〈論 説 〉
背 骨 な きGATT*
鳴 瀬 成 洋
目 次
1.背 骨 な きGATT
2・GATTの 成 立 一 一多 角 主 義 破 綻 の 裏 面 一̲̲
3・GATTの 構 造 3.1関 税 シ ス テ ム 3.2非 関 税 措 置 4.国 際 通 商 と 法
4.1相 互 主 義 のUG一 ケ ネ デ ィ ・ラ ウ ソ ドー一一 4.2コ ー ド主 義 の 功 罪 一 一東 京 ラ ウ ソ ドー‑
5・GATT相 互 主 義 ル ー ル の 欠 文
L背 骨 な きGATT
内 側に 向か っては,国 家 と して編 成 され ね ば な らない市 民社 会 は
,外 側 に向 か っては,国 民 性 と して お のれ を認 め させ よ うとす る
。 互 い に矛盾 す る多様 な 私的利 害 の 中 の特定 の私的 利害 に普 遍 性 の形 式 を付与 す る こ とに よって成 立 す る共 同的利 害 は,対 外 的 には 国益 とい う姿 を とって現わ れ る
。 それ が世 界 経済 にお い て国 家主 義 の激突 を 生む。 国家 間 の利害 の相克 は そ の裏面 で は
,種 々の 条 約 の締結 へ と諸 国 を導 く。 多様 な形態 の二 国 間 通商 条約 の網 の 目が 張 り巡 ら
*本 稿 は,1988年6月25日 に行 った神奈川 大学経 済貿 易研究所公 開講演 会(主 催神 奈川 大 学繍 賜 研究所)で 傭 灘 もとに ま とめた ものであ る
.資 料 に関 して壱まs 大蔵 省関税 局国際 第一 課の鶴巻嘉一 氏に お世 話にな った。 記し て感 謝 申し上げたい。
なお 本稿のすべ ての責任は 私 自身にあ る ことを確言 してお く。
34商 経 論 叢 第25巻 第1号
され た世 界経 済 に,そ れ 全体 を統括 す る協 定 ・ルー ルが策 定 された ことが ・戦 後世 界 経済 の 新局面 の一つ で あ る。IMF協 定 とGATTを そ の 代 表 として挙 げ る こ とがで きる。
戦 間期 にお い て も,国 際連 盟 は 国際協 力 を促 進す るため の基 盤 を提 供 し よ う とした。 が,そ の意 図を実現 す るた め の 国際 的 フ レー ム ワー クを 確立 す る こと は で きなか った。 そ の下 で多 くの会議 が な された。 だ がそ こでは,無 差 別主 義 と自由貿 易 の有益性 が儀 式 的 に主 張 され た にす ぎず ・30年 代 の不 況 と戦 争へ と 世 界 を導 いた 貿 易障壁 と差別 措置 を 打 ち壊す ことは で きな か った。 それ に比 し, IMF.GATT体 制 と称せ られ る戦後世 界 経済 は,表1・ 表2に 示 され る よ う
に,生 産 の成長 率 を上 回 る輸 出 の成長 率 を実 現 した。 貿 易 主導 型成 長 と言 われ 表1世 界の商品貿易と生産の成長率(年 平均数量変化率)
1963‑7311973‑83119801981198219831984
輸 出
全 商 品 9 3 % 1 一3 3 9
農 産 物 4 3 7 4 一1 1 7
鉱 物Q 7}6 一2 一6% 一10 一6 一 ヱ 3
製 造 品 11苑 4% 5 4 一2 5 12
生 産
全 商 品 s 2 % 1 一2 2 5}玄
農 業 2% 2 0 4 2% 0 5
鉱 業 5蒐 7L 一2 一2 一7% 一1}6 2
製 造 業 7% 2% % % 一 ・2 3}砦 7}壱
(注)d燃 料 と 非 鉄 金 属 を 含 む 。 (出 所)GATT,Internation¢1Tr¢de1984/85・
表2輸 出 とGDPの 年平均成長 率
1913‑50 1950‑73 19739
出P
D
輸G
1.0 1.9
s̀・
4.9
n65
49臼
■
(注)数 値 は16力 国(オ ー ス ト ラ リ ア,オxト リ ア,ベ ル ギ ー,カ ナ タ,ア ン マ ー ク,フ ィ ソ フ ン ド,フ ラ ン ス,ド イ ツ,イ タ リ ア,日 本,オ ラ ソ グ,ノ ル ウ ェ ー ・ ス ウ ェ ー デ ン ・ ス イ ス ・ イ ギ リ ス,ア メ リ カ)の 年 平 均 成 長 率 の 算 術 平 均 を 示 す 。
(出 所)A.Maddison,PhasesOfCapitalistDevelopment,Oxford・OxfordUniversityP「ess, X9$7,Table3.2,Table3.7.
背骨 な きGATT35
る所 以 であ る。70年 代 後半 以 降,成 長 の エ ン ジ ン と し て の 貿 易 の力 は著 し く 弱 ま った がa30年 代 とは 異 な り,世 界 経済 の統一性 は維持 され てい る。 戦 間期
がf地 球上 の領土 的 分割 とそれ を ベ ース に した ブ ロ ック経 済 の形成 へ と先進 諸 国 を導 い てゆ く帝 国主 義 段階 で あ った のに対 して,戦 後 は段 階 として の帝 国主 義 が終焉 した時 期 であ る とい う歴 史段 階 の決 定 的相 違 を無 視 して,未 曽有 の不 況 か ら再 度 の世 界 戦争 へ の突 入 と高度成 長 の 実現 とい う二つ の 時期 の 正反 対 の 帰 結 を・ 国際連 盟 とIMF・GATTの 世 界経 済 を統 御す る力能 の相違 に帰す こ とは で きない。 しか しIMFとGATTは 戦後世 界 経済 の成長 と安定 に対 して 何 事 か を な しえた こ とは疑 い ない。 だ が,そ れ は 自由貿 易 を全世 界 へ 布教 して ゆ くこ とでは 決 して なか った。 そ うで なか った ことの証 左 には事 欠 か ない。 悲 しむ べ き こ とに・IMF協 定 に は,国 際機 関 を 介 した公 的 資金 の供 与 で は な く, そ の枠外 で双 務 的 な援助 とい う形 で ドル を 供与 す る ことに よって世 界 経 済 を再 編 す る とい うア メ リカの利 害 が,既 に織 り込 みず み で あ った。 不名 誉 な こ とに, GATTは 諸 国 の利 害 が 錯綜 す る領 域 をすべ て原 則 の例 外 とし,自 らの手 で 自
(1)
分 を 「法 律 の迷 路」(正egalmage)に して しま った。IMF協 定 とGATTに お い てs低 開 発 国の権 利 が付 随 的 な位 置づ け しか与 え られ て い ない のに 対抗 して, 果 敢 に もUNCTADの 採 った戦 略 は,自 由貿 易 の実現 を 阻ん でい る障害 を取
り除 いて ゆ く ことでは な く,低 開発 国 の経済 発 展 に資す るべ く,自 由貿 易に対 す る新た な麗 乱 要 因を世 界 経済 に 創 り出 してゆ くこ とであ った。 そ の際,低 開 発 国が特 に狙 いをつ け た のは,一 次産 品市 場 の カル テ ル化 と一 般 的特 恵制 度 の 創設 であ る。
以上 の こ とか ら・ 一 般 に な され て い る よ うに,IMFとGATTを 「先進 国 本位 の制 度」 と位 置づ け る こ とは正 しい。 また 「自由貿 易 の神 話」を 暴 き,「 自 由貿 易 は原則 で は な く便 宜 であ る」 と主 張す る こ と も,的 はず れ な こ とで はな
(2}
い。 だ が 「先進 国本 位 の制 度」,「自由貿易 の神 話」 とい う共 通項 を摘 出す るだ け に 留 まる な らば,IMFとGATTの 差 異 と特 徴を 捉 え る ことは で きない 。 差異 と特 徴 を捉 え る とい って もfIMFが 固定相 場 制 に基 づ く統 一 的為 替制 度 の維 持 を基 本 任 務 とし,GATTが 貿 易障 壁 を軽減 し,差 別 待遇 を除 去 しs世
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界 的 レ ヴ ェルで の 資 源 の 効 率 的 利 用 を 実 現 す る こ とを 目的 と し て い る こ とか ら, 自 由貿 易 を 維 持 し,多 角 主 義 を 支x..る に お い て,両 者 は 相 補 関 係 に あ る とい う 程 度 の 理 解 に 終 わ る の で は,何 に もな らな い 。 捉 え るべ き 差 異 と特 徴 とは,両
者 の 引 き 受 け る役 割 の 違 い 以 上 の こ とで あ る。
IMFとGATTは と もに 英 米 の 協 調 と対 立,妥 協 と 決 裂 の 中 か ら生 まれ た 。 だ が 成 立 の過 程,国 際 法 と し て の性 格,成 立 後 の 歩 み と い うす べ て の 点 で,両 者
は 極 め て対 照 的 で あ る。 そ れ ぞ れ 自国 の 利 害 を 整 合 的 に 体 現 し た ホ ワ イ ト案 と ケ イン ズ 案 の 角 逐 の 末,後 者 を ベ ー ス に し て 成 立 し たIMFは ・ 固 定 相 場 制 の 繍 を 第 一 の 目的 と し て お り,旧IMF協 定 は ・ そ の た め の灘 巌 務 と禁 止 の 規 定 に よ っ て 満 た さ れ て い る。 そ し てIMFは ・ 固 定 相 場 制 とい う原 則 を 破 壊 す る 困 難 に,様 々 の 国 際 通 貨 協 力 を も っ て 立 ち 向 か っ た。 だ が そ れ に もか か わ らず,1971年,ア メ リカの 金 ・ ドル 交 換 義 務 の 放 棄 に よっ て 潰 え て し ま っ た 。 これ に 対 し てGATTは,国 際 貿 易 機 構(lnternati・nalTradeO「ganization=
ITO)が 成 立 す る ま で の 過 渡 的 協 定 にす ぎな か った が,国 際 貿 易機 構 が 流 産 し た た め,自 由 貿 易 と多 角 主 義 の 守 護 神 の 地 位 丁,rt̲̲.,図らず も就 く こ とに な った 。 そ の 後GATTは 関 税 引 き下 げ を 進 め る 反 面 で ・GATT原 則 に 反 す る 問 題 に 武 器 を も っ て 立 ち 向 か うの で は な く,突 き付 け られ た 難 問 を 次 々 と外 に放 り出
し,世 界 貿 易 に お い てGATT原 則 の 及 ぶ 範 囲 を 自 ら 狭 め な が ら存 続 し て きた 。 だ が パ ラ ドキ シ カル な こ と に,多 角 主 義 を 維 持 す る 力 が 弱 く な る の に 比 例 し て,GATTは,多 角 的 貿 易 交 渉 の 歴 史 に 示 され る よ うに ・増 々 大 き な 役 割 を 担 わ され る よ うrrな っ て き て い る。40年 セこ及 ぶ 活 動 の 中 で ・GATTは これ ま で7 度 の 多 角 的 貿 易 交 渉 を 行 っ て き た。 主 要 な 交 渉 内 容 は,ケ ネ デ ィ ・ラ ウ ソ ドま
で は 関 税 引 き下 げ で あ った が,ケ ネ デ ィ ・ラ ウ ン ドで は そ れ と並 ん で 非 関 税 措 置 が 部 分 的 に 取 り上 げ られ,東 京 ラ ウ ン ドで は 非 関 税 措 置 が 議 論 の 中 心 とな っ た。 そ し て 現 在 進 行 中 の ウ ル グア イ ・ラ ウン ドに お い て は,従 来 の 交 渉 分 野 に 知 的 所 有 権f貿 易 関 連 投 資 措置,サ ー ビ ス貿 易 が 新 た)'YYL加x.られ,合 計15の 交 渉 分 野 が設 定 され て い る(表3)。GATTの 弱 体 化 とそ こ で の 交 渉 の活 発 化 とそ の 内 容 の多 様 化 とい うコ ソ トラ ス トを み て い る と,「 や っつ け 仕 事 ほ ど長 持 ち
背骨 な ぎGATT37
表3新 ラウ ン ド15交渉 分野
交 渉 項 司 交 渉 目 的 【
関 税 O関 税 の軽減 お よび撤廃
O関 税譲 許の範 囲の拡大
}
i非関税措置1・ 数量制限を含む非関税措置の轍 ・竸
y品1。 熱継 品に文搦 関税および夢闘 措置の轍 轍 廃 天然資源産品 ○天然 資源産品 貿易の最大 限 の 自由化の達 成
o天 然資源産品 に対す る関 税 ・非 関税措置 の軽減 ・撤廃 繊 維 o繊 維貿 易を ガ ヅ トに究極 的に統 合 し,一 層の貿 易 自由化を推
進す るため の方 策 の確立
農 業 O輸 入障 壁の低減 に よる市 場 ア クセスの改善
o貿 易に影響 のあ る補助金 に対す る規制 の拡充 O動 植物 検疫な どの規 制お よび障壁 の軽減
ガ ッ ト条項1。 現 行 ガ ッ ト徹 の賄 し と改 正
セー フガー ド1。 セー フガー ドに 関す るル ールの綻 と包括的 な合意作 り
MTN(̀7ル テ ィ
ラ テ ラ ル ・ ト レ ー ド ・ ネ ゴ シ エ ー シ ョ ソ)諸 協 定
o東 京 ラウン ド交渉時 に策定 され た協 定類 の改 善,明 確 化,拡 大
補助金 ・相殺措 置 O補 助金 ・相殺 措置に かかわ るガ ヅ ト規定お よび補助 金 ・相殺 措 置協 定の見直 し
紛争姻i。 ガ ッ トでの紛争羅 の規則および手続 きの鰭 強 化 知的所有権 O知 的所 有権の保護 のための ガ ッ ト規 定の 明確 化お よび新た な
規 則 ・規 律の作成
貿易関連投資措置 O投 資措 置の貿 易制限的 効果 とガ ッ ト条文 との関連の検 討 O投 資措 置が貿 易に 及ぼす悪 影響 を回避す るための新 たなル.̲..
ルの 策定
ガ ヅ ト体制 の機 能 o貿 易政 策な どに 関す る監 視機 能 の強化 Oガ ッ ト運 営へ の閣僚の参加
o通 貨 ・金 融に 関す る国際機 関な どとの関係強 化
サ ー ビ ス 貿 易 oサ ー ビス貿易拡 大のため の原則 お よびルー ルの多角的枠 組み の構築
(出 所)r朝 日新 聞』1988年9月16目 。
38商 経 論 叢 第25巻 第1号
(31
す る」(ガ ー ドナー)と い う文 句 以上に,GATTを 語 るのに至 当 な言葉 は ない と言 って よい。 だ が それ で済 ます わ けに は ゆ くまい。 首 尾一 貫 した構成 を もっ た 旧IMF協 定 が潰 えた のに対 し,「 や っつ け仕 事」 た るGATTが 今 日まで 存 続 してお り,そ し てそれ だげ で な く,GATT原 則 と世 界 貿易 の現 実 とのギ ャ ップが 日一 日 と大 き くな り,GATTの 存 在意 義 そ の ものが疑 わ し くな って い るに もか かわ らず,商 品 貿易 以 外 の領域 に もGATTの 支 配 を及 ぼす 動 きが 見 られ る。 何 故か 。 それ は 自由貿易 の 拡大 につ な が るのか。
この 問い に対 して よ くな され る 解 答 は,IMFと 対 照的 なGATTの 展 開は GATT成 功 の証 左 で あ り,成 功 の鍵 鍮は 運用 の弾 力性 に あ る,と い うもの で あ る。 だ が こ うい うモ チー フで描か れ るGATT像 は あ ま りに も淡 白 とい うも のだ。GATTの 下 で多 角的 貿易 交渉 が 活発 に行 われ て い るのは事 実 であ る。
しか し この事実 を もってGATTの 成 功 とい うのは早 計 で あ る。 交渉 の成 果 は GATT原 則 に よって もた らされ た ものか。 交 渉 を重 ね る 度 に來 雑物 が取 り除 か れ,GATT原 則 は強 化 され て い るのか。 運 用 の弾 力性 とは,む しろGATT 原 則が 侵害 され てい る こ との裏返 しで あ り,GATTが 自由貿 易 の 「空 虚 な主 体」 にす ぎな い こ とを示 してい るの では ない か。
先 の解 答は,GATTを 深 部 か ら捉}た うえ でな され た ものでは な い。 深 部 か ら とい うのは,世 界経済 の構造 とい う土 台 との関 係 で,と い うこ とで あ る。
それ は 「先進 国 本位 の制度 」,「自由貿 易 の神 話」 とい うあ りきた りのGATT 理 解 につ い て も同様 で あ る。IMFとGATTは 戦後 の 国 際経済 秩 序 を維持 す
るた め の上部 構 造 であ る。 両者 は世 界 経済 の構 造 とい う土 台 か ら生 み 出 され, それ を反 映 してい る。 だが,同 じ土 台 か ら生み 出され た上 部構 造 であ りな が ら, IMFとGATTの 間に は,あ らゆ る点 に おい て 以上 で述べ た 差異 が あ る。 旧 IMFが 潰 えた のに対 してsGATTは 存続 し てい るだ け で な く,依 然 として, 世 界 貿 易 を律 す る最 高 の ルー ルの地 位 に あ る。 この 際立 った 相違 は・IMFと GATTは 異 な る位 相 で世 界経 済 の構 造 を捉 え てお り,両 者 はそれ ぞれ が 捉 え た構 造 の論 理に 法 の衣 を着 せた もの であ る こ とを示 してい る。 ともに世 界経 済
の構造 が創 り出 した ものであ りなが ら,法 の衣 を一 枚 め くってみ るな らば,両
背骨 な きGATT39
者 の全 く違 った 肉体 が現れ て くる。IMFとGATTの 間 の あ らゆ る点 で の相 違 は ・両 者 の肉体 の違 い であ る。 だ が,IMFと 対照 的 なGATTの 展 開 は,IMF
に比 しGATTの 骨格 が 相 当の重量 に も耐 え うるほ どの強 靱 さを も って い る こ との証 しでは な い。 逆 であ る。GATTの 骨 格は 背 骨 を欠 い てい るので あ る。
そ うであ るが 故 に,GATTは 現 実 が どの よ うな形 を とろ うとも,そ れ に収 ま り うる。 そ し て ま た,そ れ 故 に,現 実 を 自らの原 則 に従 って統御 しax..ない の であ る。 それ をGATTの 柔構 造 と言 うべ きでは ない。 世 界経 済 の構 造 との関 連 でGATTを 捉 え る視 角 を もた ない が故 に,こ んな 甘い 理解 が 出 て来 るので あ る。 世 界 経済 を統 御 し うるには,国 際 法 は まず 自らが堅 固 な骨格 を備 えねば な らない。 しか しGATTは そ の中 軸 を 欠 い てい るので あ る。 「背骨 な きGA TT」,そ う,GATTに は この言葉 が 相応 しい。 私 は,GATT成 立 の経 緯, GATTの 構 造 とそ の活 動 を材料 に し,IMFと の差 異 を際立 たせ る画法 を用 い て,「 背 骨 な きGATT」 の 肉体 を描 きた い と思 う。
2.GATTの 成 立 多 角主 義 破 綻 の裏 面
戦後 世 界経 済 の基 本構 造 の形成 に おい て主 役 を演 じた のは,言 うまで もな く 英 米両 国 であ る。30年 代 の差別 的貿 易政 策 の横 行 と プ ロ ヅク経 済 の形成 が,世 界を再 度 の戦争へ と導い た こ との反 省か ら,両 国は世 界 市場 の統0の 回復 とい
う共 同的利 害 に立 つ こ とが で きた 。 そ の限 りで 両国 の協 力は 実現 しえた。 だが ア メ リカ と イギ リスの置 かれ た 正反対 の経 済 状態 は,多 角主 義 実現 の道 を巡 っ て,両 国 を激 しい対立 へ と導 いた 。戦 後,国 際収 支難 に 陥 る こ とが 明 らか な イ ギ リスに と っては,英 連 邦特恵 制 度 とス ター リン グ ・ブRッ クを維 持 し,差 別 政策 を続け る こ とは,国 際収支 の擁護 と経 済 の再 建 のた め には不 可 欠 であ り, 多 角体 制 の構築 は,債 権 国 ア メ リカが どこ まで そのた め の負担 を 引 き受 け るか にか か っていた。 そ もそ も多 角主義 は世 界経 済 の安定 す なわ ち イギ リス の再 建 を 前提 として成 り立つ ので あ り,そ のた め の費用 を ア メ リカが 高率 関税 の引 き 下げ と金融 的 援助 とい う形 で負担 す る ことが,多 角 主義 実現 の道 だ,と い うわ け であ る。 これ に対 して,既 に戦時 中か ら過 剰 生産 の 兆 しがみ}て お り,海 外
40商 経 論 叢 第25巻 第1号
の市場 開 放 が急 務 とな っていた ア メ リカは,ス ター リソ グ ・ブ ロ ック と英連 邦 特 恵制 度 とい う多角 主 義に 反す る要 素 で 固め られ てい る イギ リスが,そ れ を解 除す る こ とこそ 多角体 制 を築 く条件 だ とい う立 場 を譲 る こ とは で きな い。
大 西洋 憲章 が 発表 された1941年8月 か ら,ト ル ー マン大統 領 が 国際 貿易機 構 憲章 の議 会 に よる承 認 を得 る こ とを断 念 した1950年12月 まで の時期 は,英 米両 国に よって多角 主義 が 構想 され,そ れ を 実現 す るた め の機 構 と協定 が実際 に創 られ,さ らにそ れ らの機構 と協 定 の力だ け では決 し て多 角 主義 を 実現 しえな い こ とを思 い知 らされ た時 期 であ る。 多角体 制 を築 き上げ るため に は,債 権 国 と 債務 国の調 整 をサ ポー トす るた め の制 度がs金 融面 と通商面 の両面 か ら固め ら れね ば な らない。 国際収 支 の不 均衡 が 生 じた とき,赤 字 国は 国内的調 整 手段 を 採 らね ぽ な らない が,そ の負担 を軽 減す るため には,国 際 金融機 関 か らの金融 的 援 助 が不 可欠 であ る。 だ が 国際 通 商 が制限 的 で あ るな らば,金 融 面 か らの支 援 も効 果 を あげ る ことは で きな い。 金融 的支 援 が有 効に 働 くた めに は,黒 字 国は 輸 入 障壁 を低 減せ ね ば な らず,赤 字 国 も差 別的 手段 に訴 え る こ とを しては な ら
ない。 貿 易 障壁 の軽 減 は金 融協 力 と並 ん で多 角 主義 実現 の支 柱 であ る。 この支 柱 とな るべ く構 想 された のが,国 際通 貨基 金 と国際 貿 易機 構 であ る。 だが この 二つ の支柱 は多 角体 制 を支 え るた め の物質 的基 盤 を 欠 いて いた。 国際 通貨基 金 と世 界 銀行 の活 動は,ト ルー マ ソ ・ ドク ト リソ とマーシ ャル ・プラソに 取 って 替わ られ,ブ レ トソ ・ウ ッズ機 関 を 通 じた 公 的資 金 の供与 に よ って世 界 的規模 で の多角 主義 を実現 す る とい う 目標は,欧 州地 域 の復興 と統合 そ し て軍 事 網 の 形成 へ と変 質 し た。 ま た 英米 金融 協 定(1947年)に よ る対 英 借款 と引 きか えに 1年 後 に実行 された ポソ ドの交換 性回 復は,英 国経済 の弱 体 化を表 面 化 させ る だ げ で,ア メ リカの援助 額 に比べ れ ぽ余 りに も少 ない37億5000万 ドル の費用 に よっては,差 別 的通 貨措 置 を解 除 しえ ない こ とを 明 らかに した。 だが 戦後 過渡 期 に おけ る多 角主義 の破綻 とい う刻 印を 最 も強 烈に身 に 帯 びて い る の は,GA TT成 立 の裏 面 に おけ る国際 貿 易機 構 の流産 であ る。1945年,ア メ リカの立 案
した 「世 界貿 易 と雇用 の拡大 のた め の提 案」 が イギ リス の全 面的 同意 を 得 て成 立す る こ とに よって,国 際通 商 に おけ る協 力機 関 として 国際 貿 易機構 を設 立す
背骨 な きGATT41
る こ と が 議 題 に 登 っ た 。 そ の 後,英 米 の 対 立 を 中 心 に 各 国 の利 害 が 錯 綜 す る 中 で・ ・ ン ドソ(1946年1・ 月15日 一 ・・月26日),ジ ュ ネ ー ブ(・947年4月 、。日̲、 。 月30日)・ ハ バ ナ(1947年11月21日 一48年3月24日)と 会 議 を 重 ね
,1948年 国 際 貿 易 機 構 憲i章が 成 立 した 。 国 際 貿 易 機i構憲 章 は9章106条 の 本 文 と本 文 の 注 釈 を 示 し た 附 属 書(A‑P項)か ら成 る 浩 翰 な も の で あ る。 国 際 貿 易 機 構 憲 章が これ ほ ど大 部 な もの に な った こ と 自体,そ れ が 諸 国 の い か に 複 雑 に 絡 み 合 った 利 害 の産 物 で あ る か を 物 語 っ て い る。 国 際 貿 易 機 構 憲 章 は,第 一 に,国 際 通 商 上 の 障 壁 と差 別 待 遇 の 除 去 だ け で な く,完 全 雇 用 の 実 現 ,経 済 開 発 ・復 興,制 限 的 商 慣 習 の 防 止,国 際 商 品 協 定 の 締 結 の た め の 基 準 とな る 原 則 を 定 め
,第 二 に, これ らの 措 置 の 実 現 を 確 実 な もの に し,国 際 貿 易 に 関 す る諸 問 題 を 取 り扱 う国 際 貿 易機 構 の 設 立 とそ の構 成 に つ い て 規 定 し て い る。 こ の 国 際 機 構 憲 章 に は 参 加56か 国 の うちrア ル ゼ ン チ ン,ポ ー ラ ン ド,ト ル コを 除 く53か 国 が 署 名 し た
。 そ れ が 発 効 す る た め に は 署 名 国 の過 半 数 の 批 准 が 必 要 だ が,そ れ を 批 准 し た の は リベ リア とオ ー ス トラ リア の み で あ り(オ ース トラ リアは ア メ リカの批准を条 件 としてそれ を批准 した)・ そ の 推 進 国 た る 英 米 に よ っ て す ら 批 准 は 得 られ ず
,国 際 貿 易 機 構 は 流 産 し た 。 ガ ー ドナ ー の記 念 碑 的 著作 が,英 米 が 融 通 の き か な い 主 張 の 空 中 戦 を 繰 り返 す 中 でi多 角 主 義 が 一 つ..̲..つ破 綻 しf国 際 貿 易 機 構 の 流 産 とい う ク ラ イ マ ッ クス へ と至 る過 程 をchronologica1に 辿 る 労 を 省 い て くれ る。 こ こで は 国 際 貿 易 機 構 を 死 滅 さ せ た,戦 後 の 国 際 通 商 の 構 図 を 巡 る 英 米 の 基 本 的 対 立 点 を 確 認 し て お こ う。
英 米 両 国 が 相 互i援助 協 定(1942年)を 承 認 した こ とは,大 西 洋 憲 章(1941年)
の贈 こ続 く,多 角蟻 類 の 「鞭 繍 二歩 肋 前晶 であった.と りわけ 戦 後 の通 商政策 につ い て次 の よ うに 述べ た 相互 援助 協 定第7条 は 「経 済面 に お
(51
け る戦 後 計画 の基 本 的かつ 法 的骨 格」 を形成 す る もので あ った。
「そ の 目的 は・ 第一 に適 切 な対 外 ・国内手 段 に よ り生産 ・雇用,財 貨 の交流 な らび に 消費 を拡 大す る こ とで,こ れ はす べ て の諸 国民 の 自由 と福 祉 の重要 な 基盤 とな る もので あ る。 第二 に そ の 目的は 国際 貿 易上 の あ らゆ る差別 待遇 措置 を撤 廃 し,関 税 そ の他 の貿 易 障壁 を低減 す る こ とであ る。」
42商 経 論 叢 第25巻 第1号
この第7条 では 多 角的 貿 易体制 を 実現 す るため に負 うべ き義 務 として,生 産 と雇 用 の拡 大,差 別的 措置 の撤 廃,関 税 そ の他 の貿 易障壁 の低 減 が並 記 され て い るが,こ れ らの義務 は 相互 依存 関係 に あ る。す なわ ち差別 的措 置 の撤 廃は 無 条件 に 行わ れ るの では な く,生 産 と雇 用 を 拡大 し不 況 を克 服す る措 置 の実 行並
{s)
びに 関税 の引 き下 げ と平 行 し て行われ るのであ る。 従 って一 方 が不 況 の克 服 と 関税 の引 き下 げ に失 敗す るな らば,他 方は 差 別待 遇 の維持 を 免責 され るの であ
る。 これ らの義 務 は 相互1ir代償 を要 求す る もので あ るため,こ れ 以降英 米は, 多角 主義 を実 現す るた めに 負わ ねぽ な らな い 負担 を,ど ち らの国が,ど の よ う な形 で,ど れ だ け 引 き受 け るか を巡 って抗 争へ 入 って ゆ く。 両 国は 相互 援 助協 定第7条 を 承認 したに もか かわ らず,否,承 認 した が故 に,国 際 貿 易機構 の設 立 に おい て も,第7条 に盛 られ た 義務 のす ぺ てを巡 って最後 まで対立 した ので あ る。 英 米 の協 力,対 立s妥 協 の種 々相を(1)特恵 と関税 の問題 ② 雇用 の 問題s (3)数量 制限 の 問題 に つ い てみ てゆ こ う。
両 国の対 立 の最 大 の焦 点 に な った の は、,英連 邦 特恵 制度 であ る。 特 恵関 税 の 全面的 な 廃止 こそ ア メ リカの 目指 す と ころだ が,そ の ため の ア メ リカの交渉 材 料 が 高率 関税 の 引 き下げ に よる 自国市場 の開放 であ る。 だ が ルー ズ ヴ ェル ト政 府は,互 恵通 商 協定 法に よって与 え られ た 貿易 交渉 の権限 を,選 択 的 関税 引 き 下げ 以上 に用 い よ うとは、しなか った。 これ に対 して イギ リスはsア メ リカの一 括 ・全面 ・大 幅 関税 引 き下 げ とい う代償 と引 きか えに 特恵 関 税を 廃止 す る とい う立場 を 譲 らなか った。 イギ リスの頑 強 な抵 抗 に遭 い,ア メ リカは従 来 の関税 引 き下げ 方式 に 代わ って,二 国間交 渉 を 同時に 行い,そ れ に よって得 られ た成 果 を 無 条件 最 恵 国待遇 に よって 一 般 化 す る と い う 「多 角的二 国間」 交 渉方 式 一 一これ が後 にGATTIyL .おけ る関税 引 き下 げ交 渉 の原 型 とな る一 を とる こ とを決 め た。 さらに ジ ュネー ブ交 渉に おい てア メ リカは,広 範 囲 の輸 入品 につ い て,与 え られ た権 限 の最高 限 度 であ る50パ ー セ ソ トの関税 引 き下げ を提案 し たが,イ ギ リスの提 案は 既存 の 特恵 関税 の引 き下げ に留 ま り,全 面 的撤 廃が 提 案 され たの は鮭 とオ ー トバ イの二 品 目にす ぎず,ア メ リカを満足 させ る もので はなか っ廻.鄭 はそれぞれ糖 関税の廃止 と解 関税の引き下げ とい う大 き
背骨 な きGATT43
い交 渉材 料 を もってい る こ とを考 え るな らぽ,両 国 の交 渉 には 妥協 の余地 は十 分 にあ った。 だが ア メ リカは無 差 別 原則 を強 要 し,イ ギ リスは 英連 邦 特恵 制度 の重要 性 と必要 性 を繰 り返 す だけ で,特 恵 と関 税 を巡 る両 国のrequestとoffer の隔 た りが埋 め られ るこ とは なか った。
雇用 と貿易 は不 可分 に結 びつ い てい る。 雇 用 を経済 済 則 に委 ね るの では な く, 人 為 的手段 に よって完 全 雇用 を維 持す る こ とが,体 制 安定 のため の第 一 の政策
目標 に な って以来,雇 用 の拡 大 は 自由貿 易 の結果 と位置 づ け られ るだ け で な く, 雇 用 の安 定 が貿 易 自由化 の前 提 条件 とな った。 ア メ リカは完全 雇 用 の維 持 が他
国に対 す る義 務 として課 され る こ とを極 力 回避 し よ うと した。 しか し,国 際 貿 易 機構 憲 章 の雇用 条 項に は,ア メ リカに 一 方的 に 負担 を負 わせ る内容 が 多 く盛 り込 まれ た。 憲章 は,完 全 雇用 の維 持は 国 内問題 であ るだ け でな く,憲 章 の 目 的 を達 成 す るた め の必要 条件 であ るこ とを宣揚 す る(第2条1)。 続 い てs加 盟 国 の国 内 雇用 政策 は他 国 の 国際収 支 を困難 に陥れ る もので あ っては な らない こ
と(第3条2)・ そ して加 盟 国 の国際 収支 の持続 的 不均 衡(ア メ リカの黒字)の た めに,他 の加盟 国(イ ギ リス)が,貿 易制 限に 訴 え る ことな しには,雇 用 を維 持 す る こ とを な しえな い場 合 には,不 均衡 の原 因 とな ってい る国は,こ の状態 を 是 正 す るた め の十 分 な措 置 を採 らねば な らない こ とが定 め られ(第4条1),債 権 国 ア メ リカの世 界 経済 に対す る責任 が 明確 に打 ち立 て られ た。 反 面,第6条
では,「 国際 貿 易機 構は,海 外 か らの イン フ レあ るい は デ フレ圧 力 に対 して 自国 経 済 を守 るた めに,加 盟 国が,憲 章 の規 定 に定 め られ た範 囲 内 での措 置 を採 ら ね ば な らな い こ との必要 性 に対 して考慮 を 払 うもの であ る。 デ フ レ圧 力 の場合 に は,他 国 の有効 需要 の重大 なあ るい は急 激 な減 少 が,す べ ての加 盟 国 に及 ぼ す 影響 に対 して,特 別 な考慮 が な されね ば な らな い」 と謳 わ れ,ア メ リカが不 況 に陥 った場合 に は,他 の加 盟 国は憲 章 の 規定 の 範囲 内 で不 況 の波 及 を防 ぐた め の措 置 を採 る こ とを容 認 され たの で あ る。 雇 用 条項 に おけ る以上 の非 対称 性 は,憲 章 に対 す るア メ リカ ビジネス界 の拒 否 反 応 を呼ぶ 大 きな一 因 とな った。
数量 制 限の 問題 につ い て も両 国は 激 し く対 立 した。 数量 制 限 の一 般 的 廃 止 と い う原則(第20条)と 「対 外準 備 を維 持 し,国 際収 支 を擁 護す るた めに,数 量
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制 限を 行 うこ とがで きる」 とい う例外 条 項(第21条2)に つ い て は 合 意 が得 ら れ た。 しか し,ま ず,数 量 制 限を容 認 す る場合 の国際 収支 難 の基 準を巡 っ て, 両 国は 対立 した。 交渉 の 結果 「加 盟 国は,外 貨 準備 の重 大 な減 少 とい う切迫 し
た脅威 に対 処す るのに必 要 な範 囲に おい て,ま た極 め て少 ない 外 貨準備 を 適切 に増 大 させ るのに必 要 な範 囲 にお い て,輸 入制 限 を設 け,維 持 し,強 化す る こ
とが で き る」(第21条3)と い う規定 に落 ち 着 いた。 この 規定 は 「国際収支 の赤 字 を 改善す る手段 として数量 制 限を 認 め る」 とい うア メ リカの立場 とは異 な り,
国際 収 支が 現実 に赤 字 に な る以前 に数 量制 限 を行 うこ とを許 してお り,ア メ リ カが不 況 に陥 った 場合,そ の波 及を 防 ぐた めに,イ ギ リスが保 護措 置 を採 る こ とを容 易 にす る もの であ った 。 数 量制 限に 関す る も う一 つ の対 立点 は,制 限 を 行 う場 合 の差 別措 置 につ い て であ る。 ア メ リカは無 差 別原 則 の貫徹 を主張 し,
イギ リスは そ の緩和 を要 求 した。 国際貿 易rte'構憲 章 に おい ては,第22条 が 「数 量 制 限の 無差 別 的実施」 に 当 て られ,第23条 で 「無 差 別原 則 の例外」 につ い て 述 べ られ て い る。 第21条 に基 づ い て数 量制 限 を行 って い る国はf為 替 管理 に よ って無 差別 原則 か ら離 脱す る こ とが で き る。 しか しf外 貨準備 の状態 に 関す る 第21条 の規定 自体,差 別 措置 を採 り うる場合 の客観 的基 準 とな る こ とはで きず, 差 別 措置 をi採るか否 かは,国 際 貿 易機構 との協 議 を経 た うえで,各 国の意 思 に
委ね られ た。 また 戦後過 渡 期 に限 って差 別措 置を 実施す る ことが許 容 され た が, 肝心 の 戦後過 渡 期に つ い ての 明確 な規定 を 与 え る こ とは で きなか った◎
国際貿 易機 構憲 章 は以 上 の対 立 と妥協 を すべ て網 羅す る ことに よって,諸 国 の利 害 の調 整を 図 ろ うとした。 つ ま り国際 貿 易機 構憲 章 は あ ま りに も現 実的 で あ りす ぎた。 そ のた め)y憲 章 は,そ の推 進 国た る英 米 に よって も支}き れ ない ほ どの原 則 と例外 の重 荷 を背 負い 込む ことに な り,自 らの重み で潰}た ので あ る。 英 米 の憲 章 に対 す る態 度は どの よ うな もの であ った か。厳 密 な意 味 での 多 角 主義 か ら大 き く後退 す る多 くの例外 規 定 を含 んで い るに もか かわ らず,イ ギ リスが 国際貿 易機 構 憲章 を拒 否 した の は,そ れ が窮 極 的に は,イ ギ リス経済 の 再 建 のた めに不 可 欠 な差 別 的措置 を 廃止 また は緩 和す る ことを 目指す もので あ った か らで あ る。 また ア メ リカ ・フ ィ リピン間 に特 恵的 貿 易協 定 が結 ばれ た こ
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とはiイ ギ リスの態 度 を硬 化 させ,英 連 邦特 恵 制度 の存 続 を 正 当化す る根 拠 を 与 え る もの で あ った。 そ し て1948年 の不況 も特 恵 の必要 性 を主 張す る世 論の 力
を増 幅 した。
国際 貿 易機構 を 死へ 追 い込 ん だ も う一 つ の大 きな 原 因は,ア メ リカ ビジ ネス 界 か らの批 判 で あ る。ア メ リカにお い ては,国 際 貿 易機 構 憲 章は,完 全 な 自由貿 易 を 目指す 「完 全 主義 者」と保 護 を 求め る 「保 護 主義 者」とい う立場 を異 にす る
(g}
二 つ の グル ー プか ら狭 撃を 受 けた。 完全 主義 者は ,為 替 管 理 と数量 制 限 に よっ ては 経済 的 困難 を救 うことは で きず,調 整 を進 め るた め には,通 貨 の交 換性 回 復 と自由貿 易の 実現 が不 可欠 であ る とい う立場 に 立つ。 彼 らは憲 章 の 原則 に で は な く,数 量制 限 と差 別措 置 を 許す,あ ま りに も多 い 例外 規定 とescapeclauseの ため にそ の原 則 が実 施 され ない,言 い換}れ ぽ,憲 章 は十 分 に 国際 的 でな い点 に反 対 したの であ る。 完全 主 義者 の憲 章 に対 す る不 信感 を と りわけ 煽 った のは, 雇用 条 項 にお け る義務 免 除規 定(第21条4(b))で あ る。 そ こで は,r完 全雇 用 を 維持 し,経 済 発 展 を促進 す る とい う義 務 を遂 行す る方 向へ と国 内政策 の舵 を取 った結果 として,輸 入欄 限 の実 施 を正 当化す るほ ど外 貨準備 に対す る圧 力が 生 じる場 合に は,ど の加 盟 国 もそれ が実 施 してい る輸 入制 限 の撤 廃 ま たは修 正 を 要 求 され る もので は ない」 と述 べ られ てお り,そ の よ うな場 合 に輸 入制 限を 行 って も よい理 由 とし℃ 「完全 雇用 と経済 発 展 を実現 す る と い う国 内政 策 を変 更す るな らぽ,輸 入制限 は不 必 要 に な るか らで あ る」 とい うこ とを挙 げ てい る。
この規定 は,輸 入制 限 を無制 限 に続 け る抜 け道 を与 え る もの であ る,と 完全 主 義 者は観 じた。 また,他 国には 雇用 維 持 の義務 を免 責 してい る雇用 条項 が,ア
メ リカには雇 用 水準 を維 持す る責任 を 負わ して い る こ とを捉x,彼 らは,そ れ は完全 雇用 を実現 す るた め に 国家 の経 済へ の 介 入を 招 き,自 由企業 体 制を 計 画 経済 体制 へ と導 くものだ と批 判 した。
さ らT,rgL一連 の会 議 を通 じて,低 開発 国 の要 求 に よって挿 入 され た,国 際 商 品 協 定,民 間投 資,特 恵関 税,数 量 制 限 に関す る条 項 も,国 際 貿 易機 構憲 章 を拒 否 す る理 由を与 えた。 これ らの うち新 しい要 因 であ る前二 者 につ い て説 明を加 え よ う。 政 府 間商 品協定 に関す る諸 規 定 は,協 定 の締結 を一 定 の情 況,す なわ
46商 経 論 叢 第25巻 第1号
ち一 次 産 品 の過 剰 と一 次産 品関連 部 門 の失業 が 生 じて い るsあ るいは生 じる こ とが予 想 され,し か も政 府 の特別 の行 動 こ頼 る こ とな しには,市 場 メ カニズ ム に よってそれ を是 正 し}な い場 合 に限 定 し(第62条),協 定 を実 施す る場合 の 公 平 な ルー ルを確 立 し,も って,一 次産 品 の生産 と消 費 の均衡 の 回復,激 しい価 格変 動 の除 去,天 然 資 源 の開 発等 の 目的(第57条)を 達 成 す る こ とを 狙い とし てい る。 この諸 規定 に対 して完全 主義 者 は,協 定 は政 府 に よる生産 と貿 易 の制 限,価 格 の規 制 に承 認 を与 えて い る とい う理 由でyこ れ に反対 した。 「民 間 の カル テ ルは悪 い が,政 府の カルテ ルは も っ と悪 い」 とい うわ け であ る。 第12条 の 「経済 発展 と再 編 の ため の 国際投 資」 に 関す る諸 規定 につ い て も,完 全 主義 者は 行動 の 自由が束縛 され る こ とを 怖れ た。 す な わ ち,「 加 盟 国は,将 来 の対 外投 資を 受 け入 れ るか ど うか,そ して どの よ うな範 囲 で,ど の よ うな条 件 で受 け 入れ るか を決 定す る権利 を 有す る。 また 加盟 国は,現 存 の お よび将 来 の対外 投資 の所 有 に関 す る必 要事 項,そ してそ の他 適切 と考 え られ る必要 事項 を 定 め,
これ を実行 す る権利 を 有す る」 とい う第12条 は,投 資を許 可す る受 入国 の 自由 を チ ェ ックす る もの を何 も もたず,現 地 政府 に よる収用 や差 別措 置 に対す る十
(91
分 な 保 護 を 民 間投 資 に 与 え て い な いyと 彼 ら は 批 判 し た 。
国 際 貿 易 機 構 憲 章 は,ア メ リカに お い て は 完 全 主 義 者 だ け で な く保 護 主i義者 を も敵 に 回 す こ とに な っ た。 保 護 主rは 低 コス トの 外 国 商 品 が 流 入 す る こ と の 危 険 とい うお 決 ま りの 主 張 を 繰 り返 した だ け で な く,憲 章 の 広 く認 め られ て い る不 利 益,す な わ ち ア メ リカは 最 恵 国 待 遇 を す べ て の 加 盟 国 へ 拡 大 す る に も か か わ らず,自 国Ty対 す る 差 別 を 受 け 入 れ ね ば な らな い とい うそ の 片 務 的 性 格, 政 府 の 経 済 へ の 介 入 と計 画 経 済 の 擁 護,escapeclauseに 訴 え うる他 国 の 自 由 を 強 調 した 。 つ ま り保 護 主 義 者 も完 全 主 義 者 と同 じ 論 拠 を 用 い てs憲 章 に 反 対 す
る論 陣 を 張 った の で あ る。
本 来 立 場 を 異 にす る二 つ の 実 業 家 グ ル ー プ が と もに 反 対 し た た め,結 局,ア メ リカ に お い て も 国際 貿 易 機構 憲 章 の 批 准 は 得 られ な か った 。 国 際 貿 易 機 構 憲 章 が ア メ リカ に お い て 受 け た こ の よ うな 待 遇 に つ い て,W・DiebaldJr.は 次 の よ うに 述 べ て い る。 「貿 易 障 壁 の 除 去 に 伝 統 的 に 賛 成 し て い た グ ル ー プ が 国 際
背」骨 な きGATT47
貿 易 機 構 に 反 対 し た とい う事 実 の た め に,輸 入 障 壁 の 除 去 に 反 対 す る グル ー プ は,自 分 た ち の 現 実 の 立 場 を 鮮 明?,rYt...する こ と な し に,彼 ら と同 じ態 度 を とる こ とが で き る よ うに な っ た。 そ の 結 果,国 際 貿 易 機 構 に 対 す る ビジ ネ ス 界 の 反 対 は,現 実 に そ うで あ る よ りも一 層 ま と ま った も の に な っ て し ま っ た。 この よ う な 見 か け よ りも重 要 な こ とは,そ の 政 治 的 現 実 で あ る。 す な わ ち ア メ リカ の 通
商 政 策 の歴 史 に か つ て ない や り方 で,国 際 貿 易 機 構 は,保 護 主 義 者 と完 全 主 義
者 の 両 方 か ら の こ ぎ りで 挽 か れ た の で あ る。」
と こ ろ で,国 際 貿 易 機 構 憲 章 の 起 草 作 業 の 過 程 で ア メ リカは,1945年f国 際 貿 易 機 構 の 設 立 と貿 易 障 壁 の 除 去 とい う 目的 を 達 成 す る た め に は,関 税 の 引 き 下 げ と特 恵 関 税 の 廃 止 を 実 施 す る こ とが 望 ま し い と考 え,そ の た め の 交 渉 を 行
う よ う呼 び か け た 。 ア メ リカ の こ の 提 唱 に 応 じた23か 国 に よ って,1947年,関 税 交 渉 が 行 わ れ,世 界 経 済 は 関 税 引 き下 げ に 向 け て ス タ ー トを 切 った 。 この 関 税 交 渉 の 結 果,す ぺ て の 加 盟 国 に 無 差 別 に 適 用 され る 各 国 ご と の 関 税 率 表(関 税 譲許表)が 出 来 上 が り,関 税 交 渉 と貿 易 制 限 撤 廃 の た め の 様 々 の 規 定 が 一 つ の 国 際 協 定 と し て ま とめ られ た。 こ の 関 税 譲 許 表 と国 際 協 定 の 両 者 が 「関 税 と貿 易 に 関す る 一 般 協 定 」 す なわ ちGATTで あ る。GATTは 関 税 に つ い て 規 定 し た 第 一 部,貿 易 制 限 の 撤 廃 に つ い て 規 定 した 第 二 部,手 続 に 関 す る 第 三 部 か ら成 る が,第 二 部 が 広 範 な 貿 易 制 限 の 除 去 を 義 務 づ け てい る こ とがGATTの 発 効 を 妨 げ る こ とを 懸 念 した 諸 国(ア メ リヵ,イ ギ リス,ヵ ナ ダ,オ ース トラ リァ,ベ ル ギ...̲.オラソダ,ル クセン ブル ク)が,1947年10月30日,「 暫 定 適 用 に 関 す る議 定 書 」 を 作 成 し,こ れ に 基 づ い てGATTは1948年1月1日 か ら発 効 し た 。 この
「議 定 書」 に よれ ば,加 盟 国 は 第 一・部 と第 三 部 に つ い て は,こ れ を 無 条 件 に 適 用 せ ね ぽ な らな い が,第 二 部 に つ い て は,現 存 の 国 内 法 と矛 盾 し な い 範 囲 内 で これ を 実 施 す れ ぽ よい。 つ ま り加 盟 国 はGATT第 二 部 に 抵 触 す る,非 関 税 措 置 に 関 す る 国 内 法 を 有 す る 場 合 に は,GATTの 定 め た 義 務 か ら 合 法 的 に 離 脱 で き る の で あ る。 国 内 法 のGATT第 二 部 に 対 す る優 先 権 を 祖 父 権(Grandfather Clause)と い う。 祖 父 権 は 現 在 で も生 き て お り,GATTの 非 関 税 措 置 に 関 す る 規 定 は そ の ま ま の 形 で は 適 用 され て い な い 。 す な わ ちGATTは そ れ 自体 と し
48商 経 論 叢 第25巻 第1号
て発 効 した こ とは 決 して ない の であ る。 この点 に関 してそ の後 の交渉 で行わ れ た こ とは,GATTそ の ものを 発効 させ,国 際 通 商 を統べ るGATTの 力 を強 化 す る こ とでは な く,GATTと は 別 に非 関税 措 置 に 関 す る新 た な取 極 を策 定
す る こ とであ った。
商 品貿 易 に関す る規定 しか 含 ん でい ない こ とに も示 され る よ うに,GATTは 国際 貿 易機 構憲 章 が成 立す る まで の間,そ の 目的 の一 部 を達 成 す るた め の暫定 協定 として締結 され た の だが,国 際貿 易機 構 が 流産 したた め,そ れ は 国際 通商 に おけ る最 高 のル ー ル とな る の で あ る。 国際 貿易 機構 憲 章に 承認 を与 え な か った ア メ リカに よるGATTの 受諾 は,GATTが,上 院 に提 出され ねば な ら ない 「条 約」 では な く,1934年 の互恵 通 商協 定 法 の1945年 延長 法 に よって認 め られ た 「行政 協 定」 であ る とい う理解 に基 づい て可能 とな った もの であ る。 互 恵通 商協 定 法 に よって,議 会 は大 統領 に,特 定 の制 定法 上 の制 約 の下 に関税 の 相互 引 き下 げを 図 る国際協 定 を締 結 し,議 会 に諮 る こ とな しに これ らの協定 を 実施 す る権 限 を 与 えた。 そ し てGATTは,互 恵 通商 協定 法 に基 づ い て議 会
(11)
の承 認 を受 けた 大統 領 の行政 権 に基 づ く協 定 で あ る と解 釈 さ れ た の で あ る。
GATTが 広 範 な国際 貿 易機 構憲 章 の 中 の 第 四章 「通商 政策」 の み を体 現 した もの であ るため,そ れ は 行政 協定 の対 象 とな りえ,議 会 の不 満 に もか かわ らず, 大統 領権 限 に基 づ い て,ア メ リカに よるGATTの 受 諾 が 可能 とな った の であ
る。GATTの 誕生 は,世 界 経済 の統̲̲̲.とい う諸 国 の共 同利害 の実現 であ る と 同時 に,多 角主義 破綻 の裏 面 で あ る。 国際 貿 易機 構 とい う権 力基 盤 を もつ ぺ く して もちxず,多 角主 義破 綻 の象 徴 で もあ るGATTが,自 由貿 易を 推 し進 め る フレー ム とな りえ た のは,こ の共 同利 害 の故 であ る。 しか し同時 に,世 界経 済 は 共 同利 害 に 国家 とい う自立化 した 形態 を与 え るこ とは で きな い。 そ のた め
にGATTは 多 くの不 確i実性 を孕 む こ とにな った の であ る。
3.GATTの 構 造
GATTは 、比較 生産 費 説 を理 論的 支柱 と し て い る。比 較生 産 費説 は,貿 易が 自由な競 争市 場 で決定 され る価 格を基 準 に して行 動す る同質 の私 的経 済 主体 に
背 骨 な きGATT49
よっ て行 われ るとき,そ の利 益 は最 大 とな る とい う世 界 を 描 く
。 この理 論 に従 うな らば,貿 易 を規制 す る手 段 も価 格 メカ ニズ ムの延 長上 に あ る関税 だ け で な ければ な らな い。 数量 制 限や政 府 介 入は 緊急 措 置 であ る。 そ して経 済 主体 の同 質性 が維 持 され るため には,貿 易 を規 制す る措 置はす べ ての 国に無 差 別 に適用 され ね ば な らな い。 加盟 国 があ る国に対 し ての み規 制措 置 を 発動 す るな らば
, そ の国 の轍 は 援用 国以外 の第 三 国 に轍 し,第 三 国が 過 大 な轍 圧 力 を受 け
, 資源 の 国際 的 な最適 配 分が 実現 され ないか らであ る。 以 上 の原 理 に従 って構 成 され てい るGATTの 骨格 を・ 関税 シス テ ムと非 関税 措 置 に分 け てみ てゆ こ う
。
3.1関 税 シス テ ム
関 税 は貿 易 を規制 す るた め の・GATTに お い て認 め られ た唯̲̲̲.の合 法的 な 手段 で あ る。GATTは 関 税 と他 の貿 易 障壁 の 間 に 本 質的 な区 別 を設 け てい る が,そ こには 関 税が 価 格 メカ ニズ ムの延長 上 に あ る措 置 で あ る とい うこ との ほ か に次 の理 由があ る。 第一一は,第 一 次大 戦 以前 の 自由貿 易 の黄 金 時代 には
,主 要 な保 護 手段 は 関税 であ ったが・ 戦 間期 には 数量 制限 や為 替管 理 等 の障 壁 が乱 用 され ・ それ が第二 次大 戦 の原 因 にな っ た と い う対 照 的 な歴 史 的 事実 が
,GA TT起 草 者 の念頭 にあ った こ とで あ る。 第二 に,廃 止 を 合意 しなが ら実際 には, 例 え ば 国際収 支 難 を理 由 に数 量制 限 を続 け る とい う形 で協定 を 尻抜 け にす る こ
と(theemptyagreement)を 関 税につ い てはや りに くい,言 い換 えれ ば,関 税 は 一旦 合意 した な らば
,そ の撤 廃,引 き下 げ に おい て確 実性 を もつ とい うこ とが 挙 げ られ る・ 第三 に・ 関 税は 他 の障 壁は較 べ,bargainabilityが 高い こ とが あ る
。 つ ま り関税 につ い ては・ 互恵 的 交渉 を通 じての軽減 可能性 が非 関 税障 壁 に比 し て格段 に 大 きい ので あ る。ゆ
GATTは この よ うに関税 に 特別 の地 位 を与 え て い る。に もかか わ らず,1948 年 に発 効 したGATTの オ リジナル な条文 に は,関 税 の 引 き 下 げ とそ の た め の交 渉 につ い て の規 定 は存 在 しない。 とい うのは,そ もそ もGATTは 国際貿 易機 構憲 章が 発 効す れば そ れ に吸 収 され るはず の暫定 的協 定 で あ り,関 税 引 ぎ 下 げ交 渉 を主催 す る権 限 も国際 貿 易機構 が もつ もの とされ て いた か らであ る
。
50商 経 論 叢i第25巻 第1号
ところが 国際 貿 易機構 憲 章が 成 立 しな か ったた め,1955年 の総会 に おい て,国 際貿 易機 構憲 章 第17条 に相 当す るGATT第28条 の2「 関税 交渉」 が 付け 加 え
られ た 。そ こでは,締 約 国は 関税 が貿 易 の障害 に な る ことを認 め,「 関税 そ の他 輸 出 入に 関す る課徴 金 の一般 的 水準 の引 き下 げ」 を 目指す こ とが謳 われ てい る。
だが 国際 貿 易機構 憲 章 第17条 とGATT第28条 の2の 間 には 次 の相違 が あ る。
一つ は,第17条 は 「加 盟 国はi他 の加 盟 国 の要請 が あ る ときは,国 際貿 易機 構 に よって定 め られ た 手続 き上 の協定 に 従 っ て,関 税 の一 般 的 水準 の実 質的低 減 と特 恵 の縮 小 の た め の 相互 的 かつ互 恵 的交 渉 を行 わ ね ば な ら な い(shallenter intoandcarryout)」 と述べ,加 盟 国 に関税 交 渉 を行 うこ とを義務 づ け て い る が, 第28条 の2は 「締約 国 は この よ うな 〔関税 〕 引 き下 げ 交渉 を随 時主 催す る こ と が で き る(maysp・ns。r)」,そ して多 角的交 渉 の成 功 は 「相互 間 で行 う貿 易が 自 国 の対 外 貿 易 の相 当部 分 を 占め るすぺ ての締 約 国 の参 加に依 存す る」 と トー ソ ダウソ してい る こ とで あ る。 第二 に,第17条 は選 択 的 ・品 目別交 渉 を行 うこ と を要 求 してい るが,第28条 の2は それ と並 んで・「関 係締 約 国が受 諾す る多 角的
手 続」 に よ って交 渉 が行 われ うる こ とを定 め てい る。 品 目別交渉 とは異 な る多 角的 手続 に よる関税 引 き下げ が 試み られ た のは,1947年 の第1回 の関税 交渉 か らさ らに 二つ の ラ ウソ ドの後 に 行わ れ た ケネデ ィ ・ラ ウソ ドにお い てであ る。
非 関税 措 置 の撤廃 に 関す る広 範 な規 定 につ い て祖 父権 が生 きてい る とい うこ とはfGATTは 自由貿 易に 反す る措 置 をi禁止す る た め の 法体 系 では決 してな い とい うこ とを意味 す る。 それ は関税 に つ い て も同様 であ る。 す な わ ちGAT Tは 新 た な関税 の賦課 と関 税 水準 の 引 き上 げを 禁止 す る た め の 協 定 で は な く
̲GATTに おい て関税 の新 た な賦 課 と引 き上 げが 禁止 され てい ない こ とは ・ 第28条 「譲 許 表 の修正 」 に よっ て支 持 され る一一,交 渉 に よって関税 の引 き下 げ を 促進 す るた め の協定 な ので あ る。 言い 換 えれば,既 に 固め られ て い る国際 経 済体 制 を守 る と ころYyt^では な く,将 来 に亘 って,関 税 引 き下 げ を通 じて,一 つ の体 制 を 固め てゆ かね ば な らない ところにGATTの 役割 が あ るの であ る。
GATTは 確 実 な現在 では な く,不 確 実 な将来 を 向い てい る。 この点 にGATT の 最 大 の特徴 が あ る。GATTの 性 格が この よ うな もの であ るた めf関 税 の 引
背骨 な きGATT51
き 下 げ を 促 進 す る た め の 様 々な 手 続 がGATTの 核 心 を 構 成 し て お り ,GATT の 理 念 もそ こに 体 現 され て い る。GATTに お け る手 続 従 っ て 理 念 の 要 石 は
, 原 則 と し て関 税 以 外 の あ ら ゆ る 貿 易 制 限 を 撤 廃 し(関 税主義),「 相 互 的 か つ 互 恵 的 取 極(Yrecipr・calandmutuallyadvantageousagreement)を 締 結 す る こ とに よ
っ て」(前 文)関 税 引 き 下 げ を 実 現 し(互 恵主i義),そ れ を 無 条 件 最 恵 国 待 遇(un‑
c。nditionalm・stfaΨ・uarednati・ntreatment)に よ っ て 全 加 盟 国 に 均 露 す る
,と い う 点 に あ る。 無 条 件 最 恵 国待 遇 とは,通 商 条 約 に 基 づ い て,あ る締 約 国 が 第 三 国 に 与 え て い るか また は 将 来 与 え る最 も有 利 な 待 遇 は
,他 の す べ て の 締 約 国 に対 し て,代 償 を 求 め る こ とな く無 条 件 で 与 え ら れ ね ぽ な ら な い とい う規 定 で あ り
, これ を 取 り入 れ た 点 にGATTの 関 税 引 き下 げ 方 式 の 革 新 性 が あ る
。 従 来 の
「品 目別 国 別 交 渉 」 に よ る関 税 引 き 下 げ に お い て は
,ア メ リ カ の 互 恵 通 商 協 定 法 に基 づ く関 税 引 き下 げ に み られ る よ うに,条 件 付 最 恵 国 待 遇(c。nditi・nalm。st favourednationtreatment)が 原 則 で あ った 。 す な わ ちA国 がB国 か ら得 た 譲 許 と 引 きか え に 与 え た 譲 許 は,C国 に 無 条 件 で 適 用 さ れ る の で は な く
,C国 がA国 に そ れ と等 価 な 譲 許 を 与 え る 限 りに お い て の み 適 用 され る の で あ る
。 こ の 条 件 付 最 恵 国 待 遇 の 原 則 を 改 め,従 来 の 二 国 間 交 渉 に よ る関 税 引 き 下 げ に 無 差 別 ・ 多 角 主 義 を 全 面 的 に 導 入 した 点 にGATT方 式 の 革 新 性 が 存 在 す る。 それ は 最 蘭 解 の 「多 角化」 あ るい は 「多 角的」 品 目別 ・国別 交 勘 式 とい うことカミ
で きる。
互 恵主 義 と無条 件 最恵 国待 遇 の原 則 は,そ れ に よる関 税 引 き下 げ の効 果 が最 も強 く発 揮 され る,全 加盟 国 が一斉 に参 加す る一般 関税交 渉 だけ でな く,再 交 渉 と加入 関税 交渉 に おい て も適用 され る。 再交 渉 とは 譲許 の変 更 を行 う場 合 の 関税 交渉 であ る。 この交渉 では,譲 許 の修正 を 行 う国 は,そ れ と見合 う他 の品 目の関税 譲許 を 相手 国 に提 供す る こ とに よって補償 的 調 整を 図 り,譲 許 の一 般 的水準 を維持 す る よ うに努 めね ぽ な らない。 また この交 渉 で関 係締 約 国間 に合 意 が成 立 しなか った場 合 で も,譲 許 の変 更 を行 うこ とが で きるが,そ の ときに はf相 手 国は 「そ の措置 と実質 的 に等 価値 の譲 許 の撤 回を ,行 うことがで きる」
(第28条3(a})。加 入 関税 交 渉 とは 新規GATT加 盟 国 と既 加盟 国 と の 間 の交 渉
52商 経 論 叢 第25巻 第1号
であ る。 この交渉 では新 規 加盟 国に は,1948年 以降 の関税 譲許 が締 約 国に よっ て与}ら れ る と ともに,新 規加 盟 国 も関税 を 引 き下 げ ねば な らない。 新 規加 盟 国 が計 画経済 国の場 合に は,輸 入 量 が 国家に よって統制 され てい るため 関税 引
ロヨ
き下 げ は意 味 を もた ない の で,輸 入増 加 を約 束 させ られ る。 以上 のGATT関 税 交渉 を通 じて定 め られ た関 税率 を協 定 税率,協 定 税率 に基 づ い て課せ られ る
関税 を協 定 関税 とい う。 協 定税 率は それ 以下 に 引 ぎ下 げ る こ とは で きるが,た とえ貿 易保 護 効果 を高 め る こ とは な くと も,新 た な交渉 な しに それ 以上 に 引 き 上げ る こ との許 され な い最 高税 率 であ る(第2条1)。
祖 父権 の存在 に よって非 関 税措 置 を撤 廃す る道 が 固 く鎖 され てお り,関 税 の 軽 減 が締 約 国に よって敷 かれ うる,自 由貿 易へ 至 る唯 一 の広 い道 であ る とい う 意 味 で,関 税 引 き下 げに おけ る互 恵 主義 と無 条 件最 恵 国待 遇は・GATTの 手続 の 中心 であ るだ け でな く,理 念 そ の もので あ る。 だ が この理 念 の実 現 はそれ ほ
ど容 易 な こ とでは ない。 まず互 恵 主義 と無条 件最 恵 国待 遇 原則 との矛盾 が あ る。
後 者 の原則 は,二 国間交 渉 に よって合 意 され た最 も有利 な 関税 率は,交 渉 当事 国以外 のす べ て の締 約 国に無 差 別に適 用 され る ことを保 障 して い る。 このた め 締 約 国 であれ ば,他 の締 約 国 の関税 引 き下 げ の恩恵 を,そ の国に対 し て代 償 的 関税 引 き下 げ を実 施 しな くとも得 る こ とが で き るので あ り,こ の限 りでは 「相 互的 かつ 互 恵 的 な」 関 係は 維 持 され ない。
さ らに 困難 な問題 は 譲許 の等価 性 の基 準 で あ る。 相 互性(recipr・city)はGA TTの 重 要 な原 則 であ るに もか かわ らず,相 互 性 の定 義 は与 え られ てい ない。
譲 許 の等 価性 の基 準 として,ま ず,関 税 率 の 引 き下 げ 幅が考 え られ る。 だ が高 関 税 国 と低 関税 国 とでは,同 じ10パ ー セ ソ トの 引き下げ とい って もそ の価値 が全 く異 な るこ とは 言 うまで もない。そ こでGATTは,譲 許 の価 値 を関税 率 の 引 き 下げ 幅だけ で測 る こ との低 関 税 国へ の不利 を な くす ため に一 定 の 水準へ 関税 を 引 き下 げ る約束 だ け でな く,特 定 の水準 以上 に 関税 を 引 き上 げ ない とい う約 束 も関税 譲許 の中に 含 め,さ らに 「低 関税 また は無 税 の据 え置 きは,原 則 とし て, 高関 税 の 引 き下 げ と等価 値 の譲 許 とみ な され る」(第28条 の2,2)と 規定 してい る。 この うち無 税 の据}置 きは 「ゼ ロ ・バ イソ ド」(zer・‑bind),最高 引 き上げ 限
背骨 な きGATT53
度 の約 束は 「ア ップ ・パ イン ド」(up‑band)と 呼ぽ れ て い る。GATTの 規 定 に 照 らす な らば,関 税 譲 許 とは これ らす ぺ てを 含む のだ が,関 税 交渉 に お い て高 関税 国は 関税 の 大幅 な 引 き下げ と交換 に,低 関税 国に 現在 の関税 を 引 き上 げ な い とい う約 束 以上 の こ とを要 求す るの が常 で あ り,こ の原 則 は生 か され てい な
いo
次 に,関 税 引 き下 げ 幅 と貿 易額 の両 者に よって 譲許 の価値 を測定 す る こ とが 考 え られ る。 これ は 譲許 品 目の基 準年 次 に おけ る貿易 実績 を バ ラソス させ る方 法だ が,こ れ とて も必ず し も客観 的 な基 準 とは な りえ ない。 関 税 引 き下げ 幅は まだ 関税 を 引 き下げ る余 裕 の あ る高関 税 国に 有利 な基 準 であ り,貿 易実績 は大 国で あ りかつ 自由化 を進 め て い る国に有 利 な基 準 で あ る。 この二 つ は,相 対 的 に高関 税 で 自由化 の進 んだ大 国た る ア メ リカに 有利 な基 準 であ る。 また 譲許 品 目数 も譲 許 の価 値 の一つ の測定 基 準 と考 え られ るが,同 じ譲 許品 目で も,自 動 車 や エ レ ク トロニ クスの よ うな基 軸 財 と頑 具 の よ うな そ うで ない財 とを 同 じ̲̲..
品 目と カウン トす るのは 合理 的 な こ とでは ない。 そ して同 じ財 であ って も,各 国の経 済 発展 の水準 に よって,そ の財 の経 済 に 占め る意義 は異 な るの であ り, 従 って,そ の財 の関税 引 き下 げ 幅や 貿易 額 を1対1で 国際 比較 す る こ とは 適 当 では な い。 さ らに無 条 件最 恵 国待遇 原 則 を通 じて無償 で得 た 「間接 的 利益 」 も 比較 の対 象 に され ねば な らな い。 これ らの要 素 をすべ て考慮 し て,関 税 譲 許 の 大 きさを数量 化 し うる と して も,し か しなが ら,次 の難 点 を回 避す る こ とは で きない。 それ は,非 関税措 置 の大 き さを数量 化 す る こ とは 困難 であ り,非 関 税 措 置 の貿 易制 限効果 を相殺 す る,い わ ば 補償 的 関税 引 き下 げ を関税 譲許 の 中に 取 り入 れ るこ とは で きない とい うこ とで あ る。 貿 易 障壁 の 中 で関税 は最 も確実 な 手段 だ が,そ の譲 許 の大 き さ一つ を決 定す るだけ で も,以 上 の よ うな不 確実 性 を もってい る こ とを考 え るな らば,関 税 交渉 に お い て譲許 の価 値 は,多 種 多 様 な評価基 準 に基 づ い て総 合的 に判 断 され て い る と単 純 に 言 うこ とは で きない。
む しろ様 々な基準 は,関 税交 渉 の担 当者 に よって,ど の よ うな譲 許を 与 え るべ きか を決定 す るた め では な く,国 民 に対 して 自分の 行為 を 正 当化す るため に用 い られ てい る と言 った方 が よい。 最 大 のbargainabilityを もつ 点 に関 税 の他 の
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貿 易障 壁 に対す る優位 が あ り,こ の特 質 の故 にGATTは 関税 に特 別 の地位 を 与 えた。 しか しそ のbargainabilityは,GATTの 拠 って立つ 比較 生産 費 説 の 前提 た る同質 の経 済 主体 間 の交 渉 とい う条 件 の下 で,は じめ て十全 に 発 揮 され る もので あ る。 だ が現 実に そ うで あ るよ うに,諸 国 の経済 構造 や 発展 水準 が異 なれ ぽ,国 益 も異 な り,そ れ が関 税譲 許 の価 値 の多様 な基 準 を生 む の であ る。
関税 禁止 の法体 系 では な く,交 渉 を通 じて関税 を 引 き下 げ るため の法 体 系 で あ る とい うこ とが,GATTの 最 大 の特徴 であ った。 それ は,言 い 換 えれ ぽf GATTは 関税 の 水準 に制 限を設 け てい な い こと を 意 味 す る。 関税 の水準 だけ
で な く,さ らにGATTは 一 国 の関税構 造 につ い て も制 限を 課 して い ない。 そ の ため輸 入 には 関税 を 課す が,輸 出に は関税 を課 さな いだ け でな く,第16条 に合 致 した 補助 金 が支給 され る とい う差 別的 関税 構造 が許 され,そ れ はIMF協 定 では 禁止 され てい る複 数為 替 制度 と同 じ効果 を もつ。GATTが 関税構 造j'Y関 す る規定 を完全 に 欠落 させ て い る点 を捉 え て,DamはrGATTが 創 設 され た 際 の交渉 事項 と歴 史 的情 況 を考慮 す れば い た しかた な い こ とだ が,そ れ は,貿
as
易 問 題 に ぽ らぽ ら に 対 応 す るGATT固 有 の性 格 を 表 わ し て い る」 と言 う。
多 角 主 義 の 実 現 と戦 後 過 渡 期 の現 実 との 間 の あ ま りに 大 き い 隔 た りを埋 め る た め に,各 国 の 利 害 を す べ て 原 則 とそ の 例 外 と し て組 み 入 れ た が 故 に,言 い 換 え れ ぽ あ ま りに 現 実 的 で あ りす ぎ た が故 に 流 産 し た 国 際 貿 易 機 構 の い わ ば 落 し子 とし て成 立 したGATTも,あ ま り)/YYLも現 実 的 で あ る とい う国 際 貿 易 機 構 の血 を 受 け 継 い で い る。 関 税 シ ス テ ムの 面 で こ の 宿 命 も色 濃 く反 映 し て い る の は,次 の二 つ の 例 外 規 定 で あ る。 第 一 の 例 外 は 既 存 の 特 恵 制 度 を 容 認 した こ とで あ る。
英 連 邦 特 恵 制 度 の解 体 が,世 界 経 済 の 戦 後 計 画 に お い て ア メ リカの 打 っ た 最 初 の そ し て 最 も重 要 な 石 で あ った が,イ ギ リス の 強 い抵 抗 に 遭 った だ け で な く,ア メ リカ 自身 フ ィ リピ ソ との 間 に 特 恵 を 設 け ね ぽ な ら な か った た め に,既 存 の特 恵 に つ い て は,関 税 率 に 限 っ て こ れ を 容 認 せ ざ る を え な か っ た 。GATTに お い て 例 外 とし て 認 め られ た 特 恵 は,英 連 邦 地 域,フ ラ ソ ス連 合 地 域,ベ ネ ル ク ス 三 国 の 関 税 同 盟 地 域,ア メ リカ ・フ ィ リピ ソ 間iア メ リカ ・キ ュー バ 間 の 特 恵,チ リとそ の 隣 接 国(ア ルゼ ソチ ソ,ボ リヴ ィア,ペ ルー)と の 間 の 特 恵,レ バ
背 骨 な きGATT55
ノ ソ ・シ リア とそ の 隣 接 国(パ レスチナ,ト ラソス ヨル ダソ)と の 間 の 特 恵 で あ る
。 GATT第1条 は 以 上 の 特 恵 を 容 認 す る に 当 た っ て,特 恵 の 限 度(最 恵 国税率 と 特 恵税率 との 差)を 拡 大 し て は な らな い とい う制 限 を 設 け,特 恵 の新 設 と拡 大 を
αの
禁 じてい る。
しか し他方 でGATTは,関 税 シ ステ ムにお け る も う一つ の大 きな例外 とし て,第24条 に おい て,関 税 同盟 と 自由貿 易地 域 の形成 とい う,最 恵 国待 遇 か ら の逸脱 を認め てい る。 「関税 同盟 また は 自由貿 易地 域 の 目的 が,そ の構 成領 域 間 の 貿易 を容 易にす る こ とにあ る」 とい う こ とが,GATTが 経 済 統合 を 容 認 した根 拠で あ り,経 済 統 合は 「その よ うな領 域 と他 の締 約 国 との 間 の貿 易に対 す る障害 を 引 き上 げ る こ とは ない」 とい う制 限 に従わ ね ば な らない。 第24条 に おい て注 目すぺ き こ とは,こ こでは貿 易 の促進 とい う観 点 か ら,経 済統 合 を容 認す る根 拠 と経済 統合 に対 す る制 限 が規定 され て お り,GATTの 目的 で あ る
「自由で平 等 な貿 易秩 序 の実 現」 の無 差 別 ・平 等 の要 素 が欠 落 し て い る こ とで
お
あ る。
経済 統 合 に関 して さ らに忘れ てな らない こ とは,戦 後 最大 の特 恵 た るEEC がGATT加 盟 国に よって承 認 され た のは,政 治的 配慮 か らで あ り,EECがG ATTの 規定 を ク リアしてい るか らで はな い とい うこ とであ る。EECの 設 立 に
当た って,GATT加 盟 国は 次 の点 を 問題 に した。(1)関 税や 数 量制 限 が従 来 よ り高 くな る こ とは ない か。② 共 通 農業 政策 は域 内 の貿易 制 限全 廃 の 原 則(第24 条8)に 反 し,域 外諸 国の 農業 物 に対 して不 当 な制 限 を 課 す こ とに な らないか。
(3>EEC加 盟 国 が海 外 の旧属 領 との間 に も っ て い る特 恵関 係をEEC全 体 との 関 係に 拡 大す る こ とは,特 恵 の新設 ・拡大 の 禁止 に反 しない か。 しか しEEC がGATTに 合致 す るか 否 か につ い ての 以上 の議論 は 棚上 げ され,冷 戦体 制 下 に おい て 欧州 の統 合 と復 興を 促進 す る こ とは,社 会 主 義 陣営 に対 す る牽 制 とな
る とい う政 治 的観 点 か ら,ア メ リカが調 停 的立 場 に立 った結果,1958年 のGA TT総 会 に お い てEECの 設 立 が 承 認 され た の で あ る。EECの在9 成 立 に 促 迫 さ れ て,そ の後,EFTA(1960年),米 加 自動 車 貿 易 協 定(1965年)な ど多 くの 特 恵 が 創 られ た 。 特 恵 創 設 の 波 は 低 開 発 国 か ら も押 し寄 せ,貿 易 の 促 進 に 資 す る と