財政 金 融政 策 と国際収 支
二 国 問 モ デ ル ー 一一一
菅 原 晴 之
1.は じ め に
1980年 代 の 日本 にお い て 金 融 の 自 由化,国 際 化,情 報 化 が 急速 にか っ 同時 に進 展 し,し か もこの よ うな環 境 の も とで 民 間部 門,特 に企 業 の金 融 取 引 も 資産 負 債 の両 面 と も多 様 化 しか つ活 発 化 す る よ うに な っ た。 な か ん ず く80年 代 後 半 は世 界 的 に低 金 利 の状 態 が持 続 した もの の,90年 代 に な る と金 利 が上 昇 して過 熱 気 味 で あ っ た金 融 取 引 は沈 静 化 しつ つ あ る。一 方 実 物 経 済 に関 し
て は規 制 緩 和 や構 造 転 換 を迫 られ るに至 っ て企 業 の投 資活 動 が 極 め て活 発 化 して い ざ な ぎ景 気 に匹敵 す る ほ ど息 の 長 い景 気 上 昇 が 実現 した 。
80年 代 前 半 の 日本 の経 済 成 長 は その 寄 与度 か らみ て輸 出主 導 型 で あ る。 し か も輸 出 に 占 め る対 米 依 存 度 の高 さや 当 時 の合 衆 国 の ドル 高 ・高金 利 政 策 と 消 費 ブー ム あ る い は資 本 取 引 の伸 び率 か らみ て,実 物 金 融 の両 面 に お いて 日 米 経 済 の依 存 関係 が い っ そ う深 まっ た と言 え よ う。 一 方80年 代 後 半 に は 日本
はプ ラ ザ合 意 を受 けて 内 需 主 導 型 に転換 した。 同時 に その 時 期 まで世 界 的 に 低 金利 の状 態 が 持 続 した ため企 業 の資 金 調 達 コス トが低 下 しつ つ,日 本 国 内 の 実物 投 資 収 益 率 も高 い た め活 発 な設備 投 資 が行 われ たがs土 地 の キ ャ ピタ
も急 速 に拡 大 した。 そ の背景 に は80年 代 前 半 に 国際 収 支 に大 幅 な黒 字 が 持 続 し,こ れ が企 業 の内部 留保,手 元 流 動性 の厚 み を増 した とい う実 態 が あ る。
しか も民 間 金 融機 関 に お い て は高 度 成 長 期 の恒 常 的 な超 過 需 要 の体 質 が逆 転 して,い わ ゆ る金 余 り現 象 とい う超 過 供 給 の状 態 に追 い込 まれ た。 こ こに金 融 自由化 の波 とい う環 境 が重 な った た め,金 利 が 下 が る圧 力 が 生 じたの で あ
る。
以 下 で は まず前 半 にお いて 実物 の フロ ー と貨 幣 ス トッ クのマ ク ロ的 バ ラ ン ス が 二 国 間 で相 互 依 存 関 係 に あ る経 済 モ デ ル にお い て,0国 の財 政 金 融 政 策 が 他 国 の経 済 に いか な る影 響 を及 ぼす か に つ い て分 析 す る。 後 半 で は企 業 が 実物 投 資 な らび に資 金 の調 達 運 用,す な わ ち フ ロー とス トックの両 面 を含 め
た トー タ ル の利 潤 最 大 化 行 動 を仮 定 す る ミク ロ的 合 理 的基 礎 に基 づ いて,相 互 依 存 の マ ク ロ的現 象 と政 策 の効 果 の特性 に つ い て分 析 す る予 定 で あ る。
2.IS=LM分 析 の 基 本 モ デ ル
分 析 の フ レ ー ム ワー ク は貿 易 等 を通 じた経 常 取 引 お よび証 券 投 資 と直 接 投 資 をあわ せ た資 本 取 引 を通 じて相 互 依 存 関係 に あ る二 国 間 の開放 マ ク ロモ デ ル を用 意 す る。 理 論 分 析 の た めの基 本 モ デル は二 国 のバ ラ ンス式 を同 時均 衡 の体 系 と仮 定 しつ つ,計 算 を可能 な限 り単 純 にす るた め,実 物 フ ロー 部 門 に っ いて は総 需 要=総 供 給 のバ ラ ンス式 の み を計 上 す る。 金 融 資 産 ス トック に つ いて は貨 幣 の 需給 バ ラ ンス の み を考 慮 す る。 国際 収 支 のバ ラ ンス に つ い て は,固 定 為替 相 場 制 度 と変 動 為 替 相 場 制 度 に お い て形 式 上 内生 変 数 と外 生 変 数 の関係 が 交 替 す る。 前 者 に お い て は為 替 レー トは政 府 が決 定 す る外 生 変 数 で あ り,為 替 レー トを含 め た そ の他 の外 生 変 数 が与 え られ れ ば,経 常 収 支 は 体 系全 体 に よっ て解 く こ とが で きる内生 変 数 で あ る。
二 国 の 国民 経 済 にお け るマ ク ロ的構 造 が安 定 的 で あ り,し か も政 府 が 民 間 部 門 よ り この よ うな構 造 を正確 に知 る こ とが で き るので あ れ ば,前 者 の制 度
62国 際経営論集NO.31992
の ほ うが 後 者 の制 度 よ り望 ま しい。 しか し民 間 部 門 が 両 国 の経 済 構 造 を よ く 理 解 して将 来 の予 測 が 可 能 で あ れ ば,固 定 為 替 制 度 の優 位 性 は失 わ れ る。 ま た貿 易 取 引 が著 し く活 発 に な る と同時 に資本 取 引 の規 模 も拡 大 した上,取 引 サ ー ビス の 内容 が拡 大 す る よ う にな る と為 替 レー トは市場 の実 勢 に応 じた 自 動 的 な均衡 作 用 に委 ね る こ とが 望 ま しい と もい え る。 しか し資 本 取 引 が拡 大
しか つ その 内容 お よび参 加 者 が 多様 化 して い る現 在 の先 進 国 にお い て,変 動 相 場 制 度 は固定 相 場 制 度 と比 較 して全 面 的 に優 れ て い る とはい えな い。 外 国 為 替 市 場 が為 替 レー トの変 化 に対 して即 時 的 に需給 を調 整 す る よ うに は変 化 しな い ケ ー ス(た とえ ばJカ ー ブ効 果)や 容 易 に政 策 効 果 につ い て予 期 す る こ とが で きな い ア ナ ウ ン スメ ン ト効 果,あ る い は予 測 す る こ とが容 易 で な い 様 々 な 出来 事 に た い して,資 本 取 引 の参 加 者 の 間 に様 々 な思 惑 が発 生 しなが ら実 物 経 済 の水 準 と比 較 して為替 や 金 利 が著 し く離 反 して,実 物 経 済 に大 き な不 安 定 要 因 を与 え る危 険 も否定 で きな い。
しか しなが ら短 期 的 にバ プ ル が発 生 して崩壊 す る過 程 で実 物 経 済 に大 きな 不 安 定 要 因 に な らな い限 り,長 期 的 に は変 動 相 場 制 度 が 望 ま しい。 分 析 モ デ ル で は二 つ の制 度 に関 して相 互 依 存 モ デ ル を設 定 して ,そ のパ フ ォー マ ンス
を比 較 す る。
d)基 本 的 枠 組
自 国 の 実 質 国 内 総 生 産 量 をZ,実 質 国 内 総 需 要 をHで 表 す と そ の 内 容 は次 の よ う に 定 義 さ れ る。
Z=C十1十G十X H=C十1
同 様 に し て 外 国 の 実 質 国 内 総 生 産 量Z*,実 質 国 内 総 需 要H・ は外 国 通 貨 建 て で 以 下 の よ う に 表 現 で き る 。
Z*=C'*十1*十G*十PIM/P2E
国 内 総 需 要 に お け る 消 費,投 資,政 府 支 出 に つ い て は 国 内 生 産 と輸 入 財 の 両 方 を 含 み,自 国 建 て で 合 計 し た 額 で バ ラ ン ス して い る 。 な お,各 々 の デ フ レ
ー タ は等 し い もの と仮 定 す る。
C=Cd‑P2ECm/Pl I=Id‑P2EIm/P, G=Ga̲P2EGm/Pl M=Cm十Im十Gm
国 際 収 支 は 自 国 建 て 通 貨 の 名 目 で 表 し た 経 常 収 支 額 と資 本 収 支 との 合 計 に 等 し く,経 常 収 支 は輸 出 か ら輸 入 を差 し 引 い た もの で あ る。
B=PIX(Y*,r*,P2E/P1,T*)‑P2EM(Y,r‑r*,P2E /P1,T)十K(Y,Y*,r‑‑r*)
② 固 定 相 場 制 度
まず 自 国 の 所 得 消 費 支 出 の バ ラ ン ス 式 お よ び貨 幣 の需 給 バ ラ ン ス 式 は開 放 型 のIS,LM方 程 式 とな る 。
Y‑H(Y,r,E,T)‑x(Y*,r*,P2E/P1,T*)‑G=0
(1)
L(Y,r)一(L̲1十sK十 γ)=O
各 変 数 に つ い て は 以 下 の よ う に 定 義 す る 。
Y実 質 国民 総 生 産 X実 質輸 出
L実 質貨 幣 需 要
s資 本 収 支 の不 胎 化 率 E自 国建 て為 替 レー ト PI自 国建て国内財 の物価 T実 質租 税
H:実 質 民 間 国 内総 需 要 G:実 質 政 府 支 出
L̲1
K:資 本 の純 流 入 r:国 内利 子 率
P,外 貨 建 て輸 入 財 の物 価
(2)
前期期末(今 期期首)の 貨幣供給量
な お,*は 国 内 の 変 数 に 対 応 す る外 国 の 変 数 名 で あ る 。(1)お よ び② に 対 応 64国 際経営論集No.31992
して ・ 外 国 のIS,LMバ ラ ン ス 式 は次 の よ う に な る
。 YLH*(ir*,E,T)‑EM(Y ,r,E,T)‑G*=0(3) L*(Y*r*)一(L1*+s*K*+γ ・)=0(4)
国 際 収 支 の バ ラ ン ス(総 合 収 支)は 固 定 相 場 制 度 に お い て 内 生 変 数 で あ り , 両 国 が 一 致 し て 望 ま し い と合 意 す る水 準 か ら離 反 し て い る場 合 に は政 策 変 数 の 組 み 合 わ せ を変 更 し て収 支 バ ラ ン ス の 回 復 に 働 きか け る こ と に な る
。 P,X(Y*・r*・P・E/P1,T*)‑POEM(Y
,r,P、E/P1,T) +K(Y・Y*r‑r*)‑B(5)
こ の場 合 両 国 と も金 利 は規 制 金 利 で あ り,原 則 と して 市 場 実 勢 の も とで 決 定 す る 自 由 金 利 に 従 う貸 出 や 金 融 商 品 は存 在 し な い も の とす る
。 も し両 国 と も金 利 が 自 由 化 さ れ て い れ ば,国 際 間 に お け る 金 利 格 差 の 利 ざ や を求 め る よ う な 行 動 は制 限 さ れ る もの の 閉 鎖 経 済 の 意 味 で 金 融 の 自 由 化 は 不 可 能 で は な い。 しか し一 国 に お い て 金 利 が 自 由 化 さ れ て い な が ら他 方 の 国 で は 金 利 が 規 制 され て い る場 合,方 程 式 体 系 自 体 は 内 生 変 数 と外 生 変 数 が 各 々 一 つ が 交 替 す る に す ぎ な い が,実 際 に は 両 国 間 に お け る政 策 目標 の 合 意 あ る い は政 策 変 数 の 変 更 が 制 度 の 違 い か ら困 難 に な る恐 れ が あ る 。 以 下 で は規 制 金 利 の 状 態 に 限 定 し て 分 析 を進 め る。 か よ う に し て 体 系 を行 列 に よ っ て 表 現 す れ ば 次 の よ う に な る。
1‑H, LY
‑EM Y
O P2EMY一
01鼎00AU
X3 0 1‑H*l
L*3
‑P lX*3
OAUハUlAU AUAUnUAU11
dY dy dY*
dy*
dB
(H3十X3P2/P;)dE十H4dT十dG十H2dr LZdr
(H*、‑M‑EM,)dE十H2*dr*十H4*dT*十dG*十EM2dr
L*2dr
P,(M十EM3P2/PrP2×3)dE‑P2×4dT*十P2EM4dT
̲K 3dr十K3dr
第⑥ 式 か ら内外 の政 策 変 数 が 内生 変 数 に及 ぼす 影 響 を確認 して 総 需 要 関 数 を求 め よ う。 係 数 行 列 式 を Ω、と して次 の よ うな符 号 判 定 条 件 が 成 立 す る。
Ω、=(1‑H、)(1‑H*3)‑X3EM1>O
aG ay
aT‑{(1‑H・ ・)H・+X・EM・}/Ω1<・(7b)
自国 の政 府 支 出 を変 化 させ た場 合 の 国 内総 需 要 に及 ぼす 効 果 は単 純 な乗 数 効 果 で あ り,輸 出 関数 の価 格 に対 す る供 給 と輸 入 性 向 に関 す る特 性 を除 けば, 極 め て単 純 で あ る。 租 税 政 策 に関 して も,財 政 支 出比 較 して貯 蓄 に よ る後 者
の漏 れ が 投 資 財 輸 出 や消 費 財 輸 入 の ル ー トを通 じて,乗 数効 果 を小 さ くす る こ とが観 察 され る。 この こ とか ら均衡 財 政 主 義 を 旨 とす る政 府 支 出 の乗 数 効 果 は赤 字 財 政 の場 合 と比 較 して小 さ くな る こ とが確 認 で きる。
器IG=T‑{(1‑H*・)(田 ・)x・EM・}/Ω1
<(1‑H*3)/Ω1>O(7c)
内外利 子 率 が 投 資 乗 数 効 果,流 動 性 選 好 お よび 資本 移動 の三 つ の ル ー トを 通 じて所 得 に及 ぼ す全 体 の効 果 は次 の通 りで あ る。 国 内利 子 率 が 国 内総 需 要 に及 ぼ す影 響 は消費 関 数,投 資 関 数 お よび外 国 の貯 蓄 関数 に よ って決 定 され る。 外 国 の貯 蓄 関 数 か ら影 響 を受 け るの は,国 内 の投 資 家 が 資 金 を国 内 か ら 調 達 す る こ とは容 易 で ない場 合 に は外 国 か ら調 達 す る こ と もあ るか らで あ る。
66国 際経営論集No.31992
外 国 の利 子 率 が 国 内 総 需 要 に及 ぼ す影 響 を考 察 す る ケー ス も同様 で あ るた め , 海 外 の資 金 が 上 昇 す れ ば国 内 資本 の流 出 が 発 生 して よ り限界 効 率 の高 い投 資 機 会 を見 い だす 機 会 が増 加 す る こ とに よ り,総 需 要 が 増 加 す る こ とに な る の
で あ る。
器{H、(1‑H・,)+X、EM、}/Ω1〈 。(7d)
募*一{X、(1‑H・,)‑x,H、}/Ω1>。(7e)
国 際 資本 移 動 は内外 金 利 の動 向 に受 動 的 に反応 す る の で あ っ て
,こ の よ う な資 本 の移 動,あ る い はそ の ス トッ ク水 準 が所 得 や物 価 に直 接 に影 響 した り , あ る い は消 費 関 数 の資 産 効 果 を通 じて 間 接 的 に所 得 に有 為 な影 響 を及 ぼす よ うな構 造 の モ デル を前 提 として い な い た め,金 利 は国 際 間 で投 資 財 の輸 出入 を通 じて互 い に相 手 国 の マ ク ロ変 数 に影 響 す るだ けで あ る。 国 内投 資 の過 半 を海 外 か らの資 本 の導 入 に依 存 して い る国 を除 け ば,総 体 的 に各 国 の金 利 は 国 内投 資 に大 きな影響 を及 ぼ す と仮 定 して差 し支 えな い で あ ろ う。 同様 に し て外 国 の政 府 に よ る財 政 政 策 が 自国 に いか な る影 響 を及 ぼ す か につ いて 二 国 モ デル が有 す る特 性 を調 べ る こ とにす る。
演ぽ*‑X、/Ω1>・(7f)
器 一(1‑H・,)(H、+X、)/Ω1〈 ・(79)
外 国 政 府 の支 出 が拡 大 す る と乗 数効 果 に よ り所 得 が増 加 して ,そ の結 果 当 該 国 の 政 府 支 出 は も とよ り消 費,投 資 に関 して も輸 入 が 増 加 す る こ とを意 味 す る。 また,外 国政 府 の増税 は当該 国 の利 子 率 の上 昇 を通 じて}自 国 か ら外 国 へ の投 資 財 を は じめ とす る輸 出 の減 少,さ らに は国 内支 出 の減 少 が 生 じ る こ とにな る。
次 に 内外 政 府 の財 政 支 出 お よ び租 税 政 策 が マ ネ ー サ プ ラ イ に及 ぼ す 影 響 に つ い て符 号 条 件 を確 か め た い。
aG aY
aT‑‑H・ ・L1(田*・)/Ω1<・(8b) ay
aG*‑LIX・/Ω1>・(8c) aY
aT*一 一H・ ・LIX・/Ω1<・(8d)
第(8a)式 の値 は 自 国 政 府 支 出 の 所 得 乗 数 効 果 に マ ー シ ャ ル のkを か け た も の に 等 し い 。 同 様 に し て 第(8b)式 に よ れ ば租 税 政 策 の マ ネ ー サ プ ラ イ に 及 ぼ す 効 果 は金 利 に 及 ぼ す 効 果 を 除 い て 租 税 政 策 の 所 得 乗 数 効 果 に マ ー シ ャ ル のkを か け た 値 に な る。 ま た こ の 乗 数 効 果 は政 府 支 出 の 乗 数 効 果 に 限 界 消 費 性 向 を か け た 値 に等 し い こ と も容 易 に確 か め る こ とが で き る 。
外 国 の 政 府 支 出 が 拡 大 す れ ば,投 資 財 の 輸 入 が 増 加 す る結 果,自 国 の 投 資 財 部 門 の輸 出 が 拡 大 し て,自 律 的 に 自 国 の 貨 幣 供 給 が 増 加 す る。 た だ し,次 に 確 か め る よ う に外 国 の 財 政 政 策 の 変 更 は 自 国 の 国 際 収 支 を 改 善 す る と は 限
らな い 。 自 国 の貨 幣 供 給 の 増 加 に よ る国 際 収 支 の 改 善 は一 時 的 な 効 果 に す ぎ な い 。 こ の こ とに よ っ て さ ら に 国 内 の 所 得 が 上 昇 す る 結 果,自 ら の輸 入 も増 加 す る一 方,ポ ー トフ ォ リオ が 変 更 さ れ て 国 内 投 資 の 水 準 も変 化 す る の で あ
る 。 as
aGEM1(PIX*・‑P・(1‑H*1))/Ω!
aB
aG*‑X・ ・(P1(田1)m・EMI)/Ω ・ ay
aG‑{X・ ・EMI+LIH・(1‑H*・)‑L・(1‑Hl)(1‑H*・)}/Ω1
ar
‑H 2(1‑H*3)PEM、 十K3×3EM1}/Ω1
この よ うに相 互 依 存 関係 にあ る 二国 の マ ク ロ経 済 につ い て,所 得 支 出 に焦
68国 際 経 営 論 集No.31992
点 を あ て るだ けで は政 府 支 出 お よび租 税 政 策 が 国際 収 支 に い か な る影 響 を及 ぼ す か につ い て知 る こ とが 容 易 で は な い。 また利 子 率 が 国 際 収 支 に及 ぼ す 影 響 につ い て も,複 雑 なル ー トを通 じて プ ラス マ イ ナ ス両 面 が あ り,最 終 的 に は符 号 判 定 が 困難 で あ る。 経 常 的 取 引 を通 じて相 互 依 存 関係 が 強 い二 国 に お い て,固 定 相 場 制 度 の も とで は財 政 金 融 政 策 を用 い て 国際 収 支 の バ ラ ンス を はか る こ と は困 難 で あ る こ とが簡 単 な 静 学 分析 に よっ て理 解 す る こ とが 可 能 で あ る。
(3}変 動 相 場 制 度
変 動 相 場 制 度 に お い て は,各 国 と も原 則 と し て 金 利 は 自 由 化 さ れ て い る も の と想 定 し,国 際 収 支 は為 替 レ ー トの 自律 的 調 整 に よ っ て 最 終 的 に は均 衡 す る と仮 定 す る。 こ の 仮 定 か ら 内 生 変 数 は 自 国 の 実 質 国 民 総 生 産Y,国 内 利 子 率r,外 国 の 実 質 国 民 総 生 産Y*,海 外 利 子 率r*,自 国 建 て 為 替 レ ー トEと な る。 固 定 相 場 制 度 に お い て 単 純 化 され た マ ク ロ 方 程 式 体 系 の う ち,(1)〜(4)
は内 生 変 数 と外 生 変 数 の 区 別 を 除 け ば 同 一 で あ る。 国 際 収 支 の 均 衡 式 は 為 替 レー トお よ び そ の 他 の 変 数 の 組 み 合 わ せ か ら 自律 的 に ゼ ロ に な る た め
,形 式 的 に は次 の よ う に 表 示 され る。
PIX(Y㌔r*,R2EIP1,T*)‑P2EM(Y,r,P2E/P1,T) 十K(Y,Y*r‑r*)=0(5')
(1)〜(4)お よ び(5')を 行 列 表 示 に す る と次 の よ う に な る 。 1‑HY
LY
‑EM Y O PZEM,
O Lr
‑EM r
O PZEMZ十K3
ヨ
X O
一
1‑H*3
L*3
‑P ,X3十KZ
0 0
‑H* z L*4
‑t 3
一(H 3十P2×4P1)
0
(H*3十M十EM3}
O
P2(M十P2EM3/Pl‑X3)
ay dr dY*
dr*
dE
dG十H4dT十X4dT*
dy
EM4dT十H*4dT*十 一dG*
dy*
PZEM4dT‐PlX4dT*
(g}
な お 政 策 変 数 は 自 国 の 財 政 支 出G,租 税T,マ ネ ー サ プ ラ イ γ で あ り,外 国 も 同 様 の 政 策 手 段 を 講 じ る こ と が で き る
第(9)式 か ら 内 外 の 政 策 変 数 の 影 響 に つ い て の 特 性 を 吟 味 し て 総 需 要 他 の 関 数 を 求 め る こ と が で き る 。そ の た め ま ず 左 辺 の 係 数 行 列 式 の 値 を Ω2と し て 展 開 す る 。 た だ し Ω 、<0と 仮 定 す る 。
自 国 の 財 政 金 融 政 策 が 総 需 要 に 及 ぼ す 短 期 的 な 効 果 は 次 の 通 り で あ る 。 ay
aG‑L・{(L・ ・P・M(1… ε*)(1‑H*・)+L*・K・H*・
‑P IX*3L*4H*3十 ・H*2L*3PIM(1一 ε一 ε*)}/Ω2>0
{10a}
ay
ay(K・+P・EM・){L・*(1‑H・)(ε+ε*)+L・*H*・(ε+ε*) 十X3T*4(1一 ε一 ε*)}/Ω2>0(10b) ay
aTL・(1… ε・)rL・ ・{H・(K・m・X*・ 田 ・P・M(・
‑H* 3)‑EM、x,P2M、}‑L*、{H、H*、P2M,十H4K3M}]/Ω2
<0(10c) ay
aG*‑L・{X・L・ ・P・M(1一 ε一 ε*)‑L*・K・(ε+ε*) 十PIX*3L*4(ε 十 ε*)}/Ω2〈0(10d)
自 国 政 府 の 支 出 は 流 動 性 の 利 子 弾 力 性 お よ び 輸 出 入 の 価 格 弾 力 性 に 依 存 し て 決 定 す る 。 す な わ ち ク ラ ウ デ ィ ン グ ・ア ウ ト の 状 態 に は な く,貨 幣 の 利 子 弾 力 性 が 十 分 大 き く,ま た マ ー シ ャ ル=ラ ー ナ ー 条 件 が 成 立 す る ほ ど 輸 出 入 の 弾 力 性 が 大 き い こ と が 政 府 投 資 乗 数 が 大 き く な る た め の 十 分 条 件 で あ る 。
70国 際 経 営 論 集No.31992
また外 国 の投 資 に関 す る利 子 弾 力 性 や資 本 移 動 の利 子 弾 力 性 が 大 きけれ ばY 投 資財 の輸 出 が外 国 の利 子率 また は内 外 金 利 格 差 に反 応 して国 際 収 支 が 改 善 す る こ とが 理 解 で き る。
国 内貨 幣供 給 の所 得 に対 す る反 応 は一 般 に プ ラ ス マ イ ナ ス両 面 の複 雑 なル ー トか ら構 成 され るが
,財 の輸 出 入 が直 接 利 子 率 に反応 しな い(輸 出入 の利 子 弾 力 性 が ゼ ロ)と い う仮 定 を導 入 すれ ば,プ ラス の符 号 を有 す る マ ー シ ャ ル のkの 決 定 要 素 が 明 らか にな る。
同様 に して租 税 政 策 の総 需 要 に対 す る効 果 も複 雑 な要 因 に よ って決 定 され るが,輸 出入 の利 子 弾 力性 が 極 め て小 さい もの と仮 定 す れ ば,政 府 支 出 の反 応 とは逆 の符 号 判 定 条 件 を得 る こ とが で きる。
な お,外 国 政 府 が 国 内総 需 要 に及 ぼ す効 果 は固 定 相 場 制 度 の ケー ス と異 な る。 固定 相 場 制 度 の も とで は金 利 が 自由化 され て い な い上,為 替 レー トが 固 定 化 され て い る ので 国 際 間 で資 本 取 引 を通 じて為 替 裁 定 が 行 わ れ ず,ま た 国 際 間 の経 常 取 引 につ い て も為 替 レー トに反 応 して経 常 収 支 が 変 化 し,そ の結 果債 権 債 務 関 係 が 影 響 を受 け る こ とが な いか らで あ る。
変動 相 場 制 度 の も とで は国際 間 の利 子 率格 差 か ら利 益 を得 よ う とす る金 融 取 引 が 自由 に行 わ れ る た め,資 本 移 動 が活 発 に行 わ れ る。 一 方,国 際 間 の経 常 的 取 引 に お い て不 均 衡 が 発 生 す れ ば債 権 債 務 関係 が変 化 し,そ の結 果 為 替 レー トが変 化 す るの で金 利 格 差 が 国 際 間 で 発 生 す る こ とに な る。 しか し 自国 にお い て も外 国 に お い て も金 利 は 自由化 され て い るの で,市 場 の圧 力 に よ り 次 第 に利 子 率格 差 か ら利 益 を獲 得 す る機 会 は縮 小 す る よ うに金 利 が変 化 す る。
か くして外 国政 府 の 需 要 拡 大 は,そ の 国 が外 資 を十 分 に導 入 しな か った り投 資 財 の輸 入 が一 定 の規 模 に達 して い な い限 り,自 国 の 国 内 需 要 を低 下 させ る
こ とに な る。 す な わ ち,外 国政 府 が財 政 的 拡 大 を行 って も外 資 を十 分 導 入 せ ず,ま た投 資 財 を十 分 輸 入 しな い とその 国 の国 内金 利 が 著 し く上 昇 す る た め, 自国 か らその 国 に対 して大 量 の資 本 流 出 が生 じる こ とに な るか らで あ る。 も
際 間 の資 本 移 動 に関 す る利 子 弾 力 性 が 十 分 小 さい場 合,あ るい は国 内 に投 資 資 金 を調 達 す る原 資 と して の貯 蓄 が十 分 存 在 す れ ば利 子 率 が 上 昇 しな いで,
自国 の総 需 要 に マ イ ナ ス の影 響 を及 ぼ す こ と はな い。
さて次 に,財 政 金 融 政 策 が市 場 の内 生 変 数 で あ る利 子 率 に与 え る効 果 に つ い て考 察 した い 。
1き 一Llp・M(1… ε・)(L*・(1‑H*・)+H*・L*・)/Ω ・〉 ・
{lla)
aray ar aG
OR<OR>0
*=L1{L*3K3(ε 十 ε*)‑PIX3L*4(ε 十 ε*)
‑L* 4×3P2M(1一 ε 一 ε*)}/Ω2<0
(lib)
(11c)
特 に金 融 政 策 す なわ ち マ ネ ー ・サ プ ラ イが 国 内 金利 に与 え る影 響 に つ い て は閉 鎖 経 済 ほ ど単 純 で は な い。 マ ネー ・サ プ ラ イ を変 化 させ る と まず 第 一・に 国 内 にお い て,資 金 の運 用 主体 は実 質 金利 の変 化 に応 じて資 産 負 債 の構 成 を 組 み替 え る こ とに な る。 資 金 の需 要 主 体 も資 金 の調 達 先 を替 え る こ とにな る。
その 結 果企 業 の投 資 水 準 が 変 化 して利 子 率 や 国 内 総 需 要 が変 化 す るの で あ る。
さ らに この こ とか ら消 費 お よび投 資 の両 面 か ら輸 出 入 の水 準 に影 響 す るな ど, 相 当複 雑 な プ ラス マ イ ナ ス の効 果 が お よん で トー タル の効 果 は確 定 しが た い。
財 政 支 出 が 国 内利 子 率 に及 ぼす効 果 につ い て は,一 般 的 に国 内 ル ー トで は 投 資 乗 数 効 果 が作 用 して次 第 に投 資 資 金 が 逼 迫 す る よ うに な る と金 利 が上 昇 し,極 端 な場 合 に は クラ ウ デ ィ ング ・ア ウ トも発 生 す る こ とにな れ ば利 子 弾 力性 が ゼ ロ に近 づ く可 能 性 もあ る。 この こ とは上 記 の符 号判 定 条 件 が成 立 す る た め の十 分 条 件 で あ るが,国 内資 金 が逼 迫 す る よ うな ケ ー スで は外 資 を積 極 的 に導 入 した り,投 資 財 を十 分輸 入 す る こ とで利 子 率 の上 昇 を緩和 す る こ
とも可 能 で あ り,む しろ金利 格 差 が 大 き く外 国 に十 分 な資 金 供 給 能 力 が あれ ば 国 内金 利 を引 き下 げ る こ と も不 可 能 で はな い。
72国 際経営論集No31992
さて外 国政 府 が そ の 国 の総 需 要 を拡 大 す る場 合 に は,国 内 の金 利 はい か な る影 響 を受 け るの で あ ろ うか 。上 記 の比 較 静 学 の分 析 に よれ ば,国 内 金利 は 下 が る こ とが 判 明 した。 外 国 の総 需 要 の 拡大 の結 果 ,自 国 通 貨 建 て為 替 レー
トが 引 き下 げ られ てs外 国 金利 の水 準 との関 係 で相 対 的 な関 係 に よ り国 内金 利 が低 下 す るの で あ る。 た だ し この こ と は経 常 収 支 の ル ー トとそれ に伴 う決 裁 に焦 点 を あ て た場 合 で あ り,も し国 際 間 で利 子 率 の裁 定 に と もな って短 期 的 に経 常 収 支 の決 裁 とは独 立 な大 量 の資 本 移 動 が発 生 す る と外 国 政 府 の支 出 の拡 大 に よ って,国 内資 本 が 大 量 に流 出 して国 内金 利 が む し ろ上 昇 し
,為 替 レー トは上 昇 す る可 能 性 もあ る。
本 節 の最 期 にy内 生 変 数 で あ る 自国建 て為 替 レー トが 内外 の財 政 金 融 政 策 か らい か な る影 響 を受 け るか に つ い て要 約 した い。
器 一[Ll(EM、L・,K,+K、L・ 、(1‑H・,)+K、H・2L・ 、
‑L* 4PlX3EM2)十L2EM、(L*、K,‑PlX*,L*4)]/Ω 、>0 (12a) aE
ay‑K・{X・L・ ・EM1‑(1‑‑H1)(L・ 、(1‑H*、)+H・ 、L・,)}/Ω 、 (12b) aE
aG*{L、(1‑H1)(PIX、L・ 、‑L・,K,〉+LIK、X、L・ 、}/Ω, CO(12c)
第(12a)式 か ら国 内 政 府 の 財 政 支 出 の 拡 大 に よ り,二 つ の ル ー トに よ り自 国 建 て 為 替 レー トが 減 価 す る こ とが 明 らか に な る。 まず 第̲̲̲..に財 政 支 出 が 拡 大 す る と公 共 財 が 輸 入 財 に も含 まれ て い る た め 輸 入 が 拡 大 し て 経 常 収 支 が 悪 化 し て,為 替 レ ー トが 減 価 す る もの で あ る 。 第 二 に 政 府 の 支 出 が 拡 大 す る と
国 内 投 資 財 市 場 の 需 給 が 逼 迫 し て 利 子 率 が 上 昇 し,こ の こ とか ら資 本 が 海 外 か ら流 入 し て 利 子 率 格 差 を 調 整 す る機 能 が 作 用 す る 結 果,為 替 レ ー トが 減 価 す る も の で あ る。 第(12c)式 か ら同 様 の 理 由 に よ り,外 国 政 府 が 政 府 支 出 を
第(12b)式 に よれ ば,国 内 のマ ネ ー ・サ プ ラ イ の変 化 が為 替 レー トに及 ぼ す効 果 は二 つ の相 反 す る作 用 に よ って構 成 され て い る。 第 一 に,外 国経 済 の 貯 蓄 率,流 動 性 選 好 の バ ラ ンス 関 係 の ル ー トに よれ ば,自 国 の貨 幣 供 給 量 の 拡 大 は外 国 の 資金 調 達 機 会 の拡 大 とな るた め 自国 建 て為 替 レー トの増 価 要 因 とな る。 一 方,国 内貨 幣 供 給 の拡 大 は国 内総 需 要 を拡 大 させ,そ の結 果経 常 収 支 が 悪 化 す る状 態 か ら均 衡 状 態 に 自律 的 に回復 す る よ うに外 国 為替 市場 の 実 勢 を観 察 す る と,こ の こ とが 為替 レー トの減 価 要 因 に な る。 以 上 の両 者 の 作 用 の絶対 値 の い ず れ が 大 きい か を先 見 的 に決 定 す る こ とはで きな い。
3.ス トッ ク分 析 の 基 本 モ デ ル
前 節 で はフm部 門 として の所 得 支 出バ ラ ンス とス トック部 門 として の貨 幣 需 給 バ ラ ンス を 自国 お よび外 国 につ い て連 立 方程 式 と して 導 入 した上 で,
さ ら に国 際収 支 のバ ラ ンス式 を含 め る こ とで 両 国 の間 の取 引 関 係 に整 合 性 を 保 つ こ とが で きる よ うに した。 以 下 で はス トック部 門 に各 国 の債 券 市 場 お よ び貸 出市 場 を含 め て国 際 間 の整 合 性 を保 証 す る条 件 として,国 際収 支 の バ ラ ンス式 を導 入 す る。 た だ し,連 立 方程 式 の構 造 を可 能 な限 り簡 単 な もの にす るた め,フ ロー部 門 は捨 象 す る。
国 際 間 の相 互依 存 関 係 が 強 まれ ば,国 々 は貿 易 取 引 を中心 と した経 常 的取 引 とそれ に伴 う決 裁 として の債 権 債 務 が盛 ん に な る に と どま らない 。 金融 取 引 の 内容 も多 様 化 し,企 業 や政 府 の 資 金 の運 用調 達 につ い て も手 段 が 多様 化 す る につ れ て,変 動 相 場 制 度 の場 合 に は為 替 リス ク等 を考 慮 して もそ れ で も なお運 用 調 達 の機 会 が 国 境 を超 えて広 が る可 能 性 が あ り,現 に その傾 向 は ま す ます 拡 大 して い る。
た だ し金 融 取 引 の規 模 が 国境 を超 えつ つ拡 大 して も,通 常 は発行 主 体 の異 な る通 貨 の信 認 の程 度 が識 別 で きな くな る こ と はな い もの と仮 定 す る。 また 通 貨 の交換 レー トと して の為 替 レー トは裁 定 が ほぼ瞬 時 的 に機 能 して,地 域
74国 際経営論集No.31992
や取 引 主体 に よっ て あ る長 い期 間 にわ た っ て 同 じ為 替 レー トや 金利 の水 準 が 一 致 しな い ま ま取 引 が継 続 す る こ と もな い もの と仮 定 す る
。
(1)基 本 モ デ ル
中央 銀行 はハ イパ ワー ド・マ ネ ーHlを 発 行 して,民 間 金 融 機 関 が 非金 融 部 門 の預 金 需 要Dに 対 す る一 定 の割 合kを 預 金準 備 と して保 有 す る。 この預 金 準 備 率kは 中央 銀 行 の政 策 手 段 の一 つ で あ る。 外 国 の金 融 機 関 も同様 に内 外 経 済 の実 勢 に応 じて機 動 的 にか つ外 部 か らの干 渉 を受 けず に独 自の判 断 か ら, 政 策 手 段 を講 じ る こ とが で きる もの とす る。 各 主 体 が 保 有 す る現 金 は そ の他
の 金 融 資 産 や 負 債 の条 件 等 に よ って,自 らの期 待 収 益 が 最 大 にな る よ う な ポ ー トフ ォ リオ の選 択 の行 動 原 理 が 反映 され て い る もの とす る。
二 国 間 で 資 産 が バ ラ ンス す る メ カニ ズ ム を解 明 す るに は,各 国 の ポー トフ ァ リオ バ ラ ンス式 に両 国 の各 種 の金 融 等 の内生 変 数 や政 策 変 数 が影 響 し あ う 複 雑 な シス テ ム を単 純 な もの にす るた め,以 下 で は内生 変 数 に含 め られ る関 連 パ ラ メー タ と して,ま ず 国 内非 金 融 部 門 が運 用 可 能 な金 融 商 品 は国債 の み に限 定 す る。 また 同主 体 が 自由 に市 場 か ら調達 す る こ とが で きる金 融 サ ー ビ ス は,金 融 機 関 か らの借 り入 れ で あ る と想 定 す る。 た だ し,国 際 間 で資 金 の 移 動 は 自由 にで き る。 国 内非 金 融 部 門 が リス ク を カバ ー した海 外 の 金利 との 比 較 で 国 内 よ り海 外 か ら資 金 を借 り入 れ た方 が 有利 で あ る と判 断 で きれ ば, 外 国 為替 を取 り扱 う金 融 機 関 か ら無 視 で きる ほ どの手 数 料 で 自由 に借 り入 れ
で きる もの とす る。
両 国 で 金利 が 自由化 され て い れ ば,中 央 銀行 はハ イパ ワー ドマ ネ ー を政 策 手 段 と して利 用 可 能 に な る。 貨 幣乗 数 が安 定 的 で あ れ ば,こ の変 数 とマ ネー サ プ ラ イ の関 係 を一 義 的 な関 係 と して 取 り扱 う こ とが可 能 で あ り,ス トッ ク
と して の政 策 変 数 か ら間接 的 に所 得 支 出 の フロ ー変 数 に働 きか け る こ とが 可 能 に な る。 す なわ ち この仮 定 が成 立 す る の で あれ ば,ス トック とフ ロ ー の体
国 際収 支 のバ ラ ンス式 は前 節 と同様 のバ ラ ンス 式 で表 現 され るが,国 際 間 資 本 取 引 が い っ そ う重 要 に な る。 前 節 にお け る資本 取 引 は主 として貿 易取 引 等 経 常 収 支 の決 裁 として表 現 され て い た が,以 下 で は資 金 の 運 用調 達 の 国 際 間 の取 引 で あ り,短 期 的 に は経 常 的取 引 か ら独 立 した多様 な行 動 洋 式 を簡 略 化 した もの で あ る。 モ デ ル分 析 で は両 国 の金 利 が 自 由化 され て お り,両 国 間 の通 貨 取 引 に は変 動 相 場 制 度 が採 用 され て い る もの とす る。 ま た資金 の運 用 調 達 は両 国 の民 間 部 門 と も国境 を超 えて取 り引 きす る こ と は認 め られ て お り, 金利 お よび為 替 レー トの調 整 は市 場 に お いて速 や か に行 わ れ る もの と仮 定 す る。規 制 金 利 並 び に 固定 為 替 レー トの モ デ ル も分 析 可能 で あ るが,む しろ相 互 依 存 関 係 の複 雑 な変 数 の波 及 が 少 な い だ け分析 は容 易 で あ る た め,そ の 内 容 は省 略 す る。
② 変 動 相 場 制 度 の 基 本 モ デル
中 央 銀 行 が 供 給 す るハ イ パ ワ0ド マ ネー は,市 中 にお い て 民 間 非金 融部 門 が 資 産 や 取 引 決 裁 手 段 に伴 う不 確 実 性 に対 応 す る た め の手 段 と して保 有 す る もの と,こ の部 門 か ら金 融 機 関が 預 金 として 預 か っ た負債 の 一定 割 合 を現 金 通貨 と して保 有 す る こ とが義 務 づ け られ て い る預 金準 備 か ら構 成 され る。 ハ イパ ワ0ド マ ネ0をH1,民 間非 金 融 部 門 が保 有 す る現 金 通 貨 をH、,同 部 門 が 保 有 す る預 金 をD,預 金 準 備 率 をkと す る と現 金 通貨 の需給 は次 の よ うに表
され る。
H1=kD(r1,r2)十H3(r1,r2)(13a) (一)(一)(一)(一)
な おr1,r、 は 各 々 貸 出 利 子 率,債 券 利 回 りで あ り,預 金 利 子 率 は一 定 で あ る と仮 定 す る 。 金 融 機 関 が 預 金 サ ー ビ ス に よ っ て 調 達 し た 資 金 の う ち,預 金 準 備 と し て保 有 す る 分 を除 い て,債 券 の 購 入 ま た は貸 出 と して 運 用 す る こ と
が で き る 。金 融 機 関 が 需 要 す る債 券 需 要 をB2(自 国 の 国 債 ま た は外 国 債),民 間 非 金 融 機 関 が 需 要 す る貸 出 をL3と す れ ば 金 融 機 関 の バ ラ ン ス シ ー ト は次
76国 際経営論集No.31992
の よ う に 表 現 で き る 。
(1‑k)D(r1,r2)‑K(rrr*1,r2‑r*2) C‑)(一)(一)(+)
=B2(rl ,r2)十L3(r1,r2)(13b) (一)(十)(一)(十)
銀 行 の 国 内 預 金 か ら預 金 準 備 を 差 し 引 い た 債 務 残 高 と債 券 お よ び 貸 出 と し て の 運 用 残 高 との 差 額 が ネ ッ トの 国 際 資 本 移 動 に等 しい 。r1が 貸 出 金 利,r、
が 債 券 利 回 り を表 す 。 各 資 産 負 債 の独 立 変 数 の 下 に 表 示 さ れ て い る プ ラ ス マ イ ナ ス の符 号 は,各 々 の 偏 微 係 数 の 符 号 を 示 し,今 後 の 議 論 の 仮 定 とす る。 外 国 の通 貨 需 給 バ ラ ン ス お よ び 外 国 の 銀 行 の ア セ ッ トバ ラ ン ス に つ い て も 同 様 に表 現 で き る
Hl*=k*D*(r*1,r*2)十H*3(r1,r*2) (一)(一)(一)(一)
) 十 (
)
(
)⁝
( )
2*)r十(*)
r一
( (
*3
L 十 ∂
*㌔‑!r十(
*)
r一
( (
*2
B
⁝﹁
十(1‑k*)D*(r1,r2)十K(r1‑r*1 ,r2‑r*2)
(一)
(13c)
(13d}
第(12c)式 の 中 の 資 本 移 動 に つ い て は,第(12a)式 と符 号 条 件 が 逆 に な っ て い る こ とか ら,あ る 国 の 債 権 債 務 関 係 が 他 の 国 と は逆 の 符 号 で あ り,世 界 全 体 で 相 殺 され る こ とが 示 され る。
次 に独 立 変 数 と し て の 金 利 お よ び 為 替 レ ー トに留 意 し な が ら,国 際 収 支 の バ ラ ン ス 式 を掲 げ よ う。
X(P2E/P1)一(P2E/P1)M(P2E/Pl)十K(r2‑r㌔)=0(13e)
以 上 の 準 備 か ら,第(13a)〜(13e)式 を行 列 で 表 現 す る と次 の よ う に な る。
協桝6
0 K S T
珍 毘 毘 毘 H Q N O K J d 十
瓢 k
n n d 迅 島 D Q N O K P 一 k D
一
O Kr4
Sr4 Tr4
00ハUO
X,‑J一 砦(1… ε・)
‐D*dk*十dH*
‑Dk*
PZEM
TdT‐XTdT*P ,
drl dr2 dr3 dr4 dE
(14}
第(14)式 の 左 辺 の 係 数 行 列 式 の 値 を Ω 、と す れ ば 次 の よ う に 展 開 で き る ・ Ω3=一(P1/P2)(1一 ε 一 ε*){M,1(N,2Sr3T,4‑K,3S,aKr2
十K,4Sr3Kr2‑Nr2S.4T,3)‑Mr2(NrlS.3Tr4‑Krssr4K,1 十Kr、S,31‑r4十N,lS.aTr3)}/Ω3
こ の よ う な 一 般 的 な ケ ー ス で は Ω3の 符 号 判 定 条 件 を 確 定 で き な い 。 そ こ で
自 己 効 果 と し て のN,、>0お よ びT,、 〈0の 絶 対 値 が そ の 他 の 交 差 効 果 を 大 き く 上 回 る も の と 仮 定 す る 。 こ の 仮 定 に よ り Ω,の 符 号 判 定 は 次 の よ う に 簡 略 化 さ れ る 。
Ω3=冠P夏/P2)(1一 ε 一 ε*)MrlN,2S,3T,4〈O Mr1=kDr1十H3rl
M陀=kD.2十H3r2
Nrl=2ri十L3r1̲.̲.̲1‑k)Drl Nr2=B2r2十L3rz(1‑k)Dr2十Kr2
Sr3薫k*Dr3十H*3r3
T旨=B*2r3十L*3t'3(1‑k*)D*r3
78国 際 経 営 論 集No.31992
次 に政 策 変 数 として の ハ イパ ワー ドマ ネ ー の供 給 量 あ る い は預 金 準 備 率 が, 金 利 また は為替 レ,̲.,..トに い か な る影 響 を及 ぼす か に つ い て た しか め た い。 た だ し,以 下 の計 算 過 程 で も ク ロス効 果 の トー タル の 符 号 判 定 が お お む ね 困難 で あ るた め,自 己効 果 の絶 対 値 が クロ ス効 果 の絶 対 値 を大 幅 に上 回 る もの と 仮 定 す る。
一art=≪N
aH,2S紹T,4/Ω 、<・
た だ し α=一(P2/P1)(1‑一 ε 一 ε*)>0。
器 一 一 αN,1S,3T,4/Ω 、〈 ・
are ‑=‑aSa
H,4(N,1K,2‑K,1N,2)/Ω3
藷 一 αS,,(NrEK,Z‑‑N,2K,1)/Ω3 aE
aH‑{Sr3N,2T,、(P、E/P、)MrS,4((P、E/pl)MN,2T,, 十Nr2KCITr3)}/Ω3>0
ハ イ パ ワー ドマ ネ ー の政 策 上 の変 更 が 自国 の債 券利 回 りあ るい は貸 出利 子 率 に及 ぼ す影 響 は概 ね 自明 で あ る。 す な わ ち 前節 のIS=LM分 析 で も明 ら か で あ る よ うに,ハ イ パ ワー ドマ ネー の増 発 に よ ってLM曲 線 が 右 側 に シ フ トす るか また は必 要 以 上 に増 発 す る こ とに よっ て イ ン フ レー シ ョンが発 生 す る ため 実質 利 子 率 が 低 下 す る こ とが 明 らか に な る。 これ に と もな っ て債 券 利 回 りの み な らず,自 国 の 貸 出 金利 も引 き下 げ る こ とに な る。 金 融 自 由化 の も とで完 全 競 争 が 原 則 と して成 立 す れ ば,債 券 と は代 替 的 な運 用 手段 で あ る貸 出 にお いて も,こ れ が 劣 等 財 で な い 限 り利 子 率 が 低 下 す るの は 自然 で あ る。
一 方 これ まで の 自国 の二 つ の金 融 政 策 手 段 を講 じた場 合
,外 国 の債 券 利 回 りや 貸 出金 利 に及 ぶ効 果 と して の符 号 判 定 条 件 は,プ ラス マ イ ナ ス両 面 の複 雑 な作 用 が働 い て確 定 す る こ とが 困難 で あ る。 また外 国 の金 融 政 策 が 自国 に
政 策 が 為替 レー トに及 ぼ す影 響 として は,自 国 の金 利 が低 下 す る結 果 資本 が 海 外 に流 出 す る規 模 が 拡 大 す るの で,自 国建 て 為替 レー トが 下落 す る こ とに
な る。 ハ イ パ ワー ドマ ネ ー に よる拡 張 政 策 が 為 替 レー トの及 ぼす 効 果 は,I S=LM分 析 にお け る金 融 緩 和 政 策 が 経 常 収 支 を通 じた影 響 に よ り,自 国建 て 為 替 レー トが 下落 す る結 論 と同様 で あ る。 す な わ ち フ ロー べ 一 ス の経 常収 支 に よっ て も資 本 収 支 の ス トックベ ー ス に よ って も,金 融 緩 和 政 策 は 自国 建 て為 替 レー トを減 価 させ る こ とが 明 らか に な っ た。
預 金 準備 率 が 各 内生 変 数 に及 ぼ す効 果 につ い て確 か め た い。
ar,
ak一 αDT図Sm(MゴMΩ ・〉 ・ are
ak一 αDTMS田(Nrl‑Mrr)/Ω ・〉 ・
た だ しN.1<M,,〈0と 仮 定 す る。この こ とか ら預 金 準 備 率 を利 用 した 引 き 締 め政 策 を講 じ る と貸 出金 利 お よび債 券 利 回 りが と もに上 昇 す る こ とに な る。
したが っ て この政 策 は符 号 条件 で判 定 す る限 り,ハ イパ ワー ドマ ネー の縮 小 と同 じ効 果 を金 融 市 場 に及 ぼす こ とに な る こ とが 明 らか に な っ た。 また マ ネ ー サ プ ラ イ の コ ン トロ ー ル と同様 に 自国 の準 備 率 操 作 が外 国 の利 子 率 等 の 及 ぼす 効 果 の符 号 条 件 は複 雑 で あ り,明 らか で は な い。 さ らに外 国 のマ ネー サ プ ラ イ の コ ン トロー ル や準 備 率 の操 作 が 自国 の利 子 率 等価 格 体 系 に及 ぼす 影 響 につ い て の符 号 条件 も同様 に明 らか で はな い。
最 後 に預 金 準備 率 操 作 が 為 替 レー トの及 ぼ す影 響 につ い て考 察 した い。
1畏 一{DT撹S出(M・1Jr2+M・M1(P・E/P・))
‑P 2E/PIMIDN,2S,3Tr4}/Ω3
預 金 準備 率 の場 合,民 間 部 門 の貨 幣 保 有 を含 む ポ ー トフ ォ リオ と金 融 機 関 の準 備 を除 い た運 用 可 能 な資 金 の水 準 とい う二 つ の ル ー トに中央 銀 行 は政 策 面 の影 響 が あ るた め,為 替 レー トその他 に及 ぼす効 果 は複 雑 に な る。 その た め有 力 な 自己効 果 が存 在 しなか っ た り,互 い に相 反 す る符 号 で あ る この ケー
80国 際 経 営 論 集No31992
スの よ うに,判 定 しが た い 。
な お,自 国 お よ び外 国 にお け る租 税 政 策 が 内外 の金 利 並 び に為 替 レー トに 対 して は中立 的 に作 用 す る こ とは容 易 に確 か め る こ とが で きる。 た だ し この よ うな租 税 政 策 が 国債 の 新規 発 行 や そ の償 還 の財 源 に充 当 され る場 合 に は そ の限 りで はな い。
[参 考 文 献]
1.Buiter,W.andR.C.Marston[1985] ,InternationalEconomicPolicy Coordination,NBER.
2.Corden,W.M,andS.Turnovsky[1983] s"NegativeTransmissionof EconomicExpantion,"EuropianEconomicReview
,Vol.20,pp.289‑310.
3.Dornbusch,R.X1980],openEconomyMacroeconomics ,BasicBook.
4.[1988, .ExchangeRatesandInflation ,MITPr.
5.Mundel,R.[1968],InternationalEconomies ,Macmillan.
6.Tobin,J.[1.969],"AGeneralEquilibriumApproachToMonetary
Theory,"ノournalofMoney,CreditandBanking ,PP.15‑29.
7.Turnovsky,S.[1977,MacroeconomicAnalysisandStabilizationPolicy
, CambridgeU.Y.
8.[1990],lnternationalMacroeconomicStabilizationPolicy
,B.
Blackwell.
9・Niehans,J.[1984]lnternationalM・ 勲 り,Ec・%・mics
,TheJ・hnsH。P.
kinsUniversityPr.
10.Dornbusch,R.[1976],c̀ExchangeRateExpectationsandMonetary
Policy,"JournalofInternationalEconomics . 11.Dornbusch,R.[1976],"ExpectationsandExchangeRateDynamics
,"
ノournalofPoliticalEconomy,VoL6.
12.植 田 和 男[1983]『 国 際 マ ク ロ 経 済 学 と 日 本 経 済 』 東 洋 経 済 新 報 社
13.河 合 正 弘[1986]『 国 際 金 融 と 開 放 マ ク ロ 経 済 学 』 東 洋 経 済 新 報 社
14.館 龍0郎[1987]『 日本 の金 融1・ 皿』 東 京 大 学 出版 会
15.日 本 銀 行[1990]『 日米 の対 外 不 均 衡 問 題 と経 済 構 造 』 日本 信 用 調 査 16.日 本 銀 行[1991]『 変 貌 す るわ が 国 の金 融 ・経 済 構 造 』 日本 信 用調 査 17.菅 原 晴 之[1986]「 財 政 金 融 政 策 と国 際 間相 互 依 存 関係 」 『経 営 と経 済 』 18.X1987]「 金融 自 由化 と財 政 投 融 資 」 『経 営 と経 済 』
19.[1988]「 規 制 金 利 下 に お け る財 政 投 融 資 機 構 」(生 活 経 済 学 会 全 国 大会 報 告論 文)