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共同研究プロジェクト

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Academic year: 2021

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 スポーツ競技において,指導者は練習や試合中の選手の様子,動作等の 推移を常に観察・分析し,選手に的確な指導を行っていく必要がある.た だし,練習が効果をあげるかどうかは,その選手個人の心理的限界が関与 すると考えられる.例えば,持久力のトレーニングのため,ある負荷運動 を「へばる」まで反復するようにし,これを毎日繰り返すとする.する と,その持久力は増加していくはずである.しかしこの時,選手が毎日の トレーニングに際し,本当に「へばる」まで反復しなければ持久力は十分 な伸びを示さないと考えられる.すなわち,心理的限界が低い選手では,

そのトレーニング効果は低くなる.つまり,十分な能力の発展のために は,トレーニング中に,できるだけ高いレベルの心理的限界を示す必要が ある.そこで指導者が声をかけ,選手の“やる気”や“興味”,“継続性”

を引き出す,という方法がよく使われている.とはいえ,肉体的な限界(生 理的限界)を超えるようなレベルにまで追い込むことは避けるべきである.

そこで本研究では,選手の性格を把握し,心理的限界と生理的限界の両方 をモニタリングしながら,的確なコーチング(“追い込み”)により持久力 をあげるトレーニング方法の実現について検討を始めた.

 まず,性格を把握する方法としては,パーソナリティを構成する自我状 態を機能的に把握するエゴグラムがある.エリック・バーン(Eric Berne)

の交流分析における自我状態をもとに,弟子であるジョン・M・デュセイ

共同研究プロジェクト

「スポーツトレーニング中のモチベーションアップ のためのメンタル状態計測に関する基礎的研究」

≪中間報告≫

プロジェクト責任者 

石 濱 慎 司

(2)

(John M. Dusay)が考案した性格診断法で,「それぞれのパーソナリティ の各部分同士の関係と,外部に放出している心的エネルギーの量を棒グラ フで示したもの」(東京大学医学部心療内科 TEG 研究会 , 2002)である.

また,デュセイは,「エゴグラムの本当の概念は,パーソナリティの変容 や成長を得ることを目的として,自分自身をよりよく理解するための道具 として使われるべきもの」と述べている.そのための一手段として,エゴ グラムをもとに東京大学心療内科のメンバーにより東大式エゴグラム,通 称 TEG エゴグラム(以下「TEG」と記す)が開発された.つまり,TEG はパーソナリティを構成する自我状態を機能的に把握するものである.し たがって,TEG をコーチングに応用すれば,選手のパーソナリティを客 観的に捉えることができるツールとなりえる可能性がある.

 これが実現できれば,指導者と選手間及び選手間同士の相互理解,相互 信頼,相互尊重の関係を築き上げる新たなコミュニケーションツールとし て極めて有用であり,指導者と選手の理想的な関係性の構築やチームのパ フォーマンス向上につながる可能性がある.TEG はこれまで,心療内科 や精神科,学校現場で活用されてきた例はいくつかあり,スポーツコーチ ングへの応用を図ったものとしては,女子バスケットボール選手に対して TEGエゴグラムを用いて,交流分析理論に基づいた指導者と選手及び選手 間同士のコミュニケーションを構築し,選手のパーソナリティを配慮した コーチング方法の例(山本, 2016)はあるが,まだ事例は少なく,幅広い 展開へと発展させるにはまだまだ研究が必要である.そこで今回,スキー

(クロスカントリー)で活動する選手を対象とした検討を始めることとし た.

 本中間報告では,一連のデータ収集方法の確立に向けて実施した,持久 力計測として行われているトレッドミル走によるLT(Lactate Threshold;

乳酸性作業閾値)測定の状況を示すとともに,今後の方向性について述べ る.

測定方法

 トライアスロンを競技種目とする男子大学生(当時 3 年生)1 名の協力

(3)

図 1 LT 測定の流れ

図 2 測定環境

を得て実施した.測定の流れを図1に示す.トレッドミル(ランニングマ シン)上で,まずウォーミングアップを行った後,3分間ランニングを行 う.そしてランニングを止めた状態でのインターバルで,その時の血中乳 酸濃度を測定する.これを 5 ~ 6 段階のスピード(楽なペースからある程 度きついペースまで)で行う.

 測定環境としては,図2に示すように,トレッドミルのすぐ近くに測定

(4)

運営者が控えることでアクシデント等への即時対応に備え,また,測定機 材も近くに用意することで,インターバル中の測定をタイムラグを最小限 にして測定可能な環境とした.このインターバルでは併せて,自覚的運動 強度(Rate of Perceived Exertion;RPE)も測定した.自覚的運動強度 とは,運動時の主観的負担度を数字で表したもので,Borg Scaleが代表的 である.Borg Scale は,数字を 10 倍するとほぼ心拍数になるように工夫 されている.これが記された紙を,インターバル中に協力者に示し,協力 者自身の評価値を指で指し示してもらうことで,この値を得る.

測定結果

 測定結果として,心拍数・乳酸値・自覚的運動強度の結果,エゴグラム を,それぞれ図3の上側,下側に示す.

 ここで,エゴグラム(図 3 の下側)を見ると,そのグラフの形から「U 型Ⅱ」であることがわかる.このタイプは,「いらいら,葛藤をためこむ ことができずに衝動的に爆発しやすい傾向がある」とみられる(東京大学 医学部心療内科TEG 研究会, 2002).これだけで,この協力者のパーソナ リティをすべて表しているとは言い切れないが,このような傾向を持って いることを指導者が把握し,それを踏まえて指導にあたることが望ましい と考える.

 一方,生理的な情報に関していえば,今回の測定に用いたトレッドミル の性能があまり高くなかったため,協力者の限界まで到達することができ なかった.本来は,乳酸値のグラフの形状からすると,負荷が乳酸が出始 めるレベルに満たない場合は,乳酸濃度は一定のままで推移し,負荷の高 い運動を続けると,血中の乳酸濃度が徐々に上昇し始めるポイント(LT)

が見られる.さらに運動を続けると,血中乳酸蓄積の開始地点(Onset of Blood Lacatte Accumulation:OBLA)が見られることになる(国際スポー ツ医科学研究所, 2014).

 一般的に,トレッドミルを用いたトレーニングにおいても,周囲の人た ちからは激励の意味の“声”がかかることがある.この“声がけ”は,ス ポーツの試合等でよくいわれる“声援が力になる”のと同じ効果を,トレー

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図 3 測定結果

測定開始からの経過時間(単位:分)

心拍数(回/分) 乳酸値(mmol/L)・RPE指標

00 1 2 3 4 5 6 7 8

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

0 1

CP NP A FC AC

2 3 4 5

エゴグラム ラクテートカーブ測定結果

心拍数 乳酸値 自覚的運動強度(RPF)

ニングにおいてももたらす.そこで,こうした数値を把握し,持久力を鍛 えるトレーニング強度の目安として取り入れつつ,“声がけ”のタイミン グや内容に活用することで,より効果的なトレーニングになると考えてい る.

(6)

今後の取り組み

 今回はスポーツトレーニングで用いられるトレッドミルを使用したが,

トラック上でのランニングにおける LT 測定も実施したいと考えている.

また,心拍数等については,スマートウォッチなどを用いた計測方法も確 立していきたいと考えている.そして,今回の方法で得られるデータを用 いて,選手の精神状態を長期的に把握し,成績への影響に加え,怪我等の 予防にも役立てることができる可能性も考えられる。

 まずは長期的に継続してデータを取得方法取得し,具体的な活用方法に ついても検討していきたいと考えている.

参考文献

[1] 国際スポーツ医科学研究所(2014):新版 図解 スポーツコンディショ ニングの基礎理論,西東社.

[2] 東京大学医学部心療内科TEG 研究会(2002):新版TEG 解説とエゴ グラム・パターン, 金子書房, p.15.

[3] 山本剛史(2016):選手のパーソナリティを把握したコーチング法の 事例考察 ─アメリカ Texas A&M 大学女子バスケットボールチーム を対象として─, 滋賀短期大学研究紀要, 第41号, pp.41-55.

図 1 LT 測定の流れ 図 2 測定環境 を得て実施した.測定の流れを図1に示す.トレッドミル(ランニングマ シン)上で,まずウォーミングアップを行った後,3分間ランニングを行 う.そしてランニングを止めた状態でのインターバルで,その時の血中乳酸濃度を測定する.これを 5 ~ 6 段階のスピード(楽なペースからある程度きついペースまで)で行う. 測定環境としては,図2に示すように,トレッドミルのすぐ近くに測定
図 3 測定結果 測定開始からの経過時間(単位:分)心拍数(回/分) 乳酸値(mmol/L)・RPE指標0012345678204060801001201401601802000246810121416182001CPNPAFCAC2345エゴグラムラクテートカーブ測定結果●◆▲◆◆◆◆◆◆◆◆▲▲▲▲▲▲▲▲●●●●●●●●▲◆●心拍数乳酸値自覚的運動強度(RPF) ニングにおいてももたらす.そこで,こうした数値を把握し,持久力を鍛 えるトレーニング強度の目安として取り入れつつ,“声がけ”のタイミン グや

参照

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