Fracture of the Intercondylar Eminence of the Tibia Takaaki YOSHIMOTO et al. Fukuoka Orthopedic Hospital Abstract Thirty-three patients with fracture

原

著

脛骨顆 問隆起骨折 の処 置 と予後

Fracture

of the Intercondylar

Eminence

of the Tibia

Takaaki YOSHIMOTO et al.

Fukuoka Orthopedic Hospital

Abstract

Thirty-three

patients with fracture of the Intercondylar eminence of the tibia were

treated in our hospital between 1977 and 1986. The average age at the time of fracture

was 29.9 years. Sixteen of the 33 cases were treated conservatively with plaster cast;

the other 17 were treated by open reduction and fixation. Eleven fractures in the

operated-on group were fixed with a ceramic nail.

The average period of follow up was 4 years and 11 months. Sixteen cases without

any complicated injury had excellent results; those with such an injury were less comfortable.

Since 1981 we have been using ceramic nails for the internal fixation of this fracture.

Internal fixation with ceramic nails is a useful method for repairing a fracture of the

Intercondylar eminence of the tibia.

緒 言 脛 骨 顆 問 隆 起 骨 折 は 若 年 者 に 多 くみ られ,前 十 字 靭 帯 剥 離 骨 折 で あ る場 合 が 多 い 。 成 人 の 前 十 字 靭 帯 損 傷 が 若 年 者 に お い て は,こ の型 の 骨 折 を惹 起 しや す い と考 え られ る 。 近 年,交 通 事 情 や ス ポ ー ツ の 多様 化 に伴 い,成 人 に お け る 本 骨 折 の 発 生 が 増 加 し てい る が,成 人 で は,靭 帯 損 傷 や 半 月 板 損 傷 及 び脛 骨 顆 部 骨 折 等 を合 併 し た複 合 損 傷 が 多 い 。 本 骨 折 の 治 療 法 は,軽 度 の もの は一 般 に 保 存 的 治 療 が 行 わ れ る が,骨 片 の転 位 の あ る もの の

治 療 法 に 対 し て は意 見 の一 致 を み な い 。 また, 予 後 に お い て は,膝 関 節 不 安 定 性 の 発 生 に 関 し て議 論 の 多 い と こ ろ で あ る 。 今 回,当 院 で 治 療 を行 っ た 本 骨 折 の予 後 調 査 を行 った の で,そ の 結 果 と我 々の 治 療 法 に つ い て報 告 す る 。 調 査 対 象 及 び 方 法 当 院 に お い て,昭 和52年6月 よ り昭 和61年12 月 まで に治 療 を受 け た脛 骨 顆 間 隆 起 骨 折 は33例 で,男 性19例,女 性14例 で あ る。 受 傷 時 年 齢 は 5歳 よ り82歳,平 均29.9歳 で あ り,15歳 以 下 の 若 年 者 は10例 で あ っ た 。 受 傷 原 因 は,自 転 車 や バ イ ク に よ る転 倒 が17例 と二 輪 車 に よ る事 故 が 半 数 を 占 め て い た 。単 独 損 傷 は16例 で あ り,そ の 内8例 が15歳 以 下 の 若 年 者 で,若 年 者 の ほ と ん ど は単 独 損 傷 で あ った 。 合 併 損 傷 は17例 に み られ,33例 の うち半 数 が 複 合 損 傷 で あ っ た 。 合 併 損 傷 の 種 類 は表1に 示 した が,内 側 側 副 靭 帯, 外 側 半 月 板,外 側 側 副 靭 帯 の合 併 が 多 い 。 若 年 者2例 の 合 併 損 傷 は 腓 骨 骨 折1例,外 側 半 月 板 損 傷1例 で あ っ た 。 今 回,追 跡 可 能 で あ っ た症 例 は33例 中26例 で, 直 接 検 診16例,ア ンケ ー ト調 査10例 で あ った 。 追 跡 調 査 期 間 は平 均4年11ヵ 月 で あ っ た 。 成 績 判 定 は,当 院 で 用 い て い る膝 靭 帯 損 傷 評 価 法 に 基 づ きお こ な った(表2)。X線 調 査 は前 方 ・後 方 引 き出 し,及 び 側 方 動 揺 性 を健 側 と比 較 し て 判 定 し た 。 骨 折 のType及 び 治 療 法 本 骨 折 は 前 十 字 靭 帯 付 着 部 剥 離 骨 折 と,靭 帯 付 着 部 に 関 係 の な い 結 節 部 骨 折 と に分 け られ, 更 に前 者 をMeyers5,6)の 分 類 を用 い3型 に分 類 し た(図1)。 前 十 字 靭 帯 付 着 部 剥 離 骨 折 は29例 で,内 訳 は I型7例,II型8例,IIIA型10例,IIIB型4例 で あ りIIIA型 が もっ と も多 か っ た 。 ま た,結 節 部 の み の骨 折 は4例 で あ っ た(表3)。 治 療 法 を骨 折 型 に分 け てみ る と,I型 と結 節 部 単 独 骨 折 に はす べ て 保 存 治 療 が 行 わ れ て お り, 3週 間 か ら5週 間 の 屈 曲 位 ギ ブ ス 固 定 が 行 わ れ た 。II型及 びIIIA型 で5例 の保 存 治 療 法 が あ るが, これ ら は す べ て陳 旧 例 で あ り,当 院 で は半 月板 表1調 査 対 象

表2追 跡調査

図1骨 折 のType

図2結 果 切 除 や 関 節 授 動 術 等 の合 併 症 の 治 療 を行 っ た症 例 で あ る 。 手 術 治 療 は17例 に 行 わ れ て お り,術 式 はscrew固 定1例,Lee法5)5例,ceramic nail固 定11例 で あ る 。 昭 和58年 以 後 は,手 術 治 療 の方 法 と し てCeramic nailに よ る整 後 固 定 の み行 って い る 。 結 果(図2) 骨折 型 に よ る成績 の比 較 で は,特 に明 らか な差 は認 め なか っ た 。 皿A型 に1例 と 皿B型 に1例 成 績 不 良 を認 めたが,2例 共合 併 損 傷 を有 す る症 症 例 で あ り,IIIA型 の 症 例 は後 十 字 靭 帯 損 傷, 外 側 側 副 靭帯 損 傷,腓 骨 骨 折 を合併 していた 。 皿 B型 の 成 績 不 良 例 は外 側 側 副 靭 帯 損 傷 を合 併 し, 顆 間 隆 起 骨 折 に 対 し てLee法3)に よ る固 定 を行 っ た が,軟 鋼 線 の 切 損 を生 じ前 十 字 靭帯 機 能 不 全 を残 し た症 例 で あ る 。 治療 法 と成績 で は保 存 治 療86.4点,手 術 治 療 82.6点 で有 意 差 は な い 。ceramicnai1固 定 群 は91.1点 で優 れ た 成 績 を 得 られ た 。 合 併 損 傷 の 有 無 に よる 成 績 の 比 較 で は,有 意 に合 併 損 傷 を有 す る群 に 成 績 が 低 く,本 骨 折 の 予 後 を左 右 す るの は合 併 損 傷 の 確 実 な診 断 と処 置 に あ る と言 え る。 直接 検 診 例16例 にX線 学 的 検 討 を行 った 。偽 関 節 を認 め た 症 例 は な か っ た。 変 形 性 関 節 症 変 化 は5例 に 認 め られ,そ の 調 査 時 平 均 年 齢 は46.4 歳 で あ っ た 。 ス トレ ス撮 影 で は,4例 に前 方 引 き出 し陽 性 を認 め た 。 そ の 内2例 は 単 独 損 傷 で, 1例 は1型 の 骨 折 で保 存 治 療 を行 った46歳 の女

性 で あ り,も う1例 はII型 でceramic nailに よ

る 固 定 を行 った57歳 の 女 性 で あ っ た。2例 共 ADLに は 障 害 が ないが,時 に 不 安 定 感 を う っ た え て い る 。 若 年 者 で前 方 引 き出 し を 認 め た症 例 は な か っ た 。 そ の 他,後 十 字 靭 帯 損 傷 合 併 例 に 後 方 引 き出 し陽性 を認 め,ま た外 側 側 副 靭 帯 損 傷 合 併 例1 例 に 内 反 動 揺 性 の 遺 残 を認 め た 。

図3症 例1■ ■ 歳,男 性 図4症 例2〓 ■ 歳,女 性 症 例 症 例1:一 男性,受 傷 時 年 齢 ■ 歳(図 3) 自転 車 で 転 倒 し受 傷,IIIB型 の 骨 折 で あ る 、, ceramic nail2本 に て 固 定 を 行 い,4週 間 ギ ブ ス 固 定 術 後4年8ヵ 月 の 現 在,評 価 は100点, ク ラ ブ 活 動 の 自 転 車 ロ ー ド を 行 っ て い る.X線 所 見 は,骨 端 線 にceramic nailが 達 し て い た が, 何 ら障 害 は 生 じ て い な い 症 例2:■,女 性,受 傷 時 年 齢 ■ 歳(図 4) 自転 車 で 転 倒 受 傷,II型 の 骨 折 で あ る 。ceramic nail3本 に よ り 固 定 を 行 い,術 後4週 間 ギ ブ ス 固 定.、2年2ヵ 月 後 の 現 在,評 価 は100点 骨 端 線 へ の 影 響 も な く,不 安 定 性 も な い 症 例3:■,女 性,受 傷 時 年 齢 ■ 歳(図 5) 自宅 の 台 所 で転 倒 し受 傷,IIIB型 の 骨 折 で あ り 合 併 損 傷 は な い.ceramic nail3本 に よ る 固 定 を 行 っ た.、術 後 ギ ブ ス 固 定3週 間 施 行2年2 ヵ 月 の 現 在,評 価 は86点,時 に 腫 脹 を 生 じ 歩 行

図5症 例3■ 降,女 性 後 に 軽 度 の 疼 痛 を 訴 え るが,giving wayは な い 臨 床 的 に は 前 方 引 き 出 し 陽 性,Lackman test 陽 性 で あ る.X線 所 見 で は,前 方 引 き 出 し 陽 性 と 変 形 性 関 節 症 変 化 を 認 め る 、 症 例4:〓,女 性,受 傷 時 年 齢 ■ 歳(図 6) バ イ ク で 転 倒 受 傷 ,I型 の 単 独 骨 折 であ る.ギ ブ ス 固 定 を軽 度 屈 曲 位 で1ヵ 月 行 っ た5年9ヵ 月 の 現 在,評 価 は71点 で 時 に 不 安 定 感 あ り,ADL に は 支 障 な い 、 臨 床 的 に は 前 方 引 き 出 し 陽 性, Lackman test陽 性 で あ るX線 所 見 は 顆 間 隆 起 の 肥 大 を 認 め る が,骨 癒 合 は 良 好 で あ る 、 ス ト レ ス 撮 影 で は 前 方 引 き 出 し 陽 性 で あ る 症 例5:〓,女 性,受 傷 時 年 齢 ■ 歳(図 7) ブ ラ ン コ で 遊 ん で い て 左 足 を 地 面 に ひ っ か け 受 傷,1型 の 骨 折 で あ り,ギ ブ ス 固 定 を 軽 度 屈 曲 位 で4週 間 行 っ た7年2ヵ 月 後 の 現 在,運 動 時 に 軽 度 の 不 安 感 を 訴 え る が ス ポ ー ツ は 支 障 が な い 評 価 は95点 臨 床 的 に は 特 に 異 常 認 め な い 、 X線 所 見 は 骨 癒 合 良 好 で,ス ト レ ス撮 影 で は 健 側 と比 較 し て 特 に 差 は 認 め な い し か し,関 節 内 後 方 に 遊 離 体 と思 え る 骨 片 あ り,受 傷 時 に 遊 離 し たosteochondral fractureが 存 在 し て い た と 思 わ れ る, 考 案 本 骨 折 の 診 断 は,一 般 に 単 純X線 側 面 像 が 有 用 で あ る が,場 合 に よ っ て は 顆 間 窩 撮 影 も必 要 で あ る 一 さ ら に 合 併 損 傷 が 予 後 を 左 右 す る の で 徹 底 し た 検 索 が 必 要 で あ り,ス ト レ スX線,断 層 撮 影,関 節 造 影,関 節 鏡 等 を 行 う必 要 が あ る 、 Meyers5,6)は 本 骨 折 を3型 に 分 類 し,I型 及 び II 型 に は 保 存 療 法 を,III型 に は 観 血 治 療 を 行 う と し て い る が,我 々 の 経 験 で は 実 際 に は,側 面X 線 像 で のII型 とIII型 と の 鑑 別 は 困 難 で あ る 場 合 も 多 く,転 位 の あ る 症 例 で の 保 存 治 療 は,い か に 整 復 操 作 を 行 っ て も 整 復 不 十 分 と な る 可 能 性 が あ り,そ の 結 果,前 方 不 安 定 性 を 残 す 恐 れ が あ る 我 々 は,本 骨 折 の 治 療 をI型 は 保 存 治 療 を 行 い,明 らか に 骨 片 の 転 位 を 認 め るII型 とIII型 に は 観 血 治 療 を 行 い,確 実 な 整 復 と 強 固 な 固 定 を 行

図6症 例4■46歳,女 性 図7症 例5■5歳,女 性 うべ き と 考 え て い る 、 以 前 は,我 々 もLee法3) に よ る 骨 片 締 結 や ス ク リ ュ ー 固 定 等 を 行 っ て い た が,ス ク リ ュ ー 固 定 は 抜 釘 の 必 要 が あ り, Lee法3)で は 関 節 運 動 訓 練 中 に 軟 鋼 線 の 切 損 に よ る 固 定 不 良,再 転 位 等 の 問 題 が あ っ た さ ら に, 小 児 で のLee法3)は 骨 端 線 を 避 け る 為 に 手 技 が 頻 雑 と な る 欠 点 が あ る 我 々 は 昭 和58年 以 後,ceramic nailに よ る 固 定 を 行 っ て い る が,本 法 は 手 技 も簡 単 で 固 定 力 も よ く,抜 釘 の 必 要 も な い また,小 児 で はcera-mic nailの 径 と長 さ を選 択 し て 行 え ば,骨 端 線 に か か る こ と な く十 分 な 固 定 が 得 られ る 術 後 は 3週 間 程 度 の ギ ブ ス 固 定 を 行 い 自 動 運 動 を 開 始 す る 。 荷 重 は5週 よ り行 っ て い る。 本 骨 折 の 予 後 は 単 独 損 傷 で あ れ ば,成 人,小 児 共 に 極 め て 良 好 で あ り,ADL上 何 ら 障 害 を 残 さ な い こ と が 多 い 一.一方,Gr ｱnkvist17ら は, 小 児 の 本 骨 折 の 平 均14.2年 の 追 跡 調 査 で,自 覚 症 状 の な い20例 の う ち4例 に 臨 床 的 な 前 十 字 勒 帯 不 全 認 め,ま た,12例 の 自 覚 症 状 の あ る 症 例 全 例 に 前 十 字 靭 帯 不 全 を 認 め た と 報 告 し て い る 、 Smith11)は,15例 の 小 児 に お け る 本 骨 折 の 平 均 7年 の 調 査 で,自 覚 症 状 の 有 無 に 関 係 な く,15例 全 例 に 不 安 定 性 を 認 め て い る 我 々 の 今 回 の 調

査 で は,4例 に 前 方 引 き出 し を認 め た が,全 例 成 人 で あ り単 独 損 傷 は2例 で あ った 。Noyes9) らは,実 験 的 に 前 十 字 靭 帯 剥 離 骨 折 時 に は,骨 折 前 に前 十 字 靭 帯 は50%以 上 引 き伸 ば され て お り,そ れ は 元 に戻 る こ と は な い と述 べ て い る。 我 々 も,術 中 所 見 で前 十 字 靭 帯 に 出 血 を起 こ し て い た症 例 を経 験 して お り,今 後 も長 期 の観 察 が 必 要 で あ る と考 え て い る 。 本 骨 折 の 予 後 不 良 の 原 因 は合 併 損 傷 に あ る。 特 に成 人 で は交 通 事 故 に よる膝 関 節 複 合 損 傷 が 多 く,注 意 深 い確 実 な診 断 と,全 て の損 傷 に 対 す る十 分 な処 置 を行 うこ とが重 要 で あ る。 ま と め 1)昭 和52年 以 来,当 院 に お い て治 療 を受 け た 脛 骨 顆 間隆 起 骨 折 の 予後 調 査 を行 った 。 2)単 独 損 傷 は,比 較 的 若 年 者 に 多 く認 め られ, そ の 予 後 は き わ め て 良好 で あ っ た 。 3)合 併 損 傷 に 注 意 し,ス トレ スX線 撮 影,関 節 造 影 及 び 関 節 鏡 を行 い,そ の 必 要 な処 置 を行 うべ き で あ る 。 4)治 療 法 は,軽 度 の もの は保 存 的 に 行 うが, 多 少 で も骨 片 の転 位 の あ る もの は,手 術 に よ る確 実 な固 定 と早 期 関 節 運 動 が よ い 。我 々 はCeramiC nailに よる観 血 的 整 復 固定 を行 っ て い るが 極 め て 有 用 な方 法 で あ る 。 文 献

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