「当面の富士山の観測研究の強化について(報
告)平成 13 年6月」に関する実施状況調査票
国立大学法人 1~12 頁 防災科学技術研究所 13~23 頁 産業技術総合研究所 24~34 頁 国土地理院 35~41 頁 気象庁 42~46 頁 火山噴火予知連絡会 47~48 頁参考資料(3)
科学技術・学術審議会測地学分科会 火山部会(第 17 回) H18.1.31≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:国立大学法人・他 事項: ①各大学は協力して、富士山の活動評価の基礎資料を得るために、地震、地殻変動、 重力、電磁気、火山ガスなどの集中総合観測を緊急に実施する。また、人工地震等 による火山体浅部構造探査に加えて、富士山とその周囲で長期間高密度地震観測を 実施し、自然地震による深部構造解明のための調査研究を行う。 1.実施状況 平成 14 年度に、各大学と協力して、集中総合観測を実施した。実施内容は、地震、 地殻変動、重力、電磁気、火山ガスである.平成 15 年度に大学を中心に、気象庁、国 立極地研究所の協力を得て、人工地震による火山体浅部構造探査を実施した.測線長 87km、観測点数 469 点、爆破点 5 点である.参加機関は東京大学、北海道大学、秋田大 学、東北大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、九州大学、鹿児島大学から計 58 名、気象庁から 9 名、極地研究所から 2 名である.これに加えて、平成 14 年度から 16 年度において、富士山の周囲約 60km において 166 点(観測点間隔 5-10km)による長期 高密度地震観測を実施し、自然地震による深部構造解明のための調査研究を行った。 2.具体的成果 富士山における詳細な地震波速度構造が得られ、震源決定を高精度化するための条件 が整備された。また、低周波地震発生領域は、地震波低速度域であると同時に、沈み込 むフィリピン海プレートよりも深部に位置する高電気伝導度領域の真上に位置するこ とが明らかとなった。このことは、富士山のマグマがこの領域の下部から供給されてい ることを示唆している。この低周波地震震源域では、P 波速度、S 波速度およびその比 がいずれも異常に低くなっていることが示され、この領域にはマグマで はなく CO2 ガ スを含む水が存在していることを示唆する。富士山の地下数 100m には地下水を多く含 む層が広がっており、山頂火口の地下 500m 付近には熱水の上昇を示唆する結果が得ら れた。この結果は、微弱ではあるが地下深部から熱エネルギーが供給されていることを いることを示している。また、富士山の基盤は、東側で浅く、西側で深くなっており、 富士山が形成されている場のテクトニックな環境が一様ではなく、富士山が境目に位置 していることがわかった。同時に、富士山直下に地震波高速度層の盛り上がりの存在が 明らかになり、富士山への度重なるマグマの貫入の結果であることが示唆された。 3.課題と今後の展望 研究の結果明らかになった構造からは、低周波地震の発生域がマグマ溜りあるいはマ グマの供給経路と思われる低比抵抗域の上に存在していることが初めて明らかにされ
た。しかし、マグマの蓄積領域や浅部の地震発生域との関連については、現段階では明 らかになっていない。低周波地震、浅部の地震の震源を精密に決定することで、新たな 知見が得られると思われる。また、レシーバー関数解析などによる、より発展的な地震 波形解析により沈み込むフィリピン海プレートの形状を明らかにすることにより、富士 山直下におけるマグマ蓄積過程についてより深い知見が得られると考えられる。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:国立大学法人・他 事項: ①各大学は協力して、富士山の活動評価の基礎資料を得るために、地震、地殻変動、 重力、電磁気、火山ガスなどの集中総合観測を緊急に実施する。また、人工地震等 による火山体浅部構造探査に加えて、富士山とその周囲で長期間高密度地震観測を 実施し、自然地震による深部構造解明のための調査研究を行う。 (査読つき論文)
Aizawa, K. (2004) A large self-potential anomaly and its changes on the quiet Mt. Fuji, Japan. Geophys. Res. Lett., 31, L05612, doi:10.1029/2004GL019462 Aizawa, K., Yoshimura, R., Oshiman, N. (2004) Splitting of the Philippine Sea Plate
and a magma chamber beneath Mt. Fuji. Geophys. Res. Lett., 31, L09603, doi:10.1029/2004GL019477
Aizawa, K., Yoshimura, R., Oshiman, N., Yamazaki,K., Uto, T., Ogawa, Y., Tank, S.B., Kanda, W., Sakanaka, S., Furukawa, Y., Hashimoto, T., Uyeshima, M., Ogawa, Y., Shiozaki, I.. Hurst, A.W. (2005) Hydrothermal system beneath Mt. Fuji volcano inferred from magnetotellurics and electric self-potential, Earth Planet. Sci. Lett., 235, 343-355
Oikawa, J., Kagiyam, T., Tanaka, S., Miyamachi, H., Tsutsui, T., Ikeda, Y., Katayama,H., Matsuo, N., Oshima, H., Nishimura, Y., Yamamoto, K., Watanabe, H., Yamazaki, F. (submitted) Seismic exploration of Fuji volcano with active sources in 2003. (Submitted to Geophysical Research Letters)
Nakamichi, H., Watanabe, H., Ohminato, T., Seismic Observation Group of Mount Fuji. (submitted) Three-dimensional velocity structure of Mount Fuji and the South Fossa Magna, central Japan. (Submitted to J. Geophys. Res.)
(その他報告書) 鍵山恒臣 (2004) 富士山の構造と火山活動-富士山研究がめざすもの.月刊地球,号外 48,12-16 中道治久・渡辺秀文・大湊隆雄・富士山稠密地震観測グループ (2004) 富士山稠密地震 観測による地震波速度構造探査.月刊地球,号外 48,17-22 及川 純・鍵山恒臣・田中聡・宮町宏樹・筒井智樹・池田靖・潟山弘明・松尾のり道・ 西村裕一・山本圭吾・渡辺俊樹・大島弘光・山崎文人 (2004) 人工地震を用いた富 士山における構造探査.月刊地球,号外 48,23-26 相澤広記・富士山比抵抗研究グループ (2004) 富士山での電磁気観測.月刊地球, 号外
48,27-34. 鍵山恒臣・小河 勉・長田昇・小山悦郎・小山茂 (2004) 富士山山麓における熱・電磁 気観測,月刊地球,号外 48,35-41 大久保修平・高木朗充・新谷昌人・松本滋夫・福井敬一・孫 文科 (2004) 富士山頂に おける絶対重力測定.月刊地球, 号外 48,56-61 野津憲治・森 俊哉・鍵 裕之・伊藤貴盛 (2004) 富士火山における火山ガス拡散放出 の調査研究.月刊地球,号外 48,42-47 相澤広記・吉村令慧・山崎健一・神田 径・大志万直人・ 橋本武志・HURST Tony・坂 中伸也・古川勇也・小川康雄・ TANK S.B.・上嶋 誠・小河 勉・小山 茂・鍵山 恒臣・塩崎一郎・ 宇都智史・吉村光弘・吉本和範 (2003) 富士山地下の地殻深部 比抵抗構造(序報).京都大学防災研究所年報,46 号 B,729-737
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:東京大学地震研究所 事項: ②富士山における、過去1万年の火山活動史の解明を目的に、地質調査総合センター と連携して、富士山北東部において、ボーリング、トレンチ、ピストンコア等によ る噴出物調査を行い、長期予測や噴火の規模、様式、推移の予測に関する研究を行 う。 1.実施状況 富士火山の噴火履歴解明のため、富士山体の北部において火山体の構造と形成史解明 のための掘削を 3 ヶ所(最長 650m)、東部斜面において火山活動史解明のための掘削を 2 ヶ所で行い、同時に関連する堆積物の地表調査を行った。 得られた試料について、詳 細な記載を行うとともに、全岩組成、鉱物組成、メルト包有物等の化学分析を行った。 2.具体的成果 掘削結果から、富士火山直下に既知の小御岳火山とは異なる安山岩の古い山体-先小 御岳-が存在することが明らかになった。また、富士山は数万年以上に渡って、ここ数 千年と同様なスコリアの噴出を中心とする活動を続けてきたこともわかった。この約 3 万年以降が降下スコリアからなるのに対し、それ以前は泥流堆積物で占められており、 この変化は気候変動よる山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高い。富士火 山の噴出物は古富士、新富士期を問わず大部分がマグマ混合の特徴を有しており、カン ラン石斑晶が安山岩質のメルト包有物を多く含むことがわかった。これより、富士火山 のマグマは浅部の小安山岩マグマ溜りに深部から大量の玄武岩マグマが注入・混合する ことで生じていると推定された。また、二大噴火である貞観噴火と宝永噴火を比較する と、単に脱ガス過程の違いだけでなく、結晶分化やマグマ混合などマグマ進化の多くの 点で違いがあることが明らかになった。 3.課題と今後の展望 今回の掘削で、富士山の基盤に先小御岳が存在することが明らかになったが、掘削が 北東部に限られていたためその全容は不明である。この分布状況は、富士山の体積、従 って噴出率の推定に大きな影響を与える。今後、富士山南~西地域で 1000m級の掘削を 行い、南西部で欠けている長いスパンの噴火履歴と共に、富士山内部の基盤構造を明ら かにする必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:東京大学地震研究所 事項: ②富士山における、過去1万年の火山活動史の解明を目的に、地質調査総合センター と連携して、富士山北東部において、ボーリング、トレンチ、ピストンコア等によ る噴出物調査を行い、長期予測や噴火の規模、様式、推移の予測に関する研究を行 う。 (査読論文)
Yoshimoto, M., Fujii, T., Kaneko, T., Yasuda, A., Nakada, S. (2004) Multiple magma reservoirs for the 1707 eruption of Fuji volcano, Japan, Proc. Japan Acad. Ser. B. 80, 103-106 (その他報告書) 藤井敏嗣(2004)富士火山でなぜ玄武岩マグマが卓越するか.月刊地球,号外 48,153-159 藤井敏嗣・金子隆之・吉本充宏・中田節也・渡辺秀文(2002)富士火山の科学掘削と噴 火予知.月刊地球,24,660-664 藤井敏嗣・吉本充宏・安田 敦(2002)富士火山の次の噴火を考える-宝永噴火の位置 づけ-.月刊地球,24,617-621 飯田晃子・藤井敏嗣・安田 敦(2004)富士火山,貞観噴火と宝永噴火:ガラス包有物 からのアプローチ.月刊地球,号外 48,131-138 金子隆之・安田 敦・吉本充宏・藤井敏嗣・中田節也・嶋野岳人(2004)富士火山のマ グマの特質とマグマ供給系: テフラ層の分析による検討.月刊地球,号外 48, 146-152 金子隆之・吉本充宏・嶋野岳人・安田 敦・藤井敏嗣・中田節也・上杉 陽(2004)富士 山東斜面におけるテフラ層序:掘削の成果と活動史.月刊地球,号外 48,101-107 中田節也・吉本充宏・金子隆之・嶋野岳人・藤井敏嗣(2004)富士山の火山体掘削の概 要.月刊地球,号外 48,82-88 佐野貴司・大八木勝治・大石 梓・土 隆一(2004)富士山西麓端の掘削より得られた 火山岩の研究.月刊地球,号外 48,95-100 安田 敦・金子隆之・吉本充宏・嶋野岳人・中田節也・藤井敏嗣(2004)溶岩流試料に 基づくマグマの成因の検討.号外 48,139-145 吉本充宏・金子隆之・嶋野岳人・安田 敦・中田節也・藤井敏嗣(2004)掘削試料から 見た富士山の火山形成史.月刊地球,号外 48,89-94 吉本充宏・金子隆之・藤井敏嗣・中田節也(2004)藤火山北東斜面の火砕流堆積物の特 徴.月刊地球,号外 48,124-130
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:東京大学地震研究所 事項: ③既設の観測点、臨時観測点と併せて、高品位の地震、地殻変動等のデータを得るた めの複数の観測井で構成される立体アレー観測網を中腹域に設置する。それらのデ ータを用いて深部低周波地震の発生メカニズム等の研究の進展を図る。 1.実施状況 高品位の地震、地殻変動等のデータを用いて富士山の地下深部で発生する低周波地震 とマグマ活動との関連を解明するため、2002 年〜2003 年にかけて、3カ所のボーリン グ孔に広帯域/短周期地震計立体アレー観測網を設置し、傾斜計および3成分歪計・温 度計を各1カ所のボーリング孔に設置した。 設置後の深部低周波地震活動が低調なため十分なデータは得られていないが、少数の 深部低周波地震イベントについて予備的な解析を行っている。また、既存地震観測網の データを用いて、1998 年〜2003 年に発生した低周波地震の精密震源再決定を行った。 傾斜計、3成分歪計、体積温度計は設置以降まだ安定していないが、高感度・高品位 の観測が可能であることを確認できた。 2.具体的成果 精密震源再決定により、富士山における深部低周波地震が板状に分布していること、 2000 年〜2001 年の活動活発化に際して震源が2〜3km 移動したことが分かった。また、 予備的な解析の結果、深部低周波地震波形のスペクトルが複数の鋭いピークを持ち、そ れらの単純な振動が時間差をもって発生していることが分かった。これらの特徴から、 深部低周波地震の発生に何らかの流体の振動/移動が関与していることが示唆される (稠密地震観測データを用いた3次元速度構造探査の成果(震源領域は低 Vp、 Vs、 Vp/Vs)を参照すると、CO2 ガスを含む水の可能性が高い)。 高品位の地殻活動観測につ いては、歪変化 10-9、温度変化 0.3m℃を検出できることが確認された。 3.課題と今後の展望 これまでに実施した深部低周波地震の震源決定、予備的な波形解析および3次元速度 構造探査の結果は、富士山における深部低周波地震の発生に流体が関与していることを 強く示唆する。具体的な発生メカニズムおよびマグマ活動との関連を解明するために、 今後も高品位データを蓄積し、さらに詳細な波形解析を行う。 3成分歪・温度・傾斜計による地殻活動観測については、計器設置後に孔底温度がゆ っくりと緩和している。2005 年 11 月現在もまだ平衡状態に達していないが、微小な変 動を検出できるようになってきている。今後、地殻変動、温度高品位データの微小な変
< 富士山論文リスト > 実施機関名:東京大学地震研究所 事項: ③既設の観測点、臨時観測点と併せて、高品位の地震、地殻変動等のデータを得るた めの複数の観測井で構成される立体アレー観測網を中腹域に設置する。それらのデ ータを用いて深部低周波地震の発生メカニズム等の研究の進展を図る。 (査読つき論文)
Nakamichi, H., Ukawa, M., Sakai, S. (2004) Precise hypocenter locations of midcrustal low-frequency earthquakes beneath Mt. Fuji, Japan, Earth Planets and Space, 56, e37-e40
Nakamichi, H., Watanabe, H., Ohminato,T., Seismic Observation Group of Mount Fuji (submitted) Three-dimensional velocity structure of Mount Fuji and the South Fossa Magna, central Japan. (Submitted to J.Geophys.Res.)
(主な報告書)
中道治久・鵜川元雄・酒井慎一(2004)富士山の深部低周波地震の精密震源決定.月刊 地球,号外 48,72-75
渡辺秀文(2004)観測井を用いた3次元アレイ広帯域地殻活動観測システムの構築.月 刊地球,号外 48,76-80
2003年9月11日20:34に発生した低周波地震の上下動速度記録。11観測点のみ示す。 MMS.wUは深さ 40m、MMS.Uは400mに設置。左図は原記録、右図では5Hzのローパスフィルターを掛けたもの。震源が 14.2kmと深いため、初動到達時刻の差は小さい。
富士山周辺地震観測網で観測された低周波地震波形(2003年9月11日20:34)
(A) (B ) (A) 2003年9月11日20:34に発生した低周波地震のランニ ングスペクトル。細尾野観測点(HSO)の速度上下動。 0.8Hz 0.4Hz (D) 山体近傍における0.4Hz成分の卓越振動方 向。黒丸は1秒計。他は全て広帯域地震計。星印 が初動到達時刻から決めた震源位置。 0.4Hz成分の震源を星印の位置に固定して行った 暫定的な波形解析によると、南南西に20‐30度 傾く水平に近いクラック(図中の斜線部)の開閉と 上下方向のシングルフォースの組み合わせが波 形を良く説明する。 初動P波は流体流路の開通時に発生し、その後に 生じた流体移動によって励起されたクラック振動と 鉛直通路内の粘性流体の上下移動により0.4Hz 成分が発生したという解釈が可能である。 (C) バンドパスフィルターにより抽出した、2つの卓越 周波数成分(0.4, 0.8Hz)および0.9Hz以上の成分 。 0.8Hz成分は低周波地震の開始から終了まで40秒以 上継続するが、0.4Hz成分の継続時間は15-20秒程度 と短い。0.4Hz成分はP波初動(矢印1)から6-8秒ほど 遅れて始まる(矢印2)。ゼロ位相フィルターによる若 干のにじみ出しがあることに注意。 原記録 0.3-0.5Hz 0.5-0.9Hz 0.9Hz < HSO上下動記録の詳細 (1) (2) 関連資料 大学③-2 (C ) (D ) (B) 0.4と0.8Hz付近に明瞭なピークが見える。他の観 測点でも見られることから、ソース起源と考えられる。 FUJ NHOW HFSD OSWA KOSK SBSR HSO OIS MMS TOKN MTS FJZ 5km KFSD 0.4Hz成分の卓越振動方向
関連資料 大学③-3
富士山北東山腹のボアホール3成分歪計・体積温度計(225m 深)
2004 年 3 月設置以来の3成分歪・温度の変化.2005 年 11 月現在,まだ定常状態に達し
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:防災科学技術研究所 事項: ①既設の富士火山活動観測網に、観測井を用いた地震・傾斜観測点を富士山中腹に増 設し、火山活動と地震活動・地殻変動の関連についての研究、低周波地震の発生機 構についての研究及び富士山の地震波速度構造についての研究を推進する。 1.実施状況 (1)富士山中腹の山梨県側(2002 年度)と静岡県側(2003 年度)に深度 200m の抗井式 地震傾斜変動観測施設を建設し、運用を開始した。 (2)気象庁など関係機関との実時間地震データ交換を開始した。 (3)低周波地震の震源を再決定した。 (4)富士山周辺の地殻、最上部マントルの地震波速度構造トモグラフィーの研究を実施 中。 (5)低周波地震の発生機構の研究を継続中。 (6)RADARSAT 衛星の 2003 年以降の観測データにより、干渉 SAR 手法による地殻変動検出 のための解析を実施中。 2.具体的成果 (1)2カ所の山腹傾斜変動観測施設の完成により、地殻変動検知能力が向上した。強化 された観測網により地殻変動源をモデル化する能力が向上したことを仮想したマグ マ上昇のシミュレーションにより確認した。 (2)観測網強化により、低周波地震を含む富士山直下の地震の検知能力と震源精度が向 上した。2004 年以降、富士山山体下ではマグニチュード-1~0 程度の低周波地震ま で震源決定できるようになっている。 (3)過去の低周波地震の震源分布を精度良く推定した。その結果、低周波地震は富士山 の山頂から北東方向を中心に発生しているが、分布範囲は山頂の南側まで広がって いること、2000 年 9 月から 2001 年 5 月の活発化した期間では低周波地震の震源は富 士山の北東側に北西-南東に線上に配列することがわかった。 3.今後の課題と展望 (1)深部低周波地震と火山活動の関係についての地球物理学的な理解は、まだ進んでい ない。深部低周波地震の発生メカニズムの解明は重要な課題である。 (2)関係する機関の地殻変動データの共有化と異常が観測された際に変動源を迅速にモ デル化する体制と手法の検討が必要である。 (3)地震活動、地震波速度構造、電磁気的構造、地質学的情報などに関する最近の成果
も考慮して、総合的に富士山のマグマシステムのモデル化を進め、次の噴火に至る シナリオを検討することが必要である。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:防災科学技術研究所 事項: ①既設の富士火山活動観測網に,観測井を用いた地震・傾斜観測点を富士山中腹に増 設し,火山活動と地震活動・地殻変動の関連についての研究,深部低周波地震の発 生機構についての研究及び富士山の地震波速度構造についての研究を推進する。 (査読誌)
Nakamichi, H., Ukawa, M. and Sakai, S. (2005)Precise hypocenter locations of midcrustal low-frequency earthquakes beneath Mt. Fuji, Japan, Earth Planets and Space, 56, e37-e40.
Ukawa, M. (2005) Deep low-frequency earthquake swarm in the mid crust beneath Mount Fuji (Japan) in 2000 and 2001, Bulletin of Volcanology, 68, 47-56. (噴火予知連絡会会報) 防災科学技術研究所 (2002) 富士山の低周波地震と傾斜変動(2001/5/1~ 2001/10/16),火山噴火予知連絡会会報,80,28-31. 防災科学技術研究所 (2002) 富士山の低周波地震活動と傾斜変動(2001 年 10 月~2002 年 1 月),火山噴火予知連絡会会報,81,24-26. 防災科学技術研究所 (2003) 富士山の低周波地震と傾斜変動(2002 年 5 月~2002 年 10 月),火山噴火予知連絡会会報,83,35-36. 防災科学技術研究所 (2003) 富士山の低周波地震活動と傾斜変動(2002 年 10 月~ 2003 年 1 月),火山噴火予知連絡会会報,84,13-14. 気象研究所・防災科学技術研究所(2005) 富士山の浅部地震活動―2002 年~2004 年-, 火山噴火予知連絡会会報,89,59-61. 防災科学技術研究所 (2005) 富士山の地震活動・地殻変動,火山噴火予知連絡会会 報,90,54-58. (その他の主な報告書等) 藤原健治・高木朗充・鵜川元雄・酒井慎一(2002)富士山周辺の地震活動-1995~2001 -,月刊地球,号外 39 号,57-63. 鵜川元雄 (2003) 富士山の低周波地震,地質ニュース,590,40-43. 鵜川元雄 (2004) 富士山の低周波地震,月刊地球,号外 48,67-71. 中道治久・鵜川元雄・酒井慎一 (2004) 富士山の深部低周波地震の精密震源決定,月刊 地球,号外 48,72-75.
資料・データ 実施機関:防災科学技術研究所 対象火山:富士山 事項:①既設の富士火山活動観測網に、観測井を用いた地震・傾斜観測点を富士山中腹に増 設し、火山活動と地震活動・地殻変動の関連についての研究、低周波地震の発生機構につい ての研究及び富士山の地震波速度構造についての研究を推進する。 (1) 中腹観測施設建設完了 防災科学技術研究所の富士山 周辺観測施設配置(左図)、 2002 年と 2003 年に設置した 富 士 山山 麓 観測 施設 位置 図 (中図)、富士山南腹に設置さ れた観測施設の外観(右図)。 (2) 観測施設強化後の観測状況。(右図)傾斜変動、(左図)地震活動。
(3) 低周波地震の活動状況 1980 年以降の低周波地震活 動の積算数と積算概算波動エ ネルギー。2001 年 6 月以降は 活動活発化以前のレベルに戻 った。 (4) 低周波地震震源再決定結果 (a) 防災科学技術研究所の データによる震源再決定。 1987 年から 2001 年 5 月ま での期間に観測された低周 波地震の中で精度の良い読 取り値を選択した震源決定 結果。山頂北東部を中心に、 山 頂 の 南 側 に も 分 布 。 (Ukawa,2005) (b) 防災科学技術研究所と東大地震研 究所、気象庁のデータを併合した震源 再決定結果。 1998 年から 2003 年の低周波地震につ いて 3 機関(防災科研、地震研、気象 庁)のデータを併合し、精度の良い80 地震の震源を再決定した。北西-南東 の 配 列 が 明 瞭 ( Nakamichi et al., 2005)。
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:防災科学技術研究所 事項: ②富士山において火山専用空中赤外映像装置による温度観測を実施し、大学の集中総 合観測等と併せて、富士山の活動評価の基礎資料を得る。 1.実施状況 火山専用空中赤外映像装置を用いて、2001 年 9 月 21 日と 2003 年 10 月 24 日に富士山 山体の温度観測を実施した。2001 年 9 月 12 日は山頂火口を南北に横切る飛行コース、 2003 年 10 月 24 日は噴気発生が報告されていた富士山の東北東山麓を対象に飛行コース を設定した。 2.具体的成果 (1)2001 年 9 月 12 日の観 測結果 山頂 周辺の地表面 温度は ほぼ 0℃~ 40℃の範 囲で、相 対的に山体 の北東斜面 の地 表面温度が高 い。これは、日射に よって 地表面温度が 上昇し たためと考え られ る。観測範囲 におい て日射の影響 と明瞭 に区別できる ような 地表面温度の 上昇 領域は確認で きなか った。 (2) 2003 年 10 月 24 日の観測結果 噴気 や陥没と関連 する温 度異常域は検 出でき なかった。噴 気およ び陥没が確 認 さ れ た 範 囲 の 温度は 14℃ で あ っ た 。噴 気 ・ 陥 没 確 認 範囲で は 林 道 沿 い に 温 度分 布の高低が確 認でき るが、この温度分布 の高低は,日射の影 響による地表 面温 度上昇と区別 ができ ない程度の温 度差で ある。 3.今後の課題と展望 富士山では過去に噴気や温度異常が観測された時期があり、今後も数年程度の間隔で、 できるだけ広域の温度観測を行い、基礎データを整備する必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:防災科学技術研究所 事項: ②富士山において火山専用空中赤外映像装置による温度観測を実施し,大学の集中総 合観測等と併せて,富士山の活動評価の基礎資料を得る。 (査読誌) なし (火山噴火予知連絡会会報) 防災科学技術研究所 (2004) 火山専用空中赤外映像装置による富士山東北東山麓の 表面温度観測結果,火山噴火予知連絡会会報,86,45-46.
資料・データ 実施機関:防災科学技術研究所 対象火山:富士山 事項:②富士山において火山専用空中赤外映像装置による温度観測を実施し、大学の集中 総合観測等と併せて、富士山の活動評価の基礎資料を得る。 (1) 2001 年 9 月 12 日に実施した山頂火口を横切る飛行コースでの観測結果 (2) 2003 年 10 月 24 日に実施した山頂火口を横切る飛行コースでの観測結果 (右図) 温度画像表示範囲(次ページの温度分布図)
(下図)飛行コース FJ03-1C(2003/10/24,対地高度 4,000m)の速報画像データを用い た富士東北東山麓(小富士)付近の合成カラー画像(a),(c),および輝度温度画像(b), (d).画像(c),(d)は(a),(b)に白枠で示した範囲の拡大図.合成カラー画像(a),(c)は, R に band4(1.55~1.75μm), G に band3 (0.8~1.1μm) , B に band2 (0.6~0.7μm) を使用.植生は緑色,裸地(岩石,降灰域)は青色~青紫色に発色.画像の 1pixel は 約 9m.なお 15 度の偏流の影響のため画像には歪みがある.
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:防災科学技術研究所 事項: ③他機関の研究者の協力も得て、所有するボーリングコアを解析し、噴火活動史解明 の研究を行う。 1.実施状況 富士山の噴火史を解明するため、平成 14 年度から 16 年度にかけて主として防災科学 技術研究所の富士第 5 及び富士第 6 火山活動観測施設で得られた深度 200m までの岩石 コア試料の岩石学的、層序学的特徴を検討するとともに火山噴出物間に堆積している有 機物を含む土壌について年代測定を行った。 2.具体的成果 (1)富士第5火山活動観測施設(山梨県側、標高約 2100m 地点)で得られた岩石コア 試料及び掘削地点周辺調査の結果、本掘削地点は約 3200 年前に伊豆天城山から降 灰したカワゴ平軽石に覆われる新富士火山中期のスコリア丘の一部にあたること が明らかとなった。また、ボーリングコアについては、(a)地表から 25mまでこ のスコリア丘を構成する粗粒スコリアからなること、(b)その下位約 100mまでは スラッシュフロー堆積物や火砕流堆積物と思われる未固結堆積物よりなること、 (c)100~200mまでは 10 層の溶岩流よりなり、これらの溶岩はその岩石学的特 徴より新富士火山旧期溶岩である可能性が高いこと、などが明らかとなった。 (2)富士第6火山活動観測施設(静岡県側、標高約 2000m 地点)で得られたコア試料 調査の結果、深度 46m までは溶岩とスコリア質砂礫層の互層、深度 46~104m は火 砕流堆積物を含むスコリア質砂礫層、深度 104~200m は溶結したスコリア層を含 む溶岩の互層からなること、深度 6m 付近が約 3640 年前、55m 付近が約 4430 年前、 深度 88m 付近が約 7070 年前であることが明らかになった。これにより 46m 以浅は 主として新富士火山の中期溶岩、104m 以深は新富士火山の旧期溶岩からなり、一 部は古富士火山の溶岩に属する可能性が高いことが明確になった。 3.今後の課題と展望 (1)山梨県側と静岡県側の岩石コア試料の比較検討が必要。 (2)従来資料が乏しかった富士山の標高 2000m以上の地域における噴出物の分布や層 序の研究に重要な資料となることが期待できる。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:防災科学技術研究所 事項: ③他機関の研究者の協力も得て、所有するボーリングコアを解析し、噴火活動史解明 の研究を行う。 (査読誌) なし (火山噴火予知連絡会会報) なし (その他の報告等) なし
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:産業技術総合研究所 事項: ①富士山南西部について5万分の1地質図幅「富士宮」を作成するとともに、北西部 の「富士山」作成に着手し、噴火活動史に関する研究を実施する。さらに大学と連 携し、山体北部を中心にトレンチ等による噴出物調査を実施する。 1.実施内容 5万分の1地質図幅「富士宮」(平 11-15)および「富士山」(平 13-17)の調査をお こなった。さらに、山体南部・北部を中心にトレンチによる噴出物調査を実施した(平 13-15)。また、山頂火口壁、宝永火口壁、大沢源頭部で、集中的な地質調査も行われた (平 13-17)。 2.具体的成果 噴火史の再編:富士火山の噴火史を、150 試料以上の炭素同位体年代測定とテフラ層 序により、より定量的に再編成した。従来の古富士と新富士という新旧二分法による層 序ではなく、下位から星山期(BC15000 年以前)、富士宮期(BC15000-6000 年)、須走期 (BC6000 以降)というように提案した。山腹噴火口近傍のトレンチ調査により、山腹噴火 の分布域や噴火の爆発性の時間変化が、特に、BC1500 年以降について、定量的に明らか となった。 山頂噴火:爆発的噴火を山頂で繰り返した BC1500-300 年頃の噴火履歴を、火口壁の 調査ではじめて明らかにした。この期間に山頂では、爆発的的噴火以外に、非爆発的噴 火や溶岩湖の存在も認められた。BC300 年以降、山頂で大きな噴火は起こっていない。 割れ目噴火:人口集中域での低標高火口の分布が明らかとなった。最も遠方の火口は、 山頂から 13.5km の距離である。BC200 年以降の山腹噴火の時期では、噴火年代、噴火位 置が高精度で決定された。神津島 838 年噴火起源のテフラとの関係も重要な鍵となった。 新たに発見された溶岩も数個ある。 AD700 年-1000 年頃は、割れ目噴火が頻発した。割 れ目火口列の方位も、AD850 年頃を境に、北西—南東方向から、南北にシフトした。南北 同時噴火の可能性も指摘した。宝永噴火以前で一番新しい溶岩の年代は、平安後期の AD1050-1200 頃である。 山体崩壊と火砕流:新たに記載された BC18000 年頃の田貫湖岩屑なだれを始めとした、 山体崩壊堆積物が再認識された。発生のトリガーとして地震との関連も指摘された。富 士火山西部で玄武岩質の火砕流の年代値と分布の特徴が明らかとなった。急斜面で降下 火砕物が安定に堆積しなかったのが火砕流の原因と考えられる。
3.今後の課題・展望
富士火山は変化の激しい火山である。噴火規模、噴火間隔、噴火様式に様々なバリエ ーションがある。これらをどのように定量的に評価するのかこれからの課題である。こ れまでの噴火履歴の中で宝永噴火の位置づけが必要であろう。テクトニクスの面から、 富士火山はプレート境界にあり、広域的な変動との物理的関係も考慮する必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:産業技術総合研究所 事項: ①富士山南西部について5万分の1地質図幅「富士宮」を作成するとともに、北西部 の「富士山」作成に着手し、噴火活動史に関する研究を実施する。さらに大学と連 携し、山体北部を中心にトレンチ等による噴出物調査を実施する。 中野俊,石塚吉浩(2002) 富士火山地質図(CD-ROM)(津屋(1968)の数値地質図)地 質調査総合センター. 山元孝広,高田亮,石塚吉浩,中野俊(2005)放射性炭素年代測定による富士火山噴出 物の再編年.火山,50, 53-70.
Yamamoto, T., Takada, A., Ishizuka, Y., Miyaji, N., Tajima, Y. (2005) Basaltic pyroclastic flows of Fuji volcano, Japan: characteristics of the deposits and their origin,Bull. Volcanol. 67, 622-633.
S. Togashi, N. T. Kita, A. Tomiya, Y. Morishita, N. Imai, MeltContribution to Partitioning of Trace Element between Trace Element and Basaltic Magma of Fuji Volcano, Japan, (2003)Applied Surface Science,203-204C,814-817.
宮地直道、遠藤邦彦、富樫茂子、田島靖久、小森次郎、橘川貴史、千葉達朗、鵜川元雄 (2001)富士山広見観測井のボーリングコアの層序と岩石化学的特徴, 防災科研報 告、61,31-47, 2001
宮地直道、富樫 茂子、千葉達朗(2004)富士火山東斜面で 2900 年前に発生した山体崩 壊、火山、49,237-248.
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:産業技術総合研究所 事項: ②富士山体の地下構造を解析するために、重力の測定を行い、その構造解析を行うと ともに、富士山のように高い火山体における空中磁気探査及び電気探査手法を開発 する。 1.実施状況 重力測定については、1999-2003 年度に追加調査を実施した。調査は、富士山中腹部 から山頂部の主に登山道が未整備な地域において、ディファレンシャル GPS による位置 決定を行い、200 点ほどの測定を行った。 空中磁気探査については、ヘリコプターを用いた、急峻かつ高標高の山岳地域でも調 査飛行可能な高分解能空中磁気探査システムを構築した。検証調査飛行の後、2003 年 5 月、8~9 月に富士山頂を含む東西 12km、南北 14km の範囲で、対地高度 150m、主測線間 隔 200m の高分解能空中磁気探査を実施した。 2.具体的成果 重力調査においては、既存点も含めたデータの編集を行い精緻なブーゲー異常図を作 成し、重力基盤構造の計算の結果、富士山が基盤構造の高まり位置することを示した。 また残差重力図の作成の結果、集中した岩脈などの伏在を示唆する局所的高重力異常が 小富士などの各所で分布することがわかった。 空中磁気探査においては、富士山での高分解能探査飛行に成功し、富士山同様の急 峻・高標高な国内火山での高分解能空中磁気探査を可能とした。調査の結果、高分解能 空中磁気異常図を作成し、大局的な地形の起伏に対応した磁気異常に重畳して、溶岩流 や火口列に対応して局所的な磁気異常が分布することを示すとともに、東斜面等におい て、伏在する磁気構造に対応すると考えられる磁気異常が分布することを示した。 3.課題と今後の展望 重力調査においては、補足調査、重力の緻密構造解析を取り込んだ論文化及びデータ の公表を予定している。 空中磁気探査においては、岩石磁気の測定と、この結果を踏まえた磁気異常の解析・ 解釈を行い、論文等での公表を予定している。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:産業技術総合研究所 事項: ②富士山体の地下構造を解析するために、重力の測定を行い、その構造解析を行うと ともに、富士山のように高い火山体における空中磁気探査及び電気探査手法を開発 する。 中塚 正・大熊茂雄(2005)スティンガー式ヘリコプター磁気探査システムの開発とそ の磁気センサーに対する機体磁気補償,物理探査,vol.58,no.5(印刷中).
富士山の重力基盤(駒澤,2003)
コンター間隔:250m。富士山の西側は崖のように基盤が低く(深く)なり、密度の小さ い堆積物で埋められ、溶岩の噴出源は存在しないことが明らかである。
富士火山地域高分解能空中磁気図(大熊ほか,2004) コンター間隔:200nT。細い実線は航跡を示す。登攀飛行能力に優れたヘリコプターを 用いて、対地高度 150m、主測線間隔 200m の高分解能空中磁気探査(2003 年 5 月、8~9 月)を実施し、作成。富士山の大局的な地形起伏に対応した磁気異常に重畳して、溶岩 流や火口列に対応した磁気異常が分布し、また東斜面等に山体の磁気的不均質性を示唆 する磁気異常が認められている。
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:産業技術総合研究所 事項:③既設GPS観測点による山体変動観測を継続し、テレメータ化を図る。 1.実施状況 GPS 連続測定の観測点は、南東斜面に 4 点(太郎坊:TRB、粟倉:AWK、御殿場口六合目: GST、富士宮口新五合目:FMF)、北西斜面に 4 点(小御岳:KMT、スバルライン四合目:SLF、 剣丸尾:KMB、富士ケ嶺:FGN)、及び東斜面(須走口五合目:SBF)に 1 点の計 9 点である。 このうち、GST を除く 8 点には、公衆電話回線を通じたデータ転送装置を、GST 点には、専 用波無線によるデータ転送をそれぞれ設置した。GST 点で取得したデータは、専用波無線 により、富士山測候所御殿場基地事務所に転送され、さらに、気象庁本庁に専用電話回線 により送られた後、インターネットによりつくばの産業技術総合研究所に転送されるシス テムとした。 2.具体的成果 自動転送システムにより、改修などによる一部の欠側期間を除き、連続観測データの取 得が可能となった。データ取得期間内においては、季節変化のほかには、顕著な距離の変 化は認められない。 3.今後の展望と課題 今後とも観測を継続的に実施する計画である。
< 富士山論文リスト >
実施機関名:産業技術総合研究所
事項:③既設GPS観測点による山体変動観測を継続し、テレメータ化を図る。
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:国土地理院 事項: ①富士山の地殻変動監視のため、GPS連続機動観測点の整備を行い、観測を強化す る。また、水準測量、重力測量、光波測距等の地殻変動観測及び地磁気観測を実施 する。 1.実施状況 GPS機動連続観測点による連続監視の実施 3ヶ所 ・「M上吉田」:山梨県富士吉田市上吉田(平成13年7月~) ・「M富士御庭」:山梨県南都留郡鳴沢村(平成13年12月~) ・「T上九一色」:山梨県西八代郡上九一色村(平成13年3月~平成15年10月) 富士山山頂に電子基準点を設置 ・富士山山頂に「富士山」を設置した。(平成14年9月) 水準測量の実施 ・富士山周辺において水準測量 180km を実施した。(平成13年6月~7月) 全磁力連続観測の実施 ・富士吉田市上吉田に全磁力連続観測装置を設置した。(平成13年11月) ・富士吉田の観測点を補完するため南方約 18km の富士市丸火公園内に全磁力連続観測 装置を設置した。(平成16年11月) 2.具体的成果 ・富士山周辺の電子基準点及びGPS機動連続観測点により、富士山周辺の地殻変動を 連続的に監視する体制を実現した。 ・水準測量の結果から、富士山周辺の広域的な地殻変動量を検出した。 ・富士吉田観測点で地磁気の変化を監視する体制を実現した。また、2002年1月分 よりインターネットを通じて一般に公開している。 3.課題と今後の展望 富士吉田に設置した全磁力連続観測装置は全磁力検出器、制御装置、通信装置、ソー ラーパネルによる自家発電装置で構成している。冬期間は積雪により点検保守が困難な 状況でさらに、観測に必要な電力が不足し全磁力毎分値データの取得ができない場合が ある。冬期間における電力供給の強化等が課題である。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:国土地理院 事項: ①富士山の地殻変動監視のため、GPS連続機動観測点の整備を行い、観測を強 化する。また、水準測量、重力測量、光波測距等の地殻変動観測及び地磁気観 測を実施する。 なし
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:国土地理院 事項: ②富士山の観測研究、ハザードマップ等の基礎資料として、富士山の火山基本図及び 火山土地条件図の整備を行う。 1.実施状況 ・富士山の観測研究、ハザードマップ等の基礎資料とするため平成 14 年に 1:10,000 火 山基本図「富士山」、平成 15 年に火山土地条件図「富士山」の整備を行った。 2.具体的成果 ・1:10,000 火山基本図「富士山(富士山頂)」、「富士山(宝永山)、「富士山(御庭)」、 「富士山(白塚・桧塚)」の4面 ・10mメッシュ火山標高データ ・1:50,000 火山土地条件図「富士山」1 面 3.課題と今後の展望 ハザードマップ作成などの防災対策や観測・研究等に必要な基礎資料として、また、 火山の恵みと共生するための地理情報として、教育・観光・文化の振興の基礎情報とし て利用できるよう啓発活動を続ける。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:国土地理院 事項: ②富士山の観測研究、ハザードマップ等の基礎資料として、富士山の火山基本図及び 火山土地条件図の整備を行う。 市川清次・佐藤宗一郎(2003):ハザードマップ基礎資料としての火山土地条件図「富 士山」、測量、Vol.53,No.8,p53-56. 国土地理院地理調査部(2003):火山土地条件図「富士山」を 11 月 15 日に刊行、地図 ニュース、No.373、p2-6. 国土地理院防災地理課火山調査係:火山土地条件図「富士山」を 11 月 15 日に刊行、地 図の友、Vol.45,No.12,p2-6. 国土地理院地理調査部(2004):火山土地条件図「富士山」-火山地形などの分布を 多様な色で表現-、No.143,p4-7.
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:国土地理院 事項: ③GPS観測等により得られたデータを基に、富士山周辺のテクトニクスに関する研 究を行う。 1.実施状況 新たに富士山の中腹に設置された GPS 観測点と別途整備された山頂観測点および従来 からの観測点も併用し富士山周辺の地殻変動を詳細に解析した。さらに、GPS データを 用いフィリピン海プレートと陸側プレート間のカップリング分布を推定し富士山周囲 のテクトニクスを解析した。 2.具体的成果 現在のところ富士山周辺では山体部分を含めて、観測誤差を超える有意な地殻変動が みられないことがわかった。さらに、プレート沈み込みによるテクトニックな変動を除 去して詳細に地殻変動を分析したが、それでも富士山固有の変動が見られないことがわ かった。このことから、現時点では、マグマ蓄積が進行しているとしても大きいもので はないと結論される。さらに、GPS データを用いフィリピン海プレートと陸側プレート 間のカップリング分布を推定した。その結果、富士山の下ではプレートは固着していな いことが示され、より深部から供給される熱によりプレート境界の温度が周囲より高い ことがその原因の一つである可能性があることがわかった。 3.課題と今後の展望 実施した研究において、富士山周辺を含み伊豆半島北部では、カップリングの分布が 見られないことは極めて重要な結果である。このことは、この領域ではフィリピン海プ レートが抵抗なく深部へ潜り込んでいることを意味している。潜り込むフィリピン海プ レートが伊豆半島北部から北西にかけて裂けており、その裂け目から上昇しやすくなっ た高温物質の供給を受けて富士山が短期間に成長したとする高橋(2000)によるモデル と整合的な結果である。また、三浦半島など相模湾側と、御前崎など駿河湾側では、バ ックスリップの方向が伊豆半島を挟んで開いて分布しているようにも見え、今後詳細な 検討が必要であるが、プレートが伊豆半島の地下で東西方向に裂けつつあることの証拠 であるかもしれない。これらを確定するためにさらに観測の継続及び注意深い解析が必 要である。また、富士山周辺に現在大きな歪蓄積が見られないことは、北西南東に並ぶ 側火山の配列の原因として従来考えられてきた広域応力場の寄与についても再考を擁 するかもしれない。これについても他の観測などと比較対照しながら議論の深化が必要 である。
なお、本研究期間中には富士山へのマグマ供給は見られなかったが、多くの火山にお いて地殻変動は間歇的に現れることが経験されており、富士火山のマグマ供給システム の理解をさらに深め、火山活動の動静を監視するため、今回構築した施設による観測を 継続し、より詳細な解析を今後も継続して行う必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:国土地理院 事項: ③GPS観測等により得られたデータを基に、富士山周辺のテクトニクスに関す る研究を行う。 村上 亮 (2004) GPS 連続観測による富士山周辺の地殻変動 -測地学的手法による 富士山のマグマ蓄積過程の解明の試み -、月刊地球,号外 48,48-55.
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:気象庁 事項: ①火山機動観測の一環として、富士山の中腹域以上での地震観測を強化し、浅部の火 山性地震の検知能力を向上させるとともに、中腹域以上で地殻変動観測を新たに開 始する。 ②以上のデータに加え、大学、防災科学技術研究所、国土地理院等からのデータ提供 を受け、これらのデータを火山監視・情報センターで集中監視し、火山活動監視能 力の強化を図る。 1.実施状況 気象庁は、富士山山頂において 1987 年以来短周期地震計による観測を継続している が、2002 年秋から、富士山山頂、御殿場口 7.8 合目、吉田口 6 合目、富士林道終点の 4 カ所に広帯域地震計を設置し観測を開始した。これらのうち、富士山山頂及び御殿場口 7.8 合目の 2 観測点のデータは気象庁本庁の火山監視・情報センターにテレメータして 富士山の浅部地震活動を監視するともに、他の 2 観測点については、現地収録方式で観 測している。 また、富士山山頂及び御殿場口 7.8 合目の 2 観測点については、山頂での地殻変動観 測のため、GPS も設置し、データを火山監視・情報センターにテレメータして監視して いる。 以上のデータに加え、大学、防災科学技術研究所からの地震波形データ・傾斜観測デ ータのリアルタイム提供を受け、火山監視・情報センターでの集中監視を行っている。 これら以外の研究機関等のデータについては、火山噴火予知連絡会を通じて観測結果 の提供を受けている。 また、2001 年から 2003 年まで富士山の地磁気特性等の観測環境の調査観測を実施し た。 2.具体的成果 山頂から中腹にかけての地震観測網を強化したことで、これまで同定が困難だった山 体浅部の地震を捉えることができるようになった。特にノイズと識別が困難だった小さ な地震が複数観測点で捉えることで検出可能になり、富士山浅部の地震の存在が改めて 確認された。 山頂観測点で S-P(初期微動継続時間)が3秒以下の浅部地震はいずれも高周波地震 であったが、最大でも 1 カ月当たり5回程度しか発生しておらず、活動は低調だった。 S-P が3秒以下の範囲では S-P に依存した発生頻度の高低はみられず、特定の深さへの 震源の集中はないとみられる。S-P が1秒より短い地震もあり、海抜0mより浅部でも
地震が発生していることがわかった。 富士山には、冬季に山頂部だけで観測される微小な地震が存在する。これまで詳細が わかっていなかったが、防災科学技術研究所と共同で解析を行った結果、これらは富士 山頂直下の極めて浅い限られた場所で発生するものであり、マグニチュードは 0.0 程度、 山頂の気温が短時間に 10℃以上低下し-20℃以下になった時に多発することや、山頂直 下の標高 3000m付近に震源があることが明らかになった。 富士山山頂、御殿場口 7.8 合目における GPS 地殻変動観測では、特段の変化は観測さ れていない。 地磁気観測のため、富士山南東部で、地磁気 3 成分(南北、東西、鉛直)の雑音レベ ル、全磁力による磁場傾度測定を行った。また、太郎坊と宝永火口南西の 2 点で全磁力 連続観測を実施し、富士宮口新 5 合目から宝永山周辺の 11 点で全磁力繰り返し観測を 実施した。富士山南東部における地磁気の雑音環境は良好であるが、全磁力の磁場傾度 はかなり大きく、また強さ(絶対値)も場所によってかなり違うことがわかった。 3.課題と今後の展望 現在、富士山の浅部地震活動は低調であるとみられるが、火山活動の変化を把握する ために、今後も地震観測データの蓄積と調査を進める必要がある。また、現地収録で観 測を行っている 2 地震観測点については、データはテレメータされておらず、ノイズの 大きい観測点の移設を含め、今後テレメータ化を進める必要がある。 富士山は高山という特殊な環境にある。今回の観測を通じて、低温環境下での観測の 安定運用に必要な種種のノウハウの蓄積がなされつつあるものの、雷災等による欠測も 多い。今後も安定稼働のための様々な工夫を行う必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:気象庁 事項: ①火山機動観測の一環として、富士山の中腹域以上での地震観測を強化し、浅部の火 山性地震の検知能力を向上させるとともに、中腹域以上で地殻変動観測を新たに開 始する。 ②以上のデータに加え、大学、防災科学技術研究所、国土地理院等からのデータ提供 を受け、これらのデータを火山監視・情報センターで集中監視し、火山活動監視能 力の強化を図る。 (査読なし) 藤原健治,高木朗充,鵜川元雄,酒井慎一(2002) 富士山周辺の地震活動-1995~2001 -,月刊地球,号外 No.39,57-63. 藤原健治,高木朗充,山本哲也,福井敬一,坂井孝行(2004) 富士山の浅部地震活動, 月刊地球, 号外 No.48, 62-66. 藤原健治,高木朗充,山本哲也,福井敬一,坂井孝行(2004) 浅部地震活動の研究,富 士火山の活動の総合的研究と情報の高度化(成果報告書),18-25.
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:気象庁 事項:③富士山ワーキンググループの検討結果を踏まえ、火山情報の高度化を図る。 1.実施状況 火山噴火予知連絡会富士山ワーキンググループでの検討結果を踏まえて、富士山の火 山活動に異常があった場合の火山情報発表の考え方をとりまとめた。また、防災機関や 報道機関、有識者へのアンケート調査から、気象庁の火山情報の問題点を整理し、社会 的影響の大きい富士山における火山情報のあり方を考察した。 2.具体的成果 富士山ワーキンググループで検討された宝永噴火の噴火シナリオを想定して、活動の 各段階で気象庁がどのような火山情報を発表するかを検討し、その結果を富士山ハザー ドマップ検討委員会に提供した。委員会には気象庁も事務局として参加し、火山防災マ ップの作成や防災計画の基本的考え方がとりまとめられた。 防災機関や報道機関、有識者へのアンケート調査を通じて、気象庁の火山情報の問題 点として「わかりやすさ」が最も求められていることが明らかとなった。また、富士山 の火山活動が活発化したことを想定した火山情報の内容、表現方法、発表タイミング等 についてのアンケートを行った。活動が活発化していくほど、噴火等の火山活動の状況 のより詳細な情報や防災行動に役立つ具体的な記述が望まれていることがわかった。 3.課題と今後の展望 富士山においては、宝永噴火シナリオを軸に、火山活動が高まっていく中での気象庁 の火山情報と防災対応との関係が、防災機関との協同作業としてとりまとめられた。 今後もわかりやすく防災に役立つ火山情報の内容や表現方法、発表方法について検討 を進めるとともに、富士山についても、火山活動度レベルの導入を進める必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:気象庁 事項:③富士山ワーキンググループの検討結果を踏まえ、火山情報の高度化を図る。 (査読付き論文) 林 豊・山里 平・新井伸夫(2004) 地方自治体と報道機関の視点による火山情報の 問題点.災害情報,2,62-70. (査読なし) 気象庁(2003) 火山噴火予知連絡会富士山ワーキンググループ報告書.48p. 富士山ハザードマップ検討委員会(2004) 富士山ハザードマップ検討委員会報告書. 240p. 山里 平・林 豊・白土正明・新井伸夫・工藤泰子(2004) 気象庁の富士山情報の今 後-富士山における火山情報はどうあるべきか-.月刊地球,号外 48,199-204. 山里 平・林 豊・白土正明(2004) 活動情報の高度化の研究,富士火山の活動の総合 的研究と情報の高度化(成果報告書),106-117.
≪ 富 士 山 調 査 ≫ 実施機関名:火山噴火予知連絡会 事項: ①関係機関の研究成果に関する情報収集を行い、それを基に富士山の火山活動につい ての総合評価を行う。 ②富士山ワーキンググループにおいて、富士山の過去の噴火資料等の収集・整理、そ れに基づく噴火様式や規模等の推定、監視のあり方及び火山情報についての検討を 行う。 ③関係機関相互の連携のため、富士山の観測研究に関する情報交換を行う。 1.実施状況 年 3 回の定例会議において、関係機関の研究成果に関する情報収集を行い、それを基 に富士山の火山活動についての総合評価を行い、その結果を発表した。また、定例会議 以外でも、火山噴火予知連絡会 WEB 等を通じて、富士山の観測研究に関する関係機関相 互の情報交換を行った。 富士山ワーキンググループにおいて、富士山の過去の噴火資料等の収集・整理、それ に基づく噴火様式や規模等の推定、監視のあり方及び火山情報についての検討を行った。 2.具体的成果 平成 12 年~13 年にかけての富士山の深部低周波地震の多発に際しては、平成 13 年 5 月 28 日、第 89 回本会議において、「ただちに噴火等、活発な火山活動に結びつくもの ではないと考えられる」との総合評価結果を公表した。 富士山ワーキンググループにおいて、富士山の過去の噴火資料等の収集・整理、それ に基づく噴火様式や規模等の推定、監視のあり方及び火山情報についての検討を行い、 その成果は富士山ハザードマップ検討委員会に提出され、火山防災マップの作成や防災 計画の策定に生かされた。 3.課題と今後の展望 富士山ワーキンググループにおいて検討された監視体制について、今後も関係機関が 連携して強化していく必要がある。
< 富士山論文リスト > 実施機関名:火山噴火予知連絡会 事項: ①関係機関の研究成果に関する情報収集を行い、それを基に富士山の火山活動につい ての総合評価を行う。 ②富士山ワーキンググループにおいて、富士山の過去の噴火資料等の収集・整理、そ れに基づく噴火様式や規模等の推定、監視のあり方及び火山情報についての検討を 行う。 ③関係機関相互の連携のため、富士山の観測研究に関する情報交換を行う。 (査読なし) 気象庁(2003) 火山噴火予知連絡会富士山ワーキンググループ報告書.48p.