平成28年度 北海道白糠養護学校 校内研究
研究の概要
1 研究主題
「子どもの『夢や希望』の実現につながる教育の追求」
~キャリア教育の視点からの日常の実践の検証~(1年次)
~キャリア教育の視点からの授業づくり~(2年次)
2 研究主題設定に関わって
(1)社会的背景の確認
特別支援教育における「キャリア教育」の位置づけは平成21年3月の特別支援学校高等部学習指導要領の「職業 教育」「進路指導」の項に記載されたことに始まる。
それに先立ち、平成20年12月に中教審が「青年の完全失業率の高さ」と「高校・大学の新卒採用者の3年後離 職率の高さ」への対応策として、通常の小中高におけるキャリア教育について、「勤労観」「職業観」に関わる「意 欲・態度」「知識・技能」を組織的、体系的に育むという狭い意味でのキャリア教育(ワークキャリア)の推進を 諮問したことから、学習指導要領の内容も狭い意味としてとらえられることが多かった。
通常教育におけるキャリア教育は平成14年に提起されたいわゆる「4領域8能力」で進められ、「就労基礎能力」
として押さえられていたため、先行する特別支援学校の全体計画もこの「4領域8能力」をベースとする、就労ス キルの達成度を評価するチェックリスト的なものが多かった。しかしながら、特別支援教育が従来から「自立と社 会参加」を目指してきたこともあり、22年に国総研が「キャリアプランニング・マトリックス(試案)」を公開し、
各生活年齢区分に応じた「育てたい力」を4つの能力領域に分けて「ライフキャリア」段階から提示することで障 害の状況や発達段階に関わらず「その人らしく生きる」こと自体がキャリア教育であることを示し、各生活年齢区 分、発達段階ごとに自己実現、社会参加に向けて必要な力、育てたい力として明示された。
平成23年1月には、中教審はキャリア教育の視点として「4領域8能力」よりも包括的な上位概念として4つの
「基礎的・汎用的能力」を定義し、その目標も「社会的・職業的自立」とし、「ライフキャリア」から「ワークキ ャリア」まで広範囲に含むものとなった。特別支援教育においては「ICFの理念」「新しい自立観」とのつながり も含め、「社会参加」「自己実現」「その人らしく生きる」ことを具現化するための教育として、どの障害種、発 達段階においてもその必要性が重視されている。
(2)本校の現状から
本校は児童施設に併設された特別支援学校であり、白糠学園の在園者がそのまま学校の在籍児童生徒となる。白 糠学園は元々は肢体不自由児のための施設であったが、近年、福祉分野では障害種別による区分が廃止され、在園 する子どもの実態も肢体不自由に限らず幅広いものとなってきている。そのため、発達段階に応じて積み上げてい く指導と就労、施設入所など出口を意識した指導の双方向のアプローチの必要性がいわれてきた。
また、施設入所という環境下で社会経験という部分での量的な少なさもあり、将来の社会参加に向けては他校に はない配慮も必要な状況である。
これまでの研究において、発達段階に応じた教科の系統性についての要素表は作られてきたが、十分に活用でき ていない。その背景としては、教科の系統性を追うことが「生きる力」の獲得や、現在、将来を含めたその子の生 活につながっているという実感が持ちにくいためではないかと考えた。そのため、小中高12年間を通した指導内容 の整理の必要性があげられている。
そこで、今回の研究において「生きる力」「現在・将来の生活」に日常の指導を意味づける取り組みとして「キ ャリア教育」を全校で研究課題として学ぶことが有効ではないかと考えた。そのことが本校の教育目標、平成28 年度の重点目標の具現化、子どもたちの現在・将来の自己実現に資するものと考える。
(3)平成27年度までの経過
平成27年度は教育課程検討委員会が中心となり、次年度以降の研究推進のベースとなる小中高の区分での全体計 画案を作成した。当初、先行事例を参考にいわゆる「4領域8能力」の区分で作成したが、前述の流れのとおり「基 礎的・汎用的能力」の視点で考える方がよいのではないかと考えたが、検討の結果、4領域8能力で見る視点は教 員の側から見ると授業と関連づけやすい部分があり、大まかな区分は残しつつ、4つの「基礎的・汎用的能力」と の関係性を明示し、到達度順に項目を並べるのではなく、小中高のそれぞれの段階で「育てたい力」を項目ごとに 表記する形にした。
また、実態の違いによる対応として「準じた教育」、「下学年対応」については通常の小中高の計画が活用可能 なことから、「知的代替」と「自立活動を主とした」教育課程の 2 種を作成した。
キャリア教育と教育課程の類型化の関連では「類型化による指導の充実がその指導の出口をイメージすることに なり、キャリア教育の充実につながる」とする実践も他校で行われているが、基本的なおさえは国総研が示してい るとおり、全体計画(小~高までの縦断的カリキュラム)は構造化、類型化されていても、実際の指導(カリキュ ラムデザイン)の原則は「個別化され、本人中心のもの」という考え方で全体計画を位置づけたい。
職員向けの研究として北海道立特別支援教育センターの肢体不自由病弱教育室長の津川先生を講師に「特別支援 におけるキャリア教育」についての講演会を開き、進路指導、職業教育に限定しない「その人の○年後の将来の生 活をイメージしたアプローチ」「夢・希望を実現する教育」という視点を得るとともに、キャリア教育の提唱者で もあるドナルド・スーパーが1980年に発案した「ライフキャリアの虹」の紹介など、キャリア教育からの視点で 個々の子どもの現状、将来像を思いはかる手立てやキャリア教育の視点から日々の授業をとらえ直すことが授業改 善、学部間連携等につながっていくことなど学ぶことができた。
3 研究の具体的推進
(1)研究仮説
①キャリア教育の視点から日々の授業を捉え直すことで、授業が児童生徒の現在・将来の生活により 結びついたものになるのではないか。
②キャリア教育の視点から授業改善を図ることが、小中高12年間を通じた教育の一貫性、教育課程の改 善につながるのではないか。
(2)検証方法 1年次
①学校としての全体計画を学部ごとに学習、検証を行う。
②一人一事例の事例研を行う。(事例を設定する際に教員各自の持ち時間とキャリア教育に関わる検証授 業が可能かどうかを考慮して対象児を学部内で決定する。自立活動教諭、養護教諭、実習助手は学部内 のいずれかの教員と組むことで事例検証に参加し、研究授業は行わない。)設定児童生徒全員が次の3 つのいずれかの方法でキャリア教育の視点からの将来像のイメージ化を計る。(職員数の方が多いので、
複数の教員が同じ対象児の場合は話し合いながら、各児童生徒1枚作成する。)
◎事例検証しイメージ化するための書式
「PATH」(本人の希望、好きなことなどから卒業時のゴールを設定し、そこに向け、各年代ごとの発達課題を考
慮しながら、スモールステップを設定し、自己実現に向けたロードマップを作成。 )
「ライフキャリアの虹」(将来の年齢に応じた家族、コミュニティなどにおける役割、立場等を可視化する。D・E スーパーのオリジナルは一生涯のものであるが、今回の研究では学校に在籍している現在 から高等部卒業を経て就労等を経験する20才ぐらいまでを含んだ期間を最低含んでいれ ばよいと考えている。)
「ICF関連図」 (今回は障害の重い子をイメージして用意した書式で社会参加、集団社会への参加度を向上 させる視点で本人、環境の因子も含め、障がいの実態が変わらなくても、もしくは進行しても
「よりよく生きる」視点で整理していく)
③事例検証の内容から20歳の姿を意識して、「今、育てたい力」「今、経験させておきたい教育内容」
について、ワークシートに書き出して、話し合いや授業づくりの資料とする。(あくまでワークシー トは考えるためのテーブル的なもので日常的な書式ではない。)
④研究授業による検証
各学部で設定したグループの中から1名代表者を決めて研究授業を行う。それ以外の方は、研究用の 指導案を作成し、指導の様子をビデオ等で撮影したものと合わせながら、グループ内でプレゼンテー ションを行い、キャリアの視点や活動内容を検証し、授業の改善を図る。
⑤事後研で検証
グループの代表者が行った研究授業に対しては、キャリアの視点に絞って事後研究を行う。代表者の 方には予め、キャリアの視点で参観者へ伺いたいことを黒板等に記入してもらい、その点に対して付 箋で意見を受け、事前に柱立てをしてから討議をするなどして、授業者の課題に答えながら、日々の 授業実践に役立つ内容で意見交流を深める。
⑥学部ごとにキャリア教育の視点から、現在の授業を意味づけし語り合う。(または今の授業から将来 を語る。)
⑦個別の教育支援計画、個別の指導計画との整合性、位置づけの確認、来年度に向けて課題の整理
2年次:1年次の課題に基づき、キャリア教育の視点に基づいた授業作りについて研修を進める *研究の内容、手順については1年次の研究の進み具合、課題の内容から検討する。
*一人一事例を設定し、キャリア教育の視点からの授業作り、検証授業の実施
参考文献
国立特別支援教育総合研究所編 『特別支援教育充実のためのキャリア教育ガイドブック』
(H23 ジアース教育新社)
キャリア発達研究会編著 『キャリア発達支援研究1』(H26 ジアース教育新社)
文部科学省HP 中教審答申の内容 平成20年12月
「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申案)」
国立教育政策研究所HP 平成23年1月中教審答申から「キャリア教育の新たな方向性」
(3)研究推進日程(1年次)
4月20日 研究推進計画案提案 ・キャリア教育に関する全体研修(全体計画説明)
5月18日 PATH、キャリア教育の虹、ICF関連図の説明
6月15日 学部ごとに全体計画の項目と学部の授業の関連を語り合う 子どもの将来の夢・希望と今育てたい力(事例研・シート作成)
7月20日 子どもの将来の夢・希望と今育てたい力の共有(学部研)・事例研対象児童生徒設定
8月31日 グループ研究のメンバー決定・グループ内の代表者決定・指導案作成
9月21日 代表者の指導案の検討・プレゼンテーション指導案作成
10月 5日 代表者の事後研究・代表者の指導案の検討・代表者以外の指導案の検討・指導案作成
11月 9日 代表者の事後研究・代表者の指導案の検討・代表者以外の指導案の検討・指導案作成
12月 6日 代表者の事後研究
各学部で研究のまとめ(キャリア教育の視点から今の授業の意味づけし課題等を洗い出す)
12月14日 各学部で研究のまとめ(キャリア教育の視点から、学部間で抱える問題等を洗い出す)
1月25日 各学部で研究のまとめ (次年度以降の研究を見越して、教育課程の改善、カリキュラム・マネジメント の視点も含めてまとめる)
2月15日 全校研(各学部のまとめの交流)
3月15日 今年度のまとめと来年度に向けて
※8月~11月の間で一人一事例で指導案を作成し、検証授業を実施し、学部内で事後研を行う。授業研は可能な限り他 学部にも呼びかけ、幅広い意見をもらう。意見は付箋等に記入してもらい、事前に討議の柱立てをし、事後研の議論に生 かす。各学部で幅広く参観できるよう体制等を工夫して進めていただくようお願いします。
4 本研究の校内での位置づけ
【学校教育目標等】
1 一人一人のケース会議の実施を目指す
2 学校全体での研修だけではなく、一人一人の職員の 個人研修の機会と発表の場の創造
3 児童生徒に関わる児童施設、福祉施設の生活につい て、職員一人一人の理解を深めるために、研修の機 会を増やす
4 プロ意識の高い教員集団づくりに努める。
1 子どもの内に秘めた力量も含めた実態把握に努める 2 意図を明確に、目的を意識した授業実践
3 子どもの20歳の姿を意識したキャリア教育研修 4 コミュニケーション力を高めるため、同年代集団との
交流及び共同学習を複数回の実施
5 学校生活の全体を通して、「主体的に行動する」、「主 体的に選択する」力を伸ばす実践に努める
目的と意図を明確にした授業実践
子どものゆめを知り、実現を目指した授業実践 教職員一人一人が専門性を高める自己研修 1 すなおな目で物事を見る ・・・・・・ 本質を知る目 2 子どもたちの「ゆめ」の実現 ・・・・ 多方面の方との連携 3 教師の高い専門性 ・・・・・・・・・ 意識の高い個人研修
障がいのある児童生徒に対し、心身の発達に応じた教育を行うとともに、一人一人の個性を伸ばし、
・思 い や り の あ る 人 ~ 共に助け合い、思いやりのある豊かな心
・進 ん で 学 ぶ 人 ~ 自ら考え、学ぶ心
・た く ま し い 人 ~ 健康で、明るく、たくましく を育むとともに、よりよい生活の質を高められる人間を育成する。
校訓 「一人一人の夢や希望を大切に受け止め、
よ さ を 生 か し 、 未 来 を 拓 く 」
教育目標
学校経営の基本理念
育目標
今年度の重点目標
教育の重点 経営の重点
研究主題
「子どもの『夢や希望』の実現につながる教育の追求」