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「蓄電池設備」の火災について

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Academic year: 2021

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はじめに

近年,高度情報化社会を迎え,産業構造の ソフト化が進展するなか,ソフトウェア産 業を始めとする情報サービス業も目覚まし く発展しております。

こうした中にあって,無停電設備の中の 蓄電池設備が焼損した事例が同じ年に 2 件 発生しました。今回は,被害が大きかった情 報産業建物での火災事例を紹介します。

1.出火建物の概要

出火建物は,耐火 4 階建て延べ面積 1,875 平方メートルの産業用建物で,この建物に はコンピューターによるシステムの構築, ソフト開発等を主たる業とする職種が集合 しており,4 階の無停電設備室から出火した ものである。

2.無停電設備室の概要及び焼損状況

出火室の無停電設備室は,床面積 22 平方 メートルで,室内中央付近に無停電設備が 設置されている。無停電設備は,無騒停電 CVCF(整流器),出力直送盤及び蓄電池設備 で構成されている。この無停電設備は,停電

等の非常時に蓄電池から電力を瞬時に送電 するものである。

無停電設備室の焼損状況は,室内全体が 煤の付着により黒く変色しているが,焼き はしていない。また,無停電設備は,全体が 鉄製板で囲まれているが,そのうち無停電 CVCF 及び出力直送盤自体は,煤の付着はあ るものの焼きはしていない。

蓄電池設備は,蓄電池を収納している金 属性の収納台が 3 段に分かれており,蓄電池 が 1 段につき 18 個,全部で 54 個収納されて いる。この蓄電池は,全体が強く焼きしてお り,電槽は溶融し黒く変色して極板が露出 している。また,これらの蓄電池の焼きは,

「蓄電池設備」の火災について

火災原因調査シリーズ

・電気火災(8)

広島市消防局

(2)

- 51 - 下段が最も強い状況を呈している(写真 1 参

照)。

3.調査結果

現場調査の結果,出火個所が蓄電池設備 であることから,電気的原因について調査 を行った。その結果は次のとおりである。

(1)無停電設備のうち,無停電 CVCF,出力直 送盤には焼損個所はなく,その配線にも 電気的短絡痕等は認められない。

(2)当該蓄電池は,密閉式の鉛蓄電池(小形 シール鉛蓄電池,12V65Ah)である。

また,電槽の着火温度は 420℃である。

(3)蓄電池の端子は直列に接続されており, 断線・電気的溶痕等は認められない。

(4)焼きの著しい蓄電池の合成樹脂製の電 槽に亀裂が認められ,さらに亀裂部分の 内部まで焼きが及んでいるのが認められ る。

(5)焼きの最も強い蓄電池の置かれている 金属性収納台の下段の底部には,電解液 (希硫酸)による腐食痕が認められる。

(6)蓄電池の正極板は経年(約 7 年)により劣 化が著しく,酸化により赤茶色に変色し て変形が認められる。なお,メーカー側の 説明によると,当蓄電池の期待寿命は 3~

5 年である。

(7)以前,3 回ほど漏電が発生し漏電警報器 が作動しているが,点検は目視のみで特 に異状は認めていない。

(8)鉛蓄電池は,通常フロート充電された状 態で使用される。鉛蓄電池の正極板は活 物質 PbO2 と鉛合金の集電体である格子体 とで構成され,充電中には格子体も酸化

(理論上約 1.4 倍の体積変化(グロース)を 伴う。)されている(写真 2 参照)。

(3)

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4.出火原因

蓄電池設置後約 7 年経過した小形シール 鉛蓄電池が,寿命期を過ぎても充電が継続 されたことにより,正極板のグロースが進 み,正極板が電槽内壁に当たり,当該電槽に 亀裂が生じた。このため,電解液が金属製収 納台に漏洩し,ジュール熱又は火花が発生 して電槽に着火し出火したものである(図 参照)。

5.その後の対策

この火災に鑑み,メーカー側としては,次 のような対策を実施するとのことである。

(1)正極板格子体の伸びに対して,さらに電 槽余裕を設ける。

(2)耐食性合金の使用により,正極板格子体 の伸びの軽減を図る。

(3)難燃電槽を採用する。

消防用設備の非常電源の中に蓄電池設備 があるが,この火災から分かるように,耐用 年数を経過することによる劣化で,電槽の 膨張・破損に伴う出火が予測されることか ら,点検や定期的な交換の指導には十分注 意をしていく必要があると思われる。

参照

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