目的:東京歯科大学市川総合病院は,診療科20科と
各部門の専門センター8つを有する570床の総合病
院であり,人口46万人の市川市の中核医療機関とし
て地域医療の一端を担っている。今回,我々は平成
23年度の歯科・口腔外科の初診患者の臨床統計を行
い,現在の診療内容を把握することで,地域医療に
おける役割を考察し,今後の在り方,方向性につい
て検討したので報告する。
方法:平成23年4月1日から平成24年3月31日まで
の1年間に当科を受診した患者を対象とした。再来
初診等の保険制度上の初診患者は除き当科を初めて
受診した患者のみを抽出し対象とした。疾患の分類
は,㈳日本口腔外科学会調査企画委員会が作成した
実績調査票に準じて,性別,年齢分布,来科地域,
受診経路,疾患別分類,紹介患者の基礎疾患につい
て臨床統計を行った。
成績:期間中に受診した初診患者数は5,
906人であ
り,そのうち男性は2,
658人(45%),女性は3,
248
人(55%)であった。年齢は0歳から104歳までで,
平均年齢は46.
8歳であった。年齢別では60歳代が約
14%と最も多く,60歳以上は約38%であった。来科
地域は市川市が約55%,船橋市が約10%と続いた。
県別では千葉県が83%,東京都が14%であった。受
診経路は紹介患者が48%であり,うち歯科診療所は
約34%,医科診療所は約2%,院内他科からの紹介
は約12%であった。疾患別では,歯の疾患が約33%,
口腔粘膜疾患が約14%,外傷が約13%,顎関節症が
約7%であった。地域医療機関から紹介を受けた患
者約3,
400人の中で,歯科以外の疾患を持った症例
は1,
001例 あ り,高 血 圧 が 約288例,心 臓 病 が117
例,糖尿病が100例,喘息が72例であった。
考察:東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科
は,地域医療機関,院内各科間との連携を密に取っ
ていることが大きな特徴である。超高齢社会の進行
とともに地域完結型の医療システムが構築されつつ
あり,全身的な問題を有する高齢患者への対応は歯
科でも不可避である。また,今年度から診療報酬に
導入された内容を鑑みると,地域の歯科診療所をは
じめとする各機関との連携体制は重要である。今後
もさらに連携を深め,当科の専門性をアピールした
上での連携医療の充実と向上に努めていく必要があ
ると考える。
目的:平成18年に「がん対策基本法」が成立し,文
部科学省は,平成19年度から「がんプロフェッショ
ナル養成プラン」の事業を開始した。これを受け,
東京歯科大学は平成20年度から「口腔がん専門医養
成コース」を設置し,本コースの一環として,平成
21年度より歯科衛生士,看護師を対象にしたがん患
者に対する口腔ケアセミナー(以下セミナー)を年
に1回開催している。
今回,セミナー終了時に行ったアンケートの結果
を集計したので報告する。
方法:セミナーは,歯科医師2名・医師1名・歯科
衛生士2名による講義(時間配分,内容は開催年に
より異なる)と,歯科衛生士4名による実習(時間,
内容は開催年により異なる)で構成されており,平
成21年から平成23年のセミナー参加者は,平成21年
28名,平成22年34名,平成23年19名である。
毎年,セミナー終了時に参加者全員が無記名で講
義・実習・セミナー全体に関するアンケートに選
択・記述方式で回答し,それを年ごとに集計した。
成績および考察:講義時間,内容はともに毎年90%
以上の参加者から「ちょうど良い」との回答を得
た。また,実習時間は平成21年60.7%,平成22年79.4
%,平成23年84.2%,内容は平成21年78.6%,平成
22年76.5%,平成23年94.7%の参加者から「ちょう
ど良い」との回答を得た。平成21年と平成23年を比
較すると時間は23.5%,内容 は16.1%増 加 し て い
る。講義および実習時間,内容に関して「ちょうど
良い」との回答を維持または増加させることができ
たのは,毎年それぞれ記述の回答から参加者の意見
を取り入れ,時間,内容の再構成を行ったためと思
われた。今後も参加者の意見を取り入れることでさ
らに充実した講義,実習を提供することが可能であ
ると考える。
セミナー全体の評価として,「大変良い」,「まあ
まあ良い」と回答したのは,平成21年92.9%,平成
22年97.1%,平成23年84.2%であった。今後に活か
せそうか,との問いに「明日からすぐ役立つ」,「役
立つか分からないが体得する必要がある」と回答し
たのは平 成21年92.9%,平 成22年100%,平 成23年
100%であった。また,記述の回答には,「今後に活
かしたい」,「勉強になった」などの意見が多くみら
れたことから,セミナーを通してがん患者への専門
的口腔ケアに対する知識や技術を,ある程度参加者
に提供することができたと考える。
№21:東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科における平成23年度外来初診患者の
臨床統計
木村祐一郎
1)
,野口沙希
1)
,酒井克彦
1)
,武田 瞬
1)
,吉田恭子
1)
,浮地賢一郎
1)
,有坂岳大
1)
,
宇治川清登
1)
,武安嘉大
1)
,西久保周一
2)
,渡邊 裕
3)
,外木守雄
4)
,片倉 朗
1)
(東歯大・オーラルメディシン口外)
1)
(医 鉄蕉会 亀田総合病院)
2)
(独 国立長寿医療研究センター)
3)
(日大歯)
4)
№22:東京歯科大学 がんプロフェッショナル養成プラン インテンシブコースにおけ
る口腔ケアセミナーの取り組み
清住沙代
1)
,土屋佳織
2)
,多比良祐子
2)
,大屋朋子
2)
,雨宮智美
2)
,髙柳奈見
2)
,奥井沙織
2)
,
合原 愛
2)
,馬場里奈
2)
,藤平弘子
2)
,別所央城
1)4)
,佐藤一道
1)
,山内智博
1)
,野村武史
1)4)
,
片倉 朗
1)3)
(東歯大・口腔がんセンター)
1)
(東歯大・市病・歯科口外)
2)
(東歯大・オーラルメディシン口外)
3)
(東歯大・口外)
4)
歯科学報 Vol.112,No.2(2012) 167
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