臨床
判断
必 要 な 必 要 な 手 術 看 護 に 必 手 術 看 護 に 必 要 な術前から術後までの
流れ・場面ごとにみる
連載 第2回森 一直
愛知医科大学病院
麻酔科 診療看護師 2003年看護師資格取得後,総合上飯田第一病院を経て愛知医科大学病院へ入 職。愛知医科大学大学院看護学研究科精神看護学領域を修了。愛知医科大学大学 院看護学研究科高度実践看護師コースを修了後,日本NP教育大学院協議会にて NPの認定を受ける。38項目の特定行為の認定も受け,2015年より麻酔科での実 践を行っている。2016年に愛知医科大学医学部麻酔科学講座博士課程へ入学。 前回(本誌Vol.12,No.2)は,「臨床判断とは 何か」について解説した。手術看護における臨床 判断は,決して術中の看護だけではなく,術前か ら術中,術後にわたる周術期の臨床判断が必要と なる。今回は,生命に直結する呼吸に焦点を当て, 特に術前評価の中から考えられる臨床判断につい て述べることにする。術前の呼吸評価で重要なこ とは,気道の評価と呼吸機能の評価である。ここ では,この2つの重要なポイントに沿ってまとめ ていく。◆
事例紹介
Aさん,男性,78歳,165cm,78kg,BMI28.8 現病歴:1カ月前より食欲不振,体重減少となり 近医受診。腸炎ではないかということで胃薬を 処方され帰宅した。その後,症状はなく経過し ていたが,2週間前より黒色便を認めたため再 度近医を受診した。総合病院を紹介され,精密 検査の結果,S状結腸がんであることが判明 し,腹腔鏡下結腸切除の予定となった。 既往歴:高血圧,糖尿病,慢性心房細動,脂質異 常症,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD) 家族歴:父親は急性心筋梗塞で死去しており,母 親は高血圧,糖尿病を患っている。 内服薬:アムロジピン2.5mg,メインテート0.625 mg,ロスバスタチン2.5mg,エリキュース5mg ×2,ジャヌビア50mg,ネキシウム20mg,ス ピリーバ吸入,オンブレス吸入 麻酔歴,アレルギー:なし 嗜好品:50年間ずっと喫煙しており(1日20本 程度),禁煙の経験はない。アルコールを1日 日本酒1合程度摂取。◆
術前評価
胸部X線検査
心胸郭比(cardio thoracic ratio:CTR)40%, 滴状心,横隔膜の平坦化,樽上肺肋間の拡大,肺 野の透過性亢進が見られた。
呼吸機能検査
(表1) 肺活量(VC):3.47L 予測肺活量(% VC):104.5%呼吸に関する術前評価
【 表1 】呼吸機能検査に関連した用語
肺活量(vital capacity:VC) 予測肺活量 %肺活量(%VC)努力肺活量(forced vital capacity:FVC)
1秒量(forced expiratory volume:FEV1.0)
1秒率 予測1秒量 %1秒率(%FEV1.0) 最大吸気から最大呼気位までに呼出された呼気量 年齢・性別・身長から求められる標準的な肺活量 予測肺活量に対しての実測肺活量の比率 →標準的な肺活量の何%くらいなのかを見る 最大吸気から最大呼気位までにできるだけ短時間に呼出された呼気量 努力肺活量に対する1秒間に呼出できた呼気量 →GaenslerとTiffeneauがあるが,一般的にはGaensler 努力性肺活量に対する1秒量の比率 年齢・性別・身長から求められる標準的な1秒量 予測1秒量に対しての実測1秒率の比率
努力肺活量(FVC):3.2L 1秒量(FEV1.0):2.23L 1秒率:Gaensle(FEV1.0〈G〉):69.3% 予測1秒量(% FEV1.0):2.5L
心電図
心拍数72回/分,心房細動が見られた。採血結果
表2に示した。現症
意識レベル:GCS E4V5M6 バイタルサイン:心拍数78回(心房細動),血 圧138 /70mmHg,体温36.5℃,SpO295% (room air),呼吸数20回/分 呼吸音:全体的に減弱 心音:収縮期雑音あり,Levine分類Ⅲ度 Hugh-Jones分類:Ⅲ度New York Heart Association(NYHA) 分 類: Ⅱ度 その他:義歯,動揺歯あり
気道評価
睡眠時無呼吸症候群:診断されてはいないが, 家族からは夜中に呼吸が止まっていると情報 があった。 いびき:睡眠時にあり 開口障害:あり 頸部運動障害:なし Mallampati分類:Ⅱ度 3-3-2チェック:開口は2横指,オトガイ舌骨 距離は3横指,舌骨甲状軟骨距離は2横指Upper lip bite test:ClassⅢ
Thyroidmental distance(甲状オトガイ間距 離):8cm
◆
呼吸器系における術前の臨床判断
前回述べたとおり,臨床判断とは「患者のさま ざまな情報やニーズから患者の全体像を理解し, ケアに関する決定を行うこと」である。術前にお ける臨床判断とは,手術を受ける患者に対して, 多くの情報を統合して患者を把握し,周術期ケア に関する決定を行うこととなる。 周術期センターなどが設置された施設であれば, 手術室で働く看護師が入院前の患者に会うことが できるが,多くは手術前日に入院するため,手術 前に患者と接する期間は極めて短い。その限られ た時間の中で,患者を把握して周術期ケアの判断 を行わなければならず,より高度な臨床判断能力 が求められる。また,緊急手術の時は情報収集す る時間もないため,さらに難しい判断が求められ る。 では,患者と接する時間のない中で,どのよう に臨床判断すべきかを具体的に解説する。気づき
術前の呼吸器系の評価における気づきとは,呼 吸器系に関する情報を集約して何が起こっている のかを予測することから始まる。呼吸機能に問題 があるかどうかと,気道管理に問題があるかどう かという2つに分けて考える。 【 表2 】採血結果
WBC RBC Hb Ht PLT PT PT-INR APTT FDP FDP-DD 8.9×103μL 4.5×104μL 10.9g/dL 33.0% 206×103μL 80% 1.22 43秒 2.5μg/mL 1.2ng/mL 総蛋白 アルブミン 総ビリルビン 直接ビリルビン 間接ビリルビン 尿素窒素 クレアチニン eGFR Na K 6.5g/dL 3.0g/dL 0.7mg/dL 0.1mg/dL 0.6mg/dL 22.0mg/dL 0.9mg/dL 65mL/分/1.73m2 145mmol/L 4.5mmol/L Cl Ca 補正Ca AST ALT ALP LD ChE グルコース HbA1C BNP 105mmol/L 9.0mg/dL 9.2mg/dL 30U/L 25U/L 300U/L 230U/L 250U/L 140mg/dL 6.9% 430pg/mL〈呼吸機能〉 呼吸機能の一般的な評価として,胸部X線検 査,呼吸機能検査,血液ガス分析が挙げられる。 術前検査の結果はカルテから情報収集が可能であ るが,それだけでは呼吸機能を適切に評価するこ とはできないため,患者からしっかりと話を聞く (問診を行う)ことが重要となる。 Aさんの術前の呼吸器系評価に必要な検査・情報 ・胸部X線検査 ・呼吸機能検査 ・血液ガス分析 ・呼吸数,SpO2などのバイタルサイン ・喫煙に関する情報 【解説】 一般的に,呼吸機能検査や血液ガス分析から分 かることは,閉塞性換気障害があるということの みで,左記検査や胸部X線,バイタルサインなど の検査だけでは十分な評価ができないことがあ る。「気づき」の部分では,患者の術前情報の中 で何が必要で何が足りていないかを考えていく。 Aさんの場合は,COPDであるということは術 前検査から把握できるが,その程度が分からな い。程度を見極めるためには日常生活での運動耐 容能が重要であり,多くはHugh-Jones分類を使 用することが多い(諸外国ではMRCスケールを 使用しているところが多い)。 また,一般的な所見である呼吸音や呼吸パター ン,チアノーゼなどを観察すると共に,直近に感 冒症状がないかなどを確認することも重要であ る。これらはカルテからの情報では不十分である ことも多いため,実際に患者に問診を行ってアセ スメントを行う。 呼吸器系評価を行うために追加で必要な情報・所見 ・Hugh-Jones分類:Ⅲ度 ・呼吸の様子・身体所見 ・呼吸音:全体的に減弱 ・胸郭の動き:左右差なし ・呼気延長:なし ・呼吸補助筋(吸気時:胸鎖乳突筋や僧帽筋,斜 角筋など,呼気時:腹直筋など)の使用:なし ・チアノーゼ:なし ・ばち状指:なし ・感冒症状:なし 〈気道管理〉 気道確保困難とは,マスク換気困難,喉頭展開 困難,気管挿管困難,気管挿管失敗の4つに分類 される。大きく,①マスク換気困難と②喉頭展 開・気管挿管困難の2つに分類するとより分かり やすい。気管挿管前のマスク換気困難が予測され るか,気管挿管時の困難が予測されるかというこ とになる。 ①Aさんのマスク換気困難の所見(表3) ・睡眠時無呼吸症候群 ・男性 ・BMI26以上 ・歯の欠損 【解説】 睡眠時無呼吸症候群は重症度※を把握しておく と,マスク換気困難かどうかを判断できる一つの 指標となる。そもそもマスク換気困難とはどうい うことか振り返ってみると,1つはマスクがフィッ トできない状況,もう1つは気道閉塞を起こして 換気ができない状況を言う。睡眠時無呼吸症候群 や男性,BMI26以上といった要因は換気困難の 予測につながり,歯の欠損はマスクがフィットで きるかどうかの評価につながる。 そのほか,胃管やひげの有無(マスクがフィッ トできるかの評価),頸部の放射線治療や腫瘤, 首の太さなど(換気困難の評価)について情報が 不足しているため,追加で収集する。 ※睡眠時無呼吸症候群の検査では,AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)で重症度を判定する。5≦AHI <15は軽症,15≦AHI<30は中等度,30≦AHIは重症と分 類されており,AHIが分かっている場合はマスク換気困難の 評価に有用である。 【 表3 】
主なマスク換気困難の予測項目
男性 BMI26以上 歯の欠損 あごひげ 胃管挿入 睡眠時無呼吸症候群 頸部の腫瘤 頸部の放射線治療後 太い首 55歳以上 下顎前突高度制限 Mallampati分類:Ⅲ or Ⅳマスク換気困難の評価を行うために追加で必要な 情報・所見 ・ひげの有無:なし ・頸部の腫瘤,放射線治療:なし ・首が太いか:太くない ②Aさんの気管挿管困難の所見(表4) ・開口障害:あり(2横指) ※ 3-3-2チェックで開口は2横指,オトガイ舌 骨距離は3横指,舌骨甲状軟骨距離は2横指。 ・頸部運動障害:なし ・Mallampati分類:Ⅱ度 ・Upper lip bite test:ClassⅢ ・Thyroidmental distance:8cm 【解説】 挿管困難では,骨格と開口の程度が重要な情報 となる。口腔内の観察で重要なことは,舌や扁桃 などの大きさや状態,つまり口腔内のスペースの 評価である。喉頭鏡によって喉頭展開するが,口 腔内のスペースが大きいほど見やすくなり,挿管 しやすい。また,歯が大きい患者も気管挿管困難 患者と言えるため観察が必要である。 Cormack分類も気管挿管困難を予測する指標 の一つである。ただし,一度挿管を試みたことが あり,かつその記録が残っている場合には評価の 指標として有効であるが,気管挿管を試みたこと がない患者ではCormack分類は不明であるため, 指標として参考にならない。 挿管困難の評価を行うために追加で必要な 情報・所見 ・歯の大きさ:普通 ・X線検査による気管狭窄の有無:なし ・舌の大きさ:普通 ・扁桃肥大:なし
解釈
「気づき」では,検査の漏れがないか,また検 査では評価できないことは何かを考え,術前の患 者の全体像を把握することに努めた。次の「解釈」 では患者の理解を深め,気づきから得られた情報 をアセスメントし,周術期ケアに活用していく。 〈呼吸機能〉 胸部X線検査 A氏は,末梢気道が狭窄し肺胞に慢性的な炎症 が起こった結果,肺胞同士が癒着し,1つの大き な空気の塊ができていた。肺の容量は大きくなり 肺が拡張したが,縦隔は小さくなり心臓は滴状心 と変化した。また,横隔膜は平坦化しており樽状 肺となっていた。典型的なCOPDのX線所見であ るため,呼吸機能検査で呼気の障害があるかを チェックする。 呼吸機能検査 呼吸機能検査では1秒率が70%以下でCOPDと 診断される。Aさんの1秒率を確認すると69% であるため,閉塞性換気障害があると判断できる。 さらにもう一歩踏み込んで,1秒量を確認してお きたい。1秒量が1,000mL以下では術後肺合併 症のリスクが非常に高くなり,1,000 ~1,500mL であれば症例検討などによる話し合いが必要とな ることを考えておく。呼気時の呼出障害があると いうことは,二酸化炭素が貯留していることが考 えられるため,術後抜管できないことも視野に入 れた周術期ケアを想定しておく。 呼吸数,SpO2などのバイタルサイン 呼吸数20回/分というのは,成人男性としてはや や速いが異常とまでは判断できない。一方,room airでのSpO2が95%というのはやや低いと言え る。本事例では血液ガスの検査を行っていないた め,詳細な動脈血酸素分圧の評価はできないが, ここで酸素解離曲線を思い出してほしい。SpO2 が100%の時の動脈血酸素分圧は100mmHg(以 上),90%の時は60mmHgとなる。つまり,95% 【 表4 】主な気管挿管困難の予測項目
Mallampati分類 開口障害 頸部運動障害 BMI26以上 歯の欠損,動揺歯 3-3-2チェック Upper lip bite test Thyroidmental distance (甲状オトガイ間距離)短頸 小顎
では動脈血酸素分圧は80mmHgほどの計算とな る。酸素化としては悪くないと判断してよいが, Aさんの場合はCOPDであり二酸化炭素がたまり やすい病態であるため,術前に血液ガス分析の検 査を行っておいてもよいかもしれない。 喫煙 喫煙が身体に有害であると言われる原因は,次 の3つである。 ①ニコチンによって交感神経興奮作用と血管収縮 作用が起こり,心仕事量の増大や末梢循環不全 を引き起こす可能性がある ②煙中の一酸化炭素が,ヘモグロビンと高い親和 性を持つため(酸素の約250倍),酸素と結合 できるヘモグロビンが減少し,血中の酸素含量 が減少する ③タールなどにより気道の反射性亢進,繊毛の活 動低下,気道粘液分泌の増加などが起こり,末 梢気道の閉塞のリスクが高まる 以上のことから,できる限り禁煙を行い手術を 迎えるほうがよい(表5)。 症状と身体所見 術前は,手術可能かどうかを含めた全身の検査 が行われる。しかしながら,検査での評価だけで どの程度の呼吸予備能があるかは判断できない。 むしろ,患者と会い直接評価することで理解でき ることのほうが多い。 Aさんは,呼吸機能検査では1秒率が69%と ぎりぎり70%以下であり,COPDと判断できたも のの,術前診察の中でHugh-Jones分類がⅢ度で あることが判明し,平地でも人並みに歩けないほ ど息切れしていた。また,呼吸音が減弱している ことも,呼出障害が起こっている可能性を示して いる(末梢気道の閉塞によるsilent chestの可能 性を示唆する)。 このように,診察中の会話やフィジカルイグザ ミネーションの中で,「息切れがする」「チアノー ゼが出てきた」「呼吸数が多くなった」などは評 価でき,術前検査だけでは分からないことが分か るようになる。一般に,4METs(階段を登れる 程度)の運動耐容能が手術を安全に受けられるか どうかの一つの目安にもなる。Aさんはフィジカ ルアセスメントを行うことで,重症であると判断 することができる。 腎機能,心機能 呼吸機能や呼吸に関する自覚症状を観察してい ればよいというわけではない。腎機能や心機能が 低下していると,呼吸器合併症を起こしやすい。 腎機能が低下している場合は体内に水分がたまり やすい状況にあり,心機能が低下している場合に は心臓から血液を拍出する力が弱くなり肺に水分 がたまりやすい状況にある。どちらも肺に水がた まりやすい状況をつくり出す可能性があるため, 腎機能,心機能も併せて評価する。手術による生 体への侵襲は,身体に水をためるような働きをす るため要注意となる。 〈気道管理〉 気道管理で最も困ることは,気管挿管ができな いことはさることながら,マスク換気ができない ことである。マスクで用手換気ができる限りは患 者の酸素化が保たれる。しかし,マスク換気も不 可能,気管挿管も不可能である状態,つまりCVCI (cannot ventilation,cannot intubation)は対応 に窮するため,これを避けることが重要である。 看護師も患者の安全を考えた上で,チーム医療の 一員としてこれを評価することが重要である。 【 表5 】
禁煙期間とその効果
下薗崇宏:慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者―周術期の呼吸器合併症を中心に, LiSA,Vol.17,No.7,P.674 ∼ 678,2010.より引用,改変 禁煙期間 12 ∼ 24時間 24 ∼ 48時間 48 ∼ 72時間 1∼2週間 4∼6週間 8週以上 効果 一酸化炭素とニコチン濃度の低下,酸 素解離曲線の正常化 組織微小循環の改善 一酸化炭素ヘモグロビン濃度の正常化 と繊毛運動機能の改善 喀痰の減少 呼吸機能の改善,気道クリアランスの 改善,分泌物の正常化 合併症や死亡率の減少〈マスク換気困難〉 Aさんのマスク換気困難の要因としては,先述 したように,「男性」「BMI」「睡眠時無呼吸症候 群」の3つが当てはまる。また,マスク換気困難 の要因は,マスクフィットの問題と換気(気道閉 塞)の問題が存在することも先に述べた。この2 つの可能性が考えられる場合は,意識下挿管を考 慮する必要がある。睡眠時無呼吸症候群のある患 者の80%以上は,麻酔導入後に気道狭窄を起こ すと言われているため十分注意する。 〈喉頭展開・気管挿管困難〉 Aさんの気管挿管困難の要因としては,3-3-2 チェック(開口2横指)が当てはまる。開口困難 の場合,喉頭鏡を挿入することが難しく,挿入で きたとしても口腔内の視野が確保されにくいた め,喉頭展開できないといった状況も考えられ る。筋弛緩薬を投与すると開口できない場合もあ るが,開口困難な場合は挿管困難として考えた方 がよい。その場合は,ビデオ喉頭鏡の使用や気管 支鏡を用いた気管挿管を考慮する。 また,頸部に放射線を照射していたり腫瘤が あったりする場合や短頸の場合は,喉頭展開がで きない可能性があり,BURP法を行い喉頭展開を 補助することも考える必要がある。しかし,やは りそういった場合でも重要なのは,開口できるか, 喉頭展開ができるかどうかを評価することである。
反応
ここまではAさんの呼吸機能について情報収集 を行い,呼吸器についてアセスメントを行った。 ここからは,術前に必要な患者ケアを考えて実践 していく。 術前で必要な呼吸器に対するケアは,禁煙指導 と患者教育である。禁煙指導の具体的な内容とし ては,表5を参考にしながら行う。呼吸器合併症 を減少させることを目的とするのであれば8週間 以上の禁煙が必要であるが,術前の8週間前に指 導することは難しいこともあろう。したがって, できる限り禁煙してもらうよう指導することに努 めたい。 また,患者教育としては,口すぼめ呼吸の練習 や排痰援助の方法を取得してもらうことが重要と なる。術前に呼吸機能の改善を図ることを目的 に,自宅で動かない生活をしている患者であって も,少しでもADLの向上を目指した生活スタイル に変えてもらう必要がある。患者だけでそれを実 行することが難しい場合は,ソーシャルワーカー などと連携して患者ケアを行う。術前にはいかに よい状態で手術を迎えることができるかを考え, 患者にかかわることが重要となる。省察
術前の呼吸器に関する患者ケアのリフレクショ ンは,術後の呼吸状態がどうであるかでしか評価 できない。術前に患者が禁煙を行った,患者の生 活スタイルが変化したなどの情報があれば,継続 看護という視点で評価できるかもしれないが,や はり術後の呼吸器合併症を減少させることが重要 となるため,術前のかかわりの評価は術後合併症 を見るしかない。 また,術後には,継続看護という視点から,術 前のかかわりをカルテに記載することも重要であ る。外来などで術前にかかわった看護師,病棟看 護師,手術室看護師,術後にかかわる看護師へと 継続してケアしていく必要があるため,情報共有 や継続看護の視点から問題点を明確にして記録し ていく。 * * * 次回は循環に関する術前評価について解説する。 引用・参考文献1)Warner MA, Offord KP, Warner ME, et al:Role of preoperative cessation of smoking and other factors in postoperative pulmonary complications:a blinded prospective study of coronary artery bypass patients. Mayo Clin Proc, 64(6), 609-16, 1989.
2)下薗崇宏:慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者―周術期 の呼吸器合併症を中心に,LiSA,Vol.17,No.7,P.674 ~ 678,2010.