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特集論文 特集 : 輸送 交通計画技術 地方都市の公共交通ネットワークの利便性評価手法 * 奥田大樹 * 渡邉拓也 * 深澤紀子 * 鈴木崇正 * ** 榊原弘之 *** 中村優志 Evaluation Method of the Convenience of a Public Transporta

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特集:輸送・交通計画技術

地方都市の公共交通ネットワークの利便性評価手法

奥田 大樹

  渡邉 拓也

  深澤 紀子

  鈴木 崇正

* *

榊原 弘之

**

  中村 優志

***

Evaluation Method of the Convenience of a Public Transportation Networks in a Local City

Daiki OKUDA  Takuya WATANABE  Noriko FUKASAWA  Takamasa SUZUKI

Hiroyuki SAKAKIBARA  Yushi NAKAMURA

 

 The object of this study is to develop a quantitative evaluation method of the convenience of a public trans-portation network in the whole region for implementing the relative evaluation of various improvement plan of public transportation network based on current situation. In this paper, first, the theory of the quantitative evalua-tion method of the convenience of public transport networks in local cities is shown. Then, the findings concern-ing the way of the public transportation is actually used in a certain local city obtained from the field survey in that city, and the development of the system for carrying out calculations of the convenience automatically based on the quantitative evaluation method are shown. Finally, the course of the development plan in the future is showed. キーワード:地方都市,公共交通ネットワーク,利便性,アクセシビリティ,利便性評価システム *   信号・情報技術研究部 交通計画研究室 **  山口大学大学院 創成科学研究科 *** 元 山口大学工学部 社会建設工学科

1.はじめに

 モータリゼーションの進行や,人口減少・少子高齢化 といった社会経済情勢の変化に伴い,地方都市を中心に, 公共交通を取り巻く環境は年々厳しさを増している。一 方で,子供や高齢者など,自動車の保有や運転が困難 な人々にとって,地域の公共交通は日常生活における重 要な移動手段であり,地域の公共交通の衰退は,これら 人々の生活や各種活動の機会の喪失に直結する1) 。そし て,このような状況が深刻化すると,若年層を中心とし た加速度的な人口流出や,高齢者の社会的な孤立を招く こととなり,地域の存続すら脅かす要因となり得る。ま た,他都市から業務や観光等で訪れる来訪者にとっても, 地域の公共交通は重要な移動手段であり,これの衰退は, 都市間の広域的な交流を阻害する要因にもなり得る。  地方都市の公共交通事業者が,厳しい環境の中であっ ても,地域の足としての責務を果たすべく,最大限の努 力を払っていることは疑いない。一方で,地方都市の公 共交通では,例えば図1で示したように,接続があまり 考慮されていない経路設定や,輸送サービスが重複して しまうような運行ダイヤ設定となっている場合があり, 地域全体として見た場合,必ずしも望ましい公共交通 ネットワークが形成されていない状況が散見される。多 くの地方都市では,パーソントリップ調査といった,地 域全体を対象とした公的な交通実態調査が実施されてい ないため,公共交通事業者が,地域全体の交通実態や ニーズを把握することが,困難である場合が多い2)。そ のため,公共交通事業者には,自身の運営エリア内で把 握できている限定的な交通実態やニーズに応じて,個別 に輸送サービスを設定せざるを得ないという事情が存在 している。そしてこのことが,個別の公共交通としては 一定の輸送サービス水準は確保できているとしても,地 域全体の公共交通ネットワークとしては,必ずしも望ま しいものとなっていない状況が発生している一つの要因 と考えられる。しかし,裏を返せば,各公共交通機関の 接続や連携等を改善し,効率的に連動する公共交通ネッ トワークを形成することができれば,大規模な設備投資 等を実施することなく,地方都市の公共交通の利便性を 改善することが可能と考えられる。 図1 連携が不十分な公共交通ネットワークの例

地方都市の公共交通ネットワークの利便性評価手法

奥田 大樹

*

渡邉 拓也

*

深澤 紀子

*

鈴木 崇正

*

榊原 弘之

**

中村 優志

***

Evaluation Method of the Convenience of a Public Transportation Networks in a Local City

Daiki OKUDA Takuya WATANABE Noriko FUKASAWA Takamasa SUZUKI

Hiroyuki SAKAKIBARA Yushi NAKAMURA

The object of this study is to develop a quantitative evaluation method of the convenience of a public transportation network in the whole region for implementing the relative evaluation of various improvement plan of public transportation network based on current situation. In this paper, first, the theory of the quantitative evaluation method of the convenience of public transport networks in local cities is shown. Then, the findings concerning the way of the public transportation is actually used in a certain local city obtained from the field survey in that city, and the development of the system for carrying out calculations of the convenience automatically based on the quantitative evaluation method are shown. Finally, the course of the development plan in the future is showed.

キーワード:地方都市,公共交通ネットワーク,利便性,アクセシビリティ,利便性評価システム

1. はじめに

モータリゼーションの進行や,人口減少・少子高齢化 といった社会経済情勢の変化に伴い,地方都市を中心に, 公共交通を取り巻く環境は年々厳しさを増している。一 方で,子供や高齢者など,自動車の保有や運転が困難な 人々にとって,地域の公共交通は日常生活における重要 な移動手段であり,地域の公共交通の衰退は,これら 人々の生活や各種活動の機会の喪失に直結する1)。そし て,このような状況が深刻化すると,若年層を中心とし た加速度的な人口流出や,高齢者の社会的な孤立を招く こととなり,地域の存続すら脅かす要因となり得る。ま た,他都市から業務や観光等で訪れる来訪者にとっても, 地域の公共交通は重要な移動手段であり,これの衰退は, 都市間の広域的な交流を阻害する要因にもなり得る。 地方都市の公共交通事業者が,厳しい環境の中であっ ても,地域の足としての責務を果たすべく,最大限の努 力を払っていることは疑いない。一方で,地方都市の公 共交通では,例えば図1で示したように,接続があまり 考慮されていない経路設定や,輸送サービスが重複して しまうような運行ダイヤ設定となっている場合があり, 地域全体として見た場合,必ずしも望ましい公共交通ネ ットワークが形成されていない状況が散見される。多く 図1 連携が不十分な公共交通ネットワークの例 の地方都市では,パーソントリップ調査といった,地域 全体を対象とした公的な交通実態調査が実施されていな いため,公共交通事業者が,地域全体の交通実態やニー ズを把握することが,困難である場合が多い2)。そのた め,公共交通事業者には,自身の運営エリア内で把握で きている限定的な交通実態やニーズに応じて,個別に輸 送サービスを設定せざるを得ないという事情が存在して いる。そしてこのことが,個別の公共交通としては一定 の輸送サービス水準は確保できているとしても,地域全 体の公共交通ネットワークとしては,必ずしも望ましい ものとなっていない状況が発生している一つの要因と考 えられる。しかし,裏を返せば,各公共交通機関の接続 や連携等を改善し,効率的に連動する公共交通ネットワ ークを形成することができれば,大規模な設備投資等 を実施することなく,地方都市の公共交通の利便性を 改善することが可能と考えられる。 * 信号・情報技術研究部 交通計画研究室 ** 山口大学大学院 創成科学研究科

(2)

 地域にとって望ましい公共交通ネットワークを構築す るには,そのあるべき姿について,地域全体で認識を共 有することが重要であり,そのためには,地域の公共交 通ネットワークを定量的に評価する,統一的な利便性の 評価指標が必要となる。  本研究の目的は,地方都市の公共交通ネットワークの 利便性の評価指標を,公的な交通実態調査のデータが無 くても定量的に推計する手法を開発し,これを用いて, 様々な公共交通ネットワーク改善案の効果を,現状を基 準として相対的に評価することである。そして本稿では, これまでに構築した利便性評価手法の理論をはじめ,評 価手法の具体的な構築に必要となるデータ収集の実施概 要と,収集されたデータの分析結果から得られた知見, 及び併せて開発を進めている公共交通ネットワークの利 便性評価システムの概要について述べる。なお,平日と 休日で人々の公共交通の利用傾向は異なると考えられる が,本稿では,人々の移動や各種活動が活発であり,年 間日数も多い平日を前提として述べる。また,ターゲッ トとする地方都市は,三大都市圏外に位置し,人口10~ 30万人程度で,鉄道や路線バスなどの公共交通を持ち, 小規模ながら都市圏を築いているような都市とする。

2.公共交通ネットワークの利便性評価手法

2. 1 公共交通ネットワークの利便性評価手法の概要  本研究では,既往の評価手法等を参考3) に,以下に 示す3つの要素を掛け合わせて,地域全体の公共交通 ネットワークの利便性評価値を算出し,これを地方都市 における統一的な公共交通ネットワークの利便性の評価 指標とする。   f 都市内の任意地点ij 間における,出発時間ごとの 公共交通移動のアクセシビリティ   f 都市内の任意地点ij 間の移動の区間重要度   f 都市内の任意地点ij 間の移動の時間重要度  この関係を図2に示す。ただし,ここで定義する公共 交通ネットワークの利便性評価値は,絶対的な意味を持 つ指標ではない。例えば,図3に示すように,各交通機 関の接続や運行ダイヤを見直した場合に,地域全体の公 共交通ネットワークの利便性が,どの程度向上するのか について,現状の公共交通ネットワークの利便性評価値 を基準として,相対的に評価することが本研究の目的で ある。 2. 2 公共交通移動のアクセシビリティ  アクセシビリティとは,物やサービス等への近づき易 さや利用しやすさの度合いを表す概念であり,近接性や 近接可能性とも呼ばれる。アクセシビリティには様々な 計測手法があるが,本研究では,ログサム変数でこれを 表すこととした4)。ログサム変数とは,選択肢群に対す るある個人の離散選択行動にロジットモデルを適用した 場合に,その個人が得られる期待最大効用を表す。ログ サム変数が向上することは,ある個人にとって,選択肢 群の構成がより望ましいものになったという事を意味す るため,公共交通ネットワークの利便性評価値として用 いるには,適切な指標であると考えられる。  式(1)は経路選択モデルであり, Pijn_σ( ) は,ある個t 人の離散選択行動にロジットモデルを適用するとした際 に,個人n が任意地点 ij 間の移動で選択可能な K 個の 公共交通経路の中から,出発時刻t において経路 σ を選 択する確率を示す。式(2)及び式(3)は,任意地点ij 間 の経路σ の効用関数であり,式(4)は,個人n の任意地ij 間の公共交通移動のアクセシビリティ ACC tijn( ) (ロ グサム変数)を示す。 図2 公共交通ネットワークの利便性評価値の推計 図3 公共交通ネットワーク改善案の相対的な評価 するには,そのあるべき姿について,地域全体で認識を 共有することが重要であり,そのためには,地域の公共 交通ネットワークを定量的に評価する,統一的な利便性 の評価指標が必要となる。 本研究の目的は,地方都市の公共交通ネットワークの 利便性の評価指標を,公的な交通実態調査のデータが無 くても,定量的に推計する手法を開発し,これを用いて, 様々な公共交通ネットワーク改善案の効果を,現状を基 準として相対的に評価することである。そして本稿では, これまでに構築した利便性評価手法の理論をはじめ,評 価手法の具体的な構築に必要となるデータ収集の実施概 要と,収集されたデータの分析結果から得られた知見, 及び併せて開発を進めている,公共交通ネットワークの 利便性評価システムの概要について述べる。なお,平日 と休日で人々の公共交通の利用傾向は異なると考えられ るが,本稿では,人々の移動や各種活動が活発であり, 年間日数も多い平日を前提として述べる。また,ターゲ ットとする地方都市は,三大都市圏外に位置し,人口1030万人程度で,鉄道や路線バスなどの公共交通を持ち, 小規模ながら都市圏を築いているような都市とする。

2. 公共交通ネットワークの利便性評価手法

2.1 公共交通ネットワークの利便性評価手法の概要 本研究では,既往の評価手法等を参考3)に,以下に示 す3つの要素を掛け合わせて,地域全体の公共交通ネッ トワークの利便性評価値を算出し,これを,地方都市に おける統一的な公共交通ネットワークの利便性の評価指 標とする。  都市内の任意地点 ij 間における,出発時間ごとの 公共交通移動のアクセシビリティ  都市内の任意地点 ij 間の移動の区間重要度 都市内の任意地点 ij 間の移動の時間重要度 この関係を図2に示す。ただし,ここで定義する公共 交通ネットワークの利便性評価値は,絶対的な意味を持 つ指標ではない。例えば,図3に示すように,各交通機 関の接続や運行ダイヤを見直した場合に,地域全体の公 共交通ネットワークの利便性が,どの程度向上するのか について,現状の公共交通ネットワークの利便性評価値 を基準として,相対的に評価することが本研究の目的で ある。 2.2 公共交通移動のアクセシビリティ アクセシビリティとは,物やサービス等への近づき易 さや利用しやすさの度合いを表す概念であり,近接性や 図2 公共交通ネットワークの利便性評価値の推計 図3 公共交通ネットワーク改善案の相対的な評価 近接可能性とも呼ばれる。アクセシビリティには様々な 計測手法があるが,本研究では,ログサム変数でこれを 表すこととした4)。ログサム変数とは,選択肢群に対す るある個人の離散選択行動にロジットモデルを適用した 場合に,その個人が得られる期待最大効用を表す。ログ サム変数が向上することは,ある個人にとって,選択肢 群の構成がより望ましいものになったという事を意味す るため,公共交通ネットワークの利便性評価値として用 いるには,適切な指標であると考えられる。 式(1)は経路選択モデルであり,𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖_𝜎𝜎𝑛𝑛 (𝑡𝑡)は,ある個人 の離散選択行動にロジットモデルを適用するとした際に, 個人nが任意地点ij間の移動で選択可能なK個の公共交通 経路の中から,出発時刻tにおいて経路σを選択する確率 を示す。式(2)及び式(3)は,任意地点ij間の経路σの効用 関数であり,式(4)は,個人nの任意地点ij間の公共交通 移動のアクセシビリティ𝐴𝐴𝐴𝐴𝐴𝐴𝑖𝑖𝑖𝑖𝑛𝑛(𝑡𝑡)(ログサム変数)を示 す。 するには,そのあるべき姿について,地域全体で認識を 共有することが重要であり,そのためには,地域の公共 交通ネットワークを定量的に評価する,統一的な利便性 の評価指標が必要となる。 本研究の目的は,地方都市の公共交通ネットワークの 利便性の評価指標を,公的な交通実態調査のデータが無 くても,定量的に推計する手法を開発し,これを用いて, 様々な公共交通ネットワーク改善案の効果を,現状を基 準として相対的に評価することである。そして本稿では, これまでに構築した利便性評価手法の理論をはじめ,評 価手法の具体的な構築に必要となるデータ収集の実施概 要と,収集されたデータの分析結果から得られた知見, 及び併せて開発を進めている,公共交通ネットワークの 利便性評価システムの概要について述べる。なお,平日 と休日で人々の公共交通の利用傾向は異なると考えられ るが,本稿では,人々の移動や各種活動が活発であり, 年間日数も多い平日を前提として述べる。また,ターゲ ットとする地方都市は,三大都市圏外に位置し,人口10 ~30万人程度で,鉄道や路線バスなどの公共交通を持ち, 小規模ながら都市圏を築いているような都市とする。

2. 公共交通ネットワークの利便性評価手法

2.1 公共交通ネットワークの利便性評価手法の概要 本研究では,既往の評価手法等を参考3)に,以下に示 す3つの要素を掛け合わせて,地域全体の公共交通ネッ トワークの利便性評価値を算出し,これを,地方都市に おける統一的な公共交通ネットワークの利便性の評価指 標とする。  都市内の任意地点 ij 間における,出発時間ごとの 公共交通移動のアクセシビリティ  都市内の任意地点 ij 間の移動の区間重要度  都市内の任意地点 ij 間の移動の時間重要度 この関係を図2に示す。ただし,ここで定義する公共 交通ネットワークの利便性評価値は,絶対的な意味を持 つ指標ではない。例えば,図3に示すように,各交通機 関の接続や運行ダイヤを見直した場合に,地域全体の公 共交通ネットワークの利便性が,どの程度向上するのか について,現状の公共交通ネットワークの利便性評価値 を基準として,相対的に評価することが本研究の目的で ある。 2.2 公共交通移動のアクセシビリティ アクセシビリティとは,物やサービス等への近づき易 さや利用しやすさの度合いを表す概念であり,近接性や 図2 公共交通ネットワークの利便性評価値の推計 図3 公共交通ネットワーク改善案の相対的な評価 近接可能性とも呼ばれる。アクセシビリティには様々な 計測手法があるが,本研究では,ログサム変数でこれを 表すこととした4)。ログサム変数とは,選択肢群に対す るある個人の離散選択行動にロジットモデルを適用した 場合に,その個人が得られる期待最大効用を表す。ログ サム変数が向上することは,ある個人にとって,選択肢 群の構成がより望ましいものになったという事を意味す るため,公共交通ネットワークの利便性評価値として用 いるには,適切な指標であると考えられる。 式(1)は経路選択モデルであり,𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖_𝜎𝜎𝑛𝑛 (𝑡𝑡)は,ある個人 の離散選択行動にロジットモデルを適用するとした際に, 個人nが任意地点ij間の移動で選択可能なK個の公共交通 経路の中から,出発時刻tにおいて経路σを選択する確率 を示す。式(2)及び式(3)は,任意地点ij間の経路σの効用 関数であり,式(4)は,個人nの任意地点ij間の公共交通 移動のアクセシビリティ𝐴𝐴𝐴𝐴𝐴𝐴𝑖𝑖𝑖𝑖𝑛𝑛(𝑡𝑡)(ログサム変数)を示 す。

(3)

P t V t V t ijn K ijn ijn _ _ _ exp exp σ ω σ ω

( )

=

(

)

(

( )

( )

)

(1) Uijn_σ

( )

t =Vijn_σ

( )

tn

( )

t (2) Vijn t C X t l l ij l

( )

= +

α _ _σ

( )

(3)    ACC tijn

( )

=

(

Vijnk

( )

t

)

       

1 ln exp k β β _ (4) Uijn_σ( ) :t 個人n が出発時刻 t における任意地点 ij 間の 移動で選択した経路σ の効用 Vijn( ) :t 個人n が出発時刻 t における任意地点 ij 間の 移動で選択した経路σ の効用(確定項)  εn t() : 効用の誤差項(ガンベル分布) Xij_ _σ l( ):t 出発時刻t における ij 間の経路 σ の効用関数l 番目の説明変数    αll 番目の説明変数のパラメータ    β: スケールパラメータ  経路選択モデル,及び効用関数は,公共交通の利用実 態データや,それら公共交通を利用した際の所要時間や 費用といった,実際の輸送サービスデータに基づき構築 されるものである。しかし,前述したとおり,地方都市 ではパーソントリップ調査といった,地域全体を対象と した交通実態調査が実施されていないため,分析対象都 市において,利用実態データを収集するための実地調査 を実施する必要がある。  自動車の分担率が圧倒的な地方都市5) では,一般的 な平日における,公共交通利用者の利用目的,移動時 間帯,及び旅客流動量の関係性は,図4で示したよう になり,朝夕は学生の通学利用が大半であるなど,時間 帯によって,公共交通利用者の属性や移動目的,移動 の性質,移動条件等に違いがあると考えられる。よって 本研究では,朝夕と日中時間帯を区別して実地調査を実 施し,それぞれの調査で得られたデータを基に,経路 図4 公共交通利用者の移動目的,移動時間帯,及び 旅客流動量の関係

 

 

 

_ _ _

exp

exp

n n ij ij n ij K

P

t

V

t

V

t

   

(1)

 

 

 

_ _ n n n ij ij UtVt

t (2)

 

 

_ _ _ n ij l ij l l

V

t

 

C

X

t

(3)

 

_

 

k

1 ln exp β

β

k n n ij ij

ACC t

V

t

(4) 𝑈𝑈𝑖𝑖𝑖𝑖_𝜎𝜎𝑛𝑛 (𝑡𝑡):個人nが出発時刻tにおける任意地点ij間の 移動で選択した経路σの効用 𝑉𝑉𝑖𝑖𝑖𝑖_𝜎𝜎𝑛𝑛 (𝑡𝑡):個人nが出発時刻tにおける任意地点ij間の 移動で選択した経路σの効用(確定項) 𝜀𝜀𝑛𝑛(𝑡𝑡):効用の誤差項(ガンベル分布) 𝑋𝑋𝑖𝑖𝑖𝑖_𝜎𝜎_𝑙𝑙(𝑡𝑡):出発時刻tにおけるij間の経路σの効用関数 l番目の説明変数 𝛼𝛼𝑙𝑙:l番目の説明変数のパラメータ β:スケールパラメータ 経路選択モデル,及び効用関数は,公共交通の利用実 態データや,それら公共交通を利用した際の所要時間や 費用といった,実際の輸送サービスデータに基づき構築 されるものである。しかし,前述したとおり,地方都市 ではパーソントリップ調査といった,地域全体を対象と した交通実態調査が実施されていないため,分析対象都 市において,利用実態データを収集するための実地調査 を実施する必要がある。 自動車の分担率が圧倒的な地方都市5)では,一般的な 平日における,公共交通利用者の利用目的,移動時間帯, 及び旅客流動量の関係性は,図4で示したようになり, 朝夕は学生の通学利用が大半であるなど,時間帯によっ て,公共交通利用者の利用者の属性や移動目的,移動の 図4 公共交通利用者の移動目的,移動時間帯,及び 旅客流動量の関係 性質,移動条件等に違いがあると考えられる。よって本 研究では,朝夕と日中時間帯を区別して実地調査を実施 し,それぞれの調査で得られたデータを基に,経路選択 モデルも時間帯別に構築することとする。そして,任意 地点ij間の公共交通移動のアクセシビリティを推計する 際には,出発時間帯に応じてこれらのモデルを使い分け る。 2.3 移動の区間重要度 人々は何らかの目的を持って移動するため,人々の目 的地の多くは,例えば,通院目的の人は病院に向かうと いったように,自身の目的が達成可能となる地区や施設 に集中すると考えられる。また,多くの移動の出発地と なる人々の居住地も,一様に分布はしていない場合がほ とんどである。よって,地域全体の公共交通ネットワー クの利便性評価値を推計するには,移動区間ごとの重要 度を考慮する必要があると考えられる。本研究ではこれ を区間重要度とし,任意地点間の移動ごとに,これを定 義することとした。 区間重要度が高い移動としては,例えば,人口密度が 高い地点を出発地とする移動や,中心市街地や学校,病 院などの重要施設を目的地とする移動などが考えられる。 よって本研究では,人口や従業者数,学校の学生数,病 院の病床数といった定量的なデータを用いて,各任意地 点間の区間重要度を表すこととした。これらデータは, 国勢調査データや経済センサスデータ等から入手可能で ある6) 2.4 移動の時間重要度 前述のとおり,人々は何らかの目的を持って移動する が,例えば通学目的の移動であれば朝夕に集中的に発生 し,その他の時間帯ではほとんど発生しない。よって, 地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値を推計 するには,移動時間帯ごとの重要度を考慮する必要があ ると考えられる。本研究ではこれを時間重要度とし,任 意地点間の移動ごとに,これを定義することとする。 時間帯の重要度が高い移動としては,例えば,学校へ の朝夕の移動や,病院への診療時間帯内の移動などが考 えられる。よって本研究では,重要施設の始業時刻や営 業時間といった定量的なデータを用いて,各任意地点間 の時間重要度を表すこととした。 2.5 地域メッシュを活用した移動経路の近似 地域内の任意地点はほぼ無限に存在するため,実際に 公共交通ネットワークの利便性評価値を推計するには, 地域内の任意地点間の組み合わせ数を,現実的に計算が 可能となる水準まで削減する必要がある。本研究では, 選択モデルも時間帯別に構築することとする。そして, 任意地点ij 間の公共交通移動のアクセシビリティを推 計する際には,出発時間帯に応じてこれらのモデルを 使い分ける。 2. 3 移動の区間重要度  人々は何らかの目的を持って移動するため,人々の目 的地の多くは,例えば,通院目的の人は病院に向かうと いったように,自身の目的が達成可能となる地区や施設 に集中すると考えられる。また,多くの移動の出発地と なる人々の居住地も,一様に分布はしていない場合がほ とんどである。よって,地域全体の公共交通ネットワー クの利便性評価値を推計するには,移動区間ごとの重要 度を考慮する必要があると考えられる。本研究ではこれ を区間重要度とし,任意地点間の移動ごとに,これを定 義することとした。  区間重要度が高い移動としては,例えば,人口密度が 高い地点を出発地とする移動や,中心市街地や学校,病 院などの重要施設を目的地とする移動などが考えられ る。よって本研究では,人口や従業者数,学校の学生数, 病院の病床数といった定量的なデータを用いて,各任意 地点間の区間重要度を表すこととした。これらデータは, 国勢調査データや経済センサスデータ等から入手可能で ある6) 2. 4 移動の時間重要度  前述のとおり,人々は何らかの目的を持って移動する が,例えば通学目的の移動であれば朝夕に集中的に発生 し,その他の時間帯ではほとんど発生しない。よって, 地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値を推計 するには,移動時間帯ごとの重要度を考慮する必要があ ると考えられる。本研究ではこれを時間重要度とし,任 意地点間の移動ごとに,これを定義することとする。  時間帯の重要度が高い移動としては,例えば,学校へ の朝夕の移動や,病院への診療時間帯内の移動などが考 えられる。よって本研究では,重要施設の始業時刻や営 業時間といった定量的なデータを用いて,各任意地点間 の時間重要度を表すこととした。 2. 5 地域メッシュを活用した移動経路の近似  地域内の任意地点はほぼ無限に存在するため,実際に 公共交通ネットワークの利便性評価値を推計するには, 地域内の任意地点間の組み合わせ数を,現実的に計算が 可能となる水準まで削減する必要がある。本研究では, 総務省が定義した地域メッシュを活用し,各地域メッ シュの中心点が,それらメッシュ内に存在する全ての任 意地点を代表することとして,任意地点間の移動を,地 域メッシュ中心点間の移動に置き換え,組み合わせ数を

(4)

削減することとした。適用する地域メッシュは,1辺が 約250mの1/4地域メッシュを基本とし,土地利用状況 や公共交通の配置等に応じて,1辺が約500mの1/2地 域メッシュ等の適用も考慮する。また,公共交通移動の アクセシビリティの推計を容易とするため,公共交通機 関で移動する区間以外の移動経路は,地域メッシュの中 心点を結んだ直線リンクで近似することとした。これは, 我が国では全国的に道路整備が進んでおり,移動経路を 直線で近似しても,現実の道路経路と,大きな誤差は発 生しないと考えられることが理由である。駅やバス停へ のアクセス・イグレス経路についても,これらが位置す る地域メッシュの中心点と,直線で結んだ経路とする。 例えば,図5の青線で示した,任意地点i から j までの 鉄道移動経路は,赤線で示した地域メッシュ01中心点 から11中心点までの,鉄道移動経路に置き換えられる。  地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値は, 図6で示したとおり,各地域メッシュ中心点間の公共交 通移動のアクセシビリティ,区間重要度,及び時間重要 度を掛け合わせて推計する。

3.公共交通の利用実態調査と得られた知見

3. 1 調査の実施概要  本研究では,人口20万人弱の地方都市A市を中心と した,小規模なA都市圏を分析対象都市とした。A市 には,学校や病院などの重要施設が比較的多く,小規模 ながら商業地やビジネス街も存在している。また,大型 のショッピングモールも存在する。他の地方都市と同じ く,A都市圏でも自動車が圧倒的な分担率となるが,都 市圏内の多くの地域は,鉄道や路線バスで移動可能であ る。また,高速鉄道などの幹線交通機関も比較的利用し やすく,他都市との広域的な旅客流動も存在している。  公共交通の利用実態の調査手法については,まず,朝 夕は学生の通学利用が大半であることから,分析対象都 市内の学校を対象とした訪問調査が最も効率的なデータ 収集手法と考えられるため,これを実施することとした。 次に,日中については,人々の移動時間帯や移動目的が 様々であることから,特定の施設における訪問調査は困 難と考えられる。一方で,旅客流動量が比較的少なく, 大きな波もないことから,駅やバス停での公共交通利用 者に対する直接インタビュー調査が,最も効率的なデー タ収集手法と考えられるため,これを実施することとし た。表1は,A市における,公共交通の利用実態調査(平 日)の概要を示したものである。なお,本研究は需要予 測が目的ではないため,対象都市内の流動量を把握する 必要はなく,人々の公共交通の利用傾向が把握できる程 度の規模で十分である。また,実態調査は休日も実施し たが,本稿では,人々の移動や各種活動が活発であり, 年間日数も多い平日について述べる。 図6 公共交通ネットワークの利便性評価値の算出イメージ 図5 地域メッシュ中心点間移動への置き換え 総務省が定義した地域メッシュを活用し,各地域メッシ ュの中心点が,それらメッシュ内に存在する全ての任意 地点を代表することとして,任意地点間の移動を,地域 メッシュ中心点間の移動に置き換え,組み合わせ数を削 減することとした。適用する地域メッシュは,1辺が約 250mの1/4地域メッシュを基本とし,土地利用状況や公 共交通の配置等に応じて,1辺が約500mの1/2地域メッ シュ等の適用も考慮する。また,公共交通移動のアクセ シビリティの推計を容易とするため,公共交通機関で移 動する区間以外の移動経路は,地域メッシュの中心点を 結んだ直線リンクで近似することとした。これは,我が 国では全国的に道路整備が進んでおり,移動経路を直線 で近似しても,現実の道路経路と,大きな誤差は発生し ないと考えられることが理由である。駅やバス停へのア クセス・イグレス経路についても,これらが位置する地 域メッシュの中心点と,直線で結んだ経路とする。例え 図5 地域メッシュ中心点間移動への置き換え ば,図5の青線で示した,任意地点iからjまでの鉄道移 動経路は,赤線で示した地域メッシュ01中心点から11中 心点までの,鉄道移動経路に置き換えられる。 地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値は, 図6で示したとおり,各地域メッシュ中心点間の公共交 通移動のアクセシビリティ,区間重要度,及び時間重要 度を掛け合わせて推計する。

3. 公共交通の利用実態調査と得られた知見

3.1 調査の実施概要 本研究では,人口20万人弱の地方都市A市を中心とし た,小規模なA都市圏を分析対象都市とした。A市には, 学校や病院などの重要施設が比較的多く,小規模ながら 商業地やビジネス街も存在している。また,大型のショ ッピングモールも存在する。他の地方都市と同じく,A 都市圏でも自動車が圧倒的な分担率となるが,都市圏内 の多くの地域は,鉄道や路線バスで移動可能である。ま た,高速鉄道などの幹線交通機関も比較的利用しやすく, 他都市との広域的な旅客流動も存在している。 公共交通の利用実態の調査手法については,まず,朝 夕は学生の通学利用が大半であることから,分析対象都 市内の学校を対象とした訪問調査が,最も効率的なデー タ収集手法と考えられるため,これを実施することとし た。次に,日中については,人々の移動時間帯や移動目 的が様々であることから,特定の施設における訪問調査 は困難と考えられる。一方で,旅客流動量が比較的少な く,大きな波もないことから,駅やバス停での公共交通 利用者に対する直接インタビュー調査が,最も効率的な データ収集手法と考えられるため,これを実施すること とした。表1は,A市における,公共交通の利用実態調 査(平日)の概要を示したものである。なお,本研究は 需要予測が目的ではないため,対象都市内の流動量を把 握する必要はなく,人々の公共交通の利用傾向が把握で きる程度の規模で十分である.また,実態調査は休日も 図6 公共交通ネットワークの利便性評価値の算出イメージ 地域メッシュ間の移動経路 メッシュ01中心点→メッシュ02中心点→駅A →駅D→メッシュ12中心点→メッシュ11中心点 総務省が定義した地域メッシュを活用し,各地域メッシ ュの中心点が,それらメッシュ内に存在する全ての任意 地点を代表することとして,任意地点間の移動を,地域 メッシュ中心点間の移動に置き換え,組み合わせ数を削 減することとした。適用する地域メッシュは,1辺が約 250mの1/4地域メッシュを基本とし,土地利用状況や公 共交通の配置等に応じて,1辺が約500mの1/2地域メッ シュ等の適用も考慮する。また,公共交通移動のアクセ シビリティの推計を容易とするため,公共交通機関で移 動する区間以外の移動経路は,地域メッシュの中心点を 結んだ直線リンクで近似することとした。これは,我が 国では全国的に道路整備が進んでおり,移動経路を直線 で近似しても,現実の道路経路と,大きな誤差は発生し ないと考えられることが理由である。駅やバス停へのア クセス・イグレス経路についても,これらが位置する地 域メッシュの中心点と,直線で結んだ経路とする。例え 図5 地域メッシュ中心点間移動への置き換え ば,図5の青線で示した,任意地点iからjまでの鉄道移 動経路は,赤線で示した地域メッシュ01中心点から11中 心点までの,鉄道移動経路に置き換えられる。 地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値は, 図6で示したとおり,各地域メッシュ中心点間の公共交 通移動のアクセシビリティ,区間重要度,及び時間重要 度を掛け合わせて推計する。

3. 公共交通の利用実態調査と得られた知見

3.1 調査の実施概要 本研究では,人口20万人弱の地方都市A市を中心とし た,小規模なA都市圏を分析対象都市とした。A市には, 学校や病院などの重要施設が比較的多く,小規模ながら 商業地やビジネス街も存在している。また,大型のショ ッピングモールも存在する。他の地方都市と同じく,A 都市圏でも自動車が圧倒的な分担率となるが,都市圏内 の多くの地域は,鉄道や路線バスで移動可能である。ま た,高速鉄道などの幹線交通機関も比較的利用しやすく, 他都市との広域的な旅客流動も存在している。 公共交通の利用実態の調査手法については,まず,朝 夕は学生の通学利用が大半であることから,分析対象都 市内の学校を対象とした訪問調査が,最も効率的なデー タ収集手法と考えられるため,これを実施することとし た。次に,日中については,人々の移動時間帯や移動目 的が様々であることから,特定の施設における訪問調査 は困難と考えられる。一方で,旅客流動量が比較的少な く,大きな波もないことから,駅やバス停での公共交通 利用者に対する直接インタビュー調査が,最も効率的な データ収集手法と考えられるため,これを実施すること とした。表1は,A市における,公共交通の利用実態調 査(平日)の概要を示したものである。なお,本研究は 需要予測が目的ではないため,対象都市内の流動量を把 握する必要はなく,人々の公共交通の利用傾向が把握で きる程度の規模で十分である.また,実態調査は休日も 図6 公共交通ネットワークの利便性評価値の算出イメージ 地域メッシュ間の移動経路 メッシュ01中心点→メッシュ02中心点→駅A →駅D→メッシュ12中心点→メッシュ11中心点

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3. 2 利用実態調査(平日)から得られた知見 3. 2. 1 朝夕の公共交通の利用実態  学生の主な通学手段は,徒歩・自転車,路線バス,及 び鉄道であり,その選択傾向には自宅と学校の距離との 関係性が見られた。図7は,自宅と学校からの距離と通 学手段の関係性を,模式的に示したものである。自宅と 学校の距離が約3km圏内の近距離帯では,学生の大半 は徒歩・自転車を選択していた。そして3km5km圏 の近~中距離帯では,徒歩・自転車と路線バスの間に競 合関係が見られた。ただし,路線バスが競争力を持つに は,利用可能なバス路線の輸送サービス水準も重要であ り,これが低いバス路線しか利用できない学生では,路 線バスの選択率は非常に低かった。当該距離帯では,路 線バスは徒歩・自転車よりも速達性等の面で有利である ものの,圧倒するほどではないため,徒歩・自転車と競 合関係になり易いと考えられる。また,バス路線の輸送 サービス水準を,仮想的に変化させた場合の仮想設問で も学生の感度は比較的高くなっており,このことも,路 線バスが徒歩・自転車と競合し易いことの証左と考えら れる。鉄道については,速達性や定時性等の面で路線バ スよりも優れるが,駅間の長さなどによる自宅・学校と 駅のアクセス・イグレス性の低さ等の影響で,当該距離 帯における選択率は低く,他の交通機関とあまり強い競 合関係は築かれていなかった。5km7kmの中距離帯 になると鉄道の選択率が上昇し,距離帯が伸びるほど, 駅のアクセス性・イグレス性の影響は小さくなっていた。 これは,移動距離が延びるにつれ,鉄道の速達性や定時 性の高さの重要性が増すためと考えられ,遠距離通学の 表1 公共交通の利用実態調査の概要(平日) 調査箇所 および 調査手法 通学 都市圏内の3校の高等学校での 訪問調査(回答は即日回収) 日中 都市圏内の6ヶ所の駅と4ヶ所 のバス停でのインタビュー調査 調査日 通学 2016年11月の平日 f各校1日ずつ実施 日中 駅:2016年11月の平日 f全駅で調査日は同じ バス停:2017年12月の平日 f各箇所で調査日は異なる 回収 回答数 通学 有効1,118票(全数1,235票) 日中 有効645票(全数748票) f駅:391票 バス停:254票 主な 調査項目 共通 f性別等の個人属性 f居住地(町目・大字単位) 通学 f普段の通学行動 f公共交通機関のサービス水準 が変化した場合の通学行動  (仮想選択問題) etc 日中 f当日の公共交通利用状況 f普段の自動車利用状況 etc 学生にとっては,鉄道が事実上唯一の通学手段となって おり,駅勢圏も拡大したと考えられる。また,鉄道の輸 送サービス水準を,仮想的に変化させた場合の仮想設問 においても学生の感度は比較的低くなっており,このこ とも,特に長距離帯において,鉄道の選択率が卓越する ことの証左と考えられる。  以上より,学生は,所要時間といった輸送サービスや, 自宅・学校と駅・バス停とのアクセス・イグレス性等を 比較して,合理的な判断に基づき通学手段を選択してい ると言え,得られたデータから,朝夕の公共交通移動に 関する経路選択モデルを構築することが可能と考えられ る。ただし,徒歩・自転車の選択傾向にやや性差が見ら れた点や,公共交通で通学する学生の大半は,保護者が 購入した通学定期を保有し,利用に際して対価の支払い が発生していない点等に,注意が必要である。 3. 2. 2 日中の公共交通の利用実態  日中の鉄道利用者の性別・年齢は多様であり,運転免 許保有率も50%程度と比較的高かった。利用目的も様々 であるが,利用者の約40%は,都市間移動といった比 較的長距離を移動する人々であった。これは,学生の通 学実態と同様に,鉄道の速達性や定時性の高さが理由と 考えられ,自動車と比較しても鉄道の利便性が高いとい う合理的な判断の下で,選択されたと考えられる。また, 他地域からの来訪者による利用も多く,鉄道が広域的な 交流を支えていることも把握できた。  日中の路線バス利用者は,自由に利用できる自動車を 持たない高齢者,特に高齢女性の比率が圧倒的に高く, 回答者の約半数は,70歳以上の高齢女性であった。また, 都市圏内の近~中距離移動で利用されている場合がほと んどであった。当該距離帯における,自動車の機動性や 自由度の高さは際立っており,路線バスの輸送サービス 水準は,自動車を自由に使える人々にとって,競争力を 有する水準に達していないと考えられる。ただし,中心 市街地や病院など,バス路線が充実している地区では, 自由に自動車を利用できる人々の路線バス利用も存在 しているため,これら人々も合理的な判断の下で,交通 手段を選択していると考えられる。また,鉄道と路線バ 図7 自宅と学校の距離と通学手段の関係 表1 公共交通の利用実態調査の概要(平日) 調査箇所 および 調査手法 通学 都市圏内の3校の高等学校での 訪問調査(回答は即日回収) 日中 都市圏内の6ヶ所の駅と4ヶ所 のバス停でのインタビュー調査 調査日 通学 2016年11月の平日  各校1日ずつ実施 日中 駅:2016年11月の平日  全駅で調査日は同じ バス停:2017年12月の平日  各箇所で調査日は異なる 回収 回答数 通学 有効1,118票(全数1,235票) 日中 有効645票(全数748票)  駅:391 票 バス停:254 票 主な 調査項目 共通  性別等の個人属性  居住地(町目・大字単位) 通学  普段の通学行動  公共交通機関のサービス水準が 変化した場合の通学行動 (仮想選択問題) etc 日中  当日の公共交通利用状況  普段の自動車利用状況 etc 実施したが,本稿では,人々の移動や各種活動が活発で あり,年間日数も多い平日について述べる。 3.2 利用実態調査(平日)から得られた知見 3.2.1 朝夕の公共交通の利用実態 学生の主な通学手段は,徒歩・自転車,路線バス,及 び鉄道であり,その選択傾向には自宅と学校の距離との 関係性が見られた。図7は,自宅と学校からの距離と通 学手段の関係性を,模式的に示したものである。自宅と 学校の距離が約3km圏内の近距離帯では,学生の大半 は徒歩・自転車を選択していた。そして3km~5km圏 の近~中距離帯では,徒歩・自転車と路線バスの間に競 合関係が見られた。ただし,路線バスが競争力を持つに は,利用可能なバス路線の輸送サービス水準も重要であ り,これが低いバス路線しか利用できない学生では,路 線バスの選択率は非常に低かった。当該距離帯では,路 線バスは徒歩・自転車よりも速達性等の面で有利である ものの,圧倒するほどではないため,徒歩・自転車と競 合関係になり易いと考えられる。また,バス路線の輸送 サービス水準を,仮想的に変化させた場合の仮想設問で も学生の感度は比較的高くなっており,このことも,路 線バスが徒歩・自転車と競合し易いことの証左と考えら れる。鉄道については,速達性や定時性等の面で路線バ スよりも優れるが,駅間の長さなどによる自宅・学校と 駅のアクセス・イグレス性の低さ等の影響で,当該距離 帯における選択率は低く,他の交通機関とあまり強い競 合関係は築かれていなかった。5km~7kmの中距離帯 になると鉄道の選択率が上昇し,距離帯が伸びるほど, 図7 自宅と学校の距離と通学手段の関係 駅のアクセス性・イグレス性の影響は小さくなっていた。 これは,移動距離が延びるにつれ,鉄道の速達性や定時 性の高さの重要性が増すためと考えられ,遠距離通学の 学生にとっては,鉄道が事実上唯一の通学手段となって おり,駅勢圏も拡大したと考えられる。また,鉄道の輸 送サービス水準を,仮想的に変化させた場合の仮想設問 においても学生の感度は比較的低くなっており,このこ とも,特に長距離帯において,鉄道の選択率が卓越する ことの証左と考えられる。 以上より,学生は,所要時間といった輸送サービスや, 自宅・学校と駅・バス停とのアクセス・イグレス性等を 比較して,合理的な判断に基づき通学手段を選択してい ると言え,得られたデータから,朝夕の公共交通移動に 関する経路選択モデルを構築することが可能と考えられ る。ただし,徒歩・自転車の選択傾向にやや性差が見ら れた点や,公共交通で通学する学生の大半は,保護者が 購入した通学定期を保有し,利用に際して対価の支払い が発生していない点等に,注意が必要である。 3.2.2 日中の公共交通の利用実態 日中の鉄道利用者の性別・年齢は多様であり,運転免 許保有率も50%程度と比較的高かった。利用目的も様々 であるが,利用者の約40%は,都市間移動といった比較 的長距離を移動する人々であった。これは,学生の通学 実態と同様に,鉄道の速達性や定時性の高さが理由と考 えられ,自動車と比較しても鉄道の利便性が高いという 合理的な判断の下で,選択されたと考えられる。また, 他地域からの来訪者による利用も多く,鉄道が広域的な 交流を支えていることも把握できた。 日中の路線バス利用者は,自由に利用できる自動車を 持たない高齢者,特に高齢女性の比率が圧倒的に高く, 回答者の約半数は,70歳以上の高齢女性であった。また, 都市圏内の近~中距離移動で利用されている場合がほと んどであった。当該距離帯における,自動車の機動性や 自由度の高さは際立っており,路線バスの輸送サービス 水準は,自動車を自由に使える人々にとって,競争力を 有する水準に達していないと考えられる。ただし,中心

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特集:輸送・交通計画技術

図8 製作中の評価システム画面 スの乗継ぎも,比較的接続が良い一部の駅では発生し ているため,鉄道と路線バスの接続や連携の改善は,公 共交通ネットワークの利便性向上に寄与するものと考え られる。  以上より,鉄道と路線バスの利用傾向には大きな差が あり,さらに路線バスでは利用者にも偏りがあるものの, 各々が自身の移動条件の下で,合理的な判断に基づき交 通手段を選択していると言える。そして,得られたデー タから,日中の公共交通移動に関する経路選択モデルを 構築することが可能と考えられる。ただし,分析対象地 域では,路線バス運賃の高齢者割引が実施されており, 注意が必要である。

4.公共交通ネットワークの利便性評価システ

ムの開発

 地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値を推 計するには,膨大な作業量や計算量が必要となる。その ため本研究では,一連の作業や計算を自動化するために, 地理情報システム(GIS)を活用した公共交通ネットワー クの利便性評価システム(以降,評価システムとする)を, 併せて製作している。図8は,製作中の評価システムの 画面であるが,現在の評価システムは,地図データや地 域メッシュデータ,公共交通の路線データ等の各種地理 空間情報データや,公共交通の運行ダイヤといった,各 種輸送サービスデータをシステム内に格納しており,こ れらに基づき,任意地点間の公共交通移動経路を,出発 時間ごとに抽出し,それら各経路の所要時間や費用など の,輸送サービスデータを整備することができる。  今後は,各地域メッシュ中心点間の公共交通移動のア クセシビリティの自動計算機能や,区間重要度と時間重 要度を格納するためのデータベースを作成し,公共交通 ネットワークの利便性評価値の自動推計を可能とする予 自由に自動車を利用できる人々の路線バス利用も存在し ているため,これら人々も合理的な判断の下で,交通手 段を選択していると考えられる。また,鉄道と路線バス の乗継ぎも,比較的接続が良い一部の駅では発生してい るため,鉄道と路線バスの接続や連携の改善は,公共交 通ネットワークの利便性向上に寄与するものと考えられ る。 以上より,鉄道と路線バスの利用傾向には大きな差が あり,さらに路線バスでは利用者にも偏りがあるものの, 各々が自身の移動条件の下で,合理的な判断に基づき交 通手段を選択していると言える。そして,得られたデー タから,日中の公共交通移動に関する経路選択モデルを 構築することが可能と考えられる。ただし,分析対象地 域では,路線バス運賃の高齢者割引が実施されており, 注意が必要である。

4. 公共交通ネットワークの利便性評価シス

テムの開発

地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価値を推計 するには,膨大な作業量や計算量が必要となる。そのた め本研究では,一連の作業や計算を自動化するために, 地理情報システム(GIS)を活用した公共交通ネットワ ークの利便性評価システム(以降,評価システムとする) を,併せて製作している。図8は,製作中の評価システ ムの画面であるが,現在の評価システムは,地図データ や地域メッシュデータ,公共交通の路線データ等の各種 地理空間情報データや,公共交通の運行ダイヤといった, 各種輸送サービスデータをシステム内に格納しており, これらに基づき,任意地点間の公共交通移動経路を,出 発時間ごとに抽出し,それら各経路の所要時間や費用な どの,輸送サービスデータを整備することができる。 今後は,各地域メッシュ中心点間の公共交通移動のア クセシビリティの自動計算機能や,区間重要度と時間重 要度を格納するためのデータベースを作成し,公共交通 図8 製作中の評価システム画面 定である。また,運行ダイヤやバス路線の編集が可能と なるような機能も作成し,様々な公共交通ネットワーク 改善案のシミュレーションが,本評価システム上で実行 できるようにする予定である。

5. おわりに

本稿では,地方都市への適用を前提に開発を進めてい る,地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価手法 の評価理論と,評価手法の具体的な構築に必要となる, 公共交通の利用実態データの収集手法やその実施概要を 述べた。そして収集されたデータの分析結果から,モー タリゼーションが進行した地方部においても,公共交通 利用者は自身の移動条件の下で,合理的な判断に基づき, 地域内の移動手段として,公共交通を選択していること を把握することができた。 今後は,取得された公共交通の利用実態データを基に, 分析対象地域における公共交通ネットワークの利便性評 価値の,具体的な算出を行う。そして,例えば,公共交 通事業者の負荷を増大させることなく,地域の公共交通 の,改善構想に資する研究開発を進める。

文 献

1) 例えば,宮崎耕輔,高山純一,中山晶一朗:地方 鉄道の廃線が地域住民の生活に与えた影響分析に 関する研究,土木計画学研究・講演集Vol.34,2007 2) 片上諒,平岡秀和,早崎藍,鈴木春菜,高野伸栄, 榊原弘之:中小地方都市の公共交通計画のための 簡易交通実態調査手法に関する研究,社会技術研 究論文集vol.11,pp.22-32, 2014 3) 例えば,国土技術政策総合研究所:アクセシビリ ティ指標活用の手引き(案), http://www.nilim.go.jp/lab/jcg/index.files/accessibility.p df(参照日:2018 年 10 月 5 日)

4) Richerdson, A. J. and Young, W.: Ameasure of linked-trip accessibility, Transportation Planning and Technol-ogy,Vol 7, pp. 73-82, 1982. 5) 国土交通省:平成 22 年度全国都市交通特性調査, http://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_tk _000007.html(参照日:2018 年 10 月 5 日) 6) 総務省統計局:統計データ, http://www.stat.go.jp/data/(参照日:2018 年 10 月 5 日) 抽出経路 各経路の 輸送サービス 出発時刻 地 着 地 定である。また,運行ダイヤやバス路線の編集が可能と なるような機能も作成し,様々な公共交通ネットワーク 改善案のシミュレーションが,本評価システム上で実行 できるようにする予定である。

5.おわりに

 本稿では,地方都市への適用を前提に開発を進めてい る,地域全体の公共交通ネットワークの利便性評価手法 の評価理論と,評価手法の具体的な構築に必要となる, 公共交通の利用実態データの収集手法やその実施概要を 述べた。そして収集されたデータの分析結果から,モー タリゼーションが進行した地方部においても,公共交通 利用者は自身の移動条件の下で,合理的な判断に基づき, 地域内の移動手段として,公共交通を選択していること を把握することができた。  今後は,取得された公共交通の利用実態データを基に, 分析対象地域における公共交通ネットワークの利便性評 価値の,具体的な算出を行う。そして,例えば,公共交 通事業者の負荷を増大させることなく,地域の公共交通 の,改善構想に資する研究開発を進める。

文 献

1) 例えば,宮崎耕輔,高山純一,中山晶一朗:地方鉄道の廃 線が地域住民の生活に与えた影響分析に関する研究,土木 計画学研究・講演集Vol.34,2007 2) 片上諒,平岡秀和,早崎藍,鈴木春菜,高野伸栄,榊原弘之: 中小地方都市の公共交通計画のための簡易交通実態調査 手法に関する研究,社会技術研究論文集Vol.11,pp.22-32, 2014 3) 例えば,国土技術政策総合研究所:アクセシビリティ指標 活用の手引き(案), http://www.nilim.go.jp/lab/jcg/index.files/accessibility.pdf (参照日:2018 年 10 月 5 日)

4) Richerdson, A. J. and Young, W.: Ameasure of linked-trip accessibility, Transportation Planning and Technology,Vol 7, pp. 73-82, 1982. 5) 国土交通省:平成 22 年度全国都市交通特性調査 , http://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_ tk_000007.html (参照日:2018 年 10 月 5 日) 6) 総務省統計局:統計データ, http://www.stat.go.jp/data/ (参照日:2018 年 10 月 5 日)

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