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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 獣 医 学 ) 酒 井 紀 彰

     学 位 論 文 題 名

The genetic bases of inter ― and intrastrain differences     in CYP2D ― dependent drug metabolism in rats

(ラットにおけるCYP2D の系統差及び個体差の分子機構の解明)

学位論文内容の要旨

  シ ト ク ロ ムP450 (CYP,P450)は 、 生 理 活 性 物 質 の 合 成 や 代 謝 だ け で な く 、 医 薬 品 や 環 境 汚 繋 物 質 詮 ど の 外 来 異 物 の 代 謝 に も 関 与 す る 酵 素 群 で あ る 。 特 に ヒ トCYP2D6 誼 、 医 薬 品 の 約30% を 代 謝 す る に も 関 わ ら ず 多 く の 遭 伝 多 型 が 存 在 す る 事 か ら 、 薬 効 の 個 人 蓋 や 副 作 用 の 発 現 に 深 く 関 与 し て い る 。 こ の た め 、CYP2D分 子 種 は 、 毒 性 学 上 、 非 常 に 重 要 詮 分 子 種 と し て 位 置 付 けら れ て い る。 そ こ で 本研 究 で は 、く ニYP2D 分 子 種 依 存 の 薬 物 代 謝 反 応 に お け る ラ ッ ト の 系 統 差 及 ぴ 個 体 差 、 そ し て そ れ ら を 引 き起こすメカニズムについて、明らかにする事を目的とした。

  第1章 で は 、Dark Agouti(DA)ラ ッ ト に お け るCYP2D2mRhlA低 発 現 機 構 を 解 明 し た , 。DAラ ッ ト 溌 、 ヒ トCYP2D6の 典 型 的 基 質 を 代 謝 す る 能 カ が 著 し く 低 い た め 、 ヒ トCYP2D6の 代 謝 欠 損 者 の 動 物 モ デ ル と し て 用 い ら れ て い る 。 ヒ トCYP2D6の 典 型 的 基 質 の 多 く は 、ラ ッ トCYP2D2によ っ て 代 謝き れ 、 特 にDAラ ット で は 、SpragueーDawley (SD)ラ ッ ト やWis{tar系 ラ ッ ト に 比 べ 、CYP2D2 mRNA及 ぴ 蛋 自 質 発 現 量 が 低 い 事 が 、 CYP2D分 子 種 依 存 の 代 謝 活 性 が 低 い 原 因 で あ る と 報 告 さ れ て い る 。 し か し 、DAラ ッ ト に お い て 、CYP2D2 mRNA発 現 量 が 低 下 し て い る 原 因 捉 つ い て は 、 未 だ 明 ら か に さ れ て い な い 。 そ こ で 、CYP2D2遺 伝 子 の5 上 流 域を 、4kbに わ たル シ ー ク ェン ス 解 析 を 行 っ た と こ ろ 、DAラ ッ ト に お い てTA′rAポ ッ ク ス の 近 傍 に シ ト シ ン か ら チ ミ ン へ の 一 塩 基 置 換 が あ る 事 を 見 出 し た 。 ー 方 、SDラ ッ ト で は 同 領 域 に 変 異 は 謡 め ら れ な か った 。 次 にElectrophoresk ntobility shift assayから、DAラット に韜いて 検出さ れた一 塩 基 置 換 は 、 核蛋 白 質 ( 転写 因 子 ) /DNA複 合 体 の形 成 を 低 下さ 世 る 事 が確 認 さ れ た。

また 、CYP2D2遺 伝子 の プ ロ モー タ ー 領 域の 各 種 欠失変 異体を 用いた レポー タ丶・I一アッ セ イ の 結 果 、 こ の ー 塩 基 置 換 に よ り 転 写 活 性 . 誼 約1/4に 低 下 し た 。 さ ら に 、 Matrix‑assisted laser d¢sorption/ionization time‑of‑flightmaBS8peCtrometryを用い、て、

の 信2D吃 遺 伝 子 発 現 に 関 与 す る 転 写 因子 の 同 定 を試 み た 。 その 結 果 、 転写 装 置 の 足場 蛋 自 と し て 働 く 多 機 能 な 核 蛋 白 質 と し て 知 ら . れ る 、 ヘ テ ロ 核 内 リ ポ 核 蛋 白 質K くhゼteroge鵬OuSn弧¢learribonucleoproteinK:hn融岬K)が、コアプロモーター領域に結合 す る 事 を 明 ら か に し た 。 よ っ て 、DAラ ヅ ト に お . け るCYP2D2阻RNAの 低 発 現 は 、 CYP2D2遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 内 の ー 塩 基 置 換 に よ り 、hnRNPK蛋 白 質 のDNA結 合が低下する亭が原因である事を籾めて明らかにした。

  第2章 で は 、 ジ ア ゼ パ ム 代 謝 に 豁 け る 系 統 差 及 ぴ 個 体 差 発 現 機 構 を 解 明 し た 。 抗

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不安薬と して世界 で広く 使用きれているジアゼパムにぬ、3位水酸化、N脱メチル化、

p位水 酸4kの3つの代 謝経路が 存在す る。これ までの研 究から 、低基質 濃度ではジア ゼパムp位水酸イ匕が、ラットに韜ける主要な代謝経路であり、かつ著しい系統差(約300 倍)及ぴ個体差(約200倍)を示す事が報告されている。さらに、抗体を用いた阻害実 験・から 、CYP2D分子種が この代謝 反応に 関与する 事が示唆きれたが、CYP2D2の発現 量の差で は説明で きない 事が報告 きれて おり、未 だその 代謝酵素 の聞定に ば至って いぬぃ。 そこで、 ウエス タンプロ ット法 を用いて 、高活 性個体の みに特異 的に発現 する 蛋 白 質を 単 離 した 。アミノ 酸シー クエンス によっ てN末 端配列を 決定し たとこ ろ、今ま で主な触 媒反応 がわかっ ていな い、CYP2D3の アミノ酸 配列と完 全に一致し た。酵母 に発現さ 世た CYP2D3は、 ジアゼパ ムp位 水酸化 活性を示 したが 、CYP2D2に はその活 性がない 事も再 構成系実 験を用 いて確認 した。 きらに、 定量リア ルタイム PCR法 把よ り 、CYP2D3 mRNA量 を測 定 し た 。と こ る が、 系 統 聞及 ぴ 個 体間 で 、p位 水酸 化 活 性と 相 関 のあ る 発 現量 の 差 は認 め ら れな かった。 そこで、CYP2D3のcDNA シークエ ンスを調 ぺた。 低活性個 体で拭 、―塩基 挿入に よるフレ ームシフ トが認め られ、P450の 活性中 心である へム結 合領域の 上流に終 止コド ンが形成 されていた。

このため 、p位 水酸化 の低活性 個体で は、代謝 機髄を失った蛋白質が合成される事が 予 想 さ れ た 。 し た が っ て、CYP2D3の 翻訳 領 域 内の 一 塩 基挿 入 に より 、 機 能的 な CYP2D3をコード するmRNAの 発現が 低下する 事で、ジ アゼパ ムp4立水酸 化の系統差及 ぴ個体差が引き起こされる事を初めて明らかにした。

  以 上 の結 果 か ら、CYP2D分子種 依存の薬 物代謝 反応に船 ける、ラ ットの 系統差及 ぴ個体差 発現の分 子機構 を明らかにした。ヲットは、特に薬物代謝研究に・おいて多 用されて いるにも 関わら ず、薬物 代謝酵 素に関す る系統 聞及ぴ個 体間での 遺伝的背 景に つ い ては 、 こ れま で明らか にされ てい顔か った。 また、CYP2D分子 種は医薬 品 に対する 感受性を 決定す る、最も重要な分子種のーっである事から、本研究成果控、

薬物代謝 研究にお けるラ ットの系 統を選 択する際 に、非 常に有用 絵指標を 与えるも のと考えられる。

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(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

准 教 授 教 授 教 授 名誉教授

石塚 稲波 安居院 藤田

真由美     修 高志 正一

     学位論文題名

The genetic bases of inter 一and intrastrain differenCeS     inCYP2D − dependentdrugmetabolisminrats

(ラットにおけるCYP2D の系統差及び個体差の分子機構の解明)

  シ トク ロ ムP450(CYP,P450)は 、 生 理活 性 物 質の 合 成 や代 謝 だ けで な く、 医薬品や 環 境 汚 染物 質 な どの 外来異 物の代 謝にも関 与する 酵素群で ある。 特に,ヒ トCYP2D6は、

医 薬 品 の約30%を 代 謝 する に も 関わ ら ず 多 くの 遺 伝 多型 が 存 在す る 事 から 、薬効 の個 人 差 や 副 作 用 の 発 現 に深 く 関 与し て い る。 こ の ため 、CYP2D分子 種 は 、 毒性 学 上 、非 常 に 重 要 な 分 子 種 と して 位 置 付け ら れ てい る 。 そこ で 酒 井紀 彰 氏 は、CYP2D分 子 種依 存 の 薬 物代 謝 反 応に お け るラ ッ ト の系 統 差 及 び個 体 差 、そ し て それ ら を 引き起こ すメ カ ニ ズ ム に つ い て 、 明 ら か に す る 事 を 目 的 と し て 、 本 研 究 を 行 っ た 。

  第1章 で は 、Dark Agouti(DA)ラ ッ ト に お け るCYP2D2mRNA低 発現 機 構 を解 明 し た。

DAラ ッ ト は 、 ヒ トCYP2D6の 典 型 的 基 質 を 代 謝 す る 能 カ が 著 し く 低 い た め 、 ヒ ト CYP2D6の 代 謝 欠 損 者 の 動 物 モ デ ル と し て 用 い ら れ て い る 。ヒ トCYP2D6の 典 型 的 基質 の 多 くは 、 ラ ットCYP2D2によ っ て 代 謝さ れ 、 特にDAラッ トで は、Sprague‑Dawley(SD) ラ ッ ト やWistar系 ラ ッ ト に 比 べ 、CYP2D2 mRNA及 ぴ 蛋 白質 発 現 量が 低 い 事 が、CYP2D 分 子 種依 存 の 代謝 活 性 が低 い 原 因で あ る と 報告 さ れ てい る 。 しか し 、DAラ ッ トに お い て 、CYP2D2 mRNA発 現 量 が 低 下 し て い る 原 因 に つ い て は 、 未 だ 明 ら か に さ れ て い な い 。 そこ で 、CYP2D2遺 伝 子の5 上 流域 を 、4kbに わた ル シ ーク エ ン ス解 析 を 行っ た と こ ろ 、DAラ ッ ト に お い てTATAポ ッ ク ス の 近 傍 に シ ト シ ン から チ ミ ンへ の 一 塩基 置 換 が あ る 事 を 見 出 し た 。 一 方 、SDラ ッ ト で は 同 領 域 に 変 異 は 認 めら れ な かっ た 。 次に Electrophoresis mobility shift assayから、DAラットにおいて検出された一塩基置換は、

核 蛋 白 質 ( 転 写 因 子)/DNA複 合 体 の形 成 を 低下 さ せ る事 が 確 認さ れ た 。ま た 、CYP2D2 遺 伝 子の プ ロ モー タ ー 領域 の 各 種欠 失 変 異 体を 用 い たレ ポ ー ター ア ッ セイ の 結 果、 こ の 一 塩 基 置 換 に よ り 転 写 活 性 は 約1/4に 低 下 し た 。 さ ら に 、Matrix‑assisted laser desorption/ionization timeーof‑flight mass spectrometryを用いて、CYP2D2遺伝子発現に関

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与する転写因子の同定を試みた。その結果、転写装置の足場蛋白質として働く多機能 な 核蛋 白 質 とし て 知ら れ る 、ヘテ ロ核内リボ 核蛋白質K (heterogeneous nuclear ribonucleoprotein K: hnRNP K)が、コアプロモーター領域に結合する事を明らかにした。

よ って 、DAラ ッ トに お け るCYP2D2mRNAの低発現 は、CYP2D2遺伝子 のプロモ ーター 領域内 の一塩基 置換によ り、hnRNPK蛋白 質のDNA結合が 低下する 事が原因 である事 を初めて明らかにした。

  第2章 では、ジ アゼパム 代謝における系統差及び個体差発現機構を解明した。抗不 安薬 として世 界で広く 使用されているジアゼパムには、3位水酸化、N脱メチル化、p 位水酸化の3つの代謝経路が存在する。これまでの研究から、低基質濃度ではジアゼパ ムp位水酸化が、ラットにおける主要な代謝経路であり、かつ著しい系統差(約300倍)

及び個体差(約200倍)を示す事が報告されている。さらに、抗体を用いた阻害実験か ら 、CYP2D分 子種がこ の代謝反 応に関与 する事が 示唆された が、CYP2D2の発 現量の 差では説明できない事が報告されており、未だその代謝酵素の同定には至っていない。

そこで、ウエスタンブロット法を用いて、高活性個体のみに特異的に発現する蛋白質 を単 離した。 アミノ酸 シークエンスによってN末端配列を決定したところ、今まで主 な触媒反応がわかっていない、CYP2D3のアミノ酸配列と完全に一致した。酵母に発現 さ せたCYP2D3は、ジア ゼパムp位 水酸化活 性を示し たが、CYP2D2には その活性 がな い 事も 再構成系 実験を用 いて確認 した。さ らに、定量 リアルタ イムPCR法に より、

CYP2D3 mRNA量を 測定した 。ところ が、系統 聞及び個 体間で、p位水酸化活性と相関 のあ る発現量 の差は認 められな かった。 そこで、CYP2D3のcDNAシークエンスを調べ た。低活性個体では、→塩基挿入によるフレームシフトが認められ、P450の活性中心 であるヘム結合領域の上流に終止コドンが形成されていた。このため、p位水酸化の低 活性個体では、代謝機能を失った蛋白質が合成される事が予想された。したがって、

CYP2D3の翻 訳 領 域内 の ー塩 基 挿 入により 、機能的 なCYP2D3をコード するmRNAが発 現せず、ジアゼパムp位水酸化の系統差及び個体差が引き起こされる事を初めて明らか にした。

  以上の結 果から、 酒井紀彰氏はCYP2D分子種依存の薬物代謝反応における、ラット の系統差及び個体差発現の分子機構を明らかにした。ラットは、特に薬物代謝研究に 船いて多 用されて いるにも関わらず、CYP2Dに関する系統聞及ぴ個体問での遺伝的背 景につい ては、こ れまで明らかにされていなかった。また、CYP2D分子種は医薬品に 対する感受性を決定する、最も重要な分子種のーっである事から、本研究成果は、薬 物代謝研究におけるラットの系統を選択する際に、非常に有用な指標を与えるものと 考えられる。よって、審査員一同は、上記学位論文提出者酒井紀彰氏の博士論文は、

北海道大 学大学院 獣医学研究科規程第6条による本研究科の行う博士論文の審査等に 合格と認めた。

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