公共性と市場(2):
私的財、公共財、地球的正義
2009.11.19
早稲田大学
目次
1.イントロダクション
2.公共性と正義
3.ロールズの国際的な正義理論
4.ポッゲの批判
5.シューの基本的権利
6.市場の公共性
7.公共財としての市場システム
8.市場システム税
1.イントロダクション
目的は、地球的規模で公共性と市場の関係を
考察することである
公共性は、基本的な社会的価値の1つである
市場は、我々の経済の基本的仕組みである
市場は、公共性を実現しうる
•
人々は、日常的な取引を通して人間関係を進展させ る•
市場は、我々の生存のための具体的な諸条件を提 供する•
解決されるべき問題
小さくて狭い地球
•
グローバリゼーション=市場の優越性•
技術的進歩•
国民と国の相互依存•
国境は、意味がなくなる 貧しい統治(ガバナンス)
•
国内問題 → 社会保障(尐子化・高齢化)•
国際的、地球的問題→
武装対立
、
地球温暖化、 低開発国の貧困
⇒ 地球の破綻
地球の上の貧困
UNDP報告(2003) => 2001年
•
世界の人口:61億3000万人(現在68億人)•
栄養不足:8億3000万人•
安全な水へのアクセス欠如:11億人•
基本的な公衆衛生へのアクセス欠如:26億人•
十分な保護へのアクセス欠如:10億人•
電気へのアクセス欠如:20億人•
2$/日以下:27億人2.公共性と正義
公共性=公共善の実現と増進
•
公共福祉(利益)•
社会の秩序•
人間関係を制御する原則•
公共性は、社会またはコミュニティがすべてのメン バーのために有益となるよう要求される 公共性の内容
•
開放性、オープンアクセス、自由•
人権、正義、公正•
等しい取り扱い、匿名性公共性と正義(2)
公共性は、
正義を含む
(漠然とした、広い) (厳しい、狭い) 正義
•
分配的公正(distributive justice)•
匡正的正義 正義の構想
•
正義の特定の原理を導き出す•
原理を擁護する地球的公共性、そして地球的正義
これからの公共性 ← 地球的視点が必要
•
グローバリゼーション、技術的進歩•
国境→ほとんど意味がなくなる•
しかし、我々の意識は、国境を越えない 地球的社会のための地球的公共性
•
すべての人間の保護、生存、自然の寿命、平和、共 存、秩序の維持•
理念:開放性、平等、正義、…•
物質的側面:私的財、価値財、公共財、…地球的公共性、そして地球的正義(2)
地球的正義
•
地球的社会の正義•
国際社会の正義、国際関係の正義 正義の1つの必要条件だけに注目
普遍化可能性(匿名性)
•
原理は、立場の相互交換によって受容できる•
排除されるもの:ダブルスタンダード、ただ乗り、既得 権、(集合的)利己主義3.ロールズの国際的正義の理論
ロールズの公正としての正義の理論
原初状態(無知のベール)→ 合意 → 正義の2原理
無知のベール
•
その人の地位、自然の資産と能力、彼自身の利益の概念、 人生計画の詳細、精神的な傾向、社会・経済・政治状況 社会的基本財
•
(1) 権利と自由、(2)機会と力、(3)所得と富、(4)自尊 第1原理:平等の基本的な自由
第2原理:機会均等+格差原理
不正=偶発的事象(出生)の強制的享受
ロールズの国際的正義の理論(2)
2-ステージ原初状態
政治的自由主義→国際社会
第1ステージ
•
正義の政治的な構想は、各国でその国民によっ て導出される 第2ステージ
•
各々の国の代表は、国際的正義の政治的構想 を決定する•
諸国民の法を遵守する国からなる国際社会ロールズの国際的正義の理論(3)
8つの原則
1.各国民衆は自由かつ独立であり、その自由と独立は
他国の民衆からも尊重されなければならない。
2.各国民衆は、条約や協定を遵守しなければならない。
3.各国民衆は平等であり、拘束力を有する取り決めの当
事者となる。
4.各国民衆は不干渉の義務を遵守しなければならない。
5.各国民衆には、自衛以外の理由のために戦争を開始
するいかなる権利も有するものではない。
6.各国民衆は諸々の人権を尊重しなければならない。
7.各国民衆は、戦争の遂行方法に関して、一定の制
限事項を遵守しなければならない。
8.各国民衆は、正義に適った、ないしは良識ある政
治・社会体制を営むことができないほどの、不利
な条件の下に暮らす他国の民衆に対し、援助の
手を差し伸べる義務を負う。
ロールズの国際的正義の理論(4)
地球的原初状態?
原則8•
格差原理を地球的共同体に適用してはいけない•
LDCの貧しい人々を援助する道徳的義務がある•
国家間の貧富の格差は国際的な分配的正義に反しない ロールズの理論には、地球上の貧困問題を解決する力がない 欠陥→2ステージ原初状態•
第1:人々は、自分の属する国(富や文化)を知っている•
第2:各国の代表は、彼の国と他の代表の国を知っている (国の違いについての知識) -> 彼らは、地球的正義の原則を引き出すことができない -> 普遍化可能性に矛盾する地球的正義のロールズ理論?
ロールズの本来の「公正としての正義」
へ
地球的社会のための正義の2原理
•
第1原理:すべての人類は、平等な基本的自由が保証 されなければならない•
第2原理:公正な機会の平等は保証され、そして、世 界で最も不遇な人の状況が最も改善されていなけれ ばならない。4.ポッゲのロールズ批判
国籍は、偶然である
•
遺伝子の性質、人種、性などと同様•
構造不平等の潜在的ベース → 財と資源の国際的な再分配システムが必要 ポッゲの問い:
•
我々は、どんな義務を果たすのか•
不平等削減のために何ができるか•
どのように不平等を解決することができるか ポッゲは、ロールズ理論(自由で平等な道徳的
個人)の改訂によって答える
ポッゲのロールズ批判(2)
ロールズ理論の欠陥
•
国際的な社会的経済的不平等の無視 国境を超えた経済的相互依存
→ 非対称的な影響
•
先進国 → より裕福に•
発展途上国 → より貧しく 基本的財への人権
•
身体的保全、生存(食物、飲料水、衣類、避難所、基 本的な健康管理)、移動の自由、基礎教育、経済活 動への参加5.シューの基本的権利
人権
•
人間であるという理由だけで与えられる権利であ り、安全な食物、飲料水、服、家、基本的な医療 のような人間の生存への権利から成り立ってい る 裕福な国は、貧困国を援助する義務を
持つ
これには批判的な議論も多い
特に、義務の非決定性
シューの基本的権利(2)
1対1の対応は成立しない
いろいろな義務によって権利が実現される
援助(例)
•
生存の手段を奪わない義務•
生存の手段を奪われた人を保護し、暴力を受けない ためのシステムを設計する義務•
基本的ニーズを満たせない人を支援する義務•
システムを作ることによって権利と義務の対応を維持シューの基本的権利(3)
I.剥奪を避けること II.剥奪から保護すること 1.義務(I)を実施することによって、そして、 2.義務(I)を犯す強い誘因の創造を避けるための制度を設 計すること III.以下のような剥奪された人々を援助すること 1.それらの人々は特別な責任である 2.それらの人々は、義務(I)(II-1)(II-2)の実現における 社会的失敗の犠牲者である 3.それらの人々は天災の犠牲者であるロールズ理論の改訂
基本的財に対する人権(ポッゲ)また
は基本的権利(シュー)を社会的基本
財のうちの1つに数える
豊かな国は、貧困国を援助する義務を
持つ
人権は、一連の義務またはシステム/
制度によって支持される
6.市場の公共性
市場は、理想的には、公正な競争が実行さ
れる場である
対立する利害の平和的解決
参加者は、フェアプレーの精神を学ぶ
日常的な取引を通して人間関係を深めたり、
新しい人間関係を築いたりする
公共性の実現の場
実際は?
市場の公共性(2)
多様性:いろいろな動機と目的
効率 ← 競争の自由
富の創造 ← 革新を導き出す動機づけ
透明度 ← 私的情報の発見と普及
自主的な意思決定のため尊重← 利害対立は
、非個人的に調整される(価格メカニズム)
安定性 → 秩序
7.公共財としての市場システム
安定性=市場のサービス
=公共財
•
我々は、市場に生存のための基本的な条件の獲得 と保全・安定を委任することができる•
我々は、市場がすべての人間に存在のために基本 的な財を届けると期待できる公共財としての市場システム(2)
公共財としての市場は、うまく機能するか?
•
一旦十分な所得が得られなくなると、もっとも基礎的 な公共性の一部(基本的人権の尊重と生存機会の 保全)は満たされなくなる•
市場が望ましい機能を実現するためには、競争的市 場のための条件(多数性、製品の同質性、匿名性、 情報の完全性、参入退出の自由)のような多くの条件 を必要とする•
物理的生存の条件公共財としての市場システム(3)
市場システム
=市場+市場を支える諸々のシステム
•
私的所有権制度•
警察•
司法など 市場システム=公共財供給が適切に行われた
下で私的財の分配がなされる場
目的:効率、安寧、安定性
•
公共善の増進
他の制度が多くの面でそれをサポートする場合だけ、
市場システムはよく機能する
しかし、市場が公共財空間に定住するための錨が
存在しないならば、市場原理は単独で作用する
公共財の支配原理は、私的財の支配原理とは異な
る
我々は、市場原理と公共財の原理、公共善の原理
をいかに調和させるかという問題に直面している
公共財としての市場システム(4)
8.市場システム税
どのように、市場システムを支えるための
費用を調達するか?
消費税 → 国内
地球的、国際的な場合はどうするか?
市場システム税
=取引に対する税金
不完全市場 → さらに高い税率
•
市場の妨害に対する処罰のための税市場システム税(2)
国際市場における市場システム税
•
国際的な市場の使用料金 → 対外援助へ ポッゲの地球的資源税
•
目的:すべての人類の基本的な必要を満たして、 現在と将来の貧困者を解放して、十分な教育や 健康管理などを保証する•
地球に存在する共有資源の使用料金8.財空間の階層性
さまざまな財空間の関係は、多層構造として理解さ
れる
公共財空間も多層的
市場システムは、公共財としてよく制御された制度
を前提とする
警察システムは生命と資産の安全を提供して、私的
財の交換を円滑にするという役割を果たす
国防システム、社会保障制度、生ゴミ処理システム
なども、類似の役割を演じる
私的財は、公共財の存在を前提条件にする
地球公共財 =物的財としての地球 国際公共財 =世界的な政治・経済・法制度 公共財(国家による供給) 地方公共財 メリット財・私的財(非市場) 私的財(市場) 公 共 性 の 経 済 的 次 元
メリット財 準公共財 地方公共財 私的財 市場システム 公共財 狭義市場システムの位置 地球公共財
私的財
メリット財
公共財
国際公共財
効率性
衡平性
効率性
衡平性
効率性
平等性
マキシミン
効率性
平等性
マキシミン
財と価値理念
公共財、公的財
=>費用分担問題
公共財の特性
非排除性
•
その財を1人の消費者に供給するときには,他の いかなる消費者もその消費から排除できない•
(物理的に,あるいは費用の面で) →すべての消費者に同量供給 非競合性
•
1人の消費がその財をいくら消費しても他の消費 者の消費可能量は減尐しない財の分類
(2):混雑現象→街路など (3):容易に排除可能→電波など 排除性 非排除性 競合性 (1) 純粋私的財 (2) コモンズ 非競合性 (3) クラブ財 (4) 純粋公共財 Beitz, C. (1999), Political Theory and International
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