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ポイントを扱ったものとして例えば、住友信託銀行調査月報2004年4月号

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(1)

はじめに

現在、IFRS(国際会計基準)の導入が議論されているが、その対象のひ とつとして企業ポイントの取り扱いがある。企業ポイント市場が拡大するな か、今般の議論は、企業のポイント戦略、経営に影響を与えると思われる。

ポイントを扱ったものとして例えば、住友信託銀行調査月報2004年4月号

「問われるポイントカード戦略」で現状と問題点、財務内容との関連を整理 しているが、その後のポイント市場の拡大を反映すべき必要があろう。また、

帝国データバンクはポイント引当金に関する2度の実態調査(2006年12月14 日、2008年8月8日)を行っているが、企業経営におけるポイントの有効性 を考えるためには、より財務指標との関連性を論じ、その後のデータの蓄積 も考慮する必要がある。また、IFRS 導入により変化する会計処理の内容、

影響を簡易に広く浅く示したものは多数存在するが、企業ポイントに個別に 焦点を当てたものはない。

このことから、本論文では、IFRS の企業ポイントに関する会計処理案の 影響を考察する。ポイントの扱いは企業によって異なるため、まず、それら を整理したうえで、今般の IFRS の処理案を紹介する。次に、各企業がどの

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響

有 岡 律 子

福岡大学経済学部

−165−

( 1 )

(2)

ようにポイントを活用しているのか概観し、ポイントを多用する企業におい て、ポイントと各種財務指標との関係をみる。そのうえで、どのような影響 を企業にもたらすのか考察する。

1.企業ポイントの取り扱い

現在多くの企業でポイントが導入されているが、その規模は年々拡大して いる。例えば、野村総合研究所は2005年度のポイント総額を約4500億円、

2006年度のポイント総額を約6600億円と推計している

。また、2009年7月 30日付けの日経新聞によれば、2008年度の発行規模は8200億円、2009年度は 1兆円規模を超えるとのことである。この市場の拡大は、企業がポイント活 用の有効性を認めている表れであろう。したがって、ポイントの取り扱いの 変更は企業の経営戦略に少なからず影響を及ぼすことが予想される。では、

企業ポイントの取り扱いについてみていこう。

1‐1 取り扱いについての論点整理

全国上場会社の平成2001年4月期から2008年3月期決算までの会計処理の 変更実例を「公認会計士の追記情報」や「企業側の注記」に基づいてまとめ た『会計処理の変更実例集』(週刊「経営財務」編集部編 税務研究会)に よれば、ポイントに関して、例えば、以下のような事例がみられる。

①ポイント使用時に費用処理していたものを、将来のポイント利用に備え てポイント残高のうち将来使用されると見込まれる金額を引当金として 計上する(サンドラッグ 2008年3月期決算ほか多数)

『2010年の企業通貨』東洋経済新報社 2006年

−166−

( 2 )

(3)

②ポイント使用時の処理として、売上値引としていたものを販売費及び一 般管理費の計上に変更する(ベルーナ 2007年3月期決算ほか)

③買物券回収時に費用計上していたが、未使用残高のうち将来使用される と見込まれる金額を使用実績率に基づき引当金を計上する(サッポロド ラッグストアー 2006年3月期決算ほか)

④ポイント使用時に以下の処理をしていたものを変更する(アトム 2006 年3月期決算)

景品と交換:当該原価を販促費(販売管理費)

食事優待券に交換:利用時点で売上計上+販促費計上 これらからポイント引当金計上に変更する

景品交換:当該原価を売上原価 食事優待券利用時点での処理取りやめ

⑤過去の使用実績率等に基づき将来使用されると見込まれる金額を計上し ていたが年度末未使用残高*過去の使用実績率等に変更する

⑥ポイント付与時に販売費としていたものを、売上値引として売上高から 控除する方法に変更する(ラオックス 2003年3月期決算)

⑦ポイント付与時に売上値引として売上高から控除する方法としていたも のを付与時に販売費とするに変更する(ラオックス 2006年3月期決 算)

⑧ポイント引当金繰入額について 当期付与分に対応する金額

売上高から控除する(夢見つけ隊 2003年3月期決算)

売上原価とする(アオキインターナショナル 2005年3月期決算)

販売費及び一般管理費とする(ハーバー研究所 2006年3月期決算)

前年度以前付与分に対応する金額

特別損失とする(夢見つけ隊 2003年3月期決算、アオキインターナ IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −167−

( 3 )

(4)

ショナル 2005年3月期決算、ハーバー研究所 2006年3月期決算)

①の変更、売上値引から販売費及び一般管理費(以下販管費とする)計上 に変更する事例が多数見られるなか、逆に⑥のような事例も見られる。但し、

ラオックスは⑦にあるよう処理を再変更している。変更の理由として、主に 以下のものがあげられている。

・ポイント使用状況を把握する管理システムの整備で使用割合の合理的見 積もり可能になった

・期間損益計算の適正化のため

・ポイントカード発行枚数の増加

・販売促進のための性格が強い

これらの事例より、ポイントの処理について、大きく3つの論点が浮かび 上がる。第1はポイントをどうとらえるかで、売上値引とするのか、販売促 進費とするかなどである。第2は会計処理のタイミングで、ポイントの発行 時点、使用時点、期末時点での仕訳が問題となる。ポイントのとらえ方に よって各タイミングでの処理は異なることになる。第3は計上金額の問題で ある。例えばポイント引当金を計上する場合、期末に残っている未使用のポ イント残高について、全額とするのか、使用が見込まれる金額とするのか、

またはその原価とするかなどは企業によって異なった処理が行われている。

実際に行われている処理を、ポイントのとらえ方、処理のタイミングによっ て分類してみると、主に以下の4ケースに分けられよう。例を用いて、それ ぞれのケースにおける仕訳を以下に示す。

ケース1:売上値引、発行時点で処理 ケース2:売上値引、使用時点で処理 ケース3:販売促進費、発行時点で処理

−168−

( 4 )

(5)

ケース4:販売促進費、使用時点で処理

例 初め1000円の商品を現金販売、売上原価率60%

2度目は200円の商品を販売、ポイント使用50円、現金受取150円 ポイント還元率10%、1ポイント=1円

〈ケース1:売上値引、発行時点で処理〉

発行時点

現金 1000 / 売上1000

売上値引 100 / ポイント負債

100 売上原価 600 / 商品 600

使用時点

現金 150 / 売上 200 ポイント負債 50

売上値引 15 / ポイント負債 15 売上原価 120 / 商品 120 期末時点

有効ポイント 仕訳なし

失効ポイント 失効分のポイント負債を減らし、利益を計上

*売上値引については、直接売上から控除する方法と、別途控除項目 として間接的に処理する方法がある。

仮称である(以下同様)

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −169−

( 5 )

(6)

〈ケース2:売上値引、使用時点で処理〉

発行時点

現金 1000 / 売上 1000 売上原価 600 / 商品 600

*ポイントの処理なし 使用時点

現金 150 / 売上 200 売上値引

50

売上原価 120 / 商品 120 期末時点

未使用有効ポイント残高について、引当金処理する。計上額は、過去 の使用実績率等を勘案した使用が見込まれる金額とする企業が多いが、

原価に対応する金額とするところもある。

引当金繰入額

xx / ポイント引当金 xx

〈ケース3:販売促進費、発行時点で処理〉

発行時点

現金 1000 / 売上1000

販売促進費 100 / ポイント負債 100 売上原価 600 / 商品 600

使用時点

現金 150 / 売上 200 ポイント負債 50

前期以前に発行されたポイントが使用される場合は、ポイント引当金を50円 分減少

繰入額は売上の控除項目とする

−170−

( 6 )

(7)

販売促進費 15 / ポイント負債 15 売上原価 120 / 商品 120

期末時点

有効ポイント 仕訳なし

失効ポイント 失効分のポイント負債を減らし、利益を計上

〈ケース4:販売促進費、使用時点で処理〉

発行時点

現金 1000 / 売上 1000 売上原価 600 / 商品 600

*ポイントの処理なし 使用時点

現金 150 / 売上 200 販売促進費

50

売上原価 120 / 商品 120 期末時点

未使用有効ポイント残高について、引当金処理する。計上額は、過去 の使用実績率等を勘案した使用が見込まれる金額とする企業が多いが、

原価に対応する金額とするところもある。

ポイント引当金繰入額

xx / ポイント引当金 xx

会計処理の変更事例等をみれば、多くの企業は、ケース2やケース4のよ うに、使用時点での処理を選択している。なかでも特に、従来は売上値引と

前期以前に発行されたポイントが使用される場合は、ポイント引当金を50円 分減少

繰入額は販売促進費に含める

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −171−

( 7 )

(8)

して扱っていたポイントを販売促進費とし、商品の売上にあたっては代金全 額を売上計上し、発行ポイントに関しては未使用残高に応じて引当金処理す るケース4をとる傾向にある

1‐2 IFRS の案

IFRS の案では、引当金の計上はせず、付与ポイントは将来の値引とみな して売上から分割する。売上は発行ポイントをのぞいた額とし、ポイント分 の額は繰延収益として繰り延べられ、ポイントが実際に使用された時点で売 上計上する。使用されなかったポイントは売上に戻す。1‐1の例を用いた仕 訳は以下の通りである。日本で事例の少ないケース1に近い。

発行時点

現金 1000 / 売上 900 ポイント負債 100 売上原価 600 / 商品 600 使用時点

現金 150 / 売上

185 ポイント負債 35

売上原価 120 / 商品 120 期末時点

有効ポイント 仕訳なし

失効ポイント 失効分のポイント負債を減らし、売上を計上

ラオックスはケース3である。

現金150にポイント使用分50を加えたものから、新たに発行されるポイント 分15をさしひいた金額が売上となる。

−172−

( 8 )

(9)

1‐1で見たように、引当金を計上する企業は近年増加傾向にあることから、

IFRS の案にしたがうならば、多くの企業は売上を減少させることとなる。

特に、ポイントを積極的に活用する企業はその影響が大きい。ポイント使用 の有効期間が長いと

、使用されるまでに時間がかかる可能性があり、売上 にはなかなか戻せないことになる。また、損益計算書や貸借対照表の勘定科 目の内訳が変わることになるため、各財務指標に影響を及ぼすことになる。

会計処理の比較

ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 IFRS 案 時 点 発行 使用 発行 使用 発行 使用 発行 使用 発行 使用 売 上 1000 200 1000 200 1000 200 1000 200 900 185 売上値引 100 15 50

販 促 費 100 15 50

売上原価の計上額はどれも同じである 期末時点での処理は省いている

1‐3 IFRS 案の論点とその影響

IFRS 案の論点をあげ、どのような企業が影響を受けやすいか考えてみよ う。

論点1.発行ポイントの見積もりについて

発行ポイントの対価を売上高から控除するにあたり、対価をいくらと見積 もるべきであろうか。例えば家電量販店の1ポイント=1円などのように、

交換レートが明確で対価が合理的に見積もれる場合はよい。しかし、例えば 航空会社のマイレージポイントは航空券との交換が可能である。航空券は時 期によって価格が異なることから、どの価格を用いるかが問題となる。一般

クレディセゾンのポイントは無期限である。

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −173−

( 9 )

(10)

的には、航空券が安い時期に航空券を現金購入してマイレージを貯め、航空 券の高い時期にマイレージを利用して特典航空券と引き換える行為が多いと 思われるが、ポイント発行時点より使用時点の時価のほうが高い場合、各時 点での売上計上額は企業の実態に合うのであろうか。

また、ポイントは当初は各企業のサービスを受ける、あるいは商品を購入 する際に使用できるのみであったが、他企業のポイントへの直接転換や多く の企業が参加する共通ポイントへの転換、ひいては suica や edy といった電 子マネーへの転換ができるようになってきている。転換の仕方によって、同 一単位数のポイントが異なる金額になることもあるが、このようななか、発 行ポイントの対価はいくらと見積もればよいのであろうか。

他企業のポイントからの転換によるポイント発行はどのように扱うのかと いった問題もある。

さらに、他のポイントや電子マネーへの転換で使用期間が延び、利便性が 高まることは顧客の選択肢の拡大という意味で、もとのポイントの価値自体 を増加させるが、どのように反映されるべきであろうか。

論点2.引当金計上のとりやめについて

現在広く行われている引当金計上だが、未使用ポイント残高のうち、過去 の使用実績率等を勘案した将来使用が見込まれる金額とする企業が多い。た だ、使用実績率がどの程度かは具体的には明らかにされていない。また、ビッ クカメラやベスト電器のように、未使用残高に使用実績率を乗じ、さらに原 価率を乗じる企業もある

10

。このように、企業によって計上の程度が異なる が詳細は不明であるため、ポイント発行高がはっきりせず、したがって、ポ イントの売上分割や引当金計上とりやめの影響ははっきりしない。

10

セブン&アイ・ホールディングスは、百貨店事業に関しては原価相当額、そ れ以外は使用実績率を勘案し引当金計上している。

−174−

( 10 )

(11)

論点3.使用時点での収益計上について

ポイント発行したものの、商品購入などに用いられず、他企業ポイントへ の転換がなされた場合、使用ポイントの収益について、他企業との収益配分 とその金額が問題となる。

ポイントの利便性の向上により失効ポイントは今後減少するものと思われ る。失効ポイント予想率と、実際の予想ポイント引き換え率が異なり、従来 予想のもとで測ったポイントの価値とズレが生じた場合は、変更を行った期 間と将来にわたり見積もり変更の会計処理が必要とされるようだが、どの程 度恣意性を排除した処理が可能だろうか。

以上より、影響を受けやすい企業を考える。まず、論点1についてである が、表1で示したポイント引当金計上金額の大きな会社のなかに航空会社は 入っていない。財務諸表にマイレージポイントを反映させている記述もない。

このような会社は IFRS 案の導入により、売上や利益等に大きな変動が見ら れることになる。

論点2については、ポイント残高に対して、引当金計上の程度が小さいほ ど、変更による影響は当期純利益等にも及び、大きいと考えられる。また、

論点1、3から、他ポイントとの交換の利便性が高いポイントを持つ企業も、

利益の配分等が問われることになり、影響を受けるであろう。

2.ポイント引当金の概況

では、具体的にどのような企業が影響を受けやすいのか、ポイントの状況 をよくあらわすポイント引当金の金額をもとに見ていこう。まず、ポイント 引当金計上の企業数と金額であるが、帝国データバンクの調査によれば、直 IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −175−

( 11 )

(12)

近の決算期におけるポイント引当金残高は、2006年12月14日調査時で136社 で2870億円あまり、2008年8月8日時点で196社で3531億円あまりである。

さらに、2009年12月15日付日経新聞によれば、直近の四半期決算で計上され たポイント引当金は198社で3190億円と、前年同期比16%増となっている。

表1は、2009年12月現在で判明している上位15社の本決算におけるポイン ト引当金の推移である。エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下ドコモとする)や ソフトバンク、 KDDI といった通信系や、ヤマダ電機、ビックカメラ、エディ オン、上新電機といった家電量販店、クレディセゾン、セディナ(旧オーエ ムシーカード)、みずほフィナンシャル・グループ、三菱 UFJ フィナンシャ ル・グループといった金融系、イオン、セブン&アイ・ホールディングスと いった流通系などで構成されている。ドコモは2009年3月期で残高を急増さ せているが、有価証券報告書にその理由についての記述はない。携帯端末の 販売方法の変化、料金体系の見直し等の結果であろうか。一方、ヤマダ電機 は2008年3月期に大幅に残高を減らしているが、有価証券報告書に、販促営 業戦略で「ポイント還元セール」を繁忙期に行った結果、ポイント使用が促 進されたためである旨の記述がある。引当金の金額が増加し続けているのは 10社である。

2‐1 ポイント引当金と流動資産の関係

ポイント引当金はポイントが無期限に使用できるクレディセゾン、有効期 間が1年から2年に延びたセディナの場合は固定負債に計上されているが、

多くの企業で流動負債に計上されている。このポイント引当金額が流動資産 に占める割合(以下、引当率とする)をみると(表2)、ドコモ、 KDDI 、イ オン、楽天、平和堂、セディナは引当率が上昇し続けている。引当率が高い ほど、ポイント引当金に関しての短期的な債務支払い能力が低いことを意味 するため、値の上昇は財務面の不安の増加を示している。

−176−

( 12 )

(13)

表1 ポイント引当金計上の状況(本決算 単位 百万円)

前々期 流動資産 1,731,913 698,685 1,872,306 1,247,433 262,775 1,247,376 97,101 174,077 1,662,107 964,898 46,990 573,050 66,964 注1ポイント引当金は個別、流動資産は連結による 注2利用促進引当金は、2007年2月期からポイント有効期間が1年から2年になったので流動負債から固定負債に変更 各企業の有価証券報告書より作成

ポイント引当金 40,293 29,606 36,205 43,787 12,619 19,515 11,858 − 7,042 − 3,776 3,301 5,613 3,034 4,603

2007.3 2007.3 2007.3 2007.3 2007.3 2007.2 2007.8 2007.3 2007.3 2007.2 2006.12 2007.2 2007.2 2007.3

前期 流動資産 1,767,780 616,530 2,018,760 1,582,744 342,894 1,354,417 101,404 190,345 1,509,930 903,200 47,416 584,288 72,258 4期前 流動資産 2,141,694 692,381 606,117 194,057 74,414 87,081 49,248 561,564 55,208

ポイント引当金 45,810 41,884 45,474 43,809 7,200 21,188 12,955 8,349 9,644 8,079 5,272 5,034 5,906 5,312 4,771 ポイント引当金 36,024 16,955 − − 15,745 9,535 − 3,307 − − − 4,964 1,580 2,630

2008.3 2008.3 2008.3 2008.3 2008.3 2008.2 2008.8 2008.3 2008.3 2008.3 2008.2 2007.12 2008.2 2008.2 2008.3 2005.3 2005.3 2005.3 2005.3 2005.3 2005.8 2005.3 2005.3 2005.2 2004.12 2005.2 2005.2 2005.3

最新決算期 流動資産 1,827,728 863,412 2,188,844 1,520,313 313,548 1,397,102 104,517 153,173 1,513,935 850,267 45,428 584,525 74,658 3期前 流動資産 1,926,758 580,943 1,669,434 745,130 213,934 1,102,819 93,262 129,104 1,354,598 47,157 520,985 61,654

ポイント引当金 176,649 61,136 53,538 41,816 17,700 16,601 13,437 11,389 9,338 8,854 7,194 6,748 6,263 5,827 4,986 ポイント引当金 44,406 23,939 29,023 − 13,957 17,553 11,354 − 5,721 − − 1,807 5,318 1,930 3,952

2009.3 2009.3 2009.3 2009.3 2009.3 2009.2 2009.8 2009.3 2009.3 2009.3 2009.2 2008.12 2009.2 2009.3 2009.3 2006.3 2006.3 2006.3 2006.3 2006.3 2006.2 2006.8 2006.3 2006.3 2006.2 2005.12 2006.2 2006.2 2006.3

連 個 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 個 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連 連

エヌ・ティ・ティ・ドコモ(注 KDDI クレディ・セゾン ソフトバンク ヤマダ電機 セブン&アイ・ホールディングス ビックカメラ みずほフィナンシャル・グループ エディオン 三菱UFJフィナンシャル・グループ イオン 楽天(注 平和堂 セディナ(旧オーエムシーカード)(注 上新電機 エヌ・ティ・ティ・ドコモ(注 KDDI クレディ・セゾン ソフトバンク ヤマダ電機 セブン&アイ・ホールディングス ビックカメラ みずほフィナンシャル・グループ エディオン 三菱UFJフィナンシャル・グループ イオン 楽天(注 平和堂 セディナ(旧オーエムシーカード)(注 上新電機

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −177−

( 13 )

(14)

一般に、流動資産が大きいほど、引当金は積みやすい。15社による引当金 と流動資産の関係をみると、5期分でともに値が揃っているサンプル数58の データによれば、回帰式は

引当金=3888. 23

(0. 89) +0. 021

(4. 87) *流動資産

となる。( )内は t 値で、相関係数は0. 545、決定係数は0. 297である。は ずれ値と思われるドコモの2009年3月期データ、ヤマダ電機の2008年3月期 データを除いた56データによれば、回帰式は

引当金=5760. 18

(2. 34) +0. 015

(6. 25) *流動資産

となる。相関係数は0. 648、決定係数は0. 420である。両式において、流動資 表2 ポイント引当率(=引当金/流動資産)

最新期 1期前 2期前 3期前 4期前 エヌ・ティ・ティ・ドコモ 9. 665% 2. 591% 2. 327% 2. 305% 1. 682%

KDDI 7. 081% 6. 794% 4. 237% 4. 121% 2. 449%

クレディ・セゾン 2. 446% 2. 253% 1. 934% 1. 738%

ソフトバンク 2. 750% 2. 768% 3. 510%

ヤマダ電機 5. 645% 2. 100% 4. 802% 6. 524% 8. 114%

セブン&アイ・ホールディングス 1. 188% 1. 564% 1. 564% 1. 592%

ビックカメラ 12. 856% 12. 776% 12. 212% 12. 174% 12. 813%

みずほフィナンシャル・グループ

エディオン 6. 096% 5. 067% 4. 045% 4. 431% 3. 798%

三菱 UFJ フィナンシャル・グループ

イオン 0. 475% 0. 349% 0. 227%

楽天

(注1)

0. 794% 0. 557% 0. 342% 0. 133%

平和堂 13. 787% 12. 456% 11. 945% 11. 277% 10. 080%

セディナ(旧オーエムシーカード) 0. 997% 0. 909% 0. 529% 0. 370% 0. 281%

上新電機 6. 678% 6. 603% 6. 874% 6. 410% 4. 764%

−178−

( 14 )

(15)

ヤマダ電機 ビックカメラ コジマ 上新電機 エディオン 14.000%

12.000%

10.000%

8.000%

6.000%

4.000%

2.000%

0.000%

4期前 3期前 2期前 1期前 最新期

産の係数はともに正で、1%水準で有意である。予想通り流動資産が大きい ほど引当金を計上している。

15社に限定せず、積極的にポイント活用しているといわれている家電量販 店業界と通信業界、流通業界を取り上げてみよう。それぞれの引当率は図1、

図2、図3で示される。上昇傾向にあるものが多いといえる。

2‐2 ポイント引当金と売上の関係

続いて引当金と売上との関係をみる。図4、5、6は各業界におけるポイ ント引当金残高/売上の値の推移を示している。この値の増加は、ポイント 発行を積極的に行ってその残高が増加するのに伴い引当金が増加しているの に比して、売上がさほど伸びていないことを意味する。引当金の増加と売上 の増加の関係を見てみよう。ポイントが販促に使われるケースが多いことを 考えると、両者に正の相関関係があることが予想される。表1の15社のうち、

売上ではなく経常収益のデータしかとれないみずほフィナンシャル・グルー

図1 引当率(家電量販店)

各社有価証券報告書をもとに作成

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −179−

( 15 )

(16)

1.200%

1.400%

1.600%

1.800%

1.000%

0.800%

0.600%

0.400%

0.200%

0.000%

3期前 2期前 1期前 最新期

セブン イオン ダイエー イズミ ドコモ KDDI ソフトバンク 12.000%

10.000%

8.000%

6.000%

4.000%

2.000%

0.000%

4期前 3期前 2期前 1期前 最新期 図2 引当率(通信)

各社有価証券報告書をもとに作成

図3 引当率(流通)

各社有価証券報告書をもとに作成

−180−

( 16 )

(17)

ヤマダ電機 ビックカメラ コジマ 上新電機 エディオン 2.5000%

2.0000%

1.5000%

1.0000%

0.5000%

0.0000%

4期前 3期前 2期前 1期前 最新期

ドコモ KDDI ソフトバンク 6.0000%

5.0000%

4.0000%

3.0000%

2.0000%

1.0000%

0.0000%

4期前 3期前 2期前 1期前 最新期 図4 引当金/売上(家電量販店)

各社有価証券報告書をもとに作成

図5 引当金/売上(通信)

各社有価証券報告書をもとに作成

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −181−

( 17 )

(18)

0.400%

0.500%

0.600%

0.300%

0.200%

0.100%

0.000%

3期前 2期前 1期前 最新期

セブン イオン ダイエー イズミ

プと三菱 UFJ フィナンシャル・グループを除く13社のポイント引当金と売 上高を示したのが表3である。引当金のデータの差分がとれる48サンプルか ら、以下の回帰式が得られる。

引当金増加額=707. 62

(0. 27) +0. 036

(5. 02) *売上増加額

( )内は t 値で、相関係数は0. 595、決定係数0. 354である。売上増加額の 係数は予想通り正で、1%水準で有意である。

多くの企業で引当金繰入額を売上値引

11

ではなく販管費に計上しているこ と、ポイント販促費を販管費に計上していることなどから、引当金/売上の 値が大きいほど IFRS 案の導入で売上減少の影響が大きいことが予想される。

11

上新電機は引当金繰入額を売上値引とみなして売上高から控除している。引 当金と売上の比率の計算においては、この繰入額を売上高に加算した数値を 使用している。

図6 引当金/売上(流通)

各社有価証券報告書をもとに作成

−182−

( 18 )

(19)

表3 ポイント引当金と売上(単位:百万円)

本決算期 引 当 金 売 上 本決算期 引 当 金 売 上

ドコモ

2005. 3 36, 024 2, 034, 124 セブン

2006. 2 17, 553 3, 437, 344 2006. 3 44, 406 2, 020, 226 2007. 2 19, 515 4, 839, 554 2007. 3 40, 293 2, 015, 114 2008. 2 21, 188 5, 223, 832 2008. 3 45, 810 1, 946, 471 2009. 2 16, 601 5, 094, 757 2009. 3 176, 649 3, 152, 379

イオン

2006. 2 ― 4, 040, 600

KDDI

2005. 3 16, 955 1, 999, 176 2007. 2 3, 776 4, 345, 308 2006. 3 23, 939 2, 269, 073 2008. 2 5, 272 4, 650, 088 2007. 3 29, 606 2, 537, 526 2009. 2 7, 194 4, 706, 069 2008. 3 41, 884 2, 688, 516

平和堂

2005. 2 4, 964 353, 288 2009. 3 61, 136 2, 627, 677 2006. 2 5, 318 370, 657

ソフトバンク

2005. 3 ― 837, 018 2007. 2 5, 613 386, 513 2006. 3 ― 1, 108, 665 2008. 2 5, 906 394, 720 2007. 3 43, 787 2, 544, 219 2009. 2 6, 263 386, 271 2008. 3 43, 809 2, 776, 168

楽 天

2005. 12 1, 807 129, 775 2009. 3 41, 816 2, 673, 035 2006. 12 3, 301 203, 271

ヤマダ電機

2005. 3 15, 745 1, 102, 390 2007. 12 5, 034 213, 938 2006. 3 13, 957 1, 283, 961 2008. 12 6, 748 249, 883 2007. 3 12, 619 1, 443, 661

セディナ

2005. 2 1, 580 1, 587, 731 2008. 3 7, 200 1, 767, 818 2006. 2 1, 930 1, 630, 752 2009. 3 17, 700 1, 871, 828 2007. 2 3, 034 1, 670, 076

ビックカメラ

2005. 8 9, 535 433, 186 2008. 2 5, 312 1, 666, 701 2006. 8 11, 354 480, 453 2009. 3 5, 827 1, 859, 616 2007. 8 11, 858 542, 294

クレディセゾン

2005. 3 ― 56, 514 2008. 8 12, 955 604, 804 2006. 3 29, 023 274, 666 2009. 8 13, 437 589, 177 2007. 3 36, 205 333, 683

エディオン

2005. 3 3, 307 437, 992 2008. 3 45, 474 345, 586 2006. 3 5, 721 714, 697 2009. 3 53, 538 327, 089 2007. 3 7, 042 740, 293

2008. 3 9, 644 851, 205 2009. 3 9, 338 803, 004

上新電機

2005. 3 2, 630 263, 521 2006. 3 3, 952 299, 366 2007. 3 4, 603 316, 379 2008. 3 4, 771 341, 166 2009. 3 4, 986 359, 915

*セディナは2009年から3月決算に変更している

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −183−

( 19 )

(20)

ま と め

以上より、IFRS 案の導入により、大きな影響を受けやすいのは以下の企 業であろう。

・そもそもポイントを財務諸表に反映させていなかった企業:航空会社など

・ポイントの有効期限が長く、収益繰延期間が長い企業

・ポイント残高に対して引当金を積む割合が小さい企業

・他ポイントとの交換が容易である利便性の高いポイントを保有する企業

・ポイントを積極的に活用している企業(ポイント引当金計上額が大きい 企業)

・ポイント引当率が上昇している企業

・引当金の売上に対する割合が大きな企業

ポイントは今まで、顧客の獲得や販売の促進に用いられてきた。現金値引 をするのではなく、ポイントを導入することで、一時的には現金収入額、売 上を大きくできるほか、ポイントが使用されないまま失効した場合は、より そのメリットを享受できる。また、来店頻度を高めることによって、さらな る売上増加も見込める。ポイント付与率を時期によって柔軟に変えることで、

収益調整を図ることも可能であるし、顧客に意外性を感じさせ、特別な満足 感、購買意欲を引き起こす役割も果たしてきた。航空会社のマイレージサー ビスや携帯電話会社のポイントサービスは、顧客の囲い込みに有効であった。

ポイント行使に伴う追加コストを考えるとき、固定費部分の割合が大の産業 ほど顧客増加の追加コストが小であることから、ポイントが積極的に用いら れてきたのではないだろうか。さらに、多くの企業は、ポイントの利便性を 向上させることで、より大きな成果を得ようとしてきたが、IFRS 案の導入 は企業の経営戦略に変更を迫るものである。

−184−

( 20 )

(21)

企業は、ポイントに関して、まずは、売上の減少や利益の減少、損益の内 訳の変更や財務諸表の勘定項目の変更等に伴う各種財務指標の変化の影響を 考慮することが求められる。というのも、これらは、財務情報に基づいて意 思決定する主体の行動を変更させる可能性があるためである。特に、各数値 の変化が新しい会計基準の導入によるものであることを正確に意思決定者が 把握できない場合、株式の売買促進、取引関係の変更などのような形でその 影響は表れるであろう。また、特に、他ポイントとの交換等が容易な場合、

収益の配分、使用見積もりの変化に対応するコストも新たに発生する。

以上のような、ポイント利用のメリット、デメリットを十分考慮し、今後 のポイント戦略を考える必要がある。

参考資料

・週刊「経営財務」

2841号、2842号 解説 中根正文 IFRIC 解釈指針第13号『カスタマー・ロイ ヤルティ・プログラム』について

2872号、2879号 解 説 鶯 地 隆 継 氏 に 聞 く 国 際 財 務 報 告 基 準 の 解 釈 指 針 「マイレージ・ポイントの会計処理」

・週刊「経営財務」編集部編『会計処理の変更実例集』 税務研究会

・週刊「東洋経済」2009年11月21日号

・住友信託銀行調査月報2004年4月号「問われるポイントカード戦略」

・EDINET http://info.edinet-fsa.go.jp/

各社有価証券報告書を入手。

・帝国データバンク ポイント引当金に関する2度の実態調査(2006年12月14日、

2008年8月8日)

IFRS 案が企業のポイント戦略に及ぼす影響(有岡) −185−

( 21 )

参照

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