企画意図
立正大学社会福祉学部では,資格者養成課程を複数擁しており,資格者養成が学部の大きな目的の一つで あると言える.社会福祉学科は,社会福祉士 ・ 精神保健福祉士 ・ 特別支援学校教諭等の養成課程を擁してい る.8学部から成る立正大学にあって,本学部は特に際立つ特徴を有している.資格者養成のあり方につい て議論することは,学部のあり方について自己省察する作業であると言える.
国家資格に求められる高い専門性を担保するため,資格によっては国家試験が義務付けられている.社会 福祉学科で養成する資格として,社会福祉士と精神保健福祉士がこれにあたる.同じく厚生労働省管轄の保 育士養成では,国家試験が課せられていないが,養成校には厳しい指導監督が行われている.子ども教育福 祉学科でも,保育士関連の法令遵守に取り組んでいる.文部科学省管轄の教員養成課程にあっては,目下そ の再課程認定に向けて全国で手続が求められ,厚生労働省管轄の保育士養成課程でも同様の手続が求められ るに至った.こうした動きに合わせ,子ども教育福祉学科では,幼稚園教諭養成課程 ・ 小学校教諭養成課程 ・ 保育士養成課程で次年度にカリキュラム改訂を予定している.本学で学部を超えて展開する中学校 ・ 高等学 校教諭養成課程でも,再課程認定に向けた作業を行っている.国家資格における質の担保には,国の規制が 一定の役割を担っていると考えられる.そうした規制の一方,資格者養成の現場ではどのような学生教育を 行っているのか,また,どんな課題が把握されているのか.報告者の方々には,複数の資格免許に関係して 報告をお願いすることとした.
(『立正大学社会福祉学会第20回大会発表要旨集』掲載「企画意図」
立正大学社会福祉学部子ども福祉学科 志村聡子氏執筆から一部抜粋)
立正社会福祉研究 第20巻(2019)97~99
立正大学社会福祉学会第20回大会シンポジウム報告
私立大学が担う資格者養成
―現状と課題―
シンポジウム報告者(報告順)
根本 嘉昭(神奈川県立保健福祉大学名誉教授,公益財団法人社会福祉振興 ・ 試験センター理事長)
「私立大学が担う資格者養成―現状と課題―社会福祉士を中心に―」
岡本 依子(立正大学社会福祉学部)「保育士養成の現状と課題―保育士養成協議会専門委員会の調査研究を 振り返って―」
村上美奈子(立正大学社会福祉学部)「私立大学の教員養成と再課程認定―国家による基準の設置と学問の自 由との兼ね合い―」
コーディネーター
大竹 智(立正大学社会福祉学部)
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根本氏の報告内容
1 )社会福祉士の業務
社会福祉士は「福祉ニーズがある人への相談 ・ 助言 ・ 指導,福祉サービス関係者との連絡調整等」を業務と する名称独占の国家資格として誕生した.
そして,現在,社会福祉士は,地域共生社会の実現 に向けて,包括的な相談支援体制の構築や住民主体の 地域課題解決体制の構築が課題視されている中で,ソー シャルワーク専門職として,当事者中心の「丸ごと支 援」の生活課題の把握,既存社会資源の活用 ・ 資源の 開発,多職種連携,住民主体の地域課題解決体制と連 動しながら,必要な支援を包括的に提供するという役 割が期待されている.
2 )社会福祉士の養成
社会福祉士の使命 ・ 業務は,試験ではかられる内容 で終わるものではない.とくに最近期待されている社 会福祉士の業務 ・ 役割を果たすうえで,リベラルアー ツ,教養,その人の人格をかたちづくる学習環境が不 可避である.また,リカレント教育も期待されている.
それらを可能にする現実的な学習環境は,少なくとも 大学教育である.
3 )養成カリキュラム見直しの方向性
現在,社会福祉士養成カリキュラムの見直しが行わ れており,今年度中に検討され,周知期間を経て,32 年ごろから施行される予定である.
(『立正大学社会福祉学会第20回大会発表要旨集』
掲載資料 根本氏執筆から一部抜粋)
岡本氏の報告内容
1 )はじめに
報告者は,平成26,27,28年度の3年間,保育士養 成協議会専門委員として課題研究に取り組んだ.
2 )保育士養成課程が抱える実習の現状と課題 平成26年度専門委員会課題研究では,全国の保育士 養成施設の実習担当教員および非担当教員を対象に質 問紙調査を実施し,実習および実習指導の実態と課題 について概観した.各保育士養成施設では,実習にお ける学生の成長を支えるため,工夫や試行錯誤を行っ ていることが示唆された.さらに,これを踏まえて,
より具体的な指導事例を捉えるため,翌,平成27年度 の課題研究においては,ヒアリング調査を実施した.
正規実習以外の体験的な学習や学内外の連携について
等,あらかじめ準備した質問項目をもとに半構造化面 接を実施した.体験的学習,学生目線での事前事後指 導,さらに,学内外の連携などについて,さまざまな 指導事例が見いだされた.
3 )実習指導において捉えられる学生の成長
平成26年度および27年度専門委員会課題研究では,
実習および実習指導の現状と課題を捉えるだけでなく,
教員がどのように学生の成長を捉えるかについて検討 している.教員が,実習担当あるいは非担当にかかわ らず,専門職としての成長を捉えようとしていること が見いだされた.
4 )シラバスに反映された専門性
平成28年度課題研究では,保育士養成校の実習指導 のシラバス分析を行った.保育所実習および施設実習 の実習指導に加えて,多くの養成施設が課程をもつ幼 稚園での教育実習の実習指導について,内容分析を用 いて比較検討した.結果,シラバスに用いる語の多様 性から,モデルシラバスを配慮しつつも教員の専門性 を反映させたものであること,また,保育士の専門性 がシラバス重視されている点などが見いだされた.
(『立正大学社会福祉学会第20回大会発表要旨集』
掲載資料 岡本氏執筆から一部抜粋)
村上氏の報告内容
1 )教員養成の再課程認定
文部科学省管轄の教員養成課程にあっては,昨年以 来その再課程認定に向け全国で手続きと審査が進めら れている.再課程認定は,細かいものを除いては2000 年に開始されたカリキュラム以来およそ20年ぶりのこ とであるが,今回は前回までとは異なる質のものであ る.特に大きな特徴は,教職課程における教育学に関 わる各科目において「コアカリキュラム」が定められ,
半期15回の授業のどの回で「コアカリキュラム」で定 められている各内容を扱うのかを明示する必要がある.
2 )開放性原則の確立と昨今の空洞化
そもそも,戦後教育改革を通して,わが国では,戦 前の規格化された師範学校による教員養成制度と,そ こから生み出された国家に従順な画一的な教師像に対 する歴史的な反省に基づいて教員免許の開放性の原則 が確立された.一般的な教養を身につけつつ,教育内 容について真実性の吟味を根幹にすえた研究が可能な 教員養成を志向しているのである.
今回の再課程認定は,教職課程科目を通して大学で
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私立大学が担う資格者養成
の授業内容に国家の統制が細かく及ぶ要素を許容して おり,学問の自由に対する大きな脅威にもなりうる.
(『立正大学社会福祉学会第20回大会発表要旨集』
掲載資料 村上氏執筆から一部抜粋)
最後に
1 )根本氏からのコメント
大学の実習教育には,一部,国から定められた枠組 みがあるが,リベラルアーツを含む教育については規 制されてはいけないと感じた.特に社会福祉士養成は,
確かにカリキュラムを通した規制があると考えられる かもしれないが,むしろ,それを最低基準と捉えて,
どのように付加をしていくのか検討することが課題で ある.
2 )岡本氏からのコメント
根本氏,村上氏の報告を通して,資格の背景にある,
専門性とは何かに,最終的に行き着くのではないかと 感じた.学問の自由と,資格の持つ特質は両立しても 良いのではないかと思った.
3 )村上氏からのコメント
根本氏の報告から,福祉 ・ 保育 ・ 教育ともに人と関 わる仕事であり,それが基本にあることを忘れてはい けないことを再確認した.
岡本氏の報告から,全学での実習のあり方,ひとつ の学科の中での実習のあり方があり,そのなかでの違 いを踏まえて,どうのように指導していくのかを考え ることが大切だと感じた.
(構成:酒井美和)
立正社会福祉研究 第20巻(2019)
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