共同研究論文
固定資産の減損会 計
一 原価 配 分 か ら価 値 評価 へ一
,照 屋 行 雄
姜 玉 英
1は じめ に
近 年 に お け る会 計思 考 の特徴 的 な流 れ と して、 収 益 費 用 中心 観(収 益 費用 ア プ ロ ー チ)か ら資 産負 債 中心 観(資 産 負 債 ア プ ローチ)へ の基 本 的 変 化 を指 摘 す る こ と が で きる。 す な わ ち、 期 間損 益 計 算 を課 題 と した 実現 基 準 ・取 得 原価 主 義 の 会 計 か ら、 資 産 ・負 債 の 期 末 評価 と正 味 財産 の増 減 計 算 を課 題 とす る会計 に企 業 観 の大 き な シ フ トが み られ るの で あ る。
収 益 費 用 中心 観 にお い て は、 一 会 計 期 間 に企 業 が 達 成 した 経 営 成 果 を収 益 と し、 そ れ を獲 得 す るた め に犠牲 とな っ た経 営努 力 を費用 と して認 識 し、 両者 を期 間的 に 対 応 せ しめ る こ とに よ って期 間利 益 が算 定 され る。 そ して、収 益 に対 応 され られ る 費用 は、過 去 にお け る財 貨 また はサ ー ビス(用 役)に 対 す るキ ャ ッシ ュ ・ア ウ トフ ロー に よって 測 定 され る こ とにな っ て い る。 したが って 、過 去 の キ ャ ッシュ ・ア ウ トフ ローの う ち当期 の期 間損 益 計 算 に帰 属 しな い部 分 につ い て は、 次期 以 降 に経 過 的 に繰 り越 され る こ と とな る。 これ が原 価 配 分 の考 え方 で あ る。
これ に対 して、 資 産負 債 中心 観 にお いて は、 企業 の保 有 す る資産 と負 債 の増 加 ・ 滅 少 を計 算 し、 両 者 の差 額 と して 資本(正 味財 産)が 定 義 され る こ とに な る。 そ こ で の 利益 の測 定 は 一期 間 にお け る正 味財 産 の増 加 高 と して理 解 され て い る(注1) 。 従 っ て、 この考 え方 に基 づ け ば、 企業 会 計 の計 算 目的 は 企業 の 富 とそ の変 動 を把 握 す る こ とにお か れ る こ と とな り、期 末 に お け るス トッ クの 評価 が 会計 の 中心 的課 題
とな る。これが価 値 評 価 の 考 え方 であ る。
企 業 の 利 益測 定 や 期 末 評価 にお け る この よ うな会 計観 の変 化 を認 識 し、 そ れが 理 論 的 ・方 法 的領 域 に とど ま らず 、 制 度 的 ・基 準 的 領域 に浸 透 しつ つ あ る こ とを、 具 体 的 な会 計 項 目につ い て究 明す る こ とが 重 要 で あ る。 本 稿 で は、 固定 資 産 の 評価 に 関 連 して、 そ の 減損 をいか に認識 し、そ れ を どの よ うに適正 に会 計 処 理 す るか とい
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う問 題 に 焦 点 をお い て 考 察 す る こ と と した 。
論 述 の 展 開 は 、 まず 最 初 に 資 産 の 期 末 評 価 に お け る 原 価 配 分 の 考 え 方 を 説 明 し、
そ の 基 準 と な る 取 得 原 価 基 準 の 適 用 に つ い て 論 述 す る 。 次 に、 固 定 資 産 に 生 ず る滅 損 の 会 計 処 理 に 関 す る 基 本 的 な 考 え 方 を 、 国 際 会 計 基 準(lnternational
AccountingStandards;IAS)や ア メ リ カ 財 務 会 計 基 準 審 議 会(Financial AccountingStandardsBoard;FASB)の 減 損 会 計 基 準 を比 較 しつ つ 考 察 す る。 そ
して 最 後 に 、 減 損 会 計 の 問 題 点 や 課 題 を 明 らか にす る と と もに 、 日本 に お け る減 損 会 計 の 制 度 化 に つ い て 考 察 す る こ と とす る 。
本 稿 の 執 筆 に あ た っ て は 、 主 と し て 論 文 の 構 成 、1,2お よび5を 照 屋 が 担 当 し・3 お よ び4を 姜 が 担 当 し た 。 しか し な が ら、 本 稿 は 執 筆 者2名 の 共 同研 究 で あ り、 国 際 会 計 に 関 す る理 論 的 ・制 度 的研 究 の 成 果 の 一 部 を構 成 す る も の と な っ て い る こ と を 明 らか に して お きた い と思 う。
2固 定資産 の評価基 準
(1)資 産 の評 価 と取 得 原価
従 来、 企 業会 計 に おい て評 価 が 問 題 とされ て きた の は、 特 に資産 の貸借 対 照 表価 額 につ い て で あ った 。評 価 対 象 の負 債 につ い て は、 そ の多 くが 法 的債 務 た る性 格 を
もつ もの に よって構 成 され てお り、 そ の殆 どが債 権 者 との 契約 に基 づ い て期 末残 高 が確 定 す る もの で あ る と認 識 され る。 また、 評価 時期 につ い て も、 資 産 の取 得 、売 却 、 除却 な どの取 引 時 にお け る計 上 価 額 の決 定 に、特 別 に困 難 な問題 は発生 しない
とされ る ので あ る。
しか しな が ら、 資 産 の期 末 時 点 に お け る貸 借 対 照 表 記 載 価 額 の 決 定 につ い て は、
資 産 の種類 に応 じた合 理 的 な評 価 が 求 め られ る こ と とな る。 なぜ な らば 、資 産 の 期 末 評価 の あ り方 は 、一 方 で 、貸 借 対 照 表 に記 載 され る資産 と資 本 の価 額 を適正 に表 示 す るか否 か を決 定す る ばか りで な く、 同 時 に他 方 で 、損 益 計 算書 の費 用 と当期 純 利 益 の大 き さに重大 な影響 を及 ぼす 関係 にあ るか らで あ る。
資産 の 貸借 対 照 表 評価 の もつ 損 益計 算 上 の 意 義 につ いて は、 図表2‑1に 示 され た 決算 修 正 後 の残 高 試算 表 が これ を よ く説 明 して い る。す なわ ち,図 表2‑1に お い て、
線 分abと 線 分cdで 上 下 に切 り離 した場 合 、 上部 は貸借 対 照 表 とな り、下 部 は損 益 計 算 書 とな る。 貸 借 対 照 表 で は財 産法 に基 づ き当期 純 利 益 が算 定 され る。 その 計算 式 はA‑(L‑C)=1と な る。 ま た、 損 益 計 算 書 で は損 益 法 に基 づ き、 当期 純 利 益 が 算 定 され る。 そ の 計 算 式 はR‑E=1と な る。 そ して、 両 計 算 方 法 で算 定 され た 当期 純
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共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分から価値評価へ一 図表2‑1決 算修 正後 残 高 試 算表
圃
園
利 益(Dは 、 金額 的 に一 致 す る計 算構 造 とな って い る。
い ま線 分abが 下 方 に シフ トした場 合 つ ま り資 産(A)の 過 大 評価 が あ
った場 合 に は 、 費用(E)の 過 少 計 上 を通 じて、 当期純 利 益(Dの 過 大 計 上 を結 果す る こ と と な る。 また逆 に、 線 分abが 上 方 に シ フ トした場 合 に は、 費 用(E)の 過 大 計 上 を通
じて・ 当期 純 利益(1)の 過 少 計 上 を結 果 す る こ と とな る(注2)
。 今 日の企 業 会 計 が適 正 な期 間損益 計算 を行 な うこ とを基 本 目標 に して い る と ころか ら
、 資産 の貸 借 対 照 表 評価 が損 益 構 成 要 素 た る費用 の評 価 を媒 介 して、 当期 純 利益 の決 定 に密 接 な 関係 にあ るこ とが 、会 計 上 の重 大 な 問題 となっ て くるの で あ る。
そ して、 現 代 企 業 の よ うに企 業 規模 が拡 大 し、 各種 の 資産 を保 有 す る こ と に よっ て 、 資産構 成 に 占め る 固定 資 産 の割 合 が 増 大 して い る。 従 っ て、 資 産 の評 価 とい う 場 合 、 この よ うな 固定 資 産 の期 末評 価 が 注 目 され る こ と とな り、 しか もそ の評 価 は 必 ず しも簡 単 で は な い。
資 産 の評価 を問題 にす る場 合 、 次 の2つ の論 点 が 認 識 され な けれ ば な らな い。
① いか な る利 益 観 お よび貸借 対 照 表 観 に基 づ い て、 評 価 の 問 題 を扱 うか とい う 論 点
② 資産 の 本 質 や概 念 に基づ い て、 い か な る評価 基 礎 を適用 す る か とい う論 点 資 産 の評 価 は、 この2つ の 論 点 に密 接 に 関 係 す る性 格 の もの で あ る。 す な わ ち、
① の問 題 が解 決 して一 定 の 考 え方 が採 用 され た場 合 、 その 内 容 は② の評 価 基礎 の 決 定 ・適用 を規 定 す る関係 にあ る とい え る。 今 日 まで 公 正 妥 当 な もの と して 認 め られ て きた企 業 会 計 の 考 え方 は、投 下 資本 の 名 目的 回 収(名 目資 本 維 持)と そ の剰 余 の 分 配 を計算 的 に明 らか にす る こ とで あ っ た。 従 っ て 、 そ の た め の 中 心 的 な課 題 は、 適 正 な期 間損 益 計 算 を確 保 す る こ とにお か れ たの で あ る。
この よ うな利 益 測 定 観 の も とで は、 投 下 資本 の 回収 額 を企 業 の 経営 成 果 た る収 益 と認識 し、 これ に対 す る原 初 資本 の投 下 額 を企 業 の経 営 努 力 た る費 用 と認 識 す る こ と とな る。 そ して 、収 益 と費用 の差 額 は、投 下名 目資 本 回収 後 の 資本 剰 余 た る 当期 純利 益 を示す こ とにな る。
さて 、収 益 か ら控 除 され る費用 の測 定 は、過 去 にお け る資 本投 下 額 す な わ ち支 出 額 が基礎 とな らな けれ ば な らない 。 しか しなが ら、 支 出額 が すべ て 当期 の 費用 と し
て 収 益 に対 応 す るわ けで は ない 。 一般 に支 出 と費用 の 関係 を示 せ ば、 次 の3つ の パ ター ンが認 め られ る。
① 第1の パ ター ン:支 出=費 用
② 第2の パ ター ン:支 出=資 産→ 費 用
③ 第3の パ タ,.̲.,.ン:費用e負 債 →支 出
① は、 当該 支 出 に よっ て取 得 した財 貨 や サ ー ビス(用 役)が 、 当期 の収 益 獲 得 の ため にす べ て消 費 された場 合 の費 用 認識 で あ る。従 業 員給 料 、支 払 家 賃、 重 要性 の 小 さい消 耗 品費 な どに対 す る支 出パ ター ンで あ る。 ② は、 当該支 出 に よ って取 得 し た財 貨 や サ ー ビスが 、 当期 の 収 益獲 得 の み な らず 将 来 期 間 に わ た って その効 果 が 発 現す る と期 待 され る場 合 そ の取 得 時 に資 産 計 上 し,決 算 時 にお いて 当期 費 用分 と次 期 以 降 費用 分 とを分 離 計 算 す る。 そ して,次 期 以 降 の 費用 とな る分 につ い て は、期 末 資産 と して貸 借 対照 表 に記 載 され る こ とにな る。 設備 、建物 な どの固 定 資産 に対 す る支 出が このパ ター ンで あ る。
また 、③ は、 原 因 とな る財貨 や サ ー ビス の消 費 が あ っ た期 間 の費 用 を将 来 の支 出 額 を合 理 的 に 見積 もって 、 そ の金 額 を基 礎 に事 前 に認 識 す る もの で あ る。 これ は、
製 品保 証 引 当金 、 退 職給 付 引 当金 、修 繕 引 当 金 な どの 引 当 金項 目に関す る支 出 のパ ター ンで あ る。
本 稿 で は、 資 産 の うち 固定 資 産 につ い て の評 価 の 問題 を考 察 の対 象 と してい るた め 、上 記② のパ タ,.̲...ンに着 目 され る。 こ のパ ター ンの 支 出 に基 づ く資産 と費用 の認 識 を図解 す れ ば、 図 表2‑2の とお りに示 す こ とが で きる(注3)。
固定 資 産 の評価 とい う場合 、厳 密 には 当該 資 産 の取 得 時 か ら売 却 時 も し くは除却 時 まで の あ らゆ る時 点 で の評価 が対 象 とな る。 しか しなが ら、 当該 固定 資 産 の利 用 に伴 う期 間費用 の 認識 と適正 な期 間損 益 計算 の確 保 とい う 目的の た め に は・ 固定 資 産 評価 の 中心 は決 算期 末 にお ける貸借 対 照 表 評価 にお か れ る。
固定 資 産 の取得 に要 した支 出額 は、資 産取 得 時 の原 価 と してそ の評価 基 礎 となる。
従 っ て、 資 産 の評 価 は、取 得 原価 を基 礎 と して 行 な われ る こ とに な る。 これ を取 得
共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分から価値評価へ一 原価 基 準 と呼 び・ 今 日の蝶 会 計 に お け る基 本 原則 とな っ てい る の であ る
.し か も この取 得 原価 は、 財 貨 や サ ー ビス の消 費 に伴 う費用 認 識 以前 の状 態 にあ り
、 い わ ば 費用 の か た ま りも し くは 将来 に 費用 とな る ものの全 体 と して の性 格 を もつ もの で あ る(注4)。
図表2‑2支 出 と費用 の関 係(第2パ ター ン)
回
(期末評価)
支 取 決 決
出e得 算 算
時 時 時 時
この よ うな固 定 資産 の貸 借対 照 表 評 価 は、 図 表2‑2に 示 す とお り、 当該 資 産 の 取 得 原価 を・ 当期 の収益 獲 得 の た め に犠 牲(利 用 に伴 う消 費)と な っ た 当期 の 費 用 部 分 と、次 期 以 降 の収 益 獲 得 のた め に期 末 の資 産 と して繰 り越 す 部 分 とに分 割 す る手 続 で あ る・ この 手続 は原価 配 分 も し くは 費踊 己分 と呼 ば れ てい る.こ の よ うに、 今 日の 期 間損 益 計 算 の 下 で は、 固 定資 産 の期 末評 価 は将 来 の 会 計期 間へ の原 価 配 分 の 手続 と して理解 され るの で あ る。
② 固定 資 産 の減 価 償 却
固 定 資 産 の 期 末 評 価 は、 取 得 原 価 の期 間 配 分 の 考 え方(費 用 配 分 の原 則 とい う) に基 づ き、 具 体 的 に は減価 償 却 の手 続 に よっ て行 なわ れ る。 この こ とにつ い て は、
「企 業 会 計 原則 」 の 第 三 ・貸借 対 照 表 原 則 の五(貸 借 対 照 表 価 額)で 、次 の よ う に 規 定 して い る。
「貸 借 対 照 表 に記 載 す る資 産 の価 額 は、 原則 と して ・ 当該 資 産 の取 得 原 価 を基 礎 と して計 上 しな けれ ば な らない」
「有形 固 定 資 産 は、 当該 資 産 の耐 用 期 間 にわ た り淀 額 法 ・ 定 率 法 等 の 一 定 の 減 価 償 却 の方 法 に よ って、 そ の取 得 原価 を各事 業 年 度 に配分 し(な けれ ば な らない)」
「無 形 固 定 資 産 は 、 当該 資 産 の有 効 期 間 に わ た り、 一 定 の 減価 償 却 の 方 法 に よ っ て 、 そ の取 得 原価 を各事 業 年 度 に配分 しな け れ ば な らない」
ここで の 内容 は、 第1に 、 資産 の評価 は取 得 原価 を基 準 とす る こ と、 第2に 、 固定 資 産 の 期 末 評価 は取得 原価 の 期 間配 分 の 手続 で あ る こ と、 第3に 、 取 得 原価 の 期 間 配 分 は 、具 体 的 に は減 価 償 却 の 手 続 に よっ て行 な うこ と、 第4に 、減 価 償 却 の方 法 が異 なれ ば 各事 業 年 度 に配 分 され る費用 額 も異 な る こ と、 第5に 、 固 定 資 産 の取 得 原価(過 去 のキ ャ ッシュ ・ア ウ トフ ロー)は 将 来 の 利用 期 間 にわ た って全 額 回収 で きる と見 込 まれ る こ と、 が 要 求 され てい る。 特 に第5の 固 定 資 産 の取 得 原 価 も し く は簿価 の 全 額 回収 可能 性 の 仮 定が 重 要 で あ る。 近年 にお け るIT(情 報技 術)革 命 の 進 展 や 産 業 構 造 の 変化 、 さ らに は競 争市 場 の 変化 や 規 制 環境 の 変化 な どに よっ て 、 保 有 す る固 定資 産 につ い て収益 性 が 低 下 し、 将来 の営 業活 動 に よって獲 得 し得 る キ
ャ ッシュ ・イ ンフロー で は、簿価 の全 額 を 回収 す る こ とが で きない事 態 が 生 じて い る(注5)。
また 、商 法 は固定 資 産 の評 価 に関 して、 第34条 第2号 で次 の よ うに規 定 してい る。
「固 定資 産 二付 テハ 、 取 得 価 額 又 ハ 製 作 価 額 ヲ附 シ毎 年0回 一 定 ノ時 期 、会 社 二 在 リテ ハ毎 決算 期 二相 当 ノ償 却 ヲ為 シ予 測 ス ル コ ト能 ハザ ル減損 が 生 シ タル トキハ 相 当 ノ減 額 ヲ為 ス コ トヲ要 ス」
こ こで の 内容 は 、第1に 、 固 定 資 産 の 評価 は取得 価 額(ま た は製作 価 額)を 基 準 とす る こ と、 第2に 、毎 決 算 期 に固 定資 産 原価 につ いて 相 当 の償却 を施 す こ と・ 第3 に、 予 測 不 能 な減 損 につ い て は そ の発 生 時 に相 当の 減 額 を施 す こ と、 第4に 、 固定 資産 の 取得 価 額(簿 価)の 全 額 が 回収 で きない場 合 の 処理 を指 示 して い る こ とが要 求 され て い る。特 に第3の 予 測 不 能 な減 損 に対 す る相 当 の減 額 を要 求 して い る点 は 重 要 だ が、 一 方 で減 損 の 内容 と相 当の 減 額 の具 体 的 な手 続 きにつ い て は明確 に示 し て い ない(注6)。
さて、 固 定資 産の期 末評 価 は減価 償 却 の 方 法 に よっ て行 な うが 、 減価 償 却 の 目的 とす る とこ ろ は、期 間費 用 の 適正 な計算 に お かれ て い る。 す なわ ち、 当該 固定 資 産 の 利 用 も し くは時 の経 過 に伴 う、 当期 の消 費分 と次 期 以 降 の消 費分 とを分 割 す る手 続 で あ って、 そ の 本 質 は あ くまで も当期 の 収 益獲 得 の過 程 で犠 牲 とな った 対応 分 の
共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分か ら価値評価へ一 費用 確 定 で あ る。当期 の費 用 分 す な わち 減価 償 却 費 を正 し く計算 す る こ とに よって、 適 正 な期 間損 益 計 算 を達成 す る こ とが 、 減価 償 却 手続 の 目的 とな って い る こ とが 理 解 され なけ れ ばな らない 。
固 定資 産 の減価 償却 をこの よ うに考 え る な らば 、減 価 償却 計 算 に よっ て当期 費用 分 か ら分 離 され た未償 却 残 高 は 、次 期 以 降の 費用 分 の かた ま りとみ る こ とが で きる
。 この将 来 の 費用 の かた ま りは、 期 末 の貸 借 対 照 表 に資 産 と して計上 され、 次 期 に繰
り越 され る こ とに な る。 この ような 固定 資 産 の会 計 処 理 は、 固定 資 産 の期 末 評価 が 当該 固 定 資産 の取 得 原 価 の将 来期 間へ の 配分 手 続 であ って 、期 末 にお け る資産 価 値 の評 価 手続 で は ない こ とを示 す もので あ る。
しか も、減 価 償 却 に よ る固定 資 産 の期 末 評価 の 決定 は、 当該 固 定 資産 に投 下 され た キ ャ ッシュ ・ア ウ トフ ロ.̲̲.が、将 来 の経営 活動 に よって全 額 回収 可 能 で あ る との 仮 定 の上 に成 り立 っ て い る こ とは前 述 の とお りで あ る。従 っ て、 会 計 的 に は、 固 定 資 産 の取 得原 価(簿 価)が 全 額 回収 で きな い と見 込 まれ た場 合 にお け る 当該 固 定 資 産 の期 末 評 価 の問 題 が 認 識 され る。 商 法 第34条 第2号 に規 定 す る 固定 資 産 の上 に生 ず る 「予 測不 能 な減 損 」 に は、 次 の3つ の事 態 が 考 え られ る。 そ して 、 そ れ ぞ れ の 事 態 に対 応 した適切 な 会計 処理 が求 め られ る こ とにな る。
① 新 技 術 の発 明 や新 市 場 の 開拓 等 の外 的事 情 に よっ て固 定 資 産が 機 能 的 に陳腐 化 ・不 適応 化 した場 合
② 災 害 や事 故 等 の偶 発 的事 情 に よって 固定 資 産 の 実体 が物 理 的 に滅 失 ・破 損 し た場 合
③ 固 定資 産 の 実体 が物 理 的 に滅 失 ・破 損 して い な いが 、 当該 固定 資 産 の 将 来 の 収 益性 が急 速 に低 下 し、 簿価 の全 額 を回収 す る見 込 みが ない と判 断 され た場 合 まず 、 上 記 の① につ いて は、 その 事 態 に対 応 して 臨 時 に減 価 償 却 を行 な うこ とが 求 め られ る(注7)。 この場 合 の臨 時 減価 償 却 費 は、 過 年度 の 償 却 不足(当 初 の 減価 償却 計 画 の誤 り)に 対 す る修 正 項 目 と しての性 質 を有 す る もの で あ り、 前 期損 益 修 正項 目の1つ と して特 別損 失 の 部 に帰 属 す る。 この 臨 時 償 却 は、 あ く まで も減 価 償 却 の延 長 線上 に あ る処 理 で あ っ て、正 規 の 減価 償 却 計算 にお け る耐用 年 数 また は残 存 価 額 の修 正 に伴 う減損 の計 上 であ る。 従 って 、 臨 時償 却 にお い て は 、依 然 と して 固 定 資産 の 簿価 が 全 額 回収 可 能 で あ る との仮 定 に立 って い る こ とが知 られ る。
次 に、 上 記 の② につ い て は、 そ の 事 態 に対 応 して 固定 資産 の簿 価 を切 り下 げ て、 臨時 に評価 損 を計 上 す る こ とが 求 め られ る(注8)。 この場 合 の臨 時損 失 は 、減 価 償 却 とは異 な る性 質 の もの であ り、 過 年 度 の償 却 不足 に対 す る修 正項 目で は な い。 こ
の臨 時 損 失 は、 災 害 や事 故 等 に よ って 固定 資 産 の本 体 に生 じた物 理 的滅 失 ・破 損 に 伴 う経 済価 値 の減 少 を意 味す る。 従 って、 こ こで の評 価 は、 固定 資 産 の簿価 の期 間 配 分 の 考 え方 で はな く、 期 末 資 産の もつ経 済価 値 の評 価 と して の手 続 きとい うこ と に な る。 この よ うに臨時 損 失 は、 固定 資 産 の物 理 的滅 失 ・破 損 に よ り簿価 の全 額 回 収 が 不 可 能 とな った場 合 の減 損 の 計算 で あ る。
そ して、 上記 の③ につ い て は、 上 記① お よび② の よ うに、 そ の事 態 に対 応 して 固 定 資 産 の減 損 が計 上 され なけ れ ば な らない。 しか しな が ら、 この場 合 の減 損 は、 固 定 資 産 の簿 価 全 額 の 回収 が 可 能 で あ る とす る減 価 償 却 の延 長 線 上 にあ る① の 臨時 償 却 とは、 明 らか に異 な る性 質 の もの で あ る。 また 、② の 臨時 損 失 との 関係 で は 、 固 定 資 産 の簿 価 の全 額 回収 が不 可 能 となっ た事 態 を処 理 す る とい う意 味 で は期 末 資産 の価 値 評 価 の性 質 を共 通 にす る とい え る。 しか しなが ら、 この③ の事 態 は 、物 理 的 な滅 失 ・破 損 に よ り固定 資 産 の本体 に減損 が生 じた もので はな い。こ こで の 問題 は、
物 理 的 に減 失 ・破 損 して い な い固 定 資 産 につ い て 、 当該 固 定資 産 の簿 価 全 額 が将 来 の キ ャ ッシ ュ ・イ ン フロー で 回収 で きな い と見 込 まれ た場合 の減 損 の認 識 と測 定 の 問題 で あ る。 しか も、 この よ うな事 態 の発 生 は、 企業 の経 済環 境 の変化 やIT革 命 の 進 展 等 に よって 増大 して い る と認 識 され る。
本稿 で 考 察す る固定 資 産 の減 損 会計 は、 ま さ に上 記 の③ の事 態 に対応 す る会計 処 理 をめ ぐる議論 で あ る。
3固 定資産 の価値 評価
(1)資 産 の 減 損 と そ の 認 識
減 損(impairment)と は 、 物 理 的 理 由 ま た は 経 済 環 境 の 変 化 に よ り、 資 産 の 帳 簿 価 額 の 全 額 を 回収 す る こ とが で き な く な っ た こ と を い う・ 減 損 が 生 じた 資 産 の 帳 簿 価 額 は 、 回収 可 能 価 額(recoverableamount)ま で 切 り下 げ な け れ ば な ら な い 。
固 定 資 産 の 減 損 を示 せ ば 、 図 表3‑1の と お りで あ る 。
回 収 可 能 価 額 と は 、 資 産 の 売 却 か ら得 ら れ る 貨 幣 額 を 表 す 正 味 売 却 価 額(net sellingprice)と 、 資 産 の 継 続 的 使 用 か ら得 られ る正 味 の 将 来 キ ャ ッ シ ュ ・フ ロー に 割 引 利 子 率 を 適 用 した 割 引 現 在 価 値 と し て 算 定 さ れ る 使 用 価 値(valueInuse)
の い ず れ か 高 い 方 の 金 額 を い う。
歴 史 的 原 価 で 評 価 さ れ て い る 資 産 に つ い て 減 損 が 生 じ た 場 合 は 、 帳 簿 価 額 を 回収 可 能 価 額 ま で 引 き下 げ て 減 損 に よ る損 失 を認 識 し、 こ れ を 当 期 の 損 益 計 算 書 に 費 用 と して 計 上 す る 。再 評 価 に よ り評 価 増 さ れ て い る 資 産 に 生 じ た 減 損 は 、 過 去 の 評 価
100
共 同研究 論文● 固定 資産 の減損会 計一 原 価配 分か ら価 値評価 へ 図 表3‑‑1固 定 資 産 の 減 損
通常 の固定資産
額 累 償 減 計 却 価
< 圏
減損が生 じてい る 固定資産
額 累 償 減 計 却 価
﹀
圏
増 の 時点 で計 上 され た再 評価 剰 余 金 と相 殺 す る こ とに よ り認 識 す る。
資産 の 中 に は、他 の資 産 と一 体 とな って 将来 キ ャ ッシ ュ ・フロー の獲 得 に貢 献 す る た め、 個 別 資 産 と して の 回収 可 能価 額 を測 定 で きない もの が あ る
。そ の よ う な資 産 につ い て減 損 の徴 候 が あ る場 合 は、 複 数 の 資 産 か ら構 成 され る グル ー プ と して の 現 金 生成 単位(cash‑generatingunit)を 識 別 し、 そ の 帳 簿 価 額 と回 収 可 能価 額 と を比 較 す る。こ の場 合 の 現 金 生 成 単 位 とは、 他 の資 産 また は 資 産 グル ー プか らの キ
ャ ッシュ ・イ ンフ ロー は大 部 分独 立 してお り、 また継 続 的 に使用 す る こ とか らキ ャ ッシ ュ ・イ ンフ ロー を生 成 す る最 小 単 位 の識 別 可 能 資 産 グル ー プ をい う
。特 定 の 現 金 生 成 単位 の範 囲 を拡 張 して、 同様 の検 討 を行 う。
現 金生 成 単 位 につ い て認 識 され た減 損 額 は、 そ れ を構 成 す る個 別資 産 へ 配 分 して 会 計 処理 を行 な う。そ の減 損 額 は、 の れ ん に優 先 的 に配 分 し、 残 額 が 生 じた 場 合 に は、 の れ ん以 外 の 資産 にそ の 帳簿 価 額 を基 礎 と して比 例 配 分 す る
。
過 去 に減 損 を認識 した資 産 につ い て 回収 可 能価 額 が 回復 した場 合 に は、 減損 の戻 入 れ(reversu1)を 行 な う。歴 史 的 原価 で 評 価 され て い る資 産 に関 す る戻 入 額 は
、 当初 か らの減 価 償 却 を継 続 した と仮 定 した場 合 の 帳 簿 価 額 まで の 金額 を限 度 と し て・ 当期 の 損 益 計 算 書 に利 益 と して 計 上 す る。再 評 価 した 資 産 に 関 す る戻 入 額 は 、
ユ01
再 評価 剰 余 金 と して貸借 対 照 表 の 資本 の 部 に計 上 す る。
現 金 生 成単 位 につ い て認 識 され た 減損 の 戻 入額 は、 通常 、 のれ ん以外 の資 産 に帳 簿 価 額 を基 礎 と して 比 例 配 分 す る。の れ ん の減 損 の戻 入 れ は、 過 去 の 減 損 が 非 反 復 性 の特 殊 な外 部 事 象 に起 因 して 生 じ、か つ 、 そ の影 響 を逆 転 させ る外 部 事 象 の発 生 に よ って価 値 が 回復 した場 合 以外 は 、 原 則 と して認 め られ な い。貸借 対 照 表 に計 上 され て い る資 産 の うち、 減損 会計 の対 象 とな るの はお お む ね有 形 お よび無 形 の長 期 資産 で あ り、 有形 固定 資 産 と無 形 固 定資 産 が そ の 中心 とな る。
次 に、 減損 会計 の特 徴 を幾つ か 示 す こ と とす る。
① 徹 底 した合 理 主 義
減 損 会 計 の大 きな特 徴 と して 、考 え方 の根 底 に欧 米 流 の合 理 主 義 が貫 か れ て い る こ とが あ げ られ る。
IASで は、 固定 資 産 につ い て投 資額 や そ の後 の 帳 簿価 額 と将 来 キ ャ ッシ ュ ・フ ロ ーの 現在 価 値 との比 較 に基 づ き有利 ・不 利 の判 定 を必 ず行 な っ てい る 「合 理 的 な経 営者 」の存 在 を想定 して い る。 しか し、過去 にお け る 日本 の 固定 資 産投 資 の実態 は、
必 ず し も合 理 的 な 意思 決 定 に よっ て い る とは い え な い ケー ス も多 か っ た。つ ま り、
初 期 投 資 時 に投 資 額 と将 来 キ ャ ッシ ュ ・フ ロー の現 在価 値 とを比 較 す る とい う合 理 的 な投 資 判 断が 、 これ まで の 日本 に定着 して はい なか った とい うのが 実態 であ る。
これ まで は 固定 資 産、 特 に不 動 産 な どにつ いて は、 固定 資 産 が生 み 出す 将 来 のキ ャ ッ シュ ・フ ロー を意 識 す る とい う よ りは、 土 地 神 話 信 仰 に基 づ く値 上 が り期待 、 自社 ビル な どの持 つ ス テー タス性 な ど とい う漠 然 と した諸 要 因 に基 づ い て投 資 判 断 が 行 われ て きた。減損 発生 の判 断 の た め の計 算 を行 な う とす れ ば、 初 期投 資 額 に比 べ て将 来 キ ャ ッ シュ ・フ ローが あ ま りに少 な い こ とが 判 明 す る こ と もあ る。減 損 会 計導 入 に よ り今 後 は 日本 で も、 固定 資 産 が生 み 出す キ ャ ッシ ュ ・フ ロー を重 視 して 固定 資 産投 資 を行 な うとい う実務 が 定 着 してい くもの と考 え られ る。
② 固 定 資産 評価 額 の 個 別性
減 損 会 計 で は 、 固定 資 産 の評 価 額 の算 定 にあ た り、 固 定 資 産が 生 み 出す キ ャ ッシ ュ ・フロー に基 づ く評 価 を重視 す る。
固定 資 産が 生 み 出す キ ャ ッシ ュ ・フ ロー は 、資 産 本 来 の生 産性 の み な らず 企業 の 技 術 力 、 販 売 力 な ど さ ま ざ まな要 因 に よっ て左 右 され る こ とに な る。従 って 、 固 定 資 産 固有 の 価値 は、 固定 資 産 の利 用 者 や利 用 の仕 方 に よって大 き く異 な って も不 思 議 で はな い。
横 並 び意識 とい うわ け で は ない が 、 これ まで は 隣 の土 地 と自分 の土 地 の値 段 は大
102
共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分か ら価値評価へ一 体 同 じよ うな もの だ と考 え られた。しか し、 これか らは、減 損 会 計 に関 して い え ば、
隣 の土 地 と自分 の土 地 の 評価 額 は、 収 益性 に よっ て大 き く違 う こ と もあ り得 る とい う こ とで あ る。
③ 現 在 価 値 と時価 評価
減 損 会計 だ け で は な く、 時価 会計 全 般 にい え るが、 時価 評価 の基 準 と して キ ャ ッ シュ ・フ ロー の現 在価 値 を非常 に重 視 して い る こ とが わ か る。
現 在価 値 を資産 ・負債 の時 価 とみ なす とい う会 計処 理 は 、 これ まで の 日本 の会 計 実 務 で は ほ とん どなか っ た。 現 在価 値 は見積 いか ん で計 算 結 果 が異 な る。 想 定 を各 種 設 け る こ とで い ろ い ろ な結 果 が 出 るの で 、経 営 にお け る意思 決 定 の際 には、 さ ま
ざ まな条 件 下 で の情 報 を教 え て くれ る有 用 な ツー ル とな る(注9) 。 しか し、 想 定 事 項 の多 い現 在 価 値 を唯 一 の時 価 と会 計上 み なす た め には 、企 業 の 見積 りに客 観性 を 担保 す る よ うな指 針 が 欠 かせ ない こ とは い う まで もない 。
次 に、 国際 会計基 準(IAS)第36号 にお け る減損 会 計 の 処理 シス テ ム を分 析 す る。
(2)IAS第36号 の減 損 会 計
① 正 味 売却 価 額 と使 用 価 値 a)回 収 可能 価 額
減 損 発 生 の判 定 の 第2段 階 は、 減 損 の兆 候 が あ る資 産(資 産 グル ー プ を含 む、 以 下 同 じ)に つ いて 評価 額 を測 定 し、帳 簿価 額 と比 較 す る こ とで あ る。 この 評価 額 に つ い て、 国 際会 計 基準(IAS)第36号 で は 「回収 可 能価 額 」 とい う概 念 を用 い る
。 b)回 収 可 能 価 額 を求 め る理 由
IASで は、 回収 可 能価 額 を算 定 す る際 に、企 業 が そ の資 産 につ い て、 正 味 売 却価 額 と使 用価 値 の2つ の額 を見積 もる こ とを求 め てい る。
合 理 的 な経 営 者 が あ る資 産 に つ い て 減 損 が 生 じて い る こ と を認 識 した と仮 定 す る。 そ の場 合 に は、 今 後 の 方針 は、 そ の 資産 を売 却 す るか、 継 続 して 利用 し続 け る か の 二者 択 一 に な る。 合 理 的 な経 営者 は、 その どち らか を選 択 す る際 に は、 当然 企 業 に とっ て有 利 な方針 を選択 す る。 従 っ て、 売却 に よる収 入 と継 続 使 用 に よ って生 じる キ ャ ッシュ ・フロー の現 在 価 値 を比較 して、 いず れ か 高 い金 額 とな る方針 を選 択 す る こ とに な る。
減 損 の 判 定 をす る に あ た っ て も、 この合 理 的 な経 営 者 の判 断 の 基 準 を用 い て、 「正 味売 却 価 額 」 と 「使 用価 値 」 の いず れか 高 い 金額 を回収 可 能価 額 とす る とされ て い る。
103
なお 、どち らか の金 額 が帳 簿価 額 を上 回れ ば、他 方 の金額 を見積 もる必要 は ない。
② 将 来 生 じる キ ャ ッシュ ・フ ローの合 計
使 用 価 値 とは、 資産 を継続 して使 用 す る こ とに よ って生 じる将 来 の キ ャ ッ シュ ・ フ ロー と、耐 用 年 数終 了時 の 資 産処 分 に よって生 じる将 来 の キ ャ ッシュ ・フ ロー を そ れぞ れ 見積 も り、 それ らの現 在価 値 を計 算 して合 計 した もの で あ る。
資 産 を継 続 して使 用 す る こ とに よって生 じる将 来 の キ ャ ッシ ュ ・フ ロー は、 当該 資 産 が耐 用 年 数 の残 存 期 間 に生 み 出す キ ャ ッシュ ・フ ロー を予測 して求 め る。 経 営 者 に よって 承認 され た 直近 の予 算 デ ー タな どを用 いて 直接 にキ ャ ッシュ ・フ ロー を 見積 もる こ とが で きるの は、最 長 で も現 在 よ り5年 間 まで と され て い る。6年 目以 降 は、 前 年 の キ ャ ッシュ ・フ ロー に、 一 定 また は逓 減(逓 増 は不 可)す る成 長率 を乗 じて 、 見積 もる こ とにな る。 成 長率 は、 製 品 の成 長 率 、 産業 の 成 長率 、 当該 企業 の 存 在 す る 国の経 済 成 長 率、 資 産 が使 用 され てい る市 場 の成 長率 を超 えて は な らない
とされ て い る。
耐 用 年 数終 了 時 の 資産 の 処 分 に よっ て生 じる将 来 の キ ャ ッシ ュ ・フロー も可 能 な 限 り見積 もる。
割 引 率 は 、当該 企業 の 資 金調 達 源 泉 ご とに金利 と元本 を加 重平 均 した 資本 コス ト、
当該 企業 の追加 借 入 率 、 そ の他 の市 場 利 子率 を考慮 した利 率 を出発 点 に、 資 産 固有 の リス ク を調 整 して 求 め る こ とにな る。 金 利 、成 長 率 や キ ャ ッシ ュ ・フ ロ ー な ど見 積 の 要 素 を算 定 す る実 務 は 、 日本 で は定 着 して い な い。IASの 使 用価 値 の概 念 を、
仮 にそ の ま ま導 入す る とす れ ば 、見積 要素 の算 定 につ い て客観 性 を保 証 す る明確 な 指針 作 りが 必 要 とな るで あ ろ う。
③ 正 味売 却価 額 a)正 味 売却 価 額
正味 売 却価 額 とは、 資 産 の売 却 に よ って得 られ る金額 か ら、処 分 費用 を控 除 した もの で あ る。 正 味 売却 価 額 は、 当該 資産 にす で に売 買 契約 が 存 在す る場 合 には 、そ の契 約 額 か ら処 分 費 用 を控 除 した 金 額 とな る。 この場 合 には、 見積 も り金 額 と して の信 頼性 は きわめ て 高 い もの とな る。
売 買契 約 が ない場 合 に は、 資 産 につ い て活 発 な取 引市 場 が あ る場 合 に は、市 場価 額 か ら処 分 費 用 を控 除 した金 額 とな る。取 引市 場 が ない場 合 に は、 当該 資 産 につ い
て取 引 知 識 の あ る第 三者 間で 、 売 り急 ぎな どの特 別の 事情 が な く通常 に取 引 され る 金 額 を見 積 もる。 そ して 、 そ の見積 り額 か ら、処 分 費用 を控 除 した金額 が正 味 売 却
可 能価 額 にな る。
104
共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分か ら価値評価へ一一 b)減 損 の認 識 と戻 入 れ
減損 が 生 じてい る資 産 につ いて・ 剛 又可 能価 額 が 資 産 の帳 簿価 額 を下 回 る金 劉 ま 減損 損 失 と し・囎 価 額 を減 額 して 当 該損 失 を損益 計 算 書 に計 上 す る こ とに な る
。 減 損 の 測 定 の ため に用 い るsj*"ま 誠 損 の判 定 の 際 に見 積 もった 」=をその ま ま使
っ こ とに な る。なお 、減損 後 の 資産 の帳 簿価 額が 、その 後 の 減価 償 却 の基 礎 とな る。
過 去 に計 上 した 減損 が ・その 後 の状 況 の変化 に よって 一部 で も回復 した場 合 に1ま
、 減 損 損 失 の戻 入 れ を行 な う・ 減損 撒 の戻 入 れ に よって 増加 させ る鰭 の 囎 価 額 は過 去 に減損 損 失 が な く予 定通 り減価 償却 費 を計 上 した と仮 定 した
bの 帳 簿価 額 を超 えて は な らない。
④ 独 立 した キ ャ ッ シュ ・イ ンフ ロー
減 損 処 理 の 際 に求 め る回収 可 能価 額 はr別 資 産 また は資 産 グ ルー プ ご とに予 測 す るの が 原則 で あ る・ しか し・ 企 業 の本 社 の建 物 パ ソ コ ン研 究所 な どの 間接 部 門 にか か る固 定 資産 は、 独 立 した キ ャ ッシュ ・イ ン フロー を もた な い
。IASで は この よ うな資 産 の こ とを全 社 資 産 と呼 び、特 殊 な処 理 を行 な う。
a)配 分 で きる全 社 資 産
全社 館 の うち館 グル ー プ に合理 的1こ配 分 で きる資 産 につ いて は
、 そ の帳 簿価 額 を資 産 グル ー プ に配 分 す る・ 配 分 の 群1ま 、 そ れ ぞ れ の資 産 グル ー プ の囎 価 額 に、 耐用 年 数 に よる ウエ イ ト付 け を した額 の比 を用 い る。
そ して 、全 社 資 産 の帳 簿 価額 を、上 記 基準 で配 分 した 後 の金 額 で そ れ ぞ れ の資 産 グル ー プの減 損 の 判 定 を行 な う。この判 定 に よ り減 損 の 発生 が 認 識 された場 合 に は
、 この 減損 損 失 額 の うち全社 資産 の 帳簿 額 に対応 す る金 額 は、 全社 資 産 に生 じた減 損 損 失 とな る。
b)配 分 で きな い全社 資産
全 社 資 産 の なか に は、資 産 グ ルー プ に配 分 す る こ とが 必 ず しも合 理 的 で ない もの もあ る。
この よ うな全社 資 産 につ い て は、全 社 ベ ー スで 減損 を認 識 す る。 す な わ ち、 減損 損 失 の 認識(配 分 で きる全 社 資 産 の 配分 後)を 行 な っ た 後 の帳 簿 価 額 の合 計 額 に
、 配 分 で きない 全社 資産 の 帳 簿価 額 を足 した金 額 と、 全社 の 回収 可能価 額 の合 計 額 と
を比 較 した金 額 に よっ て、 減損 損 失 の判 定 と計上 を行 な う。
以 上 、IAS第36号 の減 損 会 計 の ポ イ ン トを述 べ て きた。 次 節 で は減損 会 計 の制 度 化 と問題 点 につ いて 考察 を深 め る こ と とす る。
105
4減 損 会 計 の 制 度 化 (1)「 論 点 整理 」 の概 要
① 「論 点 整 理」 の 性格 と内容
2000年6月 に 企 業 会 計 審 議i会か ら、 「固定 資 産 の 会 計 処 理 に 関す る論 点 の 整 理 」 (以 下 、 論 点 整 理 と略 す)が 公 表 され 、 日本 にお け る減 損 会計 導 入論 議 の 第 一歩 が 踏 み 出 され た 。論 点 整 理 公 表 の主 な 目的 は、 減 損 会 計 を中心 とす る 固定 資 産 の 会 計 処 理 に関す る新 しい基 準 制 定 の た め に、 今後 検 討 すべ き課 題 を幅 広 い観 点 か ら整 理 す る こ と にあ る。従 って、 論 点整 理 は基準 そ の もの で は ない 。
論 点 整理 は、 海 外 で の 減損 会計 の代 表 的 な基 準 で あ る国際 会 計 基 準(IAS)第36 号 と米 国 の基準 で あ る財務 会計 基準 書(SFAS)第121号 にお け る減 損 会計 の規 定 を
中・心、に、 日本 にお い て減 損 会計 を導 入す る場合 の検 討 課 題 を ま とめ た もの で あ る。
論 点 整 理 で は、 国際 会 計 基 準 と米 国 基 準 の2つ の基 準 の 規 定 に必 ず し も こだ わ ら ず 、 日本 の実 態 に あ っ た基 準 を制 定 す る こ と を視 野 に入 れ て い る。また 、減 損 会計 導入 の議 論 の 過程 で、 激 変緩 和 の ため の経 過 措 置 を求 め る要 請 が 、実 務 界 か ら上 が る こ と も予 想 され る。論 点 整 理 を叩 き台 に、広 く各 界 か ら意 見 が 集 ま り、 日本 にあ っ た 固定 資 産 の会 計処 理 の具 体 的 な基 準 作 りに向 け て の審 議 が続 い て い くもの と考 え られ る(注10)。
論 点 整理 全 体 を見 る と、2つ の大 きなポ イ ン トが挙 げ られ る。一 つ は固定 資 産 の滅 損 に関 す る論 点 、 も う一 つ は投 資不 動 産 の評 価 に関す る論 点 で あ る。前 者 は、 新 聞 報 道等 で減 損 とい って い る こ とは、 必 ず しも同様 で は な く、 時価 会計 と減損 会 計 が 違 う とい う こ とを認 識 す る必 要 が あ る。第3節 で述 べ た とお り商 法 の 第34条 に、 減損 が 生 じた と きにそ の 相 当 の 減 額 をす る。そ れか ら、 連 続 意 見書 第三 に、 固定 資 産 が 機 能 的 に著 し く減 価 した場 合 に臨 時 償 却 を行 な う とい う規 定 が あ る。こ こで の減 損 とい うの は、 論 点 整 理 で扱 われ て い る もの とは違 うので あ る(注11)。 後 者 の投 資 不動 産 につ い て は、 た とえば 、10億 円の設 備 投 資 を して、 す で に15億 円の キ ャ ッ シ ュ.フ ロ̲を 回収 してい る こ とを仮 設 す る。この15億 円 を資 本 コス トで割 り引 い て も、す で に10億 円 は 回収 済 とす る。それ で も未 償 却 の 簿価 が3億 円残 っ て、 こ の3億 円 の 回 収 は見 込 み め ない ケー ス もあ り得 る わ けで あ る。これ は収 益 性 の低 下 に よる 減 損 で は な くて、 過去 の減 損 概 念 で はそ の 面 を混 同 しか ね な い とい う こ とで 、論 点 整 理 で は参 考 まで にそ うい う問題 も指摘 して い るわ けで あ る(注12>。
② 日本 の 規 定 と対 応
減損 会計 は、 諸外 国 で は決 して 目新 しい もの で は な い。 す で に米 国 で は、財 務 会
106
共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分か ら価値評価ヘー 計 基 準 書(SFAS)第121号 を も とに、1995年12月 以 降 開始 す る事 業 年 度 か ら減 損 会 計 を適用 して い る。 英 国 も1998年12月 以 降 に終 了 す る事 業 年 度 よ り減 損 会 計 を適用 して い る。 また 、国際 会 計 基準 委員 会(IASC)は 、1998年6月 第36号 「資 産 の減 損」
を公 表 し、 ・・i年7月1日 以 降 開始 す る事 業年 度 よ り適用 す る こ と と した
。 国際 的 な 動 向 と 日本 の対 応 を比較 す れ ば、 図 表4‑1の とお りで あ る。
日本 に は、 商 法 第34条 第2号 に、 固 定 資 産 につ い て 「予 測 能 は ざる減 損 が 生 じた る と きは相 当 の減 額 を要 す」 とい う規 定 が存 在 す る。 また、 従 来 の 日本 公認 会 計 士 協 会 の報 告 で は 、減損 に類似 す る会 計 処理 と して、機 能 的減 価 につ い て 「臨時 償 却」、
物 理 的減 価 につ い て 「臨 時 損 失」 が認 め られ て お り、 休 止 固 定 資産 につ いて の有 姿 除却 の 方 法 な ど も定 め られ て い る。 しか し、 実 務 にお いて は、 減 損 額 の見 積 が 困難 であ るな どの 理 由 で、 これ らの規 定 を適 用 す るケ ー ス は多 くな か った
。
また、 これ らの規 定 だ けで は、今 後 行 なわ れ るで あ ろ う将 来 キ ャ ッシ ュ ・イ ン フ ロー の減 少 や 、処 分 価 値 の低 下 に伴 う減損 会計 につ いて は
、十 分 な対応 が で きな い とい う こ とは 自明 で あ る。
図表4‑1国 際 的 な動 向 と 日本 の対 応 の比 較
米 国 英 国 国際会計基準 日 本
財務会計審議会 企業会計審議会 国際会計基準委 企業会計審議会 (FASB) (ASB) 員 会(IASB)
公 表 日期 1995年3月 1998年7月 1998年6月
2000年6月
SFAS第121号 FRS第ll号 IAS第36号 「固 定 資産 の 会
「長 期性 資産 の 「固定 資 産 お よ 「資 産 の 減 損 」 計処 理 に関 す る
基 準 名 減 損 お よび処分 び の れ ん の 減 論点の整理」
予 定 の長期 性 資 損 」 産 に会計処理」
艦
適用 日期 1995年12月 1998年12月 1999年7月 2004年3月 予 定
107
② 減 損 会計 制 度 化 と問題 点
① 滅損 の認 識
減 損 会 計 の対 象 とな るの は有 形 固 定資 産 、 無形 固定 資 産 で あ る。 資 産 に は、 この ほか に金 融 資 産 や棚 卸 資 産 が あ る。 金融 資 産 につ い て は、 時価 評 価 を原則 と した 金 融 商 品会 計 が 適用 され るの で、 減損 会 計 は適 用 され ない 。
また、棚 卸 資産 につ い て は、価 値 の減 少 を処理 す る 間 もな く、営 業 循 環 過程 の な か で 短期 間 に処分 され るの が通 常 で あ る。 従 って 、棚 卸 資 産 は 原則 と して、 取 得 原 価 で 評 価す る。 しか し、価 値 の減 少 が 生 じた と きに は、保 守 主 義 の観 点 か ら一 定 の 場 合 に評価 損 を計 上す る(注13)。
固 定 資 産 は、 通常 は将 来 キ ャ ッシ ュ ・フロー や 買収 収 入 な どの 回収 可 能性 に基 づ く評価 額 が 、帳 簿価 額(取 得価 額マ イナ ス減 価 償 却 累計 額)を 上回 るの が 正常 な状 態 と され る。 しか し、事 業 環境 の急 激 な変 化 や設 備投 資 の失 敗 な どで、 収 益性 が投 資 時 の見 込 み を下 回 る こ とに よ り、 評価 額 が 固 定資 産 の帳 簿価 額 を下 同 る こ ともあ るO
減 損 会 計 は 、 固定 資 産 の評価 額 の減 少(離 減 損)を 、 帳簿 価 額 を減 額 す る こ とで 認識 す る処 理 の こ とで あ る。 減 損 会計 処 理 後 の 帳簿 価 額 は、 回収 可 能性 を反 映 して い る こ とに な る。 また、 帳 簿価 額切 り下 げ時 に生 じる損 失 は、減 損 損 失 として 損益 計 算 書 に計上 す る。 なお 、評価 額が 帳 簿価 額 を上 回 って い て も、 金融 商 品 の時 価 評 価 の よ うな帳 簿 価 額 の切 り上 げ処 理 は、減 損 会計 で は認 め られ な い。
② 減損 の処 理
a)国 際 会計 基 準 ・米 国 基準 にお け る減損 処 理
減 損 処 理 の フ ロー を国 際会 計 基準 、米 国基 準 の 異 同点 と共 に示 す こ とにす る。
ア減損 会 計 の処 理 の ス ター トラ イ ンは 、期 末 日にお け る固 定資 産 の 減損 の 兆 候 を 認 識す る こ とで あ る。 減損 の兆 候 は、 企業 を取 り巻 く経 済環 境 な どの外 部 情報 源 と、 資産 に生 じた状 況 の変化 な どの 内部 情 報源 に よって評 価 す る。
イ資 産が 減 損 してい る可能 性 を示 す兆 候 が あ る場 合 に は、つ ぎに該 当 資産 の 評価 額 を見 積 もる。
こ こで の評価 額 と して、IASで は 「回収 可 能 価 額 」 を求 め る こ と とされ るが 、 米 国 基準 で は割 引前 の 「見積 将 来 キ ャ ッシュ ・フ ロー」 を求 め る こ と とされ、 両者 に 違 い が み られ る。 な お、 回収 可 能 価 額 とは、 資 産 の正 味 売却 価 額 と使用 価 値 の いず
れか 高 い金 額 をい う。
この段 階 で評 価 額 を測 定 す るの は、実 務 上 の配 慮 か らすべ て の資 産 につ いて で は
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共同研究論文●固定資産の減損会計一原価配分か ら価値評価へ一 な く・ 減損 して い る兆候 を見 せ て い る資 産 の み で よい こ とに なっ て い る
。
ウ資 産 の帳 簿価 額(取 得 価 額 マ イナ ス減 価 償 却 累 計額)が 評価 額 を超 過 す る場 合 に・ 資 産 の減 損 が 発生 して い る と判 断 され る。
工 資産 に減損 が生 じてい る場 合 に は、 資産 の帳 簿 価 額 を減 額 し、 減損 損 失 を損 益 計算 書 に計 上 す る。
資 産 の 帳 簿価 額 は、IASで は イで 用 い た 回収 可 能価 額 の 水 準 まで 減 額す る こ と と され て い る。 … 方 、 米 国 基 準 で は イの 評価 額 は用 いず に、 資 産 の公 正 価 値(時 価) を算 出 して・ そ の水 準 まで 減 額す る こ と と され て い る。
b)固 定 資 産 をめ ぐる環境 の変 化 ア 固定 資 産 の性 格
固定 資 産 は・ 過 去 に行 な っ た投 資 を将 来 長 期 間 にわ た って 回収 して い く とい う 性 格 を持 っ た資 産 で あ る。 この長 期 間 に わた る投 資 回収 に対 応 した固 定 資産 の価 値 の減 耗 の 見積 額 を、 企 業 会計 で は減価 償 却 とい う規則 的 な費 用 の 配分 手 続 で 費 用 化 す る。 従 っ て、 固 定 資産 の当 初取 得 価 額 か ら減価 償 却 累 計 額 を差 し引 い た も の が 、 固定 資 産 の帳 簿価 額 で あ る。
通 常 は、 固 定 資 産 の帳 簿 価額 は 、 固定 資 産 の将 来 の収 益性(回 収 可 能性)に 基 づ く価 値 を下 回 る こ とは な い と考 え られ る。
イ固 定 資産 をめ ぐる環境 の変 化
IT革 命 や技 術 革 新 な ど、 近 年 の 企業 環 境 の劇 的 な変化 は、 固 定 資産 をめ ぐる環 境 を も大 き く変 える に至 った。 す な わ ち、 固定 資 産 につ い て将 来 の 収益 性 が 当初 の 見 込 み に比 べ て著 し く低 下 し、 帳 簿価 額 を回収 で きな くな る事 態 が 多発 す る よ うに な った の で あ る。 この将 来の 収 益性 の低 下 に基 づ く固定 資 産 の価 値 の減 少 を企 業 会計 に正 し く反 映 させ てい こ う とす る のが 、 「減 損 会計 」 の 目的 で あ る。
減 損 会 計 は 、将 来 の収 益 性 が 低 下した場 合 に は、 そ の低 下 した収益 性 に基 づ く価 値 まで 固 定資 産 の 帳簿 価 額 を引 き 下げ て、 損 失 を認 識 す る とい う会計 処 理 方 法 で あ る。 も し、 固 定 資 産 を継 続 して使 用 す る よ りも、 現 時 点 で売 却 す る方 が 有利 な場 合 に は、 収 益性 に基 づ く価 額 で は な く、 売却 可 能 な価 額 まで 固定 資 産 の 帳 簿価 額 を引
き下 げ る こ とにな る。
③ 減 損 会計 の 問 題点
まず 、 国 際 会計 基 準 も米 国基 準 も減損 の判 定 にあ た って は、 固定 資 産 の 帳簿 価 額 の将 来 にお け る回 収 可 能性(将 来 キ ャ ッシュ ・フ ロー)の み を問 題 に し
、 過 去 の 回 収状 況 は問 わ なか った(注14)。
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しか し、 固定 資 産 の帳 簿 価 額 よ り将 来 の 回収 可 能性 が低 くな る原 因 と して は、① 過 去 の見積 りに比 べ て 収益 性 が 低 下 した こ とに よ る もの 、② 投 資 期 間全 体 の収 益 性 に変化 は な くて も当初 の予 定 よ り回収 が早 くな され て しま った た め に、結 果 的 に減 価 償 却 が遅 れ て しまっ た こ とに よる もの の2つ が あ る。 前 者① は減 損 に該 当す るが、
後者 ② は、厳 密 には減 価 償却 の修 正 で対 応 すべ き問題 で あ る。
減 損 の判 定基 準 につ い て 、帳 簿 価 額 を将 来 の 回収 可 能性 に照 ら して見直 す だ け で は、両 者 を混 同す る恐 れが あ る。 従 って 、過 年 度 の 回収 額 を含 め て、投 資期 間全体 を通 じた 回収 可 能性 を評 価 す る観 点が 必 要 で あ る とい う考 え方 を 「論 点整 理」 で は 示 してい る。
この考 え方 か らす れ ば、 過年 度 の 回収額 も含 め投 資期 間全 体 を通 じた回収 額 を ま ず 見 積 も り、 そ の額 を当初 投 資 時点 まで 割 り引 く。 そ して 、そ の価 額 が 当初投 資額 (取 得 原 価)を 下 回 っ て いれ ば、 収 益 性 の低 下 に よ っ て減 損 が 生 じた とい う こ とに な る。 この と き見積 もっ た回収 額 を もとに算 出 され る期 末 時 点 で の償 却 額が 、 理論 的 に は減損 後 の 帳簿 価 額 に な る。 この方 法 は将 来 の 回収 予 想 だ けで は な く、過 去 の 固定 資 産 の 回収 状 況 も加 味 しな けれ ば な らない た め、 実務 上 す ぐに導 入す る こ とは なか なか 困難 で あ ろ う。
そ れ に加 えて 、減 損 会 計 を導 入 す る段 階 で は、 実務 的 に い ろい ろ な問題 が あ る と 思 わ れ る。最 初 に減 損 会 計 導 入 の た め の … 般 事 業 会社 の 環 境 整 備 の 必 要性 が あ る。
そ れ は 、1つ に は土 地 の再 評 価 とい うこ とで 、 日本 の 土 地 が 戦 後 長 期 間 の 高 騰 とバ ブル後10年 の 下落 で 、会社 に よって は、 あ る い は持 っ て い る土地 に よって は、 相 当 の含 み 損 と含 み 益 が 出 てい る。そ うい う意 味 で 、減 損 とい うの は 土地 の みが 対 象 と な るの で は な く、 土 地 と上 物 を含 め て判 断 す るが 、土 地 の 含み 損 だ け を表 面化 させ る と、 日本 経 済 や 会 社 の損 益 に とっ て過 度 に悪 い影 響 や 印 象 を与 え る可 能 性 が あ る。会社 にお い て 土地 の含 み損 と含 み益 が あ る場 合 に は、 土 地 再 評 価 法 に よって 土 地 を再 評価 し、 対 象 とな る土 地 は事 業 用 土 地 に限 るが 、土 地 の 含 み損 と含 み益 を平 準化 す る とい うの は1つ の方 法 と考 え られ る。
もう1つ は、 減 損 と臨時 償 却 また は減 価 償却 との 関係 が あ る。日本 の場 合 は ほ とん どの 会社 が 税 法 の耐 用 年 数 を使 って い るか ら、会社 に よって実 際 に は現在 あ る設備 、 建 物 の 中 に、償 却 不 足 また は超過 とな って い る ものが あ っ た り、 あ るい は耐用 年 数
が実 際 の耐 用 年 数 と比 較 して 長 か った りまた は 短 か った り して い る もの もあ る。減 損 会計 を導 入す るの で あ れ ば、これ らの潜 在 的 な 問題 点 をあ らか じめ解 決 す るた め、
耐 用年 数 の見 直 し、 あ る い は減価 償 却 不 足 に対 して臨 時償 却 の実 施 な どの方 法 が考
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共 同研 究 論文● 固定 資産 の減損会計一 原価 配分 か ら価 値評価 へ一一 え ら れ る(注15)。
5お わ り に
本稿 で は、 固 定 資産 の減損 会 計 に 関 して、 従 来 の原 価 配 分 手続 き とい う考 え方 か ら期 末 にお け る価 値評 価 手 続 に シ フ トす る会 計 処 理 につ いて 考 察 した
。
日本 にお い て もす で に 金融 商 品 の 時価(公 正 価 値)評 価 の 会 計 基 準 を整 備 され
、 資 産 の 貸 借 対 照 表 評 価 に お け る価 値 評 価 の考 え 方 が拡 大 して い る。この よ うな 会 計 処 理 の変化 の流 れ の背 景 に は、従 来 の期 間損 益 計 算 を機 軸 と した収 益 費 用 中心 観 か ら貸 借対 照 表 上 の 価値 評価 を重 視 す る資 産負 債 中心 観へ の会 計 観 の 大 きな転 換 が 認 識 され る こ とを指 摘 した 。
これ まで の 論述 に お い て は、 まず 、 固 定 資 産 の評 価 と減 価 償却 の会 計 的 性格 につ い て 明 らか に した。そ こで は 、減 価 償 却 が 固 定 資 産 の取 得 原 価 の 期 間配 分 手 続 と し て理解 され、 従 って 、 減価 償 却 に基 づ く固定 資 産 の 期 末 評価 は、 原価(簿 価)の 全 額 回収 を可 能 とみ なす 仮 定 の 上 に立 って資 産 の 原価 を計 算 す る手続 で あ る こ とが 指 摘 され た。本 稿 が 考 察 の対 象 と して い るの は、 減価 償 却 に よる原 価 配 分 の 手続 とは 異 な り、 しか も固定 資 産 の 本体 に生 じた物 理 的 な滅 失 ・破 損 に基 づ く臨 時損 失 と も 区 別 され る固 定 資 産の 減損 処 理 の問題 で あ る こ とが 明 らか に され た。
次 に、 そ の よ うな 固定 資 産 の 減損 会 計 につ いて 、 減損 の意 義 とそ の 認識 、 減 損 の 処 理 と 日本 で の制 度 化 の 問 題点 な どを考 察 した。そ の 中 で 、特 に減 損 会 計 の1つ の モ デ ル とな って い る国際 会 計 基 準(IAS)第36号 で提 示 され て い る減損 会 計 の基 本概 念 と処 理 システ ム につ い て 詳細 に論 じた。
固 定 資 産 の 減 損 会 計 は 、 す で に ア メ リ カ で 制 度 化 さ れ 、 実 施 さ れ て い る (FASB・SFASNo.121)。 また 、 イギ リス で も会 計 基 準 が 公 表 され て い る(ASB . FRSNo.11)。 国際 会 計基 準 で もす で に会 計 基 準 の作 成 が 行 な われ て い るの は先 に 見 た とお りで あ る(IASC・IASNo .36)。 日本 にお い て は、 企 業 会 計審 議 会 に よ り2000 年6月 に公 表 され た 「固定 資 産 の 会計 処 理 に関 す る論 点 の整 理 」 とそ の 後 の 審 議 経 過 を踏 ま え、 会 計 基 準 の公 表 に 向 け て 各種 の 議 論 が 重 ね られ て い る。固定 資 産 の 減 損 会 計基 準 の 公 表 は、 日本 の会 計 基 準 の 国際 的 評価 を高 め る1つ の 重 要 な ス テ ップ に な る こ とが期 待 され るが 、 制 度 化 に あた っ て は残 され た 課 題 を注 意 深 く整 理 し
、 十 分 な議 論 を重 ね る こ とが 求 め られ る。
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注
1FinancialAccountingStandardsBoard;FASB,statementofFinancial
AccountingConcept.No.S‑ElementsoffinancialStatements,pars.78&80,1985(平
松 一 夫 ・広 瀬 義 州 訳 「FASB財 務 会 計 の 諸 概 念 」 中 央 経 済 社 、1988)
な お 、 資 産 負 債 観 の 考 え 方 が 、 そ の 用 語(asset‑liabilityview)を 用 い て 明 確 に 示 さ れ た 最 初 の も の と し て 、 次 の 文 献 を 挙 げ る こ と が で で き る 。
FinancialAccountingStandardsBoard;FASB,DiscussionMemorandum,
AnanalysisofissuesrelatedtoConceptualFrameworkforFinancialAccountingand
Rep。rting:ElementsofFinancialStatementsandtheirMeasurement,1976(津 守 常 弘 監 訳 『FASB財 務 会 計 の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク 』 中 央 経 済 社 、1997年)。
2若 杉 明 著 『精 説 財 務 諸 表 論[第4版]』 中 央 経 済 社 、1996年 、112〜113頁 。
3支 出 と 費 用 の 関 係 に つ い て の 説 明 は 、 中 村 忠 著 『新 稿 現 代 会 計 学(二 訂 版)』
白 桃 書 房 、1998年 、61〜63頁 参 照 の こ と 。
4ペ イ ト ン=リ ト ル ト ン は 、 固 定 資 産 の よ う な 資 産 の 会 計 的 性 格 に つ い て 、 「将 来 に 費 用 と し て 収 益 に 対 応 さ せ ら れ る の を 待 機 し て い る 『収 益 か ら の 控 除 が 保 留 さ れ て い る 存 在(revenuechargeinsuspense)』 で あ る こ と を 見 逃 が し て は な ら な い 」 と 述 べ て い るiPatonW.A.andA.Clittleton,AnIntroductiontoCorporate
AccountingStandards,AmericanAccountingAssociation,194αP.25(中 島 省 吾 訳
『会 社 会 計 基 準 序 説 』 森 山 書 店 、1974年 、60頁)}。
5醍 醐 聰 著 『会 計 学 講 義1第2版 】』 東 京 大 学 出 版 会 、2001年 、149頁 。
6須 田 一 幸 稿 「固 定 資 産 に お け る 減 損 の 会 計 」 『国 際 会 計 基 準 と 日 本 の 企 業 会 計 』 醍 醐 聰 編 著 、1999年 所 収 、88頁 。
7大 蔵 省 企 業 会 計 審 議 会 「企 業 会 計 原 則 と 関 係 諸 法 令 と の 調 整 に 関 す る 連 続 意 見 書 第 三 有 形 固 定 資 産 償 却 に つ い て 」、1996年 。
8大 蔵 省 企 業 会 計 審 議 会 同 上 意 見 書 。
9小 澤 善 哉 著 「時 価 ・減 損 会 計 』 東 洋 経 済 、2000年 、186頁 。 10同 上 、148頁 。
11『 企 業 会 計 』 中 央 経 済 社 、VoL.52/No.9(2000年9月 号)70b頁 。 12同 上 、72頁 。
13「JICPAジ ャ ー ナ ル 』No.554(SEP.2001)・15頁 。 14小 澤 善 哉 著 、 前 掲 書 、200頁 。
15『JICPAジ ャ ー ナ ル 』No.554(SEP.2001)17頁 。 112
共 同 研 究 論 文 ● 固 定 資 産 の 減 損 会 計 一 原 価 配 分 か ら 価 値 評 価 へ 一 参 考 文 献
・AccountingStandard
sBoard,FinancialReportingExposureDraftNo
.15‑
Impairmento}'FixedAssetsandGoodwill .1997.
'AccountingStandardsB
・ard,FinancialRep・rtingStandard11伽 伽 θ勿,げ FixedAssetsandGoodwill .1998.
'AustraianAcc・untingSt
andardsB・ard ,StandardNα1・1・Accountingforthe RevaluationofNon‑CurrentAssets .1.996.
・FinancialReportingSt
andardsBoard,StatementofFinancial
,Accounting StandardsNo.121AccountingforthelmpairmentofLonglinedA
ssetsandforLong‑
livedAssetstoBeDisposedof ,1995.
・若 杉 明 著 『精 説 財 務 諸 表 論[第4版 】』 中 央 経 済 社
、1996年 。
・中 村 忠 著 『新 稿 現 代 会 計 学(二 訂 版)』 白 桃 書 房
、1998年 。
・醍 醐 聰 著 『会 計 学 講 義 【第2版 】』 東 京 大 学 出 版 会
、2001年 。 '須 旺 輔 「固 定 資 産 に お け る 減 損 の 会 計 」r国 際 会 計 基 準
と 躰 の 蝶 会 計 』 (醍 醐 聰 編 著 、1999念 所 収)。
'大 蔵 省 蝶 会 計 審 議 会 「蝶 会 計 原 則 と 関 係 諸 齢 と
の 調 整 に 関 す る 醗 意 賂 第 三 有 形 固 定 資 産 償 却 に つ い て 」、1996年 。
・小 澤 善 哉 著 『時 価 ・減 損 会 計 』 東 洋 経 済
、2000年 。
・ 『企 業 会 計 』 中 央 経 済 社V
oL.52/No.9(2000年9月 号)。
・ 『JICPAジ ャ ー ナ ル 』No
.554(SEP.2001)。
〔付 記 〕
金融 庁 ・企 業 会 計審 議 会 で は減損 会 計 に関 す る 「論 点 整 理 」(2000年6月)に 引 き 続 き・ そ の 後 「公騨 案」(20・2年4月)を 公表 した.な お 、 本稿 の韓 は20。2年 1月 で あ り・ 「論 鰹 理 」 を基 礎 と して 考 察 してい る.「 公 開 草 案 」 とその 後 の減 損 会 計 基準(2002年9月 公 表予 定)に つ い て は、別 稿 で論 じた い と思 う。
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