顯 密 二 教 比 較 研 究 五 六
顯
密
二
教
比
較
研
究
瀬
成
世
眼
華
嚴
圓
教
と
の
比
較
(
っ
ゞ
き
)
一 、 唯 心 説 の 異 同 華 嚴 は 三 界 唯 一 心 、 々 外 無 別 法 も 盲 ひ 。 心 如 工 書 師 、 書 種 々 五 薀 、 一 切 世 間 中 、 無 法 而 爲 造 と 言 ひ 。 應 観 法 界 性 、 一 切 唯 心 造 と 官 っ て 、 萬 法 は 一 心 の 外 な し と す 。 ま た 眞 官 は 興 教 大 師 の 心 月 輪 釋 に は 心 者 秘 密 荘 嚴 之 寳 藏 、 瑜 伽 輪 圓 之 金 場 、 諸 法 能 生 之 所 依 、 萬 徳 所 歸 之 能 攝 も 言 ひ 。 三 界 唯 心 釋 に も 、 三 界 所 有 一 切 衆 生 、 一 切 諸 法 、 皆 唯 一 心 、 無 有 一 法 而 非 一 心 、 法 唯 一 心 、 々 唯 諸 法 、 若 離 心 外 別 有 一 法 、 即 是 虚 妄 、 亦 是 顛 倒 と 言 へ り 。 是 は も と 大 日 脛 に 云 何 菩 提 、 謂 如 實 知 自 心 と 説 け る 意 に 依 れ り 。 如 實 に 自 心 を 了 知 せ ば 、 諸 法 の 實 相 を も 證 悟 し た 佛 と な り て 、 萬 法 は 唯 心 に し て 、 心 外 無 法 の 義 と な る な り 。 而 ふ し て 華 嚴 で は 萬 法 唯 心 の 心 を 第 八 阿 梨 耶 識 も せ す し て 、 如 來 藏 自 性 清 浮 心 と す 。 何 と な れ ば 、 第 八 の 阿 梨 耶 識 は 個 人 の 心 識 を 成 し た 相 對 心 に し て 、 依 正 人 法 隔 歴 不 融 な り 。 之 を 諸 法 の 本 源 と ず る と き は 、 諸 法 ま た 隔 歴 し て 事 々 無 礙 あ る 能 は す 、 如 來 藏 自 性 清 浄 心 は 、 周 偏 法 界 の 一 心 に し て 染 礙 の 情 相 な き 故 に 、 諸 法 の 性 あ る も 一 即 多 多 即 一 に し て コ 多 融 即 し 、 彼 此 差 別 の 當 體 に 彼 此 互 融 す 。か ゝ る 理 性 が 事 も な る と き は 事 々 亦 た 差 別 の 當 體 に 融 即 無 礙 な る べ し 。 是 故 に 事 々 無 礙 を 説 く 華 嚴 脛 は 、 頼 耶 の 唯 心 を 説 か す し て 、 如 來 藏 心 の 唯 心 説 を 用 ひ た の な り 。 亦 た 融 通 の 法 性 な る が 故 に 、 諸 法 の 性 縮 め て 言 へ ば 色 心 の 性 が 隔 歴 せ す し て 、 色 性 が 心 性 に 融 し て 、 色 心 の 性 あ る も 心 性 に 統 ら れ て 、 唯 一 の 清 浮 心 と 言 は る ゝ 心 と し て 、 唯 心 を 説 け り 。 次 に 眞 言 で は 、 周 遍 法 界 の 前 五 大 も 不 二 な る 第 六 識 大 即 ち 法 界 體 性 智 、 如 來 藏 識 を 以 て 萬 法 唯 心 を 説 く も こ ろ の 心 體 も す 。 即 是 は 竪 に 約 し て 言 へ ば 第 八 識 の 奥 底 に あ る 第 九 無 垢 識 に し て 、 是 が 了 別 あ る 故 に 識 も 吉 は れ 、 決 断 あ る 故 に 智 と 言 は れ 攝 持 を 有 す る 故 に 理 も 言 は れ 、 覺 知 を 有 す る 故 に 佛 と 名 け ら る ゝ な り 。 六 大 無 礙 に し て 前 五 大 の 色 性 が 第 六 識 大 の 心 性 に 融 し て 隔 歴 さ せ る 故 に 、 心 に 統 攝 さ れ て 、 一 切 諸 法 は 唯 一 心 に し て 心 外 無 法 を 説 く も の と す 。 己 上 は 華 巌 眞 吉 の 唯 心 説 同 す る 方 面 な り 。 然 れ こ も 異 な る 方 面 も あ る な り 、 華 嚴 は 法 界 記 に 事 隨 理 而 圓 通 し 、 理 隨 事 而 差 別 も 言 ふ て 、 十 地 諭 に 寳 法 性 、 事 法 性 を 立 る が 如 く 、 性 に 平 等 性 と 差 別 性 と あ り と す れ こ も 、 事 々 無 礙 を 説 く 爲 に 其 性 の 融 通 無 差 よ り 縁 起 す る 方 面 を 取 れ り 。 眞 言 で は 如 來 藏 識 に は 九 識 の 心 々 所 及 無 量 心 識 の 性 を 攝 め て 十 界 諸 法 の 六 大 無 礙 も す 。 亦 秘 藏 記 に 本 來 性 相 各 々 建 立 、 各 々 守 二 自 性 、 不 同 二 水 波 相 融 一乃 至 性 之 處 性 相 宛 然 而 本 有 と あ る 如 く 、 性 に 差 別 性 あ り も す 。 然 ふ し て 秘 密 荘 嚴 を 説 く 爲 め に 其 差 別 性 の 方 を 取 り 、 法 界 體 性 の 當 體 に 八 識 九 識 別 々 の 性 あ り て 五 智 の 如 來 な り と す 。 亦 華 嚴 で は 三 法 無 差 も 言 ひ 、 法 界 縁 顯 密 二 教 比 較 研 究 五 七
顯 密 教 比 較 研 究 五 八 起 と 言 ふ 故 に 、 八 九 識 何 れ で も 諸 法 の 根 本 と す べ き 意 味 は あ れ こ も 、 通 例 萬 法 唯 識 を 説 く に は 如 來 藏 自 性 清 浄 心 の 唯 識 を 談 り て 八 識 の 唯 識 を 説 か す 。 是 故 に 原 人 論 で は 一 心 の 靈 智 の み を 取 り て 諸 法 の 本 原 と し 、 第 八 識 巳 下 を 枝 末 と す る 説 の み を 出 せ り 。 然 る に 眞 言 で は 萬 法 唯 心 の 心 を 定 む る に 、 心 月 輸 の 秘 釋 に 依 れ ば 、 堅 差 別 と 横 平 等 と の 二 途 あ り 。 竪 に 豹 す れ ば 法 界 體 性 即 ち 不 二 一 心 及 第 九 識 以 後 を 以 て 其 體と す 。 何 も な れ ば 竪 に 約 す れ ば 、 六 八 九 に 眞 妄 染 浄 の 別 あ り 、 生 佛 の 心 と 迷 悟 染 浮 の 不 同 あ り て 轉 識 得 智 す べ き が ゆ ゑ な り 。 横 に 約 す れ ば 前 四 智 及 前 入 識 を 以 て 其 體 も す 。 何 も な れ ば 横 に 就 け ば 三 法 無 差 、 生 佛 平 等 に し て 法 界 體 牲 に 萬 徳 を 具 す る は 勿 論 、 前 四 智 も 同 く 萬 徳 を 備 へ て 自 他 彼 此 の 差 別 な く 、 迷 悟 染 浮 の 不 同 な し 。 こ の ゆ ゑ に 一 々 の 智 々 に 五 智 を 有 し 、 各 々 の 心 々 に 九 心 を 具 し て 、 萬 法 を 該 攝 す れ ば な り も 言 ふ 。 亦 華 嚴 で は 如 來 藏 自 性 満 浮 心 は 、 衆 生 身 、 國 土 身 等 の 十 身 即 ち 佛 の 法 報 應 三 身 を 具 す れ こ も 、 十 身 は 互 具 互 融 す る が 故 に 、 因 人 に 對 し て は 不 可 説 な り 。 其 相 好 華 嚴 も 十 蓮 花 藏 世 界 微 塵 数 の 相 好 を 有 し て 、 一 々 法 界 に 偏 し 、 三 世 間 融 通 す る が 故 に 是 又 因 人 に 樹 し て 不 可 説 な り 。 何 と な れ ば 因 人 に 於 て は 法 性 の 法 爾 恒 説 は 如 聾 如 唖 な り 、 因 人 に 順 應 す る 言 説 は 偏 辭 に し て 圓 融 の 實 理 に 符 合 せ ざ る 故 に 、 因 入 に 對 せ ば 不 可 説 の 法 體 な り と す 。 眞 言 で は 自 性 清 浄 心 は 色 心 不 二 に し て 満 月 の 如 き 形 を 有 す る が 故 に 菩 提 心 論 に は 我 見 自 心 、 形 如 月 輪 と 言 へ り 。 此 不 二 の 色 法 は 法 身 法 爾 の 三 色 、 性 佛 性 然 の 四 曼 を 有 し て 眞 實 の 色 法 な り 、 四 相 に 遷 さ る ゝ 妄 假 の 色 法 に 非 す 。 是 故 に 此 自 性 清 浄
心 は 毘 虚 遮 那 の 彿 形 を も 具 し 、 ま た 本 有 の 三 密 を 備 へ て 、 法 身 自 爾 の 説 法 を も 作 せ り 。 又 た 自 内 證 の 眷 屬 も あ り て 此 説 法 を 聴 聞 し 法 味 樂 を 享 受 せ り 。 こ れ ら の 諸 事 が 十 方 法 界 に 周 逼 し て 深 妙 の 荘 嚴 を 具 備 せ り 。 他 の 自 性 清 浄 心 も 亦 同 く し て 、 此 等 の 諸 法 重 々 即 入 す る こ と 帝 綱 の 如 く な る 故 に 、 唯 果 人 自 證 の 境 界 に し て 因 人 の 知 り 得 ざ る こ も な り や も 言 ふ に 然 ら ず 。 因 人 に 對 し て も 可 説 可 知 の 對 象 な り 。 何 も な れ ば 一 に は 寂 照 相 即 す る に 由 る 。 自 性 清 浄 心 即 法 性 海 の 萬 事 は 寂 な る 故 に 照 な り 、 照 な る 故 に 寂 に し て 、 但 寂 但 照 あ る こ と な し 。 其 寂 は 法 界 倶 寂 な り 、 其 照 は 法 界 倶 照 な り 、 而 れ ご も 寂 に 照 を 即 具 し 、照 に 寂 を 即 具 す る が 故 に 、 如 來 内 證 の 智 は 二 智 不 二 な り 。 其 寂 に 即 具 す る 照 に 綱 は ゝ 可 説 な り 。 二 に は 法 性 の 内 薫 に 由 る 。 性 佛 性 然 の 佛 が 恒 に 三 密 を 以 て 説 法 し 衆 生 を し て 醒 覺 せ し め ん こ と を つ と め た ま ふ に 薫 動 さ れ て 、 終 に は 此 法 佛 の 説 を 感 受 す る に 至 る 故 に 可 説 可 知 な り 。 三 に は 深 高 の 宿 習 に 由 る 。 過 去 世 よ り 教 王 經 の 所 説 を 聞 て 之 を 憶 念 觀 想 し た 深 高 の 積 習 性 あ る も の は 、 其 習 性 に 鼓 動 さ れ て 、 自 性 法 身 の 密 説 を 聞 受 す る に 堪 ゆ る が 故 に 可 説 可 知 な り も 言 ふ 意 な り 。 巳 上 は 萬 法 唯 心 の 心 の 説 き 様 異 な る 方 面 な り 。 二 、 佛 身 脱 の 異 同 華 嚴 宗 で は 佛 身 を 剣 す る に 、 融 三 世 間 の 十 身 と 佛 身 自 具 の 十 身 と を 立 っ 。 融 三 世 間 の 十 身 は 衆 生 身 、 國 土 身 、 業 報 身 、 聲 聞 身 、 縁 覺 身 、 菩 薩 身 、 如 來 身 、 智 身 、 法 身 、 虚 室 身 な り 。 此 等 十 身 の 各 々 も 餘 顯 密 二 教 比 較 研 究 五 九
顯 密 二 教 比 較 研 究 六 〇 の 九 身 を 具 し て 百 身 と 成 り 、 百 身 の 各 々 が 亦 餘 の 九 身 を 具 し て 千 身 も な る 故 に 、 眞 應 相 融 し 三 世 間 融 通 す 、 是 故 に 之 を 融 三 世 間 の 十 身 も 名 く 。 佛 身 自 具 の 十 身 は 菩 提 身 、 願 身 、 化 身 、 力 持 身 、 相 好 荘 嚴 身 、 威 勢 身 、 意 生 身 、 福 徳 身 、 法 身 、 智 身 な り 、 此 十 身 は 佛 自 具 の 十 徳 に し て 具 體 具 用 有 應 有 眞 、 倶 融 無 二 な る 故 に 圓 妙 と 稱 す 。 而 も 十 徳 一 身 を 離 れ す し て 更 に 別 佛 な く 、 相 宗 三 身 四 智 の 體 用 不 同 な る に 同 じ か ら す 。 前 の 融 三 世 間 の 佛 身 を は 解 境 の 十 身 も 名 く 、 佛 智 解 悟 の 境 の 十 佛 な る が 故 な り 。 一 切 諸 法 は 佛 智 の 所 照 に 依 れ ば 佛 身 な る こ も が 知 ら る 、 な り 。 後 の 佛 自 具 の 佛 身 を は 行 境 の 十 佛 も 名 つ く 解 絶 修 證 の 十 佛 な る が ゆ へ な り 、 即 ち 修 行 成 就 し て 顯 現 し た る 佛 身 な り 。 此 行 境 の 十 佛 は 解 境 十 身 中 の 如 來 身 に 具 は り し 佛 な る 故 、 解 境 の 十 身 を 擧 れ ば 必 す 具 す れ こ も 、 行 境 の 十 佛 を 擧 れ ば 必 す し も 解 境 の 十 身 を 具 せ ざ る な り 。 若 融 提 に 就 け ば 両 者 何 れ を 擧 て も 皆 具 す る な り 。 是 故 に 印 度 出 現 の 釋 迦 佛 を 三 乗 教 も は 但 化 身 も す れ こ も 華 嚴 一 乗 教 で は 究 竟 十 佛 の 身 も し て 融 三 世 間 の 十 身 も 佛 身 自 具 の 十 佛 も 皆 具 す る 佛 な り も す 。 蓋 し 融 三 世 間 の 十 佛 身 に 於 て 人 畜 一 切 の 生 佛 も 、 山 河 大 地 等 の 萬 像 も 、 悉 く 佛 身 も す る は 如 何 な る 理 由 あ り や も 言 ふ に 、 是 は こ れ 華 嚴 の 教 理 を 信 解 行 證 す る 所 に 現 る ゝ 對 象 な り 。 華 嚴 の 教 理 は 萬 象 か 眞 空 妙 有 に し て 法 性 の 融 通 も 縁 起 相 由 も か あ り て 事 々 の 諸 法 か 圓 融 な る も の も 言 ふ が 華 嚴 の 教 理 な り 輕 卒 に 視 れ ば 萬 象 に 堅 實 な る 自 性 あ る に 似 た れ こ も 、 沈 着 し て 熟 視 す れ ば 、 皆 縁 生 無 性 に し て 其 性 も
融 通 し 、 其 相 も 相 由 し て 、 事 々 の 諸 法 は 互 に 融 通 し て 自 由 無 礙 な り 、 室 有 融 即 し て 中 道 無 作 の あ る こ ぎ を も 顯 せ り 、 即 是 が 常 樂 我 浄 も 言 ふ 涅 槃 四 徳 の 貌 な り 。 涅 槃 は 佛 界 な り 是 故 に 森 羅 萬 象 皆 佛 身 も し た る も の に て 解 境 十 佛 の 名 は 是 に 由 て 立 た も の な り 。 亦 是 が 諸 法 に 本 來 本 有 せ る 實 相 に し て 、 行 境 の 十 佛 は 此 争 々 の 諸 法 自 在 無 礙 な る 所 を 信 解 行 證 し て 、 此 實 相 の 自 由 が 顕 現 し て 柄 焉 た る 十 佛 な り 。 遊 心 法 界 記 に は 事 々 諸 法 の 眞 空 妙 有 は 終 頓 圓 の 後 三 教 皆 談 る と こ ろ な る が 、 其 空 有 無 二 を 一 多 無 盡 の 所 に ま で 談 る が 圓 教 な り も せ り 。 然 る も き は 現 象 の 空 有 無 二 な る は 勿 論 、 實 體 の 方 も 空 有 無 二 の 中 道 な り 。 都 て 森 羅 萬 像 の 性 源 が 空 有 無 二 の 中 道 な る 故 融 三 世 間 の 十 身 も 佛 身 自 具 の 十 佛 も 皆 存 在 せ り も す 。 是 は 佛 智 所 了 の 境 界 な る 故 に 五 教 章 に は 性 海 果 分 も も 十 佛 の 自 境 界 も も 名 づ け て あ り 。 實 體 現 象 も も に 空 有 無 二 な る 故 に 實 體 も 現 象 も ま た 無 二 な り 、 現 象 の 當 位 に 實 體 あ り て 現 象 實 體 共 に 十 佛 の 自 境 界 な る も の な り 。 然 れ と も 五 教 章 下 に 一 往 起 信 論 の 三 大 に 傚 ふ て 二 種 十 佛 の 體 徳 用 に 就 て 常 無 常 を 分 別 す る に 事 理 諸 法 の 性 源 た る 性 海 果 分 を 以 て 二 種 十 佛 の 體 と し 之 が 常 等 の 四 句 あ り も し て 、 性 海 即 ち 眞 如 の 體 大 が 十 佛 の 自 體 圓 融 し て 不 可 説 な る は 不 變 の 故 に 常 な り 。 機 根 に 赴 て 教 と 相 應 す る は 無 常 な り 。 此 因 果 二 分 相 即 無 礙 な る は 亦 常 亦 無 常 な り 。 亦 十 佛 の 自 體 は 縁 起 際 に 隨 ふ が 故 に 倶 非 な り 。 縁 起 際 も は 無 性 な り 是 は 常 に し て 無 常 た る 縁 起 に 即 具 す る が 故 に 常 即 無 常 無 常 即 常 に し て 倶 非 も な る も せ り 。 顯 密 二 教 比 較 研 究 六 一
顯 密 二 教 比 較 研 究 六 二 又 た 性 海 即 ち 眞 如 の 相 大 を 徳 と し 是 も 常 等 の 四 句 あ り も し て 先 づ 修 生 本 有 の 四 何 を 分 別 す 。 一 に は 修 生 な り 、 佛 身 の 無 量 功 徳 は 因 位 の 修 行 に 依 り て 顯 生 す れ ば な り 。 二 に は 本 有 な り 、 因 位 の 修 行 で 顯 れ た 無 量 功 徳 の 當 體 が 本 來 本 覺 眞 如 中 に 具 し た る 功 徳 な り 、 修 行 に 依 て 始 め て 出 來 た る に 非 す 。 三 に は 本 有 修 生 な り 如 來 藏 中 に 無 量 功 徳 あ り し か と も 了 固 無 き 間 に は 隠 れ て 見 へ ざ る な り 、 修 行 し て 了 固 を 成 す る と こ ろ で 顯 る ゝ が 由 へ な り 。 四 に は 修 生 本 有 な り 、 修 生 も は 始 覺 の 無 分 別 智 等 な り 、 此 智 が 本 覺 の 眞 如 に 契 符 し て 冥 然 一 相 も 成 り 始 覺 の 全 體 即 本 覺 な る が ゆ へ な り 。 探 玄 記 (左四 三 ) 十 五 喩 を 設 け て 金 も 荘 嚴 具 と の 如 し 、 本 有 は 法 身 に し て 金 の 如 く な り 、 修 生 は 教 化 に し て 工 匠 に 依 て 出 來 た る 荘 嚴 具 の 如 く な り 、 修 生 本 有 は 報 化 即 法 身 を 具 顯 す る も の に し て 嚴 具 を 成 す る に 由 て 金 徳 を 顯 す 如 く な り 、 本 有 修 生 は 一 法 身 が 報 化 を 成 す る も の に て 嚴 具 は 金 を 攬 て 成 し て 別 の 自 體 な き が 如 く な り 、 唯 金 に し て 嚴 具 を 礙 へ ざ る 如 、 一 法 身 に し て 報 化 を 礙 へ ざ る な り 、 唯 嚴 具 に し て 金 を 礙 へ ざ る 如 く 單 報 化 に し で 即 具 法 身 な り も 言 へ り 。 五 教 章 は 斯 く し て 本 有 修 生 圓 融 無 礙 な る が 故 に 佛 身 の 徳 は 常 無 常 雙 亦 雙 非 の 四 句 に 通 す と せ り 。 後 に 性 海 即 ち 眞 如 の 用 大 に 就 て 常 無 常 等 の 四 旬 を 分 別 す 。 起 信 終 教 は 唯 報 化 佛 を 用 大 も す れ と も 、 今 圓 教 は 通 三 世 間 の 十 佛 の 圓 融 平 等 は 性 海 眞 如 の 用 大 も し て 、 此 四 句 分 別 を な す 。 一 に は 常 な り 、 恒 に 一 心 法 界 に 順 し て 間 斷 な け れ ば な り 。 二 に 無 常 な り 、 世 間 に 隨 ふ て 現 す る が 故 な り 。 三 に 常 亦 無 常
な り 、 常 無 常 雙 へ て 現 す る が ゆ へ な り 。 四 に 非 常 非 無 常 な り 、 常 即 無 常 の 故 に 非 常 な り 、 無 常 即 常 の 故 に 非 無 常 な り 、 縁 起 無 性 に し て 常 無 常 圓 融 す る が 故 に 隨 っ て 一 を 取 れ ば 實 を 得 ざ れ ば な り 。 五 教 章 は 斯 の 如 く 佛 身 の 體 徳 用 を 分 け そ れ の 常 無 常 を 分 別 し 、 後 ち 之 を 結 ぶ に 此 上 三 義 若 學 即 倶 體 乃 至 用 即 倶 用 以 二 融 攝 無 礙 一故 皆 有 二 常 等 無 礙 一 も 言 つ て 佛 身 の 體 徳 用 は 互 に 融 攝 無 礙 に し て 、 體 に つ け ば 徳 も 用 も 體 に 融 し て 體 に 攝 ま り 。 徳 に つ け ば 體 も 用 も 徳 に 融 し て 徳 に 攝 ま り 。 用 に つ け ば 體 も 徳 も 用 に 融 し て 用 に 攝 り て 、 體 徳 用 皆 常 無 常 等 の 無 礙 あ り も 體 徳 用 の 別 物 な ら ざ る を 示 し た ま へ り 。 然 る と き は 若 體 の 常 に 附 け ば 徳 の 三 十 二 相 、 八 十 種 好 、 八 萬 四 千 の 相 好 も 、 十 蓮 華 藏 塵 の 相 好 も 皆 性 海 の 處 に あ り て そ れ の 顯 現 な り 。 小 乗 に 云 ふ が 如 く 相 好 業 を 修 し て 始 め て 得 た る に は 非 ず 。 然 れ と も 若 用 の 無 常 に 附 け ば 、 既 に 融 三 世 間 自 由 無 礙 の 佛 身 な れ ば 、 張 ひ て 小 身 、 張 ひ て 大 身 な る に 非 す 、 地 前 人 を 化 す る に は 染 土 を 現 じ て 丈 六 等 の 化 身 も 成 り 、 地 上 人 を 化 す る に は 浮 土 を 現 じ て 法 界 偏 満 の 報 身 も 成 り 、 人 類 に し て 非 人 格 を 好 む も の に は 虚 室 身 と 成 る 等 あ り て 自 由 自 在 な り 。 其 穢 土 浄 土 を 現 す る と 言 ふ は 無 而 忽 有 の 變 現 に 非 す 。 唯 佛 三 輸 の 化 導 に 依 り て 了 因 の 開 發 す る 淺 深 に 隨 ふ て 、 國 土 の 見 様 が 異 な れ る の み 。 是 故 に 五 教 章 に 十 佛 の 化 境 も し て 蓮 華 藏 世 界 、 十 重 世 界 海 、 無 量 雑 類 世 界 の 三 類 を 出 し て 、 此 上 三 位 並 是 盧 舎 那 十 身 攝 化 之 處 、 仍 此 三 位 本 末 圓 融 相 收 無 礙 、 何 以 故 以 下 随 二 一 世 界 一即 約 二 麁 細 一有 十 此 三 上 故 と 言 へ り 。 本 末 と は 華 藏 を 本 と し て 餘 の こ を 末 も す 、 十 佛 の 三 顯 密 二 教 比 軟 研 究 六 三
顯 密 二 教 比 較 研 究 六 四 世 間 が 鎔 融 す る 故 に 本 末 三 世 界 が 圓 融 相 收 す る な り 。 隨 一 世 界 等 も は 上 の 本 末 三 國 土 は 別 處 あ る に 非 ず 同 一 世 界 に 於 て 見 を 異 に す る も の な り 。 恰 も 同 一 の 菩 提 樹 も 機 見 に 由 て 凡 樹 と 見 る あ り 、 七 寳 樹 と 見 る あ る が 如 く 、 見 聞 生 の 人 で は 此 世 界 を 麁 に 見 て 雜 類 世 界 も す 。 解 行 生 の 人 で は 少 し く 進 ん で 此 世 界 の 麁 見 を 離 れ て 十 重 世 界 海 も す 。 證 入 生 の 入 で は 此 世 界 を 細 に 見 て 十 重 無 盡 の 華 藏 世 界 な り も す 。 此 華 藏 界 は 三 類 列 ね た 中 へ 入 る れ ば 説 位 に 下 り て あ れ と も 果 海 證 入 の 處 な る 故 に 不 可 説 に 異 な ら ざ る 説 位 な り 。 五 教 章 は 其 意 味 を 表 は し て 最 初 に 國 土 海 を 出 し て 次 に 華 藏 海 次 に 十 重 世 界 海 も 淺 深 次 第 し て 明 せ り 。 國 土 海 は 縁 起 因 分 の 極 致 圓 融 自 在 の 性 海 、 十 佛 自 體 の 所 居 に し て 、 三 乗 教 に い は ゆ る 法 性 土 自 受 用 土 の 如 く な る 國 土 な り 。 華 藏 界 も 十 重 無 盡 、 圓 融 自 在 果 分 、 不 可 説 の 處 な る 故 に 華 藏 が 見 ゆ れ ば 此 國 土 海 が 見 ゆ る な り 。 是 に 由 り て 化 境 の 三 類 本 末 圓 融 す も 云 ふ は 即 ち 國 土 海 、 華 藏 界 、 世 界 海 、 雜 類 界 の 四 土 鎔 融 な り 。 亦 た 此 鎔 融 も 前 に い は ゆ る 體 徳 用 の 互 融 無 礙 も に 依 れ ば 、 此 世 界 の 實 在 の 方 に も 現 象 の 方 に も 、 二 種 の 十 身 佛 及 其 所 居 の 國 土 が 偏 在 せ り も 言 ふ が 、 華 嚴 宗 佛 身 説 の 綱 領 な り 又 密 教 で は 宇 宙 萬 有 は 色 心 即 ち 物 質 も 精 神 の 外 な し 。 其 法 性 は 色 性 に 附 け ば 、 分 け て 地 水 火 風 室 の 五 大 な り 。 心 性 に 附 け ば 、 九 識 五 智 の 性 あ れ と も 、 合 し て 一 の 識 大 な り 。 此 六 大 が 横 竪 無 邊 に 偏 在 し て 萬 有 の 實 體 も な る が 故 に 之 を 體 大 も 名 く 。 即 是 が 阿 字 諸 法 本 不 生 の 體 に し て 、 諸 法 を 圓 融 無 礙 に 具 す る が 故 に 涅 槃 の 四 徳 あ り て 、 佛 果 の 無 邊 萬 徳 を 具 有 す 。 之 は 視 て 分 つ べ き も の な る 故 に 相 大 も 名 く
前 五 大 即 ち 色 の 實 相 法 性 に は 胎 藏 界 と 名 け て 、 四 重 圓 壇 十 三 大 院 あ り 。 之 に 総 数 四 百 十 四 尊 の 佛 菩 薩
等
ま
し
く
て
種
々
無
量
の
妙
樂
事
を
以
て
荘
嚴
せ
り
六
大
各
具
互
具
し
て
無
礙
渉
人
す
る
故
に
五
大
即
五
智
の
如
來 に し て 、 中 臺 八 葉 院 に ま し ま し て 、 各 四 曼 を 具 足 せ り 。 一 に 大 曼 茶 羅 、 此 れ は 一 々 の 佛 菩 薩 の 尊 形 相 好 身 な り 、 源 も 五 大 の 佛 形 な る 故 に 大 と 名 く 。 二 に 三 昧 耶 曼 茶 羅 此 は 諸 尊 所 持 の 刀 劔 、 輪 珠 、 蓮 杵 、 等 及 び 手 に 印 を 結 ぶ 等 な り 。 亦 依 正 不 二 に し て 密 嚴 佛 國 の 七 寳 樹 林 宮 殿 棲 閣 等 都 べ て 五 妙 境 の 器 界 は 皆 是 な り 。 三 昧 耶 も は 平 等 も 譯 す 、 内 證 も 外 相 も 平 等 な る の 義 な り 。 即 ち 觀 音 所 持 の 蓮 華 は 内 證 が 同 體 の 大 悲 無 染 着 の 表 幟 な り 。 文 珠 所 取 の 利 劔 は 内 證 の 大 智 斷 惑 の 表 幟 な り 。 彌 勒 の 寳 輪 は 説 法 破 執 の 夙 心 を 表 示 せ る が 如 き な り 。 三 に 法 曼 茶 羅 、 之 れ は 本 尊 の 種 子 (等 一 二 字 ) 眞 言 (等 一 句 一 章 ) 一 切 經 論 の 文 及 義 、 諸 尊 所 住 の 三 摩 地 、 佛 智 所 證 の 眞 如 等 攝 ま れ り 。 法 と は 軌 持 の 義 、 能 詮 の 文 字 は 所 詮 の 義 取 を 軌 持 す る が 故 な り 。 一 切 法 が 事 相 を 顯 現 す る と き 必 す 文 字 を 成 す 。 大 日 經 に 一 切 諸 法 本 不 生 故 、 阿 宇 形 現 と 言 へ り 、 聲 宇 即 實 相 の 義 な り 。 四 に 羯 磨 曼 茶 羅 、 是 は 諸 佛 菩 薩 等 の 行 住 坐 臥 の 四 威 儀 、 取 捨 屈 申 等 な り . 羯 磨 も は 事 業 も 譯 す 。 上 み の 三 曼 身 が 威 儀 事 業 あ る に 名 く 。 亦 此 共 相 の み な ら す 金 木 泥 を 以 て 一 切 像 を 躊 刻 造 す る 等 の 如 き 別 の 事 業 も あ り 、 之 を 羯 磨 も 名 く 。 上 來 い は ゆ る 體 相 二 大 は 共 に 本 有 常 佳 の 法 に し て 、 次 第 出 現 す る も の に 非 す 。 秘 藏 記 に は 性 之 處 性 相 、 宛 然 而 本 有 、 譬 如 三 日 月 與 二 光 明 一 も 言 へ り 。 日 月 も は 性 に し て 體 大 に 喩 へ 、 光 明 と は 相 に し て 相 大 顯 密 二 教 比 較 研 究 六 五顯 密 二 教 比 較 研 究 六 六 に 喩 ふ る 意 な り 。 然 る に 佛 及 三 乗 の 聖 人 及 六 道 衆 生 の 身 形 は 四 曼 中 の 大 曼 に し て 、 智 正 覺 世 間 衆 生 世 間 を 攝 す 。 此 十 界 正 報 の 所 依 た る 國 土 は 四 曼 中 の 三 曼 に し て 、 器 世 間 を 攝 す 。 若 義 を 以 て 言 へ ば 、 四 聖 界 内 心 の 功 徳 は 法 曼 に 攝 ま り 。 十 界 正 報 の 業 用 は 羯 曼 に 攝 り て 、 四 曼 を 以 て 十 界 を 概 括 す る こ と を 得 る 。 而 ふ し て 佛 界 を 除 く の 外 九 界 は 惑 業 苦 三 道 の 相 あ り 、 云 何 か 佛 界 の 徳 相 即 ち 曼 茶 羅 も 官 ふ こ と を 得 る や も 言 ふ に 。 そ れ ら 九 界 惑 業 苦 の 體 は 皆 六 大 法 性 に し て 各 阿 字 及 阿 字 の 實 義 を 省 す 。 此 實 義 よ り 云 ふ と き は 、 九 界 及 三 道 は 其 實 相 が 佛 地 の 法 般 解 三 徳 な り 。 仍 て 九 界 三 道 の 實 相 に 就 て 佛 界 の 四 曼 あ る こ と を 談 す 。 即 是 が 華 嚴 の 融 三 世 間 の 十 佛 が 十 界 悉 く 佛 身 も す る に 同 じ こ も な り 。 古 來 華 嚴 は 胎
藏
の
淺
略
梵
綱
は
金
頂
の
淺
略
と
云
語
あ
り
。
華
巌
の
十
佛
は
華
藏
世
界
に
ま
し
く
て
十
界
三
世
間
を
融
通
す
。
眞
言 胎 藏 の 五 佛 は 八 葉 の 蓮 臺 に 居 し て 斯 の 如 く 十 界 三 世 間 を 圓 融 せ り 。 華 嚴 の 華 藏 は 此 娑 婆 界 か 蓮 花 の 形 ち し て 居 る に 名 く 。 密 教 の 胎 藏 も 此 娑 婆 界 の 肉 團 心 が 八 葉 蓮 華 の 華 實 を 胞 胎 せ る 如 く に 名 く 。 仍 て 此 物 質 よ り 或 れ る 世 界 は 華 藏 も も 胎 藏 も も 名 け ら る ゝ な り 。 而 も 色 心 不 二 に し て 生 き も の な る 故 に 佛 菩 薩 の 身 形 及 所 居 の 器 界 あ り て 、 三 世 間 を 圓 融 せ り 。 大 日 經 に は 此 世 界 を 胎 藏 世 界 も 名 け た ま へ り 。 其 文 に い は く 。 我 今 山 二 現 妙 華 布 地 胎 藏 華 嚴 世 界 種 性 海 中 一、 從 二 於 種 々 樂 欲 一而 化 二 導 之 一 と 、 然 ら ば 胎 藏 界 は 華 藏 界 と 同 處 異 名 な り 。 又 後 一 大 即 ち 識 大 の 法 性 實 相 は 、 我 所 見 で は 通 例 の 心 識 な れ と も 、 佛 果 に 至 れ ば 、 五 智 三 十 七 智 乃 ,至 刹 塵 智 と な り て 顯 る ゝ も の 是 な り 。 即 身 義 に 心 数 心 王 過 刹 塵 各 具 五 智 興 際 智 を 釋 し て 、 心 数 者 多 一 識 、 心 王 者 法 界 體 性 智 等 、 各 具 五 智 者 明 二 一 々 心 王 心 敷 各 々 有 二 之 と 官 へ り 。 識 大 は 心 王 心 所 あ り 心 王 は 九 識 心 数 は 五 十 一 の 心 所 乃 至 十 佛 刹 塵 数 の 心 所 あ り 。 是 を 多 一 識 と 言 ふ は 、 秘 藏 記 に 不 一 動 二 第 九 己 上 九 識 一其 餘 十 佛 刹 徴 塵 数 一 切 心 主 、攝 二 一 識 一是 謂 二 十 識 一、 是 名 二 一 切 一 心 識 一 と あ り て 、 此 一 切 一 心 識 か 多 一 識 な り 。 此 は 八 葉 九 尊 外 の 諸 尊 な る が 故 に 其 義 を 表 し て 多 一 識 と 云 ふ 。 即 ち 平 生 知 る と こ ろ の 心 数 の 實 相 は 五 智 如 來 の 脊 屬 衆 な る も の な り 。 五 智 と は 一 に 法 界 體 性 智 、 第 九 菴 摩 羅 識 の 成 れ る 智 な り 二 に 大 圓 鏡 智 、 第 八 阿 梨 耶 識 の 成 れ る 智 な り 。 三 に 平 等 性 智 、 第 七 未 那 識 の 成 れ る 智 な り 。 四 に 妙 観 察 智 、 第 六 意 識 の 成 れ る 智 な り 。 五 に 成 所 作 智 、 前 五 識 の 成 れ る 智 な り 即 ち 五 識 か 果 位 の 識 と 成 る と き 。 其 智 用 等 き か 故 に 合 し て 一 の 成 所 作 智 と 名 く 。 通 例 顯 教 に 於 て は 佛 陀 に 大 圓 鏡 智 等 の 四 智 を 具 足 せ り と 言 ふ は 定 説 な り 。 今 密 教 は 其 四 智 総 合 の 所 に 於 て 法 界 體 性 智 あ り と す 。 何 と な れ ば 智 獨 り 存 す る に 非 ず 、 智 の 處 に 必 す 前 五 大 を 具 し て 六 大 あ り て 、 法 界 諸 法 の 體 性 と 成 る か 故 に 是 を 法 界 體 性 智 も 名 く 。 一 々 の 心 王 心 数 等 の 實 相 は 此 五 智 卅 七 智 乃 至 無 際 智 を 具 す る 故 修 生 位 で は 一 々 の 諸 尊 か 此 實 相 を 顯 せ り 、 然 れ ば 精 神 の 方 も 實 際 は 全 く 佛 な り 。 此 心 識 の 實 相 た る 佛 躰 が 堅 固 不 壊 に し て 破 無 明 な る よ り 金 剛 界 と 名 け て 、 九 會 の 曼 茶 羅 め り 。 総 数 一 千 四 百 六 十 一 尊 の 佛 菩 薩 等 在 せ り 。 各 々 大 三 法 羯 の 四 曼 相 大 を 具 せ り 。 九 會 の 向 下 門 、 第 一 羯 摩 會 顯 密 二 教 比 較 研 究 六 七
顯 密 二 教 比 較 研 究 六 八 は 、 五 相 を 以 て 身 を 成 す る 事 業 成 就 に 名 け て 、 略 擧 す れ ば 五 佛 四 波 羅 密 十 六 大 菩 薩 等 の 三 十 七 尊 あ り て 各 相 妙 を 具 足 せ る 、 即 是 大 曼 茶 羅 な り 。 第 二 三 昧 耶 會 は 、 諸 舞 手 に 印 契 を 結 び 器 枝 等 を 持 し て 本 誓 を 表 示 せ り 、 即 是 三 昧 耶 曼 茶 羅 な り 。 第 三 徴 細 會 は 、 諸 尊 各 五 智 を 具 し て 一 切 衆 生 を 感 化 す る 力 の 微 細 な る に 名 く 、 即 是 法 曼 茶 羅 な り 。 第 四 供 養 會 は 、 羯 摩 會 一 千 六 十 一 尊 の 中 に 於 て 大 日 如 來 を 本 尊 と し 餘 の 諸 尊 が 各 々 寳 冠 華 曼 等 の 種 々 物 品 を 捧 げ て 供 養 す る に 名 く 。 是 の 故 に 是 は 羯 摩 曼 茶 羅 に 當 る 。 第 五 に 四 印 會 は 、 前 の 四 會 を 合 し て 一 會 と し た る に 名 け て 四 曼 離 る 、 能 ざ る を 顯 は せ り 。 第 六 に 一 印 會 は 四 曼 必 す 不 離 な る は 総 し て 一 千 六 十 一 尊 の 四 曼 は 都 て 其 躰 一 の 大 日 獨 一 法 身 な る に 基 く こ と を 顯 は し て 此 會 に は 大 日 一 尊 な る に 名 く 。 首 書 曼 茶 羅 抄 に は 一 印 會 は 諸 尊 を 大 日 に 攝 入 し 餘 會 は 大 日 よ り 諸 尊 を 出 生 す と 言 へ り 。 第 七 の 理 趣 會 は 、 向 上 門 の と き は 、 衆 生 が 本 有 の 佛 性 に 趣 向 す る こ と 、 即 ち 衆 生 が 惑 障 を 斷 じ て 欲 觸 愛 慢 の 染 法 を 如 來 法 性 の 眞 智 と 開 顯 す る に 名 く 。 向 下 門 の と き は 前 の 六 會 は 佛 の 自 利 に し て 以 下 三 曾 は 佛 の 利 他 な り 。 大 日 自 覺 の 徳 が 衆 生 に 趣 向 し て 覺 他 の 作 用 を 爲 す に 菩 薩 の 身 即 金 剛 菩 薩 と 成 り て 衆 生 を 化 益 す る に 名 く 。 是 は 果 即 因 を 顯 は す 。 第 八 の 降 三 世 羯 摩 會 は 、 大 日 如 來 が 利 他 の 作 用 を 爲 す に 單 に 菩 薩 の 形 躰 に 止 ま ら す し て 煩 悩 の 怨 敵 を 降 伏 す る に 恐 る べ き 威 力 を 以 て 警 戒 す る 一 切 威 儀 事 業 に 名 く 。 即 ち 金 剛 菩 薩 大 恋 怒 身 を 現 し 、 左 足 に は 煩 悩 障 を 象 徴 し た 大 自 在 天 を 踏 み 、 右 足 に は 所 知 障 を 象 徴 し た る 烏 摩 妃 を 踏 み て 、 二 障 を 降 伏 す る 相 を 顕 は せ る も の 是 な り 。 降 三 世
と は 過 現 未 の 二 障 の 怨 敵 を 降 伏 す る こ と な り 。 第 九 の 降 三 世 三 昧 耶 會 は 、 前 會 は 羯 摩 身 な り 、 此 會 は 三 昧 耶 形 を 現 し て 第 八 會 の 事 業 を 成 就 せ ん こ と を 期 す 、 即 ち 大 悲 の 弓 箭 を 持 し て 魔 王 を 降 伏 し 衆 生 を 警 覺 す る の 相 を 顯 す る の 是 な り 。 己 上 云 ふ と こ ろ は 向 下 門 に し て 佛 果 の 自 證 門 に 住 し て 化 他 の 降 伏 門 に 出 る 次 第 な り 。 若 向 上 門 な ら ば 降 三 世 三 昧 耶 會 を 第 一 と し て 、 羯 摩 會 を 以 て 第 九 と す 。 是 は 衆 生 の 實 相 は 向 下 門 の 二 利 圓 満 せ る 佛 躰 な れ と も 、 此 本 有 の み で は 無 明 覆 ふ て 顯 は れ ざ る 故 に 、 ま た 向 上 門 を も 具 し て 、 二 者 同 時 に あ る こ と を 致 す も の と す 。 亦 我 等 色 身 の 法 性 は 前 五 大 に し て 、 其 實 相 は 佛 菩 薩 の 法 身 萬 徳 を 含 藏 攝 持 す る を 顯 は し て 、 胎 藏 界 の 名 を 立 て ゝ 都 へ て 十 三 大 院 あ り 。 前 十 二 院 に は 四 百 十 四 尊 在 せ り 。 第 一 に 中 臺 八 葉 院 は 、 八 葉 の 蓮 華 に し て 衆 生 八 瓣 の 肉 團 心 を 象 徴 し た る も の な り 。 是 に 大 日 と 四 佛 四 菩 薩 と あ る よ り 見 れ ば 、 色 心 不 二 な る に よ り て 六 大 を 總 稱 し て 阿 字 諸 法 本 不 生 の 義 を 示 す に あ り 。 阿 字 に は 室 有 不 生 の 三 義 あ り て 諸 法 の 當 躰 は 即 室 無 性 な れ と も 、 其 無 性 な る は 萬 法 を 圓 具 す る に 由 る が 故 に 、 室 有 相 即 の 中 道 が 實 相 な り 。 こ の 義 本 來 法 爾 と し て あ る が 故 に 人 法 の 諸 注 は 本 有 常 佳 の も の な ら ざ る を 得 す 。 本 有 常 住 な れ ば 常 樂 我 浄 と 云 ふ 涅 槃 の 四 徳 あ り 。 而 も 色 心 不 二 な る も き は 人 格 を 有 す る も の な れ ば 、 即 是 れ 本 有 の 佛 菩 薩 な り 。 是 故 に 此 中 臺 八 葉 院 に は 大 日 と 四 佛 四 菩 薩 あ り と し た も の な り 。 第 二 に 東 方 遍 知 院 は 、 別 し て 六 大 中 識 大 の 徳 な り 。 即 是 は 一 切 諸 佛 の 遍 知 能 生 の 徳 を 顯 す に あ り て 七 尊 在 せ り 。 第 三 に 西 方 持 顯 密 二 教 比 較 研 究 六 九
顯 密 二 教 比 較 研 究 七 〇 明 院 は 、 別 し て 六 大 中 前 五 大 の 徳 な り 、 故 に 或 は 之 を 五 大 院 と も 稱 す 。 ま た 之 を 表 す る に 五 尊 を 以 て せ り 。 第 四 に 南 方 金 剛 手 院 は 智 慧 の 徳 を 表 し た も の に て 三 十 三 尊 あ り 。 第 五 に 北 方 觀 昔 院 は 、 慈 悲 の 徳 を 示 し た も の に て 三 十 七 尊 あ り 。 此 二 院 に て 悲 智 無 缺 を 顯 せ り 。 第 六 に 東 方 釋 迦 院 は 、 悲 智 二 徳 が 人 間 界 に 人 類 と し て 實 現 せ る を 彰 す 。 是 に 三 十 九 尊 あ り 。 第 七 に 西 方 盧 室 藏 院 は 、 盧 室 の 萬 有 を 包 含 せ る が 如 く 佛 果 の 萬 徳 を 具 足 せ る に 名 く 。 其 萬 徳 要 を 探 れ ば 悲 智 の 二 徳 に 渦 ぎ ず 。 仍 て 此 院 は 悲 智 圓 満 悲 智 合 一 を 顯 は し て 二 十 八 尊 あ り 。 第 八 に 東 方 文 殊 院 は 、 釋 迦 の 智 的 作 用 の 一 層 外 部 に 現 は れ た る を 示 す 。 此 に 廿 五 尊 あ り て 五 智 各 具 五 智 の 義 を 表 は せ り 。 第 九 に 南 方 除 蓋 障 院 は 金 剛 手 院 の 智 慧 門 よ り し て 更 に 一 層 不 思 議 菩 薩 の 如 き 幾 多 の 智 慧 者 を 生 じ 來 り 、 進 み て 佛 位 に 到 達 す る 蓋 障 物 を 除 却 す る 自 利 門 の 表 示 な り 。 此 除 蓋 障 尊 は 初 地 の 三 昧 な る 故 に 人 法 二 室 の 智 慧 を 以 て 凡 夫 聲 聞 縁 覺 菩 薩 の 四 垢 蓋 障 を 除 却 し て 、 三 徳 を 顯 現 せ し む る を 表 す 、 都 て 九 尊 あ り 。 第 十 に 北 方 地 藏 院 は 、 觀 音 院 の 慈 悲 門 よ り し て .更 に 一 層 地 藏 菩 薩 の 如 き 幾 多 の 慈 悲 者 を 生 し 來 れ る 利 他 門 の 表 示 な り 。 前 の 除 蓋 障 院 と 悲 智 一 具 の 法 門 に し て 此 院 は 其 悲 の 方 な り 。 觀 音 院 の 悲 門 よ り 更 に 利 他 救 濟 者 の 現 は れ 來 る を 表 し て 都 て 九 尊 あ り 。 第 十 一 に 西 方 蘇 悉 地 院 は 、 蘇 悉 地 こ ゝ に 譯 し て 妙 成 就 と 云 。 如 上 の コ 切 諸 徳 を 成 就 し て 飲 さ ゞ る を 表 す 、 是 に 八 尊 あ り 。 第 十 二 に 外 金 剛 部 院 は 、佛 菩 薩 以 外 の 者 を 悉 く 此 中 に 攝 む る 意 な り 。 印 度 婆 羅 門 教 に 云 諸 神 も 世 上 に 信 用 せ る 諸 神 鬼 神 も 第 六 天 の 魔 王 及 地 獄 の 焔 魔 王 も 皆 大 日 如 來 が 變 化 し て
佛 法 を 守 護 し 衆 生 濟 度 の 方 便 に 出 た る を 示 す が 此 院 な り 。 ま た 當 相 即 道 よ り 云 ふ と き は 、 十 住 心 諭 に 若 能 く 密 號 名 字 を 明 察 し 、 荘 嚴 秘 密 を 深 開 す る と き は 、 地 獄 天 堂 、 佛 性 闡 提 、 煩 悩 菩 提 、 生 死 涅 槃 、 邊 邪 中 正 、 室 有 偏 圓 、 二 乗 一 乗 、 皆 是 自 心 佛 の 名 字 焉 捨 焉 取 と 言 へ る が 如 く 、 十 界 皆 自 心 佛 な り 。 佛 菩 薩 外 の 衆 生 と 雖 と も 除 く こ と 能 は す 。 四 果 の 聖 人 も 、 凡 夫 人 天 も 、 五 逆 邪 見 人 も 、 種 々 悪 趣 の 衆 生 も 、 皆 是 れ 大 日 如 來 な り 。 十 界 の 大 日 如 來 も は 此 事 な り 。 然 れ と も 今 は 且 く 佛 法 守 護 の 種 類 を 此 部 院 に 置 き て 四 方 合 し て 二 百 五 尊 あ り 。 十 三 に 四 大 護 院 は 四 天 王 あ り て 是 も 佛 法 守 護 の 神 な り ( 現 圖 曼 茶 に 此 院 な し ) 上 來 両 部 の 諸 尊 数 限 量 あ り と し た れ と も 實 は 十 方 法 界 無 量 無 邊 の 諸 尊 あ り て 一 々 の 尊 各 々 大 三 法 羯 の 四 曼 を 具 し て 横 竪 無 邊 な り 。 亦 此 胎 曼 は 既 に 四 曼 を 具 す る 上 に 、 自 性 輪 と て 容 貌 寂 定 相 に し て 佛 陀 の 自 性 を 表 現 す る も の を 、 正 法 輪 と て 積 極 的 に 衆 生 救 濟 の 相 を 現 す る も の と 、 教 令 輪 と て 強 剛 難 化 の 衆 生 を 度 さ ん が 爲 に 消 極 的 に 違 逆 の 身 を 現 す る と あ り て 。 佛 身 な れ と も 因 人 に 於 て は 是 が 見 へ ざ る 故 に 、 此 胎 曼 を ば 行 者 の 因 中 に し て 説 く と 、 如 來 の 果 位 に し て 説 く と の 二 途 あ り 。 一 に 行 者 の 因 中 に し て 説 か ば 、 菩 提 心 爲 因 、 大 悲 爲 根 、 方 便 爲 後 の 次 第 に て 外 院 を 因 の 句 と し 、 第 二 三 を 根 の 旬 と し 、 中 臺 に 入 る を 方 便 爲 究 竟 の 句 と す る な り 。 二 に 如 來 の 果 位 に し て 説 か ば 、 中 臺 を 因 の 句 と し 、 八 葉 を 根 の 句 と し 、 外 の 三 重 壇 を 合 し て 方 便 爲 究 竟 の 旬 と す る な り 。 、 ま た こ の と き 大 日 の 四 種 法 身 あ り て 中 院 は 自 性 身 な り 、 八 葉 九 尊 同 一 眦 盧 遮 那 な る が 故 な り 。 一 重 二 重 は 自 他 受 用 身 な り 。 第 三 重 は 變 化 身 な 顯 密 三 教 氏 較 研 究 七 一
顯 密 二 教 比 軟 研 究 七 二 り 。 外 金 剛 部 は 等 流 身 な 。 り 自 性 身 と は い は ゆ る 唯 佛 與 佛 乃 能 窮 盡 諸 法 實 相 と 云 實 相 の こ と な り 。受 用 身 と は 自 受 用 は 初 地 已 上 分 に 法 身 を 得 る が 如 き な り 。 他 受 用 は 初 地 己 上 他 の 感 見 に 隨 ふ 如 き な り 。 變 化 身 は 八 相 成 道 し て 、 衆 生 を 度 す る 如 き な り 。 等 流 身 は 同 等 流 類 身 に て 九 界 身 を 攝 む 。 斯 く し て 大 日 法 身 の 一 に 十 界 を 具 す る が 故 、 四 種 法 身 は 即 是 十 界 平 等 の 曼 茶 と な る 。 何 と な れ ば 、 此 四 身 は 且 く 大 日 經 通 別 二 序 の 所 説 に 依 り て 本 影 合 論 の 建 立 を 爲 し 、 自 性 身 は 大 日 經 の 教 主 即 ち 純 部 の 密 教 を 説 き 、 餘 の 三 身 は 自 性 會 場 の 爲 に 瑞 相 を 現 し て 大 衆 を 感 動 せ し め 、 塵 道 世 界 の 爲 に 條 末 の 密 教 を 説 て 、 化 度 の 業 用 を 施 す と す れ と も 、 尚 ほ 自 性 會 の 四 身 建 立 も あ り て 、 結 局 四 身 は 各 々 横 竪 の 二 徳 あ り て 、 實 に は 無 淺 深 な る が ゆ ゑ な り 。 然 る に 自 性 身 の 大 日 が 釋 迦 と 云 ふ 變 化 身 を 示 現 し て 、 而 か も 此 等 の 四 身 各 横 竪 二 徳 を 具 し て 四 身 平 等 な る と き は 、 釋 迦 即 大 日 、 大 日 即 釋 迦 な り 。 是 故 に 普 賢 觀 經 に は 眦 盧 遮 那 即 釋 迦 と 説 け り 。 何 故 に 二 教 論 に 顯 密 の 教 主 異 れ り と 言 へ る や 此 疑 を 清 釋 せ ば 、 大 日 經 は 三 大 圓 融 と し て 自 性 法 身 に 佛 形 も 三 輪 説 法 も 皆 あ り と し た ま へ り 。 仍 て 此 經 の 教 主 は 自 性 法 身 の 大 日 と 言 ざ る を 得 す 。 又 顯 教 の 諸 經 は 自 性 法 身 は 但 平 等 に し て 佛 形 及 三 輪 説 法 あ る も の と せ す 。 是 故 に 顯 教 の 教 主 は 應 化 身 な り と 言 ざ る を 得 す 。 然 れ と も 四 身 融 即 す る と き は 顯 密 の 教 主 は 同 一 佛 身 と す べ き に 、 大 日 の 三 身 釋 迦 の 三 身 各 別 な り も し た ふ 所 以 は 、 六 大 法 性 は 阿 字 の 實 義 即 ち 室 有 不 生 の 三 義 を 有 し て 、 一 多 法 界 相 即 す る に 依 れ り 。 一 法 界 の と き は 善 賢 觀 經 の 如 く 釋 迦 即 大 日 ご 説 く べ き な れ と も 、 多 法 界 の と き
は 大 日 釋 迦 の 三 身 各 別 な り と 言 ざ る を 得 す 。 是 故 に 多 法 界 の 義 に 依 て 二 教 の 教 主 別 な る を 示 し て 顯 密 教 理 の 淺 深 を 顯 は し た も の な り 。 前 來 は 六 大 法 性 に 具 せ る 實 相 の 功 徳 を 辮 じ た る な り 。 尚 又 た 六 大 法 性 は 活 物 に し て 身 口 意 の 業 用 を 有 せ り 。 此 三 種 の 業 用 は 如 來 に 在 り て 甚 深 な る は 勿 論 衆 生 身 口 意 の 三 業 に 於 て も 其 本 牲 は 本 不 生 に し て 、 法 爾 と し て 衆 徳 を 圓 備 し て 、 等 覺 十 地 も 見 聞 す る こ と 能 は ざ る が 故 に 是 を 三 密 と 名 く 。 即 ち 法 爾 門 に 就 け ば 、 生 佛 の 三 業 同 等 に し て 共 に 六 大 法 性 の 業 用 な り 。 六 大 中 地 水 火 の 三 は 身 な り 、 風 室 の 二 は 語 な り 、 識 大 は 意 な り 。 是 が 相 と 成 り て 居 る 方 面 で は 、 大 曼 は 身 な り 、 法 曼 は 語 な り 、 三 曼 は 意 な り 、 羯 曼 は 三 に 通 す 、 是 が 業 用 と 成 て は 身 口 意 の 三 業 と 成 り 、 加 持 感 應 彼 此 攝 持 の 作 用 を 爲 す 。 若 又 隨 縁 門 に 就 け ば 、 生 佛 の 三 業 不 同 に し て 生 の 三 業 は 妄 心 所 起 な る 故 に 麁 な り 、 佛 の 三 業 は 平 等 智 所 起 な る 故 に 細 な り 。 然 る に 其 隨 縁 門 の 生 の 三 業 は 三 妄 即 三 部 の 佛 徳 を 言 ふ が 如 く 、 善 悪 の 身 語 業 は 本 不 生 に し て 法 性 の 縁 に 應 じ て 物 を 資 く る の 徳 な り 。 漏 無 漏 の 心 意 は 本 不 生 に し て 法 性 の 邊 を 離 れ て 邊 に 應 す る の 徳 な る と き は 、 妄 心 所 起 の 三 業 と 雖 と も 、 永 く 如 來 の 三 業 を 不 同 な る も の に 非 ざ る な り 。 即 身 義 に 三 密 加 持 速 疾 顯 と 言 へ る 三 密 は 何 れ の 三 密 な り や と 言 ふ に 、 三 大 互 に 圓 融 す る も の に て 、 體 大 位 の 五 佛 は 大 曼 、 五 輪 は 三 曼 、 五 字 は 法 曼 、 此 三 種 曼 あ る 處 に 羯 曼 も あ る な り 。 又 相 大 位 の 大 曼 に 顕 色 あ り 、 三 曼 に 形 色 あ り 、 法 曼 に 種 子 あ り 、 羯 曼 に 觸 塵 等 あ り 。 叉 既 に 述 た る が 如 く 、 體 相 二 大 の 顯 密 二 教 比 較 研 究 七 三
頼 密 二 教 比 較 研 究 七 四 各 々 に 身 語 意 の 三 密 に 屬 す る も の あ り 。 是 故 に 六 大 が 一 切 佛 、 一 切 衆 生 、 一 切 器 界 の 體 性 な る と き は こ れ ら 一 切 三 種 世 間 に は 必 す 三 密 あ り 。 何 と な れ ば 體 大 と 一 具 不 離 な る が ゆ ゑ な り 。 而 ふ し て 體 大 が 遍 満 す る に 隨 い て こ れ ら 一 切 三 種 世 間 の 三 密 が 互 相 渉 入 し て 各 力 加 持 し て 速 疾 に 成 佛 す る こ と を 得 る な り 。 常 に 云 ふ 三 力 加 持 の 成 佛 と は 此 事 な り 。 即 身 義 に 一 々 尊 等 具 二 刹 塵 三 密 一、 互 相 加 入 、 彼 此 攝 持 衆 生 三 密 亦 復 如 一 是 、 故 名 二 三 密 加 持 一 と 釋 し て 唯 生 佛 の 三 密 互 相 加 持 に 似 た れ と も 、 實 は 器 界 を も 尊 の 中 へ 入 れ て 言 ふ 意 う な り 。 凡 そ 三 密 に 本 修 の 二 義 あ り 。 本 有 の 三 密 と は 、 行 者 今 日 所 起 の 三 業 は 皆 本 有 法 爾 な る が 故 に 衆 生 の 三 業 即 法 佛 の 三 密 な り 。 修 生 の 三 密 と は 、 即 身 義 に 依 れ ば 手 に 印 契 を 作 し 、 口 に 眞 吉 を 誦 し 、 心 ろ 三 摩 地 に 佳 し て 、 破 惑 の 功 用 あ る も の な り 。 三 摩 地 と は 等 持 と 譯 し て 昏 沈 棹 擧 を 離 れ て 心 を し て 一 境 に 住 せ し む る を 等 持 と 云 。 佛 法 僧 の 三 寳 に も 、 身 口 意 の 三 業 に も 、 心 佛 衆 生 の 三 法 に も 一 々 尊 體 が あ り て 、 其 一 々 の 尊 が 帝 綱 の 如 く に 彼 此 の 三 密 互 に 渉 入 せ り 。 其 刹 塵 の 三 密 が 互 相 加 入 し 彼 此 攝 持 し て 平 等 々 々 な る を 觀 念 し て 、 心 を 此 一 境 に 住 せ し む る か 、 三 摩 地 に 住 す る を 吉 る ゝ な り 。 か ゝ る 境 に 心 が 專 注 す れ ば 彼 身 即 是 此 身 、 此 身 即 是 彼 身 、 佛 身 即 是 衆 生 身 、 衆 生 身 即 是 佛 身 、 不 同 而 同 、 不 異 而 異 な り 。 こ ゝ に 於 て 破 惑 の 功 用 あ り 。 何 と な れ ば 隔 執 が 諸 惑 の 根 本 無 明 に し て こ れ よ り 、 諸 戚 が 起 る な り 斯 の 如 く 三 々 平 等 を 觀 念 し て 必 が 是 に 專 注 す れ ば 、 凡 聖 等 總 て 無 隔 な る 故 に 、 隔 執 無 力 に し て 諸 惑 頓
に こ じ 、 無 縁 の 大 悲 も 自 ら 具 は れ り 、 即 是 が 本 尊 の 三 密 に 同 す る も の に し て 、 亦 是 が 諸 法 の 本 際 に あ る と こ ろ の 印 言 觀 想 を 實 現 せ し め た る も の に し て 、 之 を 修 生 の 三 密 と 言 ふ な り 。 亦 有 相 無 相 の 三 密 も あ る べ し 、 何 と な れ ば 此 二 種 三 密 は 相 即 不 離 な る べ き が ゆ ゑ な り 。 有 相 の 三 密 と は 手 結 印 契 、 口 誦 眞 言 、 心 住 妙 觀 是 な り 。 爾 る に 如 實 の 三 密 は 各 一 密 に 餘 の 二 密 を 具 す る は 勿 論 、 一 印 に 一 切 印 契 を 攝 し 、 一 吉 に 一 切 眞 言 を 包 み 、 一 の 三 摩 地 に 一 切 觀 照 を 收 め 、 唯 自 の 三 密 の み な ら す 、 生 佛 及 器 界 の 一 切 三 密 を 普 く 融 攝 し た る す が た な る べ し 、 斯 く 一 多 融 し た る す が た は 即 是 絶 待 無 相 を 具 す る も の な り 。 ま た 無 相 の 三 密 と は 大 日 經 開 題 に 開 口 發 聲 の 眞 吉 、 罪 を 滅 し 、 擧 手 動 足 の 印 契 福 を 増 し 、 心 の 所 起 に 妙 觀 自 ら 生 じ 、 意 の 所 趣 に 等 持 即 成 す と あ り 。 滅 罪 増 福 等 の あ る は 、 別 に 三 密 の 行 相 を 彰 は さ る ゝ れ と も 、 相 の 有 無 融 即 し て 平 常 の 語 黙 起 居 等 、 三 密 の 行 に 契 ふ て 居 る に 由 る 。 即 是 が 無 相 の 三 密 な り 。 斯 く 修 相 は 融 し て 居 れ と も 、 其 徳 を 吉 へ ば 各 一 徳 宛 有 す る が 故 に 對 待 有 相 を 具 す る も の な り 。 加 持 と は 與 力 加 被 攝 持 不 失 の 義 な り 。 前 來 は 佛 と 衆 生 と 器 界 と の 三 密 の 互 相 加 入 彼 此 攝 持 を 述 た り 之 を 細 か に 分 類 す れ ば 、 佛 と 佛 と 、 衆 生 と 衆 生 と 、 法 と 法 と の 同 類 加 持 あ り 、 佛 と 衆 生 と 、 人 と 法 と 三 密 各 他 と の 異 類 加 持 あ り 。 三 密 各 他 の 加 持 と は 、 身 密 は 語 密 と 相 應 加 持 し 、 語 密 は 意 密 を 相 應 加 持 し 、 意 密 は 餘 の 二 密 と 相 應 加 持 す る も の 是 な り 。 斯 く 相 應 加 持 す る 所 以 は 諸 法 の 體 大 な る 六 大 が 無 碍 顯 密 二 教 比 較 研 究 七 五
顯 密 二 教 比 較 研 究 七 六 常 瑜 伽 な る に 因 る 。 無 碍 と は 質 礙 な き な り 。 質 碍 な き 故 に 法 界 に 偏 す 偏 す る 故 に 常 な り 。 若 偏 せ す ん ば 有 無 の 處 を 成 し て 偏 な ら す 。 亦 偏 な ら す ん ば 常 な ら す 。 然 る に 本 有 に し て 常 な る 故 に 偏 す 、 常 住 不 變 な る 故 有 無 の 處 う な く し て 偏 す 。 是 故 に 六 大 は 横 竪 無 邊 な り 。 亦 是 が 常 瑜 伽 な る 故 に 十 方 世 界 諸 法 の 體 大 と な る な り 。 何 と な れ ば 瑜 伽 と は 譯 し て 相 應 と 云 ふ 。 六 大 は 堅 濕 煙 動 無 碍 了 別 と 其 性 は 互 に 相 尅 す と は 雖 と も 、 其 性 ま た 他 に 相 應 し て 、 水 冷 も 火 熱 に 從 ひ 、 火 熱 も 水 冷 に 順 ふ 等 あ り 。 互 に 相 乖 か す 、 乖 か ざ る 故 に 十 方 法 界 に 偏 し て 十 界 依 正 の 體 と な る 、 か ゝ る 互 に 他 に 從 ひ 相 應 す る 六 大 が 體 と 成 り 、 其 體 の 力 用 亦 た 他 に 相 應 隨 從 す る 故 に 、 六 大 に 萬 法 を 含 有 し て 居 る こ と な り 。 此 圓 具 の 六 大 が 無 碍 捗 入 し て 法 界 に 偏 す る が 故 に 互 に 渉 入 し 互 に 相 應 加 持 す る を 免 が れ ざ る な り 。 以 上 は 多 吉 を 以 て 密 教 の 佛 身 諭 を 喋 々 と 辨 じ た り き 。 こ れ を 縮 略 し て 吉 へ ば 、 宇 宙 萬 有 の 體 相 用 其 實 際 は 、 佛 體 佛 相 佛 用 な り 。 隔 執 の 妄 情 に 覆 障 さ る ゝ 故 に 之 が 見 へ ざ る な り 。 三 密 行 を 以 て 隔 執 を 全 除 し 、 宇 宙 萬 有 の 實 際 は 融 妙 な る こ と を 體 験 し 證 得 せ ば 、 宇 宙 世 界 は 眞 悟 實 仁 の 佛 及 自 由 自 在 の 妙 樂 界 な る こ と が 頓 現 し て 、 毫 末 も 疑 な き に 至 る と 言 ふ に あ り 。 以 下 二 教 の 佛 身 説 異 同 を 略 決 せ ば 、 其 言 教 に 差 異 あ る は 論 を 待 た ざ れ と も 、 吉 教 所 詮 の 法 體 異 同 は 如 何 と 言 ふ に 、 華 嚴 は 、 三 世 間 皆 佛 身 な り と す る に 其 源 と は 、 如 來 藏 の 本 覺 眞 心 に あ り て 、 之 が 法 界 縁 起 し て 事 々 無 碍 な る 故 に 皆 佛 體 な り と す 。 然 る に 此 眞 心 な る も の は 單 に 心 に 限 り て 色 に 通 せ す と す
る 意 に 非 す 。 色 心 あ れ と も 色 性 心 性 融 即 し て 心 の 一 に も 收 縮 さ れ 得 る 故 に 眞 心 の 一 を 本 源 と す 、 性 海 既 に 色 心 二 性 融 通 す る 故 に 縁 起 世 相 の 上 で も 三 世 間 が 融 通 し て 佛 身 た る こ と を 得 る 。 是 故 に 佛 身 は 常 無 常 の 二 義 を 具 し て 常 住 の 方 面 で は 十 藏 塵 の 相 好 も 本 有 な り と い ひ 。 相 好 は 色 法 の 方 な り こ れ が 本 有 な る と き は 、 本 源 た る 眞 心 と 色 法 が 不 二 に な り て あ る べ き な り 。 又 た 密 教 で は 、 吽 字 義 に 三 種 世 間 皆 是 佛 體 と 云 ふ て 佛 の 自 性 法 身 よ り 顯 は れ た 三 種 世 間 な る 故 皆 佛 體 な り と す 。 其 自 性 法 身 と は 六 大 の 性 佛 に し て 十 地 等 覺 も 測 知 す る こ と 能 は ざ る 法 體 な り 、 前 五 大 の 堅 濕 嬬 動 無 碍 も 我 等 身 根 所 取 の 觸 境 如 き 麁 な る 生 死 色 を 吉 ふ に 非 す 、 三 諦 相 即 の 法 性 色 な り 。 即 是 は 華 嚴 の 華 藏 界 に い は ゆ る 果 分 の 性 色 な り 。 華 嚴 で は 裟 婆 に 即 し て 此 色 あ り て 、 壊 劫 の 大 火 所 焼 時 に も 、 不 變 不 壊 に 存 在 す る 常 住 の 解 脱 色 と せ り 。 密 教 學 者 は 華 嚴 等 は 理 本 事 末 の 義 な り と い へ る な れ と も 能 く 華 嚴 の 教 義 を 心 得 て 言 を 立 た ま へ 五 教 章 に 一 切 の 理 事 解 行 因 果 人 法 等 の 十 が 同 時 相 應 し て 一 縁 起 を 成 し て 前 後 あ る こ と 無 し と 言 へ り 。 豊 本 源 の 性 海 何 ぞ 單 理 と す る も の な ら ん 、 こ の 故 に 通 路 記 に 性 海 を 釋 し て 性 海 と 言 ふ は 事 理 の 性 源 な る に 名 つ く 、 理 智 、 事 理 、 性 相 、 體 義 、 各 其 性 あ り 。 本 源 に 約 す る が 故 に 性 海 と 言 ふ 。 眞 理 を 獨 り 性 海 と 謂 ふ に 非 す と 辨 せ り 。 然 る と き は 密 教 が 六 大 を 以 て 三 世 間 四 種 法 身 の 本 性 と す る に 同 じ 。 亦 性 海 法 身 單 理 と せ ず 事 理 相 即 と す る 故 に 、 十 身 の 教 主 を 立 て ゝ 、 第 九 の 法 身 も 能 説 の 教 主 な り と し 、 法 爾 恒 説 な る も の あ り と す 。 是 豊 密 教 が 六 大 の 性 佛 に 四 曼 三 密 を 本 有 し て 説 法 し 法 爾 恒 説 も あ り と す る に 顯 密 二 教 比 較 研 究 七 七
顯 密 二 教 比 較 研 究 七 八 同 じ か ら す や 。 殊 に 密 教 は 中 臺 八 葉 院 を 根 本 と し て 第 六 の 釋 迦 院 が 開 け て 大 日 の 自 性 法 身 が 釋 迦 の 如 く 人 類 に 同 し た 佛 身 を 現 し て 、 説 法 教 化 す と 言 ふ に 至 り て は 、 釋 迦 の 實 體 即 ち 大 日 の 自 性 法 身 な り 。 華 嚴 の 教 主 た る 釋 迦 十 身 中 第 九 の 法 身 は 大 日 法 身 と 同 じ か ら す や 。 二 教 論 に 顯 教 は 應 身 の 説 と 言 へ る は 華 巌 經 内 の 同 教 一 乗 教 主 の 分 齊 を 言 ふ て 別 教 一 乗 の 教 主 分 齊 を 言 ふ に は 非 ざ る べ し 。 或 は 華 嚴 經 を 大 日 經 等 と 比 較 せ ば 表 徳 の 言 教 に 具 闕 の 異 あ り 。 是 故 に 眞 言 教 の 闕 少 な る も の を 貶 奪 し て 淺 略 顯 教 中 へ 入 れ て 、 其 教 主 分 齊 ま た 應 身 中 へ 入 れ た も の な ら ん 。 又 華 嚴 で は 佛 朱 に 體 徳 用 の 三 あ り 。 三 共 に 常 無 常 等 の 四 旬 に 通 じ て 、 用 の 方 で は 十 界 三 世 間 の 一 切 法 が 佛 身 な り 。 然 れ と も 此 體 徳 用 の 三 は 圓 融 し て 體 に つ け ば 徳 用 ま で 悉 く 體 な り 。 相 に つ け ば 體 用 ま で 相 な り 。 用 に つ け は 體 相 ま で 用 な り と す 。 即 是 が 體 徳 用 の 圓 融 を 以 て 佛 果 三 身 の 圓 融 無 碍 を 顯 す も の に し て 密 教 が 體 相 用 の 三 大 は 圓 融 し て 體 大 に も 四 曼 三 密 あ り 相 大 に も 六 大 三 密 あ り 用 大 に も 六 大 四 曼 め り と 言 に 同 じ 。 亦 是 が 密 教 の 四 種 法 身 に 横 竪 あ り て 、 横 で は 自 性 法 身 の 當 位 に も 四 種 法 身 あ り て 十 界 平 等 の 曼 茶 羅 な り と 言 ふ に 同 じ 。 然 れ と も 華 巌 は 體 大 の 種 三 尊 、 相 大 の 両 部 曼 茶 、 用 大 の 彼 此 三 密 渉 入 等 を 言 は ざ る 故 に 表 徳 の 言 教 に 於 て は 具 闕 の 不 同 あ り 。 唯 略 言 所 詮 の 法 體 は 同 一 な る の み 。 弘 法 大 師 が 顯 教 の 佛 は 無 明 の 分 域 を 出 す と 言 へ る は 開 宗 の 析 伏 門 な り 。 攝 受 門 に つ か ば 既 に 十 件 心 論 に 單 差 別 は 悪 差 別 、 單 平 等 は 悪 平 等 な り 。 差 別 に 即 す る 平 等 か ら 言 へ ば 、 十 住 心 の 室 有 偏 圓 二 乗 一 乗 等
は 、 皆 是 自 心 佛 の 密 號 な り 、 焉 を 捨 て 焉 を 取 ら ん と 言 へ り 。 行 者 に 三 密 の 事 行 あ る を 説 か ざ る 故 に 、 單 に 理 秘 密 に し て 事 理 倶 密 は 説 か ざ る に 似 た れ と も 、 既 に 法 界 記 に は 信 解 行 證 の 行 は 法 界 縁 起 事 々 無 碍 に 契 ふ て 行 し て 一 行 一 切 行 、 一 斷 一 切 斷 に 成 る べ し と 言 ふ な れ ば 、 密 教 の 三 業 相 資 三 平 等 三 妄 同 時 斷 を 言 ふ が 如 き 意 味 あ る べ し 。 仍 て 華 嚴 三 昧 の 三 摩 地 行 は 、 同 時 具 足 相 應 門 の 如 く 三 業 相 應 し て 行 す る が 、 如 實 修 行 と 言 ふ 意 に し て 、 三 業 不 相 應 の 行 で 事 足 る と 言 に は 非 ざ る な り 。 唯 言 教 に 缺 略 あ る の が 、 教 門 と し て は 貶 奪 さ る ゝ と こ ろ な り 。 亦 華 嚴 に い は ゆ る 因 陀 羅 微 細 境 界 門 は 一 切 の 教 義 、 理 事 、 解 行 . 因 果 、 人 法 、 分 齊 境 位 、 師 弟 法 智 主 伴 、 隨 生 示 現 、 逆 順 體 用 の 十 種 が 同 時 に 縁 起 相 由 し て 、 此 等 十 種 諸 注 の 體 用 に 一 々 の 法 中 に 即 入 し て 、 唯 一 重 の 即 入 に 非 す し て 、 重 々 卸 入 す る こ と 帝 綱 の 如 し と 吉 ふ て 、 之 を 十 佛 の 自 境 界 圓 融 無 碍 の す が た と す 。 是 は 即 身 義 に 體 大 諸 法 も 、 相 大 諸 法 も 、 用 大 諸 法 も 、 互 に 即 入 し 、 亦 十 方 無 邊 世 界 の 體 相 用 三 大 の 諸 法 と 互 に 即 入 し 、 唯 一 重 の 即 入 に 非 す 、 重 々 の 即 入 あ る こ と 帝 綱 の 如 し 、 即 ち 是 が 即 身 に 佛 た り し 佛 の す が た な り と 吉 へ る と 同 じ こ と な り 。 然 る に 密 教 の 擧 者 い は く 、 華 嚴 の 帝 綱 喩 は 一 切 法 悉 く 理 を 以 て 體 と す 。 理 遍 す る が 故 に 事 亦 隨 っ て 遍 す と 云 ふ か る が 故 に 果 は 理 性 に 歸 す 。 眞 言 は 六 大 の 事 法 各 法 界 に 遍 す る 故 に 、 一 々 の 事 法 一 味 圓 融 し て 、 十 界 平 等 な り 。 是 故 に 生 佛 隔 な く し て 凡 身 に 佛 身 を 成 す と 吉 ふ な り と 辨 じ て 、 二 教 の 佛 身 説 異 れ り と せ り 。 今 按 す る に 華 嚴 眞 吉 の 性 海 豈 單 理 單 事 顯 密 二 教 比 較 研 究 七 九
顯 密 二 教 比 較 研 究 八 〇 な る も の な ら ん や 。 華 嚴 宗 に い は ゆ る 如 來 藏 性 は 大 佛 頂 經 に 云 地 水 火 風 室 根 識 の 七 大 法 性 を 眞 色 眞 心 と し 、 此 法 性 の 色 心 は 融 す る 故 に 恒 に は 唯 心 と 官 ふ な れ と も 、 單 に 心 性 の み な ら す 、 必 す 色 性 も あ る も の と す 。 仍 て 佛 身 相 好 の 常 無 常 を 明 す に 常 住 の 邊 は 本 有 な り と せ り 。 亦 色 性 に は 必 す 心 性 を 具 す る も の 乙 す 。 ゆ ゑ に 義 浄 百 門 に は 一 塵 一 毛 の 處 に も 如 來 性 あ り と 言 ひ 、 探 玄 記 及 五 教 章 に は 佛 に 成 る 種 性 は 三 世 間 に 通 じ て あ り と 言 へ り 。 且 つ 性 海 に 十 佛 の 自 境 界 あ り て 圓 融 自 在 な り と 言 ふ も の 、 豈 單 理 と せ ん や 。 又 た 眞 言 の 六 大 法 性 は 單 事 に 非 す し て 必 す 空 有 不 生 と 言 ふ 三 諦 の 理 性 を 具 す べ し 。 何 と な れ ば 體 大 位 に あ る 阿 字 が 諸 法 本 不 生 を 詮 す る は 、 室 有 相 即 の 處 で 詮 す れ ば な り 。 若 室 有 の 義 な く し て 本 不 生 を 言 ふ な ら ば 、 教 論 自 性 冥 諦 の 凝 然 常 に 同 す 。 如 何 ぞ 第 三 住 心 に 超 瑜 せ る 第 十 の 秘 密 荘 嚴 心 た る こ と を 得 ん や 。 凝 然 常 は 一 即 多 な る を 得 ざ れ ば な り 。 ま た 重 々 帝 綱 の 喩 は 、 體 大 の 種 三 尊 、 相 大 の 大 三 法 、 用 大 の 身 語 意 、 重 々 即 入 を 言 の み な ら す 、 三 諦 三 徳 三 部 三 身 等 の 一 切 三 法 、 重 々 即 入 す る こ と 一 室 千 燈 の 光 線 、 互 相 渉 入 無 碍 な る が 如 し と 言 ふ に あ り 。 然 ら ば 三 諦 相 即 す と 立 る も の な り 。 何 ぞ 本 不 生 の 義 の み な ら ん 。 必 す 三 諦 の 理 性 を 圓 具 す と 云 意 な る こ と 明 々 白 々 た り 。