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大都市の高齢化と集合住宅コミュニティ

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Academic year: 2022

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(1)

1.はじめに

 本稿は、東京都心部における高齢者の居住実態を把握した上で、これからの高齢社会へ の対応を迫られている大都市コミュニティの現状と課題の一端を明らかにすることをねら いとしている。

 後に詳しく述べるように、今日では大都市居住者の大多数は集合住宅(法令用語では

「共同住宅」)に居住し、全世帯に占める集合住宅居住世帯の割合も年々増加しており、高 齢単身世帯や高齢の夫婦のみの世帯でもその傾向がいっそう顕著になっている。こうした 状況をふまえれば、集合住宅という居住形態は大都市におけるコミュニティ形成を考える 上での重要な前提条件の一つになっているといわなければならない。

 だが、集合住宅居住は一般的に、「コミュニティ衰退」あるいは「コミュニティ不在」

の文脈で語られることが多い。たとえば、高齢者の「孤立死」の背景として語られる次の ような言説は、その典型的なものである。

 「都市部では、マンション等の集合住宅に居住する高齢者等も少なくない。こうしたマ ンション等では各戸の閉鎖性もあって、居住者は閉じこもりがちになり、家族や近隣住民 と人間関係を日常生活において持てない、又は持とうとしない人が多い。特に、高齢者は 外部との社会的接触が少ないので『孤立』しやすいと考えられる。また、高度経済成長時 代にできた公営住宅等においては、高齢者だけが住み続けたり、また高齢になってから入 居する事が多いことなどから高齢者が増加しており、さらに『孤立』現象が大量に発生す るリスクは高いものとなる。」1)

 このような言説は、たしかに集合住宅居住者の日常的な実感を表現したものといえるか もしれない。だが、集合住宅という居住形態がコミュニティ形成にとっての阻害要因とな るか、それとも促進要因となるかは、必ずしも一律に語ることはできない。現に、高齢者

大都市の高齢化と集合住宅コミュニティ

成 富 正 信

1) 厚生労働省『高齢者等が一人でも安心して暮らせるコミュニティ作り推進会議(「孤立死」ゼロを 目指して)報告書』(平成203月)、9ページ。

(2)

が住民の過半数を超える状況の中で伝統的な町会行事を維持している公営住宅もあるし、

大規模マンションで祭やクラブ活動、高齢者サロン活動を活発に展開しているところもあ る。これらをあくまで特異な条件の下での例外的事例と見るべきか、それとも集合住宅に 必ず含まれる「共同性」の現れ方の問題と見るべきかは、集合住宅居住者の生活実態と組 織・活動実態を十分に検討することで、はじめて結論を出すことのできる課題であろ う2)

 本稿では、最初に東京都心

4

区(千代田区、中央区、港区、新宿区)の国勢調査データ によって、都心部における居住実態の全体像、および高齢者の居住状況を明らかにする。

次に、港区と新宿区の「マンション実態調査」の中から関連項目をとりあげ、都心部のマ ンションの居住実態について若干の検討を行う。最後に、新宿区における公営住宅の高齢 化とコミュニティ活動の実態を、筆者の調査データによって明らかにする。

2.東京都心 4

区の居住実態

(1)住宅の建て方と所有関係

 平成

22

年の国勢調査によって「住宅に住む一般世帯(主世帯のみ)」を住宅の建て方別 にみると(表

1

1

)、東京都区部全体では共同住宅3)

72

%を占め、一戸建ての

2.7

倍と なっている。都心

4

区(千代田、中央区、港区、新宿区)では、いずれの区でも共同住宅 が

80

%を超え、とくに港区では

88

%、中央区では

87.8

%と高い割合になっている。平成

12

年の国勢調査(表

1

2)との比較によって 10

年間の変化を見ると、共同住宅は区部全 体では

5

ポイントほど、都心

4

区では

6

12

ポイント上昇している。一方、一戸建ては

20%前後から 10%前後へと大きく減少している。

 次に、住宅の所有関係別の状況をみると(表

2

1

、表

2

2

)、東京区部全体では公的賃 貸住宅(公営住宅と都市再生機構賃貸住宅、公社賃貸住宅の合計)がやや増加している が、持ち家と民間賃貸住宅の割合にはほとんど変化がない。しかし都心

4

区では、区によ ってかなり違いのある変化がみられる。すなわち、中央区、港区では持ち家には変化がな いが、民間賃貸住宅が

6

8

ポイント減少し、公的賃貸が

3

6

ポイント増加している。こ れに対して新宿区では持ち家が

5

ポイント減少し、民間賃貸が

7

ポイント増加している。

この結果、

10

年前に見られた区による特徴の違いは平成

22

年にはいっそう顕著になり、

2) 高齢化時代の集合住宅についての研究は多いが、ほとんどが建築系・居住環境系などのハード面か らの研究であり、「共同生活」そのものに焦点をあてた社会学的研究はまれである。例外としては、

倉沢進編『大都市の共同生活─マンション・団地の社会学』1990年、日本評論社。

3) 国勢調査では、共同住宅を「一棟の中に二つ以上の住宅があるもので、廊下・階段などを共用して いるものや二つ以上の住宅を重ねて建てたもの」と定義している。本稿では、集合住宅と共同住宅を 同義語とみなしているが、統計データの分析においては共同住宅という用語を使用する。

(3)

持ち家と民間賃貸の比率が、千代田区では

4

割対

4

割、中央区、港区では

4

割強対

4

割 弱、新宿区では

3

割対

6

割という関係になっている。

 表

3

は住宅の建て方と所有関係との関連を表したものである。一戸建てについては、4 区とも

9

割以上が持ち家であり、千代田区では

95

%に達している。一方、共同住宅では、

4

区の間で違いがある。千代田区では民営賃貸が

46.6%で持ち家の 31%よりかなり多くな

っている。中央区も民営賃貸が

43.7

%で持ち家の

38

%を上回っている。しかし港区では、

民営賃貸と持ち家がいずれも

41%とほぼ同じである。これに対して、新宿区では、民営

賃貸が

67.9

%、持ち家が

20.6

%と大きな開きがあり、新宿区の民営賃貸住宅の多さが際立 っている。

(2)高齢者世帯の居住状況

 表

4

によって都心

4

区の高齢人口をみると、平成

22

9

1

日現在で、新宿区が

5

9

千人、港区が

3

6

千人、中央区が

1

9

千人、千代田区が

9

千人となっている。高齢

表 1 ─ 1 都心 4 区住宅の建て方別世帯数(平成 22 年)

一戸建て 長屋建て 共同住宅 その他 東京都区部 1,182,148 54,784 3,215,365 14,435 4,466,732

千代田区 3,152 106 20,406 755 24,419

中央区 6,839 783 58,349 470 66,441

港区 11,057 705 95,477 1,202 108,441

新宿区 28,704 1,580 161,099 946 192,329

東京都区部 26.5% 1.2% 72.0% 0.3% 100.0%

千代田区 12.9% 0.4% 83.6% 3.1% 100.0%

中央区 10.3% 1.2% 87.8% 0.7% 100.0%

港区 10.2 0.7 88.0 1.1 100.0

新宿区 14.9% 0.8% 83.8% 0.5% 100.0%

表 1 ─ 2 都心 4 区住宅の建て方別世帯数(平成 12 年)

一戸建て 長屋建て 共同住宅 その他 東京都区部 1,137,012 57,676 2,442,193 16,110 3,652,991

千代田区 3,276 153 10,177 561 14,167

中央区 5,870 1,418 25,851 928 34,067

港区 13,741 856 61,950 1,029 77,576

新宿区 30,802 1,473 113,284 1,188 146,747

東京都区部 31.1% 1.6% 66.9% 0.4% 100.0%

千代田区 23.1% 1.1% 71.8% 4.0% 100.0%

中央区 17.2 4.2 75.9 2.7 100.0

港区 17.7% 1.1% 79.9% 1.3% 100.0%

新宿区 21.0% 1.0% 77.2% 0.8% 100.0%

注)平成12・22年国勢調査結果より作成。

(4)

人口は各区ともこの

5

年間に増加している。高齢化率の推移をみると(表

5)、千代田区、

中央区、港区では平成

18

年から

22

年までほとんど変化しておらず、新宿区でも横ばい状 態になりつつある。高齢化率は新宿の

20.9%が最も高く、中央区と港区は 17%前後とい

う水準にとどまっている。

 65歳以上の親族のいる世帯についてみると(表

6)、単独世帯は、港区で人数、割合と

も若干減少しているが、他の

3

区では人数、割合とも増加しており、とくに新宿区では単 独世帯が大幅に増加し、その割合も

45.2%にまで上昇している。

 高齢者のみの世帯の居住状況について、まず住宅の建て方についてみると(表

7

)、い ずれの区でも、高齢単独世帯、高齢夫婦世帯ともに共同住宅居住が一戸建て居住よりも多 くなっているが、高齢単独世帯ではすべての区で共同住宅居住が

7

割以上を占め、とくに

港区では

81.4%に達している。また、港区では高齢夫婦世帯の共同住宅居住も 7

割を超え

ている。

 次に、住宅の所有関係別でみると(表

8)、高齢夫婦世帯ではいずれの区でも持ち家が 7

表 2 ─ 1 東京都心 4 区住宅の所有関係別住宅数(平成 22 年)

持ち家 公的賃貸 民営賃貸 給与住宅 東京都区部 1,974,012 320,316 1,928,585 163,227 4,386,140

千代田区 9,662 1,295 9,662 3,426 24,045

中央区 28,700 6,904 26,037 3,897 65,538

港区 50,725 9,878 39,867 6,739 107,209

新宿区 59,448 9,265 110,953 9,523 189,189

東京都区部 45.0% 7.3% 44.0% 3.7% 100.0%

千代田区 40.2% 5.4% 40.2% 14.2% 100.0%

中央区 43.8% 10.5% 39.7% 5.9% 100.0%

港区 47.3 9.2 37.2 6.3 100.0

新宿区 31.4% 4.9% 58.6% 5.0% 100.0%

表 2 ─ 2 東京都心 4 区住宅の所有関係別住宅数(平成 12 年)

持ち家 公的賃貸 民営賃貸 給与住宅 東京都区部 1,675,510 176,410 1,619,680 151,150 3,622,750

千代田区 7,380 1,020 6,640 2,890 17,930

中央区 22,930 2,200 24,020 3,390 52,540

港区 46,470 6,420 46,700 2,820 102,410

新宿区 56,640 6,920 79,580 10,860 154,000

東京都区部 46.2% 4.9% 44.7% 4.2% 100.0%

千代田区 41.2% 5.7% 37.0% 16.1% 100.0%

中央区 43.6 4.2 45.7 6.5 100.0

港区 45.4% 6.3% 45.6% 2.8% 100.0%

新宿区 36.8% 4.5% 51.7% 7.1% 100.0%

注)平成12・22年国勢調査結果より作成。ただし所有関係未詳を除く。「公的賃

貸」は公営住宅と都市再生機構・公社の賃貸住宅を含む。

(5)

割以上と圧倒的に多い。一方、高齢単独世帯では高齢夫婦世帯よりも持ち家率は低い。ま た、新宿区以外では、高齢単独世帯の民間賃貸居住が

20

%台で、公的賃貸住宅とあわせ た賃貸住宅居住は、千代田区で

33%、中央区と港区で 40%であり、この 3

区では持ち家 居住の割合が賃貸住宅居住のそれを上回っている。これに対して、新宿区では、高齢単独

世帯の

42.5%が民間賃貸居住であり、公的賃貸住宅とあわせると高齢単独世帯の 55.5%が

賃貸住宅居住となっている。

表 3 都心 4 区住宅の建て方別所有関係別世帯数(平成 22 年)

千代田区 

持ち家 公的賃貸 民営賃貸 給与住宅 合計

一戸建 2,878 0 82 64 3,024

長屋建 53 1 34 15 103

共同住宅 6,278 1,294 9,413 3,244 20,229

一戸建 95.2% 0.0% 2.7% 2.1% 100.0%

長屋建 51.5% 1.0% 33.0% 14.6% 100.0%

共同住宅 31.0% 6.4% 46.5% 16.0% 100.0%

中央区 

持ち家 公的賃貸 民営賃貸 給与住宅 合計

一戸建 5,996 1 416 119 6,532

長屋建 422 3 296 37 758

共同住宅 21,917 6,900 25,205 3,684 57,706

一戸建 91.8% 0.0% 6.4% 1.8% 100.0%

長屋建 55.7% 0.4% 39.1% 4.9% 100.0%

共同住宅 38.0 12.0 43.7 6.4 100.0

港区 

持ち家 公的賃貸 民営賃貸 給与住宅 合計

一戸建 9,885 5 544 203 10,637

長屋建 347 9 290 43 689

共同住宅 39,683 9,864 38,834 6,359 94,740

一戸建 92.9 0.0 5.1 1.9 100.0

長屋建 50.4% 1.3% 42.1% 6.2% 100.0%

共同住宅 41.9% 10.4% 41.0% 6.7% 100.0%

新宿区 

持ち家 公的賃貸 民営賃貸 給与住宅 合計

一戸建 25,457 0 1,632 269 27,358

長屋建 587 23 865 55 1,530

共同住宅 32,836 9,242 108,201 9,118 159,397

一戸建 93.1% 0.0% 6.0% 1.0% 100.0%

長屋建 38.4% 1.5% 56.5% 3.6% 100.0%

共同住宅 20.6% 5.8% 67.9% 5.7% 100.0%

注)平成22年国政調査結果より作成。

(6)

表 4 都心 4 区高齢人口の推移

平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年

千代田区

総人口 43,613 44,773 45,522 45,951 47,093 47,754

65歳以上 6,785 8,676 8,917 9,063 9,270 9,378

75歳以上 2,439 4,303 4,427 4,551 4,630 4,760

中央区

総人口 97,177 101,705 104,229 109,835 112,971 116,188

65歳以上 16,140 16,757 17,366 18,164 18,824 19,212

75歳以上 7,160 7,452 7,773 8,191 8,600 9,016

港区

総人口 174,628 183,940 193,489 196,990 201,045 204,517

65歳以上 31,358 32,496 33,585 34,430 35,415 36,017

75歳以上 14,420 15,010 15,647 16,296 16,868 17,531

新宿区

総人口 275,926 276,746 278,376 280,585 282,500 283,644

65歳以上 53,310 54,357 55,462 56,880 58,268 58,682

75歳以上 24,740 25,483 25,955 27,083 27,848 28,759

注)「総人口」は住民基本台帳人口の各年度91日現在の数値。ただし、平成17・18 11日現在の数値。

表 5 都心 4 区高齢化率の推移

平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22

千代田区 15.6% 19.4% 19.6% 19.7% 19.7% 19.6%

中央区 16.6% 16.5% 16.7% 16.5% 16.7% 16.5%

港区 18.0% 17.7% 17.4% 17.5% 17.6% 17.6%

新宿区 19.3% 19.6% 19.9% 20.3% 20.6% 20.7%

注)住民基本台帳人口の各年度91日(平成17・18年は11日)現在の 数値より作成。

表 6 都心 4 区 65 歳以上の親族のいる世帯数

平成12年 平成17年 平成22年 平成12年 平成17年 平成22

千代田区

単独世帯 1,700 2,141 2,468 31.6% 35.7% 37.9%

夫婦のみの世帯 1,391 1,547 1,672 25.9% 25.8% 25.7%

その他の世帯 2,283 2,315 2,368 42.5 38.6 36.4

中央区

単独世帯 3,327 4,579 5,501 34.1 38.6 38.7

夫婦のみの世帯 2,523 2,913 3,715 25.8% 24.6% 26.1%

その他の世帯 3,920 4,365 5,000 40.1% 36.8% 35.2%

港区

単独世帯 8,233 10,559 10,116 38.4% 42.6% 40.2%

夫婦のみの世帯 5,502 6,089 6,795 25.7% 24.6% 27.0%

その他の世帯 7,685 8,141 8,250 35.9% 32.8% 32.8%

新宿区

単独世帯 13,794 17,237 20,489 37.7% 41.1% 45.2%

夫婦のみの世帯 9,504 10,702 10,386 26.0 25.5 22.9 その他の世帯 13,290 13,999 14,406 36.3% 33.4% 31.8%

注)平成12・17・22年国勢調査結果より作成。

(7)

表 7 都心 4 区高齢者のみの世帯の居住状況:住宅の建て方(平成 22 年)

千代田区  中央区 

一戸建て 長屋建て 共同住宅 合計 一戸建て 長屋建て 共同住宅 合計

高齢単独 575 9 1,611 2,195 高齢単独 1,250 174 3,939 5,363

高齢夫婦 427 10 805 1,242 高齢夫婦 837 99 1,854 2,790

高齢単独 26.2% 0.4% 73.4% 100.0% 高齢単独 23.3% 3.2% 73.4% 100.0%

高齢夫婦 34.4% 0.8% 64.8% 100.0% 高齢夫婦 30.0% 3.5% 66.5% 100.0%

港区  新宿区 

一戸建て 長屋建て 共同住宅 合計 一戸建て 長屋建て 共同住宅 合計

高齢単独 1,725 108 8,032 9,865 高齢単独 4,484 181 15,461 20,126

高齢夫婦 1,424 52 3,688 5,164 高齢夫婦 3,588 74 4,544 8,206

高齢単独 17.5% 1.1% 81.4% 100.0% 高齢単独 22.3% 0.9% 76.8% 100.0%

高齢夫婦 27.6% 1.0% 71.4% 100.0% 高齢夫婦 43.7% 0.9% 55.4% 100.0%

注)平成22年国政調査結果より作成。「高齢夫婦」は夫婦とも65歳以上の世帯。

表 8  都心 4 区高齢者のみの世帯の居住状況:住宅の所有関 係(平成 22 年) 

千代田区 

持ち家 公的賃貸 民間賃貸 給与住宅 合計

高齢単独 1,446 265 481 70 2,262

高齢夫婦 1,032 97 153 34 1,316

高齢単独 63.9% 11.7% 21.3% 3.1% 100.0%

高齢夫婦 78.4% 7.4% 11.6% 2.6% 100.0%

中央区 

持ち家 公的賃貸 民間賃貸 給与住宅 合計

高齢単独 3,170 878 1,223 70 5,341

高齢夫婦 1,979 427 362 48 2,816

高齢単独 59.4% 16.4% 22.9% 1.3% 100.0%

高齢夫婦 70.3% 15.2% 12.9% 1.7% 100.0%

港区 

持ち家 公的賃貸 民間賃貸 給与住宅 合計

高齢単独 5,668 1,959 2,097 175 9,899

高齢夫婦 3,869 867 440 84 5,260

高齢単独 57.3% 19.8% 21.2% 1.8% 100.0%

高齢夫婦 73.6 16.5 8.4 1.6 100.0

新宿区 

持ち家 公的賃貸 民間賃貸 給与住宅 合計

高齢単独 8,669 2,574 8,448 181 19,872

高齢夫婦 6,191 1,125 835 68 8,219

高齢単独 43.6 13.0 42.5 0.9 100.0

高齢夫婦 75.3% 13.7% 10.2% 0.8% 100.0%

注)平成22年国政調査結果より作成。「高齢夫婦」は夫婦とも65 歳以上の世帯。

(8)

3

.マンションの高齢居住者とコミュニティ

(1)港区のマンション居住者とコミュニティ

 港区が平成

17

年に実施した分譲マンション調査によると、調査時点のマンション数は

1,283

棟、

52,064

戸であり、築

25

年以上のマンションが

4

割を占めていた。港区調査で は、管理者向け調査の他に居住者を対象とした調査を行っているので、以下では居住者調 査の回答結果を中心にみていくことにする4)

 まず、回答者世帯の世帯主年齢の構成をみると(9─

1

表)、65歳以上が最も多く

32.3%

であった。とくに築

30

年以上では

65

歳以上が

52.5

%と年齢が高くなっている。家族構成

(表

9

─2)は、「夫婦のみ」が

32.9%、「単身」が 31.7%である。居住年数(表 9─ 3)は、

30

年以上から

2

年未満まで、幅広く分散している。定住意向(表

10

)は「このまま住み 続けたい」が

60.4%で、とくに築 30

年以上で定住志向が強くなっている。

 地域コミュニティとの関係をみると(表

11

1

、表

11

2

)、自治組織の存在を知ってい 表 9 ─ 1 世帯主の年齢構成 表 9 ─ 2 家族構成 表 9 ─ 3 居住年数

世帯数 世帯数 世帯数

19歳以下 1 0.0 単身 764 31.7 2年未満 514 21.3

2029 76 3.2 夫婦のみ 793 32.9 25年未満 416 17.2

30〜39 409 17.0% 夫婦と子 603 25.0% 5〜10年未満 479 19.9%

40〜49 449 18.6% その他 229 9.5% 10〜20年未満 222 9.2%

50〜59 450 18.7% 無回答 23 1.0% 20〜30年未満 462 19.2%

60〜64 240 10.0% 合計 2412 100.0% 30年以上 307 12.7%

65歳以上 778 32.3% 無回答 12 0.5%

無回答 9 0.4% 合計 2412 100.0%

合計 2412 100.0

注)港区「港区マンション実態調査報告書」(平成183月)

表 10 定住意向

世帯数 このまま住み続ける 1,457 60.4%

いつかは転居する考えである 744 30.8%

具体的な転居の予定がある 69 2.9%

無回答 142 5.9%

合計 2,412 100.0%

注)港区「港区マンション実態調査報告書」(平 183月)

4) 港区「港区分譲マンション実態調査報告書」(平成183月)。管理者調査では、1,283のマンショ

ンを対象とし、回収数は173件、回収率は19.7%。居住者を対象としたアンケート調査では、調査票 配布数16,489、回収数は2,412、回収率は14.6%。

(9)

る人で町会に加入していると答えた人は

7

割を超えているが、回答者全体では町会の存在 を知らない人が

4

割を超えている。管理者向け調査では管理組合と地域の町会あるいは自 治活動との関係を聞いている(表

12─ 1、表 12─ 2、表 12

3)。「管理組合として町会に参

加している」と「マンション全体で一つの町会」があわせて

47.4

%である。ただし、「管 理組合が自治活動を担っている」と「管理組合とは別に自治組織」はあわせて

23%程度

にすぎず、「自治組織はない」が

6

割を超えている。この結果からみて、半数近くのマン ションが町会との関わりをもっているものの、実質的な自治活動を行っているマンション

表 11 ─ 1  地 域 の 町 会 へ の 加 入 状況 

表 11 ─ 2  地 域 の 町 会 の 存 在 の 周知状況 

世帯数 世帯数

加入している 677 73.6% 知っている 1,319 54.7%

加入していない 84 9.1 知らない 1,022 42.4 知らない 140 15.2 無回答 71 2.9

無回答 19 2.1% 合計 2,412 100.0%

合計 920 100.0%

*「自治組織がある」と回答した人のみに質問

注)港区「港区マンション実態調査報告書」(平成183月)

表 12 ─ 1 地域の町会との関係

管理組合として町会活動に参加 78 45.1%

マンション全体で一つの町会を形成 4 2.3%

居住者が個別参加、管理組合は関わらず 23 13.3%

地域の自治活動とあまり関わらない 34 19.7%

その他 9 5.2%

無回答 25 14.5%

合計 173 100.0

表 12 ─ 2 マンション内の自治活動

管理組合と別に自治組織を組織 4 2.3%

管理組合が住民の自治活動も担っている 35 20.2%

自治組織はない 110 63.6

無回答 24 13.9%

合計 173 100.0%

表 12 ─ 3 自治活動の内容(複数回答 N = 39)

防災・防犯訓練への参加 19 48.7%

日常管理に関する業務(清掃など) 14 35.9%

住民のコミュニケーションの活性化(回覧板など) 12 30.8%

ごみの収集などの事業 12 30.8%

祭りなどのイベントの企画実施 7 17.9%

その他 3 7.7%

注)港区「港区マンション実態調査報告書」(平成183月)。ただし 項目の表記を一部簡略化した。

(10)

は少数にとどまるというのが現状である。

(2)新宿区のマンション居住者とコミュニティ

 新宿区の分譲マンション調査は平成

15

年、20年と

2

度行われているが、いずれも管理 者を対象とする調査のみである。ここでは、居住者に関する質問への回答結果をみること にする5)

 平成

15

年調査では各マンション内の世帯主年齢別の世帯数について質問している(表

13

─1)。65歳以上は

18.7%で、港区調査にくらべ、かなり低い割合となっている。高齢者

のみの世帯については(表

13

2

)、単身世帯と夫婦のみ世帯を合わせ

24.3

%であった。

 平成

20

年調査では、対象マンションで最も多い年齢層を聞くという形式に変えられて いるが、

60

歳以上の高齢層が最も多いと答えたマンションは

1

割である。また築年数が 古いマンションほど高齢層が多く、築

30

年以上では、高齢層が最も多いというマンショ ンが

30

%に達している(図

1

)。また、

65

歳以上高齢者のみが居住している戸数の割合 は、築年数の古いマンションほど大きくなっている(図

2)。

 次にマンション内の自治活動についてみると(表

14

1

)、管理組合内または管理組合と は別に自治会組織をもっているマンションはごくわずかで、85.3%が自治会組織はないと している。地元町会への加入(表

14

2

)は「マンション全体でまとまって加入」が

59

% で、港区よりはかなり高い割合である。マンション内コミュニティ活動として管理組合が 取り組んでいる活動(図

3

)では、防犯・防災対策、リサイクル・資源回収、居住者名簿 作成などには

4

割から

5

割のマンションが取り組んでいるが、それ以外は低調であり、高

表 13 ─ 1  世帯主の年齢 構成 

表 13 ─ 2 高齢者世帯

世帯割合 世帯割合

20歳以下 12.5% 高齢者単身 10.6%

3049 35.3 高齢者夫婦 13.7 5064 33.6 その他の世帯 75.8

65歳以上 18.7% 合計 100.1%

合計 100.1%

*対象マンション数は366、世帯数は13,046、高齢者世 帯数は2,207

注)新宿区「新宿区分譲マンション実態調査報告書」

(平成163月)

5) 新宿区「新宿区分譲マンション実態調査報告書」(平成163月)および「新宿区分譲マンション

実態調査報告書」(平成213月)。平成15年調査では1,179件を対象とし、366件の回答があり、

回収率は31%。平成20年調査では1,331棟を対象とし、562管理組合から回答があり、回収率は

42.2%。

(11)

図 2 高齢者のみが居住している戸数割合:完成年次別(N=356)

注)新宿区「新宿区分譲マンション実態調査報告書」(平成213月)

25.0%

21.7

16.0%

12.7%

10.6 10.1%

15.8%

10.9

4.1% 3.3 3.7%

昭和 39年以前

高齢者のみ居住割合 20.0

15.0%

10.0%

5.0

0.0%

〜昭和 44

〜昭和 49

〜昭和 54

〜昭和 59

〜平成元年 〜平成 6

〜平成 11

〜平成 16

〜平成 17 注)新宿区「新宿区分譲マンション実態調査報告書」(平成213月)

図 1 最も多い年齢層:完成年次別(N=472)

昭和39年以前

100%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

平成17年〜

〜平成16

〜平成11 1.3

〜平成6

〜平成元年

60歳以上

〜昭和59

〜昭和54 20.6

〜昭和49

〜昭和44

30

9.8 12.5

17.1 26.1

40〜59 39歳以下

3.8 4.3

表 14 ─ 1 マンション内の自治会組織(N=511)

マンション割合 管理組合とは別に自治会組織がある 7.8%

管理組合内に自治会組織がある 6.8%

自治会組織はない 85.3%

合計 99.9%

表 14 ─ 2 町会への加入単位(N=527)

マンション割合 マンション全体でまとまって地元町会に参加 59.0%

居住者が個別に参加 14.8%

地元町会に加入していない 26.2%

合計 100.0

注)新宿区「新宿区分譲マンション実態調査報告書」(平成21 3月)

(12)

齢者対策も

1

割程度に過ぎない。

(3)マンションにおける高齢者の居住実態

 港区と新宿区の調査でも、都心部のマンション居住者のうち、

2

割から

3

割が高齢者で あろうと推測できるが、単一のマンション、あるいは単一の団地内にどれだけの高齢世帯 が居住しているかは明らかではない。この点を補足するために、東京都が実施した「民間 の共同住宅における高齢者の居住状況調査」6)から関連するデータを引用しておく。

 表

15

1

1

住宅あたりの高齢居住者数を示したものである。

1

住宅あたりの高齢居住

注)新宿区「新宿区分譲マンション実態調査報告書」(平成213月)

図 3 管理組合が取り組んでいること(N=319)

防犯対策 防災対策 リサイクル・資源回収 居住者名簿作成 住民向け広報活動 高齢者対策 祭り・イベント 緑化活動 交通安全 趣味・娯楽の活動 子育て対策 青少年育成 その他

54.9 46.1 43.6 40.4 16

10.7 10.3 4.7 1.9 1.6 0.6 0.3

3.4

6) 東京都「民間の共同住宅における高齢者の居住状況調査報告書」(平成2010月)。この調査はマ

ンション管理会社418社を対象として行われ、有効回収数117、回収率は28%。なお対象住宅には分 譲、賃貸、賃貸・分譲併営が含まれている。

表 15 ─ 1  1 住宅あたり高齢居住 者数 

表 15 ─ 2  1 住宅あたり高齢者独 居世帯数 

表 15 ─ 2  1 住宅あたり高齢者の み世帯数 

分譲住宅

(N=287)

賃貸住宅

(N=232)

分譲住宅

(N=287)

賃貸住宅

(N=232)

分譲住宅

(N=287)

賃貸住宅

(N=232)

5人未満 27.2 59.5 0世帯 22.0 40.1 0世帯 15.0 37.9

5〜9 16.0% 3.4% 1〜2世帯 23.7% 18.1% 1〜2世帯 23.0% 17.2%

10〜29 18.8% 3.0% 3〜4世帯 11.5% 3.0% 3〜4世帯 11.5% 4.7%

30〜49 5.2% 1.7% 5〜9世帯 6.6% 1.7% 5〜9世帯 8.4% 0.4%

50〜99 5.2% 0.9% 10〜19世帯 4.2% 0.9% 10〜19世帯 8.4% 1.7%

100人以上 1.7% 0.9% 20世帯以上 4.2% 1.3% 20世帯以上 5.2% 1.7%

無回答 25.8% 30.6% 無回答 27.9% 34.9% 無回答 28.6% 36.2%

合計 99.9% 100.0% 合計 100.1% 100.0% 合計 100.1% 99.8%

平均 20.39 6.02 平均 11.73世帯 1.88世帯 平均 7.00世帯 2.18世帯

注)東京都「民間の共同住宅における高齢者の居住状況調査報告書」(平成2010月)

(13)

者の平均人数は分譲住宅で

20.99

人、賃貸住宅で

6.02

人である。1住宅あたりの居住者数 の平均は分譲住宅で

140.38

人、賃貸住宅で

61.54

人となっているので、分譲住宅では

15%、賃貸住宅では 10%程度の高齢居住者がいることになる。表 15

─1と表

15

─2は

1

住 宅あたりの高齢者独居世帯数および高齢者のみの世帯数を示したものである。高齢者独居 世帯は分譲住宅では平均

11.73

世帯、賃貸住宅では平均

1.88

世帯である。また、高齢者の みの世帯は、分譲住宅で平均

7

世帯、賃貸住宅で平均

2.18

世帯である。

1

住宅あたりの住 戸数の平均は分譲住宅で

61.25

戸、賃貸住宅で

44.77

戸となっているので、分譲住宅では 高齢者独居世帯が

20

%、高齢者のみの世帯が

12

%ほど居住していることになる。賃貸住 宅では高齢者独居世帯と高齢者のみ世帯のいずれも分譲住宅よりかなり少なくなってい る。

 表

16

は「過去

1

年間に孤立死の問題があったか」という質問に対する回答を示したも のである。「あった」とする回答は全体では

22.7

%であるが、分譲のみと分譲・賃貸併設 では

3

割となっている。賃貸のみでは「あった」との回答は

8.6%と分譲住宅よりも少な

いが、「わからない」は

8.6%とやや多くなっている。

 表

17

は管理会社が見守りや高齢者支援のサービスの必要性をどう考えているかを示し 表 16 高齢者の孤立死の問題

あった なかった わからない 無回答 合計 全体

(N=117) 22.2% 66.7% 3.4% 7.7% 100.0%

分譲のみ

(N=42) 28.6% 61.9% 2.4% 7.1% 100.0%

分譲・賃貸併営

(N=30) 30.0% 63.3% 0.0% 6.7% 100.0%

賃貸のみ

(N=35) 8.6% 74.3% 8.6% 8.6% 100.0%

注)東京都「民間の共同住宅における高齢者の居住状況調査報告書」(平成2010月)

表 17 見守りサービスや高齢者支援サービスの必要性 不 可 欠 で あ

り管 理 業 務 に含めて行う

必 要 だ が、

NPO等 に

委託する

住民相互で 行 う べ き、

関与しない

その他 どちらとも

いえない 無回答 合計 全体

(N=117) 8.5% 32.5% 15.4% 6.8% 29.9% 6.8% 99.9%

分譲のみ

(N=42) 4.8% 35.7% 23.8% 2.4% 26.2% 7.1% 100.0%

分譲・賃貸併営

(N=30) 16.7% 26.7% 6.7% 3.3% 36.7% 10.0% 100.1%

賃貸のみ

(N=35) 5.7% 31.4% 11.4% 14.3% 31.4% 5.7% 99.9%

注)東京都「民間の共同住宅における高齢者の居住状況調査報告書」(平成2010月)

(14)

ている。「

NPO

等への委託」と「管理業務に含めて行う」をあわせて、

4

割の管理会社が 必要性を認めている。なお、実際に見守り等のサービスを実施している管理会社は

12.8%

であり、そのほとんどは分譲のみ、または分譲・賃貸併設である。

4

.都営住宅の高齢居住者とコミュニティ〜新宿区の事例〜

(1)都営住宅の高齢化の現状

 都内の都営住宅戸数は約

26

5

千戸であり、都心

4

区の戸数は約

1

4

千戸である

(表

18

)。都心

4

区の住宅の半数以上が

1970

年代までに建設された古い住宅であるが、

1990

年代後半から建替えによる高層化がはかられている。この建替えや一部住宅の廃止 にともない高齢居住者も移動を余儀なくされているが、それは長年にわたって培われてき たコミュニティの解体と再編という新たな問題を生み出している。

 次に、新宿区を例にとって、都営住宅の高齢化の現状についてみていくことにする。表

19

に示す通り、新宿区には平成

23

1

月時点で、高齢化率

40%を超える町丁が 8

地区あ るが、その上位

4

地区は都営住宅が地区の大半を占めている。

 都営住宅の高齢化率が際立って高いことは明らかであるが、4つの団地の高齢人口と高 表 18 都心 4 区都営住宅建設年代別戸数(平成 22 年 3 月 31 日現在)

〜1969 1970年〜 1980年〜 1990年〜 2000年〜 合計 千代田区 113 179 292

中央区 352 410 280 282 1,324

港区 479 1,547 205 2,720 150 5,101

新宿区 1,469 3,491 693 1,707 7,360

4区合計 2,300 5,448 598 3,874 1,857 14,077

注)東京都都市整備局「都営住宅団地一覧」より算出。

表 19  新宿区の高齢化率 40%以上の町丁(平成 23 年 1 月 1 日現在) 

人口 高齢人口 高齢化率

新宿区 283,819 58,763 20.7%

1 霞ヶ丘町 428 223 52.1%

2 市谷長延寺町 169 78 46.2%

3 百人町4丁目 2,343 1,065 45.5%

4 戸山2丁目 5,878 2,671 45.4

5 西新宿1丁目 81 36 44.4%

6 神楽坂1丁目 37 16 43.2%

7 揚場町 90 38 42.2%

8 新宿4丁目 303 122 40.3%

注)新宿区「住民基本台帳人口」より作成。

(15)

齢化率の推移は、表

20

で明らかな通り、かなり異なるパターンを示している。

 各団地の高齢化の特徴は次のとおりである。

①都営霞ヶ丘アパート

 昭和

30

年代後半に建設された小規模団地である。建替え予定団地であり、現在新規 の空き家募集が行われていない。人口は急減しているが、高齢人口は変わらず、その結 果、高齢化率は急上昇している。

②都営戸山ハイツアパート

 昭和

30

年代末から

40

年代半ば頃までに木造住宅から建替えられた大規模団地であ る。人口は過去

5

年間にかなり急激に減少し、一方高齢者人口は確実に増加しているの で、高齢化率は急上昇している。

③都営百人町

3

丁目・

4

丁目アパート

 平成

2

年から平成

21

年にかけて、従来の中層棟から高層棟に建替えられた大規模団 地である。平成

15

年以降に入居が始まった

4

丁目アパートには、旧団地住民の他に、

平成

10

年代後半から、他団地の建替えに伴う住み替え入居者が転入し、人口が急増し ている。高齢人口は増加したが、若い世代も入居しているので、高齢化率は低下に転じ ている。

④都営長延寺アパート

 昭和

30

年代後半に建設された小規模団地である。高齢人口はやや減少しているが、

それを上回るペースで人口が減少しているために、高齢化率は少しずつ上昇している。

 各団地の高齢化のパターンの違いや団地固有の事情によって、各団地のコミュニティ活 表 20 新宿区の高齢化率上位地区の高齢化の推移

霞ヶ丘町  戸山 2 丁目 

人口 高齢人口 高齢化率 人口 高齢人口 高齢化率

平成19 524 231 44.1% 平成19 6,445 2,476 38.4%

平成20 505 228 45.1 平成20 6,312 2,559 40.5

平成21 488 237 48.6% 平成21 6,153 2,595 42.2%

平成22 464 234 50.4% 平成22 5,944 2,648 44.5%

平成23 428 223 52.1% 平成23 5,878 2,671 45.4%

百人町 4 丁目  市谷長延寺町 

人口 高齢人口 高齢化率 人口 高齢人口 高齢化率

平成19 1,412 729 51.6% 平成19 196 88 44.9%

平成20 1,530 800 52.3% 平成20 188 86 45.7%

平成21 1,806 958 53.0% 平成21 181 81 44.8%

平成22 2,130 1,036 48.6% 平成22 177 82 46.3%

平成23 2,343 1,065 45.5% 平成23 169 78 46.2%

注)新宿区「住民基本台帳人口」より作成。

(16)

動にも異なる特徴が現れている。その点について述べる前に、都営住宅におけるコミュニ ティ活動の共通の基礎というべきものにふれておく。

 都営住宅7)では、入居者は入居時の約束事として共益活動を担う居住者組織に必ず入る ことになっている。自治会という名称をもつ場合でも、その活動の中心は共益活動であ り、入居者は賃貸料以外に共益費を負担しなければならない。共益費の使途は、街路灯・

階段灯・廊下灯・集会室・エレベーター・給水施設などの共同施設の電気代とガス、上下 水道代、ゴミ処理と消毒に要する費用、広場などの清掃・除草・樹木の枝打などの費用、

その他自治会等居住者が決定した維持管理費である。居住者組織は毎月共益費を集金し、

予算を立てて執行するとともに、集会室・ごみ処理施設・中庭の清掃等の管理業務を行わ なければならない。

 共益活動はどの都営住宅でも行う義務がある。高齢化に伴って問題となるのは、この共 益活動の担い手を確保し続けられるかといことである。加えて、自治活動やコミュニティ 活動を継続、展開できるかという問題があるが、これは高齢化という要因だけでなく、団 地固有の歴史や伝統、外部からの支援やより広域の地域社会のなかでの連携などの要因と も絡み合っている問題である。

 以下では、霞ヶ丘アパート、戸山ハイツアパート、百人町

3

丁目・4丁目アパートのコ ミュニティ活動について、筆者の調査データをもとに、その特徴を述べることにする8)

(2)都営霞ヶ丘アパートのコミュニティ活動

①団地の概況

 霞ヶ丘アパートが立地する地域には、戦後旧近衛歩兵聯隊の兵舎を利用した住宅や木 造都営住宅からなる街が形成されていた。39年の東京オリンピック時の再開発の一環 として、全

10

棟の中層棟からなる団地が建設された。旧住民も多く入居し、彼らが始 めた年中行事を次世代に受け継いで、現在に至っている。周辺は国立競技場や明治公 園、神宮球場などに囲まれており、他の住宅地とは離れている。

②自治組織

 霞ヶ丘アパートの自治組織は「区」と呼ばれる階段コミュニティを単位としている。

これは一つの階段ごとに

8

戸または

10

戸で構成される活動単位で、全

34

区あり、区委 員

1

名(任期半年)が、毎月の定例委員会出席、町会費徴収・納入、町会ニュース配

7)一定の所得基準以下の住民を対象とする公営住宅には、 「都営住宅」のほかに「区営住宅」がある。

その他に、公営住宅の所得基準を超える所得の住民を対象とする「都民住宅」「区民住宅」「区立住 宅」「特定公共賃貸住宅」「区立高齢者集合住宅」などがある。

8) 霞ヶ丘アパートについては「2010年度早稲田大学社会科学部ソーシャル・リサーチ(地域福祉)

Ⅰ・Ⅱ報告書(大都市コミュニティの諸相〜新宿における居場所・ネットワーク・元気高齢者の研 究)』(20113月)を参照。百人町アパートについては、社会福祉法人新宿区社会福祉協議会「戸 山団地・くらしとコミュニティについての調査報告書」(平成205月)を参照。

(17)

布、連絡事項伝達などを行っている。役員としては、三役の他、青少年部・文化厚生 部・防犯部・防火防災部・保健衛生部・清掃部・交通部の各部長、集会所・祭礼・リサ イクルの各委員長がおかれている。

③コミュニティ活動の特徴

 1月半ばに餅つきを行っている。町会所有の餅つき臼と杵で約

40kg

の米を搗き上げ る。2月は節分の豆まきがあり、年男・年女が団地内のすべての階段で豆(菓子)を蒔 く。また

9

月の祭礼時には神輿渡御を行う。この団地は鳩森八幡神社の氏子となってお り、神社の倉に保管されている大小

2

基の神輿を団地内で

2

日間担いで回る。3年に一 度の本祭りの時は、他の氏子

10

町会(いずれも渋谷区)とともに神輿連合渡御を行う。

 この団地は「霞ヶ丘町会」を正式名称としており、住民は「共益会」ではなく、「町 会」の活動をしていると考えている。また団地発足当初より、毎月町会ニュースを出し 続けている(22年

8

月で

423

号)。霞ヶ丘という土地の記憶を伝える努力をすること で、住民の土地への愛着心を高めることがニュース発行の目的とされている。

 集会室を利用した各種教室が定期的に開かれている。また月

1

回の清掃日には常時百 数十人が参加し、各棟まわりの清掃・草むしりを行う。この場は互いの安否確認、役員 への要望、情報交換などの機会となっている。

 周辺の公的施設との交流も盛んである(懇親会、球場への招待、神輿渡御の時の応援 など)。また、子供は現在小学生

10

数名と少ないが、PTA役員などを中心に、子供神 輿や広域の地区行事への参加など、子供にも配慮した活動を行っている。

④課題

 霞ヶ丘団地は建て替え対象とされているが、都から具体的なプランやスケジュールは 示されておらず、空き家募集も停止されているので、新規入居者は皆無である。そのた め、団地の人口・世帯は減少するばかりで、高齢化率も上昇し、住民が将来を見通せな い不安を抱いている。

 住民の移動手段はバスと徒歩・自転車であるが、周辺に店舗が少なく、大きな病院や 公共サービス機関からも遠い。そのため、外出・移動に困難をきたす住民が増えてい る。

(3)都営戸山ハイツアパートのコミュニティ活動

①団地の概況

 昭和

24

年に建設された大規模な都営木造平屋住宅団地が、昭和

43

51

年に鉄筋コン クリート製中高層団地に建て替えられた。10階以上の高層棟が

9

棟、8階が

1

棟、残り の

25

棟は全て

5

階建てでエレベーターのない建物が多い。低層棟には給水塔からの配 水、高層棟は棟ごとの独立配水という違いもある。

(18)

 東西南北の

4

地区に分かれているが、各地区の高層棟の一部は

1

階に店舗があり、保 育園を併設している棟もある。幼稚園、小学校、図書館・郵便局が団地の一角にあり、

周辺には医療施設や福祉施設、各種店舗も多く、利便性が高い。

 団地の中央部分は都立戸山公園の一部となっており、その中心には

23

区内でもっと も標高が高い箱根山(44.6m)もあり、緑豊かな景観を見せている。

②自治組織

 全

35

3,019

室を

4

地区に分け、独立した

4

つの自治会を構成している。同一敷地

内に分譲棟も建設されており、自治会にも参加している。

 各自治会では、号棟選出の役員が役員会を構成し、号棟選出の代議員とともに総会を 開催する。また役員会のもとに事務局・防犯防災部・厚生文化部・実行部・環境部など の専門部会が置かれている。高齢者クラブも地区ごとに独立した会が組織されている。

4

自治会合同の定期的な会合はなく、必要に応じて役員が集まっている。

③コミュニティ活動

 主な年間行事は、4月の定期総会、8月の納涼盆踊り(東南地区)、9月の防災訓練、

10

月の広域地区コミュニティスポーツ大会への参加、12月の年末防災夜回り、1月の 新春餅つき大会、3月の箱根山駅伝大会への参加などである。

 この団地の活動の特徴は、広域の地域社会で行われる活動に積極的に参加しているこ とである。地区協議会(特別出張所単位で、地域の課題解決やまちづくりを目的に作ら れている住民組織)では、団地の

4

自治会役員が組織運営・分科会活動・企画立案等で 重要な役割を果たしている。地区協議会が

22

3

月に初めて開催した箱根山駅伝や、

広域地区で毎年開かれるカフェ(地区内で居住・勤務する人たちの交流の場)の準備に も積極的に参加している。

 役員の高齢化に伴う担い手確保が課題となっているが、自治会によっては

50

代、

60

代の若い層が役員に多く参加している。

④課題

 この団地では過去

5

年の間に人口が

600

人以上減少したが、高齢人口は

200

人増加し ており、高齢化が急速に進んできた。こうした状況の変化に対応した見守りなどの取り 組みが地域の緊急課題として浮上してきている。

 また団地内では地区間でかなりの高低差があるが、移動手段は徒歩か自転車である。

また昭和

40

年代建設の団地なので今のところ建て替え対象になっていないが、エレベ ーターのない棟も多い。高齢化が急速に進む中で、建物内の垂直移動や団地内移動の点 で、物理的なバリアにどう対応するかが問題になりつつある。

(19)

(4)都営百人町 3 丁目・4 丁目アパートのコミュニティ活動

①団地の概況

 前身である旧戸山アパートは昭和

23〜5

年に戦後初の中層鉄筋コンクリート住宅団地 とした建設された。平成

2

年から

20

年までの建替えで全

16

棟、居室数

2,321

戸の高層 大規模団地(旧団地のほぼ

1.8

倍の戸数)に生まれ変わった。

 住民の長期居住と子供世代の流出によって高齢化は建替え前にかなり進んでいた。さ らに、新団地の居室は旧団地住民用の他、ほぼ半数が他の都営住宅の建替え・取壊しに 伴う住み替え用とされ、さらに高齢単身者用の

1DK

が多く設けられた。その結果、他 団地から高齢単身者や高齢夫婦世帯が順次転入することによって、人口が急増すると同 時に高齢化も急速に進んだ。高齢単身者は高齢者世帯全体の

5

割ほどに増加し、棟によ っては

6

割を超えている。ただし、近年は若年ファミリー世帯の入居もあり、人口が増 加して高齢化率は低下するという状況に転じている。また、外国人世帯の入居も増え、

居住世帯の

15%ほどを占めている棟もある。

②自治組織

 旧団地では全体で一つの自治会が作られ、井戸水を汲み上げる給水塔の保守管理や集 会所の管理などの共益業務を行っていたが、現在では数棟または単独棟ごとに共用施設

(ゴミ処理施設、エレベーター、集会室、中庭等)が設置されたために、共益組織も分 共益会

百人町第一〜第二アパート(居室数700)・百人町第一〜第四アパート(居室数1,600)

共益会 共益会 共益会 共益会

共益会 共益会 共益会 共益会

図 4 都営百人町 3 丁目・ 4 丁目アパートのコミュニティ活動

共益会ごとの業務

共益費集金と会計(共用設備管理経費)、集会室の備品調達と管理運営、ごみ処理施設管理、

エレベーターホール清掃、中庭・周辺の清掃、樹木枝打ち、総会・役員会等。

住民の自治活動

共益活動 館内パトロール、緊急連絡用名簿作成、役員による緊急時対応、夏祭り・ふれあ      い広場、広報誌発行

自主活動 高齢者クラブ、花壇クラブ、サークル、住民運営型サロン3箇所、NPO運営型カ      フェ2箇所、孤立防止用区情報誌配布への協力

連絡会

全共益会間の連絡組織、地区町会連合会に加盟。情報交換・行政や外部への対応、淀橋市場 の協力による野菜市場の開催

懇談会

住民同士の情報交換と課題解決への話し合いの場。区担当者、包括支援センター、区社会福 祉協議会地区担当、NPO、民生委員有志が参加。不定期開催。

(20)

化している。団地全体では

9

共益組織による連絡会が設置されている。

③コミュニティ活動

 図

4

は団地の主なコミュニティ活動を示したものである。共益組織単位の活動内容に は、住民構成の違いが大きく反映されている。早くに建替えられた棟は、旧団地住民が 大半であり、居室も

2DK・3DK

中心で若い世代も比較的多く、組織も整備され、祭な どのイベントや住民の交流、防犯、問題解決活動も活発化している。一方建設の遅かっ た棟は、組織も未整備で、高齢単身者の割合が高く、他団地からの転入者で構成されて いるために、基本的な共益業務以外の活動に十分取り組めていない。ただし、近年は外 部の支援者との連携が活発になり、多様なコミュニティ活動が展開されるようになりつ つある。また、 団地近くにある青果市場の協力により、団地に近接する特別養護老人 ホームで月

1

回野菜・果物の即売会と住民交流カフェが開催され、団地外部の社会資源 と団地住民をつなぐ新しいコミュニティ形成モデルといえるものになっている。

④課題

 今のところ共益活動の主な担い手は

60

代後半から

70

代であるが、今後より年齢の高 い高齢者の割合が増えれば、共益活動やコミュニティ活動の参加者が減少し、役員の担 い手もいなくなるのではという懸念が住民の間に生じている。若い世帯も入居している が、

10

年間の期限付きで入居であり、彼らに働きかけ、いかに活動に巻き込んでいけ るかが課題になっている。

1DK

の多い棟でも、

2DK

以上中心の棟でも、高齢単身者が多くなっている。

80

代、

90

代の単身者も多く、その

8

割は女性である。高齢者を孤立化させないための見守り、

相談・サロンなどの日中活動が重要な課題になっている。現在、住民と行政・社協・

NPO

などの関係者が懇談会を結成して連携を深める取り組みが行われている。

5.まとめ

 東京都心部では集合住宅居住世帯の全世帯に占める割合が

80%以上になっており、高

齢単身世帯で

7

8

割、高齢者のみの夫婦世帯で

6

割が集合住宅に居住している。集合住 宅という居住条件を考慮することなしに、高齢社会に対応する大都市のコミュニティ形成 を考えることは困難になっているのである。

 分譲マンションでは、築年数の古いマンションほど高齢者の割合が高く、高齢単身世帯 は

1

マンション居住世帯あたり

20

%というデータがあるが、マンションの居住実態につ いては不明な点が多い。マンションのコミュニティ活動としては、防犯・防災対策、資源 回収、居住者名簿作成などが比較的多く取り組まれているが、それ以外の自治活動は低調 で、見守りなどの高齢者支援活動も一部で行われているにすぎない。マンション外の地域

(21)

社会との関係では、管理組合全体で地元町会に加入する場合が多く、地元町会と全く関わ らないというケースは少ないが、地域社会と積極的に交流しようとする傾向はみられな い。

 都心部におけるマンション・コミュニティづくりにとって、克服すべき課題が多いこと は明らかである。だが、都心部で地域活動に熱心に関わっている住民の多くはマンション 居住者である。自分が居住するマンション内での「つながり」のなさを嘆いている人で、

地域社会の中に豊かなネットワークを広げている人はいくらでもいる。あるいは、マンシ ョンの共用施設を周辺地域に開放することに意欲を燃やす管理組合役員もいる。マンショ ン・コミュニティづくりを活性化させるには、マンション内での連帯という視点を超え て、より広い地域社会での交流・連携の関係をマンション内の関係につなげるという視点 が必要になっているのかもしれない。

 都営住宅団地は高齢化が最も進んでいる集合住宅であり、都心部では

40%を超えてい

るところが多い。だが、「通説」に反して、都心部の集合住宅の中で、都営住宅はおそら く最もよくコミュニティが生きている集合住宅である。長期居住者が多いこと、居住者が 共益活動を義務づけられていること、年代や生活状態の同質性などがその要因になってい るといえる。また、高齢化率の高さがかえって見守りや孤立化防止への住民自身の意識を 高め、新たな活動を生み出す契機になっている。

 とはいえ、都営住宅の住民の間には、このまま高齢化が進めば、活動の担い手がいなく なるという不安が高まっている。この不安を解消し、コミュニティを活性化し続けるに は、団地外の多様な社会資源と団地住民の活動とを有効に連携させていくことが不可欠の 条件になっていくと思われる。

参照

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