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が 正答率は低かった 今後同じ形式の作題をする場合は 高等学校教科担当教員が指摘するように 文字以外の情報からも何らかの推測ができるように配慮すること 極力鮮明な画像を使用するように配慮することが必要である 第 2 問近世後期から明治初期までの時期における政治 社会について述べた文章を掲げ これを通

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日本史A、日本史B

第3 問題作成部会の見解

日 本 史 A

1 問題作成の方針 試験問題は、これまで高等学校学習指導要領に準拠し、高等学校で使用する教科書を基礎として 作成することとしてきたが、今年度もこの方針を踏襲して作問することにした。 ① 問題数は、大問6問とした。第1問は、高等学校学習指導要領に対応して、「主題学習」に 即した問題とし、第3問・第5問は、「日本史B」の第5問・第6問と共通問題とした。 ② 設問数は、平成21年度試験以来、36問から34問に減らして、受験者の負担を軽くしてある が、本年度もそれを踏襲し、34問とした。内訳は、主題学習の第1問が計3問、幕末維新期 の第2問が計6問、近現代史の第3~6問が計25問とした。 ③ 高等学校教科書の主題学習に配慮し、第1問は「交通・通信の変化」に関連する出題とし た。 ④ 国際的視野を反映させた出題となるよう、全体的に心掛けた。 ⑤ 政治史・経済史・文化史・対外関係史などの各分野から出題し、バランスを取るように心掛 けた。 ⑥ 文字資料・図版資料・地図・表・グラフを用いて、歴史事象とともに考えさせる作問に心掛 けた。 ⑦ リード文と設問との関連性、下線部と設問との関連性に留意した。 ⑧ 試験時間60分で解答できる問題になるよう留意した。 ⑨ 前年度に引き続き年代配列は6択としたが、難度が高くなり過ぎないように配慮した。 2 各問題の出題意図と解答結果 第1問 近現代の政治・社会・文化の基本的事項に関する理解を問うことを狙いとした問題であ る。リード文は、明治初年から戦後にかけてのメディアに関する対話文を掲げ、メディアの活 動・機能とその変遷がそれぞれの時期の政治・社会・文化と深く関係していることを示すもの である。しかしながら問3の時代配列の問題の正答率が予想以上に低かったこともあって、全 般的な正答率は5割に満たなかった。 問1 明治期の自由民権運動、昭和戦中期の文化に関する基本的事項を問う問題である。標準 的な正答率を得た。 問2 明治末期の社会・文化・教育についての理解を問う問題である。小学校就学率について は、大半の教科書に記述やグラフがある。史料中の人物が分かるように注を付し、リード文 や史料を読み直せば正答が導き出せるように配慮した。手掛かりにすれば容易に判断でき る。ほぼ標準的な正答率を得た。 問3 マスメディアのスポーツ報道に関する史料を年代順に配列する問題である。文字の表記 をきちんと読めば、近現代の政治・文化の基本的流れを問うていることが分かるはずである

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像を使用するように配慮することが必要である。 第2問 近世後期から明治初期までの時期における政治・社会について述べた文章を掲げ、これ を通して、当該期の政治・社会・外交に関する基本事項を問うことを狙いとしている。 リード文Aでは、開港後に来日した外国人の見聞記を史料として示しながら、当時の政治・ 社会・文化・外交についての設問に解答できるよう作題した。 問1 19世紀後半の政治・文化に関する重要な歴史的事項を問う設問であり、ほぼ標準的な 正答率を得た。 問2 19世紀の外交や事件について、正しく理解できているかを問う年代配列問題である。 出題した事項の時期的把握によって正答を導くことが容易ではなかったためか、正答率は比 較的低位であった。 問3 19世紀の江戸についての理解度を問う設問であり、標準的な正答率を得た。 リード文Bは、19世紀後半における、15代将軍徳川慶喜の生涯について説明しながら、 当時の政治・社会・外交についての設問に解答できるよう作成した。 問4 幕末維新期の政治・社会について重要な歴史的事項を問うための設問であり、標準的な 正答率を得た。 問5 幕末維新期の歴史的事項について、地図を用いてその理解度を問うための設問である。 正答率は6割台であった。 問6 明治維新期の新政府の政策について、正しく理解しているかを問う設問である。教科書 頻度の高い内容を聞いており、解答困難ではなかったはずだが、正答率は4割台にとどまっ た。 第3問 明治期の租税制度の確立に関する文章を掲げ、明治期の政治・外交・経済についての基 本的な事項を問うことを狙いとした。特に直接税である地租から、酒税などの間接税にも言及 し、軍備拡張などの歳出規模の拡大に対応するため、間接税の割合が高まっていった点を強調 した。全体としてはおおむね識別力の高い結果を得た。 問1 地租改正における地券の交付と明治十四年の政変後に財政を担った松方正義の組み合わ せを問うた空欄補充の問題。事項・人物名ともに教科書の重要事項として登場ものであった ため、正誤の判定は容易で、高い正答率を得た。 問2 明治期の条約改正交渉の経緯と外務大臣名の組み合わせを問う設問。具体的な改正交渉 の内容とそれを担った外務大臣の正しい理解を問うもので、識別力の高い結果を得た。 問3 地租改正の内容に関する正文組み合わせの設問。地租の算定・納税の方法、共有地で あった入会地の所有権、地租改正反対一揆の正誤を問うた。入会地の官地編入は、必ずしも 教科書の重要事項ではないが正文であり、二つの誤文の判定が容易であるため、正誤の判定 も難しくはないと思われ、識別力の高い結果を得た。 問4 主要租税収入の推移を示した表を読み取り、説明文の正誤を判定させる問題。リード文 において関税と間接税について言及し、日露戦争及び関税自主権完全回復の時期についての 正確な年代知識と絡めて、関税の推移や酒税の比率の高まりなどを、表を通じて、考えさせ

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日本史A、日本史B るものであった。しかしその複合的な手続きが受験者にとってはやや難しかったのか、正答 率はこの大問の中では低い結果となった。ただし、高等学校教科担当教員からは良問との評 価を得、また教育研究団体からは解答容易との指摘があった。今後も正確な知識と表の読み 取りを組合せた問いを設け、受験者の深い学習を促すべきと考える。 第4問 明治期におけるキリスト教と仏教の展開について述べた文章を掲げ、これを通じて宗教 と社会との関係を問いつつ、その背景にある当該期の教育・思想・外交などの基本事項を問う た。リード文Aでは、幕末に始まる近代日本のキリスト教の宣教師の歴史を説明しながら、そ れによって幕末・維新期のキリスト教、明治期の教育・衛生・医療、社会運動・労働運動な ど、近代社会形成期の諸相についての設問に解答できるよう作成した。またリード文Bでは、 廃仏毀釈や上知、キリスト教の流入という逆風から、19世紀末頃の国粋主義的風潮や対外戦 争をテコとして社会的活動を広げるに至る、明治期仏教の道程をキリスト教との関係にも留意 しつつ説明しながら、明治期における文化や外交について解答できるよう作成した。 得点率はやや低かったが、識別力の高い結果を出すことができた。 問1 明治初期のキリスト教の受容に関して、歴史的に重要な地名と人物を、空欄補充の形式 で問うた。教科書の出現頻度を踏まえて基本的な内容を聞いたが、正答率は低水準にとど まった。 問2 明治期の教育や医療・衛生に関して、基本的な知識を問うた。正答率は3割台で、誤答 の選択状況から、文化史分野での学習が十分進んでいないことがうかがわれる。 問3 明治期の社会・言論・文芸に関して、基本的な知識を問うた。正答を選択した受験者が 最も多く、かつ識別力の高い結果を出すことができた。 問4 明治期の仏教の社会的位置に関して、歴史的に重要な事象と言論団体を、空欄補充の形 式で問うた。正答率は比較的高かった。リード文中の年代やキーワードが配置されているこ とが、正答を導くことを可能にしたことと思われる。 問5 日清・日露戦争の前後の時期における外交の展開について、条約や同盟などの締結の順 序を問うた年代整序問題。教科書記述に基づく標準的事項を問うたが、正答率は4割程度で あった。ただし、高等学校教科担当教員から「各歴史事象の転機と各条約の意義を適確に捉 えていることを確認する良問」という評価を得ている。 第5問 手塚治虫の生涯に関する文章を取り上げ、彼の人生と関わらせながら、大正末期から高 度経済成長期にかけての政治・経済・社会に関する基本的知識を問うことを狙いとした。問題 文中に手塚作品を掲載したことは、試験当日のうちに報道に上り、センター試験への注目の高 さを改めて感じさせられた。図版を用いた問題については、象徴的・効果的なメッセージ性の 志向と、潜在的な批判可能性との間で、作問過程で議論が繰り返され、使用する図版の差し替 えなど慎重な対応を余儀なくされてきたが、これほどの反響の大きさ、反応の速さがみられた ことには、今後の作題に当たっても留意すべきであろう。 問1 昭和初期の都市大衆文化と1930年代の昭和恐慌下の世相について基本的知識を問う問 題。正答率は予想より低かった。 問2 田中義一内閣による男子普通選挙実施と社会運動弾圧に関する基本的知識を問う問題。 正答率の低さから、やや識別力の低い問題となった。

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問4 アジア太平洋戦争(太平洋戦争)の戦局推移を問う基本的な問題。正答率・識別力とも 適正と思われる。 問5 満州事変後の軍需産業と日中戦争期以後の経済統制に関する基本的事項を問う問題。予 想よりも正答率がかなり低かった。 問6 敗戦直後の占領統治に関する基本的知識を問う問題。正答率はかなり高かったが、識別 力は十分あった。 問7 高度経済成長期の経済と社会について基本的知識を問う問題。正答率はかなり高かった が、識別力は十分あった。 問8 高度経済成長期の科学技術と社会問題に関する基本的知識を問う問題。正答率は非常に 高かった。 第6問 1920年代以降の日本の政治及び外交について述べた文章を掲げ、当該期の日本を取り 巻く外交の状況とそれに対応する国内政治の動向及びそれに関連する社会・文化などに関する 基本的な知識を問うことを狙いとした。しかしながら問4と問7の正答率が予想以上に低かっ たこともあって、得点率は半分に満たなかった。 リード文Aは、1920年代から1930年代前半の日本外交及びそれと関係する国内政治につい て説明しながら、当時の外交担当者、軍縮条約、思想・表現の統制などに関する基本的な設問 に解答できるよう作成した。 問1 いわゆる協調外交を主導した人物及び国内政治における重要事件についての設問。いず れも基本事項である。ほぼ標準的な正答率を得た。 問2 協調外交政策の重要な要素である軍縮条約の内容及びそれへの国内の反応についての設 問。いずれも基本的知識を問うものである。ほぼ標準的な正答率を得た。 問3 1930年代における思想・表現の統制についての設問。教科書での記載が多い内容につ いて問うたが、予想以上に正答率が低かった。 リード文Bは、1930年代後半から1940年代後半の日本の対外関係の動向について説明し ながら、日中戦争から対英米開戦に至る時期の対外政策、アジア太平洋戦争(太平洋戦争) 期の国民生活、敗戦から1950年代前半にかけての社会・文化などに関する基本的な設問に 解答できるよう作成した。 問4 日中戦争から対英米開戦までの過程を問う基本的設問であるが、正答率が低かったのは 意外であった。高等学校教科担当教員が指摘するように、年代に幅をもたせたり、リード文 に推測可能な文言を配置するなどの配慮が必要であった。 問5 アジア太平洋戦争(太平洋戦争)期の国民生活に関する基本的知識を問うものである。高 い正答率を得た。 問6 占領期の社会・文化についての基本的知識を問うものである。ほぼ標準的な正答率を得た。 リード文Cは、占領期の後半から高度経済成長の時期までの対外関係及びそれに対応する 社会の動きについて説明しながら、サンフランシスコ講和条約、1950年代から1970年代に かけての政治・外交に関する設問に解答できるよう作成した。

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日本史A、日本史B 問7 サンフランシスコ講和条約に関する設問。社会主義国の位置づけ、日本の領土における アメリカの施政権など、基本的な知識を問うているにもかかわらず正答率は低かった。 問8 1950~70年代にかけての政治・外交に関する設問。当該期のアジアとの国交回復及び 国内の政治について、基本的な知識を問うたが、正答率は半分に満たなかった。 3 出題に対する反響・意見についての見解 今年度の「日本史A」の平均点は、47. 70点で、昨年度より6. 06点上昇した。この上昇について は、高等学校教科担当教員から、おおむねどの分野や項目からバランス良く出題されており、全般 的に易化したことが要因との評価がなされている。 教育研究団体からは、受験者の苦手とする社会経済分野の出題が抑制されたこと、正誤判定問題 の誤文選択肢の形態が整理され、正誤判定のポイントが見極めやすくなったことなどの工夫が、平 均点を上昇させることになったと指摘されている。また空所補充問題が増えたが、単純な知識問題 とならないよう、工夫もされていると評価されている。 部会としては、平均点が上がるような作問を心掛けてきた成果が出たと考えている。また「日本 史B」の平均点との格差が、昨年度比1. 87点縮小された。この上昇幅は僅かなものなので、来年 度以降も努力が必要であろう、というのが教育研究団体の意見である。 他方、高等学校教科担当教員は、出題形式、分量、出題範囲、また史料・グラフ・地図・図版を 用いた出題については、適切であると評価されている。また外交に関する内容の増加などが評価さ れている一方、史料・グラフなどを用いた問題や年代配列問題の減少を指摘され、史料読解を伴う 出題などを要望されている。 教育研究団体からは、前近代に属する事象の問題が3題(第2問)あったことは、高等学校学習 指導要領に基づく出題ではあるが、出題数を減少させるべきだとの意見が寄せられた。時代ごとの 均衡に配慮した出題をさらに意識化させねばならない。文献史料・写真・統計資料・地図などを用 いた出題には、一定の改善が見られたと評価された。そのほかに、時代・分野の均衡の問題、「日 本史A」独自問題を増加させるべきこと、などが指摘されている。今回指摘された点を十分考慮し つつ、今後も良問の作成に一層の努力を続けたい。 4 今後の問題作成に当たっての留意点 今年度の「日本史A」の平均点が昨年度より6点以上上昇したが、「日本史B」の平均点より依 然として18点下回っている事実は、きちんと受けとめる必要がある。本部会は、これまでも作問 上の留意点として以下の4点を挙げてきた。 ① 高等学校教育の範囲と水準を逸脱することなく、平均点を上げるため、標準的な問題を作成 するように心掛ける。 ② 高校現場での授業に配慮する。 ③ 問題領域や設問形式のバランスや文字資料・図版資料・地図・表・グラフの適切な使用に留 意しつつ、「歴史的思考力」を問う問題をより多く出題するように工夫する。 ④ 「日本史B」との共通問題の難易度について、更に配慮して作題する。 今後もこれらの諸点に一層留意し、また今回ご指摘いただいたことを踏まえ、問題作成を進めたい。

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1 問題作成の方針 試験問題は、これまで高等学校学習指導要領に準拠し、高等学校で使用する教科書を基礎として 作成することとしてきたが、今年度も、この方針を踏襲して作問することにした。 ① 問題数は、大問6問とした。第1問は、高等学校学習指導要領に対応して、主題学習に即し た問題、第2問は原始・古代、第3問は中世、第4問は近世、第5問・第6問は近現代とし た。第5問、第6問は「日本史A」第3問・第5問と共通問題とした。 ② 前年度までの方針を引き継ぎ、設問数は36問とし、主題学習6問、前近代18問、近現代12 問とした。 ③ 国際的視野を反映させた出題となるよう心掛けた。 ④ 高等学校教科書の主題学習に配慮し、第1問は「歴史と資料」を主眼とする出題とした。 ⑤ 政治史・経済史・文化史・対外関係史などの各分野から出題し、バランスを取るように心掛 けた。 ⑥ 文字資料・図版資料・地図・表・グラフを用いて、総合的に考えさせる作問に心掛けた。 ⑦ リード文と設問との関連性、下線部と設問との関連性に留意した。 ⑧ 試験時間60分で解答できる問題になるよう留意した。 ⑨ 前年度に引き続き年代配列は6択としたが、難度が高くなり過ぎないように配慮した。 2 各問題の出題意図と解答結果 第1問 歴史資料の特性・活用と文化財保護に関する出題。文書の伝来と保存をテーマに、古文 書等への関心を高め、これらを文化財として保存することに理解を促しつつ、古代から現代に かけての政治・社会に関する基本的知識を問うた。得点率は標準であったが、問1、問4は正 答率が想定よりやや低かった。 問1 律令国家の特色である中央集権型の国制と文書行政に関する基本的理解を問うた。会話 文及び写真の読解がヒントとなるように配慮した。律令国家の八省の中身が正しく理解され ていないようであり、正答率はやや低かった。 問2 室町幕府初期の政治形態に関する基本的理解を問うた。会話文及び写真の読解がヒント となるように配慮した。正答率は標準であった。 問3 中世・近世における年貢収取の様態を取り上げ、村落支配の変遷に関する基本的理解を 問うた。一般に年代整序問題は正答率が低くなる傾向にあるが、本問では基本的事項を問う ていることもあり、正答率は標準であった。 問4 近世の村々で文書を使った行政や家政が実施されていたことを踏まえ、その背景となる 庶民教育の基本的理解を問うた。懐徳堂の設置経緯や設置場所が正しく理解されていないよ うであり、正答率はやや低かった。 問5 アジア太平洋戦争(太平洋戦争)末期の戦況と社会状況に関する基本的理解を問うた。 誤文を選択する問題であるが、大政翼賛会が結成されたときの内閣総理大臣が鈴木貫太郎で

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日本史A、日本史B ないことは明瞭であったこともあり、正答率はやや高かった。 問6 戦前から現代へと至る国内の産業構造の変化について、グラフの読み取りとともに大枠 の理解を問うた。三井争議の年代がやや難しかったかもしれないが、消去法で比較的容易に 判断できることもあって、正答率は標準であった。 第2問 原始・古代の社会・国家と交通との関係についての文章を掲げ、縄文時代から平安時代 にかけての基本的事項を問うた。本試験「日本史B」では、近年、縄文・弥生時代に関する設 問が少なかったので、意図的に出題した。リード文Aは、縄文社会における地域間の分業・流 通と交通との関係、政治的な中心地が列島各地の人や物が集散するセンターになったことなど について説明しつつ、関連する諸事項を問うた。リード文Bは、大伴旅人・家持父子をとりあ げ、「万葉集」の歌を用いて奈良時代の交通の実態を説明しつつ、当該期に関する基本的事項 を問うた。近年の古代史に関するリード文では人物を取り上げることが少なかったので、著名 な万葉歌人である旅人・家持父子を意図的に取り上げた。得点率は約7割で標準的であった。 問1 縄文時代の遺跡に関して、基礎的な事項を理解しているかどうかについて問うた。地図 を用いた設問であるが、解答は容易だったようで、正答率は約9割に及んだ。 問2 多くの教科書が掲載している『魏志』倭人伝を提示して、当時の倭国の社会・政治・外 交に関する理解を問うた。よく知られた史料であることもあってか、正答率は9割を超えた。 問3 6~7世紀の政治的事件について、その年代や順番を正しく理解しているかどうかにつ いて問うた。年代整序問題は正答率が下がる傾向にあるが、今回は標準的であった。大伴金 村が朝鮮半島外交の失敗によって失脚したことについての知識がない受験者が多かったよう だ。 問4 奈良時代の文化及び税制に関する基本的な知識を問う出題。正答率は想定より低く、5 割台半ばであった。「新嘗祭」が秋の収穫祭であることはほとんどの教科書に記述があるが、 そのことを理解していない受験者が多かった。ただし、正答の「出挙」について、春・夏に 貸し付けられることや、地方財源として重要であること、国司が関わったことなど、具体的 な記述は教科書にはあまりみられないので、リード文の情報だけから正答を導くのはやや難 しかったかもしれない。 問5 奈良時代の交通制度に関する基本的な知識を問う出題。正答率は想定より低く、5割台 半ばであった。七道が幹線道路の名称であることを知らない(高校では七道は行政区画の名 称であることが強調されている)受験者が多かったものと思われる。 問6 奈良・平安時代の国司制度に関する基本的な知識を問うた。正答率は標準的であった。 第3問 中世の政治・経済・文化に関する出題である。中世の全期にわたって、政治・経済・文 化に関してバランスの良い出題を心掛けた。対外関係史の要素についても問3、問5に盛り込 んだ。史料や図版に基づく最新の研究成果と教科書準拠の知識とがつながるよう工夫した。 リード文Aにおいては、東大寺再建事業に関わる栄西の書状を素材として、主に中世前期の政 治・経済・文化について問うた。リード文Bにおいては、五山文学や柳生徳政碑文などを素材 として、主に中世後期の政治・経済・文化について問うた。 問1 源平争乱の時期の政治と文化についての理解を問う設問。「武士時代の到来」という理 解に傾きがちだが、朝廷という存在が鎌倉幕府成立の後に至るまで根強い影響力をもってい

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正答率はそれほど伸びなかった。 問3 平安末~戦国時代の経済及び対外関係に関する基本的な項目を、年代順に正しく配列さ せる問題である。高等学校教科担当教員より「幅広い時期にまたがる経済状況についての理 解に基づき思考力を求めた設問として評価できる」との評価を得ており、高い正答率であっ た。 問4 戦国~安土桃山時代の政治と文化についての理解を問う設問。一向一揆と統一権力に関 する基本的な理解を問うた。高等学校教科担当教員よりも「基礎・基本的事項の理解の程度 を測る良問」との評価を得たが、予想に反して正答率は約5割であった。 問5 五山文学に関する基本的な事柄についての理解を問うたためか、予想以上の正答率で あった。 問6 戦国時代の民衆のくらしと経済との関係についての理解を問う設問。多くの教科書で取 り上げられている徳政碑文の史料について、要点を理解できているかを問うた。高等学校教 科担当教員より「中世社会の特徴の一つである『庶民の台頭に着目』して、『時代の社会的 特色を考察させる』という目標に切迫する良問であった」との評価を得た。正答率はほぼ予 想どおりの水準であり、高校現場で史料をきちんと参照していることがうかがえた。 第4問 近世の文化・外交について述べた文章を掲げ、これを通して、近世の政治・社会・外 交・文化に関する基本事項を問うことを狙いとしている。リード文Aでは、1780年代に諸国 を旅した京都の医師が記した旅行記に関する文章を掲げ、当時の社会・文化についての基本的 な事項の学習到達点を確認する。リード文Bは、18世紀末の大黒屋光太夫の遭難・漂流から 帰国までに関する文章を掲げ、当時の政治・社会・外交に関する基本的な事項の学習到達点を 確認する。 問1 天草・島原地域におけるキリシタン禁制についての理解と史料読解力を問うた。語句の 組合せとして正しいものを一つ選ぶ問題で、極めて高い正答率を得た。 問2 近世の庶民生活に関わる諸産業に関わる理解度を問うた。各地の特産品等についての基 本的知識を問う問題であり、正答率は標準的なものであった。 問3 人気を博した小説や浮世絵など、出版物の歴史的変遷についての理解度を問うた。事項 を年代順に配列する問題で、正答率は標準的なものであった。 問4 近世の海上交通や交易についての理解度を問うた。正誤の組合せとして正しいものを一 つ選ぶ問題で、倭館や北前船がやや難しかったのか、正答率は低いものになってしまった。 問5 近世の海外情報と、その取得・流布についての理解度を問うた。シドッチを尋問した人 物と工藤平助の著書について正しいものの組合せを一つ選ぶ問題で、高い正答率を得た。 問6 幕末の日本と諸外国との関係についての理解度を問うた。開港場と砲撃事件の発生場所 の地図上の位置を問う問題で、商船モリソン号の砲撃場所を長崎と誤答するケースが多かっ たようで、正答率は低いものになってしまった。 第5問 明治期の租税制度の確立に関する文章を掲げ、明治期の政治・外交・経済についての基 本的な事項を問うことを狙いとした。特に直接税である地租から、酒税などの間接税にも言及

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日本史A、日本史B し、軍備拡張などの歳出規模の拡大に対応するため、間接税の割合が高まっていった点を強調 した。全体としてはおおむね識別力の高い結果を得た。 問1 地租改正における地券の交付と明治十四年の政変後に財政を担った松方正義の組み合わ せを問うた空欄補充の問題。事項・人物名ともに教科書の重要事項として登場ものであった ため、正誤の判定は容易で、極めて高い正答率を得た。 問2 明治期の条約改正交渉の経緯と外務大臣名の組み合わせを問う設問。具体的な改正交渉 の内容とそれを担った外務大臣の正しい理解を問うもので、識別力の高い結果を得た。 問3 地租改正の内容に関する正文組み合わせの設問。地租の算定・納税の方法、共有地で あった入会地の所有権、地租改正反対一揆の正誤を問うた。入会地の官地編入は、必ずしも 教科書の重要事項ではないが正文であり、二つの誤文の判定が容易であるため、正誤の判定 も難しくはないと思われ、極めて高い正答率を得た。 問4 主要租税収入の推移を示した表を読み取り、説明文の正誤を判定させる問題。リード文 において関税と間接税について言及し、日露戦争及び関税自主権完全回復の時期についての 正確な年代知識と絡めて、関税の推移や酒税の比率の高まりなどを、表を通じて、考えさせ るものであった。その複合的な手続きが受験者にとってはやや難しかったか、正答率は比較 的低かった。ただし、高等学校教科担当教員からは良問との評価を得、また教育研究団体か らは解答容易との指摘があった。今後も正確な知識と表の読み取りを組み合わせた問いを設 け、受験者の深い学習を促すべきと考える。 第6問 手塚治虫の生涯に関する文章を取り上げ、彼の人生と関わらせながら、大正末期から高 度経済成長期にかけての政治・経済・社会に関する基本的知識を問うことを狙いとした。問題 文中に手塚作品を掲載したことは、試験当日のうちに報道に上り、センター試験への注目の高 さを改めて感じさせられた。図版を用いた問題については、象徴的・効果的なメッセージ性の 志向と、潜在的な批判可能性との間で、作問過程で議論が繰り返され、使用する図版の差し替 えなど慎重な対応を余儀なくされてきたが、これほどの反響の大きさ、反応の速さがみられた ことには、今後の作題に当たっても留意すべきであろう。 問1 昭和初期の都市大衆文化と1930年代の昭和恐慌下の世相について基本的知識を問う問 題。正答率は予想より低かった。 問2 田中義一内閣による男子普通選挙実施と社会運動弾圧に関する基本的知識を問う問題。 識別力が非常に高かった。 問3 金融恐慌から昭和恐慌にかけてのプロセスについて正確な理解を問う問題。正答率は高 く、また識別力も高かった。 問4 アジア太平洋戦争(太平洋戦争)の戦局推移を問う基本的な問題。正答率・識別力とも 適正と思われる。 問5 満州事変後の軍需産業と日中戦争期以後の経済統制に関する基本的事項を問う問題。正 答率はかなり低かったが、識別力は十分に有していた。 問6 敗戦直後の占領統治に関する基本的知識を問う問題。正答率は非常に高く、やや識別力 の低い問題となった。 問7 高度経済成長期の経済と社会について基本的知識を問う問題。正答率はかなり高く、や

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高かった。 3 出題に対する反響・意見についての見解 今年度の「日本史B」の平均点は66. 32点で、前年度より4. 19点上昇した。内容としては、基 礎・基本的な事項の定着と、理解力・歴史的思考力を問う良問として、高等学校教科担当教員から 評価を得た。 具体的には、問題数は適切であり、昨年度よりも「基本的な事項・事柄」を問う出題が増加し、 難易度の点では全般に平易な設問が中心であること、時代別の視点からは、縄文時代の遺跡が出題 され、昨年度よりバランスの良い出題となったこと、分野別の視点からにおいてもバランスの良い 出題となっていること、また資史料・図版などを利用した出題が全体の4分の1を数え、新たに出 された身近な漫画資料も含め「多様な史料を用いて多面的に・多角的に考察」させる出題となって いることから評価を得た。「時代縦断的・横断的な理解」を深める出題や「地域的な差異や国際的 な情勢を踏まえて考察する力」をみる出題なども高等学校学習指導要領に沿った内容であったと評 価を得た。一方教科書によって取り扱いに差のある内容や、選択肢の作り方などへの配慮が求めら れた。全体として、高等学校教科担当教員からは、「リード文を含め設問全体が一つの学習過程を 示しており、その流れに即して正答にたどり着く問題構成は、歴史的思考力を問うことにつながる 良問であると高く評価できる」と高い評価を得たと判断している。 また教育研究団体からは、「出題分野、出題形式のバランスが極めて良かった」という高い評価 を得た。文化史分野と年代配列問題へ出題についても評価を得た一方「煩瑣な年号暗記を助長す る」恐れのある、細かな年代把握を必要とする出題への配慮が求められた。 こうした指摘を踏まえて、今年度評価された点については再び評価されるべく、指摘を受けた点 については注意して、次年度以降も作問に努めたい。 4 今後の問題作成に当たっての留意点 今年度の「日本史B」の平均点は66点台で、適切な点数であった。標準的な問題を作成できた という実績を教訓に、今後も平均点が極端に低下することがないように配慮したい。本部会は従来 からの作問上の留意点として以下の4点を挙げてきた。 ① 高等学校教育の範囲と水準を逸脱することなく、標準的な問題を作成するように心掛ける。 ② 高校現場での授業に配慮する。 ③ 問題領域や設問形式のバランスや文字資料・図版資料・地図・表・グラフの適切な使用に留 意しつつ、「歴史的思考力」を問う問題をより多く出題するように工夫する。 ④ 「日本史A」との共通問題について、難易に一層配慮する。 今後もこれらの諸点に一層留意し、また今回ご指摘いただいたことを踏まえ、問題作成を進めた い。

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