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2007 年 11 月に北海道上ホロカメットク山で発生した雪崩の調査報告

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北海道の雪氷 No. 27(2008)

81

Copyright © 2008 (社)日本雪氷学会

2007 年 11 月に北海道上ホロカメットク山で発生した雪崩の調査報告

-北海道支部雪氷災害調査チームの活動-

尾関俊浩(北海道教育大学),八久保晶弘(北見工業大学),

岩花剛(北海道大学),樋口和生(北海道山岳活動サポート),

大西人史(北海道立林産試験場),佐々木大輔(ノマド)

1.はじめに

(社)日本雪氷学会北海道支部では 2007/2008 冬シーズンから社会貢献事業の一環 として雪氷災害調査チーム(以下調査チーム)を発足させた.北海道では豪雪,寒冷 地に 557 万人が暮らしており,冬季には雪崩,吹雪,着氷雪などの雪氷災害が数多く 発生している.雪氷災害を防ぐには,災害をもたらした現象を調査し,発生メカニズ ムを解明し,対策を講じることが肝要である.しかし雪氷災害の対象は雪や氷である ことから,災害発生から時間が経過すると,例えば雪崩であれば発生区が降雪や吹き だまりで埋没し,交通障害であれば視程や吹きだまりの状況が刻々と変化することと なる.また災害調査は災害復旧と平行して行われるため,災害状況は時間とともに把 握が困難となる.調査チームが雪氷災害の発生直後に災害現場に入り,被害状況や積 雪の状態などを調査できるようになれば,災害発生のメカニズムや原因を明らかにす るうえで有効であり,災害の予知,防止,被害の軽減に寄与するであろう.

山岳地帯で起きる雪崩災害は研究者だけでは発生現場まで調査に入ることが困難で あった.この調査チームでは冬山登山に豊富な経験を持つ登山家や雪崩事故防止活動 を行なっているメンバーの協力を得て,事前に雪崩発生時に出動できるメンバーを登 録し,研究者と冬山の安全管理担当者により編成される調査チームを迅速に派遣でき る体制を整えた.

2.2007 年 11 月に北海道上ホロカメットク山で発生した雪崩

2007 年 11 月に北海道十勝岳連峰上ホロカメットク山(図 1)で 2 度登山者が巻き込 まれる雪崩が発生した.一度目の雪崩は 11 月 13 日に発生した.山頂に近い標高 1820m 付近の西斜面で発生した雪崩(以下上ホロカメットク山下降ルンゼ雪崩と呼ぶ)はス キーヤー1 名を巻き込み,標高差約 200m,距離約 440m を流下した.デブリに埋没した スキーヤーは同行者の迅速な救助により一命をとりとめた.11 月 13 日は調査チーム発 足当日というタイミングであり,さっそく下降ルンゼ雪崩の調査チームを編成し,11 月 17 日に調査を行った.調査項目を表 1 に示す.

二度目の雪崩は 10 日後の 11 月 23 日に発生した.上ホロカメットク山山頂から西に 延びる D 尾根の通称・化物岩の東側にあたる北斜面の標高 1630m 付近で発生した雪崩

(以下上ホロカメットク山化物岩雪崩と呼ぶ)は,標高差約 190m を流下し,ヌッカク シ富良野川の谷底に達して堆積した.化物岩雪崩には 12 名の登山者が巻き込まれ,4 名が死亡,1 名が重傷を負った.化物岩雪崩は調査チームにより 11 月 24 日に予備調査 が,11 月 25 日に本調査が,12 月 11 日に雪崩発生区の調査が行われた.調査項目を表 1 に示す.

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北海道の雪氷 No. 27(2008)

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Copyright © 2008 (社)日本雪氷学会

下 降 ル ン ゼ 雪 崩 の 発 生 区 , 化 物 岩 雪 崩 の 発 生 区 お よ び 堆 積 区 近 傍 で 行 っ た 積 雪 断 面調査の結果,両方の雪崩と も 地 面 に 近 い 積 雪 内 に し も ざ ら め 雪 と こ し も ざ ら め 雪 か ら な る 弱層 が 確 認 され た . 11 月の現地付近の気象デー タより,この弱層は同じ時期 に 形 成 さ れ た と み ら れ た こ とから,今回の下降ルンゼ雪 崩と化物岩雪崩は,この同じ 弱 層 が 破 断 し た こ と に よ り 面 発 生 乾 雪 表 層 雪 崩 が 発 生 したと結論された.なお,本 調 査 の 詳 細 な 結 果 に つ い て は,雪氷学会機関誌「雪氷」

に投稿中である.

謝辞

現地の調査活動にあたって,十勝岳温泉凌雲閣の会田圭治氏,上富良野遭難対策協 議会,日本雪崩ネットワーク,雪崩事故防止研究会の皆様にご協力いただいた.北海 道大学大学院地球環境科学研究院の澤柿教伸博士には調査データの編集環境の整備に ご尽力頂いた.NPO法人雪氷ネットワークの山田知充博士,(独)森林総合研究所の 山野井克己博士には調査データをまとめるにあたり有益なご助言をいただいた.また 日本気象協会北海道支社からは調査時の現地の気象情報及び解析用の気象データを,

北海道上川支庁旭川土木現業所富良野出張所からは解析用に吹上テレメータ積雪深デ ータをご提供いただいた.ここに記して感謝申し上げる.最後にこの雪崩で亡くなら れた4名の方々に謹んで哀悼の意を表する.

表 1 2 つの雪崩の調査項目一覧

調査項目 下降ルンゼ雪崩 化物岩雪崩

発生日 2007 年 11 月 13 日 2007 年 11 月 23 日

調査日 2007 年 11 月 17 日 2007 年 11 月 24 日,25 日,12 月 11 日 GPS による測定 デブリ末端位置,

遭難者埋没位置,

破断面位置

デブリ範囲

雪崩規模の測定 ○ ○

破断面の調査 層構造,雪質,密度,

雪温,積雪水量

ショベルコンプレッションテスト 破断面の雪質,積雪深

デブリの調査 - 層構造,雪質,密度,雪温,積雪水量

その他 - デブリ近傍の自然積雪の調査

層構造,雪質,密度,雪温,積雪水量 シアーフレームテスト

図1 十勝岳連峰と2007年11月の雪崩発生場所.

①下降ルンゼ雪崩.②化物岩雪崩.

参照

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