c
オペレーションズ・リサーチ論文・研究レポート
乗数形式 2 段階 DEA 比率尺度モデルの改訂と 動的 DEA への展開
岡部 誠,甲斐 充彦,嶋田 陽子,関谷 和之
1. はじめに
Data Envelopment Analysis (DEA)
は組織活動を 入力から出力への変換過程とみなし,その変換効率を 効率値として与える効率性分析である.DEA
の長所 の一つは複数の入出力をもつ組織活動を分析できるこ とである.この長所は入出力項目に対する可変ウエイ トを最適化することで実現される.可変ウエイトによ る入力項目の加重和と出力項目の加重和との比を仮想 入出力比と呼ぶ.可変ウエイトの最適化では,組織そ れぞれに対して仮想入出力比を可能な限り大きくする 可変ウエイトを求める.いくつかの部門からなる組織では,それらの部門間 で財を入出力としてやり取りすることがある.ある部 門の出力がほかの部門への入力でもある入出力項目は 中間財と呼ばれる.二つの部門からなる組織の効率性 を分析する
DEA
は2
段階DEA
と呼ばれる.2
段階DEA
は組織全体の効率性だけでなく各部門の効率性 も分析が可能であるため,多くの事例研究の報告[1, 2]
がある.
2
段階DEA
はさまざまな数理計画問題としてモデ ル化されている.それらのモデルの一つである乗数形 式2
段階DEA
比率尺度モデルは,仮想入出力比に関 する分数計画問題である.乗数形式2
段階DEA
比率 尺度モデルの研究では,二つの部門の仮想入出力比におかべ まこと,かい あつひこ 静岡大学工学領域
[email protected] [email protected]
しまだ ようこ静岡大学技術部
[email protected]
せきたに かずゆき東京理科大学経営学部経営学科
〒
102–0071
東京都千代田区富士見1–11–2 [email protected]
受付17.12.19
採択18.3.5
対するゲーム理論アプローチ
[1, 3–5]
が盛んである.ゲーム理論アプローチによるモデルは組織全体での仮 想入出力比の最大化を目指す協力ゲームと二つの部門 それぞれが自身の仮想入出力比を独自に最大化する非 協力ゲームに大別される.
2
段階DEA
の既存研究[3]
は中間財が1
個であれ ば協力ゲームと非協力ゲームとの解が一致することを 主張するが,この主張は必ずしも成立しないことを本 研究が明らかにする.この主張が正しければ,部門個 別の効率性評価最適化は組織全体での効率性評価最適 化をもたらすという解釈が成り立つ.さらに,非協力 ゲームに対する求解は協力ゲームのそれより簡単であ ること[2]
から,解の計算においても有用である.以降では,文献
[3]
の主張が成立しない数値例を示 す.さらに,協力ゲームによる乗数形式2
段階DEA
比率尺度モデルを改訂し,改訂版であれば文献[3]
の 主張が成立することを保証する.最後に,提案する改 訂モデルが多期間にわたる組織活動の効率性を分析す る動的DEA
へ拡張可能であることを示す.2. 乗数形式 2 段階 DEA 比率尺度モデル DEA
は評価する組織をDMU (Decision Making Units)
と呼び,DMU
の個数をn
個とする.本研究の2
段階DEA
では,第1
部門から第2
部門への中間財 の項目数が1
個である場合を考える.第1
部門を1S
, 第2
部門を2S
と書く.文献[3]
の2
段階DEA
の設 定に準じた各部門の入出力を考える.1S
では入力項目 数はm
1とし,中間財以外の出力項目はない.2S
は 中間財以外の入力項目数をm
2とし,出力項目数はs
2とする.第
j
番目のDMU
の1S
の第i
番目の入力をx
1ij,中間財をz
j,2S
の第i
番目の入力をx
2ij,2S
の 第r
番目の出力をy
rj2 とする.第j
番目のDMU
をDMU
jとする.DMU
jの二つの部門の入出力と中間 財のやり取りを図1
に示す.図1
の入出力構造に注目 したDEA
研究は,中国30
地域における研究開発政策図
1 DMU
jの二つの部門の入出力と中間財の検証
[3]
,購買販売部門からなるサプライチェインの 効率性分析[4]
,2
ステージ制コンテストにおける敢闘 賞決定[6]
がある.図
1
の2
段階DEA
を考える.DMU
k(k = 1, . . . , n)
に対する1S
と2S
の非協力ゲーム型モデル[3]
そ れぞれを,標準的なDEA
モデルであるCCR [7]
と等 価な乗数形式比率尺度モデルmax
mw
11z
k i=1v
i1x
1iks.t.
mw
11z
ji=1
v
i1x
1ij≤ 1 (j = 1, . . . , n) w
1≥ 0, v
1i≥ 0 , (i = 1, . . . , m
1), (1)
とmax
s2r=1
u
2ry
rk2w
2z
k+
m2i=1
v
2ix
2iks.t.
s2r=1
u
2ry
2rjw
2z
j+
m2i=1
v
i2x
2ij≤ 1 (j = 1, . . . , n) w
2≥ 0, u
2r≥ 0 , (r = 1, . . . , s
2) v
i2≥ 0 , (i = 1, . . . , m
2) (2)
とする.
x
1ij> 0, x
2ij> 0, y
2rj> 0, z
j> 0,
00= 0
を 仮定する.このとき,最大化問題(1)
と(2)
それぞれ には最適解が存在する.各
k = 1, . . . , n
に対して,モデル(1)
の最適値と最 適解それぞれをθ
1∗k と(v
1∗, w
1∗)
,モデル(2)
の最適 値と最適解それぞれをθ
2∗k と(w
2∗, v
2∗, u
2∗)
とする.DMU
kの1S
の部門効率値はθ
k1∗, 2S
の部門効率値はθ
2∗k とする.DMU
k(k = 1, . . . , n)
に対する協力ゲーム型モデル を以下の(3)
とする.max
mwz
1 k i=1v
i1x
1ik×
s2r=1
u
2ry
2rkwz
k+
m2i=1
v
i2x
2iks.t. (1)
と(2)
の制約条件すべて(3)
表
1
主張1
への反例観測値 部門効率値
θ
k#x
11z
jx
21y
211S 2S
DMU
12 2 1 1 1 1
無DMU
21 1 1 1 1 1 1
(「無」は問題
(3)
に最適解存在なしを意味する)協力ゲーム型モデル
(3)
の最適値をθ
k#,最適解を(v
1#, w
#, v
2#, u
2#)
とする.文献[3]
はθ
#k をDMU
kの全体効率値とし,その定理
3
(文献[3]
のp. 614
) では全体効率値に関する部門効率値分解の主張を次の ように与えた.主張
1.
中間財が1
個であれば,θ
k#= θ
1∗k· θ
2∗k で ある.この主張
1
に対する反例を表1
に与える.DMU
1の各部門別効率値を与える最大化問題(1)
と(2)
を考える.このとき,最大化問題(1)
と(2)
の最適 値はともに1
である.つまり,θ
1∗1· θ
2∗1= 1
である.DMU
1の全体効率値を与える問題(3)
の制約条件は2w
2v
11≤ 1 , w
v
11≤ 1 (4)
u
212w + v
21≤ 1 , u
21w + v
12≤ 1 (5) v
11≥ 0 , w ≥ 0 , v
12≥ 0, u
21≥ 0 (6)
である.式
(5)
と(6)
から,u
212w + v
12≤ u
21w + v
12≤ 1
である.したがって,2w+vu212
1
= 1
であればw = 0
であ る.w = 0
であれば仮定00= 0
から2v2w11
< 1
である.逆に,2v2w1
1
= 1
であればw > 0
である.このとき,u
212w + v
21< w v
11≤ 1
で あ る .
DMU
1 の 問 題(3)
の 任 意 の 実 行 可 能 解(v
11, w, v
12, u
21)
に対する目的関数値はwz
1v
11x
111× u
21y
112wz
1+ v
21x
211< 1
である.主張
1
は成立しない.3. 2 種類のゲーム型モデルの解の一致
DMU
1の各部門別効率値を与える最大化問題(1)
と(2)
それぞれの一つの最適解は(v
11∗, w
1∗) = (1, 1)
と(w
2∗, v
2∗1, u
2∗1) = (0, 1, 1)
である.ここで,自然数t
に対して(v
11(t), w(t), v
12(t), u
21(t))
を1
t (v
11∗, w
1∗, 0, 0) + (0, w
2∗, v
12∗, u
2∗1) (7)
とすると,(v
11(t), w(t), v
12(t), u
21(t)) = (1/t, 1/t, 1, 1)
である.(1/t, 1/t, 1, 1)
は問題(3)
の実行可能解であ る.さらに,DMU
1に対する問題(3)
の目的関数値はw(t)z
1v
11(t)x
111× u
21(t)y
112w(t)z
1+ v
12(t)x
211= 2/t 2/t × 1
2/t + 1
<1 = lim
t→∞
2 2 × 1
2/t + 1
である.つまり,問題(3)
の上限は1
である.この上 限は,θ
1∗1· θ
2∗1= 1
に一致する.本研究では,問題
(3)
のmax
をsup
に代えた問題sup
mwz
1 ki=1
v
i1x
1ik×
s2r=1
u
2ry
2rkwz
k+
m2i=1
v
2ix
2iks.t. (1)
と(2)
の制約条件すべて(8)
を協力ゲーム型モデルとする.この上限を全体効率値 とし,φ
∗kと記す.このとき,全体効率値が個別部門効 率値に分解できることを以下の定理は保証する.定理
1.
中間財が1
個であれば,φ
∗k= θ
1∗k· θ
2∗k で ある.定理
1
の証明には以下の四つの補助定理を用いる.補助定理
1. φ
∗k≤ θ
1∗k· θ
2∗k である.補助定理
2.
問題(1)
の最適なw
1はw
1∗> 0
である.補助定理
3.
問題(2)
の最適なw
2がw
2∗> 0
ならば,w
2∗w
1∗(v
1∗, w
1∗, 0, 0) + (0, 0, v
2∗, u
2∗) (9)
は問題(8)
の最適解である.さらに,問題(8)
の最適 値はθ
1∗k· θ
k2∗である.補助定理
4.
問題(2)
の最適なw
2はw
2∗= 0
とする.任意の自然数
t
に対して(v
1(t), w(t), v
2(t), u
2(t))
を1
t (v
1∗, w
1∗, 0, 0) + (0, w
2∗, v
2∗, u
2∗) (10)
とする.このとき,任意の自然数t
に対して(10)
は問 題(8)
の実行可能解である.さらに,以下が成立する.θ
k1∗· θ
2∗k= lim
t→∞
w(t)z
kv
1(t)
x
1k· u
2(t)
y
2kw(t)z
k+ v
2(t)
x
2k.
(11)
各補助定理の証明は付録に記載する.
定理
1
を証明する.問題(2)
の最適なw
2 の値がw
2∗> 0
とw
2∗= 0
で場合分けする.w
2∗> 0
の場合を考える.このとき,補助定理3
と 補助定理1
から,φ
∗k= θ
1∗k· θ
k2∗である.w
2∗= 0
の場合を考える.補助定理4
は,問題(8)
の実行可能解(10)
の目的関数値がt → ∞
に対し てθ
1∗k· θ
k2∗に収束することを意味する.したがって,補助定理
1
から,φ
∗k= θ
k1∗· θ
2∗k である.w
2∗> 0
とw
2∗= 0
のいずれの場合でも,φ
∗k= θ
1∗k· θ
2∗k で ある.4. 動的 DEA への展開
動的
DEA
は多期間にわたる組織活動の効率性を分 析するために開発された.分析する対象期間をL
期間 とする.期間l = 1, . . . , L
では,DMU
jがm
個の入 力x
ljと前期l − 1
から繰越した財z
jl−1を用いてs
個 の出力y
ljと次期l + 1
への繰越した財z
jlを産出する と考える.このz
jl−1を準固定入力と呼び,l
期で調整 できない財として定義すること[8]
がある.たとえば,事例研究
[9]
はl −1
期までの物的資本ストックをz
l−1j とする.問題(8)
は中間財z
jを2S
では調整できない 財として扱うことが可能である.そこで,準固定入力z
l−1j をもつ動的DEA
に対して問題(8)
を拡張する.本研究では,繰越した財の項目数は
1
個とする.なお,初期
l = 1
では,DMU
jの入力の一部にz
j0が含まれ ていることに注意する.動的DEA
が分析対象とするDMU
jの組織活動を図2
に与える.期間を部門とみなすと
2
期間(L = 2)
の動的DEA
は2
段階DEA
である.具体的には,DMU
jに対し て,中間財はz
j= z
1j,1S
の入力はm
1(= m + 1)
個 の(x
1j, z
0j)
,1S
の出力はs
1(= s)
個のy
1j,2S
の入力図
2
動的DEA
におけるDMU
jの入出力の流れは
m
2(= m)
個のx
1j,2S
の出力はs
2(= s + 1)
個の(y
2j, z
j2)
である.x
1m1j= z
0j, y
s22j= z
j2とする.この とき,協力ゲーム型の乗数形式2
段階比率尺度モデル は問題(12)
とする.sup wz
k+
s1r=1
u
1ry
1rk m1i=1
v
1ix
1ik×
s2r=1
u
2ry
rk2wz
k+
m2i=1
v
2ix
2iks.t. wz
j+
s1r=1
u
1ry
1rk m1i=1
v
1ix
1ij≤ 1 (j = 1, . . . , n) (2)
の制約条件すべてu
1r≥ 0 (r = 1, . . . , s
1) (12)
問題(12)
は問題(8)
の一般化である.問題(12)
のsup
をmax
に置き換えた最大化問題を用いて文献[5]
は国 別オリンピックメダル獲得効率性を検討した.DMU
kに対して,全体効率値を問題
(12)
の上限とし,1
期の ターム効率値をmax w
1z
k+
s1r=1
u
1ry
rk1 m1i=1
v
i1x
1iks.t. w
1z
j+
s1r=1
u
1ry
rj1 m1i=1
v
1ix
1ij≤ 1 (j = 1, . . . , n) w
1≥ 0, v
i1≥ 0 (i = 1, . . . , m
1)
u
1r≥ 0 (r = 1, . . . , s
1) (13)
の最大値,2
期の部門効率値を問題(2)
の最大値とす る.l
期のターム効率値をθ
lk,全体効率値をφ
kと記 す.前節の2
段階DEA
にy
1jを追加した2
期間の動 的DEA
では,前節の結果と同じように全体効率値に 対するターム効率値分解に関する性質が成り立つ.定理
2.
中間財が1
個であれば,φ
k=
2l=1
θ
kl で ある.以下の補助定理を用いて定理
2
を示す.なお,各補 助定理の証明は付録に記す.補助定理
5. φ
k≤ θ
1k· θ
k2である.問題
(13)
の最適なw
1∗は正値とは限らない.補助定理
6.
問題(13)
の最適解を(v
1∗, u
1∗, w
1∗)
と する.もしw
1∗> 0
であれば,φ
k= θ
1k· θ
2kである.補助定理
7.
問題(13)
の最適解を(v
1∗, u
1∗, w
1∗)
,問 題(2)
の最適解を(w
2∗, v
2∗, u
2∗)
とする.w
1∗= 0
か つw
2∗> 0
ならば,w
1= w
2∗を満たす問題(13)
の実行可能解は存在し,
(ˆ v
1, u ˆ
1, w
2∗)
とする.任意の自 然数t
に対して(v
1(t), u
1(t), w(t), v
2(t), u
2(t))
を(v
1∗, u
1∗, w
1∗, 0, 0) + 1
t (ˆ v
1, u ˆ
1, w
2∗, v
2∗, u
2∗) (14)
とする.任意の自然数t
に対して(14)
は問題(12)
の 実行可能解である.さらに,以下が成立する.θ
1k· θ
2k=
t→∞
lim
w(t)z
k+ u
1(t)
y
1kv
1(t)
x
1k· u
2(t)
y
2kw(t)z
k+ v
2(t)
x
2k.
(15)
補助定理
8.
問題(13)
の最適解を(v
1∗, u
1∗, w
1∗)
,問 題(2)
の最適解を(w
2∗, v
2∗, u
2∗)
とする.w
1∗+w
2∗= 0
ならば,(v
1∗, u
1∗, 0, v
2∗, u
2∗)
は問題(12)
の最適解 である.問題(12)
の最適値はθ
1k· θ
2kである.w
1∗+ w
2∗> 0
であれば補助定理6
と7
から,w
1∗+ w
2∗= 0
であれば補助定理8
から,定理2
は成 り立つ.L
期間に対する協力ゲーム型の乗数形式2
段階比率 尺度モデルを問題(16)
とする.sup
L l=1w
lz
lk+
sr=1
u
lry
lrkw
l−1z
kl−1+
mi=1
v
ilx
liks.t. w
lz
jl+
sr=1
u
lry
rjlw
l−1z
jl−1+
mi=1
v
ilx
lij≤ 1
j = 1, . . . , n
l = 1, . . . , L
w
l≥ 0 (l = 0, . . . , L)
v
li≥ 0 (i = 1, . . . , m, l = 1, . . . , L)
u
lr≥ 0 (r = 1, . . . , s, l = 1, . . . , L) (16)
問題
(16)
の上限をDMU
kの全体効率値φ
kとする.l
期のターム効率値θ
kl を問題(17)
の最大値とする.max w
lz
kl+
sr=1
u
lry
lrkw
l−1z
kl−1+
mi=1
v
ilx
liks.t. w
lz
lj+
sr=1
u
lry
rjlw
l−1z
jl−1+
mi=1
v
ilx
lij≤ 1 (j = 1, . . . , n) w
l−1≥ 0, v
il≥ 0 (i = 1, . . . , m)
u
lr≥ 0 (r = 1, . . . , s), w
l≥ 0 (17)
このとき,動的
DEA
の全体効率値のターム効率値分 解を以下の定理は保証する.定理
3.
中間財が1
個であれば,φ
k=
Ll=1
θ
lkで ある.5. おわりに
乗数形式
2
段階DEA
比率尺度モデルに対してmax
をsup
に変更することを提案した.中間財が1
個で あれば,乗数形式2
段階DEA
比率尺度モデルの非協 力ゲームの解と協力ゲームの解が一致することを示し た.これは,全体効率値は部門効率値に分解可能であ ること(定理1, 2
)を意味する.この分解可能性は 動的DEA
に対しても成立し,全体効率値がターム効 率値に分解可能であること(定理3
)が導かれる.こ れらの定理により,部門効率値またはターム効率値を 累積することで全体効率値が計算可能である.なお,部門効率値またはターム効率値を定義する分数計画問 題
(1), (2), (13)
と(17)
はCharnes–Cooper
変換に よりすべて線形計画問題に帰着できることに注意され たい.文献
[7]
の表6
には88
件の動的DEA
の適用報告が 挙げられており,中間財が1
個である適用例は48
件 であった.それら適用例48
件において,データセット4
個が入手可能であった.全体効率値を達成する最適 解が存在しないDMU
があることを4
個のデータセッ ト全てで確認した.最適解が存在しない現象は仮想入 出力比のウエイト最適化における経験則「出力として 高い評価を受ける中間財を入力では低く評価する」に よるものと考える.全体効率値のターム効率値分解は,ターム効率値を
CCR
でなくBCC [7]
で決定しても,また,全体効率値 を部門仮想入出力比の累積から総和に変更しても,成 立する.既存の動的DEA
モデルとの理論と実践の両 面における比較は今後の課題である.参考文献
[1] W. D. Cook, L. Liang and J. Zhu, “Measuring per- formance of two-stage network structures by DEA: A review and future perspective,” Omega, 38 , pp. 423–
430, 2010.
[2] G. E. Halkos, N. G. Tzeremes and S. A. Kourtzidis,
“A unified classification of two-stage DEA models,”
Surveys in Operations Research and Management Sci- ence, 19 , pp. 1–16, 2014.
[3] Y. Li, Y. Chen, L. Liang and J. Xie, “DEA models for extended two-stage network structures,” Omega, 40 , pp. 611–618, 2012.
[4] L. Liang, F. Yang, W. D. Cook and J. Zhu, “DEA models for supply chain efficiency evaluation,” Annals of Operations Research, 145 , pp. 35–49, 2006.
[5] Y. Li, X. Lei, Q. Dai and L. Liang, “Performance evaluation of participating nations at the 2012 London Summer Olympics by a two-stage data envelopment analysis,” European Journal of Operational Research,
243 , pp. 964–973, 2015.
[6]
関谷和之 プログラミングコンテストへの敢闘賞の導入とDEA
による候補選定, オペレーションズ・リサーチ:経 営の科学,63 (5), pp. 267–273, 2018.
[7] W. D. Cook and J. Zhu(森田浩訳),
『データ包絡分析 法DEA』,静岡学術出版,2014.
[8] F. B. Mariz, M. R. Almeida and D. Aloise, “A re- view of Dynamic Data Envelopment Analysis: State of the art and applications,” International Transactions in Operational Research, 25 , pp. 469–505, 2018.
[9]
橋本敦夫,福山博文, 温室効果ガス排出量の抑制を考慮し た都道府県の生産性評価, 日本オペレーションズ・リサー チ学会和文論文誌,60, pp. 1–19, 2017.
付録
補助定理
1
の証明.
以下の問題を考える.sup
mw
11z
k i=1v
i1x
1ik·
s1r=1
u
2ry
rk2wz
k+
m2i=1
v
2ix
2ik(18) s.t.
mw
11z
ji=1
v
i1x
1ij≤ 1 (∀j) (19)
s2r=1
u
2ry
2rjw
2z
j+
m2i=1
v
2ix
2ij≤ 1 (∀j) (20) w
1≥ 0, v
i1≥ 0 (∀i) (21) w
2≥ 0, u
2r≥ 0 (∀r), v
i2≥ 0 (∀i) (22)
等式条件w
1= w
2 を追加した問題(18)
〜(22)
は問 題(8)
なので,問題(8)
の上限φ
∗kは問題(18)
〜(22)
の上限以下である.問題(18)
〜(22)
の上限は二つの 問題,sup
m
w
11z
k i=1v
1ix
1ik制約式
(19), (21) (23)
の上限と
sup
s1
r=1
u
2ry
rk2wz
k+
m2i=1
v
i2x
2ik制約式
(20), (22) (24)
の上限との積に等しい.さらに,00
= 0
なので二つの 問題(23)
と(24)
は最適解をもち,それぞれのsup
はmax
に等価に置き換えることができる.したがって,問題
(18)
〜(22)
の上限はθ
k1∗× θ
k2∗に等しい.φ
∗kは 問題(18)
〜(22)
の上限以下なので,φ
∗k≤ θ
1∗k× θ
2∗k で ある.補助定理
2
の証明. w ¯
1= min
mi=11x1ij
zj とする
と,
w ¯
1> 0
であり,j=1,...,n
max w ¯
1z
j m1i=1
x
1ij≤ 1
である.
e
を各成分が1
であるm
1次元ベクトルとすると,
(e, w ¯
1)
は問題(1)
の実行可能解である.さらに,(e, w ¯
1)
に対する問題(1)
の目的関数値はwm¯11zk i=1x1ik> 0
を満たす.したがって,問題(1)
の最適値は正である.問題
(1)
の最適解(v
1∗, w
1∗)
はw
1∗> 0
を満たす.補助定理
3
の証明.
問題(1)
の最適解(v
1∗, w
1∗)
と 問題(2)
の最適解(w
2∗, v
2∗, u
2∗)
に対して,w
2∗(v
1∗, w
1∗, 0, 0) + w
1∗(0, 0, v
2∗, u
2∗) (25)
を考える.このとき,
(w
2∗v
1∗, w
1∗w
2∗, w
1∗v
2∗, w
1∗u
2∗) ≥ 0 w
2∗w
1∗z
j m1i=1
w
2∗v
i1∗x
1ij≤ 1 (∀j)
s2r=1
w
1∗u
2∗ry
rj2w
1∗w
2∗z
j+
m2i=1
w
1∗v
2∗ix
2ij≤ 1 (∀j)
を満たすので,(25)
は問題(8)
の実行可能解である.補助定理
2
から1/w
1∗> 0
である.(25)
を1/w
1∗倍した
(9)
は問題(8)
の実行可能解である.問題(8)
の実行可能解(9)
に対する目的関数値は以下を満た す.w
2∗z
k w2∗w1∗
v
1∗x
1k· u
2∗y
2kw
2∗z
k+ v
2∗x
2k= w
1∗z
kv
1∗x
1k· u
2∗y
2kw
2∗z
k+ v
2∗x
2k= θ
k1∗· θ
k2∗補助定理
1
から,(9)
は問題(8)
の最適解である.補助定理
4
の証明.
自然数t
を任意に選ぶ.(10)
は1
t v
1∗, 1
t w
1∗, v
2∗, u
2∗(26)
である.
(v
1∗, w
1∗)
と(w
2∗, v
2∗, u
2∗)
それぞれは問 題(1)
の最適解と問題(2)
の最適解であり,1tw
1∗z
j> 0
から,(26)
は1 t v
1∗, 1
t w
1∗, v
2∗, u
2∗≥ 0
1t
w
1∗z
j 1t m1i=1
v
1∗ix
1ij=
mw
11∗z
ji=1
v
i1∗x
1ij≤ 1 (∀j)
s2r=1
u
2∗ry
2rj1t
w
1∗z
j+
m2i=1
v
2∗ix
2ij<
s2r=1
u
2∗ry
2rj m2i=1
v
i2∗x
2ij≤ 1 (∀j)
を満たす.(10)
は問題(8)
の実行可能解である.任意の自然数
t
に対する実行可能解(26)
による点列 は以下の極限をもつ.t→∞
lim
1t
w
1∗z
k 1t m1i=1
v
i1∗x
1ik=
mw
11∗z
ki=1
v
1∗ix
1ik= θ
1∗kt→∞
lim
s2r=1
u
2∗ry
2rk1t
w
1∗z
k+
m2i=1
v
i2∗x
2ik=
s2r=1
u
2∗ry
rk2 m2i=1
v
i2∗x
2ik= θ
k2∗したがって,
(11)
は成り立つ.補助定理
5
の証明.
補助定理1
と同様な証明で示す ことができる.補助定理
6
の証明. w
2∗> 0
のとき,w
2∗w
1∗v
1∗, u
1∗, w
1∗, 0, 0 +
0, 0, 0, v
2∗, u
2∗が問題
(12)
の最適解であること,さらに,その最適値 がθ
k1·, θ
2k であることは補助定理3
と同様な証明で示 すことができる.w
2∗= 0
の と き ,任 意 の 自 然 数t
に 対 し て(v
1(t), u
1(t), w(t), v
2(t), u
2(t))
を1 t
v
1∗, u
1∗, w
1∗, 0, 0 +
0, 0, 0, v
2∗, u
2∗とすると,
(v
1(t), u
1(t), w(t), v
2(t), u
2(t))
が問題(12)
の実行可能解であること,さらに,θ
1k· θ
k2=
t→∞
lim
w(t)z
k+ u
1(t)
y
1kv
1(t)
x
1k· u
2(t)
y
2kw(t)z
k+ v
2(t)
x
2kを補助定理
4
と同様な証明で示すことができる.補助定理
7
の証明. w
1= w
2∗を満たす問題(13)
の 実行可能解が存在することを示す.m1α = min
j=1,...,ni=1x1ij
w2∗zj とする.各成分が
1
であるm
1次元ベクトル をe
とする.v ˆ
1=
α1e
とすると,v ˆ
1≥ 0
である.さ らに,w
2∗z
j m1i=1
v ˆ
1ix
1ij= α w
m2∗1z
ji=1
x
1ij≤ 1 (∀j)
である.
(ˆ v
1, 0, w
2∗)
は問題(13)
の実行可能解である.w
1∗= 0
,(v
1∗, u
1∗, w
1∗)
が問題(13)
の最適解,(w
2∗, v
2∗, u
2∗)
が問題(2)
の最適解なので,(14)
の(v
1(t), u
1(t), w(t), v
2(t), u
2(t))
は任意のj
に対してw(t)z
j+u
1(t)
y
1jv
1(t)
x
1j= u
1∗y
1j+
1tw
2∗z
j+ ˆ u
1y
1jv
1∗x
1j+
1tv ˆ
1x
1j≤ 1
と
u
2(t)
y
2jw(t)z
j+ v
2(t)
x
2j=
1tu
2∗y
2j1t
w
2∗z
j+ v
2∗x
2j≤ 1
を 満 た す .さ ら に ,任 意 の 自 然 数
t
に 対 し て(v
1(t), u
1(t), w(t), v
2(t), u
2(t)) ≥ 0
が成り立つので,(14)
は問題(12)
の実行可能解である.任意の自然数
t
に対する実行可能解(14)
による点列 は以下の二つの極限値をもつ.t→∞
lim
w(t)z
k+ u
1(t)
y
1kv
1(t)
x
1k= lim
t→∞
u
1∗y
1k+
1tw
2∗z
k+ ˆ u
1y
1kv
1∗x
1j+
1tv ˆ
1x
1j= u
1∗y
1kw
2∗z
k+ ˆ u
1y
1k= θ
1k,
t→∞
lim
u
2(t)
y
2kw(t)z
j+v
2(t)
x
2k= lim
t→∞
1t
u
2∗y
2k1t
(w
2∗z
k+v
2∗x
2k)
= θ
k2.
したがって,
(15)
は成り立つ.補助定理
8
の証明.
問題(13)
の最適解(v
1∗, u
1∗, w
1∗)
と問題(2)
の最適解(w
2∗, v
2∗, u
2∗, )
に対してw
1∗= w
2∗= 0
が成り立つので,(v
1∗, u
1∗, 0, v
2∗, u
2∗)
は問題(12)
の最適解であり,θ
1k· θ
2kがその最適値で ある.定理
3
の証明.
定理3
は帰納法で証明する.任意のh ∈ {1, . . . , L}
に対して問題(27)
をQ(h)
とする.sup
h l=1w
lz
lk+
sr=1
u
lry
rklw
l−1z
kl−1+
mi=1
v
ilx
liks.t. w
lz
jl+
sr=1
u
lry
lrjw
l−1z
jl−1+
mi=1
v
ilx
lij≤ 1
j = 1, . . . , n
l = 1, . . . , h
w
l≥ 0 (l = 0, . . . , h)
v
li≥ 0 (i = 1, . . . , m, l = 1, . . . , h)
u
lr≥ 0 (r = 1, . . . , s, l = 1, . . . , h) (27)
問題(27)
の上限をφ
k(h)
とする.h
期ターム効率値θ
hkは問題(17)
の最適値なので,φ
k(h)
の上界を以下 のように評価できる.補助定理
9.
自然数h ≤ L
ならばφ
k(h) ≤
hl=1
θ
kl.
帰納法の仮定として,「
h
期の問題(27)
に対して実 行可能な点列{p(t)|t = 1, 2, . . .}
が存在し,その点列 の問題(27)
の目的関数値は問題(27)
の上限φ
k(h)
に収束する.ここで,
q(t)
を(w
0(t), v
1(t), u
1(t), . . . , w
h−1(t), v
h(t), u
h(t))
とし,p(t)
を(q(t), w
h(t))
と する.さらに,φ
k(h) =
hl=1
θ
lkが成り立つ」を仮定 する.この仮定では,数列w
h(t) |t = 1, 2, . . .
も収 束し,その収束先をw ¯
h= lim
t→∞w
h(t)
とする.h = 1
の場合を考える.問題Q(1)
は最大値φ
kをもち,問題
(13)
と等価である.したがって,その 最大値ではφ
k= θ
1kが成り立つ.問題Q(1)
の最適 解を(w
0, v
1, u
1, w
1)
とし,任意の自然数t
に対してp(t) = (w
0, v
1, u
1, w
1)
とする.このとき,この点列 は問題Q(1)
の実行可能領域内に常に存在し,その目 的関数値は最大値φ
k= θ
1kである.h ≥ 2
で,帰納法の仮定が成り立つとする.つま り,ある点列{p(t)|t = 1, 2, . . .}
が存在し,各点は問 題Q(h)
で実行可能であり,t→∞
lim
h l=1w
l(t)z
kl+
sr=1
u
lr(t)y
lrkw
l−1(t)z
l−1k+
mi=1
v
li(t)x
lik= φ
k(h) (28)
が成り立つと仮定する.さらに,(29)
を仮定する.φ
k(h) =
h l=1θ
kl(29)
h + 1
期の場合を考える.このとき,問題(17)
の最 適解を(w
h, v
h+1, u
h+1, w
h+1)
とし,最大値をθ
kh+1 とする.p(t)
の最終要素w
h(t)
の収束先w ¯
hとw
hと のペアは「w ¯
h+ w
h= 0
」,「w ¯
h· w
h> 0
」,「w ¯
h>
か つw
h= 0
」,「w ¯
h= 0
かつw
h> 0
」に分類できる.w ¯
h+ w
h= 0
の場合:任意の自然数t
に対し て(q(t), 0, v
h+1, u
h+1, w
h+1) (30)
は問題
Q(h + 1)
の実行可能解である.さらに,そ の目的関数値は常にφ
h+1k 以下であり,その極限値 はt→∞
lim
h l=1w
l(t)z
kl+
sr=1
u
lr(t)y
lrkw
l−1(t)z
l−1k+
mi=1
v
li(t)x
lik× w
h+1z
h+1k+
sr=1
u
h+1ry
h+1rk0 +
mi=1
v
ih+1x
h+1ik=φ
k(h) × θ
h+1k=
h+1
l=1
θ
lkである.補助定理
9
から,φ
h+1k=
h+1l=1