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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

非水溶媒からのZn系合金の電析挙動に関する研究

小林, 繁夫

九州大学工学材料材料物性

https://doi.org/10.11501/3180277

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第3章 Zn-鉄族金属系変則型合金電析における水の役割

3.1

緒言

前章においては、 水素イオン供給能の小さいあるいは全くない溶媒からの Zn-Ni 合金の電析は Zn より貴なNiが優先電析する典型的な正常型共析挙動となることを 示した。 実験に使用した浴においては、 溶媒中の水が塩化ニッケル試薬の結晶水に由 来したもののみに限られているため、 水溶液の場合に比べて、 水素析出反応および、そ れに続くZn 水酸化物の生成反応が大きく抑制されることが予想されることから、 こ れら有機溶媒浴においては正常型共析が起こるという事実は水溶液からの本合金系の 変則型共析機構として提案されている水酸化物抑制説の妥当性を示すものである。 本

章においては、 水を混合した溶媒を用い、 これらの浴からのZn-Ni合金電析を行い、

電析過程における水の役割をさらに詳細に検討した。

3.2 実験方法

使用したZn-Ni合金電析浴は前章のものと同じ基本系且成であるが、 改めてTable 3.1に示した。 合金電析挙動に及ぼす水の影響を調べるために、 意図的に表に記した

範囲で水を添加した。 電解は定電流密度で行い、 所定の電気量を通電した。 浴の境枠 は行っていない。 合金電析の際の分極曲線の測定はAg/AgCl電極を参照電極として 定電位法により行い、得られた電析物の分析値から各金属の部分電流効率および、Zn、

Niの部分分極曲線を求めた。 また、 微小アンチモン電極を自作し、 これらを陰極面

Table

3.1

Standard electrolysis conditions.

Bath com position Operating conditions

ZnC12 0.25 m ol/L NiC12 ・6H20 0.25 m ol/L 1.0 m ol/L

Cathode : Cu Anode : Pt H3B03

O H

m ethanol ethanol DMF 0,....40vol %

Current density : 20----2400A/m 2 Solvent;

Tem perature : 30'(:

Stagnant bath

(3)

に垂直に微動可能なマイクロメータに取り付け 、 陰極表面から10μmの位置に固定 した。 この状態において、 基本電解条件から電流密度を変化させ、 陰極近傍のpHを 測定した。 な お、 使用した各微小アンチモン電極について、 あらかじめ 種々のpHの 基本浴における電位を測定し、 浴pHとの関係を求め た。

3 .3 非水溶媒浴への水添加による電析挙動の変化 3.3.1 Zn-Ni合金電析に及ぼす 水添加の影響

Fig.3.1

---3.3には、

メタノール、 エタノールおよびDMF浴に種々の含有率となる

ように水を添加した浴からの電析合金のNi含有率の電流密度依存性を各溶媒で比較 して示す 。 な お、 図中には比較のため に水を添加しな い浴から得られた電析物の Ni 含有率も併せて示した。

これらの図から分かるように、 いずれの浴においても浴中の水の含有率が増大する につれNi の電析が抑制され、 電析合金のNi含有率は低下し始める。 また、 各溶媒 における電析挙動を比較すると、 メタノール浴の場合、 水5 vol.%添加で既にNi含 有率はCRLの下部に位置し、より卑な Znが優先電析する変則型共析挙動を示した。

また、 エタノール浴の場合、 水20 vol.%添加で、DMF浴のそれは40vol.%添加で変 則型共析挙動を示した。 このように、 水の添加により異常性が出現し始める現象は、

溶媒中の水酸化物イオンの供給能が大きくなる。 す なわち、 水酸化物が生成し易い条 件になると貴なNiの優先電析が抑えられ、NiとZnの貴度の逆転が起こることを示 している。

硫酸塩水溶液からのZn- 鉄族金属合金電析においては、 電析合金の鉄族金属含有率 の電流密度依存性が下記の4つの領域1,2)に大別されることを既に第1章で述べた。

す なわち、 極端に低い電流密度においては、 より貴なNiが優先電析する正常共析領 域(領域1 )、 転移電流密度(陰極近傍でZn水酸化物生成を可能にする臨界pHが 達成され、 正常型から変則型へと電析挙動が変化する電流密度)より高い領域で合金 組成が変化せず、 強い異常性を示す領域(領域II)、 見掛け上貴な 金属として挙動す るZnの電析が拡散限界になり始め、鉄族金属の含有率が増加し始める電流密度域(領

域ill)、 およびZnと鉄族金属双方の電析が拡散限界となり、 合金組成がCRLに一致 する領域(領域W)0 Fig.3.3によると、 水含有率が40 vol.%の浴におけるNi含有率

(4)

100

,注、ー圃\ー・'、

80

E

60

E

υ H

- E E

d

40

20

z

0 10

H20 content;

• 0 vol.%

口 5 vol.%

。10 vol.%

マ20 vol.%

EL RH

C

102

Current Density (Alm2)

103

Fig.3.1 EfTect of current density on the content of Ni in deposits in the methanol baths containing 0・20 vol. % of water.

100 と80

. O

E回

4

60

c

一一CRL --

E

E

40

υ

20

z

10 102 103

Current Density (Alm2)

H20 content;

・ o

vol.<ro 2 vol.%

5 vol.%

Fig.3.2 EfTect of current density on the content of Ni in deposits in the ethanol baths containing 0・20 vol. % of water.

(5)

100

,、訟,ー園角'

同o 曲a

80

60 I C

c 4z o d

ミ込J H20 content;

ー�

E O • o

vol.

0/0

υ

20

o

20 vol.%

z ム 40

vol.%

100 10 102 103

Current Density (Alm2)

Fig.3.3 Effect of current density on the content of Ni in deposits in the D恥IF baths containing 0, 20 and 40 vol. % of water.

の電流密度依存性を示す曲線には水溶液で観測される上記I'"'-'Nの領域が認められ、

図には示してないが、 さらに水の含有率の増加と共にこれらの領域がより明瞭になる 傾向が認められた。 このように非水溶媒浴と水を混合した浴におけるZn-Ni 合金電 析はほぼ同様な挙動を示していることから、 以下ではメタノール浴およびDMF浴の 場合を取り上げて考察する。

Fig.3.4およびFig.3.5に、 より細かく水の含有率を変化させた場合の電析合金の Ni含有率の変化を示す。 メタノール浴(Fig.3.4)においては、 電流密度が高い場合 の方が、 より低い水含有率において急激にNi含有率が低下する。 これは500A/m2 の電流密度においては第E領域の最も異常性が強い領域にむかつてNi含有率が低下 しているのに対し、 50A1m2の場合は第I領域における正常共析が進行した後、 高い 水含有率になって第E領域における異常型共析へと移行したためと思われる。 一方、

Fig.3.5に示したDMF浴の場合、 電流密度が低い場合の方が、 71<含有率の増加によ るNi含有率の低下の程度が若干大きいが、 これは15および50A/m2の電流密度に おいては第E領域の最も異常性が強い領域に向かつてNi含有率が低下しているのに

(6)

100

ぎな

80

0

ω 0

号60

z

nu nu n守 内4

制CO#zoυ一Z

Current density;

ム 50 Alm2 口500 Alm2

CRL-ーーーーーー-ーー+ー

。 5 10 15 20

Content of H20 in Bath (Vol.%)

Fig.3.4 EfIect of water content in methanol baths on the content of Ni in deposits obtained at various current densities.

100

京80

0 明O

E 60

z

-

立E 由4 Current density;

υ o

15 Alm2

z

20 50 Alm2

口200 Alm2

。 。 10 20 30 40 50

Content of H20 in Bath (Vol.%)

Fig.3.5 EfIect of water content in D九1F baths on the content of Ni in deposits obtained at various current densities.

(7)

100

,b、同-\国hh,

80

〉u c o u

60

な凶=

H20

content;

40

o vol.cro

-E

d

5 vol.%

20

マ 10 vol.%

υ

ム 20 vol.%

101 10

2

103

Current Density (Alm2)

Fig.3.6 Effect of current density on the current efficiency for alloy deposition from the methanol baths containing 0・20vol. 0/0 of water.

100

,、語困ー、園両,、

80

。:::.句 z ω ω

60

な凶= 噛cd

lP H20

content;

‘‘ー- • o vol.%

20

o 20 vol.cro

υ

ム 40 vol.%

。 100 10 102 103

Current Density (Alm2)

Fig.3.7 Effect of current density on the current efficiency for alloy deposition from the DMF baths containing 0-40 vol. % of water.

(8)

対し、200 AJm2の場合は第Eあるいは第N領域に向かつてNi含有率が低下している ためと思われる。

Fig.3.6およびFig.3.7には、 同様にメタノール浴およびDMF 浴中に水を添加し た場合の電流効率の電流密度依存性を水無添加の場合と比較して示す。 一般に、 水含 有率の増加と共に、 電流効率が減少する傾向を示し、 これは浴中の水素イオン濃度の 増加によるものと推定できる。 また、 水を40 vol.%含むDMF浴において転移電流密 度付近で一旦電流効率が大きく減少するが、 この原因については不明である。

3.3.2 分極曲線による水添加効果の検討

上記のように、有機溶媒浴への水添加の影響は顕著であり、合金電析はより卑なZn

が優先電析する異常型共析となった。 そこで、 Zn-Ni合金電析の分極曲線を測定し、

これら添加された水の作用機構を検討した。

Fig.3.8には、 水を20

vol.%含有するメタノール浴において測定した合金電析の際

のNiおよびZnの部分分極曲線を水無添加の場合と比較して示す。 Niの部分分極曲

103

宮102

b

g10

0

噛圃.z o

‘圃

‘・

3100

10・1 ー0.5

(a)

Ni

-1.0

H20 content;

o

20

vol.%

・ o vol.%

-1.5・0.5

(b)

Zn

圃1.0

Cathode Potential (V

VS.

AglAgCり

Fig.3.8 Effect of water added on the partial polarization curves of Ni and Zn during the electrodeposition of Zn-Ni alloys from methnol baths.

陣1.5

(9)

をみてみると、 水無添加の場合と同じようにー0.5V付近からNi電析が始まるが、 水 を含まない場合は電位を卑に移行していくと共にその電析速度も増加していくのに対

し、 水を含有する場合にはー1.0 V 付近で電析速度が大きく低下する現象が認められ た。 また、 Zn の部分分極曲線も、 水の存在によってその形状は大きく異なった。 す

なわち、 Zn の場合も Ni の部分分極曲線にみられた電析速度の低下が同様の電位領 域で観察された。

さらに、 金属イオンとして Ni2+あるいは Zn2+イオンのみを含有する浴から、 単独 電析を行った際の部分分極曲線を水無添加の場合と比較してFig.3.9に示す。 水を20 vol.%含有する浴からのNiおよびZnの部分分極曲線は限界電流の大きさを除いて、

その立ち上がり電位は水無添加浴と比較して著しい相違は認められなかった。Fig.3.8 とFig.3.9において、 合金浴と単独浴でのZnの部分分極曲線を比較すると、 Zn単独 浴からのZnの電析開始はその平衡電位であるー1.0V付近から始まるのに対し、 合金 浴からのそれはー0.5 V付近から開始し、 大きく貴に移行している。 すなわち、 Znの Underpotential deposition現象が生じていることになる。

103

102 E

噌圃.〉同

210

0

噛圃az o ‘­

...

8 100

10・1

(a)

Ni

-0.6

H20 content;

o

20

vol.%

・ o vol.%

(b) Zn

-1.0 -1.4 ・1.0 -1.2

Cathode Potential (V

vs.

AglAgCI)

圃1.4

Fig.3.9 Effect of water added on the partial polarization curves of Ni and Zn during their single deposition.

(10)

Fig.3.10に、 水を40 vol.%含有するDMF浴における分極曲線を示す。 Niの部分 分極曲線をみてみると、 水無添加の場合と同じようにー0.6 V付近からNi電析が開始 し、 水を含まない場合は電位を卑に移行していくと共にNi電析速度も増加していく のに対し、 水を含有する場合にはー0.8�・1.1 V 付近で電析速度が大きく低下すると いうメタノール浴と同様な傾向が認められた。

一方、Zn の部分分極曲線によると、 水を含有しない浴では Zn の電析速度は短め て低いが、 水を添加することによって、 測定したすべての電位領域でZn電析速度の 上昇が認められた。 さらに、Zn 電析においてもNi の部分分極曲線にみられた電析 速度の低下が同様の電位領域で観察された。 この水を含有する浴においてみられる Ni の電析速度の低下は、 水酸化物抑制説に基づ、いて次のように説明できる。 すなわ ち、Znは、 わずかな過電圧で電析を開始する3)のに対し、 鉄族金属の電析開始には、

大きな過電圧を要することが知られている。 鉄族金属の電析過程は Bockrisの多段階 還元機構4)により次のように示されている。

Ni2+

+

OH-→NiOH+

NiOH++e→NiOHad NiOHad+e→Ni+OH-

slow step

( 1)

(2) (3)

また、 佐藤ら5)は、 電析の逆反応であるNiの溶解もBockrisと同様な機構により、

OH基を持つ吸着中間体を経て溶解すると報告している。 つまり、 鉄族金属が熱力学 的平衡電位で電析を開始しないのは、 鉄族金属水酸化物という吸着中間体を含んだ律 速素過程が存在するためである。 これは、鉄族金属イオンの多段階還元過程において、

NiOHadが吸着できるサイトが制限されていると言い換えることができる。

以上述べたように、 鉄族金属の電析は、 過電圧が大きく、 速度が抑制され易い電極 反応系である。 したがって、 前述したように、Zn 水酸化物が生成すると、 それは、

NiOHadの吸着サイト(電析活性点)に優先吸着し、 鉄族金属電析の開始電位をさら

に卑に移行させる電析抑制剤として作用することになる。

このような鉄族金属の属性を考慮すると、Fig.3.10における各金属の電析挙動は以 下のように説明される。

ー0.8

Vより貴な電位領域では水素析出速度が遅く、 陰極界

(11)

N 、‘.,,a ,,a・、

且『nU 4E・ 103

(b)

Zn

ε

ミミ

103

ω E

。ω

(NEミ)

ー圃.z o と102

と一ωE00

-

1

102

‘ー

‘ー υ

-1.2 -0.6

10 ー0.6 -0.8 -1.0

J

-0.8 恒1.0 ・1.2

Cathode Potential (V

vs.

AglAgCり

Fig.3.10 EtTect of water added on the partial polarization curves of Ni and Zn during the electrodeposition of Zn-Ni alloys from D九1F baths.

面pHがZn水酸化物生成域まで上昇しない ため、 電位の卑側への移行と共にNi電 析および、水素析出速度が順調に増加する。 しかしながら、 水素析出速度の上昇に伴い 陰極界面pHがZn水酸化物生成の臨界値に達すると、 Ni2+イオンの放電サイトを吸 着Zn水酸化物が封鎖し、 その被覆率の増加と共にNi の電析速度は低下し始める。

また、 電位がさらに卑に移行し、 Zn 水酸化物からの Zn 電析が拡散に支配されるよ うになると、 陰極上でZn水酸化物により封鎖されてい たNi2+イオンの放電サイトが 開放され始め、 Znと共にNiの電析速度も再び増加し始める。

以上の議論に従うと、 Znの部分分極曲線におけるーl.0 Vより卑な電位でZnの電 析速度が再び増加する領域では、 陰極に吸着したZn水酸化物からのZn電析が起こ ってい ると考えられる。 Znは水和イオンから直接電析するよりむしろ水酸化物を経 由した方が電析の過電圧が小さい ことが報告され6)、 この電位域で のZnの大きな電 析速度の増加も水酸化物からの放電による可能性もある。 しかしながら、 水を含有す る浴においてのみ認められるー0.6"'"'ー0.8 Vで のZnの大きな還元電流の原因は現在の ところ不明である。 福島ら川ま、 塩化物浴からのZn-鉄族金属合金電析におい ても、

浴温上昇あるいは浴中の塩化物イオン濃度の増加といった異常性を抑制する電解因子

(12)

の変更が、Zn の平衡電位より貴な電位域での大きな電析電流を生じさせることを見 い出している。 水40をvol.%含有する浴も別な見方をすれば、 水溶液に比べDMF により異常性出現が抑制されていると考えることができ、 塩化物浴からの電析と同様 の機構によりこの貴な電位域のZnの電析が起こっていることも考えられる。

3.3.3 界面pH測定による水酸化物抑制機構の検討

Table 3.2に、 Znおよび鉄族金属の濃度1 mol/Lにおける金属水酸化物の生成臨界 pHを標準単極電位と共に示す8)。 この表から、Znの臨界pHが最も酸性側にあるこ とから、 pH を上昇させていくとまずZn水酸化物が生成し始めることが分かる。 福

島ら7) は、 Zn-鉄属合金電析の際の陰極近傍のpHを微小アンチモン電極を用いて測 定することにより、 電流密度の上昇にしたがい陰極界面pHがZn水酸化物生成の臨 界値まで上昇することから、 陰極界面でZn水酸化物が生成・吸着し、 水素析出や鉄 族金属の電析反応を抑制すると報告している。 そこで、 水を添加した有機溶媒浴にお いても変則型共析時には陰極界面pHがZn水酸化物生成の臨界値まで上昇するかど うか検証した。

Table 3.2 Critical pH value for the formation of metal hydroxide and standard single electrode potential of each metal.

冗素 Zn Ni Co Fe

pHcri 5.48 6.09 6.30 6.65

EO -0.763 -0.250 -0.277 -0.444

水を添加したメタノール浴において電流密度を変化させて電解を行い、 その際の陰 極から10μmの位置におけるpHを測定した結果を電流密度の関数としてFig.3.11 に示す。 また、 図にはその際得られた電析合金組成も併せて示した。 この図から分か るように、 正常型共析が起こっている低電流密度域においては、 陰極近傍のpHは浴 本体のpH3よりは上昇しているが、 Zn水酸化物の生成域にまでは達していない。

一方、 合金電析挙動が正常型から変則型へ移行する転移電流密度以上になると、 陰極 近傍のpHはZn 水酸化物の生成域付近まで達している。 なお、 比較的高い電流密度 域でpHが停滞しているのは、水酸化物生成によるpH緩衝作用のためと考えられる。

(13)

100 80 60 40

20

岡、,圃血

、司圃"",

o ω a ω園,

80

z

60

.-

喝喝E ω 園園,a

40

o z o

20

z

。 80 60 40 20

101

6

H20;

3 vol.%

5

4

3 6

5

4

3 6

H20;

20 vol.%

� 5

CRL一一ー

1�

Current Density (AI m2)

4

3

103

τ£。0 3 = 喝伺圃,

。‘。..

.=E 岡h

ω

-ーc

a

Fig.3.11 Effect of current density on the alloy composition and on the pH in the vicinity of cathode during ZrトNi alloy deposition from the methanol baths containing 3-20 vol. % of water.

(14)

3.4 塩化物イオンの影響

鉄族金属にはその平衡電位で電析を開始しないという属性があることは既に述べた。

平衡電位より卑であるが電析開始電位より貴な電位域において、 電析に対する熱力学 的駆動力が存在しているにも拘らず、 鉄族金属が電析しないのはその電析速度が極め て遅いためである。 したがって、 電析速度を促進する触媒が存在すると、 電析開始電 位は熱力学的平衡値に向け復極する。 福島ら8)は水溶液系の硫酸塩浴、 塩化物浴およ びこれらの混合浴からのNi電析の部分分極曲線が浴中の塩化物イオン濃度の増加と 共に貴な方向へ移行することを報告している。 このような触媒効果は電析開始に要す る最小過電圧の原因となる遅い素過程が変更されたためで、 アニオンブリッジング効 果といわれている9)。 塩化物イオン以外に、

s-

N-

化合物10-12)、

M0042ーやRe04ー

など0・化合物ωも鉄族金属の電析に対し触媒として作用し、 温度上昇も同様な効 果を有するω。

塩化物イオンの影響を調べるために、 基本浴に水を 20 vol.%添加したメタノール 浴を用いて、 電析合金組成に及ぼす塩化アンモニウム濃度の影響を調べた結果を

Fig.3.12に示す。 図から分かるように、 塩化アンモニウム濃度の増加と共にNi含有

率がCRLの下部に位置する変則型共析域が高電流密度側へ移行し、 異常性の程度が 弱くなっている。 このことは、 浴中の塩化物イオンがNiの電析に対し触媒として作 用することによって、 その電析を促進させた結果として理解できる。

Fig.3.13に、 基本浴に水を20 vol.%添加したメタノール浴からのZn-Ni合金電析 の際の電析合金組成の電流密度依存性に及ぼす塩化テトラエチルアンモニウム、 臭化 テトラエチルアンモニウムおよびヨウ化テトラエチルアンモニウム添加の影響を示す。

図中には比較のために添加剤を含有しない浴における電析合金組成変化も併せて示し た。 いずれのハロゲン化合物を添加した場合も水溶液における変則型共析に特有な領 域1---..,皿が認められるが、 ハロゲンイオンによる触媒効果の程度は、

Cl->Br->rー

の)11貢となった。

(15)

100

三80

ω O

g- 60

0

E MEO一-zoυ一Z

40

NH4CI content;

o 0.25mollL

・ 0.50mollL ム 1.0 mollL

-- CRL一一一一一一一

20

101 102 103

Current Density

(AI

m2)

Fig.3.12 Effect of additive ammonium chloride on the current density­

dependence of the content of Ni in deposits in the methanol bath containing 20 vol. % of water.

100

,、\

M.圃a.、・、h

80

60

E

-H E E O

40

υ

20

z

101

o (C2H5)4NCI

・(C2H5)4NBr ム(C2H5)4NI

開閉 Additive-free

102 103

Current Density

(AI

m2)

Fig.3.13 Effect of additive halogen compound on the current density­

dependence of Ni content in deposits in the methanol bath containing 20 vol. % of water.

(16)

3.5 結言

水溶液からのZn-鉄族金属合金電析における水の役割を検証するため、 非水溶媒浴 に種々の含有率となるように水を添加し、 その際の合金電析挙動の変化について検討 し、 以下の結論を得た。

水を添加していくと、 電析物中の鉄族金属の含有率は大きく低下した。 そして、 水 を含有する浴からの合金電析はより卑なZnが優先電析する異常型共析となり、 さら に合金の鉄族金属含有率の電流密度依存性は水溶液のそれと一致した。

次に、 合金電析の際の部分分極曲線に及ぼす水添加の影響を調べた結果、 水の添加 による Zn 電析の促進と共に、 Ni電析の大きな抑制が異常共析を引き起こしている ことが分かった。 また、 水添加非水溶媒浴において変則型共析が起こる場合、 陰極層 pHはZn 水酸化物生成の臨界値に到達していることが分った。 さらに、 鉄族金属の 電析触媒として知られている塩化物イオンが Zn-Ni合金電析に及ぼす影響を調べた 結果、 塩化物イオン濃度の増大とともに合金のNi含有率がCRLの下部に位置する 電流密度域(変則型共析域)が高電流密度方向へ移行し、 変則性の程度も弱まった。

以上の結果はいずれも、 水溶液からのZn-鉄族金属異常共析機構として提唱されて いる水酸化物抑制説の妥当性を示すものであった。

参考文献

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(18)

第4章 Zn-Cr合金電析における水の役割

4.1

緒言

第2章においては、 非水溶媒という特殊な溶媒がZn-Cr合金電析に大きく影響を 与え、 高Cr3+イオン濃度の浴においては、 ポリエチレングリコールを含む水溶液の 場合と同様に、 Znの電析が大きく分極することによりZnが金属Crと共析すること

を述べた。 福島ら川ま、 Zn-Cr 合金電析機構に関する一連の研究を行い、 ポリエチ レングリコール添加浴においては、 界面pHの上昇に伴いZn と Cr の複合水酸化物 が生成し、 この複合水酸化物から合金が電析するが、 その際ポリエチレングリコール はCrが電析可能となる陰極電位を達成させる分極剤として作用すると報告している。

一方、 非水溶媒浴中の水は浴調製に使用した金属塩試薬の結晶水のみに由来してお り、 水溶液の場合と比較して水素析出反応およびそれに続くZn水酸化物の生成反応 が大きく抑制されることが予想される。 本章では、 水を混合した溶媒を用い、 これら の浴から のZn-Cr合金電析を行い、 電析過程における水の役割を検討する。

4.2 実験方法

基本浴組成および電解条件をTable

4.1に示す。

基本浴組成は第2章のものと同じ であるが、 合金電析挙動に及ぼす水の影響を調べるために、 意図的に図中に示した割 合となるように溶媒と水を混合した浴を作成し、 電析実験を行った。 また、 本文中で 特にことわら ない限り水の添加濃度は20 vol%である。 なお、 無水塩化亜鉛の溶解度

Table

4.1

Standard electrolysis condition.

Bath composition ZnC12 0.2 mol/L CrC13・6H20 0.8 mol/L Solvent;

CH30H + H20(0�90vol

%)

DMF+ H20(0�90vol

%)

Operating conditions*会 Cathode Cu (2 cm2) Anode Pt (4 cm2) Amount of Charge

40C/cm - Temperature 30 oC 会会Galvanostatic, Quiescent bath

(19)

を考慮して、 電解液のpHは水溶液からのZn-Cr 合金電析を行う場合と同様の 2.0 に調整した。

電解は、 定電流密度で行い、 所定の電気量を通電した。 また、 得られた電析物中の

Crの化学状態をESCA (島津製作所(蜘ESCA - 3200)により測定した。 測定に際して は、 Mg-K α線を用い、 電析物表面の再酸化等による汚染を除くため、 種々の時間ア ルゴンスバッタを行った。 また、 合金電析浴中の Cr3+の溶存状態を調べるために、

光路長10 mmの石英セルを用い、 可視吸収スペクトルを測定した。 使用した分光光 度計は日本分光(械製ダブルモノクロメータV-560DS型である。

4.3 非水溶媒浴への水添加によるZn圃Cr合金 の電析挙動の変化

まず、 有機溶媒に種々の割合で水を添加した浴から得られた電析物中のCr含有率

の電流密度依存性について調べた。 Fig.4.1 および Fig.4.2 に、 メタノール浴および DMF浴における電析合金組成に及ぼす水添加の影響を示す。 図から分かるように、

いずれの浴においても水添加によりCr含有率が低下するが、 その傾向は低電流密度 域において著しい。 ここで、 Fig.4.1およびFig.4.2に示したCr含有率は金属Cr が 共析したとして求めたものである。 一方、 単純硫酸塩水溶液からの電析の場合は、 Cr は金属状態まで還元されないことが既に報告されているト3)。 したがって、 この水を 添加した非水溶媒浴においてもCrは金属状態、まで還元されていない可能性がある。

そこで、 メタノール浴および DMF浴において浴中のCr3+イオン濃度比を変化させ て電析を行ない、電析物中のCrの化学状態をESCAにより調べた。その結果をFig.4.3 にまとめて示す。 なお、 電解したままの状態の電析物中のCr は、 大気による再酸化 のためか、 すべての場合において3価の状態であったので、 図には5 分間アルゴン スバッタした後のESCAスペクトルを示した。

図より、 メタノール浴の場合、 浴中の Cr3+イオン濃度比が50 mol%以下の場合に は電析物中のCrは3価の状態で、未還元のまま電析物中に存在した。 一方、 浴中Cr3+

イオン濃度比が高く、 したがって電析物のCr含有率が高い場合にはCr は金属状態 で共析していることが分かる。 一方、

DMF浴の場合には、 浴中Cr3+イオン濃度比が

高い浴から得られた電析物においてもCr が 3価の状態と思われるピークが認められ た。

(20)

水溶液からのZn-Cr合金電析においては、 電析物にCrを十数%含有する場合で あっても、 ポリエチレングリコール等の有機添加剤が浴中に存在しない場合、 Cr は 金属として共析しない 1,ぺまた、 ポリエチレングリコールを添加した浴からの電析 物でも、 Cr が金属として含有されるのはせいぜいその含有率が40mass%程度まで であって、 これ以上Cr含有率を増加させるとCrは一部酸化物(Cr3+)として存在する

ようになる。 したがって、 メタノール浴から極めて高い Cr 含有率のZn-Cr合金が 得られることは極めて興味深い現象といえる。

Fig.4.4には、 71<を種々の割合で添加したメタノ-ル浴(Cr3+イオン濃度比80 mol%) から電流密度2kA/m2で得られた電析物中のCrの化学状態をESCAで調べ た結果を示す。 図より、 水の添加量が少ない浴からの電析物中ではCrは金属として 存在するが、水を30 vol%以上含有する浴ではCrは金属まで還元されることはなく、

電析物中では3価の状態で存在することが分かった。

また、Fig.4. 5には、 同じ組成のメタノール浴における電流密度1kA/m2での合金 電析の電流効率に及ぼす水添加の影響を、ZnおよびCrの部分電流効率と共に示す。

図より、 水添加量が少ない領域では、 水含有率の増大と共にCrの部分電流効率は急 激に低下し、 それに伴い全電流効率も大きく低下していることが分かる。 さらに、 水 添加量が 30 vol%を越えると、 Cr の部分電流効率は低いレベルで一定となり、 むし

ろZnの部分電流効率が増加するので全電流効率はやや増加する傾向を示す。 しかし ながら、 水30 vol%以上ではCrは3価の状態のままで存在するので、 Crの部分電流 効率は水30 vol%でほぼ零となり、 全電流効率はZnの部分電流効率と一致するもの と思われる(図中の破線を参照)。

次に、 電析物の表面形態に及ぼす水添加量の影響を調べた。 水添加量 10および 20vol%と比較して水無添加およびCr3+イオン濃度比50mol%浴から得られた電析物

のSEM像をFig.4.6に示す。 水無添加浴から得られた電析物の結晶は細かく、 平滑 な表面であるのに対し、 Cr3+イオン濃度比が50

mol%浴および水を添加した浴では、

Cr が金属状態で存在していないためか、 粗い電析形態を呈した。 事実、 肉眼観察に おいても、 水を多く添加した浴からの電析物は粉末状の黒色電析物となった。

(21)

100

MeOH

{ 旨倒閣帽'

E

80

、『圃, 60

... o a 曲

Volume% of water;

c 40

0 -恒0 E 曲E d

口10

ム20

20

。30

‘-

200 500 1000 2000 5000

Current Density (Alm2)

Fig. 4.1

Effect of curreot deosity

00

the cooteot o

f Cr

io deposits o

b

t

ai

oed

from the methaool baths containing various amounts of water.

100

80

\ M

、町-\ hh

..

Eqd

B

60

z

0 H

H Z 由Z 0

40

20

200

Volume%

of water;

ム20 口10

。30

500 1000

Current Density (Alm2)

2000 5000

Fig. 4.2 Effect of current density on the content of Cr in deposits obtained from the DMF baths containing various amounts of water.

(22)

∞。

MeOH DMF

(a) Cr3+ 0.9 mollL (93.3 mass% Cr)

「V I l

- -

一 c 「 V I lli-- u -lri ll---

(a)Cr3+O.8moVL (99.6mass%Cr)

590

( d)Cr3+O.2moVL (伊.7massO(oCr) 570 565

(.コ.sb一ωcsc-

580 575 (d) Cr3+ 0.1 mollL

(0.5 mass% Cr)

595 590 580 570 565

Binding Energy (eV)

Fig.4.3 ESCA spectra of Cr in deposit obtained from the methanol or D恥fF baths containing various amounts of Cr'+ ions.

Binding Energy (eV)

(23)

(・コ・伺)、Z一ωzω担E

「ω

(a) 0 vol.% 01 water (93.3 mass% 01 Cr)

(c) 30 vol.% 01 water (79.2 mass% 01 Cr)

595 590 585 580 570 565

Binding Energy (eV)

Fig.4.4 ESCA spectra of Cr in deposits obtained from the methanol baths containing various amounts of water.

(24)

、,いF岡hh,,

E

-z 曲

υ

o Total

口 Zn

30 l---\'

ム Cr

20

10

。 20 40 60 80 100

Content of Water (vol %)

Fig.4.5 EfTect of water content in baths on the current

efficiency at

1

kA/m2•

(25)

10 vol. %H20 Cr3+ : Zn2+ = 9 : 1

50 vol. %H20

Fig.4.6 Surface morphology of deposits obtained from the methanol baths of various water contents.

(26)

4.4 Zn-Cr合金電析過程

4.4.1

非水溶液におけるCr3+の形態とCr電析の可能性

非水溶媒浴からの Cr の電析に関して一連の研究があることは既に述べた問。 そ の中に、 塩化クロム(III) 6水塩を各非水溶媒に溶解させた場合のCr3+イオンの溶存状 態を可視吸収スペクトル測定によって調べた結果の報告がある。 それをFig.4.7に引 用して示す。 図に示したように、 Cr3+は水溶液中では 407および 575 nmに極大吸収 を持つヘキサアコクロム(III)イオン[Cr(OHんp+を形成するが、 メタノ-ル溶媒中で は 460および640nmに吸収ピークを有するtrans型のジクロロテトラアコクロム(III) イ オ ン とし て 存 在 し 、 こ れはメ タ ノ - ル 分 子 と弱い静電的引力で 結合し て

([Cr(OH2)4C12" .r…n-X, X:メタノール ) の形態で存在する6)。 また、 DMF溶媒中 では、 470 および 646 nm に吸収があり、 長波長側にシフトしていることから、

[Cr(OH2)4C12rイオンにいくらかDMF分子が溶媒和した([Cr(OH2)4C12"']+"'n -X,

X:DMF)状態、で存在している5)。 さらに、 水溶液からCrは電析せず、 メタノ-ル溶

媒からは光沢性の金属 Crが電析することから、 溶媒中でのCr3+がこの種のイオンと して存在することが光沢Crめっきを得るために必要であると考えられる6)。

そこで、 上記研究と同様に可視吸収スペクトル測定を行い、 Zn-Cr 合金めっき浴 における Cr3+の溶存状態を検討した。 水を種々の割合となるように添加したメタノ

ール浴および、DMF浴 (Cr3+イオン濃度比80 mol%)のスペクトルを浴調製直後に測定 した結果をFig.4.8 およびFig.4.9に示す。 なお、 図には第2 吸収帯の 600 nm前後 の波長域を拡大して示している。 Cr3+イオンは配位子交換速度が極めて遅いため、 水 50 vol%を含有する溶液と同様メタノールを含まない水 100 %の溶液においても [Cr(OH弘] 3+の吸収とは一致せず、 605nm付近に吸収ピークを示した。

錯体中の水分子1個が塩化物イオンと置き換わると、 極大吸収波長は約30nm長 波長域にシフトする6)ので、 水 50 vol%以上含む溶液では[Cr(OH2)5C1] 2+の組成 の錯 体が生成している可能性もある。 一方、 Crが金属状態まで還元される水 30 vol%以 下のメタノ-ル浴では、 いずれも 630�640nm付近で吸収を示すことから、 塩化物 イオンが2個、水分子が4個配位したジクロロテトラアコクロムイオン[Cr(OH2)4C12r が生成していると考えられ、 さらに、 筆者らが予想したCr単狙電析において金属状 態まで還元可能な錯体6)(trans 型のジクロロテトラアコクロム(III )イオンがメタノ

(27)

I CrCI3・6H20 I

t=∞ t=o

t=∞

IH20 IROH I と

575nm

。。

υ、

605nm

+

円/」C一

一則 げ川一門ヨ O一向

ハU一

635nm 640nm CI

665nm CI

[Cr(OH2)6]3+

I violet I

CI CI

CI trans

[Cr(OH2)4C12]+

I green I

[Cr( OH2)3CI3]O

l greenish yellow �

in 12M-HCI 646nm

CI

[Cr(OH2)4C1]+---圃DMF

green

Fig.4.

7

Schematic diagram of various types of aquo-chromium complex persent in the H20

ROHandD島fF solvents.

(28)

、\ ~一

、、E\

‘J、

ゆ\

‘、\、\\

0・、\

~い\4、‘、

、、 、 E1v

,/ケ叫MけU/ Iffヴ,Jf

bんζ 23・川、\、

‘ ー

W一一ぺ

Volume % of Water;

1. 0 2. 10 3. 30 4. 50 5. 100 MeOH

1.5

1.0

0.5

。QC伺a』Oωad司

600

Wave Length (nm)

Fig. 4.8 EfTect of water content in methanol baths on the absorption spectra of CrJ+.

800 700

0 500

800 1

Volume % of Water;

1. 0 2. 10 3. 30 4. 50 5.100 DMF

1.5

0.5

500 1.0

ouE伺a』Oωad司

Fig. 4.9 Effect of water content in DMF baths on the absorption spectra of CrJ+.

(29)

ール分子と弱い静電的引力で結合たもの、[Cr(OH2)4Clf-r--n-X, X:メタノール) が主たるイオン種であることも考えられる。一方、 水を添加しないDMF浴は64 5nm 付近に吸収ピークを示すことから、[Cr(OH2)4C12rイオンにいくらか DMF 分子が溶

媒和した状態で存在している。 しかし、 水10 vol%添加することで約30 nmだけ短 波長ヘシフトし、 605 nm付近に吸収ピークを示すことから、[Cr(OH2)5C1y+イオン (青緑色) で存在していると考えられる。 Cr が3価の状態のままで電析物中に存在 するのは、 溶媒中の Cr3+がこの構造を有したイオン種として存在することよるもの かも知れない。

4.4.2

Zn-Cr合金電析に及ぼす水の影響

前節までに、 浴中の水含有率が30 vol%以上になるとCrは金属まで還元されるこ

とはなく、 電析物中では3価の状態で存在することが分かった。 本節では、 Zn-Cr が合金 (Crは金属状態)として電析する際の水の役割を検討する。

Fig.4.10およびFig.4.11

に、 Cr3+

80 mol%のメタノール浴およびDMF浴からの 電析の際のZnの部分分極曲線に及ぼす水添加の影響を示す。 図より、 合金電析の際 のZnの部分分極曲線は、 水添加量が0および10 vol%の場合は、 ほとんどの電流密

度で陰極電位が -1.1 Vより卑な領域にあり、 金属Crの電析電位を達成していること が分かる。 しかしながら、 水の添加量が増大するとZnの部分分極曲線は大きく貴な 領域に移行し、 水100%ではZnの電析はほぼその平衡電位から始まった。 したがっ て、 浴中の水含有率が高い場合には、 金属 Cr の電析電位より貴な電位で、 Zn 電析 が起こり、 同時に水素析出による陰極層pH上昇により生成したCr3+の加水分解生成 物が電析物に取り込まれているものと思われる。

一方、 前節においては、 71<無添加のメタノール浴において Zn2+イオン濃度比が高 い場合に得られる電析物中には、Crは金属状態として共析していないことを示した。

したがって、 もし、 Cr3+の金属までの還元が浴中の錯体の構造に依存しているものと すれば、 Zn2+イオン濃度比によってCr3+の錯体の構造が異なっているとも考えられる が、 金属イオン濃度比を変化させても、 Cr3+の吸収は640nmから変化しなかった。

また、 浴中の金属イオン濃度比あるいは水含有率を変化させた場合のいずれもZn-Cr 合金が得られる条件下では、

Zn

の電析が大きく分極した。 福島らが行った水溶液か

(30)

らの電析実験結果から、Zn-Cr合金の電析過程の中間段階としてZn2+とCr3+がmol比 2:1で存在する複合水酸化物が生成し、 この複合水酸化物を経由して電析が進行し ていることが予想された1)。 したがって、 上記Zn電析の分極現象についても、 この ような中間生成物の存在の有無あるいは構造との関連においてさらに検討を加える必

要がある。

Raubは、 水溶液からのZn電析において、 水酸化物を経由することによりその電 析過電圧は減少することを報告した9)。 このような観点から、 当然浴中に水を含有す る場合、 Zn 水酸化物から貴な電位で電析が起こり、 浴中の水含有率の低下とともに Zn電析は分極することも予想され、 Fig.4.10の結果と一致する。 しかしながら、 水 無添加浴における Cr3+イオンの濃度比の増加によるZnの分極現象は、 Cr3+イオンの 濃度比に比例して試薬から持ち込まれる水の量は増加しており、 水酸化物生成による 分極挙動の変化では説明できない。

(31)

く〉

Volume % of water;

10 50 o 100 102

10

(NE\《)EN』O企一ωCOOMCO』』コυ一畑一七偲色

-1.5 -1.4

-1.3 ー1.1 ー1.2

ー1.0 100

圃0.9

Cathode Potential (V

vs.

AgJAgCI)

Effect of water content in baths on partial polarization curve of Zn from methanol baths.

Fig.4.11

103

Volume%

of water;

10 50 o 100

ぴ (NEミ)EN』ob一ωCOOMEO』』コυ一周一七回色

-1.0 ・1.2 ・1.4 ・1.6 -1.8 ・2.0

Cathode Potential (V

vs.

AglAgCI)

100

Fig. 4.12 Effect of water content in baths on partial polarization

(32)

4.5 結言

メタノ-ルおよびDMF溶媒に水を混合した浴からのZn-Cr合金電析を行い、 電 析過程における水の役割を検証し、 以下の結論を得た。

Crの電析挙動に及ぼす合金 浴への水添加の影響を調べた結果、 溶媒中の水含有率 高くなるとCr3+イオンは金属まで還元されず、 3価の状態で電析物中に存在すること が分かった。 さらに、 金属状態で Crが電析する条件下ではZnの電析は大きく分極 した。

合金浴中における Cr3+錯体の構造を調べた結果、 Zn-Cr合金が電析可能な浴組成 では、 Cr3+はジクロロテトラアコクロム(III )イオンとして存在するものと思われた。

したがって、 溶媒中の水の存在 は Cr3+のイオン種の形態を変化させ、 このことが Cr3+イオンの電気化学的活性度に影響を与え、 高Cr含有率の合金の電析を可能にし ていることが予想された。 一方、 水溶液中において予測されている Zn2+およびCr3+

の水酸化物生成の有無が、 非水溶媒からの合金電析に影響を与えていることも予想さ れたが、 詳細は不明であった。

参考文献

1) YeLin, 大貝 猛, 秋山徹也, 福島久哲, 山内祐樹:表面技術,47(1996) ,P868 2) AFukuda,K.Arai,S,Suzuki and T.Kanamaru : CAMP-ISIJ,4(1991),P1602 3) S.Suzuki, T.Kanamaru, K.Arai and AFukuda : CAMP-ISIJ,4(1991),P68

4) T. Ohgai,J -S.Ki,T.Akiyama,HFukushima;Proc.Int.Symp.sponsored by Process Fundamentals Committee of TMS, (l998)'p225

5) 津留喜昭, 小林繁夫, 藤山純一, 乾 忠孝:金属表面技術,33(1982)'p402 6) 津留喜昭, 小林繁夫, 乾 忠孝:金属表面技術,33(1982),P608

7) 津留害昭, 小林繁夫, 楠原公規, 乾 忠孝:金属表面技術,34(1982)'p12 8) 津留喜昭, 小林繁夫, 楠原公規, 乾 忠孝:金属表面技術,34(1982)'p493 9) E.Raub:Plating and Surface Finishing,63(1976)'p29

(33)

第5章 総 括

水溶液からのZn-鉄族金属系合金の電析は高耐食性Zn合金めっき鋼板の製造に利 用されている技術である。 本合金系の電析は、 Zn が鉄族金属に比べ卑な金属である にも拘わらず鉄族金属より貴な金属として挙動するという変則型共析挙動を示す。 こ の変則型共析機構に関しては活発な研究が行われ、 多くの仮説が提案されている。 例 えば、最も有力な機構と見なされている水酸化物抑制説は、水素析出に伴う陰極層pH の上昇によりZn水酸化物が生成し、 鉄族金属の電析を抑制した結果、 共析金属の貴 度の逆転が起こるというものである。 一方、 Zn-Cr系および Zn-Mn系合金を鋼板上 へめっきすることにより防錆能を向上させた表面処理鋼板も開発されている。 このう ちZn-Cr系合金においては、 陰極近傍のpH上昇によりZnとCrの複合水酸化物が 生成し、 この水酸化物を経由してZn とCr が金属まで還元されるという電析機構が 提案されているが、 不明な点が多い。 一方、 Zn-Mn 系合金の電析は貴な Zn の拡散 限界下で Mn電析が進行する正常共析となることが知られている。

水を溶媒とした電解浴からの金属電析においては、 一般に、 水素析出による電流効 率の減少がエネルギ一効率の低下をもたらすだけではなく、 水素イオンが電析反応の 機構そのものに関与する場合が数多く認められ、 前述のZn-鉄族金属系およびZn-Cr 系の合金電析がそれに該当する。 したがって、 これら金属水酸化物を経由した合金電 析は、 水以外の溶媒を用いることにより、 異なる挙動を示すことが考えられる。

本研究は、 種々の非水溶媒および、非水溶媒と水を混合した浴から上記Zn系合金を 電析させ、 それらの電析挙動を詳細に検討することにより、 これら合金の電析過程に おける水素イオンの役割を明確にしようとするものである。

第1章では、 本研究の背景と目的に加え、 非水溶媒浴からの金属電析における特 徴を総括して述べた。

第2章では、 種々の非水溶媒浴を用いてZn系合金の電析を行い、 その電析挙動に

(34)

合金電析に関しては、 いずれの浴においても広い電解条件下で各金属本来の貴度が反 映された正常型共析となることが分かった。 このことは、 Zn 水酸化物が生成し難い

条件下では変則型共析が起こらないことを示しており、 水溶液におけるZn-鉄族金属 系変則型合金電析機構として提案されている水酸化物抑制説の妥当性を支持する結果

である。 次に、 メタノールおよびDMF浴からのZn-Cr合金電析について検討した。

本合金の電析においては、 浴中のCr+イオン濃度比が高くなると高Cr含有率のZn-Cr 合金が得られるという水溶液では観察されない現象が認められた。合金電析の際のZn およびCrの部分分極曲線を単独電析のそれらと比較したところ、 Crの場合はほとん

ど変化は認められないのに対して、 合金浴からのZn電析は、 単独浴からの電析に比 べ大きく分極することが分かった。 このように水溶液からの合金電析が Znと Cr の 複合水酸化物を経由して進行する本合金系の電析は非水溶媒浴において大きく異なっ たものとなることが明らかになった。 さらに、 Zn-Mn合金電析に関しDMF浴を用い て検討した。 本合金系の電析は、 まず貴な金属である Znの電析が平衡電位付近で開 始し、 その電析が限界電流となって卑なMnの電析が開始することにより合金が得ら

れるという典型的な規則型共析の特徴を示した。 このように

Zn-Mn合金電析におい

ては、 Zn水酸化物が Mn 電析に影響を及ぼす要因が存在しないので、 水溶液からの 本合金系の電析挙動と一致した。

第3章では、水溶液からのZn-鉄族金属合金電析における水の役割を検証するため、

非水溶媒浴に種々の含有率となるように水を添加し、 その際の合金電析挙動の変化に ついて考察した。 非水溶媒浴に水を添加していくと、 電析物中の鉄族金属の含有率が 大きく低下した。 そして、 水を含有する浴からの合金電析はより卑なZnが優先電析 する異常型共析挙動となり、 さらに合金の鉄族金属含有率の電流密度依存性は、 水溶 液のそれと同様に、 特徴的な4つの領域に分けられた。 また、 前述の関係を部分分極 曲線を測定し考察した。 水溶液からのZn-鉄族金属合金電析機構として提唱されてい る水酸化物抑制説によると陰極近傍の水素イオンの枯渇により生成したZn水酸化物 の陰極上への吸着が鉄族金属の放電サイトを占有することにより鉄族金属の電析が抑 制される。 非水溶媒浴においては、 水溶液に比べて、 水素析出反応およびそれに続く

(35)

Zn 水酸化物の生成反応が大きく抑制されることから、 貴な鉄族金属が優先電析する 正常型共析挙動を呈すると考えられ、 これは水酸化物抑制説の妥当性を示す ものであ ると結論した。

第4章では、 メタノ-ルおよびDMF溶媒に水を混合した浴からのZn-Cr合金 電 析を行い、 電析過程における水の役割を検証した。 Cr の電析挙動に及ぼす 合金浴へ の水添加の影響を調べた結果、 溶媒中の水 含有率が高くなるとCr3+イオンは金属ま で還元されず、 3価の状態で 電析物中に存在することが分かった。 さらに、 金属 状態 でCrが電析する条件下では Znの電析は大きく分極した。 また、 合金浴中における Cr3+錯体の構造を調べた結果、 Zn-Cr合金が電析可能な 浴組成では、 Cr3+はジクロロ テトラアコクロム(III )イオン として存在するものと推察した。 したがって、 溶媒中の 水の存在はCr3+ のイオン種の形態を変化させ、 このことがCr3+イオンの電気化学的 活性度に影響を与え、 高Cr含有率の合金の電析 を可能にしていることが予想された。

(36)

謝辞

本研究論文をまとめるに当たり、 終始ご懇切なご指導を賜りました九州大学大学 院工学研究科物質プロセス工学専攻教授 福島久哲博士に厚くお礼申し上げます。 さ らに、 有益なご助言とご指導を賜りました九州大学大学院工学研究科材料物性工学専 攻教授 林 安徳博士、 九州大学大学院工学研究科物質プロセス工学専攻教授 森

克巳博士に厚くお礼申し上げます。

九州産業大学工学部教授 秋山徹也博士、 同教授 津留誇昭博士、 吉永俊一博士 には貴重なご助言を賜りましたことに対して深く感謝いたします。

また、 本研究を遂行するに当たり、 深いご理解とご支援をいただきました九州産業 大学理事長 楢崎 健次郎先生、 ならびに大学関係者の方々に心よりお礼申し上げま す。

本研究の実施に際して九州大学大学院工学研究科物質フロセス工学専攻助教授 中 野 博昭博士、 大貝 猛博士、 大上 悟氏には絶大なるご協力をいただきました。 心 より感謝いたします。

最後になりましたが、 学位論文作成において礎となった九州産業大学に深く感謝の 意を表します。

(37)
(38)

Table  3.1  Standard electrolysis conditions.
Table  3.2  Critical pH  value for  the  formation of  metal  hydroxide  and standard single  electrode  potential  of each metal
Table  4.1  Standard electrolysis condition.
Fig.  4.1  Effect of curreot deosity  00  the cooteot o f  Cr  io deposits o b t ai oed
+3

参照

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