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(1)

心理学的立場から見た中国語学習 ― 大学生のアン ケート調査を中心にして ―

著者 李 艶

雑誌名 言語文化

巻 7

ページ 65‑88

発行年 2004‑07‑30

権利 同志社大学言語文化学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004686

(2)

心理学的立場からみた中国語学習

―大学生のアンケート調査を中心にして―

李     艶

本論の目的

学生は外国語を習得しようとするとき大きな不安と困難に直面する。心理 学専攻である筆者は、教育現場でよりよい中国語学習の方法を見いだそうと 考え、心理学的手法を用いて大学生を対象にしたアンケート調査を実施した。

本論文はその結果に基づいた中国語学習に関する研究である。

カラン(Charles  A.  Curran, 1994)によると、教師は「言語カウンセラー」

になって、学生の不安をよく把握し、直感し、それらに敏感に対応すること によって、学生の否定的な感情を克服し、学習の動機づけをする必要がある。

従って、教師は学生を「全人格的人間」(whole-person)として捉えなければ ならない。また、カランのいう「全人格的学習」(whole-person learning)は、

教師が学生の感情や知性だけを考慮に入れるのではなく、学生の学習意欲、

「動機づけ」(motives)にも理解と力を示すということである。

日本における中国語の教育現場で「あの学生は言語能力が十分あるから、

やる気さえあれば中国語の実力が随分伸びるのに・・・残念だ」という言葉 を筆者はしばしば耳にする。この「やる気」、つまり「達成関連動機づけ」

(achievement-related  motives)は、言語学習に大きな影響をもたらす。だか ら、教師は学生がどのような動機づけをもっているかを知り、学生の語学学 習における「やる気」、「動機づけ」の問題に積極的に取り組み、楽しくやり がいのある授業をしていくことが必要となってくる。

本研究の目的は日本における中国語を勉強する学生を対象にし、次の点を 明らかにすることである。(1)中国語を学習するための「達成関連動機づけ」、

「言語文化」7-特集号:65−88ページ 2004.

同志社大学言語文化学会©李  艶

(3)

(2)「達成関連動機づけ」と学生の成績、出席、自己評価、授業への評価な どの関係、(3)学生が中国語の学習に使う「学習方略」(learning  strategies)、 (4)中国語の学習における困難度の調査研究、簡単に言えば、日本における 中国語の教育に関する調査研究である。ここで、本論を進めるに当たり、ま ず「動機づけ」と「達成関連動機づけ」、「内発的動機づけ」および「学習方 略」について考察する。

1.「動機づけ」および「達成関連動機づけ」

「達成動機」とは、ある優れた基準を立て、その基準を達成しようとする 動機をいう。Mclelland, D.C.&Atkinson, J.W.(1953)がT.A.T(Thematic Apperception  Testの略)によって「達成動機」の高低の個人差を測定する道 を 開 い て か ら 、 達 成 動 機 の 性 質 や 発 達 に 関 す る 研 究 が 急 速 に 進 ん だ 。 Atkinson, J.W.は達成行動を十分に理解するためには、「達成動機」の他に失 敗回避動機をも考慮する必要があると言う。

言語学習における「動機づけ」には具体的にどのようなものが存在し、ど のような「動機づけ」が言語学習に最も役立つのだろうか。この問題に関し て、Gardner(1988)は「統合的動機づけ」(Integrative  motivation)と「道具 的動機づけ」(Instrumental  motivation)という区分を提案した。「統合的動機 づけ」とは、目標言語を話す人々と彼らの社会に対する好感をもち、彼らの ようになりたいと願いながら学習を進める動機づけである。「道具的動機づ け」とは、就職や昇進、あるいはテストに合格するなど現実的な目標を達成 する手段として学習を進める動機づけである。

Gardnerは、上述した2種類の「動機づけ」と言語習得との関係を検証す るために、カナダにおけるフランス語学習者を主たる対象として研究を行っ た。その結果、「統合的動機づけ」が「道具的動機づけ」よりも言語習得に 効果的であるとの結論に達した。しかしながら、他の研究者たちが異なる環 境で行った研究では、「道具的動機づけ」の方が言語学習を促進するという 結果がしばしば報告された。

Gardnerは「動機づけ」が言語習得を促進させる重要な要素だと主張する。

しかし、逆の見方をする研究者は、結果としての「動機づけ」を強調する。

Strong(1984)は、高い「動機づけ」が言語習得を促進させるのではなく、

(4)

習熟度が増し、興味、関心、満足度が増すにつれて、「動機づけ」が高まる と主張する。ここで留意すべき点は、動機づけと習熟度の関係である。これ を、一方的な関係ではなく、相互に影響しながら循環的に発展するいわゆる

「相補的関係」としてとらえることが妥当であると筆者は思う。やる気があ れば積極的に学習に取り組み、習熟度は増し、習熟度が増せば学習の中でよ り多くの満足感が得られ、一層やる気が出る。重要なことは、いかにこのよ うな良い環境を作り出すかである。日本における中国語教育現場では、それ とは逆の悪循環の中で、悪戦苦闘している学生が数多く存在する。というこ とは、学習指導の中で「動機づけ」の問題をさらに積極的に取り上げる必要 性があることを示す。

2.「内発的動機づけ」(intrinsic motivation)

「内発的動機づけ」と「認知された有能感」(perceived  competence)は学 習を促すことに重要な役割を果たす。「内発的動機づけ」とは、学生が取り 組む課題に関心を持っており、その課題を達成することに大きな喜びを感じ

「やる気」を出すような場合である。一方、「外発的動機づけ」(extrinsic motivation)は外部の要因で学習する場合である。これはしばしば内的動機 づけを減じる要因と見なされる。最近では「外的動機づけ」が学生の価値観 や信念と結びつくと考えられるようになっている。Dickinson(1987)は、

一方的に知識を受け取るだけの授業よりも、お互いに持っている情報や考え を伝え合うコミュニケーション活動の方が、学生に興味を持たせかつ喜びを 引き出す言語活動になる、と言う。また彼は教材などを教師がすべて決定す るのではなく、何をどのように学ぶかの意思決定に学生を少しでも参加させ ることが、学生の興味や関心を高める重要な要素である、と述べる。さらに Crookes & Schmidt(1991)は、学生にとって難し過ぎることもなく、やさし 過ぎることもなく、適当な難易度をもった課題を与えることが、達成時の喜 びを増す、と指摘する。

3.学習方略

言語習得に影響する要因にはさまざまなものがある。その中で学習者要因 には「適性」「動機づけ」以外に、「学習方略」があげられる。

「学習方略」についてはさまざまな定義がある。外国語の学習における

(5)

「学習方略」は、言語活動をより楽しく、より能率的で、新たな状況にも応 用できるようにするための具体的な行為である(Oxford,  1990)。「学習方略」

の定義と同じように、その種類や分類についてもいくつかの考えがあるが、

言語教育の視点からいえば、Oxfordは「直接的方略」と「間接的方略」を区 分することができると主張する。「直接的方略」は言語を実際に使用すると きに用いる方略であり、「間接的方略」は間接的に言語学習を促進させる方 略である。さらに、Oxfordは「直接的方略」を①記憶方略、②認知方略、③ 補償方略の3つに分類する。記憶方略は、たとえば単語のもつ意味や状況を イメージ化するなど、新しい言語知識を記憶したり、すでに記憶された知識 を呼び起こすのに役に立つ方略である。認知方略は、文の構造を分析したり 文章の要点をまとめるなど、論理的な思考や方法を用いて学習効果をあげる 方略である。補償方略は、不足する言語知識を補ったり修正したりしながら 言語活動を進める。同様にOxfordは「間接的方略」も、④メタ認知方略、⑤ 情意方略、⑥社会方略という3つのタイプに分類する。メタ認知方略は、具 体的な学習計画を立てたり、自らの言語活動を観察して評価するなど、自己 の学習活動を第三者的な視点でコントロールしながら学習を進める方略であ る。情意方略は、学習に伴う不安感を少なくしたり、できるだけ楽しく学習 活動を行おうとする方略である。社会方略は、わからないことを友人に聞い たり、中国語でメールを交換するなど、他者とのかかわりの中で学習活動を 進める方略である。

本論では心理学的立場に立って、中国語学習の実証的な研究を行いたい。

日本における中国語教育に一石を投ずることができればと願っている。

調査方法

以下の要領によりアンケート調査を実施した。

被験者:中国語入門を学習している大学1年生123名、中国語入門を終え、

中国語応用を学習している大学2年生125名。

調査項目:調査項目は以下の通りである。

1.達成関連動機に関連するもので、10尺度から成り立っている。

尺度Ⅰ−Ⅷまでは「達成関連動機づけ」(山内, 1983が作成した項目を参考

(6)

にして中国語の学習に使えるように一部修正・改編した)。尺度Ⅸ―Ⅹは

「内発的動機づけ」(Harter, 1981の作成した項目を参考にして中国語の学習 に適応するように一部修正・改編した)。

尺度Ⅰ−Ⅷまで各項目は、「ぴったりあてはまる」「たいていあてはまる」

「ややあてはまる」「あてはまらない」の4段階で評定した。なお項目番号の

(+)は「あてはまる」の反応に、(−)は「あてはまらない」の反応にそれ ぞれ得点することを意味する。

尺度Ⅰ―達成への道具的な活動性を測定する「活動性」

(+)中国語ができるようになることを夢見るよりも、実際に熟達しようと 頑張る。

(+)中国語学習に一生懸命努力する。

(−)困難な課題に直面した時、すぐにあきらめる。

(+)勉強すべきことを明日に延期しないで今日する。

(+)やろうと思うことは何でも精一杯努力する。

尺度Ⅱ―成功への願望を測定する「願望」。

(+)中国語が良くできるクラスの学生をモデルにして、自分の勉強を計画 しようと試みる。

(+)中国語がうまくなるようにという強い動機づけをもつ。

(+)クラスの人々よりもっと中国語に熟達したいという野心がある。

(+)自分の知っている人よりもっと中国語ができるようになりたい。

(+)自分がどれだけ中国語ができたかを、他人と比較する。

尺度Ⅲ―緊張を測定する「緊張」

(−)自分自身を語学能力はないと見なす。

(−)学習しようと思っている時、難題にぶつかってものんびりしていられ る。

(−)学習計画を立てないまま中国語の授業を受ける。

(−)中国語の勉強がまだ終わっていないのに、人に話しかけられると、そ の話に夢中になる。

(−)試験の準備をあまりしない。

尺度Ⅳ―自信を測定する「過度な自信と高慢さ」

(7)

(−)自分が立てた中国語の勉強の目標は、大抵自分にとって高すぎると思 う。

(−)自分の成績が他人に褒められると、決まりが悪い。

(+)自分が中国語の勉強がよくできた時、みんなが自分を尊敬すると思う。

(−)クラスの他の人が中国語のよい成績を取ると、自分を時々小さく感じ る。

(−)中国語の学習が上達した人の前では敬う気持ちになり、かしこまる。

尺度Ⅴ―勉強をしたくなくするテストへの不安を測定する「衰退不安」

(+)先生が「今からテストを行います」と言うと胸がドキドキする。

(+)学年末試験を受ける前、不安な気持ちになる。

(+)テストを受ける前、とても心配する。

(+)テストの準備が不十分な時、あわててしまって知っていることもうま く考えられなくなる。

(+)試験中に、良くできないというあせりで、ますます能率を悪くする。

尺度Ⅵ―学習を促進させるテストへの不安を測定する「促進不安」

(+)試験を受ける前に多少不安があっても、問題に取り組んだら不安な気 持ちは忘れる。

(+)1回だけの試験で総合成績が決められるような場合、他人よりも良い 点が取れる。

(+)試験前にあわてて詰め込んでも効果がないとよく言われるが、試験の すぐ前に詰め込むことができるし、試験でそれをうまく思い出せる。

(+)いったんテストが始まったら、どんなことにも気が散らない。

(+)重要な試験ほど良い成績が取れる。

尺度Ⅶ―成功したときに人間関係がだめになるのではないかという不安を測 定する「親和不安」。

(+)他人より中国語が上達すると、多くの友人を失うような気がする。

(+)勉強が良くできた人間は、優越感をもち、紳士気取りだと他人から思 われがちである。

(+)いったん中国語の成績がトップレベルに入ると、周りの人は仲間では あっても友人ではなくなる。

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(+)中国語が上達した時、自分が天才か、あるいはべテン師のように時々 感じる。

(+)中国語の成績が一度トップレベルになると、その後どうなるか不安に なることがある。

尺度Ⅷ―成功はしたいが、後で困ることがあるという心配を測定する「成功 回避」

(+)中国語が特に上達したことを、友人に話すのが楽しみである。

(+)他の人々の中国語がよくできた時、私はそれほどうらやましくない。

(+)いろいろな中国語テストに良くできるかどうかよりも、参加すること に意義があると思う。

(+)誰かと競う時、勝つよりも負ける方が良いと思うことが時々ある。

(+)他人との競争で成功して獲得したものは、他人と協力して得たものよ り大きいと思う。

尺度Ⅸ―関心を持った課題に大きな喜びを感じてやる気を出す動機を測定す る「内発的動機づけ」。

(+)中国語は面白いから勉強したい。

(+)難しい問題はやりがいがあると思う。

(+)もっと中国語の知識を身につけたいので、中国語を勉強する。

(−)中国語の勉強はつまらないと思う。

(+)中国語を勉強するのが楽しいので、一生懸命に努力する。

尺度Ⅹ―外部的な要因によって、やる気を引き出す動機を測定する「外発的 動機づけ」

(+)単位を取るために、中国語を勉強する。

(+)就職に役立つから、中国語を勉強する。

(+)中国語ができたら、格好いいと思われる。

(+)中国語は漢字であるから、単位が取りやすい。

(+)中国人と直接交流ができるから、中国語を勉強する。

2.中国語学習において認知された困難度に関するものを測定する。

尺度XI―この尺度は学生の中国語学習において認知された「困難度」を測 定する。筆者は中国語教育現場の経験から、この尺度を作成した。

(9)

①発音(母音、子音)②文法 ③会話 ④リスニング ⑤ヒヤリング

⑥作文 ⑦読解 ⑧翻訳―中文日訳、日文中訳

以上の項目において被験者(学生)は困難の有無を回答し、また回答した ものについて、4段階で評定する。

3.中国語の学習に効果的な学習方略に関するものを測定する「学習方略」

尺度XII―この尺度は学生の中国語学習における方略を測定する。この尺度 はOxford(1990)が分類した方略を参考にし、中国語の学習に適用するよう に筆者が修正・加筆した。具体的に言えば、以下の六つの下位尺度から構成 される。それぞれの方略について、利用するかどうかについて判断し、次に 利用する方略の場合に関しては、どの程度利用するかについて「大変よく利 用する」「利用する」「時々利用する」「たまに利用する」の4段階で評定する。

記憶方略:①丸暗記 ②イメージ化して記憶 ③聞きながらの暗記 ④連想 しながらの暗記 ⑤発音しながらの暗記

認知方略:⑥文章の構造分析 ⑦文章の要点のまとめ

補償方略:⑧文章の前後から意味の類推 ⑨会話、作文などで思い出せない 単語を知っている単語で間に合わせ ⑩日本語の漢字での対応

メタ認知方略:⑪学習計画の具体的な立案 ⑫学生の言語活動の観察・評価 情意方略:⑬学生の勉励 ⑭高得点を得たときに欲しい物を購入

⑮不安感の少ない、楽しい学習活動

社会方略:⑯友人に不明な点を質問 ⑰中国人留学生と中国語でメールの交 換

4.学業成績 100点満点で評価する。

5.授業評価 筆者は大学で現在使用されている授業評価を参考にし、2 つの下位尺度を設定する。1つは学生の受講態度に対する自己評価に関する 下位尺度、つまり、授業に出席する態度、予習と復習の程度、理解度、総合 自己評価から構成される。もう1つは授業自体に対する下位尺度項目、つま り教員の話し方、教員の熱意、授業内容の質、テキストと教科書の適切さ、

自分のためになるかどうか、興味が持てたかどうか、授業に対する総合的な 評価から構成される。評価については「とてもよい」から「悪い」まで4段 階で評価する。

(10)

調査の手続き 調査は両学年とも学期の最終授業のときに教室で実施し、そ の場で回収した。

寸劇授業の導入

筆者は上記の調査以外に、2年生の中国語授業で取り入れた学生による中 国語劇を考察した。寸劇による授業は、具体的には次のように実施した。1.

まず、学生に寸劇をさせることについて、意見を聞いた。2.学生のほとん どは賛成の意見であったが、その中に成績の評価になるかどうかを気にする ものがいた。筆者は寸劇をすることが直接評価に関係すると伝えた。3.グ ループに分け、それぞれのグループにテーマを決めさせた。4.決めさせた テーマに基づいて、図書館、パソコンなどを利用して、資料を調べたり脚本 を書かせたりした。教師はまず、学生が書いたものを評価し、その上で中国 語が正しいかどうか、全体の内容が適当かどうかを判断した。だめなものは 書き直しをさせた。⑤役割を分担させ、台詞の内容を覚えさせた。役割に関 係なく、脚本の全部を覚えさせた。⑥さらに本番の前に練習をさせた。また、

学生の練習についての感想を述べさせた。⑦以上の過程を終えて、最後に本 番である劇を行った。

結果と考察

データの分析:「達成関連動機づけ」の尺度について、10因子モデルを検討 するために、全項目に対して確認的因子分析を行った。その結果、標本サイ ズと母数の数を考慮すれば、モデルのデータとの適合性はよかった。また、

すべての項目の肯定率は目安の範囲内であった。

1.動機づけの強度

表1は「達成関連動機づけ」の各尺度における平均値、標準誤差、α係数、

各尺度の相関係数を示す。これにより中国語の学習における達成関連動機、

内発的動機と外発的動機の強度がわかった。

「達成関連動機づけ」尺度の妥当性については、各尺度の項目数とテスト の得点と分散から推定されたα係数(信頼係数ともいえる)が.64から.87ま でであり、内的一貫性は十分に高いと考えられる。この「達成関連動機づけ」

10尺度は中国語の学習において適用できるといえる。

(11)

この研究結果から中国語の学習における達成関連動機は、道具的な活動性

(以下「活動性」と略記)、成功の願望(以下「願望」と略記)、緊張、自信 と高慢さ(以下「自信」と略記)、学習を衰退させるテスト不安(以下「衰 退不安」と略記)、学習促進させるテスト不安(以下「促進不安」と略記)、 成功での親和不安(以下「親和不安」と略記)、成功回避から成り立ってい るのが分かる。基礎分析から、「活動性」「願望」「緊張」「自信」「促進不安」

は1.2年生ともほぼ同じであることがわかった。一方、「親和不安」の得点 は2年生の方が1年生より有意に高く、「成功回避」「衰退不安」の得点は1 年生が2年生より有意に高かった。このことから、1年生は中国語入門にあ たり、中国語のテストを受ける前に、不安な気持ちやあせりを抱いているこ とがわかった。2年生は学校生活に慣れ、ある程度友達関係や人間関係がで き、さらに中国語を勉強する時、テストへの不安は緩和されるが、成功した 時に友達関係を悪くさせるのではないかという不安が見られた。

平均値から、1.2年生ともは外発的動機の得点が内発的動機より高いこ とがわかった。つまり、本調査でみる限り、大学生は内部的要因によってよ りも、外部的要因によって中国語を勉強する傾向が強い。「外発的動機づけ」

は学生の中国語の習得を促す働きがあると考えられるが、教育現場では「内 発的動機づけ」が中心的な役割を果たす。従って、教師は学生の「内発的動 機づけ」をいかに育てるかが重要である。この点はDeci  &  Ryan(1985)の

尺度              1 年生           2年生           全体           α係数 

1.活動性            13.30(.08)        13.71(.07)      1 3.51      .87 

2.願望       11.07(.07)      11.12( .03)  11.10          .76  

3.緊張              13.61(.08)      13.21(.07)      1 3.41      .83 

4.自信              13.27(.06)      13.10(.05)      1 3.19      .79 

5.衰退不安           14.78(.07)      12.65(.08)      1 3.72      .77 

6.促進不安      13.76(.06)      13.12(.09)      1 3.44      .74 

7.親和不安          10.13(.08)      12.26(.02)      11.20      .61 

8.成功回避          12.17(.04)      10.16(.05)      11.17      .69 

9.内発動機      11.09(.14)      12.21(.27)      11.65      .67 

10.外発動機      13.24(.11)      12.67(.09)      12.96      .68          注:(  )の数字は標準誤差を示す。

表1 中国語の学習における達成関連動機の各尺度の平均値、標準誤差、α 係数

(12)

主張するところでもある。

2.「達成関連動機づけ」の尺度間の関係

表2は中国語の学習における達成関連動機の各尺度、内発的・外発的動機 の尺度の関係を示す。

この表は学年を問わず、全体の結果をまとめた。この表から、「活動性」

は「緊張」「衰退不安」と正の相関が見られた。「願望」は「親和不安」と正 の相関、「成功回避」と負の相関が見られた。「衰退不安」は「活動性」「緊 張」と正の相関、「自信」「促進不安」と負の相関が見られた。以上の検討結 果、中国語の学習における道具的な活動性は、緊張と中国語の学習を衰退さ せるテストへの不安と関係があった。また、中国語の学習における成功への 願望は中国語の学習における成功したときの親和への不安と関係があるもの の、中国語の学習における成功を回避することとも関係があった。すなわち、

学生はよい点数を取るために努力する意欲がある一方、成功を回避する傾向 も見られた。さらに、中国語の学習を衰退させるテストへの不安は達成への 道具的な活動性に関係があり、学習における緊張にも関係がある。中国語の 学習における自信と中国語の学習を促進させるテストへの不安との関係は負 の関係であった。つまり、達成への道具的な活動性が強ければ強いほど中国 語の学習を妨害になるテストへの不安が高くなり、緊張感が高ければ高いほ 注:*P<.05.  P はprobability(確率、確からしさ)の略、.05 は5%のことである。P<.05  は5%の有意水準で相関が認められる。−は負の関係を意味する。  

      

尺度       1      2      3      4      5      6      7      8      9      10  1.活動性 

2.願望        .18  3.緊張      .36*        .06  4.自信      -.00        -.21      .13  5.衰退不安        .30*        .26      .31*    -.33* 

6.促進不安        -.06        .07      -.18      .09        -.34*   

7.親和不安        -.02        .39*    -.16      -.35*      .27      .11  8.成功回避      .12      -.37*    -.04      -.07      -.15      -.02      -.14  9.内発動機      .32*      .29      .07        .11      -.09        .26        .00      -.01    10.外発動機      .30*      .10      .00        .07        .00        .07      .13        .10      .60   

表2 中国語の学習における達成関連動機の各尺度の相関関係

(13)

ど、中国語の学習を妨害するテストへの不安が高くなる。逆に、自信があれ ばあるほど「促進不安」が高ければ高いほど、中国語の学習を妨害する不安 がすくなくなることがわかった。適当な活動と緊張感があるほうがよいとい える。

3.「達成関連動機づけ」と成績、出席、自己評価、授業評価の相関関係 表3は中国語の学習における達成関連動機と成績、出席、自己評価、授業 自体への評価の相関関係を示す。表3の結果に基づいて、図1と図2を作成 した。

1年生の場合、成績が「親和不安」を除いて、他のすべての尺度とも関係 があった。ただし「衰退不安」との関係は負であった。出席点は「活動性」

「願望」「「自信」と関係があった。自己評価は「活動性」「自信」「衰退不安」

「促進不安」と正の関係があった。授業自体への評価が「活動性」「願望」

「促進不安」「内発的動機」「外発的動機」と正の関係、「衰退不安」と負の関 係があった。2年生の場合、成績点は「活動性」「願望」「自信」「内発的動 機」「外発的動機」と正の関係、「衰退不安」と負の関係があった。出席は

「活動性」「願望」と正の関係があった。自己評価は「活動性」「願望」と正 の関係があった。授業自体への評価は「活動性」「願望」と正の関係、「衰退 不安」と負の関係があった。

尺度          成績点          出席点          自己評価        授業評価 

          1年生   2年生  1年生  2年生  1年生  2年生  1年生  2年生 

活動性      .68*        .76*      .5 4*        .71*      .47 *        .53*      .51*         .66* 

願望      .77*        .54*      .3 9*        .35*      .16       . 38*      .30*         .36* 

緊張      .45*        .24      .08      .11      .10      . 03      .01      .14  自信       .27      .30*      .3 7      .29*      .3 1      . 19      .16      .19  衰退不安    -.39*        -.30*        -.24      - .01      .31*        .20      -.32*      -.39*     

促進不安      .37*        .07      -.09      - .03      .43*      . 29      .36*        .21  親和不安      .12      .24      .03      .00      .04      . 06      .01      .18        成功回避      .30*        .17      .12      .10      .17      . 24      .02      .01  内発動機      .31*        .29*      .0 7      .11      .23      . 27      .29*        .36* 

外発動機       .45*        .41*      .1 6      .19      .14      . 07      .32*        .30*   

注:*P<.05、これは5%の有意水準で相関が認められる。−は負の関係を意味する。 

表3 中国語の学習における達成関連動機と成績点、出席点、自己評価,

授業評価との相関関係

(14)

以上表3、図1と図2の分析結果から以下のことが明らかになった。1年 生の中国語の成績については、道具的な活動性、成功への願望、学習におけ る緊張と自信、学習を促進するテストへの不安との関連が認められるが、中

 

-0.5 0 0.5

1 活動性

願望

緊張

自信

衰退不安 促進不安

親和不安 成功回避 内発的動機

外発的動機

成績点 出席点 自己評価 授業評価

 

-0.5 0 0.5

1 活動性

願望

緊張

自信

衰退不安 促進不安

親和不安 成功回避 内発的動機

外発的動機

成績点 出席点 自己評価 授業評価

 

図1 1回生の達成関連動機尺度と成績点、出席点、

自己評価、授業評価との関係

図2 2回生の達成関連動機と成績点、出席点、自己 評価,授業評価との関係

(15)

国語の学習を衰退させるテストへの不安からは成績を悪くさせる影響を受け ると考えられる。一方、2年生の成績についてはほとんど1年生と同じ傾向 が見られる。1、2両学年の相違は、達成自体における緊張とほとんど関係 がないこと、「促進不安」も関連性は見当たらないことである。1, 2両学年 とも、成績は中国語の学習における内部的要因と関係があり、外部的要因か らも影響があるといえる。出席については、両学年とも中国語の学習におけ る道具的な活動性、成功への願望、達成自体における自信と関連性があった。

自己評価については、両学年とも、中国語の学習における道具的な活動性と 強い関連性があった。1年生の場合、達成自体における自信、テストの不安

(促進と衰退)と関係があるのに対して、2年生の場合、成功への願望と関 連性が見られた。授業の評価については、両学年とも中国語の学習における 道具的な活動性、成功への願望と正の関連が見られ、衰退不安と負の関連性 もみられ、また内的な動機づけ、外発的動機づけとも関係があった。1年生 はそれ以外に促進するテストへの不安にも関連性が見られた。

全体的な特徴として、成績、出席、自己評価、授業自体への評価が道具的 な活動性、成功への願望、達成自体における自信と関連があり、さらに、

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」とも関連があった。しかし、親和 不安と成功への回避とは関連性が見られないことが明らかになった。

4.認知された課題の困難度

表4は中国語に対して、認知された課題の困難度を測定した結果を示す。

発音        文法  会話  リスニング    ヒヤリング  作文  読解

a中 中a

    翻訳 

母音  子音                                                       

困難あり  1年生 

  .97      .77        .64        .73      .61      .74      .60        .49      .42      .60  困難あり  2年生 

  .67      .55        .52        .61      .62      .57      .56        .37      .58      .34  困難なし  1年生 

    .7        .23        .36        .27      .39      .26      .40        .51      .36      .61  困難なし  2年生 

    .33      .45        .48        .39      .38      .43      .44        .63        .42        .60   

注:「日  a中」は日本語を中国語に、「中a日」は中国語を日本語に翻訳することを示す

表4 中国語の学習において、認知された困難度(割合)

(16)

発音については、1, 2年生とも困難であると思った学生の割合が高い。

特に一年生は七割超える結果であった。この結果、日本人学生は、中国語の 発音が難しいことを裏づける。文法については、中国語に慣れない1年生に とっては困難と思った学生の割合が高い、とはいえ、入門段階を終わった2 年生でも半数以上の割合を保っている。会話については、どの学年にも難し いとわかった。リスニングとヒヤリングも学年問わずに困難であるといえる。

作文については、二年生で困難と思った学生の割合が減っていることがわか ったが、やはり困難と感じた学生の方が多かった。読解と翻訳については、

両学年とも、半数以上の学生が、中文日訳は平易と感じた。

以上の結果をまとめると、日本人学生は中国語の学習において、弱いと思 われるのは発音、文法、会話、リスニング、ヒヤリングであり、比較的に困 難が少ない、または得意なところが翻訳(中文日訳)と読解であることがわ かった。これらの結果は学生が認知したものなので、成績に関係があるかと 思われるが、必ず成績も同じような結果になるかどうかについては、さらな る調査研究が必要である。本調査結果が中国語の教育に携わる教員にとって 参考になればと願っている。

5.学習方略

次に、学生は中国語の学習にどんな学習方略を使うかについての結果をま とめた。表5は学習方略の利用状況、平均得点、成績との関係を示す。表5 に基づいて、図3、図4、図5を作成した。

1,2年生とも、記憶方略については、利用する割合の高低順序は、①の 丸暗記方法、②のイメージ化して記憶する方法、③の聞きながら暗記する方 法であった。④の連想暗記と⑤の発音しながら暗記する方法を利用する割合 は比較的少ないことがわかった。各方略に対して学生がどの程度を利用した かを調べるために方略ごとに平均の得点をまとめた。1年生では記憶利用の 程度が高低順序で①の丸暗記、②のイメージ化して記憶、⑤の発音しながら 暗記、④の連想暗記、③の聞きしながら暗記であったのに対して、2年生で はそれが⑤の発音しながら暗記、①の丸暗記、②のイメージ化して記憶、③ の聞きながら暗記、④の連想暗記であった。認知方略について、⑥の文の構 造を分析する方略と⑦の文章の要点をまとめる方略にはどの学年にも利用率

(17)

               

        利用割合                            平均得点                         成績との関係 

方略          1年生  2年生      1年生  2年生       1年生  2年生  

記憶方略   

①丸暗記      .80      .79      3.1        3.0      .64      .57 

②イメージ      .62      .73      2.7        2.0      .28      .40 

③聴講暗記      .63      .51      1.7        1.8      .54      .29 

④連想暗記      .23      .34      1.6        1.8      .36      .28 

⑤発音暗記      .45      .41      2.3        3.4      .54      .17 

認知方略  ⑥構造分析      .73      .75      3.2        3.1      .37      .40 

⑦要点まとめ      .56      .63      2.1        2.4      .36      .51 

補償方略  ⑧意味推測        .38      .63      3.3        3.7      .32      .39 

⑨既知単語        .35      .57      2.2        2.5      .29      .34 

⑩日本語漢字      .46      .48      3.1        3.0      .24      .27 

メタ認知方略   ⑪学習計画        .86      .89      3.9        3.4      .11      .53 

⑫言語観察        .05      .10      1.2        1.0      .10      .09 

情意方略  ⑬自己激励        .47      .43      2.2        2.6      .34      .39 

⑭買物            .11      .24      0.7        1.4      .12      .03 

⑮楽しい学習    .36      .42      2.1        3.4      .39      .30 

社会方略  ⑯友人に聞く      .89      .87      3.1        3.9      .28      .21 

⑰交流          .01      .08      0.3        0.5      .04      .11  表5 中国語の学習において利用された方略、成績点との関係

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 方略

割合

利用割合 1 年生 利用割合  2 年生

  図3 中国語学習において利用する方略の割合

(18)

が高く、しかも利用者にとって、⑥の文の構造を分析する方が⑦の文章の要 点をまとめるより強かった。補償方略については、⑧の利用割合の高低から 見れば、1回生では⑩の日本語の漢字で対応する方法、⑧の文章の前後か ら意味を推測する方法、⑨の思いつかない単語を知っている単語で間に合わ せる方法の順番であった。しかし、2年生では⑧の文章の前後から意味を推 測する方法、⑨の思いつかない単語を知っている単語で間に合わせる方法、

⑩の日本語の漢字で対応する順であった。上述の結果から、2年生はより高 級な認知方略を使うようになったことがわかった。メタ認知については、

0 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 方略

平均得点

平均得点  1 年生 平均得点 2 年生

  図4 中国語学習において利用する方略の平均得点

0 0.2 0.4 0.6 0.8

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 方略

相関係数

成績との相関 1 年生 成績との相関 2 回生

  図5 中国語学習において利用した方略と成績の相関関係

(19)

1, 2年生とも⑪の具体的な学習計画を立てる方法が多かったが、⑫の自ら の言語活動を観察して評価する方法はあまり使われない。このことから、語 学学習に欠かせない自己観察が、不十分なことがわかった。情意方略につい ては、1, 2年生とも、利用する方略の高低順序が⑬の自分自身を励ませる 方法、⑮の不安を少なくして楽しく学習活動を行う方法、⑭の試験がよくで きたとき、欲しかった物を買う方法であった。利用の程度からみても、「利 用割合」の順番と同じであった。

以上の結果から、学生には学習における情意方略の成熟性があることを示 した。これを生かして、学生に自信をつけるような励みを与える方がより効 果的であろうと思った。社会方略については、友人同士の助け合いが多く、

中国人留学生などの交流が非常に少ないことわかった。

教師は学習方略の指導をするに際して、まず学生が外国語を学ぶ過程で、

さまざまな学習方略を意識しながら、また時には無意識のうちにそれを使っ ていることを知る。優れた学習者は、効果的な学習方略をいくつか選択し、

それらを適当に組み合わせて、与えられた課題を効率的に解決し言語能力を 高めていく。最近学習方略が言語習得に果たす役割が、一層重要になってき た。なぜなら、性格やIQなどいくら指導してもほとんど変化がみられない が、学習方略は適切な指導を行うことにより習得することが可能だからであ る。Cohen(1998)よれば、学習方略の本質は、単に効果的な方略の使い方 を教えるだけではなく、より自律的な学習者を育てることにある。このこと は、学習方略の指導には、学生自身が方略の使い方を振り返り、自己評価を し、いかに改善するかを考える機会を与えることが含まれることを意味する。

すでに、CALLA(The Cognitive Academic Language Approach)(Chamot &

O’Malley, 1994)がアメリカで提案され、実践されている。CALLAでは、英 語を使ってさまざまな教科内容を学ぶ過程で、方略の指導を準備、提示、練 習、評価、拡大の5つの段階に分けて実施している。CALLAの指導法は、

方略の指導法として非常に体系的なものである。しかしそのために、かえっ て決められた教科書を決められた進度で指導する日本の学校で導入すること は難しいと思われる。人間の五感の使用に関する認知方略の指導については、

教室の中には異なる感覚が得意な学生が混在しており、多様な言語活動を提

(20)

供することにより多様な得意感覚をもつ学生の要求に答える必要がある。以 上のような検討結果は、学生が外国語を習得する時、さまざまな要因が学生 の言語学習に影響を与えることを示している。

学生の外国語の勉強をどのように生かすか、どのように動機づけるかにつ いて、また、どのようにマイナス不安を克服し、どのように学習方略を指導 するかについて、本論で得た以下の結論は参考になるであろう。

「達成関連動機づけ」に関しては、中国語の学習において(他の語学学習 もそういえると思うが)達成への道具的な活動性、成功への願望を高めるこ とこそ何よりも重要である。学習に伴う不安が学習を衰退させるばかりでは なく、促進させるものもあった。中国語の学習においては、どの学年にも、

内発的な動機づけから来たものばかりではなく、外部からの要因も影響があ ることを証明した。教師は学生を指導する時、学生に関心をもたせ、喜びを 引き出すために、一方的に知識だけを受け取るだけの授業よりも、お互いに もつ情報や考えを伝え合うコミュニケーション活動の方が、学生に興味を持 たせ、喜びを引き出す言語活動になる。教材などを教師がすべて決定するの ではなく、何をどのように学ぶかの意思決定に学生を少しでも参加させるこ とが、学生の興味や関心を高めるのに重要な要素であると思われる。

6.寸劇授業による収穫

筆者は学生主役の学習法が学生の興味を引き起こさせ、学生の達成感を感 じさせ、学生のコミュニテイ能力を伸びさせるという観点から、2年生の中 国語授業で学生に中国語による寸劇を取り入れた。その結果,この試みはと ても成功した。授業に取り組むに当たっては、以下の諸点に留意した。

①学生に劇をさせることについて意見を聞く。

学生が学習の主人公であるので、教師は学生を積極的に授業の内容、進め 方などの検討に参加させ、学生の興味を引き起こすように努めるべきである。

②学生のほとんどは賛成意見であるが、成績の評価になるかどうかについ ては気になっている。筆者は寸劇が直接評価に関わると伝えた。

学生は成績の評価に大きな関心がある。成績と関係があることを知れば、

安心感も得られ、外発的ものから寸劇を取り組む意欲が起こる。

③グループ分けをし、それぞれのグループにテーマを決めさせる。

(21)

教師に決められたテーマに関心がない場合、勉強にも影響がでるので、筆 者はあえて自由に決めさせる。また、それぞれグループの違ったテーマによ り、同時に多くの内容のものが勉強できる。また、グループ作業によると、

語学学習に伴う緊張感も緩和させ、学生間の良い関係作りに役立ち、協力関 係が出来れば、一緒に楽しくやろうという気ができ、お互いの得意点と弱い 点を補い合い、お互いに学ぶことができる。さらに、学習における社会方略 をより多く利用することにつながる。

④決めさせたテーマに基づいて、学生に図書館、パソコンなどを利用して、

資料を調べさせ、脚本を書かせる。教師はまず、学生が書いたものを評価し、

その上に中国語が正しいかどうか、全体の内容が適当かどうかを判断する。

だめなものは書き直しをさせる。

教師は、学生が努力したことを評価することによって、学生に自信をつけ させ、学生の気持ちを理解し、学生の消極的な感情を克服する手助けをする ことができる。その上で、教師は学生の文章を直し、欠点を指摘し、学生に 納得しやすくさせる。また、学生自身が書いた「教材」を使い、それを寸劇 にすることによって、目新しさと親しさの備わった手作り教材を使う学習が 定着する。

⑤役割を分担させ、台詞の内容を覚えさせる。役割に関係なく、脚本の全 部を覚えさせる。

学生は自分自身が書いた台詞を一番よく理解し、馴染み深いのでそれを覚 えやすい。どの役割になっても、脚本の内容を全部に覚えたことで寸劇がス ムーズ進行する。纏まった中国語の台詞を覚えれば、会話、作文も上達し、

中国語の総合能力のレベルアップに役立つ。

⑥本番前に練習をさせる。また、学生が練習をどのように感じているか感 想を述べさせる。

語学学習には反復練習がとても大事である。練習することによって、学生 は自分自身の学習を点検し、どの点をもっと勉強すべきか自分で判断できる ようになる。また、練習を通して文章の理解を深める。一方教師は、学生の 感情を常に把握し、励ましを与え、一層大きな安心感を与える。学生は完全 に不安から抜け出し、本番に向かう準備を進める。

(22)

以上の過程を終えて、本番の寸劇を行う。

どのグループも協力し合って、すばらしい寸劇ができた。テーマがさまざ まで、どのグループの学生も馴染み深いものだった。しかも、どの学生も正 しい中国語を使って、それぞれの役割を上手に演じた。筆者は本当に感動し た。この時、学生には「楽しかった」「中国語が本当に好きになった」「もっ とやりたい」「これからの発表はもう緊張も無くいける」という声が多くあ った。

さらに、学生による中国語の寸劇の取り入れについては、心理的な面から の分析が必要である。

まず、教師は、学生にとってカウンセラー的存在である。学生は最初に教 師に非常に依存する。教師は上手にこの依存から学生を脱却させるように努 めるべきである。このためには教師の信頼、助言、理解が必要である。教師 から受けた安心感があればこそ、学生は進んで授業に参加する意欲ができ、

上達するために努力していく。

次に、学生間の関係づくりが非常に重要である。学生は、教師とのやりと りだけではなく、お互いのやりとりからも学習することができる。また、教 師は、学生の感情に応じて、学生の気持ちを理解し、学生の否定的な感情と 衰退不安を少なくさせ、学生に安心感を持たせるように学習させる。安心感 は学習過程の基本的な要素であり、学習の動機づけにも関係する。

また、評価については、学生の関心のある問題であり、教師は学生の努力 した点に一定の評価を与え、さらに努力をさせる。そして学生が、評価のた めの勉強から、自ら進んで勉強する方向へいくような動機づけと達成感を得 られるようにする。ここに教師のやりがいがある。寸劇は、全身反応を伴い、

五感を利用する学習よりももっと印象深く、忘れにくい効果がある。

最後に、寸劇することによって、人間関係の学習もできる。いわゆる「学 習は人である」(カラン, 1976)、すなわち、学習は人々の間の分かち合いで あるといえる。

寸劇のテーマが全く自由で、学生がどんなテーマをするか迷ったので、テ ーマをきめるまでに時間がかかった。この点が反省点としてあげられ、今後 十分に検討しなければならないと思った。

(23)

参考文献

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李     艶

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A Chinese Study Seen from Psychological Aspects

––With Special Emphasis on a Questionnaire of University Students––

Yan L

I

Key words:Chinese, psychology, motivation, evaluation

参照

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