1.はじめに
公 益 財 団 法 人 日 本 サ ッ カ ー 協 会(Japan Football Association: 以 下 JFA と す る ) は,
アジア近隣諸国や地域との交流を目的に,ア ジア貢献事業の一環で,アジアサッカー発展 のために人材の活発な交流を行っている.そ の一つにコーチや審判員を養成するための指
導者としてチーム審判インストラクターなど の人的支援・知的支援などのプログラムを提 供し,アジア間での共存共栄を目指している 取り組みがある(JFA,2013).アジア貢献事 業とは,サッカーを通して子どもたちに明る い未来を与え,アジアサッカーの普及と発展 につなげていきたいと考えており,47 の国と 研究資料
アジアサッカー育成年代選手の競技力向上に関する研究
−カンボジアフットボールアカデミー選手の実態調査から−
Development of Competitive Ability of Football Players,a Survey on Cambodian Football Academy Players
松山 博明
1)松竹 貴大
2)土屋 裕睦
3)Hiroaki Matsuyama
1)Takahiro Matsutake
2)Hironobu Tsuchiya
3)Abstract
Time ratio of training provided to young Cambodian football players approximately during one year was investigated. Training was conducted by football coaches dispatched from Japan as a part of the JFA Dream Asia Project. The physical assessment of playersʼ competitive abilities according to the JFA physical scores, and the Diagnostic Inventory of Psychological-Competitive Ability for Athletes (DIPCA-3) were analyzed. Results indicated
(1) a larger proportion of time was spent on technical and tactics training compared to five other types of training classified by the Cambodian Academy;(2) a significant improvement was observed as a result of continuous training in 9 out of 14 JFA physical scores; and (3)
Cambodian players scored significantly higher on DIPCA-3 than Japanese players in 7 of 12 items. However, the scores in the third measurement period were lower than in the first.
Therefore, it is suggested that these results were a temporary effect of efforts by the Cambodian Football Academy. These include active provision of international experiences to players through official games and overseas camps that are designed to a develop winning mentality.
キーワード アジア貢献事業,カンボジア,育成年代,トレーニング
Asian contribution business, Cambodia, Developmetal period, training
1)大阪体育大学大学院 Osaka University of Health and Sport Science
2)筑波大学大学院 Tsukuba university
3)大阪体育大学 Osaka University of Health and Sport Science
地域が加盟するアジアサッカー連盟(Asian Football Confederation: 以下 AFC とする)の モデル協会として AFC 加盟協会に対するさま ざまな事業を行うことである.2015 年 2 月ま でに,アジア諸国に代表(ユース年代代表チー ムを含む)監督やユース育成指導者を 52 名の べ 24 か国のアジア諸国へ派遣してきた(JFA,
online).
その中でも,アジア諸国から育成年代を指 導する日本の指導者の需要は,2006 年以降 17 か国中 12 か国であり,急速に増加した(JFA,
2013).これは,JFA(2010)が 1996 年より,
世界をスタンダートとした強化策の推進のポ リシーを明確に揚げ,育成強化に取り組み,選 手を指導する指導者の資質を向上させるため の指導者養成を充実させ,1998 年のフランス ワールドカップから 4 大会連続でワールドカッ プ出場を実現したことによる結果と考えられ る(清水,2013).
こうした日本の成功例を鑑みて,各国の育 成年代の指導の重要性がアジア各国で注目さ れるようになった.その代表的な国として,
カンボジア王国(以下 : カンボジアとする)サッ カーは,アジア貢献事業の海外派遣サッカー 指導者とともに,東南アジアチャンピオンを 目指す「10 年計画」をスタートさせた.2023 年にカンボジアで開催される可能性が高い「東 南アジアのオリンピック」と呼ばれる「東南 アジア競技大会」で,同国サッカー史上初の 東南アジア王者になることが,目標に掲げら れている(JFA,2015).
しかしながら,アジア貢献事業の海外派遣 サッカー指導者が各国で指導しているにも関 わらず,アジア各国の育成年代の選手の競技 力の実態を明らかにした事例は,あまり存在 しない(松本,2011).
そこで,本研究ではアジア貢献事業の海外 派遣サッカー指導者が指導するカンボジア代 表育成年代の約 1 年にわたるトレーニング内 容の時間比率を比較検討した.すなわち,選 手の競技力に関する JFA フィジカル測定や心 理的競技能力診断検査(Diagnostic Inventory
of Psychological-Competitive Ability for Athletes3: 以下,DIPCA. 3 とする ; Toyo Physica 社製)の実態を明らかにした.
2.研究方法
JFA アジア貢献事業による指導者により指 導された,カンボジア U-14 代表チーム選手を 調査対象に約 1 年にわたるトレーニング内容 の時間比率を比較し,JFA フィジカル測定と DIPCA. 3 を実施した.
2. 1.トレーニング内容の調査 1)トレーニング内容の分類
毎日のトレーニングメニューを明記,記録 した.そして,トレーニング内容を J. ヴァイ ンエック(2002)に従って,①ウォーミング アップ,②技術,③戦術,④フィジカル,⑤ゲー ムの 5 項目に分類するとともに,松山ら(2015)
によって,5 項目を 21 種類に細分化した.す なわち,技術が個人技術,個人の戦術・対人に,
フィジカルがアジリティ,筋力トレーニング,
体幹,全身持久,筋持久,ボールを使ったフィ ジカルに,戦術がポジション別トレーニング,
シュートトレーニング,戦術面の対人ゴール あり,戦術面の対人でのゴールなし,フリー トレーニング,紅白戦,フォーメーション,セッ トプレーに,ゲームが練習ゲームでのウォー ミングアップ,練習ゲーム,公式戦でのウォー ミングアップ,公式戦に 5 類した.
2)調査期間と対象とした資料
2014 年 4 月 21 日から 2015 年 4 月 21 日まで の期間とし,指導者が記録したトレーニング メニューを対象とした.
2. 2.JFA フィジカル測定と DIPCA. 3 1)調査対象
JFA アジア貢献事業が指導している,14 歳 以下の代表チーム選手 30 名を調査対象として JFA フィジカル測定と DIPCA. 3 を 3 回実施 した.しかし,調査に参加した選手 30 名の中 で,実際の参加者は,1 回目の DIPCA. 3 20 名,
JFA フィジカル測定 28 名,2 回目の DIPCA.
3 24 名,JFA フィジカル測定 28 名,3 回目の DIPCA. 3 19 名,JFA フィジカル測定 25 名で
あった.したがって,1 回目から 3 回目のすべ ての調査に参加した選手 13 名を分析対象とし た(DIPCA. 3 の有効回答率 61.9%,JFA フィ ジカル測定の有効回答率 48.1%).調査は,研 究者本人が監督に出向き参加の同意の承諾を 得たうえで, DIPCA. 3 の質問紙と JFA フィ ジカル測定の調査の目的などを簡潔に説明し,
郵送とメールで回収した.
2)調査期間
1 回目の調査は,2014 年 4 月,2 回目は 2014 年 10 月,3 回目は 2015 年 4 月のトレーニング 前に実施した.なお,いずれの調査も計 3 回 実施した.
3)DIPCA. 3
選 手 の 心 理 的 ス キ ル を 評 価 す る た め,
DIPCA. 3 を実施した.DIPCA. 3 は,スポー ツ選手に必要な試合場面での一般的特性とし ての心理的能力を診断するための心理検査で ある.個人やチームの DIPCA. 3 を分析し,心 理的スキルのどの項目をトレーニングすれば よいか,トレーニング内容を決定し,試合で 優れた心理状態を作り,実力を発揮できるよ うなメンタルトレーニングを実施する目的を 持つものである.この検査の質問項目は,ス ポーツ選手に必要な試合場面での心理的能力 を表している検査の信頼性をみる 5 項目の計 52 項目から成り立っている.また,12 下位尺 度(忍耐力,闘争力,自己実現意欲,勝利意欲,
自己コントロール能力,リラックス能力,集 中力,自信,決断力,予測力,判断力,協調性)
から構成されている.したがって,12 下位尺 度から調査を実施した(徳永ら,1991).
4)JFA フィジカル測定
JFA フィジカル測定に関しては,JFA フィ ジカル測定ガイドラインに従って実施した.ま た,「JFA フィジカル測定ガイドライン」に記 載されている測定種目は,サッカーのフィジ カル面のあらゆる要素をカバーできるように 選択されている.本研究では,その中から海 外でも測定可能な 14 種目(30m 走,50m 走,シャ トルラン,アジリティステップ 50,アジリティ フォワードラン,ロングキック右足 1 ステップ,
ロングキック右足フリー,ロングキック左足 1 ステップ,ロングキック左足フリー,スロー イン,バウンディング両足,ホッピィング右 片足,ホッピィング左片足,12 分間走)を抽 出し,調査を実施した(JFA,2006).
5)調査方法
前述した 3 回の測定に参加した 13 名を対象 に 1 回目(n=13),2 回目(n=13)と 3 回目(n=13)
の 3 群に分け,変化を比較検討した.
6)統計処理
調査において得られた測定値は,IBM SPSS Statistics 21 を使用して一元配置分散分析を 行った.さらに,有意差が認められたものに ついては Bonferroni の多重分析を行った.な お,それらの統計上の有意水準は 5%とした.
3.結果
1)トレーニング内容の時間比率
カンボジアのトレーニングに費やした時間 比率を算出した.3 回の測定の間のトレーニン グ総日数は,199 日間であり,234 回のトレー ニング(1 日 2 回のトレーニング 28 回)が行 われた.また,総時間は 7,7795 分間で,一日 あたりのトレーニング時間の最小値は 20 分間,
最大値は 235 分間であった.その内容は,ウォー ミ ン グ ア ッ プ 6.7%, 技 術 22.7%( 個 人 技 術 20.5%,個人の戦術・対人 2.2%),フィジカル 5.9%(アジリティ 2.9%,筋力トレーニング 1.2%,
体幹 1.4%,全身持久 0.4%,筋持久 0.0%,ボー ルを使ったフィジカル 0.0%),戦術 42.3%(ポ ジション別トレーニング 3.5%,シュートトレー ニング 7.3%,戦術面の対人ゴールあり 11.4%,
戦術面の対人でのゴールなし 8.1%,フリート レーニング 0.2%,紅白戦 10.2%,フォーメーショ ン 1.1%,セットプレー 0.5%),ゲーム 22.3%(練 習ゲームでのウォーミングアップ 3.3%,練習 ゲーム 8.5%,公式戦でのウォーミングアップ 3.1%,公式戦 7.4%)であった.
したがって,カンボジアの 5 項目に分類し たトレーニングでは,戦術トレーニング,技 術トレーニング,ゲーム,ウォーミングアップ,
フィジカルトレーニングの順に時間が割かれ
ていた.さらに,21 種類に細分化した結果から,
技術トレーニングや戦術ゴールあり,紅白戦,
練習ゲームの割合の多いことが明らかになっ た.
2)JFA フィジカル測定の分析
3 回 の 測 定 の JFA フ ィ ジ カ ル,DIPCA.3 の平均値及,標準偏差及び一元配置分散分析 を行った.その結果,頻度の比較において,
それぞれに主効果が認められた.
下位検定の結果では,アジリティステップ 50,ロングキック 右足 1 ステップ,ロングキッ ク右足フリーロングキック,ロングキック左 足 1 ステップ,ロングキック左足フリー,12 分間走が 1 回目より 3 回目で有意に高値を示 した(F(1, 22)=33.37,p<0.05),(F(1, 22)
=3.73,p<0.05),(F(1, 22)=4..61,p<0.05),
(F(1, 22)=19.82,p<0.05),(F(1, 22)
=5.50,p<0.05),(F(1, 22)=21.29,p<0.05).
次に,50 メートル,シャトルラン, ロング キック左足 1 ステップが 2 回目より 3 回目で有 意に高値であった(F(1, 22)=4.09,p<0.05),
(F(1, 22)=5.39,p<0.05),(F(1, 22)
=19.82,p<0.05).アジリティステップ 50,ロ ングキック左足 1 ステップ,12 分間走が 1 回 目 よ り 2 回 目 が 有 意 に 高 値 で あ っ た(F(1, 22)=33.37,p<0.05),
(F(1, 22)=19.82,p<0.05),(F(1, 22)
=21.29,p<0.05).しかしながら,アジリティフォ ワードランが 2 回目,3 回目ともに 1 回目よ りも有意に低値を示した(F(1, 22)=21.29,
p<0.05).
3)DIPCA. 3 の分析
DIPCA. 3 で は, 判 断 力 は 2 回 目 よ り 3 回 目が有意に高値であった(F(1, 22)=19.88,
p<0.05).しかしながら,勝利意欲,自己コン トロール能力,自信,判断力は 2 回目より 1 回目が有意に高値であった(F(1, 22)=5.87,
p<0.05),
(F(1, 22)=7.94,p<0.05),(F(1, 22)
=7.69,p<0.05),(F(1, 22)=19.88,p<0.05).
闘争力,自己実現意欲,勝利意欲,自己コント ロール能力,自信,予測力,判断力は 3 回目
図1 トレーニングに費やした時間比率
より 1 回目が有意に高値であった(F(1, 22)
=8.42,p<0.05),(F(1, 22)=4.86,p<0.05) (F
(1, 22)=5.87,p<0.05),(F(1, 22)=7.94,
p<0.05),(F(1, 22)=7.69,p<0.05) (F(1, 22)=8.50,p<0.05),(F(1, 22)=19.88,
p<0.05).
4.考察
1)トレーニング内容の時間比率
カンボジアのトレーニングに費やした時間
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表1 JFA フィジカル測定分析結果
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表2 DIPCA3 分析結果
比率の算出の結果,5 項目に分類したトレー ニング頻度では,図 1 から戦術トレーニング,
技術トレーニング,ゲームの割合が多かった.
また,21 種類に細分化したトレーニング結果 においては,技術トレーニングや戦術ゴール あり,紅白戦,練習ゲームの割合が多かった.
このことから,カンボジアアカデミーのトレー ニングは,技術トレーニングと戦術トレーニ ングが多く行われていたことが明らかになっ た.
戦 術 は, グ ル ー プ や チ ー ム の 戦 術 達 成 力 を確かめることが学習の中心であり(浅岡,
2000),トレーニングを行ううえで重要な役割 を担っている.
しかしながら,海外派遣サッカー指導者の カンボジアフットボールアカデミー・U-15 カ ンボジア代表監督である壱岐友輔氏(以下 : 壱 岐監督とする)は,戦術レベルは,日本のレ ベルで考えると小学校 3 年生から 4 年生のレ ベルであったと述べている(壱岐,2015).し たがって,壱岐監督は,戦術トレーニングを,
多く取り入れたと考えられる.21 種類に細分 化した結果では,戦術ゴールあり,紅白戦,
練習ゲームが多かったのも,戦術面の徹底を 行うために,技術面,フィジカル面と戦術を
並行してトレーニングすることが競技力向上 に効果的であることから(Csanádi,Árpád,
1978),試合形式のトレーニングを多く取り入 れられたと考えられる.
技術は,キック,ヘディング,トラップ,ド リブル等種々があり,これらは,「キック」と して捉えることができる.これらは,サッカー における基本技術の中核をなすものである(後 藤ら,1987).21 種類に細分化したトレーニン グ内容の技術トレーニングでは,個人技術が 20.5% で,トレーニング頻度が最も多かった.
壱岐監督は,まず基本技術の要素が高いトラ イアングルパスでのボールを蹴る・止めると いった基礎の徹底を行ったと述べている(日 本人コーチの挑戦,online).また,カンボジ アと同様の FIFA ランキング 201 位(2012 年 5 月現在)の最下位である(FIFA,online),ブー タン U-19 代表年代においても,育成年代です でに習得しておかなくてはならない技術が低 かったため,トレーニング全体の 14.0%を行っ たと述べている(松山,2013).小野(2010)は,
ボールコントロール,パスやシュートなどの 基本技術がないと世界では通用せず,育成年 代からの積み重ねが不可欠であると述べてい る.したがって,カンボジアにおいても,育
表3 各カテゴリー JFA フィジカル測定(平均)分析結果
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成年代から技術トレーニングを徹底させる必 要があったと考えられる.
2)JFA フィジカル測定の分析
カンボジアの成績を 2004 年度フィジカル データ測定報告(JFA,2004)から,日本の同 年代で比較した.その結果,17 種目中一致す る 11 種目の中で,アジリティとシャトルラン の 2 種目は,高値を示した.しかしながら,他 9 種目は,低値であった.このことから,カン ボジアは,アジリティとシャトルランを除い て,全体的にフィジカル的要素の低いことが 明らかになった.
次にカンボジアの JFA フィジカル測定の下 位検定の結果,(表 1)から, 14 種目中 9 種目 に有意な向上が認められた.
その中で,ロングキック左足 1 ステップに 関しては,JFA フィジカル測定の 1 回目から 3 回目のすべてにおいて,有意に向上がみられ た.また,ロングキック右足 1 ステップ,ロ ングキック右足フリーロングキック,ロング キック左足フリーでは 3 回目において 1 回目 よりも有意な向上がみられた.
調査 1 から,技術トレーニングは,トレー ニング全体の 22.7% を占めており,その中に は,左右の足を限定したトレーニングメニュー も多く含まれていたことから,有意な向上が みられたと考えられる.
次にアジリティステップ 50 は,1 回目より 2 回目,1 回目より 3 回目において,有意に高 値を示した.また,50 メートル,シャトルラ ンは 2 回目より 3 回目に有意に向上した.ア ジリティのトレーニングは,全体の 2.9% を占 めており,2014 年 11 月から早朝のトレーニ ング前に導入したラダー(TANI LADDER,
online)によるアジリティを取り入れていた効 果と考えられる.壱岐監督は,カンボジアの 選手は,サッカーのような複雑な動作の組み 合わせになったりすると上手に足を運べない 現象がよく起こる.そのため,就任当初から 課題として取り組んできたと述べている(オー クン・オークン・カンボジア,online).この ことから,壱岐監督は,速筋繊維の発達が促
進されるトレーニングを 2014 年 11 月からい つもより多く実施していたために,細かいス テップや反転や反応の速さなどといった神経 系の発達を促し,アジリティ 50,50 メートル,
シャトルランが向上したと考えられる.
また,12 分間走に関しても,1 回目より 2 回目,1 回目より 3 回目において,有意に高値 を示した.12 分間走の全身持久力は,定期的 に 1800 メートルの持久走トレーニングを実施 していたと考えられる.しかし,持久力トレー ニングは,全体の 0.4% しか行われていなかっ た.一方,戦術トレーニングの戦術面の対人 ゴールあり 11.4%,戦術面の対人でのゴール なし 8.1%,紅白戦 10.2% であった.また,ト レーニング実施頻度は,365 日中 199 日間であ り,234 回のトレーニング(1 日 2 回のトレー ニング 28 回),総時間は 7,7795 分間で,一日 あたりのトレーニング時間の最小値は 20 分間,
最大値は 235 分間であった.この年代は,全 身持久力に大きな影響を与える呼吸・循環器 系機能も著しく発達する時期であり,持久力 トレーニングを行うことは,効果的である(小 野,1998).また,若松(2013)は,トレーニ ングを行ううえで,サッカー競技の特異性の 原則を考えた場合,技術面,戦術面のトレー ニングの中に体力的要素を多く取り入れるこ とが大切であると述べている.Bangsbo(2008)
も,サッカー競技においてボールを使わない 体力トレーニングは専門的かつ効率的ではな いと述べている.また,ボールトレーニング や実際の試合を通して体力強化を図ることが,
最良のトレーニング方法であると考え,トレー ニングの中に試合で必要となる体力的要素を 多く取り入れたと考えられる.すなわち,実 践的トレーニングの継続によって,全身持久 力の 12 分間走が向上したと考えられる.
以上のことから,カンボジアは,日本と比較 してアジリティとシャトルランを除いて,全 体的にフィジカル的要素が低かった.しかし,
継続的なトレーニングを行ったことによって,
14 種目中 9 種目に有意な向上がみられた.壱 岐監督は,基礎運動能力が非常に低いこども
たちが多いのが現状であると述べている.し かし,やればやるほど上達するし,できない ことを丹念にやって短所を克服することが大 事だという意識もだんだんと芽生えてきた手 応えがあると述べている(サカイク,online).
このことから,カンボジアは,継続的して地 道に取り組むことによって,競技力向上に繋 がっていくと考えられる.
3)DIPCA. 3 の分析
DIPCA. 3 では,大嶽ら(2003)の日本の結 果とカンボジアの同年代で全体の平均値で比 較した場合,カンボジアは,12 尺度中,忍耐 力,闘争心,自己実現意欲,勝利意欲,自信,
決断力,予測,判断力,協調性の 9 尺度の高 値を示した.しかしながら,自己コントロール,
リラックス,集中力の 3 尺度が低値を示した.
また,カンボジアの方が,5 因子中,競技意欲,
自信,作戦能力,協調性の 4 因子で高値であっ た.しかしながら,精神の安定・集中の 1 因子が,
低値であったが,総合得点において,カンボ ジアの総合得点が,日本よりも上回っていた ことが明らかになった.
次にカンボジアの DIPCA. 3 の下位検定の結 果(表 2)から判断力の 1 因子が 2 回目より 3
回目が有意に高値であった.しかしながら,勝 利意欲,自己コントロール能力,自信,判断 力の 4 因子が 2 回目より 1 回目に有意に高値で,
闘争力,自己実現意欲,勝利意欲,自己コン トロール能力,自信,予測力,判断力の 7 因 子が 3 回目より 1 回目に有意に高値を示した.
下位検定の結果,判断力が 2 回目より 3 回目 に有意に高値であった.このことに関して, 2 回目の DIPCA. 3 測定のあと,2014 11 月 14 日 から 26 日まで 日本に遠征し日本クラブと親善 試合を 6 試合と 1 日 2 回の 2 部トレーニング を行い,また 12 月 24 日から 29 日までは,タ イで実施された U-14 ASEAN Dream Football Tournament 大会で日本の J リーグクラブや タイの強豪クラブと 7 試合を行った.そのこ とによって,的確な判断,冷静な判断,素早 い判断が培われた結果だと考えられる(徳永,
2009).
加えて,壱岐監督は,指導者の選手時代の 経験またライセンスを獲得するために多くの 指導方法を学んでいる.このことから,壱岐 監督は,選手のプレーに対してさまざまな角 度からアドバイスできることが判断力に影響 を与えたと考えられる.
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表4 各カテゴリー DIPCA3(平均)分析結果
しかしながら,勝利意欲,自己コントロール 能力,自信,判断力は 2 回目で 1 回目より有 意に低値を示した.また,闘争力,自己実現 意欲,勝利意欲,自己コントロール能力,自信,
予測力,判断力は 3 回目で 1 回目よりも有意 に低値を示した.
1 回目の DIPCA. 3 では,地域で選抜されて アカデミーの組織に入ったという「選ばれしも の」の自信と自負,日本の指導者からの指導を 受けていることなどから,より高い得点を示 したと考えられる.2 回目以降,2014 年 7 月 6 日から 7 月 13 日まで地元の National Football Center で 実 施 さ れ た U13 CAMBODIA NATIONS CUP では,優勝を飾った(オークン・
オークン・カンボジア,online).2014 年 8 月 22 日 か ら 24 日 ま で 地 元 の National Football Center で 実 施 さ れ た Yamaha Challenge International Friendly Match で は,2 勝 2 敗 1 分け(サカイク.カンボジアにサッカー を!日本人コーチの挑戦,online)であった.
2014 年 9 月 8 日 か ら 11 月 08 日 ま で 地 元 の National Football Center 中 心 に 実 施 さ れ た,
Cambodian Youth League supported by JICA でも,7 勝 1 分け 1 敗であった(オークン・オー クン・カンボジア,online).しかし,2014 11 月 14 日から 26 日まで日本遠征では,0 勝 6 敗 7 得点 31 失点であった.また,12 月 24 日か ら 29 日までタイで実施された U-14 ASEAN Dream Football Tournament 大会では,1 勝 6 敗であった(オークン・オークン・カンボジア,
online).壱岐監督は,カンボジアは FIFA ラ ンキングにおいて下位であることもあり,選手 たちは自国のサッカーに自信を持てない.内弁 慶の性格に加え国際経験がほとんどないため,
国際大会になると勝負弱さが露骨に出てくる と述べている.また,壱岐監督は,カンボジ アの選手には,「負けて当然」のメンタリティー が存在していて,強い相手に対して勇気を持っ て立ち向かえず,一旦崩れると大量失点に繋 がることがよくあると述べている(アジアの ピッチから,online).したがって,国内のロー カルな大会では,結果を出すことが出来たが,
国際大会での強豪チームと対戦し,大敗した ことによって,勝ちたい気持ちである勝利意 欲,気持ちの切り替え,冷静さといった自分 自身をコントロールする自己コントロール能 力,目標達成への自信,的確,冷静,素早い 判断力が低下していったと考えられる.
3回目で1回目より有意に低値を示した闘 争力,自己実現,予測力も同様のことが考えら れた.すなわち,カンボジアの選手は,大試 合や大事な試合での闘志である闘争心,可能 性への挑戦での自己実現意欲,作戦の切りか えや勝つための作戦としての予測力が低下し ていったと考えられる(徳永,2009).壱岐監 督は,赴任当初,勝敗どころの問題にもなら ない点差で負け続け,当然このような状況が 続くと試合をする前にメンタル面で弱気にな り,試合どころではなくなると述べていた(壱 岐友輔に託されたカンボジアの夢,online).
カンボジアの選手に,海外キャンプなど国際 経験を積み,勝者のメンタリティーを植え付 けられるように取り組んできたために数値が 低下したものと推測された.しかし,このよ うな取り組みは,今後の競技力向上に繋がっ ていくものと考えられる.
以上のことから,カンボジアは,継続的に トレーニングを行ったことによって,14 種目 中 9 種目に有意な向上がみられた.
また,壱岐監督は,個々の能力としては,
平均より何かがあり,一方で何かが足りない.
基礎をしっかり身に付けていないため,うま く試合に生かすことが出来ないと述べている
(JFA,2015).したがって,全体で基礎トレー ニングを取り入れる一方で,将来,大きな武 器を身に付けさせ,そして自覚させる個々の トレーニングにも取り組む必要がある.
カンボジアは,DIPCA.3 では,下位検定 の結果,12 項目中 7 項目で日本よりも有意に 高値であった.しかし,1 回目よりも 3 回目の 数値が低下した.乾(1996)は,1995 年ユニバー シアード国際大会で日本代表チームが優勝し た勝因の一つとして,海外強化遠征による豊 富な国際経験があると述べている.したがっ
て,カンボジア代表チームにおいても,数多 くの国際経験することによって,今後の競技 力向上に繋がっていくと考えられる.
5.まとめ
本研究ではアジア貢献事業の海外派遣サッ カー指導者が指導するカンボジア代表育成年 代の約 1 年にわたるトレーニング内容の時間 比率を検討した.すなわち,選手の競技力に 関する JFA フィジカル測定や DIPCA. 3 の実 態を明らかにした.
その結果,以下のことが明らかになった.
1)カンボジアアカデミーの 5 項目に分類し たトレーニングでは,技術トレーニングと戦 術トレーニングの割合が多かった.
2)カンボジアは,継続的にトレーニングを 行ったことによって,JFA フィジカル測定の 14 種目中 9 種目に有意な向上が認められた.
3) DIPCA.3 の結果,12 項目中 7 項目で日 本よりも有意に高値を示した.しかし,1 回目 よりも 3 回目の測定で数値が低下した.これは,
カンボジアが,積極的に公式戦や海外キャン プなど国際経験を積み,勝者のメンタリティー を植え付けるために取り組んだ一過性の結果 であると読み取れた.
謝辞
本研究を進めるにあたり,日本サッカー協 会国際部とカンボジアサッカー協会のご理解 を得られたことに敬意を表わすとともに厚く 御礼申し上げます.また,大会前の大切な時 期にも関わらず,本研究の JFA フィジカル測 定ならびに DIPCA. 3 を快く引き受けてくだ さった壱岐監督に深く感謝いたします.
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