• 検索結果がありません。

電波空間仮想化における

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "電波空間仮想化における "

Copied!
42
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

電気通信大学大学院 情報理工学研究科 平成24年度 修士論文

電波空間仮想化における

ソフトウェア無線処理の負荷分散による効率化

学籍番号 1130057 氏名 野並 裕三

総合情報学専攻 セキュリティ情報学コース

主任指導教員 市川 晴久 印 指導教員 梶本 裕之 印

提出日 平成 25 年 1 月 30 日(水)

(2)

i

修士論文 2012 年度(平成 24 年度)

電波空間仮想化における

ソフトウェア無線処理の負荷分散による効率化

論文要旨

ユビキタスネットワーク社会では,RFIDやセンサを主とする電子タグが多く登場し ていくと予想される.しかしながら,RFIDやセンサの無線方式は端末ごとに設計され る傾向が強く,複数の電子タグが混在している環境ではその電子タグに応じた複数のイ ンタフェースを用意する必要がある.その問題を解決するために,電波空間を仮想化す る事によって様々な無線方式を固有のインタフェースに依存しない形で処理を行う電 波空間仮想化というシステムが提案されている.

しかしながら,電波空間仮想化を用いたシステムでは広い帯域を仮想化する必要があ るため,入力信号としてシステムにかかる負荷が大きくなるという問題が存在している.

この問題を解決するためには,負荷分散を行う必要があると考えられる.

本論文では電波空間仮想化を用いたシステムの負荷分散による効率化を目的として,

電波空間仮想化を実装したシステムであるADUNにおいて,特に負荷がかかると考え られる受信部の負荷をサンプラーと受信部と配信可能帯域の関係性,およびリーダサー バ部の配信リクエストに対する処理に絞って測定を行った.そして,その結果から受信 部の負荷特性や負荷分散のシステムについて考察を行った.

その結果,受信部においてサンプラーが増加した際のサンプラーの台数とキュー溢れ が発生しない最大サンプリング帯域の関係と,台数によるオーバーヘッドの存在を確認 する事ができた.また,サンプラーの増加による広い帯域をスケーラブルにリーダサー バ部に配信できることも判明した.

これらの調査結果から,電波空間仮想化を実装したシステムにおいてリーダサーバ部 からの要求に応じて受信部のシステムがスケーラブルに負荷分散を行うシステムの可 能性について考察を行った.

キーワード

1.電波空間仮想化 2.ソフトウェア無線 3.RFID 4.処理負荷

電気通信大学大学院 情報理工学研究科 総合情報学専攻

(3)

ii 目次

第1章 序論 ... 1

1.1 研究背景 ... 1

1.2 研究目的 ... 2

1.3 研究課題 ... 3

1.4 本論文の構成 ... 3

第2章 ADUNと本研究の位置づけ ... 5

2.1 電波空間仮想化 ... 5

2.2 ADUN (Appliance Defined Ubiquitous Network) ... 6

2.3 関連技術 ... 7

2.3.1 ソフトウェア無線(Software Defined Radio) ... 7

2.3.2 GNU Radio ... 8

2.3.3 USRP(Universal Software Radio Peripheral) ... 9

2.4 本研究の位置づけ ... 9

第3章 負荷分散と効率化 ... 11

第4章 負荷測定実験 ... 12

4.1 実験1:複数台のサンプラー接続による負荷特性 ... 12

4.1.1 実験目的 ... 12

4.1.2 実験環境 ... 12

4.1.3 実験手法 ... 14

4.1.4 実験結果 ... 15

4.2 実験:2バンドパスフィルタ可変時の負荷特性 ... 17

4.2.1 実験目的 ... 17

4.2.2 実験環境 ... 18

4.2.3 実験手法 ... 20

4.2.4 実験結果 ... 20

第5章 考察 ... 22

5.1 サンプラーの台数とカバー可能なサンプリング帯域の関係 ... 22

5.2 サンプラーの台数によるオーバーヘッドの考察 ... 23

5.3 受信部における負荷分散の可能性 ... 25

第6章 結論 ... 27

謝辞 29 参考文献 30 付録A ADUN対応タグ ... 32

A.1 NIRE type2 ... 32

A.2 NIRE type3 ... 33

(4)

iii

A.3 Spider ... 34

付録B 実験データ ... 35

B.1 4.1における実験結果 ... 35

A.2 4.2における実験結果 ... 36

(5)

iv 図目次

図 1-1 電波空間仮想化の概要 ... 2

図 2-1 電波空間仮想化を実現したシステム構成図 ... 6

図 2-2 ADUNの構成 ... 7

図 2-3 GNU Radioの基本概念 ... 8

図 3-1 ADUNにおける配信処理の構成図 ... 11

図 4-1 実験1の実験構成図 ... 13

図 4-2 実験1における受信部とリーダサーバ部の処理フロー ... 14

図 4-3 最大サンプリング帯域と受信部のCPU使用率の関係 ... 16

図 4-4 ADUNにおける電波空間情報配信形式 ... 18

図 4-5 実験2の実験構成図 ... 19

図 4-6 実験2における受信部とリーダサーバ部の処理フロー ... 20

図 4-7 バンドパスフィルタの通過帯域と各処理のCPU使用率の関係 ... 21

図 5-1 最大サンプリング帯域とバンドパスフィルタのCPU使用率の関係 ... 24

図 5-2 最大サンプリング帯域と周波数シフトのCPU使用率の関係 ... 24

図 5-3 オーバーヘッド回避のための負荷分散システムの構想と接続例 ... 26

(6)

v 表目次

表 4.1 実験1で用いたマシンの性能 ... 13 表 4.2 実験で測定した最大サンプリング帯域 ... 15 表 4.3 実験2で用いたマシンの性能 ... 19

(7)

1

1 章 序論

1.1 研究背景

ユビキタスネットワーク社会では,RFID[1]やセンサを主とする電子タグの多種多様 な利用とその普及が期待されている[2][3].しかしながら,RFID やセンサの無線通信 方式を端末ごとに設計される傾向が強く,複数の電子タグが混在している環境ではその 電子タグに応じた複数のインタフェースを用意しなければならない.これはコストなど の面でユーザに大きな負担となると考えられる.さらに,各無線通信方式のネットワー クが単一で閉じてしまっており,無線通信方式が相互のネットワークに接続し,情報を やり取りができないという問題がある.

これらの問題を解決するために,電波空間を仮想化することによって様々な無線方式 を固有のインタフェースに依存しない形で処理を行う電波空間仮想化というシステム が提案されている[4][5]. 電波空間仮想化の概要を図 1-1に示す.

電波空間仮想化では,汎用的なサンプラーを持った受信部が現実の電波空間の情報を 一括して集め仮想化された電波空間を構成する.その仮想化された電波空間内の電波情 報を.仮想化された各無線通信方式に対応した送受信機を用いて電波情報を復調してい くこととなる.したがって,ユーザは仮想化された送受信機を入れ替えることによって,

無線通信方式毎にインタフェースを変えることなく仮想化された電波空間内から任意 の電波情報を取得する事が可能となる.

その電波空間仮想化を実現したシステムとして,市川[6][7][8]らは Appliance

Defined Ubiquitous Network(ADUN)を提案している.ADUNでは,ソフトウェア無

線技術(Software Defined Radio, SDR)[9]を用いて各無線方式の送受信機を仮想化し,

これらの仮想化した送受信機を一つのネットワーク上に置く事によって,電波空間仮想 化を実現する.

しかし,このように実現したADUNシステムにおいて各機能にかかる負荷は不明で ある.負荷を知る事は,ADUN システムを実現させた際のシステムの規模やシステム を動かすために必要なコストを知るために重要な事であると考えられる.

本研究では,電波空間仮想化の実現例としてADUNシステムの負荷を測定し,シス テムの処理における負荷の変化の特徴である負荷特性を調査する.その結果から,電波 空間仮想化を実装したシステムにおける負荷を考察し,システムの負荷を最小にするよ うな効率化の手法について検討する.

(8)

2

図 1-1 電波空間仮想化の概要

1.2 研究目的

本研究の目的は,電波空間仮想化を利用したシステムにおいてより効率の良い負荷分 散を実現する事である.

電波空間仮想化において,仮想化しなければならない電波空間は広い帯域に及ぶため,

仮想化された電波空間は巨大なデータとして処理されることとなる.したがって,シス テムの処理にかかる負荷は大きくなることが予想される.これより,電波空間仮想化を 実現したシステムにおいて,システム全体にかかる負荷をより小さくするように効率化 を行った負荷分散を実装する事が必要だと考えられる.

システム全体の負荷を小さくするような効率の良い負荷分散を実現する事によって,

電波空間仮想化を利用したシステムにおいてサーバ等の各要素の構成を最小化,さらに システム全体の規模の縮小,コストの縮小などの効果が期待できる.この規模やコスト の縮小が実現する事によって,電波空間仮想化を用いたシステムの実現や普及の後押し になるとも考えられる.

しかしながら,電波空間仮想化において負荷分散の方式について十分に議論されてい るとは言えない.また,負荷分散を行うために必要な負荷特性についても同様である.

したがって,負荷特性の調査を行う事によってより良い負荷分散の方式が見つかる可能 性が考えられる.したがって本研究では,負荷特性を調べるというアプローチで負荷分 散の効率化について検討していく.

(9)

3

1.3 研究課題

本研究では電波空間仮想化を利用したシステムの代表例としてADUNを用いた.

本研究の課題は,負荷分散の効率化を図るために,電波空間仮想化を用いたシステム であるADUNを測定し,システムの負荷特性を明らかにすることである.

負荷特性とは,特定の処理における負荷の変化の特徴である.システムの負荷特性を 明らかにする事によって,負荷特性に合わせた負荷分散を行う事ができる.これにより,

負荷特性によるオーバーヘッドを最小限に抑える事ができる.

ADUNにおいて,受信部は無線信号のサンプラーであるUSRP(Universal Software Radio Peripheral)[10]を複数台用いてサンプリングされた電波空間の情報を受け取り,

リーダサーバ部に電波空間情報を配信する.

ADUN の構成において課題となると考えられるのは,受信部とサンプラーの関係が 十分に検討されていない事である.実現を考えた際に,受信部の性能とサンプラーの接 続可能台数,配信可能帯域の関係を知らなければ電波空間情報の配信において負荷を最 小化するようにスケーラブルにシステム構成を行う事が難しいと考えられる.また,受 け取った広帯域のデータを効率よく利用するために,より多くのリーダサーバ部へスム ーズに配信する必要がある.したがって,リーダサーバ部の配信リクエストに対する処 理の分散法についても問題となると考えられる.

上記の問題を解決することによって,システム全体の負荷を小さくするような負荷分 散方式が検討できると考えられる.また,上記の問題は受信部の処理に依存しているた め,受信部の負荷特性を明らかにすることによってこれらの問題解決についての指針を 与えることができると考えられる.

1.4 本論文の構成

本論文の構成は以下の通りである.

第1章 序論

第2章 ADUNと本研究の位置づけ 第3章 負荷分散と効率化

第4章 負荷測定実験 第5章 考察

第6章 結論

まず,第2章で本研究において検証の対象となるADUNについて解説し,関連研究 と共に本研究の位置づけを行う.第3章ではADUNにおける負荷分散と効率化につい

(10)

4

て解説する.第4章では,実際に2つの負荷測定実験を行いADUNの負荷の特性につ いて述べる.第5章では,前章の実験結果に基づき電波空間仮想化における負荷分散の 効率化について考察する.第6章では,研究の成果と今後の展望について述べる.

(11)

5

2ADUN と本研究の位置づけ

本章では,本研究の対象である電波空間仮想化と,それを実装したシステムである

ADUN,およびADUNの関連技術について解説を行い,最後に本研究の位置づけにつ

いて述べる.

2.1 電波空間仮想化

電波空間仮想化とは汎用的なサンプラーによって実空間の電波環境をサンプリング し,仮想化された電波空間を構成する技術である.電波空間仮想化を実装したシステム の構成を図 2-1に示す電波空間仮想化を実装したシステムは,汎用的なサンプラーで あり電波空間サンプリング装置と電波空間情報配信サーバとサービス処理システムに よって構成される.サービス処理システムと電波空間情報配信サーバはネットワークを 通して接続されており,電波空間情報配信サービスは電波空間サンプリング装置から電 波空間情報を受け取り,サービス処理システムの要求に応じた周波数と帯域の電波空間 情報のみを前処理して受け渡す.サービス処理システムは,内部に仮想化された無線通 信の送受信機を持っており,受け取った電波空間情報から電波情報の復調を行い,得た データをアプリケーション等に使用する.

電波空間仮想化を実装したシステムでは以下のようなメリットが挙げられる.

 サービス処理システム上で動く仮想化された受信部を変える事によって新しい 無線通信方式にも簡単に対応する事ができる.

 電波空間情報配信サーバとサービス処理システムがネットワーク越しに使用で きるため,無線LANアクセスポイントのような共通の情報基盤として利用が可 能となる.

 電波空間情報をデータとして収集するため,現実空間の電波空間情報のアーカイ ブなどが容易に行える.

(12)

6

図 2-1 電波空間仮想化を実現したシステム構成図

2.2 ADUN

(Appliance Defined Ubiquitous Network)

ADUNの構成を図 2-2に示す.ADUNは,大きく分けてサンプラーと受信部,リー ダサーバ部,代表サーバ部で構成されている.

受信部では,サンプラーから入力される信号をリーダサーバ部からのリクエストに応 じて前処理を行い,配信信号として配信する.リーダサーバ部はネットワークを介して 受け取った配信信号を必要な無線通信方式で復調を行い,得たデータをアプリケーショ ン等に用いる事となる.受信部とリーダサーバ部は互いに複数存在しており,代表サー バは受信部の状態を見て各リーダサーバ部の接続先をリーダサーバ部に通知する.

ADUN では,これらの機構を用いる事で,電波空間仮想化を実現し無線通信方式に 依存しない無線処理を行う事を実現している.

本研究で用いたADUNシステムでは,サンプラーとしてUSRP,ソフトウェア無線 処理のツールキットであるGNU Radio[11][12]を用いている.また,このADUNシス テムにおいてリーダサーバ部が対応している無線方式は,アクティブ型RFタグである NTT-AT社のNIREtype2[13]およびNIREtype3[14],RF-CODE社のSpider V[15]の 3種類である.

(13)

7

図 2-2 ADUNの構成

2.3 関連技術

2.3.1 ソフトウェア無線(Software Defined Radio)

ソフトウェア無線(Software Defined Radio, SDR)とは,一台の無線機の制御ソフト ウェアを変更する事によってハードウェアに変更を加えることなく,無線通信方式を切 り替える事が可能な無線通信技術である.ソフトウェア無線技術を利用する事によって,

単一のハードウェア上で出力や周波数帯,変調方式が異なる様々な無線通信方式を実装 する事が可能となる.[16][17]また,近年ではソフトウェア無線を拡張した概念として 電波環境や利用者のニーズを自動で認知し,自動的に最適な通信を行うコグニティブ無 線が注目されている[18][19][20].

ADUNではソフトウェア無線技術を用いる事によって受信部の仮想化を実現してい る.それにより,ユーザは仮想化電波空間内から任意の電波情報を引き出す事が可能と なる.また,ソフトウェア無線技術を使用するため,ADUNでは無線通信方式をソフ

(14)

8

トウェアとして実装する事ができ,比較的容易に新しい無線通信方式を追加する事がで きる.

2.3.2 GNU Radio

GNU Radioとは,ソフトウェア無線のために開発されたオープンソースのツールキ

ットである.後に説明するUSRPと親和性が高いため,無線通信分野の研究や開発で 広く使用されている.[21]

GNU Radioの最も基本的な概念はFlow-graph(処理の流れ)とBlockである.基

本的な概念を図 2-3 に示す.多くの GNU Radio アプリケーションはたった一つの

Flow-graphを含み,その流れに沿ってデータが流れる.実際の信号処理はBlockで行

われ,理想的にはどのBlockも一つの役割のみを果たす.これにより,GNU Radioは モジュール性と柔軟性を実現している.Blockはプログラミング言語C++[22]で実装さ

れ,その Block 同士を組み合わせ Flow-graph を構成する部分はプログラミング言語

Python[23]で実装される.このアーキテクチャによって,豊富なライブラリを使って素 早くアプリケーションを作成できるというPythonの恩恵を受けつつ,リアルタイムで 高スループットの無線システムを実装することが可能となる.

この概念を用いる事により,ADUNではリーダサーバ部の無線通信方式による柔軟 な組み換えを実現している.

図 2-3 GNU Radioの基本概念

(15)

9

2.3.3 USRP(Universal Software Radio Peripheral)

ADUNでは,サンプラーとしてEttus Research社のUniversal Software Radio

Peripheral(USRP)シリーズのUSRP N210[24]を利用している.USRPは世界中のエン

ジニアによりアルゴリズム開発,調査,プロトタイピングにおいて使用されているソフ トウェア無線ハードウェアである.

USRP N210は広帯域,および幅広い処理機能を提供することが可能である.USRP

N210には,プログラミングできるLSI(Large Scale Integration)であるFPGA(Field Programmable Gate Array)のXILINX社のSpartan 3A-DSP 3400[25],毎秒100MS

の ADC,毎秒 400MS の DAC,ギガビットイーサネットが備えられている. USRP

のマザーボードにはタグからの信号受信できるトランシーバを使用する周波数帯域に 合わせて切り替えられるようにドータボードをマザーボードに組み込む構造になって いる.ADUNでは, 50 MHz から2.2 GHzまでの広い帯域に対応可能なドータボー

ドであるWBX[26]を用いている.

2.4 本研究の位置づけ

電波空間仮想化を実装したシステムには以下のような3つの課題が挙げられる.

課題1. 広い周波数帯域を高速に仮想化し,配信を行う受信部の実現

課題2. 仮想化電波空間情報の速やかな伝送の実現

課題3. 電波空間仮想化情報のプライバシー確保

課題1が本研究の対象となる課題である.電波空間仮想化では,リーダサーバ部の多 種多様な要求に答えるために広い周波数帯域の仮想化を行わなければならない.そのた め,受信部の処理時間や処理速度,処理限界を高めていくことが必須であると考えられ る.本研究では,負荷特性を知り負荷分散方式の検討を行う事によってこの問題に対処 していく.

また,本研究では扱わないが,課題2と課題3も重要である.

課題2ではネットワーク伝送を問題としている.広い周波数帯域に及ぶ電波空間を仮 想化した場合,そのデータは巨大となる事が予想される.さらに,電波空間の配信はそ の性質上,リアルタイム性が求められる.そのため,その巨大なデータを遅延や欠損な くリーダサーバ部にネットワークを介して伝送する必要がある.したがって,仮想化電 波空間情報の速やかな伝送を行う必要が出る.

(16)

10

課題3ではプライバシーを問題としている.例えば,電波空間仮想化を用いたシステ ムでは,リアルタイム性の保持のため複数のリーダサーバ部のリクエストを一つの配信 信号として配信しなければならない可能性がある.その際の各リーダサーバ部間でのプ ライバシーの保持は重要な課題となると考えられる.

(17)

11

3 章 負荷分散と効率化

電波空間仮想化を用いたシステムでは,現実空間に飛んでいる多種多様な電波を仮想 化するために広い帯域を処理する必要がある.例えば,日本におけるRFID等の無線通 信が使用できるUHF帯を全て仮想化すると考えたとき,300MHz~3GHzという広い 帯域をカバーしなければならない.[27]そのため,受け取った電波空間情報に前処理を する必要のある受信部における負荷は非常に大きくなる事が予想される.

電波空間仮想化を実装したシステムであるADUNの配信処理の構成図を図 3-1に示 す.ADUNでは広い帯域のカバーを行う必要があるため,複数のサンプラーを用いて サンプリングを行う.また,サンプリングした広い帯域を有効に扱うため複数のリーダ サーバ部への同時配信を行う必要もある.この事より,受信部にあたる電波空間情報配 信処理は大量のリソースを電波空間の利用に必要であると考えられるリアルタイム性 が損なわれないように配信する必要がある事がわかる.また,配信処理の流れから電波 空間情報配信処理に負荷がかかり性能の低下が発生すると全体の性能の低下につなが る可能性も考えられる.しかしながら,扱うリソースは膨大であり,単独の受信部で全 てを処理する事は性能やコストの面からみて難しいと考えられる.したがって,受信部 を複数に増やすことなどで受信部にかかる負荷の分散を行う必要があると考えられる.

この負荷分散を行うにあたって,問題となるのはシステムを構成するために必要なコ ストである.分散を細かく行えば行うほど,それに対して受信部等のコストが増大して いくこととなる.したがって,負荷分散を実現するに際,ただ単に処理を細かく分散す るのではなく,コストと負荷の両面から見て効率の良い負荷分散を行う必要があると考 えられる.そして,そのような効率の良い負荷分散を行うためにはシステムが持つ負荷 の特性の把握が必須である.

図 3-1 ADUNにおける配信処理の構成図

(18)

12

4 章 負荷測定実験

4.1 実験 1: 複数台のサンプラー接続による負荷特性

4.1.1 実験目的

本実験では,電波空間仮想化を実装したシステムにスケーラブルな処理の実装を目的 とし,受信部とサンプラーと配信可能帯域の関係性を明らかにするための調査を行った.

ADUN ではサンプラーとして USRP N210 を用いている.しかしながら,一台の

USRP N210で広い帯域をカバーするのは難しい.したがって,ADUN では複数台の

USRPを使う事によって広い帯域をカバーする事を実現している.

サンプラーを複数台利用して帯域をカバーする事を考えたとき,問題となると考えら れるのは特定の帯域をカバーする際に必要となるサンプラーの台数が未知であること である.

本実験では,サンプラーの台数と最大サンプリング帯域の関係による負荷を調べる事 によって,サンプラーの台数とカバー可能な帯域の関係による負荷特性を調査する事を 目的とした.なお,ここでいう最大サンプリング帯域とは電波情報が復調可能な最大の サンプリング帯域である.

4.1.2 実験環境

実験で用いたマシンのスペックを表 4.1, 実験構成図を図 4-1,実験時の受信部とリ ーダサーバ部の処理ブロックを図 4-2に示す.

本実験では,実験用マシンのOSとしてLinuxのRPM系ディストリビューションで

あるFedora 16[28],サンプラーとしてUSRP N210を使い,受信部とリーダサーバ部

のプロセスは同一のマシン下に配置した.この時,複数のUSRP N210の全てから同時 に電波空間情報を受け取る状況を再現するため,USRP N210の台数と同じだけソース 配信部と受信部,リーダサーバ部のプロセスを立ち上げている.また,実際に復調を行 う無線通信方式としてRFタグであるNIRE type2(NIRE2)を用いた.

なお,受信部の処理ブロックの中身では以下の処理を行っている

 ソース購読:サンプラーであるUSRP N210がサンプリングした電波空間情報を ソース配信部から購読するためのブロック

 バンドパスフィルタ:指定した範囲の周波数のみを通し,他の周波数を減衰させ

(19)

13 るフィルタ

 周波数シフト:中心周波数を指定した周波数までずらす

 RTPデータ送信:RTP[29]を用いてリーダサーバ部へ電波空間情報を伝送する

ソース配信部からの購読処理とリーダサーバ部に必要帯域のみを配信するための前 処理であるバンドパスフィルタと周波数シフト,リーダサーバ部との通信のための RTP通信処理を利用した.

表 4.1 実験1で用いたマシンの性能

OS Fedora16

CPU 3.6GHz x 4コア

スレッド数 8

メモリ 32 GB

図 4-1 実験1の実験構成図

(20)

14

図 4-2 実験1における受信部とリーダサーバ部の処理フロー

4.1.3 実験手法

実験は USRP N210 の台数と最大サンプリング帯域を変え負荷の測定する事によっ て行った.今回の実験では,負荷の基準としてソース配信部を含まない受信部のみの CPU使用率を用いている.CPU使用率は,各組合せにつき10回ずつ測定し,その平 均を取ったものを値として採用している.

ナイキストの定理[30]より,最大サンプリング帯域Wmaxはサンプリング周波数 fか ら以下の式で求められる.

𝑊𝑚𝑎𝑥= 𝑓

2 … (1)

今回の実験では,受信部の最大サンプリング帯域をUSRP N210のデシメーション値 を変える事によって変更する.デシメーション値がd,サンプラーの使用台数がnの時 最大サンプリング帯域Wmax(d,n)は,サンプラーがカバーできる最大のサンプリング周波 数fmaxを用いて,以下の式で求める事ができる.

(21)

15 𝑊max (𝑑,𝑛)= 𝑓𝑚𝑎𝑥

2𝑑 𝑛 … (2)

今回の実験では USRP N210 を 4 台まで用いて測定した.今回の実験で測定した

USRP N210 のデシメーション値と台数から(2)式を用いて計算された最大サンプリン

グ帯域の一覧を表 4.2に示す.デシメーション値が3以下(USRP N210が4台の場合 は4以下)の時は電波空間情報が復調出来なかったため,省いている.

表 4.2 実験で測定した最大サンプリング帯域

USRP N210のデシメーション値

50 25 12 10 8 6 5 4

USRP N210の台数[台]

1 1 2 4.17 5 6.25 8.33 10 12.5

2 2 4 8.33 10 12.5 16.67 20 25

3 3 6 12.49 15 18.75 25 30 37.5

4 4 8 16.67 20 25 33.33 40

単位:[MHz]

4.1.4 実験結果

最大サンプリング帯域を横軸に取り,受信部のCPU使用率の関係をUSRP N210の 台数別にまとめたグラフを図 4-3 に示す.グラフ内の破線部は,ソース配信部におい て配信・購読の処理のキューが溢れてしまっている帯域である.

グラフから同じ最大サンプリング帯域であっても台数が増えるごとに受信部の CPU 使用率が増加している事がわかる.この増加したCPU使用率はUSRP N210の台数の 増加によるオーバーヘッドと考えられる.

また,最大サンプリング帯域がある一定の値を超えるとソース配信部の配信・購読の 処理のキュー溢れが確認できるが,USRP N210の台数によってキュー溢れを起こさな い最大サンプリング帯域の上限が異なる事がわかる.このキュー溢れを起こさない最大 サンプリング帯域の上限は比例関係にあり,USRP N210の台数をn ,USRPがn台 の時にキュー溢れを起こさない最大サンプリング帯域の上限をWnとしたときに以下の 式で表される.

(22)

16

𝑊𝑛= 𝑊1𝑛 … (3)

ソース配信部での配信・購読の処理がキュー溢れを起こすと,現実の電波空間を正常 に仮想化電波空間情報に反映できなくなる可能性が高まると考えられるため,Wnはサ ンプラーがn台の時に取れる最大サンプリング帯域の上限であると考えられる.

一方で,通常復調率はCNR(搬送波対雑音比)の値によりSNR(信号対雑音比)が 決定し,BER(ビットエラーレート),PER(パケットエラーレート)の順に決定され る.しかしながら,実験結果ではCNRの値が大幅に変わらないのにも関わらず,要求 帯域やUSRPの台数によってキュー溢れが起きBERが悪化している.よって,電波空 間仮想化環境によってCNRはリーダサーバ部の要求帯域やUSRPの台数によって劣化 する事が予想される.ただし,今回の結果は利用したNIREtype2の無線通信方式の影 響を受けている可能性も考えられるため,リーダサーバ部の要求帯域や USRP の台数 による影響を知るにはBERを測定する必要があると考えられる.

図 4-3 最大サンプリング帯域と受信部のCPU使用率の関係

(23)

17

4.2 実験 :2 バンドパスフィルタ可変時の負荷特性

4.2.1 実験目的

本実験では, 配信リクエストの処理の分配法の検討を目的とし,受信部のバンドパ スフィルタの通過帯域を変更した際の各処理の負荷の特性を調査した.

電波空間仮想化を利用したシステムでは,受信部はリーダサーバ部のリクエストに応 じて電波空間情報から特定帯域を切り出して配信する事となる.しかしながら,リーダ サーバ部の一つのリクエストに対してリクエストされた帯域のみを切り出して配信信 号としてリーダサーバ部に配信する場合,配信できる帯域が極わずかになる可能性があ る.これでは,豊富な電波空間情報の大部分が無駄となってしまう.そのため,受信部 は複数のリーダサーバ部からの複数のリクエストを同時に満たすように電波空間情報 を配信しなければならないと考えられる.

ADUNではこの問題を解決するために図 4-4の様な配信形式を利用している.この 配信形式で,受信部は複数のリーダサーバ部のリクエストを同時に受け付け,リクエス トされた複数の電波情報を同時に満たすような配信信号を各リーダサーバ部に配信す る.そして配信信号を受け取ったリーダサーバ部は,配信信号からリクエストした電波 情報を受け取り復調する事となる.

この形式を利用した際に問題となると考えられるのが,リーダサーバ部のリクエスト に応じて配信信号に含まれる帯域の幅が変化する事である.ADUN では,受信部のバ ンドパスフィルタの通過帯域を変更する事によってこの処理を実現している.この時,

バンドパスフィルタの通過帯域の幅の変化でボトルネックが発生すると同時に処理で きるリクエストの数や配信信号の幅に大きく影響してくると考えられる.

そこで本実験では,受信部のバンドパスフィルタの通過帯域を変更した際の各処理の 負荷を測定することによってバンドパスフィルタの通過帯域を変更させた際の負荷特 性を明らかにする事を目的とした.

(24)

18

図 4-4 ADUNにおける電波空間情報配信形式

4.2.2 実験環境

実験で用いたマシンのスペックを表 4.3,実験構成図を図 4-5,実験時の受信部の処 理ブロックを図 4-6に示す.

本実験では,実験1と同様にOSとしてFedora 16,サンプラーとしてUSRP N210 を使い,受信部とリーダサーバ部のプロセスは同一のマシン下に配置した.バンドパス フィルタの通過帯域の影響のみを考慮するため,受信部とリーダサーバ部,および

USRP N210は各一つずつの構成としている.また,実際に復調を行う無線通信方式と

してRFタグであるNIRE type2(NIRE2)を用いた.

なお,受信部の処理は実験1の処理に加え,以下の処理を追加で行っている.

 データ抽出:しきい値以下のサンプリングデータを排除し,データ抽出を行う処 理

 デシメーションフィルタ:サンプリング周波数を指定した値で間引きを行うフィ ルタ

(25)

19

表 4.3 実験2で用いたマシンの性能

OS Fedora16

CPU 3.6GHz x 4コア

スレッド数 8

メモリ 16 GB

図 4-5 実験2の実験構成図

(26)

20

図 4-6 実験2における受信部とリーダサーバ部の処理フロー

4.2.3 実験手法

実験は,バンドパスフィルタの通過帯域を特定の値とした際の受信部の各処理の負荷 を測定する事によって行う.実験1 と同様に負荷の基準として CPU 使用率を用いた.

バンドパスフィルタの通過帯域は20[kHz]から 200[kHz]の範囲を20[kHz]毎に区切っ て測定を行った.CPU使用率の測定値は実験1と同様に10回測定した値の平均とした.

また,測定対象としてバンドパスフィルタの影響をダイレクトに受けると考えられる 図 4-6の※印の付いた4つ の処理を選択した.

4.2.4 実験結果

横軸をバンドパスフィルタの通過帯域,縦軸を各処理のCPU使用率として,各処理 のバンドパスフィルタの通過帯域とCPU使用率の関係をまとめたグラフを図 4-7に示 す.

グラフからわかるようにバンドパスフィルタの通過帯域を変えても各処理の負荷が

(27)

21

大きく変化する事はなかった.したがって,バンドパスフィルタの通過帯域の幅の変化 によってボトルネックが発生する事はないという事がわかる.

これは,バンドパスフィルタの処理に起因していると考えられる.バンドパスフィル タは畳み込み処理のため計算量は入力信号のサイズに依存する.また,フィルタである ためバンドパスフィルタ前後でデータ量が変わる事はない.したがって,入力信号のサ イズを変えずに通過帯域を変えただけでは計算量,および出力信号の値が変わらないた め今回のような実験結果になったと想定される.

図 4-7 バンドパスフィルタの通過帯域と各処理のCPU使用率の関係

(28)

22

5 章 考察

本章では,第4章の実験結果をベースにADUNにおける受信部の負荷の特性とその 負荷分散の可能性について考察を行う.

5.1 サンプラーの台数とカバー可能なサンプリング 帯域の関係

本節では,サンプラーの台数とカバー可能なサンプリング帯域の関係について考察を 行う.

複数台のサンプラーを用いて特定の帯域をカバーしようとした重要となると考えら れるのは,カバーしなければならない帯域幅に対して何台のサンプラーが必要かという 点である.

実験1の結果より,この問題に対してある程度の指標が与えられると考えられる.

実験1では結果より以下の比例関係を表す式が得られた.

𝑊𝑛= 𝑊1𝑛 … (3)

n : サンプラーの台数 Wn : サンプラーがn台の時のキュー溢れを起こさない最大サンプリング帯域上限

この式より,ある特定の帯域Wwideをカバーしよう考えた際,必要なサンプラーの台 数nは以下の式を用いて求めることができる.

𝑛 = ⌈𝑊𝑤𝑖𝑑𝑒

𝑊1 ⌉ … (4)

したがって,特定の帯域幅をカバーする際に必要なサンプラーの台数n は W1の値,

つまりサンプラーが 1 台の時のキュー溢れを起こさない最大サンプリング帯域の上限 を調べる事によって算出できると考えられる.

(29)

23

5.2 サンプラーの台数によるオーバーヘッドの考察

本節では,サンプラーの台数によるオーバーヘッドについて考察を行う.

実験 1 よりサンプラーの台数が増加する毎に受信部の処理にオーバーヘッドが発生 する事が明らかとなった.

このオーバーヘッドの原因を明らかにするために,実験1のUSRP N210が1台の 場合と2台の場合の受信部の各処理の負荷の比較を行う.バンドパスフィルタの処理に おける比較を図 5-1,周波数シフトの処理における比較を図 5-2に示す.

二つの図を比較して明らかなように,受信部の処理において周波数シフトのCPU使 用率が1台の時に比べ2台の時に大幅に増えており,結果的に大きなボトルネックとな っている事がわかる.

4.2.1 で説明したような配信形式を利用する場合,リーダサーバ部のリクエストに応

じて配信信号の中心周波数はフレキシブルに変わる事となる.したがって,配信信号の 中心周波数を変更する処理である周波数シフトで生じるボトルネックが増加する事は,

受信部のスムーズな電波情報の配信を妨げる恐れがあると考えられる.

また,オーバーヘッドを回避する手法としてCPUではなく,GPUやFPGAで計算 させる手法も考えられる.しかしながら電波空間情報のデータは巨大となるとも GPU や FPGA へ処理を送る際の入出力による遅延やオーバーヘッドの存在が問題となると 考えられる.

したがって,(4)式等を用いて必要な帯域に応じて適切な台数のサンプラーを用意す る,あるいは極端に広い帯域をカバーしたい場合は受信部を複数に分割する等の必要が あると考えられる.また,電波空間仮想化を用いたシステムではリクエストされた帯域 に応じた必要最低限のサンプラーから電波空間情報を構成する等の設計が必要となる.

(30)

24

図 5-1 最大サンプリング帯域とバンドパスフィルタのCPU使用率の関係

図 5-2 最大サンプリング帯域と周波数シフトのCPU使用率の関係

(31)

25

5.3 受信部における負荷分散の可能性

本節では,ADUNの受信部における負荷分散の可能性について考察を行う.

実験2の結果より,受信部は複数のリーダサーバ部の要求に対してバンドパスフィル タの通過帯域を変更する事によって柔軟に配信信号を作りあげて配信できる事が明ら かとなった.したがって,受信部が広い帯域をカバーする事によるメリットは大きいと 考えられる.

一方で,実験1の結果よりサンプラーを複数台利用した場合オーバーヘッドが発生す る事が明らかになった.ただし,特定の帯域をカバーする際に必要なサンプラーの数は 1 台のサンプラーのキュー溢れの起きない最大サンプリング帯域の上限を調査する事 で決定できる事も判明した.

これら二つの結果より,受信部における負荷分散の可能性について以下の事が言える.

1. 複数のリーダサーバ部のリクエストを全て含む配信帯域の帯域幅に合わせて,シ ステム側が配信帯域をカバーできる最小のサンプラーだけを動作させることに よってオーバーヘッドによる負荷増大をある程度カバーする事ができる.

2. 配信信号をカバーする際に必要なサンプラーの台数が増えすぎた場合,オーバー ヘッドを回避するためにシステム側が受信部を自動的に分割する等の処理が必 要となる.

2 で言及した処理を実装し負荷分散を行ったシステムの構想とその接続例を図 5-3 に示す.このシステムには複数の受信部と複数のリーダサーバ部,代表サーバが存在し ている.このシステムでは,代表サーバが現在の各受信部が配信している電波空間情報 の周波数帯域を監視して,リーダサーバ部からの新しいリクエストに対して接続する受 信部を指定する.振り分けの基準は,リクエストされた中心周波数である.代表サーバ はリーダサーバ部のリクエストと各受信部の配信帯域から(4)式を用いて,リーダサー バ部のリクエストを受け付けたときに,各受信部が何台サンプラーを追加する必要があ るかを計算する.そして,その結果が最も小さくなるような受信部にリーダサーバ部を 接続するように通知する.

このシステムを実装する事により,新しいリーダサーバ部のリクエストが来たときに 増加するサンプラーの台数を抑える事ができる.それにより,サンプラーが増加した際 のオーバーヘッドを最小限に抑える事が出来ると考えられる.また,(4)式を用いてサ ンプラーの台数を計算する事によって,キュー溢れによるBERの劣化を避ける事が可 能となる.

(32)

26

図 5-3 オーバーヘッド回避のための負荷分散システムの構想と接続例

(33)

27

6 章 結論

本研究では,電波空間仮想化を用いたシステムにおいてより効率の良い負荷分散を実 現する事を目的とした.この目的を達成するため,電波空間仮想化を実装したシステム の受信部において広帯域をカバーした際の負荷特性に注目し,サンプラーとの関係,お よびリーダサーバ部との関係にける負荷特性を測定し,電波空間仮想化を実装したシス テムの負荷分散の可能性について検討を行った.

まず,電波空間化において受信部に接続するサンプラーの台数が増えたときの負荷特 性を調査した.これにより得られた結論についてまとめる.

 キュー溢れを起こさない最大サンプリング帯域の上限は,サンプラーの台数と比 例関係にあった.したがって,1台のサンプラーのキュー溢れを起こさない最大 サンプリング帯域の上限を調べる事によって,特定の帯域幅をカバーするために サンプラーが何台必要であるかを調べる事ができる.

 サンプラーの接続台数を増やすことにより,周波数シフトの処理が原因となるオ ーバーヘッドが発生した.よって,サンプラーの台数は必要帯域幅をカバーでき る最小限の台数である事がのぞましい.

 サンプラーの最大サンプリング帯域を増加させていくと,ある特定の値でソース 配信部にキュー溢れが発生する.キュー溢れを起こすと電波空間情報が欠損する 可能性があるため,実際の最大サンプリング帯域の上限はサンプラーの理論上の 最大サンプリング帯域の上限よりも低い事が確認された.

 復調率は,現実空間のCNRだけではなくサンプラーの台数とリーダサーバ部の 要求帯域に影響を受ける.ただし,復調率のみで考えると無線通信方式の種類に よっても影響がある.

次に,広帯域をカバーする際のリーダサーバへの電波空間情報の効率の良い配信方式 についてバンドパスフィルタの通過帯域の変化に着目し,通過帯域が変化した際の負荷 特性について調査を行った.これにより得られた結論についてまとめる.

 バンドパスフィルタの通過帯域を変化させても,受信部の処理の負荷は変化する 事がなかった.

 複数のリーダサーバ部のリクエストに対して柔軟に電波空間情報を配信が可能 である事が明らかとなった.

(34)

28

また,上記より電波空間仮想化を実装したシステムの負荷分散について以下の結論が 導き出せると考えられる.

 1台の受信部に複数台のサンプラーを接続し,各サンプラーの帯域を合わせて広 い帯域をカバーする事によって,1台の受信部が複数のリーダサーバ部のリクエ ストに効率的に答える事が可能となる.

 サンプラーの台数を増やすことにより,オーバーヘッドが発生する.しかしなが ら,1台のサンプラーの測定を行う事によって要求される帯域幅から必要なサン プラーの数が計算できるため,システム側にスケーラブルな負荷分散を実装する 事が可能であると考えられる.

以上の様に,本研究では受信部の負荷を測定し負荷特性を調査する事によって負荷分 散の可能性について検討した.

今後の研究の課題となる事として以下の点が挙げられる.

 受信部の各処理のオーバーヘッドの原因について詳細な追求を行う事によって,

オーバーヘッドの低減および,処理ブロックの見直し等に負荷の低減を行ってい けると考えられる.

 仮想化電波空間上のBERを調査する事によって,復調率も考慮に入れた負荷分 散構成を実現できると考えられる.

 今回提案したシステムを実装し,測定を行い負荷特性を明らかにする事によって,

各受信部のリーダサーバ部への振り分けの基準を明確にできると考えられる.

(35)

29

謝辞

本研究の機会を与えてくださり,ゼミ等で絶えず厳しくご指導を賜りました,電気通 信大学教授市川晴久博士,同大学特任教授細谷僚一先生に深く感謝致します.論文の書 き方や研究発表における常識,および研究者としての心構えをご教授いただいた同大学 特任助教川喜田佑介博士,同大学特任助教寺田直美博士,同大学特任助教神山和人博士 に深く感謝致します.

同大学産学官連携研究員鈴木悦子氏には,本研究を進めるにあたって多くの励ましと ご指導を頂きました.株式会社NTTアドバンステクノロジの宮下剛氏には,お忙しい 中,貴重なご助言をいただき,多くの議論の時間を割いていただきました.高橋恵美子 氏をはじめとする市川研究室の秘書の方々,能島良和氏,米村茂氏,藤井眞吾氏,横石 雄大氏,五十嵐祐貴氏をはじめとする技術補佐員の方々には,集中して研究に専念でき る快適な環境の整備・維持をして頂きました.ここに,深い感謝の意を表します.

研究室の同期であり,研究生活を共に支えあった仲間でもある上村弦也氏,金ジョン ウク氏に感謝いたします.また,研究室の後輩である阿部有希氏,水谷祐基氏,木村涼 平氏,熊谷啓氏,大渡裕太氏,金山晃大氏,小山桂佑氏,松本彩香氏,山本峻丸氏,そ の他の友人たち,そして,何不自由のない大学生活を送れるように支えてくれた両親に 深く感謝し,謝辞といたします.

(36)

30

参考文献

[1] Klaus Finkenzeller, RFIDハンドブック, 日刊工業新聞社, 2004.

[2] 経済産業省情報経済課, 電子タグ(ICタグ)の普及に向けた日本の戦略, Jul. 2004.

[3] 総務省, ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査 研究会,

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/yubikitasu_d/

040330_1.html.

[4] 川喜田佑介, 寺田直美, 市川晴久, “情報通信系のSSS:超低消費電力センサタグのた めの電波空間情報配信機構,” 計測自動制御学会, 予稿集, pp.341-342, Sep.2012

[5] 金ジョンウク,川喜田佑介,神山和人,市川晴久, “Appliance Defined Ubiquitous

Networkにおける電波空間情報配信機構の設計,” 電子情報通信学会ソサエティ大会講

演論文集, 2010年_通信(2), 425, 2010-08-31

[6] Haruhisa Ichikawa, Masashi Shimizu, Kazunori Akabane, Osamu Ishida, Mitsuo Teramoto, “ A Ubiquitous wireless network architecture and its impact on optical networks,” Computer Networks, Vol. 52, Num. 10, pp.1864-1872, Jul. 2008.

[7] Haruhisa Ichikawa, Masashi Shimizu, Kazunori Akabane, “Ubiquitous Networks with Radio Space Extension over Broadband Networks,” IEICE Trans.Commun., Vol.E90-B, No.12, pp.3445-3451, Dec. 2007.

[8] Haruhisa Ichikawa, Masashi Shimizu, Kazunori Akabane, “Invited Talk:

Appliance Defined Ubiquitous Network,” Proc. of SAINT Workshops 2007, p.20, Jan.

2007.

[9] Eric A. Blossom“Software Radio,” http://www.comsec.com/software-radio.html [10] Ettus Research 社, USRP Family Products and Daughter Boards,

http://www.ettus.com/products

[11] GNU Radio.org, http://gnuradio.org/redmine/projects/gnuradio/wiki [12] Eric Blossom, “Exploring GNU Radio Rev. v1.1,”

http://www.gnu.org/software/gnuradio/doc/exploring-gnuradio.html, Nov. 2007.

[13] エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社, アクティブ型RFIDシステム

NIREタイプ2, http://www.sotomiru.net/SN/NIRE/nire2.html

[14] エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社, アクティブ型RFIDシステム

NIREタイプ3 , http://www.sotomiru.net/SN/NIRE/nire3.html/.

[15] RF Code社, spider, http://www.rfcode.com/.

[16] ソフトウェア受信機の開発に係わる調査検討報告書,(社)電波産業会,1999.

[17] 黒田政廣,細谷晴彦,“柔軟性を追求したソフトウェア受信機,”アンリツテクニカ

ル,no.77,pp.53-61,April 1999.

[18] Kentaro ISHIZU, Homare MURAKAMI, Stanislav FILIN, Hiroshi HARADA,

“Cognitive Wireless Router System by Distributed Management of Heterogeneous Wireless Network,” IEICE TRANSACTIONS on Communications Vol.E93-B No.12 pp.3311-3322

[19] Thomas Schmid, Oussama Sekkat, Mani B. Srivastava, “An Experimental Study of Network Performance Impact of Increased Latency in Software Defined Radios,” IEEE WiNTECH`07, September 10, 2007

[20] Seishi HANAOKA , Junji YAMAMOTO, Masashi YANO, “Platform for Load Balancing and Throughput Enhancement with Cognitive Radio,” IEICE

(37)

31

TRANSACTIONS on Communications Vol.E91-B No.8 pp.2501-2508

[21] 石原進, “USRP/GNU Radioを利用したマルチホップ無線通信の実装,” 電子情報

通信学会ソサイエティ大会講演論文集 2010年_通信(2), "SS-108"-"SS-111", 2010-08-31

[22] Bjarne Stroustrup, “C++ Programming Language, The: Special Edition,”

Addison-Wesley Professional, Feb.2000

[23] Python Software Foundation, Python Programming Language -- Official Website, http://www.python.org

[24] Ettus Research 社, Product Detail - USRP N210, https://www.ettus.com/product/details/UN210-KIT

[25] XILINX社, XtremeDSP 開発プラットフォーム – Spartan-3A DSP 3400A 版, http://japan.xilinx.com/products/boards-and-kits/HW-SD3400A-DSP-DB-UNI-G.ht m

[26] Ettus Research 社, Product Detail - WBX 50-2200 MHz Rx/Tx, https://www.ettus.com/product/details/WBX

[27] 総務省,周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴,

http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/index.htm [28] Fedora Project, http://fedoraproject.org/

[29] H. Schulzrinne, et al., “RTP: A Transport Protocol for Real-Time Applications,”

IETF, July 2003.

[30] 斉藤洋一, “信号とシステム,” コロナ社, 2005.

(38)

32

付録 A ADUN 対応タグ

この付録では,本実験に用いたADUNが対応しているアクティブタグの仕様につい て紹介する.

A.1 NIRE type2

以下にNIRE type2の写真と仕様について紹介する.

図A.1 NIRE type2のRFタグ

表 A.1 NIRE type2の仕様

項目 仕様

無線周波数 312.2MHz 送信出力 微弱電波 変調方式 OOK変調 最大通信距離 70m

サイズ 64(幅)× 34(奥行)×10(高さ)mm

電池寿命 送信周期3 秒で約3 年, 9 秒で約5.5 年, 15 秒で約6.5 年,30 秒で約7 年

重量 18g

動作温度 -10℃ ~ +60℃

保存温度 -20℃ ~ +80℃

(39)

33

A.2 NIRE type3

以下にNIRE type3の写真と仕様について紹介する.

図A.2 NIRE3のRFタグ

表A.2 NIRE3の仕様

項目 仕様

無線周波数 313.625MHz 送信出力 微弱電波 変調方式 周波数変調方式 最大通信距離 50m

サイズ 48(幅)×66.5(奥行)×15.5(高さ) mm

電池寿命 送信周期3 秒で約3 年, 9 秒で約5.5 年, 15 秒で約6.5 年,30 秒で約7 年

重量 39g

動作温度 -10℃~+60℃

保存温度 5℃~+35℃

(40)

34

A.3 Spider

以下にSpiderの写真と仕様について紹介する.

図A.3 SpiderのRFタグ

表A.3 Spiderの仕様

項目 仕様

無線周波数 3.825MHz 送信出力 微弱電波 最大通信距離 28m

サイズ 60(幅)×30(奥行)×10(高さ)mm

電池寿命 送信周期3 秒で約3 年, 9 秒で約5.5 年, 15 秒で約6.5 年,30 秒で約7 年

重量 約20g 動作温度 0℃~75℃

保存温度 0℃~75℃

(41)

35

付録 B 実験データ

この付録では,第4章における測定実験で得たデータについて紹介する.

B.1 4.1 における実験結果

4.1の実験における,受信部全体の処理およびバンドパスフィルタ,および周波数シ フトの処理の負荷測定の結果を示す.

・USRP 1台の時の受信部のCPU使用率[%]

最大サンプリング帯域[MHz]

1 2 4.165 5 6.25 8.335 10 12.5

受信部全体 50.8 80.3 143.4 157.7 164.9 146.9 128.6 127.2 バンドパス

フィルタ 13.4 27.1 58.5 69.6 80.4 89.2 88.4 94.1 周波数シフト 21.6 28 40.8 42.4 40.2 25.6 18.2 14.9

・USRP2台の時の受信部のCPU使用率[%]

最大サンプリング帯域[MHz]

2 4 8.33 10 12.5 16.67 20 25

受信部全体 105.8 154.6 239.7 247.3 255.3 232.1 235 244.3 バンドパス

フィルタ 28 53 105.7 121.3 143.1 149 167.8 184.4 周波数シフト 44.5 53.4 66.1 61.9 53.9 39.5 31.7 27.5

・USRP3台の時の受信部のCPU使用率[%]

最大サンプリング帯域[MHz]

3 6 12.495 15 18.75 25.005 30 37.5

受信部全体 166.7 221.8 277.7 279.4 297 317.7 324.8 353.1 バンドパス

フィルタ 44.6 77.9 135.1 136.8 163.9 209.9 229.8 266.8 周波数シフト 69.8 76.4 72.5 70.4 64.7 52.4 44.5 39

(42)

36

・USRP4台の時の受信部のCPU使用率[%]

最大サンプリング帯域[MHz]

4 8 16.66 20 25 33.34 40

受信部全体 218.6 267.5 277 300 322.9 373.1 391.6 バンドパス

フィルタ 58.3 96.3 127.1 150.3 178.9 253.2 285.4 周波数シフト 91.4 92.5 75.1 74.2 70.2 58 50.7

A.2 4.2 における実験結果

4.2 の実験における.バンドパスフィルタの通過帯域と受信部の各処理の CPU 使用 率[%]の測定結果を示す.

バンドパスフィルタの通過域幅[kHz]

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

バンドパス

フィルタ 84.3 81.5 82.3 81.5 81.9 82.1 81.3 82.2 82.7 82.5 周波数

シフト 84.3 81.5 82.5 81.5 82.1 82.2 81.4 82.3 82.8 82.8 データ抽出 17.6 17.1 17.2 17.1 17.1 17.2 17 17.2 17.4 17.2 デシメーショ

ンフィルタ 3.9 3.8 3.9 3.8 3.8 3.8 3.8 3.8 3.9 3.9

図  2-1  電波空間仮想化を実現したシステム構成図
図  2-2 ADUN の構成
図  5-2  最大サンプリング帯域と周波数シフトの CPU 使用率の関係
図  5-3  オーバーヘッド回避のための負荷分散システムの構想と接続例
+2

参照

関連したドキュメント

1(以後 XBee と表記)を介して PC からマイコン Arduino MEGA ADK(以後 Arduino と表記)に無

要約

いる.渡辺らの音圧情報をもとに「うなづき」

古い街並みの残る道を撮影し PasQ

本発表では,ソフトウェア無線技術として注目されている USRP(Universal Software Radio

meta 4 とuniverseの造語)呼んでから30年を経過して、このメタバースが本格的に商業利 5 用されようとしている。 6 メタバースとは、「複数のユーザーが共有する 3D(3次元)の没入型環境であ 7 り、アバターを介して他のユーザーと交流できる」仮想空間のことであるが、未だ 8

仮想マシンモニタ上で実行されるそれぞれの仮想マシンは,同一仮想マシンモニタ

仮想マシンモニタ上で実行されるそれぞれの仮想マシンは,同一仮想マシンモニタ