九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Beauveria属糸状菌によるマツノマダラカミキリの防 除に関する研究
島津, 光明
https://doi.org/10.11501/3110948
出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(農学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
り高い結果が発表されているが, dodineは日本では登録されていないため J般には入手できない。 また, 計数を容易にするため, できるだけ透明な 培地が望ましかった。 そこで,!L_haSSlanaの培養特性を調査し, これに適 合した別の処方による選択培地を提示する。
第1節 殺菌剤等阻害剤に対するBeauveria bassianaの耐性
硬化病菌類の選択培地に殺菌剤を添加する例としてはBeilharz et al.
(1982), Joussier & Catroux (1976), 柳沼 ・ 高木(1986)などで行われてい る。 普通に市販されている薬剤の中から本菌の選択に利用できるものがあ るかどうかを調べるために, 培地に添加する殺菌剤をスクリーニングする。
そのため, 市販の殺菌剤を培地に加え, 菌糸成長におよぽす影響を調べた。
材料と方法
培地の栄養はある程度少ない方が ストレスの影響を受けやすいのではな いかと考え, 以下の実験の基本培地として, 日酵母エキス加用Sabouraudブ
ドウ糖培地の成分を30児にしたもの(30児SDYと略) を用いた。
デュポンジャパンリミテッド製べンレート水和剤(べノミル50%) , 武田
薬品製マンネブダイセンM水和剤(マンガニーズエチレンピスジチオカー パメート75先) , 東京有機化学工業(株)製ピスダイセン水和剤(ピスジメ チルジチオカルパモイルジンクエチレンビスジチオカーパメート75先) , お よび北興化学工業(株)製カスミンボルド ー水和剤(カスガマイシン塩酸 塩5.7%, 塩基性塩化銅75.6児) の4種の殺菌剤を供試した。 ベンレートは O.5gを5mlに, マンネブダイセンとピスダイセンは0.65gを10mlに, カスミ
ンボルドーは19を15mlになるように滅菌水に懸濁し, それぞれ9cmのペトリ 皿にO.lml入れた。 高圧滅菌した基本培地を450Cに冷却したのちにそれらの ペトリ皿に10mlずつ流し入れて捜持し, 固化させて平板培地とした。 この
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量は, それぞれの殺菌剤の原体濃度で500ppmになる。
Beauveria bassiana F -263をSSY培地の液体で5日間250Cで振渥培養した もの1白金耳を, 各平板培地の中央に付着させ, クリーンペンチ内で風乾 したのち, 250C暗黒で培養した。 13日後にとり出し, 菌叢の直径を計測し た。
菌叢直径は直行する2方向の平均値を用い, 実験は3連制で行った。結果と考察
表-2 1に菌叢の直径を示す。 調査した薬剤のうち, マンネブダイセン とピスダイセンはこの濃度ではB. bassianaを殺してしまい, 菌叢は全く成 長しなかった。 べンレートも殺菌力が強く, 菌糸が認められたのはペトリ 皿1枚だけで, それもほとんど伸びていなかった。 これに対し, カスミン ボルドーはやや阻害効果があったが, 無添加の73先ほどの菌糸の伸長がみら れた。
第2節 Beauveria bassianaの培養適温, pHの調査
この菌の基本的性状のーっとして, 発育適温, 最適pHを明らかにしてお く必要がある。 今後の培養の参考に各種温度段階におけるこの菌の菌糸成 長を調査した。
材料と方法
本菌の菌糸の培養適温を調べるため, 本菌をSSY培地で250C, 5日培養し たものを種菌とし, その1滴を白金耳で取り, 30%Sabouraudブドウ糖培地
(ぺプトン3g, ブドウ糖6g, 寒天15g, 蒸留水1000ml, pH=6.5, 以下30%SD と略)の平板培地の中央にそのまま付着させてクリーンペンチ内で風乾し,
5 (冷蔵室) , 1 0, 15, 20, 25, 3 OOCの各温度に置いた。 7日後と14日後に
65
表-21 殺菌剤添加培地上のBeauveria bassianaの成長
殺菌剤 菌叢の直径(mm)
無添加 30.3
ベンレート 1.2
マンネプダイセン 0.0 ピスダイセン 0.0 カスミンボルドー 22.0
- 66 -
取り出して直交する2方向について菌叢の直径を測定した。 さらに同一培 地の平板3枚の平均により求めた。
本菌のpH別の成長を調べるため, 30%SD培地を1N-HClまたは10児Na2C03溶 液を使用してpHを5.0, 5.3, 5.7, 6.0, 6.3, 6.7, 7.0, 7.3, 7.7, 8.0に 調整したのち, 1200Cで20分間高圧滅菌し, 9cmペトリ皿に流し平板培地と した。 pH6.5のSDY培地の平板を比較用の対照培地とした。 B. baSSlana F- 263を供試し, これらの培地上での分生子の発芽率と菌糸の成長を調査した。
分生子の発芽 率を調査するため, 新鮮な分生子を各培地表面に少量置き,
ガラス製コンラージ棒で塗り広げた。 これらを250C暗黒に保温し, 20時間 後に検鏡し, 視野に見えた100個以上の分生子について発芽率を調査した。
発芽率は同一培地の平板3枚の平均により求めた。
菌糸の成長を調査するため, SDY培地上の分生子未形成の新鮮な集落の周 辺近くを2mm角に切り取り, 各pHの培地中央に移植した。 これらを250C暗黒 に保温し, 2日後と, 11日後に集落の直径を測定した。 集落の直径は直交 する2方向を測り平均し さらに同一培地の平板3枚の平均により求めた。
結果と考察
各温度におけるB. baSSlana F-263の菌叢直径を図-7に示す。 本菌の菌 糸成長は調査した温度の中では300Cが最もよく, 250Cがこれに次いだ。
発芽管を伸長しているものと膨大化しているものを発芽として扱い, 計数 したすべての分生子数に対するこれらの率を発芽率として表した。 各pHに おける発芽率は 図-8のとおりであった。 いずれのpHでもSDY培地上の値
よりわずかに低かったが ほぼすべての分生子が発芽した。
各pHにおける菌糸の成長は, 図-9に示すとおりであったc pHは高いほ ど成長がよい傾向が見られた。 pHの比較に供した培地の栄養分は通常の Sabouraudブドウ糖培地に比べ30犯の希薄なものであったが, 菌叢直径で見
る限り成長には問題なく かえってSDY培地より成長がよかった。 ただし,
67
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7日後
ーーー14日後
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25
図-7 各種温度におけるBeauveria bassianaの成長
30
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7.3 7.7 8
図-9 各種pHにおけるBeauveria bassiana F-263の菌糸成長
(SDY)
気中菌糸の外観はSDY培地の方が濃密であり, この点は, 菌叢直径による評 価では数値としては表れてこない。
このように, 実験した範囲のpHでは, 本菌は問題なく発芽し, 菌糸も密 度の差はあるものの, 問題なく集落を形成して成長した。 一般に, 糸状菌 を含む真菌は微酸性が好適pHであるといわれるが(柳田, 1985)本菌は, 高 pHでもよく成長することがわかった。 また, 本菌は塩基性塩化銅を主成分 とするカスミンボルドーに耐性であったことも塩基性に耐性があることの あらわれであろう。 このことから, pHを高めることにより他の糸状菌を抑 制しB. basslanaを選択的に発芽させ成長させる方法で, この菌の選択培地 を開発できる可能性が判明した。
第3節 Beauveria bassianaの選択的分離のための培地の 開 発
1 . Beauveria bassianaの成長に対する塩化銅の影響
本菌がカスミンボルドーに耐性であったことから, その主成分である CuC12を各種濃度で培地に添加し, 本菌の成長に対する影響を調査した。
材料と方法
30%SD培地にCuC12・2H20を, 0, 10, 25, 50, 100, 200ppmの各濃度になる よう加え, 10% Na2C03溶液でpH 8.0に調整したのち, 1200Cで20分間高圧滅 菌し, 9cmペトリ皿に流し平板培地とした。 pH6.5のSDY培地の平板を比較用 の対照培地とした。 B. bassiana F-263を供試し, 前節と同様の方法でこれ
らの培地上での分生子の発芽率と菌糸の成長を調査した。 発芽率について は2反復したが, 菌叢の直径は1回のみ測定した。
71
結果と考察
表- 2 2に20時間後の発芽率と10日後の菌叢の直径を示す。 1回目の発 芽率は25ppm区で劣る結果と なったが, その他の濃度ではほぼ問題はなかっ たD 菌叢の直径は, CuC12添加区すべてで無添加より劣った。 1回目に25 ppm区だけ発芽率が低かった原因は分からなかったが, 菌叢の直径を測定し た実験は発芽率 の1回目と同時に行っており, この際, 菌叢の直径も25
ppm区が最も低い値になっている。 培地の調整時に問題があった可能性があ
る。
以上の結果から, CuC12を200ppm, pH 8.0の培地でもB. baSSlanaは発芽 し, 菌糸成長することが分かった。 さらに高いpH, CuC12濃度がL也豆一 Slanaの成長に及ぼす影響を調査する必要があると考えられた。
2. 高pH, 高塩化銅濃度におけるBeauveria bassianaの集落形成
選択培地開発のために更なる高pHと CuC12の組み合わせにおけるB. b主企 Slana の成長を調べる必要がある。 この選択培地開発の目的は, 野外での 菌の消長調査な ど 主として菌数 の測定 にあり, 培地の特性は, 集落形成 数
で判断されるべき性格のものである。 さらに, 集落は, 試料中の菌の分生 子が発芽した後に菌糸として成長した結果形 成されるものなので, 一定数 の菌を培地に塗布して生じる集落は, 発芽率と菌糸成長の両者を反映して いると考えられる。 そこで, より実用に近い実験として, さらに高いpHと 高濃度のCuC12を加えた培地に一定 濃度の分生子懸濁液を塗り, 集落数がど のように変化するかを調べた。
72
表-22 塩化銅添加培地におけるBeauveria bassianaの成長
CuClz濃度(ppm) SDY
G
10 25 50 100 200 (0)
発芽率(完)反復1
100.0 95.2 29.6 81.7 85.9 99.4 100.0
反復2
99.7 83.0 99.1 96.9 99.7 98.6 99.0
平均
99.9 89.1 64.4 89.3 92.8 99.0 99.5
菌糸の成長a
100.0 69.8 51.8 53.4 54.7 57.4
a: 10日後の菌叢の直径。 塩化銅無添加培地上の菌叢直径を100とした相対値。
一
73
-材料と方法
基本培地として30%SD培地を用い, 最初にpH 8.0, 8.3, 8.7 , CuC12濃度
200, 400, 800ppmの組み合わせの培地を供試した。 また, 2回目には
CUC12濃度を200ppm, pHを6.5, 8.0, 8.5, 9.0, 9.5, 10.0に, また, 3回 目にはCuC12濃度を200ppm, pHを9.0, 9.3, 9.7, 10.0, 10.3に調整した。
比較用培地にCuC12無添加pH6.5の30%SD培地とSDY培地を用いた。 培地は高 圧滅菌後9cmペトリ皿に分注し, 平板培地としたo B. baSSlana F-263の分 生子を300ppmのTween80溶液に懸濁し, 3x 102/mlの濃度に調整し, 各培地
に0.2mlずつガラス製コンラージ棒で塗布した。 実験はそれぞれ3連制で行
ったc また, 一部の培地では雑菌に対する抑制効果をみるために実験室の
空気中から分離したPenicillium sp.を雑菌の代表として, 分生子を同様に 塗布した。 培養は250C暗黒で行い 4または5日後に集落数を計数した。
結果と考察
1回目の実験の結果を表-23に示す。 B. bassianaはCuC12 200ppmでは pH8.7でも生じた集落数はpH6.5, CuC12無添加区と変わらなかった。 400
ppmでは集落数が減り, 集落の大きさも小さく, pH8.7ではほとんど生えなかった。 800ppmでは全く菌は生えなかった。 比較のために植えたPenlcl1
-
ι盟Sp.はCuC12 200ppmではpH8.7まで生えたが, 集落数はpH6.5, CuC12無添加区に比べて大幅に減少し, またその大きさも非常に小さかった。
CuC 12 400ppm以上ではPenicilliun1 sp.は生えなかった。
2回目と3回目の実験の結果は表-24にまとめて示した。 表中反復1 は2回目の実験を, 反復2は3回目の実験を意味し, SDY培地上の集落数を 100とした数値で結果を表示した。 その結果B. baSSlanaはpH9.7まではSDY 培地と変わらない生え方で, pH10.7まででもSDY培地の80%以上の集落数で あった 。 これに対し, penicillium sp.はpH6.5ではCuC12が含まれていても
74
表-23 塩化銅濃度, pH�U Beauveria bassianaとPenici11ium sp.の比較集落数a
pH 菌種 CuC12濃度(ppm)
G 200 400 800
6.5 B. bassiana 100.0 Penici11ium sp. 100.0
8 B. bassiana 100.0 47.7 0.0
Penici11ium sp. 17.5 0.0 0.0
8.3 B. bassiana 152.0 40.8 0.0
Penici 11 ium sp. 12.5 0.0 0.0
8.7 B. bassiana 101.0 2.8 0.0
Penici1lium sp. 16.8 0.0 0.0
a: pH 6.5, 塩化銅無添加培地上の集落数を100とした相対値。
75
表-2 4 塩化銅を200ppmとしたときのpH�Ú Beauveria bassianaとPenicillium sp.の比較集落数a
培 地 30児SD+ CuC12
SDY
30児SDpH
6.5 8 8.5 9 9.3 9.5 9.7 10 10.3 6.5 6.5
B. bassiana
反復1110.8 108.3 91.7 110.8 110.8 89.2 100.0 110.8
反復2
112.0 105.0 103.0 80.7 100.0
平均
110.8 108.3 91.7 110.8 112.0 107.9 103.0 89.2 80.7 100.0 110.8
-l
Penicillium sp. 122.8 52.6 5.3 17.5 5.3 0.0 100.0 180.7
0')
a: SDY上の集落数を100とした相対値。
SDY培地より集落数が多かったが, pH8.5を越えると極端に少なくなり, pH 10.0では全く生えなかった。
これらの結果から, 30%SDにCuC12を200ppm加え, pHを9.5以上にすること で,JL_QaSSlanaは影響を受けずに生えるが, 雑菌の代表として選んだ Penicil1ium sp.はこの培地にはほとんど生えることができないといえる。
3. その他の添加物, 貧栄養の影響
これまでに得られた培地を基本に, さらにB. baSSlanaに影響のない雑菌 抑制物質を添加して選択培地として完成させるため, 添加物の模索を行っ た。 胆汁末, 食塩, クリスタルバイオレット ローズペンガルを各種濃度 で加えB. baSSlanaと雑菌の成長に対する影響を調べた。 また, 低糖濃度の 影響も調査した。
材料と方法
30児SD+ CuC 12 200ppmの培地に表-25のような濃度で, 胆汁末(極東)
NaC 1
, クリスタルバイオレット ローズペンガルをそれぞれ加えた培地を作り, pHを9.5に調整し, 高圧滅菌後9cmペトリ皿に分注し, 平板培地とし た。 滅菌した300ppmのTween80溶液にB. baSSlana F-263の分生子(約300/
m
1)
, および雑菌混合物として森林総合研究所構内または小川学術参考林 内の土壌(約200倍)を, 懸濁しそれぞれ各培地に0.2mlずつガラス製コンラージ棒で塗布した。 培養は250C暗黒で行い 4または5日後に集落数を 計数した。 実験はそれぞれ3連制で行った。
低糖濃度の影響をみるためにペプトン(Bacto) 3g, CuC12 0.2g, 寒天 15g, 蒸留水1000mlの培地にブドウ糖を0, 0.5, 1, 3g加え, pHを10に調整,
高圧滅菌し, 前記と同様に集落数を計数した。
77
結果と考察
表- 2 5に各種添加物を加えたときの集落数の変化を示した。 それぞれ,
無添加のものに対する百分率で示した。 胆汁末は, 2先までの濃度では, B.
baSSlanaに対する影響はみられなかった。 しかし同時に, 土壌懸濁液中の 菌を抑える効果もみられなかった。 胆汁末はVeen & Ferron (1966)の硬化 病菌類選択培地 (以下VFAと略) に使用されている。 また, この主な構成成 分である胆汁酸塩は大畑(1989)によると雑菌抑制効果がありいくつもの選 択培地に用いられているが, 本実験の基本培地に添加しても土壌懸濁液中 の菌を抑える効果はなかった。 食塩はB. baSSlanaに対しては凹まではほと んど影響はないと思われたが, 濃度以では無添加の74犯の集落数に低下し,
4犯ではB. baSSlanaは成育しなかった。 土壌懸濁液では濃度1先で, 集落数は 70先に下がり, 2犯では集落数は16先になった。 濃度1�2児の闘ではB. b旦SS1 -
ana�こ比べ, 土壌懸濁液の集落数の方が大きく影響を受け, わずかに選択作 用があると思われた。 昆虫寄生菌類は昆虫の体液中で増殖するので, 生理 食塩水程度の浸透圧に耐性がある可能性が考えられた。 しかし, 実験の結 果得られたB. baSSlanaと土壌懸濁液の集落数低下の差は,}L_!2assianaの 選択剤として一般的に使用するには差が少なすぎた。 クリスタルバイオレ ツトは2.5ppmまでは影響がなく, 5ppmで集落数が60児に低下した。 一方, 土 壌懸濁液の集落は 2.5ppmの添加でも24犯と大きく低下した。 クリスタルバ
イオレットはいくつかの硬化病菌選択培地に添加されているが(Doberski
& Tribe, 1980; Sneh, 1991), 本処方よりはるかに大量に添加されている。
ローズベンガルは200ppmまでの濃度では,}L_!2aSSlana, 土壌懸濁液のいず れにも影響はなかった。 本品も胆汁末と同様VFAに加えられているが, 本実 験で用いた基本培地に添加しでも土壌懸濁液中の雑菌を抑制する効果はみ
られなかった。
これら供試した物質中では, クリスタルバイオレツトが最も有望であっ た。 胆汁末やローズペンガルは硬化病菌の選択培地の添加剤として加えら
78
表-25 各種添加物を加えた30児SD培地+ 200ppm CuC 12培地上 におけるBeauveria bassianaと土壌菌の比較集落数a
添加物 濃度 試料
B. bassiana懸濁液 土壌懸濁液
無添加 0児
100.0 100.0
胆汁末
0.1児 104.0 104.0
0.3児 105.0 113.0
1.0先
109.0 110.0
2.0先
95.0 98.0
NaC1
0.5先85.0 81.0
1.0児
113.0 70.0
2.0先
74.0 16.0
4.0児 0.0 2.0
クリスタルハ'イオレット
2.5ppm 108.0 24.0
5ppm 60.0 5.4
10ppm 0.0 0.0
20ppm 0.0 0.0
ロース.へ.γ力.)�
20ppm 141.0 80.0
50ppm 147.0 109.0
100ppm 115.0 98.0
200ppm 109.0 81.0
a:無添加時の集落数を100とした相対値。
ー 79 -
れてい る 物 質であるが, 本実験では雑菌抑制効果がみ られなかった。 その 原因として, 本実験に用いた基本培地は, 栄養が通常の培地より薄く,
CuC12を加えた上, pHを高く調整しているため, それだけですでにかなりの 雑菌抑制効果があり, 通常の条件ならこれらの物質で抑えられるであろう 雑菌を貧栄養, 塩化銅, 高pHなどによりすでに抑えている可能性が考えら れる。
30児SD + 200ppm CuC 12, pH 10の培地ブドウ糖の量を減少させたときのL
baSSlanaと雑菌の集落数を表-26に示す。 基本培地(ブドウ糖0.3%)の 集落数を100としたとき, ブドウ糖が0.1%まではB. baSSlanaも土壊懸濁液
も集落数に変化はなかったが, 0.05児以下では, いずれの区も集落数が約 90に減少した。 しかし, いずれの区でもブドウ糖なしでも80児の集落が生え ることができた。
多くの選択培地が豊富な栄養と最適pHという, 目的菌にとってなるべく 好条件にしながら, 出てくる雑菌は抑制剤で抑える, という発想の下に作 られている。 本実験で B. baSSlanaはペプトン0.3%, 糖なし, pH 10とい う厳しい条件でもそうでない場合の80児の集落を生じることができた。 そこ でこの菌の場合はこのように, 目的菌にとっても厳しいが雑菌にとっては より厳しいという条件の培地を用いることで選択的分離が期待できると思 われた。
4. 選択培地の開発
前の実験でB. bassianaは無糖培地にでも生えることができ, クリスタル バイオレ ットにも耐性があった。 低糖濃度とクリスタルバイオレ ットを併 用してB. baSSlanaに対する選択性をより高めることができるかどうかを調 べた。 また, クリスタルバイオレ ツトはB. bassianaに対する影響も大きい ので, 低糖濃度とブリリアントグリーンの併用効果も調べた。
80
表-26
低糖濃度培地におけるBeauveria bassianaと土壊菌の比較集落数a
ブドウ糖濃度(先) 試料
B. bassiana懸濁液 土壌懸濁液
。
83.0 82.0
0.05 88.0 94.0
0.1 105.0 104.0
0.3 100.0 100.0
a:ブドウ糖0.3児時の集落数を100とした相対値。
- 81
材料と方法
ペプトンCBacto)3g,
CuC12
0.2g, 寒天15g, 蒸留水1000mlの培地にブ ドウ糖とクリスタルバイオレ ツト, ブリリアントグリーンを表- 2 7, 表 -28のような組み合わせで 加え, pHを10に調整, 高 圧滅菌し, B. bas-siana
F-263と森林総研構内の土壌懸濁液について, 前節と同様に集落数を計数した。 さらに, 従来B. baSSlanaなど硬化病菌の分離にしばしば使用さ れてきたVFA培地と比較した。
結果と考察
低糖濃度とクリスタルバイオレットの組み合わせにおける集落数を表-
2 7に示した。 集落数は, ブドウ糖0.3児, クリスタルバイオレット無添加 の培地(30%SD培地と同等) の集落数に対する百分率で示した。 クリスタル バイオレットは濃度を増すに従ってB. baSSlanaに対しでも, 土壌懸濁液中 の雑菌に対しでも阻害的に作用したが, 集落数低下の程度は, 土壌懸濁液 中の雑菌の方が大きかった。 クリスタルバイオレットの濃度が同じ培地で も, 糖を加えたものは, 阻害作用が弱まった。 クリスタルバイオレット濃 度が2 ppmまたは3 ppmで土壌懸濁液の集落数は非常に少なくなった。
Doberski
&
Tribe (1980)やSneh (1991)の硬化病菌選択培地ではクリスタ ルバイオレット濃度が 10ppmで, 本処方に比べはるかに高濃度であるが, 同 時に糖(または澱粉)濃度もはるかに高く, これが硬化病菌への阻害作用 を弱めていると考えられた。低糖濃度とブリリアントグリーンの組み合わせにおける集落数は 表-
28に示した。 集落数はブドウ糖500ppmプリリアントグリーン無添加時の 集落数に対する百分率で示した。 ブリリアントグリーンはB. baSSlanaに対
しては1000ppmまで, 影響はみられなかった。 一方, 土壌懸濁液中の雑菌に 対しては, 2ppmでも集落数が減少し, 5ppmで無添加時の1/3になった。
82
表-27 低糖濃度とクリスタルバイオレットの併用培地における 8eauveria bassianaと土壌懸濁液の比較集落数a
濃 度 試料 比較集落
ブドウ糖(完)クリスタルハ・イオレット(ppm)
8. bassiana懸濁液 土壌懸濁液 数の比
。 。 104.4 86.8 1.20
。 82.0 22.6 3.63
。 2 53.9 11.3 4.77
。 3 33.4 1.9 17.58
。 5 0.0 0.0
0.5 。 104.4 92.6 1.13
0.5 94.8 57.1 1.66
0.5 2 86.2 23.9 3.60
0.5 3 59.3 13.5 4.41
0.5 4 18.4 6.7 2.75
0.5 5 0.0 0.0
93.0 45.0 2.07
2 88.0 22.6 3.89
3 68.5 15.2 4.51
3 。 100.0 100.0 1.00
(VFA)
。 93.4 75.5 1.24a:
ブドウ糖0.3先, クリスタルハ・イオレット無添加を100とした相対値。- 83 -
表-28 低糖濃度とブリリアントグリーンの併用培地における Beauveria bassianaと土壌懸濁液の比較集落数a
濃 度 試料 比較集落
ブドウ糖(先) 7'リリアントグリーン(ppm) B. bassiana懸濁液土壌懸濁液 数の比
。 。 93.4 92.4 1. 01
。 2 104.9 60.8 1. 72
。 5 102.4 31.0 3.30
。 10 105.6 34.7 3.04
。 20 100.8 29.5 3.42
。 30 98.2 42.0 2.34
G 40 92.0 30.4 3.02
Q 50 98.8 30.0 3.30
。 100 97.1 34.8 2.79
。 200 108.7 37.9 2.87
。 500 114.1 34.6 3.30
。 1000 111. 0 29.0 3.82
0.5 G 100.0 100.0 1.00
0.5 2 98.6 52.6 1.87
0.5 5 88.2 38.6 2.29
0.5 10 94.1 29.8 3.16
0.5 20 104.9 24.6 4.27
a: ブドウ糖0.5%. 7'リリアントグリーン無添加を100とした相対値。
一 84 -
しかし, それ以上濃度を増しでも集落数は変わらなかった。 糖は0.5g /
1000m 1しか試験しなかったが, 実験した範囲ではクリスタルバイオレ ット
添加時にみられたような糖の添加による阻害作用軽減はみられなかった。
むしろ, F-263に対しても土壌懸濁液に対しても, 糖を添加した方が集落数 が若干少ない傾向があった。
選択培地として, 雑菌数が, 30児SDの1/1 0以下に抑えられれば, かな り有効であろうと考えられた。 そこで ブドウ糖無添加クリスタルバイオ レット2 ppm, または, ブドウ糖500ppm, クリスタルバイオレ ット3 ppmで かなり有効な選択培地になるといえる。 しかし, この濃度では, 純粋の
B. baSSlanaに対しでも集落数の減少をもたらすので, とくに選択性を高め る場合はこの方がよいが, 選択度を若干犠牲にしても感度を高める必要が ある場合にはブリリアントグリーンを5ppm以上加えた培地の方がよいと考 えられた。
5. 選択培地による土サンプルからの菌の検出
開発した無糖クリスタルバイオレ ット培地により実際にB. baSSlanaを選 択的に分離する可能性を調べる必要がある。 そこで, 土壌懸濁液をこの培 地に塗布して生じた集落の中に どの程度の割合でB. bassianaが入ってい
るのかを調べ, この培地の選択培地としての能力を調査した。 また, 同時 にVFA培地でも同一サンプルから菌の分離を行い, 選択培地としての能力を 比較した。
材料と方法
ペプトン3g, CuC12 0.2g, クリスタルバイオレ ット 2mg, 寒天15g, 蒸留 水1000ml, pH 10の培地(DOC2と略) , およびVFAをそれぞれ高圧滅菌して
ペトリ皿に流し平板培地とした。 表-29に示す森林総合研究所構内の6
85
ヵ所の土援を, 滅菌した300ppmのTween80水溶液に懸濁し, 各培地に0.2ml ずつガラス製コンラージ棒で塗布した。 培養は250C暗黒で行い, DOC2は6
日後に, VFA は5日後に, 集落数を計数するとともにSDY培地に移植し, 検 鏡によりB. bassianaか否かを同定した。 各区各培地に3枚のペトリ血を使 用し, 生じた集落がペトリ皿1枚で11個以上のものは無作為に10個のサン プリングで, また10個以下のものはすべてについて同定し, B. baSSlana検 出率を求めた。
結果と考察
森林総合研究所構内の土壌からは, 標本の採集地による違いが大きかっ
たが, 表-29に示すとおり比較的高率にB. baSSlanaが分離された。 1例 を除き, VFAの方がDOC2よりも全集落数は多かった。 しかし逆に1例を除き,
DOC2の方がVFAよりもB. baSSlanaの集落数が多く, その当然の結果として 生じた集落中のB. baSSlanaの検出率も高かった。 これら土壌中から分離し たすべてのB. baSSlanaは培地中に赤色色素を産出し, マツノマダラカミキ リ防除試験に常用しているF-263とは異なっていた。 B. baSSlana 以外の
Beauverl a 属はいずれの培地によっても分離されなかった。 そのほかの属 の分離菌としては, VFAではCladosporium, PaecilomyceS, Ve r t i c i
11
i urr!などが, またDOC2では, Paecilomyces属が多く分離されたが, それらの種名 までは同定しなかった。 この結果は,土壌中からのB. baSSlanaの検出には DOC2培地の方が VFAよりも雑菌が少なく, B. baSSlana集落数も多く検出 できることを示している。 B. baSSlanaが検出されなかった土壌サンプルも あるが, 検出されたものはは9cmペトリ皿1枚あたり約1� 100個で, この値 は標本土19あたりにすると103� 105個に相当する。 Miller et al. (1957),
Hodges
(1962)は森林土壌からの菌の分離でBeauveria属は分離していないが,Hammill (1970)は土壌中からB. baSSlanaを分離している。 しかし分離
86
表-29 選択培地による森林総合研究所構内土壌からの8eauveria bassianaの検出
分離源土壌採集地 培 地 集落数a
8. bassiana
全数 内8. bassiana数 検出率b機械化別棟西コナラ林 DOC2 4.0 2.5 62.5
VFA 79.3 0.0 0.0
機械化別棟東ヒノキ林 DOC2 25.3 0.0 0.0
VFA 104.0 0.0 0.0
機械化別棟東草地 DOC2 12.7 0.0 0.0
VFA 34.0 0.0 0.0
和風レストラン桂近く雑木林 DOC2 3.0 0.0 0.0
VFA 14.3 0.6 4.2
樹木園イロハモミジの下 DOC2 106.0 102.5 96.7
VFA 89.0 65.3 73.3
樹木園タケササ圏内ホテイチク下 DOC2 7.3 4.0 54.8
VFA 44.7 l.5 3.3
a: 9cmペトリ皿1枚あたり。
b:前集落中の8eauveria bassiana集落の割合併)。
- 87 -
の記述のみで量的なことは明ら かでない。 Doberski & Tribe (1980)は dodineを添加した選択培地で樹皮と土壌からB. baSSlanaとMetarhizium
an isopliaeを検出している。 その結果, B. baSSlana�ま土壌標本の93.6児か ら検出され, 平均密度は彼らの指数で2.3 9 (2が集落11'"'-' 100個, 3が100個 以上, 1個の集落は土壌19あたり37.5個のB. baSSlana分生子に相当)なの で, 約100個とすると3750個/g の密度になる。 また Beilharz et al.
(1982)もdodine添加オートミール寒天で土壌中のB. baSSlanaを検出し,
密度は, 約2500個/gという結果を得ている。 本研究におけるB. baSSlana 検出数は平均的にはこの水準であるといえようが, 最大106個以上/gとい
う値はかなり多い場所と考えられる。
第4節 Beauveria bassiana分生子の寿命
B. baSSlanaの分生子の寿命は, 野外に導入されたこの菌の活性の推移を 推定するため, また利用までの有効貯蔵期間を知る上でも重要で, この菌 を利用するためには調査しておく必要がある。 そこで, 分生子の日光, 紫 外線, 温度に対する耐性を調査した。
材料と方法
B. baSSlana F-263をペトリ皿に入れたSDY平板培地で250C 3週間培養し,
得られた分生子を毛筆で集め, 冷蔵庫で1週間保存後に供試した。
温度別保存試験では, 分生子をそのまま滅菌ペトリ皿に入れ, アルミホ イルでつつんで, 5, 25, 30, 35 oCの恒温槽に置いた。 また, 分生子のは入 ったペトリ皿をポリエチレン袋に入れ, 輪ゴムで口を縛って密閉し, 冷蔵
庫( -2 '"'-' 120C ) に保存したものも同時に設けて比較した。
日光, 紫外線に対する試験は, なるべく分生子の重なりや塊がないよう に脱脂綿でペトリ皿の身に薄く広げて日光または紫外線に暴露した。 日光
88
暴露は, 屋外で, 12月の15日と20日の午前から午後にかけて0.5, 1, 2, 3,
5時間行った。 天候はいずれも快晴であった。 また, 紫外線暴露は, Ultra -Violet Products社のR-52型紫外線ランプで12cmまたは30cmの距離から5,
10,20, 30, 60, 120秒, および5分間照射した。
これらの処理を行った分生子を白金耳で集め, SDY培地に少量置き, ガラ ス製コンラージ棒で塗り広げた。 これらを250C暗黒に保温し, 22時間後に 検鏡し, 視野に見えた100個以上の分生子について3反復で発芽率を調査し た。 発芽管を伸長しているものと膨大化しているものを発芽として扱い 計数したすべての分生子数に対するこれらの率を発芽率として表した。
結果と考察
各種温度で保存された分生子の発芽率を表-30に示す。 常温以上の温 度では, 発芽率は時間の経過とともに低下し, とくに 350Cでは1週間以 内に1/2, 1カ月以内に1/10に低下した。 250C, 300Cでも2週間以内に1/2 になった。 しかし, これらと同様の方法で50Cに保存したものでは, 2週間 までは発芽率に変化はなかった。 その後, 50C区では発芽率が低下し始め,
101日の保存で約42児, 150日で15先になったが, 256日でも約3児が活性をもっ ていた。 これに対して, 平均温度で50C区に近い冷蔵庫でも ポリエチレン 袋で密閉して保存したものでは, 1年以上経過しても93犯の発芽率があり
ほとんど活性は変わらなかった。 50C区と冷蔵庫で保存後の活性が大きく異 なったが, 温度は大きな差がなかったことから, これは温度条件による差 よりも, 密封して乾燥を防止するか否かによるものであろうと考えられる。
河上(1960)は黄きょう病菌の発芽率は湿度O児または80児以上で保存した場合 に高く, その中間では低く とくに75見付近が最も悪い と述べている。 本 研究で低温で密封されたものの湿度は不明であるが, 密封することにより,
80児以上の湿度が保たれていたと推察される。
表-3 1に示すとおり この実験では, 0時間の暴露でも発芽率が悪か った。 o時間暴露区は分生子を脱脂綿でペトリ皿に薄く広げたのち, 直ち
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表-30 各種温度で保存された8eauveria bassiana分生子の発芽率
保存日数 温度
冷蔵庫(密封) 50C 250C 300C 350C
。 88.9士4.8
91.3:1:2.7 90.9:1: 3.3 86.0:1: 1. 2 84.6士5.5 2 93.4士1.1 93.7:1: 1.1 90.4:1: 1. 2 67.7士5.7 3 91.1士3.6 92.9士3.7 83.0:1:5.3 70.2士8.5
4 88.8:1: 1. 2 92.0士0.9 76.2士0.5 75.3:1: 6.8
7 85.4:1: 2.7 72.2:1: 1. 6 79.0:1: 1. 7 32.3士10.2
14 91.4:1:1.9 42.8土2.3 48.2:1:4.5 19.5士1.4
28 74.2:1:2.7 7.6:1:2.7 51.2士6.0 9.4士1.9
35 88.7:1: 2.1
51 52.6 :1:4. 5 0.4:1:0.2 14.4:1:2.5 0.0士0.0
58 91.2:1:1.1
101 41.9:1:6.4 0.0:1:0.0 0.9士0.4 0.0:1:0.0
108 89.3士0.8
150 14.6士1.7 0.0:1:0.0 0.0:1:0.0 157 86.2士6.3
203 2.3:1:0.1
210 95.9:1: 1. 3
256 2.7士0.6
264 92.9:1:0.2
373 0.0:1:0.0
380 92.6:1: 1. 2
- 90 -
表-31 日光に曝露された8eauveria bassiana分生子の発芽率
暴露時間 実験1 実験2
。 71.11:2.0 56.51:4.1 0.5 80.21: 5.6
59.71:7.4 47.81:4.4 2 38.71:7.5 49.51:10.5 3 12.61:3.2
3.5 7.5::1:::1.7
4 7.5::1:::2.2
4.25 4.1::1:::0.4
4.5 5.3士0.4
5 0.0士0.0 1.8::1:::0.9
- 91 -
に白金線で集め培地に塗布した点が保存直後の無処理のものと異なるだけ なので, この操作が分生子に障害を与え発芽率を低下させたと考えられる。
直射日光に暴露したものは, 本菌の分生子に対して強い殺菌効果があった。
1時間の暴露でも発芽率の低下がみられ, 3時間を越えると発芽率は大き く低下し, 約1/10になった。 5時間の暴露で, 分生子はほとんど全滅した。
紫外線ランプへの曝露結果を表-32に示す。 この実験で12cmからの1 回目の照射は, 点灯直後の光量が安定しない内から使用したため, 初期の 光量は他の実験よりも少ないと考えられる。 しかし, 12cmからでは1分間
の照射でもほとんどの分生子が全滅した。 また 30cmからの照射でも2 分 でほとんど全滅した。
昆虫寄生菌の保存には, 分生子だけを単離して保存するよりも培地, ま たは寄主死体上で保存した方が生存率が高いといわれるが(青木ら, 1953;
河上, 1987), 実用的には分生子だけ収穫して保存する必要がしばしばある。
本菌の場合 , 分生子だけでも密封して冷蔵庫に保存すれば1年は保存可能
であると思われ, また, 低温乾燥条件下に置いたB. baSSlanaが2年半生存 した例(Steinhaus, 1960)もあるが, 試験のための配布用などで本菌を保存 する場合には, その聞の湿度のコントロールができないこともある。 実用 的には, 保存は密封し冷蔵した保存菌を1カ月以内に使用すれば安全であ
ろう。
直射日光に暴露された場合には非常に短時間で失活したが, 本実験では 重なりや塊がないように薄く広げて照射しているので 現実にはすべての 分生子がこのような状況にある場合はほとんどないであろう。 実際にはも う少し失活しにくいと考えられる。 しかし一方で, 本実験は快晴とはいい ながら, 冬至に近い弱し、陽光の時期に行われているので 同じ方法で暴露 すれば, 夏の 直射日光ではさらに分生子の寿命は短くなると考えられる。
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表-32 紫外線ランプに曝露されたBeauveria bassiana分生子の発芽率
照射時間 照射距離
(秒) 12cm反復la 12cm反復2 30cm
。 71.9::1:4.9 92.0土7.1 87.7士4.8
5 5.0士1.1 75.8::1:3.0
10 1.8士0.3 70.0::1: 13.0
20 2.3::1:0.7 27.4::1:3.9
30 11.1::1:1.7 0.4::1:0.2 17.3::1:2.3 60 0.3士0.3 0.5::1:0.3 6.5士1.8
120 0.0::1:0.0 0.3士0.3
300 0.0::1:0.0
a :点灯直後から使用したため, 初期の光量少ない。
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