たい生徒、 複数の部活動に取り組みたい生徒 等、様々な目的の生徒にどのように対応するの か。学校全体での共通理解が必要。
・休養日の設定。部活動によっては十分な休養日 が設けられていない。効率的な練習を工夫する とともに、学業等に支障が出ないよう、学校全 体で管理する。
3.考 察
本学体育学部学生の多くは、本学部において、
教職について学んだり、日頃の部活動で感じたり したことを踏まえ、運動部活動の在り方について、
生徒又は指導者の立場から、多様な視点で考えて いる様子がうかがえた。
個々の学生により回答結果に違いはあっても、
一人一人が学校組織の一員として顧問を担うこと の意味、誰のためにどのような部活動運営を行う のか、生徒の健全育成上必要であれば多様なニー ズにも応えるべきであろう、といったことを考え ながら、回答していたと感じる。
Ⅳ.ま と め
平成 24 年 12 月、大阪市立高等学校のバスケッ トボール部主将が、顧問の執拗な体罰等を苦にし て自殺した事件は大きな社会問題となった。それ から 5 年以上経過した平成 30 年には、大学アメリ カンフットボールの試合において、監督の指示に より相手チームの主力選手に危険なタックルをし て大怪我を負わせた事件や大学チアリーディング 部員に対する顧問のパワーハラスメントなど、体 罰ではないが非常に悪質な行為が続いた。
一方、運動部における外部指導員の積極的導入、
複数顧問体制等、適切な指導・管理体制の整備も
進められている。働き方改革が推進され、学校、
地域、企業等が連携し、子供たちのスポーツ権を 保障することが重要であるとともに、子供たちと 向き合う学校現場の教員は、いつの時代において も、与えられた条件の中で生徒たちにより良い指 導を行う義務があると考える。今回の調査で、学 生たちの意識を知ることができたが、実際に顧問 教員として勤務するとどう変化するのかなど、今 後、研究を継続する必要があると感じる。子供た ちの健全育成上、大変重要な運動部活動の充実の ため、良質の指導者確保は欠かせない問題である。
引用・参考文献
1) 「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライ ン」(平成 30 年 3 月)
2)中学校学習指導要領解説 保健体育編(平成 29 年 7 月 文部科学省)
3)運動部活動の理論と実践(友添秀則編著 大修館 書店)
4)運動部活動の教育学入門(神谷拓著 大修館書店)
5)ブラック部活動(内田良著 東洋館出版)
6)現代スポーツ評論 32 号(2015 年 5 月 20 日 創文企
画)
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