著者 王 耀華
出版者 法政大学沖縄文化研究所
雑誌名 沖縄文化研究
巻 35
ページ 223‑250
発行年 2009‑03‑31
URL http://doi.org/10.15002/00007260
路次楽は琉球王朝時代の儀式音楽である。『琉球国由来記」「巻四事始・礼楽門」に「二四、楽》当
国楽、察度王、尚巴志王之世間、自中華伝授来乎。不可考。有座楽(是為太平楽。奏干座中故、亦曰(1) 座楽)、大楽、笙家来赤頭楽、路次楽等也」とある。座楽は「奏干座中故」することから「座楽」と
呼ばれる。路次楽は道を行進しながら演奏する音楽のことで、「路次楽」と称される。山内盛彬は『琉球王朝古謡秘曲の研究』で「路次楽とは今日で言うなら野外ブラスバンドである。これは王朝時代、国王慶賀使の行列や儀式のときに奏された野外楽であり、地方では村芝居や村祭りのときに吹き
ならした。その主要旋律楽器は喧哨であり、俗にピーラルラーと呼ばれ、日本ではチャルメラと言わ(9】)れ、オーボエやクーフリ、ネットのように、木製のリード楽器である。」と説明している。
琉球路次楽六曲の旋律源流考
王耀華
琉球路次楽の曲目旋律について、山内盛彬は「廃藩三十年後(’九○九年以降)に二人の老楽師の生存がわかった。新垣加那(一八五六~一九一一○)、知念三郎(’八六二~?)の一一人である。:::(3) 私は祖父盛烹の命をうけて、一」の一一人を内に招いて採譜をした」と記録している。その結果、次のような六つの楽曲の採譜が残された。(1)音頭(調子調べ)、(2)一段(頭更又は頌王声)、(3)二段(一一更又は明達子)、(4)一一一段(一一一更又は操声)、(5)四段(三模様)、(6)五段(斉空公)であ
これらのメロディーの源流に関して、筆者はかつて『三弦芸術論」下巻の「第四章琉球における中国旋律の受容と変容」の中で、「頌王声」、「明達」、「斉空公」の三曲を分析した。本稿はそれを踏まえ、さらに論考を進めていきたい。
ろ段○
一、一段(頭更、頌王声)
(4) 山内盛彬の採譜によると、「一」の曲は総ての儀式の初めに吹奏す」とある。そのためで、この曲を二段」と呼ばれ、「頭更」「頌壬声」とも呼ばれる。この曲名は江戸上りの記録の中には見られないが、琉球王朝時代に楽人であった新垣加那、知念三郎から山内盛彬が聞き取ったのであるから、この
(5) 曲は廃藩置県以前に演奏された楽曲と考えられる。採譜は譜例1の通hソである 譜例1:
bjbhjdb〃、5)bi7又はsbJwa胸ルリ 一段(頭更頌王声)
(この曲は総ての儀式の初めに吹奏す)
Largo
J=66(五節句の時はノー100でAdagio)
篝苣室菫奎=姜這二二三三三二
守
堂二菫一三二三ニーニーー二三二三
二菫=こ=ヨー豆匿巨=雪二三三置ニニー
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譜例2 粋一一 つ e含
譜例3
穴名 指名
二三四五六七八九 左左左左右右右右 432132母1
E佃 左左
32 強吹…..
伍左1
穴孔音と指法
四一◎ 型一つ 〕一右 ミーノ
ー
右
・中指
・薬指
・小指 ・人差指
薬中栂人指指指差 指
この曲の形式は単楽段の構造である。前半が一○小節で、6小節十4小節の二つの楽句に分けられ、後半が一七小節で、6+6+5小節の三つの楽句に分けられる。後半の最後の二つの楽句は「合頭」の構造である。即ち、その二つの楽句の前2小節は同じだが、後半が違っている。第4楽句は発展し、クライマックスに達する。第5句で円満に終わる。曲体の構造は次のようになる。
a(6)+b(4)+C(6)+d(6) +d(5) この曲の音階は琉球音階である。⑪、
皿、、、皿、虹、⑪
音列は譜例2のとおりである。その喧晒の筒音と穴孔音は譜例3のとおりである。
『頌王声』の旋律について、筆者が『打花鼓の歌』で試みた復元
方法と同じ方法を再度試みた。即ち、譜例2における皿、⑪、、、 ね、弧、m(イ調)を譜例4のように弧、、、⑪、斑、、、皿(ハ
調)に変換するのである。しかし、復元した旋律の最低音はgであり、#gではない。元の喧咽の筒音は#gであり、筒音は指遣いで変えるわけにはいかないので、演奏しようとすると二つの噴咽が必要になる。この復元方法だけでは、中国の伝統楽曲の中でその原形がどれにあたるか、皆目見当がつかなかった。そこで別の方法として、噴咽の筒音(全閉穴の音)の階名とその押穴位を変化させることによって、旋律の復元を試みた。つまり、
譜例5のように、その筒音(全閉穴の音)の階名を#gⅡシ(イ調)から#gⅡファ#(――調)に読み替えてみた。また、押指位
は、「頌王声」の第3穴(#d)を第2穴(が)に、第7穴(#ご) を第6穴(#伊)に、一オクターブ高い第3穴(#d)は一オク ターブ高い第2穴(け)に、それぞれ置き換えてみた。旋律に使
譜例4
季垂三塁二三三三垂垂塞震露塞壷 :二三=E二瑁圭=E三E=二目菫=窪=層=霊=E零E三霊
#逼巨=Eヨョ三三三至旦露E三菱=露=胃=E=E三三
碆雲=E垂雲三三三三雲二三三妻
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譜例5 頌王声
頌王声擬構体
孔名 桐庁
指名 左
1 左右
32 左左
43
右左 13
強吹 左
1
℃●■
われた噴哨の音列は譜例5のような『頌王声」(擬構体)に置き換
えられる。
このような旋律(譜例6の上段)は中国音楽の特徴を示すものである。この旋律を中国昆曲、京劇の伝統曲牌「柳青娘』(同、下段)
(6) と対照すると、その旋律の骨幹立曰、楽句の終止幸曰、楽式構造の枠、旋律の動向などの諸点において類似が数多く認められる。
1、旋律の骨幹音が同様に弧、垣、⑪、唱皿、(ね〉、弧であ
る、しかし、路次楽「頌王声」(擬構体)は無半音の五声音階である。なお、「柳青娘」では清角音(ね)が加わる。2,曲の前半の一一一楽句の終止音が同じ配、坦弧である。第4 句からは、「柳青娘』はね、配であり、『頌王声」は弧、、、
血である。3,楽節構造の枠組については、前の三句はほぼ同じである。『頌王声」の第4句は拡充され、「柳青娘」の第4、5句は一二小節であるが、「頌王声」は一七小節である。
4、旋律の動向について、この対照譜を見ると、その旋律の類
似点が分かる。特に初めの三楽句は同じである。後半の部分もある程度関連があると思わ
れる。
昆曲は、伝統的な曲牌が長期の演奏と伝承の中で次第に変化した後、定型化して専用の曲になり、それらは専ら特定の場面だけに用られ、自由に流用されることはない。「柳青娘』はさまざまな役柄で、掃除したり、跳んだりなど、陣立ての場合に使われる専用の曲
(7) である。その陣立ての場面が、路次楽「頌王声』の演
奏が儀式の始まる時に演奏されることと共通している。したがって、路次楽は『柳青娘」を取り込んでいると
理解できる。なお、冊封使録には、冊封の時、中国音楽の演奏者
も随員として琉球に行ったという記録が残っていろ。
例えば、郭汝森「使琉球録」二五六一年)には「傭人……護鍼、総甲、水梢、軍民、行匠、道士、戯子等、
譜例6:琉球路次楽『頌王声』(擬構体)と『柳青娘』の比較
蕊襄三垂彗垂三塞冒錘鍾二鍾垂=鍵 一蕊E垂匿塵菫窪ニニ窪寒E=圭窒 蓋=垂垂露EE-~三雇三E謹謹
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(8) 及一一衙門門書、皀泉、防馬夫、厨館夫等、倶毎名銀五両一一一銭五分、無復差芙。」とある。その中の「戯子」は昆曲を演奏できる人だったかも知れない。夏子陽『使琉球録』(’六○六年)には「楽器有
(9) 金鼓、二一弦等楽、但多不善作。嘗借吾随従者教之。」とある。ここに書かれた金鼓は常に噴哨と一緒に使うものだが、夏子陽の随従者が何を教えたかは分からない。「雅部」の昆曲を演奏できる人だっ
た可能性もある。胡靖『杜天策冊封琉球真記奇観』(’六一一一三年)には、「相陪必以梨園演劇、悉用随
(、)行者。若彼国者、則不知為何物也。」と←のる。この記事から見ると、「梨園」、「随行者」は戯を演じることが分かり、この戯には昆曲が含まれる。以上の記録は、昆曲の曲牌が琉球に伝えられた可能性を示すものと考える。明清時代に昆曲は中国の宮廷で「雅部」として、貴族に奨励された。したがって、中国宮廷から派遣された戯子や冊封使団の随行者などが、昆曲の音楽を琉球の楽人に伝えたとみられる。もう一つは、琉球からの朝貢団あるいは留学生などが中国で習得した昆曲曲牌を琉球に持ち帰ってきた可能性もある。以上の考証から見て、昆曲曲牌の『柳青娘」は路次楽『頌王声」の源流と考えられる。
二、一一段(一一更、又は、明達)
これは山内盛彬が採譜した第2曲である。楽譜には「|段の次に奏される曲で、高音が多くて吹き
(u) づらい曲とされた」と書かれていz己。
全曲は拡充された楽式である。前の一一つの楽句は。、⑪、、、色、Ⅶ 音域で、⑪1,1ねI弧Iね1,1曲の旋律動向を特徴とする。第一一一、 四楽句の音域は高まって、主に、、ね、Ⅶ、.a、高音の⑪、、、ねで、 メロディーは、‐ね‐弧‐・皿‐高音の⑪Iml⑪l中音の.印l弧Iねl皿で
進行し、高い音域を特徴とする。この高い音域は山内盛彬が示した吹奏しにくい箇所である。次に、第五、六楽句はまた最初の二つの楽句の音域と旋法の特徴を再現している。也音で終わるが、これは琉球音楽に特徴的にみられる終止型である。楽式の構造は》
a(6)+b(5)+c(8)十.(5)+e(5)‐|‐f(5)〈、)『一一段』の採譜は譜例7の通ハソである。この曲は、筆者が「頌王声』と同じな方法で、即ち、噴哺の筒音(全
閉穴の音)の階名とその押穴位を変化させることによって、元の旋律を復元してみた。よく使われた穴孔音と音階は、『明達(原曲)』では第1、3,4,5、
『明達(原曲)』項ロ内筒音、
穴孔音 譜例8A:『明達(擬構体)』項ロ内筒譜例8B
音、穴孔音
シドレミ#ファソラシド 芽ファソラシドレミガファソ
7,8穴で、音階は⑪、伽、ね、弧、.、、曲であるが、『明達(擬構体)』では第1、2,4,5,6, 8穴で、音階はⅦ、、、⑪、垣皿、弧である。 この方法で復元した『明達(擬構体)』の旋律は中国様式の特徴を持つ(譜例、、上段)・これを昆
譜例7:c,ノVH6ja7MVIAzィ又は雌"dbZszリ ニ段に更明達)
(一段の次に奏される曲で、高音が多くて吹きづらい曲とされた)
J-66Maes$oeoULx1go
鐘三三一三=E三=筆ニーー
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窪=E三二二=産=匿曾二二二=
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篝三三二=二三三堂二三二二二二
譜例9
(1)『明達(擬概体)』音階 (2)『明達(原曲)』音階
(、)『五段(斉元二公)』は、山内盛彬が採譜した路次楽の第五曲である。山内盛彬
(M) の採譜によると、一」の曲には「五節句や祭日に一段の次に奏す」と付記がある。曲名の「公」は「工」の誤りであることを指摘したい。なぜならば、「斉空公」 曲の曲牌「小開門」と比較対照したところ、両者の関連が見られた。
1,音階調式が同じ無半音の五声徴調式で、音階は⑪、瑁皿、弧、上、血
である。2、『明達(擬構体)』の前半一七小節の旋律の骨幹音と動向は、『小開門』と似ているところが多い。3、『明達(擬構体匡の終止音が『小開門」と似ている箇所が多く、それぞ
れ耐、.、、、、垣、.、、⑪と、、⑪、、、、、耐、曲である。
4,音楽構造の枠がほぼ同じである。(、)昆曲の『小開門」は宴今室などに際して専用に演奏された曲である。『一段』と同様に、「小開門』は「二段」の源流と考えられろ。
三、五段(斉空公)
譜例10:『明達(擬構体)』と『小開門』との比較
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霞三二雪雲室=垂三二三二二
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琴三雪塞三二三三三三二壺垂垂三
菱--ニニーーニ巨三
(注:冒頭の1小節は-オクターブ高めてある)
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の意味が中国語では通じないからである。「斉空工」ならば、中国伝統音楽の理論から次のように解
釈できる。つまり、「工」は工尺譜の、に相当するが、『斉空工』は、全曲を通じて「工」音を使わな い。中国伝統音楽の工尺譜では「以凡代工」という方法がある。即ち、凡(ね)をもって工(、)の
代わりとし、それによって宮音系統(調)を変化させるのである。『斉空公』は4句体の楽式である。第一句は4小節で、旋律がね、弧、.、、曲である。第二句は6 小節で、句幅が拡充し、音域が低音mから高音mまで拡充する。第一一一句は7小節で、旋律の動向は下 がり、⑪音で終止する。第四句は9小節で、旋律が結び、⑪音で終止する。
(応)『五段斉元二公」華媚例、》『斉空公」の復元は、筆者は二つの段階で進めた。まず、『頌王声」の方法で、「擬構体」への変換をとして試みたところ、譜例、の中段の譜を得た。次に、「斉空工」の語意の観点から、「以凡代工」即ち凡(ね)をもって工(、)の代わりとする。これによって、宮音系統(調)がD宮(――調)から
G宮(卜調)に変わった。その結果が譜例、の下段である。この曲については、中国伝統音楽の中で同名の曲あるいは類似曲がまだ見つからない。おそらく、歴史上の特定の時代に広まっていた曲を源流としていると考えられる。この復元した旋律は山内盛彬が採譜した『五段斉空公」の旋律様式の研究を通し、さらに「斉空工」の本意、即ち「以凡代工」
で、凡字(ね)を工字(、)に代え、宮音系統のD宮からG宮に変わることがわかった。以上から見
譜例11:
メGiJd`J〃価ⅢAko"AC'zノ 五段(斉空公)
(五節句や祭日に一段の次に奏す)
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d-Jb丘一c/w、
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譜例12:『斉空公』と「斉空公』(擬構体)、『斉空工』(「以凡代工」)の比較
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この曲は、山内盛彬が採譜した四番目の曲である。曲名には「退去の時の曲で、転調などがあつ
(略)て愉快な曲である」と付記がある。また「’二模様」という曲名が付いているが、このような曲名の音
楽は中国伝統音楽で見たことがない。この曲名に付いている片仮名の発音サンポーャンと近いのが
『山彼羊』であり、従ってこの曲は『山波羊』のことと思われる。「四段(三模様)」の楽式は不規則的な二段体である。第一段が一一つの楽句から成る。第一の楽句
の旋律動向はね、弧、。、、⑪、終止音が高音曲で、6小節ある。第二の楽句の旋律動向は高音域から
中音域へ発展し、終止音は中音曲であり、七小節フレーズである。第二段は三つの楽句から成る。第一楽句の旋律は第一段の第二楽句と関係がある。第二楽句の旋律動向が高音域にあり、クライマックスとなる。第三楽句は第一段の第一一楽句の再現であり、「合尾」の意味がある。全曲の構造は次のと て、これが「五段斉空公」の源流と考えられる。おりである。
A[a(6)+b(7)]+B[c(1吃)+d(1勺)+b(7)]
前述したように、「山波羊』という曲は中国伝統音楽として流行している。そのうち、昆叩曲の『山 四、四段(三模様)譜例13:『四段(三模様)』の楽譜(m
e、Ymcz〃(sb"66i〕ノα〃
四段(三模様)
(退去の時の曲で、転調などがあって愉快な曲である)
」=66MaesmsoLargo
披羊』が代表的なものである。第一節に述べたように、昆曲が琉球に伝わって行った可能性があるから、昆曲『山披羊』がこの曲の源流だと思われる。(旧)(四)「昆曲伝統曲集選』には、一一一曲の「山波羊」が収められている。この一一一曲のうち、第一曲の「山波羊』が母曲であろう、この曲には譜例uの部分旋律がよく出てくる。
昆曲の音楽では、このような頻出する旋律は「主腔」といわれる。それは全曲の各楽段に使われる。
拳=菫圭壺二三三二三二=
篝ニニニーニ≧三三三=
肇三二E塁二巨珪=呂二ニーー=
凄=E三三筐=;言EE曾蚕三三二三二二三=
垂==雪三雲=幸三E=三三三三二=
掌三二窪司雪至=差二二E三二Eヨニニ医
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拳二二=二二二三二三三垂=
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譜例14:
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譜例15:『山彼羊(1)』
山彼羊(1)(20)
『漁家楽・蔵舟』郎飛霞「旦」唱腔
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高景池伝譜、奨歩義編「昆曲伝統曲牌選」75頁、人民音楽出版社、1981年10月、北京。
以上の特徴から「四段(三模様)』を検討する
ことにより、中国的な無半音五声音階、羽調、長二度と短三度の音程の旋律に復元することが可能である。この復元手順には、二つの段階がある。旋律の枠組はそのままで、まず、三つのシャープを無シャープに代える(譜例Ⅳの中段)。ただし、噴哨は換わらず、筒音は鴬gである。次に、変宮音、を宮音血に変えるのである。(譜例Ⅳの下段)
次の譜例砠は、三つのシャープを無シャープに変える時の音列変化を示す。 使われろ。その特徴は、中国的な無半音の五声音階、羽調式であり、使用される音程は長二度と短 『山波羊(1)」(譜例巧)には、上掲の旋律が四つの楽句のうち第一、第二、第四楽句の終わりに
度だけである。終止音は羽(皿)音である。
譜例16
護ニーニニニニョ
.+▲二「四段(三模様)』擬構鴎音列
『四段(三模様)』音列 譜例17
c父
変宮音siが宮音doに変わる音列 変宮音siがある音列
次の譜例刀は、変宮音包を宮音血に変える時の音列変化を示す。譜例姐下段の「四段(一一一模様)擬構体(二)』と昆曲『山波羊』は、音階、調式、主腔、旋律の構造などの点で密接な関係にある。
音階は中国式無半音五声音階であり、調式は羽調式、主腔は弧1 ,1弧1,,m1曲lhI弧1m(「山波羊』が塊1,1配l⑪1 ,,,1ml弧1m)で、音程は長一一度、短三度である。
要するに、「四段(一一一模様)擬構体(一一)』が「四段(三模様)』の原型だと思われろ。
この曲は、山内盛彬が採譜した第三曲である。楽譜には「出立
(皿)の時の楽曲で、最も人に親しまれる曲である」と付記してある。楽譜から見ると、この曲は二つの段落があり、後半部分の一○
小節が同じで、「合尾」になる。第一段落には三つの楽句がある。第一楽句は五小節十一拍であり、旋律は琉球音階を中心とする。 五、三段(三更、操聲)
譜例18:『四段(三模様)』(上段)、『四段(三模様)擬構体(-)』(中段)、
『四段(三模様)擬構体(二)」(下段)の比較
■■ ̄---■■■
■■
二円ゴー会--鐸自学凸=ニニニ亭F伝輻=再三E二.与曙ヨ雫房手
--■■■■■■■
=
二三日ヨヨニ尹手ニニニョ露2房=F買巨員ヨー罰=
■
屯==宰二゛・‐・・・ ̄・・・・・
0 グー、
.~今子羊件合グー弓
牡
〆~
ケニ長岸合へ
〆 ̄、
==菫=
 ̄
弓E芋匡写騨〒=再三=F戸戸戸=FFF戸
第二楽句は6フレーズ+一拍であり、第三楽句は5フレーズある。旋律は琉球音階を基調とし、中音域を中心に動く。第二段落には四つの楽句がある。第一楽句は三小節半であり、音域が高く、終止音は中音の曲である。第二楽句は四小節半で、旋律は中高音域を中心に動き、リズムは活発である。第三、四句は第一段落の第二、一一一楽句の再現であり、中国伝統音楽でよく使われる「合尾」という構造と似ている。最後に、|フレーズが拡充され、全曲が円満に終止する。楽式の構造は次のとおりである。A[a(5フレーズ+|拍)+b(6フレーズ+一拍)+c(5フレーズ】
B[.(1坊フレーズ)+e(1崎フレーズ)+b(6フレーズ+一拍)+c(5フレーズ)
+拡充(1フレーズ】中国伝統音楽には、この曲と同じ曲名は見当たらない。しかし、この曲を復元の原型として、筆者は二つの復元方法を試みた。
1、筆者は、まず、中城村「打花鼓の歌』を復元した方法をこの曲に適用してみた。即ち、琉球音階を中国音楽の羽調式音階に変換するのである。これによって構成音相互の音程が変わり、
⑪、血、ね、弧、、、曲が垣、⑪、塊、血、弧、垣(同主音の不同音階)となる。このうち
最も重要な変化は、長三度が短三度に、短一一度が長二度に替わることである。以上の方法により、次のような「一一一段(三更、操声)擬構体(|)』の楽譜が得られた。
譜例19: 『三段(三更、操声)』(型)
dsZmdm7(sb"〃又はsbwz43カmノ 三段(三更操声)
(出立の時の楽曲で、最も人に親しまれる曲である)
ノー印MaesLosoLarg。
■■■ ̄
ニーーーー
゛
 ̄菫逹ニビーー
P一列■■■---
-四一■-口 ̄=■■■■■ ̄■ ̄ ̄■[U一 一一一一一■■■■■■■■■ロ■■■■■■■■西 ̄■■ ̄■■■■ ̄ ̄ ̄
■■■■-コ
鐸=EE筐 ̄屋一:=にEヨー白三三三
/VVh
ニー〔八 ハハの八八
咳口型I■■■■■■■1■■
。」■■■■■■戸司■■■■■ ̄--■■■■」■■■■= ̄ ̄■■■■■■■
■
T-U■■■■■ ̄■■_■■■■■U■■■■■■■■■■」■■■■■■---■■■■■■
 ̄■■=司一■■■■■■■■P■■■
ノリV、
C」
 ̄ひ、グ、
ロワー羽■■■■■■■■■■■■■■■■■■■l■■■ ̄]■■■■■■■I■■ ̄■■■■■ ̄
ロ-11■■■■■■■■■■■l■■■|■■■■■■■■■I■■ ̄■■■■■■I■■■■■■
丁一|■■■|■■=■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■□
塞華ニーーーー圭三菫ヨニf ̄===
拳==ニーニ墓垂垂二王Eニーーニ 挙隼饒圭二二二三=二三室三三三三二三 菫雲嚢華堯=菫ヨニ三F==三===二毛=
髪二二壺華三=ニニニーーヨ
譜例20:
ポニー三三三二==
ロ、己B、「三段(三更、操声)」音階 A、擬機体(1)音階
2,次に、『頌壬声」を復元した方法
を適用してみた。即ち、第一に、喧哨の筒音(全閉穴の音)の階名を変化させる。筒音の高さは同じ#gであるが、#ざⅡ、が#gⅡ
#、に変わる。第二に、押穴位を変化させる。押指位は第3穴(#d)を第2穴(け)に、第7穴
(#ご)を第6穴(#P)に、| オクターブ高い第3穴(#ひ) は一オクターブ高い第2穴(ザ)
に、それぞれ変えてみた。
以上の方法によって、次のような『三
段(三更、操声)擬構体(一一)』の楽譜が得られた。
「三段(一一一更、操声)擬構体(一)」
譜例21:『三段(三更、操声)擬構体(-)』
--■・==・=■■=■=--.口..=完一ゴューーニョニ==已二巴=ニーーー=己ロロローー■■■■■ ̄】■■■■--
r■=■■■■■■■■■■■■■■==■==面面戸□■■■■■■■■■庇--■■■ロ■■■■=■か-■■■■■■■■■■■■■■■■■
■Pl■■■P■■■■■■■■P■■■■I■■■■■■■■■■
諄圓塞圓壺塞垂三三三三塗室
■■■■■■■■rT-■■b、■■ ̄■■■■■■■■■■ ̄■勺■■■■■■■■■■-コ=■■--■■■ロ■■■ロ■■--■■匹已 ̄--■■Ⅱ■■■■■■■■ロ■■■■■■■■■■■■■■P■ ̄--
■■=■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ̄■■■■ロ■■■-1■■■■■■■■ ̄■■■■ ̄ロ■■■■■■ ̄ロ■■■■■■■■■■■■Pr--ヨ■■l■■
■P
I■■
■■■■■■■■■■■■Ⅱ■■■■■■ ̄-面■■■-1■■■■■■■■I■■ロ■■■ロ■■■■■■■■■■■西--■,--で-■■ ̄
■-Ⅱ■■■ロ■■■■ ̄■■■■■ ̄官-1■■I■■■= ̄U■■■■■■■、■■I■■■■■■■■■■■
■ ̄■■■ ̄■ ̄■ ̄■■■■-■■■■■■■Ⅱ■■■■■■
鍾毒…三--富塞逹三三垂
■
ゲーー, ̄ ̄・■ ̄・・---‐。 ̄ ̄ ̄・■ ̄=■■・=■□ロ
譜例22:『三段(三更、操声)」と『三段(三更、操声)擬 構体(二)』の押穴位、音列、音階名の比較
「三段(三更、操声)擬構体(二)」
コロ
と「三段(三更、操声)
擬構体(二)』のうち、前者においては三弦の
調弦法と勘所を変えるという復元方法を用いたが、喰哨の演奏には
適さない。なぜなら、結果的にこの場合の筒音(#図)よりも低
い弧(図)が必要に
なり、しかもそれぞれの音符の長さは三拍に
もなる。しかし、その
旋律は宮調式なので、感情が明るくなり、行進に使われるという
胚-1. |■ 羊P■ 日E 盃h」 田三 曰曰三臣臣タコ曰ヨ白日巴臣田三自巳E 巨甚げ 霊ヨ耳 日日E E岳-0 臣E 四三1コ E 日巴■
季
 ̄し■ ̄。●■。●最後に『音取」を検討する。『音取』は、山内盛彬が採譜した第一曲である。(空)
楽垂娼には「これは調子調べであり、タイム不定」と
『操声』の性質に適合する。|方、後者においては喧哺の筒音(全閉穴の音)の階名を変化させる方法で復元した。これは喧哺の機能や筒音の高さにうまく適合する。その旋律は羽調式、性格はあまり明るくないが、丁寧に感ずる。そこで、演奏に際しては二つの喧咽を準備し、|っの筒音は#g、他の筒音は図とする方法も可能
性がある。従って、結論はまだ出せないが、以上の一一曲が『一一一段(三更、操声)」の源流として考えら
れろ。六、音取
譜例23 『三段(三更、操声)擬構体(二)』
---1■■=Ⅱ■■■■■■I■■■
 ̄ロー ̄■■■■■■■■Ⅱ■■■■■■■I■■■ ̄ ̄-1■■■ ̄=■ ̄■■I■■■■■■■■■■■■■■ロー■■■■■■■■
「■■■■--1■■■■■■■ ̄■■I■■■■■■■--面■■■■■■■■■■ ̄ ̄ ̄■■I■■■ ̄■FFU■■■■■■■■n戸■■■■■
■▽-F■■ ̄■■■p ̄■
■■■ ̄。E ̄■ご=■■■■-コ==■-1■■■■ ̄ロ■■■I■■■■-■■■■■■■■■■
■■■PPU■■■■■■■■■■■ ̄ ̄■■・=■■■■■■--■■■■■ ̄=■■■■l■■■■■■■■■■■■ロ■■■■■■F-=■■■■■■■■■■
■---■■■■■■■■■ ̄■■■■■■Ⅱ■■■■■■■■=勺■■■ ̄アーー ̄■■■■■■■■■■■■戸~て
■■I■■■ ̄
篝三三垂三一E=三三三三E莚
■ロ■■ ̄■ ̄=■■--=ロ= ̄
■■■■---■■■■■ ̄Ⅱ■■■■■■Ⅱ■■■■■■■■ロ■■■■■ ̄巳 ̄ ̄-- ̄■■■■
rqB-■■■■■--■■■■■■■■■I■■ ̄■■■-戸印刀■■■■■■■■■■丘。:刀‐ ̄-1■■■■--」■■■
■P-1■■■■■■■ ̄■■■■■■ ̄■■■」■■■■■U■■■■ ̄
ロ■■■■■l■■■■■I■■■■
F1■■毎~関ロ■■■■■■■■-F--■I■■■■■■■■■U■■■Ⅱ■■■I■■■I■■■■=■U■■■■■■■I■■■■■I■■■■-石■■■■■■■■■■■■■■■■ ̄■■■■■■
f-■■■区■Ⅱ■|■■■-■■■■■-1■■■■--=-■P目■■■■」■■■I■■■■■I■■■PPで--面-,■■Ⅱ■■■■■■庄一■■■ ̄T■■■■■
■-■■I■■■■-■■■ ̄■■■ ̄ ̄=で ̄=
譜例24:
aNituyi
(これは調子調べであり、タイム不定)音取
凶s呼亜。~
αZempOeノ
/弓、
e」
/wミトゥレモロ
譜例25:『音取』(擬構体)
==■■■
「--0■■■■=■■■■■■■ ̄ ̄■ ̄】■■■■■■■■■■■■■■。‐-口』
Ⅱ■---■■■■■■■■■I■■■■■■■■■■■■I■■■ ̄■■■Ⅱ■■ロ二二四戸■■■■■■■ワ
■て巴■卯
■■■■■■■■■■■
乙一■Ⅱ■■ ̄ ̄■■■■ ̄■■■■■■■■ ̄=■■■■■■■■■■■
と■■。■■■Ⅱ■■■ ̄■ ̄ ̄戸一一>l■■■■P回り--
付記してある。つまり、演奏の前に調弦とすると
いう意味である。その採譜は譜例型のとおりであ(型)ろ。
これまでの「|段」「一一段」「五段」「三段」
の復元が正しければ、「音取』の復元も喧哨の
筒音(全閉穴の音)の階名を、押穴位とともに変化させる方法で試みてみ
る。以上は、筆者が六つの琉球路次楽の源流に関し
て探索を試みたものであ
ろ。諸賢のご指導を乞う。
【註】(1)伊波普猷、東恩納寛惇、横山重編『琉球史料叢書』第1巻「琉球国由来記・巻四・事始・礼楽門二四」第
一一一七頁、井山書一房刊行、昭和三七(一九六二)年六月。
(2)山内盛彬『山内盛彬著作集(第2巻)』の「琉球王朝古謡秘曲研究二四路次楽』第二九八頁、沖縄タイム
ス社、一九九三年一一一月。
(3)前掲(2)、第三○○、三○一頁。
(4)前掲(2)、第三○五頁。
(5)前掲(2)、第三○七頁。
(6)高景池伝譜、奨歩義編「昆曲伝統曲牌選』第一三頁、北京》人民音楽出版社、’九八一年一○月。もとの調は正宮調のⅡGだが、比較のため、⑪ⅡDに移調した。
(7)前掲書、第二頁。
(8)原田舜雄訳注『郭汝霧重編使琉球録』第二七九頁、椿樹書林社、二○○○年。
(9)『那覇市史」資料篇第3巻の3、第三九頁、那覇市役所、’九七七年。
(、)前掲書、第1巻の3、第四二頁。
(辺)前掲(2)、第三○八、 (u)前掲(2)、第三○八頁。
(u)前掲(2)、第
(通)前掲(2)、第 (田)前掲(6)、第二頁。
(肥)前掲(2)、第
(Ⅳ)前掲(2)、第
(皿)前掲(2)、第三○六頁 (羽)前掲(2)と、第三○六頁。 /■、
18 、-/
前掲
/ ̄、
、-/6
○
(Ⅲ)前掲(2)、第
(幼)前掲(2)、第 (別)前掲(6)、第七五頁。 (四)前掲(6)、第七八~八○頁。
四、 四頁。
○ 、 ○頁。 、一 頁。 ○九頁。
五頁。頁。
頁。