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学位論文題名Studies on Internal Structure of Powder Snow Avalanche and Growth of Snow Cloud

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環境 科学) 伊藤 陽一

    

学位論文題名

Studies on Internal Structure of Powder Snow Avalanche     and Growth of Snow Cloud

(混合型雪崩の内部構造と雪煙の発達に関する研究)

学位論文内容の要 旨

  斜面 上の乾い た積雪 が崩壊し 流動化しながら流下すると、速度の増加とともに下部に 密度の大きぃ「流れ層」、上部に「雪煙」が存在する「混合型雪崩」へと発達する場合が 多い。これまでの雪崩研究では防災上の観点から高密度で破壊カの大きい流れ層のみが重 要視 されてき たが、1999年の欧州 大寒波の際などには混合型雪崩の雪煙が流れ層より長 距離を滑走し予想外の被害をもたらした例もあり、近年雪煙部の研究が急務となっている。

  雪 崩雪煙 部の直接 観測は 、減速過 程にあ る低速(10m/s前 後)のケ ースを捕 えた1例 があるのみである。 相似則を考慮した室内実験も行われているが、流れ層から雪煙が発達 する過程を再現することは事実上不可能である。そこで、雪煙が発達過程にある混合型雪 崩の 内部構造 の解明を 目的と して、黒 部峡谷 志合谷で 雪崩観 測を行い3例のデータを取 得することに成功した。衝撃圧の記録から雪の速度を、また雪崩内外の差圧分布から雪煙 部の 速度を算 出した結 果、30〜 60m/sの大規模な雪崩の速度構造が求められた。流れ層 を構成する雪塊や流動化した雪の不均一な分布にともなって、雪煙部の速度が細かく時間 変動する様子も明らかになった。ちなみに差圧から雪煙部の速度を算出する方法は、本研 究が初めての試みである。さらに衝撃圧や差圧の周波数解析を行った結果、流れ層には長 さが 約10 ‑15m程 度の波 状構造が 存在し 、雪塊や 流動化し た雪の分布および速度の変動 はこれに対応することが確認された。

  シス テムの限 界から 観測では 雪煙最下部の情報しか得られないため、流れ全体の内部 構造を調べる目的で、小規模の混合型雪崩を再現する野外実験を実施した。北大天塩研究 林 内の 斜 面 に 長さ36mの シ ュ ートを 設置し 、20または40kgの乾雪 を流した 実験で は、

流れ の速度は10m/s以 上に達し 、各種セ ンサの 出カから は混合 型雪崩と共通する層構造 や波状構造が存在することが確認された。超音波風速計に加えて、風向・風速・静圧を測 定可 能な圧力 測定管を 新たに 導入し雪 煙部の 測定を行 った結 果、波状構造の第1波先端 に強い上昇流があり、これにともなって雪煙が発達する一方、波の後部では上昇流がしだ いに減少する様子が明らかになった。さらに各種センサ出カを比較検討した結果、雪煙は 第1波 だ け で なく 、 後 続の 波 の先 端部分か らも再 度発達し ている 様子が確 認され た。

  上記 の観測お よび野 外実験か ら、雪煙の発達には流れ層の波状構造が密接に関わって いることが示されたが、雪崩の波状構造に関する研究例は皆無に等しい。そこで、本研究 では波状構造の発生条件や波長・波高等の特性について理論的な考察を行った。その結果、

発生条件は開水路流れに現れる波状構造(転波列)の理論が適用できるほか、その特性も 転波列と同様に走路の粗度を表すパラメー夕(乱流摩擦係数:そ)によって変化すること が明らかになった。雪崩の場合、ちは雪質、すなわち雪の流動性にも依存する点を考慮す

‑ 301

(2)

ると、雪質や走路の粗度によって波状構造の特性が変化し、これが原因となって雪煙の発 達にも影響が及ぶことが推定される。

  そこで 、雪煙 の発達に 及ぼす雪質・走路等の影響を定量的に評価す色目的で、流れ層 の周囲流体(雪煙部)の運動をk―£モデルを用いて計算した。計算では雪煙の高さに関与 する斜面に鉛直方向の風速成分のほか、雪煙の密度に関与する流れ層上面から雪煙への雪 粒子の輸送量(雪粒子フラックス)を、吹雪や飛砂の研究で使用される「せん断応カに比 例して雪粒子フラックスが増加する」とぃうメカニズムに従って算出した。波状構造の特 性を変化させて計算した結果、新雪などの軟らかい積雪や粗度の小さい走路上を流下する 雪崩では、雪粒子フラックスは大きいが鉛直方向の風速成分は小さく、一方、硬い雪面上 や峡谷など粗度の大きい走路上を流下する雪崩では、フラックスは小さいのに対し鉛直方 向の風速成分は大きくなった。このことから、前者では密度が大きく背の低い雪煙が、後 者 は 背 が 高 く 密 度 の 小 さ い 雪 煙 が そ れ ぞ れ 発 達 す る と 結 論 さ れ る 。   本研究 におい て、混合 型雪崩全体にわたる内部構造に加えて、雪煙の発達と雪質・走 路の粗度の関係が明らかになったことは、流れ層と雪煙部を統合した雪崩運動モデルの構 築 な ど 、 今 後 の 雪 崩 研 究 と 災 害 防 止 の 施 策 に 大 き く 貢 献 す る と 期 待 さ れ る 。

302

(3)

学位 論文審査の要旨

主 査

  

  

  

大 畑 哲 夫 副 査

  

  

  

本 堂 武 夫 副 査

  

助 教 授

  

白 岩 孝 行 副 査

  

主 任 研 究 員

  

西 村 浩一

    

( 防 災 科 学 技術 研究所 ・長 岡雪 氷防災 研究 所)

    

学位論文題名

Studies on Internal Structure of Powder Snow Avalanche     and Growth of Snow Cloud

(混合型雪崩の内部構造と雪煙の発達に関する研究)

  乾雪表層雪崩は、下部に高密度の流れ層、上部に雪煙が存在する混合型雪崩とよばれる 運動形態をとる場合が多い。これまでは防災上、破壊カの大きい流れ層が注目されてきた が、雪煙による被害も現実には多数報告されており、当該研究分野ではこの部分の研究が 課題となっている。  

  本研究では、まず混合型雪崩全体の内部構造を解明する目的で、黒部峡谷での雪崩観測 を実施した。その結果、大規模な雪崩の流れ層と雪煙両者の速度の算出に成功し、雪塊や 流動化した雪の不均一分布にともなって速度が変動する様子を明らかにした。また、周波 数解析により、この変動が長さ約10〜15mの波状構造に対応することが確認された。一方、

野 外実 験 は2種 類 行 った 。 一 っは 傾 斜 が 約40度 の雪 崩 斜 面に 長 さ40mのシ ュート を設 置し、そこに20〜40 kgの積雪を流し、雪崩の発達した下部で測定を行った。もうーっは、

スキーのジャンプ台を利用し、ピンポン玉を放出し同じく流れが定常状態に達した下部で 測定を行う実験であった。前者では、志合谷での混合型雪崩と共通な層構造や波状構造が 存在する流れの再現に成功した。雪煙の速度・風向・静圧のデータ等の解析により、雪煙 は流れ先端のほか後続波の先端部からも上昇流にともなぃ発達することが明らかになった。

またピンポン玉雪崩では、流れ層の構造の可視化に成功するとともに、複数の波状構造か ら雪煙発生の原因となる上昇気流が発生し、粒子が浮遊状態になる過程が観測された。こ れらの観測で、雪崩には波状構造が存在することが確認され、雪煙はそれぞれの波状構造 の先端から発達していることが明らかになった。

  雪煙の発達に密接に関与する波状構造について考察した結果、発生条件については開水 路流れに現れる波状構造(転波列)の理論が適用できること、また波高等の特性が転波列 と同様に走路の粗度を表す乱流摩擦係数に規定されることを明らかにした。雪崩の場合、

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(4)

乱流摩擦係数は雪質にも依存することから、波状構造は雪質や走路の粗度によって変化し、

その結果、雪煙の発達にも影響を及ばすことも指摘した。

  最後に、波状構造の変化にもとづく雪煙の発達と運動に関する数値計算を行なった。そ の結果、新雪や粗度の小さい走路上を流れる雪崩からは、密度が大きく背の低い雪煙が、

硬い雪面や峡谷など粗度の大きい走路上を流れる雪崩では、密度の小さく背の高い雪煙が 発 達 す る こ と が 示 し 、 条 件 に よ っ て 雪 煙 の 状 況 も 大 き く 異 な る こ と を 示 し た 。   以上の申請者が得た成果は、通常測定が困難とされる混合型雪崩全体にわたる内部構造 を新しい測定機器、また野外実験手法を用いて初めて解明したことに加えて、雪煙の発達 と雪質・走路の粗度の関係、状況による雪煙発達の差異を明らかにしたことに特色があり、

雪崩の構造についての理解を一段と進めた点、そしてこれらの研究が雪崩のモデル化、災 害予測に大きく役立てられることが高く評価できる。また研究者として誠実かつ熱心であ り、研究業績等などもあわせ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに十分な 資格を有するものと判定した。

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参照

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