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御堂島正氏 博士(文学)学位請求論文 『石器使用痕研究―方法と展望―』

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Academic year: 2022

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(1)御堂島正氏. 博士(文学)学位請求論文. 『石器使用痕研究―方法と展望―』 審査報告要旨 考古学では、石器などの考古遺物をもとに、古代人が行った活動内容を明らかにする必 要がある。石器表面には当時の活動の形跡が「使用痕」として印されて今日に残存するが、 しかし、それから直接作業内容や、作業量を求める事は困難である。そこで「使用痕」と 「過去の活動」を結びつけるための、理論的研究が必要になる。ミドルレンジ・セオリー はそのような、理論と実際の間を架橋する理論的方法であるが、御堂島氏が採用するのは、 そのうち実験考古学的方法であり、使用の痕跡を辿る Traceology の方法である。 氏は実験使用痕研究の立場から、複製石器による反復的実験と顕微鏡観察に基づき、実 際の石器に残る使用痕の顕微鏡観察との比較から、石器の使用方法や機能を復元する研究 を続けてきた。大学院生時代から 20 数年にわたる氏の研究成果は、地道に学術論文の形で 公開され、これまでに高い評価を得てきた。本論文は、いわば氏の独創的研究の集大成と いってよく、日本で初めて体系的にまとめられた論文である。 本論文は、第Ⅰ章. 使用痕研究の理論と方法、第Ⅱ章. 礎的研究:実験使用痕研究、第Ⅳ章. 石器使用痕研究史、第Ⅲ章. 基. 実践的研究、第Ⅴ章 結論:使用痕分析を超えて か. ら構成されており、第Ⅲ、Ⅳ章を中心に実験使用痕研究の基礎と応用研究が総覧できる構 成になっている。 先史時代の利器である石器は、器種により、突き刺す、切る、削る、穿孔するなどのよ うに、各々の機能を有している。従来の機能推定は、多分に形態的な特徴に依存していた。 ところが、そのような推定法には、多くの主観や誤謬が入りやすい。氏の使用痕分析は、 そのような誤謬を糾し、客観的なデータと比較することで、より直接的にその機能や使用 法を知ることができる利点がある。また、使用法だけでなく、その対象物の種類(皮革、 骨、角、肉、木等)や、作業量の程度などを、実証的に知る方法なのである。 本論文の方法論的特徴は、実験による微小剥離痕、使用痕光沢面の分析と使用痕のパタ ーン化を完成し、使用痕とその変数である石材の種類、使用対象物の種類、作業内容(操 作法) 、作業量などとの相関を確認して、使用痕に係わる一般的法則性と多様性を導き出し た点である。この点で、諸条件がコントロールされない従来の分析法とは正確さにおいて 格段の違いをみせている。斯分野における科学性は、正に氏の研究業績によって確立され たと言うことができる。 本研究を実施するにあたって、データを分類し、パターン化するには、大量のデータを 必要とする事は言うまでもない。本論文で用いられた実験資料は、微小剥離痕、使用痕光 沢面関係で黒曜石 297 点(微少剥離痕 54 点、使用痕光沢面 243 点)で、チャート、サヌカ イト、硬質凝灰岩、軟質凝灰岩(合計 770 点)にのぼる。また石鏃 20 点、有舌尖頭器 10 点、ナイフ形石器 40 点による衝撃剥離実験を加え、いかに多くの実験資料を背景に立論さ れているかを知る。それらは一点ごとに条件を変え、計画的に条件を統制することを企図.

(2) したもので、客観的で科学的な成果を導き出している。さらに、その正確度と信頼性を判 定するために、ブラインドテストを繰り返し実施した点も評価される。第Ⅴ章において、 長野県佐久市立科F遺跡や、東京都三鷹市羽根沢台遺跡、長野県南牧村中ツ原第5遺跡B 地点から出土した旧石器遺物をはじめ、縄文時代・弥生時代までの石器を含めた使用痕分 析を通じて、作業内容、対象物などを的確に推定し、この方法の有効性を実地に確認した といえるだろう。 本研究は、石器の機能推定、および人間の活動復元に当たって、基礎的方法論を提示し ている。もちろん自然科学的方法として、なお改善すべき点もあるが、今後、これらの視 点により、各遺跡からデータが集積され、遺跡内で行われた諸活動が完全に復元できるな らば、今後の考古学研究に与える影響は計り知れない。 このように、本研究が持つ豊かな将来性は評価され、基礎的研究を完成した御堂島氏の 業績は高く評価されよう。しかし、厳密な方法論に立脚し、客観性に裏打ちされた研究で あるだけに、指摘すべき課題も存するので、本論文を書籍として公刊するに際しては、以 下の部分を補訂する必要があろう。 先史文化・社会を解明する上での使用痕研究の学術的意義と射程を、より積極的に論じ られてもよいのではないかと思われる。また論文中の写真などは、原版は鮮明に描写され ているのに、写真コピーが鮮明さを欠くものが1例あるので、出版の際には考慮されたい。 本研究は完成するまでに 20 数年を必要とした事実からもうかがわれるように、多大な時 間と労力を費やし、多くの自然科学的知識を必要とした事は疑いなく、これら若干の課題 は瑕疵とはいえず、本研究の価値を些かも下げるものではないことを申し添えておきたい。 以上、総合的に評価して、本論文は博士(文学)に相応しいと認められる。 2003 年 10 月 4 日 主任審査員. 早稲田大学教授. 高橋龍三郎. 審査員. 早稲田大学教授. 審査員. 東京大学人文社会系研究科助教授. 文学博士(早稲田大学) 文学博士(法政大学). 菊池徹夫 佐藤宏之.

(3)

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