非熱平衡プラズマによる低濃度ガス状環境汚染物質の 除去から 快適環境実現を目指して
東京大学大学院工学系 教授
小田哲治 Part I 費熱平衡プラズマ処理
1.はじめに
非熱平衡プラズマは、大気環境汚染物質の除去に 極めて有効な手段であると考えられ、多くの研究が なされている。反面、技術が高度であり、既存技術 との開きが大きいことから未だに実用には至ってい ない。以下においてその概要と将来展望を解説する。
2.非熱平衡プラズマとは
そもそもプラズマとは、分子、原子、イオン、電 子、ラジカルの混在化した状態であるとされている。
現実には、核融合などを目指すプラズマから半導体 プロセスでよく利用されているプラズマもある。前 者は、電離率は100%に近く、また、電子の(運動)エ ネルギーも10keV台ときわめて大きく、等価的な電 子温度も 1億度に近い高温である。また、半導体プ ロセスにおいても数十 eV 以上であることが一般的 である。但し、絶対的な圧力は、大気圧の千分の一、
あるいは、数十万分の一と極めて低密度である。こ れに対して、大気圧力の下では、分子密度は圧倒的 に大きい反面、電離度は0.1%などときわめて小さく、
電子密度では低圧プラズマよりも少ない場合が一般 的である。また、電子の平均温度も 1~10eV 程度と 小さいのが普通である。但し、1eV の運動エネルギ ーは僅かであっても、等価的な熱(温度)に換算すると
12000K にもなり、極めて高い温度である。ちなみ
に、非熱平衡プラズマとは、非定常(平衡)状態で電子、
イオン、分子などのエネルギーがそれぞれ異なって いる状態を示す。筆者らが目指している非熱平衡プ ラズマにおいては、この電子のエネルギーが他の分 子などと比較して圧倒的に大きな状態を目指してい る。すなわち、我々の利用しているプラズマでは、
ガス温度の上昇は、数度と極めて少ないエネルギー で、ある目的の反応のみを実現しようとするもので ある。言い換えると、分子の温度は室温のまま、電 子のみ 1 万度以上の高い温度にすることを考えてい る。そうすると電子が関与する反応のみ進行するこ とになる。実際には、電子のみが直接的に反応する 場合以外にも、電子衝突などで分子やイオンが励起 されたラジカルが化学反応に寄与する場合もふくま れ、後者の方が現実には多いと考えられている。
ちなみに、この反対に、電子や分子の熱的なエネ ルギーがほぼ一様な場合を熱平衡プラズマと呼ぶ。
この場合には、気体(プラズマ)全体が、1万度以上に なりうる。この状態を燃焼などで実現することは容 易ではなく、熱平衡プラズマ(通称、熱プラズマ、高 温プラズマなどとも呼ばれている)は高温度実現の もっとも手軽な手法である。直流放電、交流放電、
RF放電などが利用されている。また、この2つのプ ラズマの間には、グロー放電などいと呼ばれる中間 状態も存在する。空気処理などにおいては、低い圧 力で処理を行っても絶対量が少ないことから大気圧 力下で行うことがきわめて重要である。また、半導 体プロセスなどにおいても可能であれば大気圧力で 処理をしたい(不純物との相対的な純度が大きく出 来ること、真空に排気する手間が減少することなど の利点がある反面、ガス濃度が高いため、有毒ガス の扱いには注意が必要)ことから、最近は様々な研究 がなされている。
3.環境破壊と人間活動
人類の文化的な活動は、従来、同時に環境破壊 を伴ってきている。例えば、人類の特徴の一つに火 を使うことがある。これは、既に、炭酸ガスを発生 し、地球温暖化を進めていることになる。交通もし
かりである。道路建設や鉄道線路建設も必ず自然環 境破壊を伴う。従来は、環境破壊よりも利便性向上 が優れていると判断されれば?多少の環境破壊はや むをえないとされてきたように思われる。同時に、
この環境破壊が公害と呼ばれるようになった時から 急遽、公害対策なるものがスタートしている。表題 の環境汚染物質除去も、社会を便利にしようとする 人間活動の副産物として、大気中に放出される物質、
特 に 、 揮 発 性 有 機 物(VOCs: Volatile Organic Compounds)を表題の非熱平衡プラズマによって分 解除去することを目的としている。特に、低濃度の 場合、空気全体を化学的に処理をしようとすると、
温度を上げる必要がある場合が多く、エネルギー的 に不利であることから、選択的に対象汚染物質のみ に働きかけることの可能な非熱平衡プラズマに関心 を有している。この仲間には、PCB、ダイオキシン、
環境ホルモンといった極めて猛毒であり、ppb レベ ルの低濃度での制御が必要な物質も含まれている。
現実には、ダイオキシンなどは発生源での規制が定 まっており、また、ハンドリングでのミスが許され ないことなどから筆者は直接の研究は行っていない
(類似物質での実験を準備したのみである)が、い くつかの報告では、ダイオキシンも非熱平衡プラズ マによって分解可能である、との結論が得られてい る。また、本研究の前には、煤塵除去の研究もなさ れており、本研究もその延長として捉えることが出 来る。
VOCの環境破壊としては、発がん性、神経麻痺 などの歴史が古いが、その後、オゾンホール問題で CFC(chlorofluorocarbon)が規制された。更には、
一部VOCも、オゾンホール問題で規制されたが、そ の後、シックハウスシンドロームの原因として低濃
度 VOCs(ホルムアルデヒドなど)が話題となり、
更には、地球温暖化や光化学スモッグ対策としても VOC除去は重要性を増している。当然、化石燃料燃 焼と関係して NOx の低減、SPM(ディーゼルエン ジン排ガス中の微粒子)対策などにおいても非熱平 衡プラズマは研究されている。
4.非熱平衡プラズマ処理
Tungsten Wire Stainless Steel Film
(a) Coil Type (Surface Discharge Tye) Reactor
Fused Silica Tube
Stainless Film Stainless Bolt
Fused Silica Tube
High
Voltage
(b) Bolt Type Reactor (Barrier Discharge)
Fig. 3 Non-Thermal Plasma Reactors
図 2 非熱平衡プラズマリアクター(沿面
タイプ、バリアタイプ
筆者らの用いている非熱平衡プラズマリアクタ
―の例を図1,2 に示す。沿面タイプか バリアタイ プの放電リアクターが普通である。通常、外側の板 を接地し、内部の電極(コイル形状や棒、ボルト形 が多い)に商用周波数、あるいはやや高い周波数
(1kHz~10kHz程度)の高電圧(ピーク値が数kV からを印加するとコイルあるいはボルトの山からス トリーマコロナが発生する)。沿面放電型の場合には、
誘電体の表面に沿って放電が発生し、全体が青白く 発光する。ちなみに、現在用いている実験全体を図 3 に示す。ここでは、主に、有機物の処理実験を行 っている。内部電極と誘電体との間にエネルギー効 率向上のために触媒を入れることも多い。筆者らは、
最初は、オゾンホールを作る原因として現在既に使 用 が 禁 止 さ れ て い るCFC-113 (chlorofluoro- ethylene)などを空気中で分解していた。その後、
CFCは使用禁止となったことから発がん性のある有 機物トリクロロエチレン(通称TCE:CH2ClCHCl2)を 対象とすることが多い。トルエン、アセトン、ベン ゼンなどの芳香族やハロゲン化有機物などが処理対 象とされている。VOCは低速流量ポンプで加熱した 網状の上に滴下させることで濃度を制御している。
副産物の分析には、オゾンメータ、GCMS(ガスク ロマト質量分析装置)、FTIR(高速フーリエ変換型 赤外分光器)などを用いて、ppmレベルの測定を行 う。この図3では、TCEは乾燥空気と混ぜて適当な 濃度にしてからプラズマ処理される。これを直接法 と呼ぶ(Direct Process)。一方、乾燥空気のみをプラ ズマ処理し、その後に、TCEの混ざった空気と混合 する方法(IndirectProcess)もある。例外を除いて、
TCEはほとんど分解されない。但し、更にその下流 側に触媒をおくことがある。触媒の種類によっては、
間接法であっても後述のようにかなりのTCEが分解
します。
図3 非熱平衡プラズマ処理システムの概略図
図4 非熱平衡プラズマによるCFC-113の分解
Power (W)
400ml/min
D ec o m E p os o n nc ff iti ic ie y (
% )
500Hz 2kHz Coil Type
50Hz 50Hz 500Hz 2kHz Bolt Type
FP o reactors, frequency dependence).
0 5 10
80 90 100
ig.7 Decomposition Efficiency of TCE versus Discharge ower(more than 80 , tw
図5 ボルト型とコイル型リアクターによる TCE 分解特 性(放電電力との関係)
5.VOCsの分解例
低濃度有機物をプラズマで分解した例を示しま す。図4は、洗浄液として有名なフロンCFC113を プラズマで分解した時の実験結果です。図中に示さ れているように正弦波や方形波(図では片側がクラ ンプ 負電圧にならない されておりますが、クラ ンプされてなくても結果は同じです)を図 1 のセラ
ミック製の沿面放電型リアクターで分解した実験例 です。この場合(CFC の分解)には、放電電力がたく さん必要なため、周波数が 5kHz と大きくなってお ります。その後の研究では、励起電源の周波数はも う少し小さい方がエネルギー効率が良いことが判明 しており、研究室では、通常、商用周波数(関東では 50Hz)を用いております。安定なフロンガスの分解で は、大きなエネルギーが必要なこともありリアクタ ーの温度は上昇しますが、オゾナイザーと異なり、
冷やす必要はほとんどありません。
基本的には、ほとんど全ての有機物は、この非 熱平衡プラズマによって分解除去することが可能で ある。筆者らは、最初に扱ったのがトリクロロエチ レン(TCE)であった関係から、その後のデータの比較 のために、ほとんどの場合、TCE分解で性能を評価 している。ボルト型リアクタとコイル型リアクター の比較(周波数効果も含む)例を図5に示す。流量も少
ないけれども1W程度の放電で90%以上の TCEが 分解できることが認められる。
図3 の流れで触媒として二酸化マンガンあるい は二酸化マンガンを担持した表面積の広いアルミナ 粒子を後方に配置すると優れた分解特性が得られた。
図6は、同じリアクターで触媒がない場合(直接処理) である。放電電力が18J/Lの場合、TCE分解率は75%
程度である。一方、間接処理でプラズマ処理をした 空気を等量の TCE で汚染された空気(初期濃度
500ppm)に混ぜた場合、最終ガス1L に使用した放
電エネルギーを SED として横軸に、TCE 分解率を 縦軸にプロットすると図 7 となる。この場合は、図
6 でのSED=18J/Lで95%以上のTCE分解率
となっている。但し、COx変化率(TCEに含まれ ていた炭素のうち何%が完全に酸化されて酸化炭素 に変化したかを示すもの)は 10%強であった。いい かえると、中間性生物としての有機物(塩化物)が含 まれていることになる。一方、直接プラズマ処理を した後に触媒を通した場合(直接処理+触媒)には SED=8J/L で既に TCE 分解率は 70%となり、
SED=18J/L で 98%以上の分解率となる。反面、酸 化炭素への変換率は依然 30%と少ない。酸化炭素へ の変換率が98%程度になるには、SED=90J/Lが必 要で、かなりのエネルギーが必要であることがわか る。また、副産物においても、TCAA(トリクロロア セトアルデヒド),DCAC(ジクロロアセトクロライ ド)などの塩化炭素有機物が生成されている。この 二つは、同じ分子式で質量も同じであるが、プラズ マ反応とオゾン分解時の酸化反応で生成のされ方が 異なっている。
図6 直接プラズマ処理におけるTCE分解
以上、まとめると非熱平衡プラズマは、有機物 を酸化させる場合に極めて有効な手法であるが、エ ネルギー効率は十分ではない。但し、放電によって 生成されるオゾンを触媒で分解する折にも VOC の 強い酸化反応が観測されており、両者を組み合わせ ると有効である。但し、これらの反応は、対象のVOC によって異なり、PFC(パーフルオロカーボン)では、
選択性がほとんどないため、ガスを高温度にする必 要が生じ、結果として効率が悪く、エネルギー効率 は悪いが発生の容易な年津プラズマの利用が便利で 図7 間接処理の場合(新触媒後段に使用) ある。
Part II 快適環境への試み
1.序論
これまでの公害対策技術とは、人間活動によって 悪くなった環境を少しでも改善して元の状態に近づ けようとするものがほとんどであった。しかし、本 来、人間はより快適な環境を目指す権利を有してい るはずである。工学とは、その目的を満たすための 学問である。当然、その意味での環境とは極めて広 範囲である。我々を大きな距離を短時間の内に移動 させる交通機関も快適環境を目指したものといって も誤りではない。しかしながらこれを推し進めてい くと際限がない。従って、ここでは、人間の生活環 境、通常の生活に密接したものを中心に考える。
さて、更に、ここでは、高齢者社会を背景に考え る。これは、時流である。現在において最も重要な ターゲットは高齢者の年金であり、また、リストラ である。現在、我が国の年金問題は極めて厳しい状 況である。現状のままでは逆ピラミッド形の人口構 成は若者の負担を著しく増加させる。これは、高齢 者も働けば大幅に緩和される問題である。ところが、
現実には、中高年リストラといわれているように、
むしろ働ける世代のリストラが行われている。これ では我が国の環境がよくなるわけがない。これはど うしたことによるものであろうか。ここに重要なキ ーが存在する。50代、60代の人間は十分に働け るのだが その環境が整っていないことによる。そ の一つは、確かに、賃金であろう。我が国の賃金は 下げにくいシステムである。これが重要である。更 に、コス切り下げの波は、中高年者の首切りに発展 している。
これらを打破するには、いくつかのキーが必要で あろう。その一つは、賃金の変化である。既に、い くつかの企業においては、年功序列的な賃金体系の 中止を宣言している。むしろ仕事中心でかまわない のではないか。これは、従来の賃金体系が、家族の 発展に伴ってきたことによる。仕事ではなく、家族 の構成で賃金をあげないと生活できない(ベースが 低い)体系であったことによる。現在、既に、基準 レベルは変わりつつある。ところで、高齢者にとっ て働きやすい職場環境も極めて重要である。また、
高齢者にとっては適応力が衰えていることからわず かの変化が致命的になることも少なくない。我々に とって、高齢者が働きやすい職場環境を提供し実現 することは社会的な急務である。そのためにも、快 適な労働環境を提供することが重要である。我々は それらを含め快適環境と考える。この環境は極め重 要である。
さて、快適な環境とプラズマがどのように関係づ けられるであろうか。当然であるが、環境汚染物質 の除去技術としてのプラズマ応用については多くの 研究がなされている。例えば、化石燃料の燃焼排ガ ス中のNOX処理は有名である。また、オゾンホール の原因として使用禁止となったフロンは、既に使用 されているフロンを回収する時の漏洩対策が必要で ある。高濃度のフロン処理には、高温プラズマなど が利用されており、低濃度では、低温プラズマが有 効である。更に、シックハウス症候群の原因やグリ ーンハウス効果の大きな揮発性有機物の処理などに も非熱平衡プラズマが利用可能である。最近では、
半導体産業で多用されているPFC処理にもプラズマ を利用することが検討されている。この場合には、
濃度を高めて高温プラズマで短時間に処理する方が 良さそうである。ダイオキシン処理もプラズマで出 来る。このように、非熱平衡プラズマは、その特徴 が生かせる場合と効果がない場合とがある。これは、
あるエネルギー範囲の電子が選択的に除去したいも のと反応する場合には非熱平衡プラズマが有効なた めである。言いかえると、選択制がない場合には、
非熱平衡プラズマの有利性が消えると思われる。し かしながら、肝心の非熱平衡プラズマの電子温度は 実測されていない。
さて、以上は現状であるが、ここで新たに何が期 待できるのかが重要である。プラズマで何が期待で きるのであろうか。その一つに、マイナスイオンが 騒がれている。これは、マイナスイオンがあるとそ の周辺に水分子を集めてクラスターを作る。このク ラスターが体によいということである。筆者は直接 その効果についてはデータをとっていないが、確か に、水クラスターそのものは良さそうである。反面、
大気中での放電では必ず オゾンや窒素酸化物が作
成される。これは、生命体に様々な影響を与えるも ので多くの意見がある。これについては、今後の結 果を見守りたい。ここではプラズマの応用の可能性 について少し考えてみたい。
快適な環境とは
では、快適な環境とはどのようなものであろうか。
ただ空気がきれいである、とか、水がよい だけで あろうか。もちろん健康に直接害を及ぼさない環境 であることは当然ですが、気分をよくすることが必 要である。リラックスする時は当然であるが、仕事 をするにも気分良くできる環境が重要では無かろう か。特に、今後想像される高齢化社会においては高 齢者が気持ちよく働ける環境を提供することも重要 であろう。そういうことで静電気学会では、有志で 快適環境研究会なるものを数年前から開いている。
基本的には50歳以上の高齢者が主体で楽しみなが ら将来ビジョンを語っている。温泉に行くのもその 一環であります。温泉でゆったりとくつろぐのも重 要な行事である。以下、まじめにプラズマとの関係 で考える。
2.プラズマの可能性 2.1 現在の技術の延長
現在使われている化学反応の延長で考えると、プ ラズマの将来性にはいくつかの要素がある。最も簡 単なものはガス処理であろう。
燃焼排ガス(特に化石燃料)中の有害ガスの除去、
特に、NOx除去は有望視されていることはいうまで もない。また、ディーゼルエンジン排ガスで問題と なっているSPM(炭素微粒子)のフィルターと併用 すると、炭素の燃焼時間が軽減され、結果としてフ ィルターの小型化が可能となる。炭酸ガス以上の地 球温暖化効果の大きな各種有機ガス、発ガン性や神 経麻痺を引き起こす有機ガス(通称 揮発性有機物 VOC といわれる)、シックハウス症候群をもたらす とされるホルムアルデヒドなどの分解除去が可能で ある。これらについては、エネルギー的に採算が合 うのか、有害副産物を除去できるのかと行った最終 的な処理技術が課題となっており、ケースバイケー スで実用化が進むものと思われる。
更に、今後の可能性としては、ダイオキシンなどの
有害かつ処理が難しい物質の除去技術としても期待 される。ちなみに、現在のダイオキシン対策は、大 規模での高温燃焼が処理の基本であるが、プラズマ 処理は、小規模での実用化が期待できる利点がある。
食料品の殺菌も重要な応用例であろう。液体中で の殺菌も残渣がない点で期待が大きい。効果範囲の 小さいのが問題である紫外線に取って代わる可能性 はあると思われる。発酵菌種の活動停止などの可能 性も残っている。過去の例では、菌の死骸が残る問 題が指摘されており、活動のみを止める条件検索も 検討されている。オゾン殺菌された食品が長期間腐 敗しなかった例も報告されており、薬品処理を嫌う 昨今では有力な処理手法である。
反対に、汚染された排水等の処理にも利用される であろう。有害物質、特に有機物を分解除去する能 力は極めて高い。通常のオゾン処理では、水中オゾ ン濃度が低いため、直接放電にさらす方が効果的で ある。今後はコストとのバランスが重要になるであ ろう。濃度の高い汚水処理ではコストが懸念され、
いくつかの処理手法が組み合わされるものと思われ る。その意味でも液中プラズマの研究は今後の発展 が期待できる。
個体については、非熱平衡プラズマの直接的な利 用はない。これは、プラズマが均一に効果を発揮で きないためである。一方、熱プラズマの応用は広い。
既に、燃焼飛灰などの体積圧縮に利用されている。
灰などは溶融すると高密度になること、有機物など はゆっくり燃焼してガス化され、体積は減少すると ともに無害化も進むようである。放射性物質の濃縮 などにも利用が検討されている。ダイオキシンなど の処理が難しい物質も高温プラズマに暴露されれば 簡単に無害化されると思われる。コストや設置場所 の条件が一致されれば実用化は進むであろう。熔射 技術などで実用化されている技術の転用可能とおも われ、実用化は近い。製錬技術への応用は実用化さ れているようなので益々利用が進であろう。直接土 壌を処理することはコストなどの関係からよほどの 理由がないと実用化されないものと考えられる。
2.2 将来の夢
勝手に想像してみる。非熱平衡プラズマは、極め て強力な化学反応が期待できる。電子温度は、数万℃
相当と考えられる。一方、分子温度などは低いこと から、既に、オゾン発生には多用されている。低温 度で反応が可能なことから、各種高分子、特に、生 体高分子の処理では、分子を壊さないことから多く の付加価値を当てることが出来るものと期待される。
まず、医療用の薬品製造には極めて多くの可能性が あると思われる。簡単な例としては、薬品やそのカ プセルの表面処理により薬のなじみ方の調整、吸収 時間の制御など極めて多くの可能性が期待できる。
更に、新しい機能を有する物質の発見にも繋がるも のといえる。
薬品以外においても、多くの効果が考えられる。
例えば、燃焼で発生する一酸化炭素は毒性が高いし、
低濃度であっても不快感が強い。プラズマは、一酸 化炭素を還元し、あるいは酸化して無害化する技術 として期待される。但し、プラズマだけでは、一酸 化炭素処理は難しいようで、今後触媒との併用など が検討されるであろう。ちなみに、マイナスイオン 発生装置などが市販されているが、放電で作られる 負イオンは有害物が多いため、その効用は決められ ない。
例えば、空気中でプラズマ放電を発生させると窒 素酸化物が生成される。通常、空気中では有害とさ れているが、血行をよくする効果もあることから条 件次第では医療装置ともなりうる。
2.3 プラズマへの期待
少し夢を語ります。プラズマで何が出来るか。前 述のように、
高温度 アーク等では 最大1万℃ 電子温度
化学反応が極めて大きい 通常考
では?最大 数十万℃が期待できる
えられない反
考える(化学的に無理なものもあ
加工性に優れたもの、強度、耐熱性、
同
おいても、プラズ 応が起こりうる
以上の特質のみを
るであろうが無視して)。錬金術は無理としても近づ けることが可能と思われる。
(a)素材開発
図9
堅いもの、
混合性などの向上が期待される。興味があるものに 電気伝導度の調整がある。例えば、高分子材料の導 電性を制御することが出来れば、安価な高分子材料 の電気伝導度が調整できれば、多くの利用が期待で きる。静電気学会員にとって真っ先に考えられるの が、冬場の静電気ショックからの解放あろう。これ は、万人共通の快適環境の実現に必要なものである。
時に、繊維の表面をより滑らかにすることも肌触 りや着心地の改良につながるものと考えられる。高 齢者には、ショックは、死に至る危険性を含めてお り避けなければならない。その意味でも快適環境の 実現に寄与できると思われる。
生体高分子や薬品などの開発に
マは限りない可能性を有している。自然界では実現 できない反応を利用することで様々な化学薬品が 製造されることであろう。将来的には、生体反応と プラズマ反応を組み合わせて制御することで画期 的な材料の開発や使い方が見いだされるものと期 図8
待できる。
(b)表面処理技術
たが、素材開発のみでなく、表面
発売されている。オゾナイザ
装置などが既に市販されて
味対象である。これまでは、
開発、表面処理に本来含まれるも
(e)
業、医療、バイオなど多くの分野でもプ 前になりつつある。今後、多 前項にも記述し
処理も多くの可能性を有する。静電気対策にも表面 処理で電気伝導度を上げる試みはいくつかの分野で は実行されている技術である。これまで減圧プラズ マでしか実現できなかった表面処理が大気圧で可能 になるとともに、新たな化学反応により、滑らかな 表面、より多孔質の表面、化学的に活性な表面、さ らには、においなどをしみこませる技術も開発され るであろう。においだけでなく、ある人にとって必 要な薬などもみにつけておく、あるいは、傍に置く だけでも適量が吸引されるようになるかもしれない。
(c)環境の殺菌、解毒 既に、多くの製品が
ーで代表されるように、プラズマ放電は一般に殺菌 効果がある。問題は、そのときの副産物は何か、う まくいけば有害物質をも分解除去できるのではと期 待されている。今後は、殺菌だけ、あるいは、特定 の有害物質のみを完全に無害化できる可能性を有し ている。問題は、イオンを含め、人体に害を与えそ うな物質は放出しないようにすることが重要であろ う。従って、何が有害、無害であるかをわきまえて、
必要なものを供給し、不必要なものは発生させない 管理が重要であろう。
水処理もオゾン水発生
いる。オゾンの水への溶解度は小さいことからその 効果を上げる工夫がなされている。原子酸素Oや水 酸化イオンOH などの制御が可能になれば、殺菌す るだけでなく、おいしい水(クラスターが影響する ともいわれている)、健康によい水なども制御可能と なるかもしれない。
土壌改質も大きな興
気体をしみこませるような反応がほとんどと考えら れる。幸い、ある程度空隙があれば、沿面放電を進 展させることが可能なはずである。これを利用する ことで固体中の有害物質の除去などが可能と考えら れる。青酸ガスを用いなくても殺菌殺虫が可能とな るかもしれない。土中のダイオキシンやPCB分解が 可能になるかもしれない。土壌改質は、農作物の革 命を引き起こすことだけでなく、土と戯れることで
健康増進を実現できるものと考えられる。これは、
温泉治療、どろんこ治療などからも容易に可能と考 えられる。問題は、本当に害はないのか、あるとす ればいかなる欠点を有し、同時に、害もあるかを正 しく判断できる環境が必要と思われる。
(d)飲食への期待 これも新素材の
のであるが、人間環境にとって重要なため、あえて 繰り返す。殺菌は当然であるが、味覚の向上が期待 できる。水の PH 制御は既に実用化されているが、
食べ物自身の味への影響も無視できない。アミノ酸 や糖分の割合の制御、消化されやすさの制御など多 くのパラメータがあると予想される。重複するが、
おいしい水の作成、飲料製品の改質と可能性は結構 大きい。
半導体産 図10
ナノテクへの貢献
ラズマの利用が当たり
くの分野で大気圧プラズマが利用されるようになる と期待されている。プラズマパネルも現在は低気圧 放電であるが、大気圧でも可能性はある。加工など でも大気圧プラズマが利用されだしている。今後は、
ノイズ対策等は必要であるが家庭レベルでの加熱装 置としてもプラズマの利用が考えられる。
危険ではあるが、部分的にイオンを照射したりす る健康増進機などへの応用も考えられる。
(f)その他
プラズマエンジンなどが実用化されれば、移動装 応用なども考えられる。プラズマ推進は
りに
以上、勝手にそのときに思いつくことを書き殴っ まとまりがあるわけではない。同時
れを生かすも、だめにするのも 使う人
あれば、もてる労働力を社会に還元する 置などへの
船の推進動力として研究されていたはずである。自 動車や飛行機などへの応用もあり得るのでは無かろ うか。
3.おわ
たもので観念に
に、抜けも多く、恥ずかしいものとなったが、改め て言うと
プラズマは、無限の可能性を提供してくれる道具 であり、そ
間側に責任があるように思われる。また、この技術 を生かして、人類、特に、高齢者に快適な環境を提 供し、
高齢者に生きる喜び、目的意識を呼び起こし、
可能で
社会を創造することがこれからの我々の使命ではな かろうか。それぞれの個人が、もてる能力を発揮し て快適に生きていく環境、社会を作り出していかな ければ日本の将来、ひいては世界全体が生活しやす
い環境を人類自身が築いていく必要があると思われ る。我々にとっては、夢を持ってプラズマ応用を研 究すること自身も存在を確かめることの出来る快適 環境の一部かもしれない。
図11