小腸結核の2例 (日赤医学 第 49巻 第 2号
19979)(237)
く症例 報告 〉 小腸 結核 の 2例
大阪赤十字病 院
消化器内科
米 田 円 、蜂 谷 勉 、平 岡 哲 郎 、福 山 隆 之 小味渕智雄 、 丸 岡 正 典 、辻 賢太郎 、福 島 徹 大 崎 往 夫 、 高 松 正 剛 、木 村 達 、 国 立 裕 之 喜 多 竜 一 、 竹 内 孝 男 、友 野 尚 美 、 清 水 達 夫
大阪赤十字病院 病理部
新 宅 雅 幸
キーワー ド:結核症、小腸、臨床診断
Two cases of small intestinal tuberculosis
En YoNEDA,Tsutomu HACHIYA,Tctsurou HIRAOKA,Takayuki FuKUYAMA, Tomoo KoMIBuCHl,Masanori MARUOKA,Kentarou TSuJI,Touru FuKUSHIMA,
Yukio OsAKI,Seigou TAKAMATSU,Touru KIMuRA,HirOyuki KoKURYU,
Ryuichi KITA,■
kaO TAKEUCHl,Naomi ToMoNO,Tatsuo SHIMIzuDψ
αrrf4̀″
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gy,0∫αたαRι
グε"ss″οψ′″′Masayuki SHINTAKU
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sαたa Rι
どC″s∫〃οψι″′Key Words: smaH intestine,tuberculosis,clinical and radiological diagnosis
が 困難 な小腸 に発生 した結核 を診断す る場 合、臨 は じ め に
床 症状 や検査 デー タを手 がか りと し、主 と して小 腸結 核 の診断 は、臨床 症状 のみ か ら確定 す る こ 腸X線検査所見 を元 に鑑別診断 してい く必 要が あ とは極 めて困難であ り、画像検査や病理組織学 的 る。 それ故 に小腸結核 の臨床診断の為 に、 この小 検 査 さ らには便 や生 検 組 織 か らの結 核 菌 塗抹 検 腸X線検査が果 たす役割 は大 きい。今 回我 々は小 査 、培養 同定 な どがその診断の為 に利用 されてい 腸結核の
2例
を経験 し、診rJr面
にお ける反省点 に る。 しか しなが ら、病理組織学的 に乾酪性 肉芽腫 つ き考察 を加 えたので ここに報告す る。を証明す ることは必ず しも容易で はな く、塗抹検
査 は感度 が低 く、培養 同定 には時 間が かか る
I)な
【症″111 63才、女性 ど、実際 の臨床 の場 で は種 々の問題 に遭遇す る。 主訴 :黒 色便特 に内視 鏡 的 な観察 に よる病 変の把握 や生検 診 断 既往歴 :49才 、脳梗塞。
56才
、狭心症 。之 裕 国立 達 幸
村劉
木 新 剛 夫 正 達 松 水 高 清 夫 美 往 尚 崎 野 大 友 徹 男 孝 島 内 福 竹 郎 一 大 竜 賢 多 辻 喜
家族歴 :特 記すべ き事項 な し。
現病 歴 :1988年3月 8日頃 か ら発 症 した胸腹 水 と 下痢 、発 熱 の精査 目的で同 月22日に当院へ 入院 し た。胸腹 水 について は滲出性 の もの とされ たが 、 原 因の同定 には至 らない まま、利尿剤等 が投 与 さ
れ 、4月 に入 つて上記症状 は軽減 してい つた。 ま た 自覚症状 は特 になか つたが、膠原病 を除外診断 す る 目的で施行 された筋生検 によ り皮膚筋炎 と診 断 され、 さらに眼底所見 か らは結節性動脈 周 囲炎 を疑 われ た。同年6月 よ リス テロ イ ド療 法 が 開始
され、眼底所見 の改善が認 め られた為 に同年7月8 日退 院 となった。その後外来でステロイ ド減量 中 の10月 27日に黒色便 をきた し、消 化管 出血 を疑 わ れて当院へ再入院 となった。
入 院時現症 :身長151cm、 体 重
38 kg、
BP100/70mln Hg、 T37.8℃ 、Pl10/min、 皮膚 色 蒼 白、胸 部聴 診 上 ラ音 を認め、腹部やや膨満傾 向ある も腹水 はな か った。血 液検査所見(丁ab:el):高度 の貧血 と低 蛋 白血 症 を認 め、 ツ反 は陰性 であ つた。
Table 1 Laboratory data on admission
Occult Blood (3+)
Urinalysis Protein Sugar
一
一
Ketone (― ) Occult Blood (+)
Peripheral Blood
RBC Hb
Ht
Plt
/mm3
ddt
7o /mm3
146×104
45
‐
147
316×104
WBC
Meta Stab Seg
Mo Ly
4800 ′
nlln3
1.0 % 120 % 730 % 50 % 9.0 %
Serological Data
CRP 55 mg/dl ESR
180 m,Vhr
Chemica:Data
TAlb T Bll
GOT
GP「
LDH
Ch―
E60 g/dl 25 g/dl 05 g/dl
13 1U/1 9 1U/1 514 1U/1
0 31 Δ pH95 mg/dl 39 7 mg/dl O.8 mg/dl 139 mEq/1
51 mEqノl 105 mEq/1 44 mEq/1 AMY
BUN
Cr
Na K
Cl
Ca Mantoux Test
5×
6 mm
Tumor Marker
CEA AFP
28
3.0
m m g g
CA19‑9 42 U/ml
Stoo!
小腸結核の2例
胸部 単純X線写 真
(Fig l):両
側 に胸水 を認 め る も、肺結核 を疑わせ る所見 はなか った。入院後経過 :出 血源同定 の為 、10月 28日 に上部内 視 鏡検 査 、H月2日 に下部 内視鏡検査 を施行 した が 、有意 な所見 は認 めず 、12月 5日 に小腸
X線
検 査 を施行 した。小腸X線検査所 見 (Fig.2):ト ライツか ら約40cm肛 門側 の空腸 に約40×40mln大の一部 に輪状潰瘍 を含 む広汎 な全周性 の不整 な帯状潰瘍 を認 めたが、読 影 した当初 は狭窄 の 口側 で はKcrckHngひ だは消 失 し、療痕萎縮帯 を伴 つているこ とを見逃 していた。
故 にこの時点で は悪性腫瘍 か炎症性狭 窄かの区別 は困難であった。
その後 もなお貧血 は増悪傾 向 にあ つた為 、12月 19日に開腹手術 を施行 した。
開腹所 見 :ト ラ イツよ り約40cm肛 門側 に ピ ンポ ン 球大 の腫瘤 を認 め た以外 に肝 右葉表面 、小腸 及 び 結腸 の漿膜 、更 には骨盤腔 内 に まで、 び まん性 に 弾性軟 かつ栗粒 大 の結節性病 変 を認 め た。後 の小
胸水 を認 めるも、肺結核 を疑 わせ る
(日赤医学 第49巻 第 2号
19979)(239)
腸漿 膜 にあつた結節 に対す る迅速生検 で は肉芽腫 との診断であつた。 また、広範 な癒着 を回腸 、子 宮 、膀眺 の間 に認 めた。
手術術 式 :主 病巣 を含め た空腸部分切 除及 び癒 着 した回腸 の切除術 を施行 した。
摘 出標 本 肉眼所 見(Fig 3上段):空腸 に40× 40mmの 広 範 な潰瘍 の 中央 に輪 状 の潰瘍 を認 め 、黒 丸
2)の
分類 か らⅧ型 と診断 した。摘 出標 本組織所 見(Fig.3下段):乾酪壊死 を伴 う肉
芽腫 を多数認めた。
術 後経 過 :最 終 的 に腹膜結核 を合併 した小 腸結 核 と診断 したが、その後 、抗結核剤投与 に よ り、全 身状態 は改善 し、現在 に至 ってい る。
【症例2】 66才、男性 主訴 :全 身倦怠感
既往歴 :64才 、自内障手術 家族歴 :特 記すべ き事項なし
現病歴 :1991年4月頃か ら全身倦怠感 をきた し、5
日g2小腸造影検査所見(症例
1)
トライツか ら約40cm肛 門側 の空腸 に約40× 40mm大 の一 部 に輪状潰瘍 を含 む広汎 な全 周性 の不整 な帯状潰 瘍 が認 め られ る。
崎脚
に 盲 本
Y K
嘩
ヽ o
伽 臨 講 れ
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>ら 調 胸 D 憮 に 嘲 1 側 は 押 両 見
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薦
見
(240) 辻 賢太郎、喜 多 竜 一、
月末 には嘔吐、微熱が 出現 し、水様 下痢 もきたす 様 になったため、同年6月 17日か ら7月 22日 まで当 科 に入院 した。 この間、著明 な低 蛋 白血症 が認 め られ たが 、腹 部超音 波検 査 、腹 部CT検査 、 上 部 消 化管
X線
検 査 、上 部消 化管 内視 鏡 検 査(十二指 腸 フ ァイバ ース コー プに よる十二指腸 上行 部付 近 まで の観察 を含 む)、 下 部内視鏡検 査 で は、特 に 異常 な所見 は認め られなかった。 なお小腸X線検 査 も必 要 とされ たが 、一時退 院 を希望 し、退 院 と なっ た。 その後 、近医 で点滴 治療 されてい たが 、 次 第 に全 身倦怠 感 は増 悪 した。 同年8月28日 に当 科 で施行 された小腸X線
検査 にて潰瘍性病 変 を指 摘 され、8月 31日当科へ再 入院 となった。入 院時現症 :身長155cm、 体 重
45 kg、
BP130ノ82mlnHg、
P84/min、 T35.6℃ 、眼瞼結膜 に軽度 の貧血 が あ り、腹部 に著明 な腹水 と下腿 に浮腫 を認めた。血 液検査所見
(Table 2):軽
度 の貧血 と高度 の低 蛋 白血症 を認め、 ツ反 は20×13mlnであ つた。入院時胸部単純X線写真 (Fig.4):一 部 に陳 旧性肺 結核 を疑 わせ る所見 を認 めた。
入院後経過 :当 科入院時 よ り、小腸癌 を強 く疑い、
外 科 的切 除以外 には根 治 は困難 と判 断 し、手術 を
松 正 剛、木 村
水 達 夫、新 宅 雅 幸
予 定 したが、低栄養 に よる全 身衰弱状態 に加 え、
夜 間せ ん妄 、高 血 糖状 態 、Ⅳ Hカ テー テ ル感 染 、 肺 水腫 を きた した うえに、
MRSA感
染 を合併 した 為 、手 術 は順 延 とな った。約5カ 月 して全 身状 態 が 回復 に向か つた時点 で、1992年1月22日再 度小 腸X線
検査 を施行 した。小 腸X線検 査所 見 (Fig.5):ト ラ イツ近傍 にApplc Core Appearanccを 認 め、 その回側 の腸 管 は拡張 し ていた。
家族 の強 い希望 もあ り、1992年2月26日 外 科 的 開腹術 を施行 した。
開腹所 見 :開 腹 時、多量の腹水 を認めた。 トラ イ
ツの近傍 、口側 に約5cmに わたる腫瘤 を認 め、 さ らに回腸 末端 に2箇 所 、1 0cm離れ て狭 窄部 を認 め た。
手術術 式 :ト ラ イツ近傍 の腫瘤 を含め た小 腸切 除 後 に十二指腸 ―空腸 吻合術 を施行 し、 さらに回腸 末端 にあ つた2箇 所 の狭 窄 を含 め た回腸 切 除術 を 施行 した。
摘 出標本肉眼所見(Fig.6上段
):ト
ライツ近傍 の回 側 に63×45mln大の周辺 に少 し隆起 を伴 う潰瘍性病 変 を認 め 、黒 九 の分類 のⅧ 型 と診 断 した。 なお 、Fig.3(1主 伊
11)
上段右 :空 腸の摘出標本肉眼所見
40×40mmの 広汎 な帯状漬瘍の中央 に輪状の潰瘍 を認 め、黒丸の分類 か らⅥ‖型 と判断 した。
上段左 :回 腸 の摘 出標本肉眼所見 下 段 :摘出標本組織所見
乾酪壊死 を伴 う肉芽腫 を多数認 め る。
清 尚美 友野 男 孝 内 竹
小腸結核の2例
回腸 末端 に も2箇 所 、各 々38×5mm大 の帯状潰瘍 を 認 め 、いず れ も黒 丸 の分類 の ⅣB型と した。
摘 出標 本組織所 見(Fig.6下段):上記 いず れの切片 において も、粘膜下 か ら奨膜 にかけ、乾酪壊死 を 伴 う肉芽腫 を認 め 、腸結 核 と診断 した。 なお チー ルニ ルゼ ン染色法で は、結核菌 を証 明す るこ とは で きなかった。
術 後経 過 :術後 も腹 水 は消失 せ ず 、3月 に入 つた 頃 に敗血症 、腎不全 を きた し、同 月23日永 眠 とな
った。
(日赤医学 第49巻 第 2号
19979)(241)
考 察
本邦 にお け る結 核 症 は化 学療 法 の進 歩 に よ り、
その治癒率 は上昇 し、かつ感染 は減少 したが、そ の有病率の年次推 移 をみ る と、1980年 に入 り罹患 率 減少 の速度 は鈍 化 してお り3)、 未 だ に無 視 で き な い 感 染症 で あ る。 なか で も腸 結 核 につ い て 、 1976年 か ら1994年 までの報告例 を集計 した八尾 ら は、決 して減少 した とは言 えない状況で あ ること を指摘 してい る4)D。 これ らの事 実 を背景 と して、
Table 2 Laboratory data on admission
Occult Blood
(+) Urinalysis
Protein Sugar
一
一
Ketone Occult Blood
一
一
Peripheral Blood
RBC
Hb
Ht
Pit
348×
104
10.9325
303×104
WBC
Stab Scg
Eo
Mo Ly6000 /■
1ln3
9.0 %
76.0 %
1.0 % 1.0 % 130 %
ノmm 脚
%
/mm
Serological Data
CRP 0.7 mg/dl Chemical Data
T
Alb TB‖
GOT
GP「
LDH
Ch―
EAMY BUN
Cr
Na
KCI
Ca
4.3 g/dl18 g/dl 06 g/dl
20 1U/1 15 1U/1 310 1U/1
0.08 Δ pH17 mg/dl 8.8 mg/dl 06 mg/dl
135 mEq/1 38 mEq/1
103 mEq′
132 mEqハ
Mantoux Test
20×13 mmTumor Marker
4.5 ng/ml
(242)
Fig.4入院時胸部単純X線写真(症例
2)
一部 に陳旧性肺結核 を疑 わせる所見 を認 める。
新 宅 雅 幸
Fo.5小腸X線検査所見(症例
2)
上段:入院前下段:入院後再検査時 トライツ近傍
̀こ
Apple Core Appearanceを 認め、
その口側の腸管は拡張 している。
Fig.6(I置″
12)
上段 :摘出標本肉眼所見
トライツ近傍の口側 に63× 4肺 m大 の周辺に少 し隆起 を伴 う帯状潰瘍性病変 を認 め、黒丸の分類のⅧ型 と判断 した。
下段 :摘出標本組織所見
粘膜下 か ら奨膜 にかけ、乾酪壊死 を伴 う肉芽腫 を認 める。
夫 達 水 清 尚美 野 友 男 孝 内 一 竹 竜 多 喜
症例 2 ST 66才
窓
ゝ
2 S丁
小腸結核の2例
腸結核診療 の現状 は どうか とい えば、同 じく八尾 らに よる と、手術例 の術前診断の正診率は必ず し も高 くな く、
X線
・内視鏡診断 も1970年 代後半か ら進歩 はみ られてい ない としてい る4)。 特 に小 腸 結核 は、小腸 その ものの解剖学 的特殊性 の為 、他 の臓器 に比べ て充分 な病変描 出の困難 な症例があ り、所見の把握 に難渋す る場 合がある。 さらに八 尾 が指摘 してい る ように腸結核 のみの症例 にお け る結核菌 の糞便培養 の陽性率 は6.4%と
極 め て低 率 で あ り4)、 その こ とが小腸結 核 の診 断 を さらに 困難 に させ てい る。場 合 に よっては穿孔 または閉 塞 な どの合併症 をきた し、緊急手術 に至 ることによって、初めて確診 された症例 もみ られる。
今 回報告 した2例 は
X線
診 断上 、主 に小腸 腫瘍 との鑑別 を要 したが、詳細 なる病歴 の把握 や臨床 経過 の検討 さらには小腸X線
写真 の十分 な読影 を 含め た総 合診断が小腸結 核 の診 断 につ なが る もの と考 え られ たので 、 これ らにつ き以 下 に考 察す る。病 歴 上 の 問題 点 と して、 【症例1】 │こつ いては、
初 回入院時 に筋生検 や眼底所見 よ り皮膚筋炎及 び 結節性 動脈周 囲炎 と安易 に診 断 され 、ス テロ イ ド が投与 された点 と初診時 に下痢 を認 め られていた に も関 わ らず、消化管の精査が な されてい なか っ た点 にある。平 山 による と、皮膚筋炎 に伴 う消化 管病 変 は、食道 、 胃、小 腸 にお け る緊張 の低 下 、 拡張 、通過遅延、あるいは癌 の合併 とされてお り、
また結節性動脈周囲炎ではその50〜
80%と
い う比 較 的高率 に消化管病 変が合併 し、壊死性血 管炎 に 基づ く潰瘍形成あ るいは梗塞、出血 、穿孔 な どの 重篤 な病 変 を起 こ し得 る と してい る5)。 これ らの こ とか ら、 この症例 における消化管症状 も膠原病 に伴 うもの との判断 も可能で はあ るが、種 々の所 見 を示す膠原病 の診断 にはそれな りの診断基準 が 設 け られてお り、ス テ ロイ ド投与前 の慎 重 なる態 度が必 要で あ る と考 え られた。今 の ところ本症例 において膠原病 の合併 は否定で きないが、ステロ イ ドの投与前か らすで に下痢症状があ った との こ とか ら、下痢 を含め、 もともと存在 した腹水 や発 熱 は小腸 結核及 び腹膜結核がその原 因であ り、ス テロイ ド投 与 による免疫力の低下が病態 を さらに 増悪 させ た と考 え られる。 また本症例ではステロ(日赤医学 第49巻 第 2号
19979)(243)
イ ドが投与 されていた影響 の為か ツベ ル クリン反 応 は陰性 であ り、胸部単純X線写真上 も明 らか な 活動性結核 を示唆 させ る所見 に乏 しかったが、八 尾 らに よれ ば、腸結核患者 の10%以上 に ツベ ル ク リン反応 陰性例があ り、欧米で はむ しろ陰性率が 高 い
(70%)と
す る報告 もあ る4)と
し、 さらに1980 年 に本邦 の腸結 核報告例 を集計 して、肺 結 核 を有 しない原発性(孤立性 )腸 結核 の頻度 は半数あ るい はそれ以上 と報告 している0。次 に 【症例2】 で は数 力月間持続す る全 身倦怠 感 、嘔吐 、水様 下痢 が主症状 であった。小林。は、
小腸結核 が活動性 であれば腹痛 、発熱 、食欲不振 、 下痢 、体重減少 な どが主症状であ り、治癒性 の腸 結核 で は狭窄症状 が残 る こ ともあ るが、 しば しば 無症状 の こ とが あ り、偶然 に発見 される と述べ て い る。また人尾 らは、上記症状 に加 えて吐・下血、
嘔吐 、腹 部腫瘤 な どが主症状であつた と述べ てい る4)。 この症例 では腹痛 や発熱 は なか ったが、活 動性腸 結核 を示唆 させ る症状 を有 してい た。 しか し上 述 した種 々の臨床症状 はCrOhn病な どにお い て も十分み られ得 る ものであ り、当然 なが ら特異 的で はない。 この点 につ き、八尾 は腹部膨満 、嘔 吐 な ど閉塞症状 の頻度 はCrOhn病の それ よ りも高 ぃ
4)と
し、 この こ とは臨床症状 か ら腸結核 を推測 す る場 合の一助 とな り得 るか もしれない。 さらに 初 回入院時の血液検査上、高度 の低蛋 白血症が認 め られていた こ とは、確定 は し得 ないがすで に蛋 白漏 出性 胃腸症 または続発性吸収不 良症候 群 の病 態 を合併 してい た為 とい う可能性 が あ り、小腸病 変 の存在 を疑 わせ しめ る所見 であ った。低 蛋 白血 症 につい ては、門阪 らは蛋 白漏 出性 胃腸症 を呈 し た小腸結 核 を7年 間追跡 した後 の開腹 術 に よ り診 断 してい る8)が、 その初期 診 断 において は決め手 を欠いてお り、様 々な臨床像 と画像診断 を参考 に してい る。 また本例で はツベル クリン反応 は陽性 で、胸部X線写真上 陳 旧性肺結 核 を疑 わせ る所見 が認め られてお り、続発性小腸結核の可能性 があ るこ とを考 えるべ きであった。本2症例 と もに病脳 期 間 は長 期 に及 ん でお り、
なお かつ術前 に正診で きてお らず 、小腸病変の診 断の困難 さを物語 つてはい るが、以上の ことか ら と りわけ小腸結核の診断 には詳細 なる病歴及 び検
(244) 多 竜 一、賢 太 郎 、
査 デー タの検討 が欠かせ ない と考 え られた。
腸 結核のX線診 断 につ いては諸 家 の報告 が あ り
0)10)11)12)、 そ れ らの意 見 を要約 す れ ば以 下 の とお
りとなる。すなわち、①狭窄の状態は、輪状狭窄 による中等度、 または高度の求′亡、性狭窄 と辺縁の 不整、硬化及びその口側腸管の拡張であ り、変形 は偏側性変形や変形 を伴 わない場合 もあるが、主 として対称性変形を示す。②潰瘍部の状態につい
て は、輸状 、帯状 の不整形潰瘍 で辺縁 に細 かい毛 羽立 ちを伴 う。その拡が りは比較的限局性 であ り、
潰瘍 より離れた粘膜面は正常である。③潰瘍部 に 伴い、細かい縮緬状の微細粘膜像や炎症性ポリー プと思われる複数の小隆起 よ り成 る療痕萎縮帯 を 有する。④種々の時期の潰瘍や炎症性ポリープが、
一時点の同一症例に多発 してみられる、という4 点である。
また病 変 の罹 患部位 につ いて、Pausuanら は腸 結核症例 において は回腸 及 び回盲 部 が著明 に侵 さ れやすい傾 向にある とし )、 Tatsuro Fukuyaら は空 腸 に狭 窄 を きた した小腸 結核 の2例を報告 し、そ の中で結核病変 は小腸の中で は回腸 に多 く空腸 は 稀 で あ る と述べ てい る14)。 さらに、畑 中 らは開腹 術 を行 つた小腸結核7例 について検討 してい るが、
その 内5例 が 回腸 も しくは回盲部 の病 変であ つた と報告 している15)。 我 々が経験 した
2例
は ともに 空腸 に結核病変が認 め られた とい う点で比較 的稀 な症例であ つた と考 え られる。【症 例1】 で は、先述 した よ うに もともと膠原 病 の診 断 の もとに検 索 、治療 を進 め てい た故 に、
そ こに合併 した小 腸病変 の鑑別診 断 と して第一 に 結核 をあげ るの は困難 な状態 であ った。 しか しな が らrctrOspcclvcに み る と、小腸
X線
検査所見 にお いて、潰瘍 の形状 や辺縁 の不整 な変化のみか らは 癌 や クロー ン病 との区別が問題 になるが 、輸状 潰 瘍 の 口側 で はKerckHngひ だは消失 し、疲痕萎縮帯 が明 らか に認め られてお り、 この時点で結核 は診 断 の第一候 補 にあげ られ るべ きはず で あ った。本 症 例 で は特 に虚 血 性 腸 炎 との鑑 別 も重 要 とな る が、小林 は小腸 における虚血性潰瘍 の特徴 として、区域性 で幅 が広 く、多発傾 向 にあ り、好発部位 は な く、潰瘍 の深 さもul―Ⅱな ど比較 的浅 い と して い る10。 本症例 で は先述 した様 に単 発 で、潰瘍 は
新 宅 雅 幸
深 く、幅はさほど広 くない とい う点で虚血性陽炎 は否定で きる。【症例21についてはレン トゲ ン的 には不整形の潰瘍 によるap口c cOrc appcaranccを 呈 し て い た こ と か ら 癌 を 最 初 か ら 疑 つ た が 、 rctrospec6vcにみ る と療痕萎縮帯 は不明 なる も、狭 窄部 については先 述 した「輪状 狭窄 に よる高度 の 求心性狭 窄 、辺縁 の不整 、硬 化及 び口側腸 管 の拡 張」 が認 め られ た とい う点 か らは癌 は否 定 的で あ る。 またcrOhn病 については、西俣 らが小腸CrOhn 病 に頻 度 が 高 い所 見 と して い るissun ng ulcer,
■stula,タ ツシェ様 変形 な どが本症例 では認 め られ ず 狭 窄 部 に お い て 、 本 症 例 で は そ の 両 側 で Kcrckringひ だが消 失 してい るが 、Crohn病で は狭 窄部 の辺縁 に まで到達 してい る こ とが 多い17)と ぃ
う点 で、 これ も否定 的であ る。
最近 で は、腸結核 の診 断 にハ イプ リダイゼ ー シ ョン法 やPCR法な ど分子生物学的 な検査 が有効 で あ る との報告 が あ り、結 核診 断 も徐 々に容 易 にな りつつ あ る様 な感があ る。 ただ し、そ こには まだ 種 々の問題 や課 題 が あ り1)18)、
̲般
の臨床 に応 用され、なおかつ正診す るには まだ十分で はない面 が あ る。あ らゆる意味 での小腸検査の完全化が な されてい ない現状で は、小腸結核 については、や は りX線検 査が今 の ところ主 な診 断の手段 と考 え ざるを得 ない。
我 々は過去 に「術前 に内視鏡 的 に診断 し得 た小 腸癌 の1例 」、「小 腸 筋原性腫 瘍 の 臨床 的検 討」 を 報告 した19)")。 今 回 の小 腸 結 核 の2例 につ い て も 主 と して診断面 よ り検討 し報告 したが、何 れの場 合で あれ、詳細 なる病歴 の検 討 と小腸
X線
像 の読 影が重 要で あ る こ とを認識 したので こ こに報告 し た。お わ り に
小 腸 結核 の2例 を経験 し、主 と して診断面 よ り 考察 し、報告 した。
尚、本論 文 の要 旨は第59回 日本消 化器病学 会近 畿支部例 会 にて発表 した。
文 献
1)松本誉之、小林絢 三 :腸 結核診断の現状。 胃 と腸 30:491〜
496、
1995喜 竹内孝男 友野尚美 清水達夫
小腸結核の 2例 (日赤医学 第 49巻 第 2号
19979)(245)
2)黒丸五郎:腸結核 の病理。結核新書12、 医学 12)丹 羽寛文 、金沢雅弘他 :腸結 核 と小 腸潰瘍 。 書院、1952. 臨床 消 化 器 内科 Vo1 7 No 13 2187〜 2195、
3)大森正子 :日 本 の結核 の現状 と将来予 測。 治 1992.
療 76:2677〜
2684、
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