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中国地方の地震基盤記録から導出した統計的グリーン関数に関する研究 [ PDF

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15-1

中国地方の地震基盤記録から導出した統計的グリーン関数に関する研究

高田 将輝 1. はじめに 地震動の予測手法の一つとして用いられる統計的 グリーン関数法(Boore, 19831))では、地震基盤におけ る小地震の模擬地震波形を作成し、それをグリーン関 数(統計的グリーン関数)と見なして、断層面の破壊 性状に応じて重ね合わせることで大地震時の地震動を 推定する。しかし模擬地震波形作成が、地震基盤より 浅い地盤において行われている場合も多い。これは深 部地盤の情報が多く得られていない事が一因である。 本論文では、別途推定された中国地方の地下構造モ デル(真鍋・他、20122))を用いて、防災科学技術研究 所の強震観測網 K-NET、KiK-net の地震記録から地震 基盤における地震動を推定し、これから抽出した振幅 特性と経時特性を用いてグリーン関数を作成する。ま た、2000 年鳥取県西部地震と 2001 年芸予地震の強震 動シミュレーションを行い、作成したグリーン関数の 有用性を検討する。 2. 統計的グリーン関数の作成 2.1. 解析データ 解析には、1997 年 1 月から 2015 年 8 月までの K-NET、KiK-net データのうち、震央距離が 300 km 以内、 震源深さ(D)が 100 km 以浅、最大加速度が 200 gal 以 下、同一地震トリガー地点数が 10 以上を満たし、F-net データのうち、モーメントマグニチュード(Mw)が 3.5≦Mw≦5.8 を満たすデータを用いた。 この結果、抽出されたデータは 235 地震、加速度波 形 9446×2 データ(NS 成分、EW 成分)である。解析 に用いた地震の震央位置を図 1 に示す。地震タイプは 図 1 解析に用いた地震の震央位置 地殻内地震、プレート境界地震、スラブ内地震の 3 つ に分類した。観測点は、中国地方の K-NET(83 地点)、 KiK-net(72 地点)の観測点 155 地点である。 本研究では、真鍋・他(2012)による地下構造モデ ルを用いた 1 次元重複反射理論から地震基盤以浅の地 盤の影響を取り除き、地震基盤波を推定した。 2.2. 統計的経時特性 経時特性は Boore (1983)の包絡線関数 W(t)でモデル 化し、地震基盤波からそれを規定するパラメータの抽 出を行う。Boore のモデルは、継続時間 Td、振幅が最 大となるまでの時間 Trの Tdに対する比ε(= Tr / Td)、時 刻 Tdにおける振幅の最大振幅に対する比η(=時刻 Tdに おける振幅/最大振幅)で規定される。まず、S 波の初 動を目視で読み取り、観測記録の最大値を 1 に基準化 する。次に、Parzen Window を用いてバンド幅 Tw = 0.5 (sec)で平滑化する。この際 KiK-net のデータについて は 0.01 秒にリサンプリングしている。その観測記録の Trを読み取った後、η = 1/10 で固定、ε の最適解を二段 階で探索した。Tdは Trε から算出した(Td = Tr /ε)スラブ内地震における同定した Trと Mw、震源距離 (X)、D、火山フロントから観測点までの最短距離(Xvf) の関係と近似直線を図 2 に示す。全地震タイプにおい て Trと Mw、X、D との間に相関関係が見て取れる。ま たスラブ内地震においては、フィリピン海プレート内 部を伝播する事による異常震域現象の影響 3)で、Tr Xvfにも僅かながら相関関係が見られる。Tdも同様の関 係を示している。そこで本研究では、Tr、Tdの推定式 を地殻内、プレート境界地震は Mw、X、D で回帰分析 により式(1)を、スラブ内地震は Xvfも加えた回帰分析 により式(2)を導出した。係数を表 1 に示す。 e D c M b X a T Tr, d  log   w   log (1) e X d D c M b X a T Tr, d  log   w    vf log (2) 表 1 推定式の係数表 a b c d e Tr 0.7635 0.1702 -0.0058 - -2.1323 Td 0.4297 0.0903 -0.0072 - -0.2044 Tr 2.0031 0.0957 -0.0102 - -3.9522 Td 1.1638 0.0501 -0.0067 - -1.3984 Tr 1.1936 0.0270 -0.0051 0.0013 -2.3046 Td 0.7839 0.0455 -0.0035 0.0008 -0.7857 プレート境界 スラブ内 地殻内

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15-2 既往研究4)~8)と全体誤差allの比較により、得られた 推定式の妥当性を検討する。allは以下の式(3)より計 算した。

 1 (logobs logpre)2 n all  (3) 算出された結果のうち、地殻内地震の結果を図 3 に示 す。他の既往研究と比較してallが最も小さく、観測記 録にフィットした包絡曲線が推定出来ている事が分か る。他の 2 つの地震タイプでも同様の結果が得られた。 2.3. 統計的振幅特性 振幅特性は Kanno et al. (2006)9)の地震動予測式(以 下、Kanno 式)に本研究で求めた補正項を加えた式を 用いて表現する。Kanno 式は、以下の式(4)、(5)で表現 され、Mw≧5.5 を対象としている。 1 5 . 0 1 1 1 log( 10 ) logpre aM bX X d Mw c w       ) 30 (Dkm (4) 2 2 2 log( ) logpreaMwbXXc ) 30 (Dkm (5) こ こ で 、 pre は 減 衰 5 % の 加 速 度 応 答 ス ペ ク ト ル (cm/sec2)である。 図 2 Trと各パラメータの関係(スラブ内地震) 図 3 既往研究とのallの比較(地殻内地震) この式による応答スペクトルの予測値と中国地方 の地震基盤波から計算された応答スペクトルとの偏差 を分析し、5 つの補正項を導出した。なお、全ての補 正項において、D=30km で場合分けして検討している。 1 つ目は、中国地方の地域性を反映させる補正項であ る。2 つ目は、中国地方の基盤地震動を推定するため に地盤特性を補正する項である。3 つ目は、Mw≧5.5 を 対象とする Kanno 式の適応範囲を拡大する補正項であ る。これは Mw<5.5 のデータでのみ考慮する。4 つ目 は、D への依存性を補正する項である。5 つ目は、異 常震域現象に対応するための補正項である。これはス ラブ内地震においてのみ考慮する。 補正項を考慮した地震動予測式を以下に示す。D、 Mw、地震タイプによって 6 つに場合分けしている。  D≦30 km、地殻内地震、Mw≧5.5 の場合 1 1 1 log

logprebpreCRCGCD (6)  D≦30 km、地殻内地震、Mw<5.5 の場合 1 1 1 1 log

logprebpreCRCGCMCD (7)  D≦30km、プレート境界地震、Mw≧5.5 の場合

2 2 2 log

logprebpreCRCGCD (8)  D≦30 km、プレート境界地震、Mw<5.5 の場合 2 2 2 2 log

logprebpreCRCGCMCD (9)  D≦30km、スラブ内地震、Mw≧5.5 の場合 Xvf D G R b pre C C C C pre log  222 log (10)  D≦30 km、スラブ内地震、Mw<5.5 の場合 Xvf D M G R b pre C C C C C pre log  2222 log (11) ) 5 . 5 ( 1 1 wM A M C (12) ) 5 . 5 ( 2 2 wM A M C (13) 1 1 1 u D v CD    (14) 2 2 2 u D v CD    (15)       vf Xvf D X C ( ) (16) ここで、prebは地震基盤上の加速度応答スペクトル、 CR1、CR2は中国地方の地域補正項、CG1、CG2は地盤補 正項、CM1、CM2は Mw<5.5 の地震に対応するための補 正項、CD1、CD2は震源特性の補正項、CXvfは異常震域の 補正項、A1、A2、u1、u2、v1、v2、、、は回帰係数を 表す。 図 4 補正項導入前後のallの比較(地殻内地震) Xvf (km) -100 -50 0 50 100 X (km) Tr (s ec ) 10 100 1000 0.01 0.1 1 10 100 Mw 3 4 5 6 D (km) Tr (s ec ) 0 25 50 75 100 0.01 0.1 1 10 100

all Before After Period (sec)

0.1

1

0

0.5

1

1.5

(3)

15-3 Kanno 式への補正項導入の効果を見る為、導入前後 のallを比較した。地殻内地震の結果を図 4 に示す。全 周期において、補正項の導入に伴いallの値が小さくな っている。これは他の地震タイプも同様の結果を示し ており、補正項導入の効果が確認出来た。 2.4. グリーン関数の作成 得られた統計的な経時特性と振幅特性を用いて統 計的グリーン関数を作成する。まず、Mw、X、D、Xvfお よび観測地点を設定し、経時特性を回帰式(1)、(2)から 得られる Tr、Tdを用いて Boore の包絡線関数 W(t)を計 算する。振幅特性は回帰式(6)~(11)から目標スペクト ルを計算する。得られた目標スペクトルと経時特性を 用いて統計的グリーン関数を作成する。 3. 強震動シミュレーション 3.1. 解析方法 対象となる断層面を要素断層に分割し、各要素断層 に対して統計的グリーン関数を求める。さらに、三宅・ 他(1999)10)の手法に従い、各要素断層からの波形を 重ね合わせる。重ね合わせは次の式(17)~(19)のように 表現される。



     NL i NW j ij ij t t Cu t f r r t U 1 1 0 ) ( ) ( ) ( ) ( (17)

                                ' ) 1 ( 1 ( 1) ' ) 1 ( ' ) 1 ( 1 exp )) 1 exp( 1 ( ' 1 ) ( ) ( n ND k N n k t n ND k n t t f    (18) R ij ij ij V r r t      0 (19) ここで U(t)は大地震に対する合成波形、u(t)は要素断層 のグリーン関数より求めた波形、f(t)は大地震と小地震 のすべり速度関数の違いを表現した補正関数である。 C は応力降下量の比であり、今回は 1.0 としている。 3.2. 鳥取県西部地震の強震動シミュレーション 2000 年 10 月 6 日に発生した鳥取県西部地震の強震 動シミュレーションを行う。解析地点は中国地方の K-NET、KiK-net 観測点のうち、観測記録の存在する 135 地点である。震源断層モデルは、堀川・他(2001)11) を参考にした。解析に用いた断層パラメータを表 2 に 示す。図 5 に SMN003 と YMG010 における、推定基盤 波と合成波の加速度波形と応答加速度スペクトルの比 較を示す。加速度波形を見ると、振幅の最大値や包絡 形状は概ね一致しており、観測記録を再現できている。 応答スペクトルを見るとピークの位置など再現しきれ ていないが、おおよその振幅レベルは再現できている。 表 2 震源モデルのパラメータ(鳥取県西部地震) 図 5 推定基盤波と合成波の比較(鳥取県西部地震) また、統計的グリーン関数法では表面波を評価出来な いため、特に後続の表面波成分が顕著な YMG010 では 長周期側で過小評価となっている。 3.3. 芸予地震の強震動シミュレーション 2001 年 3 月 24 日に発生した芸予地震の強震動シミ ュレーションを行う。解析地点は中国地方の K-NET、 KiK-net 観測点のうち、観測記録の存在する 133 地点 である。震源断層モデルは、Yagi and Kikuchi(2001) 12)、森川・他(2002)13)を参考にした。解析に用いた断 層パラメータを表 3 に示す。図 6 に HRS001 と YMG015 における、推定基盤波と合成波の加速度波形と応答加 速度スペクトルの比較を示す。加速度波形を見ると振 幅の最大値や包絡形状は概ね一致しており、観測記録 震源位置 35.269371N,133.356689E Strike、Dip、Slip 145,90,0 震源深さ(km) 7.4 地震モーメント(Nm) 9.6×1018 破壊域の面積(km2 464 1(下部) 2(上部) 面積(km2 28.8 28.8 406.08 重ね合わせ数 (NL×NW×ND) 4×5×4 5×4×4 282×17 上端深さ(km) 5.6 0.8 0.8 地震モーメント(Nm) 1.99×1018 9.90×1017 6.62×1018 破壊伝播速度(km/s) 2.5 3.0 2.5 ライズタイム(s) 0.6 0.6 2.0 アスペリティ 背景領域 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 YMG010 Acc. Time (sec) 0 5 10 15 20 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 SMN003 Acc. Period (sec) 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 YMG010 0.1 1 1 10 A c c e le ra ti o n R e sp o n se ( c m /s 2 ) Period (sec) 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 SMN003 0.1 1 10 100

(4)

15-4 表 3 震源モデルのパラメータ(芸予地震) 図 6 推定基盤波と合成波の比較(芸予地震) を再現できている。応答スペクトルを見ると、おおよ その振幅レベルは再現できており、YMG015 ではピー クの位置、振幅の最大値なども再現できている。 4. まとめ 本研究では、中国地方の地表で観測された地震波形 データから地震基盤波を求めた上で、この地震波から 統計的な経時特性と振幅特性を抽出した。これを用い て統計的グリーン関数を作成し、統計的グリーン関数 法により鳥取県西部地震と芸予地震の強震動シミュレ ーションを行った。得られた知見を以下に示す。  統計的経時特性の推定式は地殻内、プレート境界地 震では Mw、X、D の 3 つ、スラブ内地震ではこれに Xvfも加えた 4 つのパラメータを用いる事で、精度の 高い結果が得られた。  統計的振幅特性の求める際に用いた Kanno 式へ 5 つ の補正項を導入する事で、精度向上が実現した。  得られた統計的グリーン関数を用いた統計的グリ ーン関数法で観測記録は概ね再現できた。 【謝辞】 本研究では防災科学技術研究所の K-NET、KiK-net および F-net の記録を使用した。また、作図の一部に GMT(The Generic Mapping Tools)を使用した。ここに 記して感謝の意を表する。

【参考文献】

1) Boore, D. M.: Stochastic simulation of high-frequency ground motions based on seismological models of the radiated spectra, Bull. Seism. Soc. Am., Vol. 73, pp. 1865-1894, 1983. 2) 真鍋良輔・小谷啓祐・神野達夫:強震記録に基づく地 盤増幅特性を用いた地下構造モデル構築、日本建築 学会大会学術講演梗概集(東海)、pp. 115-116、2012.9. 3) 森川信之・神野達夫・成田章・藤原広行・福島光代: 東北日本の異常震域に対応するための最大振幅お よび応答スペクトルの新たな距離減衰式補正係数、 日本地震工学会論文集、6-1、23-41、2006. 4) 高田将輝:中国地方の地震基盤における地震動の統 計的経時特性に関する研究、九州大学卒業論文、pp. 1-96、2014.3. 5) 村上洋介・野畑有秀・圓幸史朗:近畿地方の硬質地 盤における中小地震の経時特性、日本建築学会大会 学術講演梗概集、pp. 113-114、2002.8. 6) 伊藤茂郎・久原寛之・川瀬博・多賀直恒:K-NET 強 震観測記録を用いた九州地方の統計的地震動特性 その 1. 地震動の統計的経時特性、日本建築学会九 州支部研究報告、第 39 号、pp. 269-272、2000.3. 7) 伊藤茂郎・川瀬博:統計的グリーン関数法による強 震動予測法の検証と仮想福岡地震への適用、日本建 築学会構造系論文集、第 540 号、pp. 57-6、2001.2. 8) 久原寛之・川瀬博:統計的グリーン関数法を用いた 鳥取県西部地震の強震動シミュレーション、日本建 築学会九州支部研究報告、第 40 号、pp. 213-216、 2001.3.

9) Kanno, T., A. Narita, N. Morikawa, H. Fujiwara andY. Fukushima:A New Attention Relation for Strong Ground Motion in Japan Based Data, Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 96, No.3, pp. 879-897, June 2006. 10) 三宅弘恵・岩田知孝・入倉孝次郎:経験的グリーン 関数法を用いた 1997 年 3 月 26 日(MJMA6.5)及び 5 月 13 日(MJMA6.3)鹿児島県北西部地震の強震動シミ ュレーションと震源モデル、地震第 2 輯、第 51 巻、 pp. 431-442、1999. 11) 堀川晴央・関口春子・岩田知孝・杉山雄一:2000 年 鳥取県西部地震の断層モデル、活断層・古地震研究 報告、No.1、pp. 27-40、2001.

12) Yagi, Y. and M. Kikuchi:東京大学地震研究所ホーム ページ、http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/yuji/Aki-nada/、 2001. 13) 森川信之・笹谷努・藤原広行:経験的グリーン関数 法によるスラブ内地震の震源モデルの構築,第 11 回日本地震工学シンポジウム, pp. 561-566 震源位置 34.125748N,132.755890E Strike、Dip、Slip 179,55,-82 震源深さ(km) 50.36 破壊域の面積(km2 423 1 2 面積(km2 31.74 42.32 349.14 重ね合わせ数 (NL×NW×ND) 3×2×2 4×2×3 66×9 上端深さ(km) 47.54 45.65 40 地震モーメント(Nm) 2.90×1018 5.10×1018 8.00×1018 破壊伝播速度(km/s) 2.88 2.88 2.88 ライズタイム(s) 0.8 0.8 3.2 アスペリティ 背景領域 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 YMG015 Acc. Time (sec) 0 5 10 15 20 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 HRS001 Acc. Period (sec) 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 YMG015 0.1 1 1 10 100 A c c e le ra ti o n R e sp o n se ( c m /s 2 ) Period (sec) 推定基盤波(NS) 推定基盤波(EW) 合成波 HRS001 0.1 1 1 10 100

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