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情報科教職課程におけるルーブリックを活用した指導法に関する考察

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論文

情報科教職課程におけるルーブリックを活用した

指導法に関する考察

小川 哲司

Consideration on Teaching Methods Using Rubrics

in the Teacher Training Course of Information

OGAWA, Tetsuji 名古屋経済大学経済学部准教授 要旨:2022 年の高等学校情報科の学習指導要領改訂に伴い、教職課程の学生から獲得すべき知識やスキル について不安視する声が挙がっている。このような背景から本研究の目的は、大学の情報科教職課程の授 業にルーブリックを導入して、指導方法の効果と課題を明らかにすることである。情報科教育法の授業に ルーブリックを導入して、導入前と導入後の学習度合いなどについてインタビュー調査を実施した。ルー ブリックの効果として、「目標と課題の可視化」と「授業への動機付け」、ルーブリックの課題として、教 育環境を考慮してルーブリックを作成する必要があるという点を明らかにした。 キーワード:ルーブリック、情報科教育法、教職課程 2022 年より高等学校における情報科目(以下、教科 「情報」)の学習指導要領が改訂される予定である。学 習指導要領は約10 年ごとに改訂されてきているが、今 回の改訂では、「主体的・対話的で深い学びの実現」に向 けた授業改善を進めるための改訂であることが示され ている(文部科学省, 2018)。「主体的・対話的で深い学 びの実現」とは、つまりアクティブ・ラーニングの視点 に立った授業改善のことである。これを実現するために、 各学校には生徒や学校、地域の実態を適切に把握し、教 育内容や時間の配分、必要な人的・物的体制の確保など の改善を通して、教育活動の質を向上させ、学習の効果 の最大化を図る、いわゆるカリキュラム・マネジメント が求められるようになる(文部科学省, 2018)。このよう な学習指導要領の改訂を通じて、教師にも大きな変革が 求められる。 しかしながら、実務経験がほとんどない高等学校教員 免許の取得を目指す学生からは、学習指導要領の改訂内 容のイメージが付きづらく、獲得すべきスキルや学習到 達レベルをどこまで引き上げればよいかが不明確であ る、との声が挙がっている。 一方で、近年教育の現場においてルーブリックが注目 されている。ルーブリックとは米国で開発された学習評 価基準の作成方法であり、評価水準である「尺度」と、 尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成されるもの である。達成水準等が明確化されることにより、パフォ ーマンス等の定性的な評価に向くとされ、評価者・被評 価者の認識の共有、複数の評価者による評価の標準化等 のメリットがあるものとされている(文部科学省, 2016)。 そこで本研究の目的は、大学の教職課程の授業におい て、ルーブリックを導入することで学生の学習効果が上 がるのではという問題意識から、ルーブリックを導入し た指導方法の効果と課題を明らかにすることである。こ れにより、教職課程の授業におけるルーブリック導入の 知見を獲得することとする。なお、本研究では、名古屋 経済大学で開講されている、教科「情報」の指導法に関 する科目である「情報科教育法Ⅱ」を研究対象とする。 2.1 教科「情報」の目標 教科「情報」は情報化の進展に伴い、2003 年に新設さ れた教科であり、情報活用能力を育むことを目的として

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いる。この情報活用能力は、「情報活用の実践力」、「情報 の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」の3 つの 観点で整理されている。 「情報活用の実践力」とは、課題や目的に応じて情報 手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体 的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況な どを踏まえて発信・伝達できる能力のことである(文部 科学省, 2018)。「情報の科学的な理解」とは、情報活用 の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱 ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的 な理論や方法を理解したりすることである(文部科学省, 2018)。「情報社会に参画する態度」とは、社会生活の中 で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている 影響を理解し、 情報モラルの必要性や情報に対する責 任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しよう とする態度のことである(文部科学省, 2018)。 教科「情報」では、これら3 つの観点を相互に関連付 けながらバランスよく育んでいくことが求められてい る。 2.2 学習指導要領改訂の背景 2022 年の教科「情報」の学習指導要領改訂は、文部科 学省から次のような背景に基づき実施されることが示 されている(文部科学省, 2018)。 我が国は、生産年齢人口の減少、グローバル化の進展 などにより、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に 変化しており、予測が困難な時代となっている。また、 AI(Artificial Intelligence:人工知能)が様々な判断を行 ったり、IoT(Internet of Thing:モノのインターネット) が広がったりするなど、新たな技術を通じて、社会や生 活が大きく変わっていくことが予測されている。加えて、 選挙権年齢が引き下げられることや、2022 年からは成年 年齢が 18 歳へ引き下げられることに伴い、高校生にと って政治や社会は一層身近なものとなる。 このような状況の下で、新しい時代に求められる教育 課程を目指すために学習指導要領の改訂が行われる。 2.3 学習指導要領の改訂内容 高等学校学習指導要領の改訂は、①教育基本法、学校 教育法などを踏まえ、これまでの我が国の学校教育の実 践や蓄積を生かし、生徒が未来社会を切り拓ひらくため の資質・能力を一層確実に育成することを目指す。その 際、求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連 携する「社会に開かれた教育課程」を重視すること、② 知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成 のバランスを重視する平成21 年改訂の学習指導要領の 枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質を更 に高め、確かな学力を育成すること、③道徳教育の充実 や体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実によ り、豊かな心や健やかな体を育成すること、を基本的な 考え方として実施される(文部科学省, 2018)。 教科「情報」では、上記の考え方に基づき、情報教育 の目標として「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理 解」、「情報社会に参画する態度」の3 つの観点を提示し ている。さらに目指すべき資質・能力を「知識及び技能」、 「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間 性等」という 3 つの柱で再整理している(文部科学省, 2018)。 これまでの教科「情報」には、「社会と情報」と「情報 の科学」という2 科目の選択必修科目が存在してきたが、 これらを再編して新たに必修科目の「情報Ⅰ」と選択科 目の「情報Ⅱ」が設けられる。「情報Ⅰ」では、プログラ ミング、モデル化とシミュレーション、ネットワーク、 データベースなどの基本的な情報技術とともに、コンテ ンツの制作・発信の基礎となる情報デザインまで扱う。 注目すべきは、プログラミングの学習が必修化すること である。「情報Ⅱ」では、情報システム、ビッグデータな どより多様なコンテンツを扱うとともに、AI やネット ワークに接続された機器等の技術や将来の社会との関 わりについて考えさせる。「情報Ⅱ」は「情報Ⅰ」をベー スにして、より発展的な科目であることが分かる。 2.4 情報Ⅰの目標 「情報Ⅰ」の目標は、情報に関する科学的な見方・考 え方を働かせ、情報技術を活用して問題の発見・解決を 行う学習活動を通して、問題の発見・解決に向けて情報 と情報技術を適切かつ効果的に活用し、情報社会に主体 的に参画するための資質・能力を育成することを目指す ものである(文部科学省, 2018)。 具体的には、①効果的なコミュニケーションの実現、 コンピュータやデータの活用について理解を深め技能 を習得するとともに、情報社会と人との関わりについて 理解を深めるようにする。②様々な事象を情報とその結 び付きとして捉え、問題の発見・解決に向けて情報と情 報技術を適切かつ効果的に活用する力を養う。③情報と 情報技術を適切に活用するとともに、情報社会に主体的 に参画する態度を養う、ことである(文部科学省, 2018)。 ①とは、効果的なコミュニケーションを実現するため に必要な情報デザイン、コンピュータを活用するために 必要な情報が処理される仕組み、データを活用するため に必要な収集、整理、分析の方法、プログラム、モデル 化とシミュレーション、ネットワーク、データベースな どについて理解し、技能を身に付けるとともに、情報社 会と人との関わりについては、情報に関する法規や制度 及びマナー、個人が果たす役割や責任等について、情報 と情報技術の理解と併せて身に付けるようにすること である(文部科学省, 2018)。 ②とは、情報に関する科学的な見方・考え方を働かせ、

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様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、コミュニ ケーションの手段、コンピュータ、ネットワーク、デー タ及びデータベースなどの活用を通して、情報社会など の問題の発見・解決に向けて、試行錯誤と振り返り及び 改善を行い、情報と情報技術を適切かつ効果的に活用す る力を養うことである(文部科学省, 2018)。 ③とは、情報と情報技術を適切に活用することで、法 規や制度及びマナーを守ろうとする態度、情報セキュリ ティを確保しようとする態度などの情報モラルを養い、 これらを踏まえて情報と情報技術を活用することで情 報社会に主体的に参画する態度を養うことである(文部 科学省, 2018)。 よって、教科「情報」の教員はこれらの考え方の理解 を深め、創意工夫を生かした教育課程を編成しなければ ならないことが分かる。 2.5 教職課程 教職課程とは、情報教育の目標に基づき、教科「情報」 の教員になろうとする者が、普通免許状の授与を受ける のに必要な単位が修得できる科目等を設置した課程の ことであり、教育職員免許法施行規則によって単位取得 科目が定められている。具体的には、「情報社会及び情 報倫理」、「コンピュータ及び情報処理(実習を含む。)」、 「情報システム(実習を含む。)」、「情報通信ネットワー ク(実習を含む。)」、「マルチメディア表現及び技術(実 習を含む。)」、「情報と職業」である。これらに加えて、 教職課程コアカリキュラムにおいて「各教科の指導法」 に関する科目の単位取得も求めている。 本研究において研究対象とする「情報科教育法Ⅱ」は、 教科「情報」の「各教科の指導法」に該当する科目であ る。 2.6 情報科教育法 「情報科教育法」の到達目標は、他の教科と同様、① 学習指導要領における当該教科の目標及び主な内容並 びに全体構造を理解している、②学習指導案の構造を理 解し、具体的な授業を想定した授業設計と学習指導案を 作成することができることである(文部科学省, 2017)。 名古屋経済大学での教科「情報」の教職課程において、 「各教科の指導法」に関する科目は、「情報科教育法Ⅰ」 と「情報科教育法Ⅱ」が開講されている。特に「情報科 教育法Ⅱ」では、学生が模擬授業を実践することを通じ て、学習指導要領に沿った授業はどのようにすれば構成 できるかを、学生が自ら考えて体験の蓄積を目指すもの である(図1)。よって、ルーブリックを導入した指導方 法の効果と課題を検証するには、最適な科目だと考えら れる。 図 1 「情報科教育法Ⅱ」での模擬授業 3.1 ルーブリックのメリット 欧米の大学教育ではルーブリックでの評価の有効 性が認められており、すでに広く活用されている。近 年、日本でもルーブリックが注目を浴びている理由と して、学校現場では主体的・対話的で深い学びを実現 させるために、アクティブ・ラーニングが導入されつ つあるためである。アクティブ・ラーニングでは、グ ループ・ワークやディスカッションを中心に授業が展 開されていくため、テストの点数だけでは学生を評価 できないことから、公正に学生を評価するための手段 としてルーブリックが注目されている。 ルーブリックの作り方は、縦軸に評価項目、横軸に 評価点をとり、評価項目と評価点が交差するマスに達 成目標を記載する。評価項目と評価点は、評価する対 象や内容に合わせて、自由に調整することができる。 また達成目標は、なるべく行動ベースのものを言語化 すると良いとされている。 ルーブリックのメリットは、授業の目標を明確にす ることで、授業の質を向上させる効果が期待できるよ

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うになることである(藤田ら, 2017)。またルーブリッ クを事前に教育者と学習者で共有することで、どのレ ベルまで達すればどのような評価がされるのかが可視 化されることから、学習者に高い学習効果が生まれる ことも挙げられる(寺嶋・林, 2006)。 3.2 教職科目への導入 もともとルーブリックは、学生を評価する基準とし て導入されてきたものであるが、教育者と学習者でル ーブリックを共有することによって、学習の到達レベ ルを明確にすることができ、目標が立てやすくなる側 面もある。 大学の教職課程における「各教科の指導法」に関す る授業では、各教科の目標や内容の全体構造を理解し て、具体的な授業を想定した授業設計と学習指導案を 作成できるようになることが求められている(文部科 学省, 2017)。しかしながら、教職課程の学生にとって は、学習到達レベルや指導レベルを具体的にどこまで 引き上げればよいか明確にすることが難しく、非効率 な学習に繋がっていた。 そこで教職課程の科目にルーブリックを導入する ことで、教員と学生間で言語化された到達目標を共有 できるようになることから、学生の目標が明確になり 効率的な学習に繋がることが期待できる。 3.3 ルーブリック作成 教科「情報」の教職課程における指導法科目である、 「情報科教育法Ⅱ」のルーブリックを検討する。今回 の学習指導要領の改訂では、情報教育の目標を、内容・ 学習活動の観点より「情報活用の実践力」、「情報の科 学的な理解」、「情報社会に参画する態度」の3 つの観 点、さらに資質・能力の観点より、「知識及び技能」、 「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人 間性等」の3 つの柱でそれぞれ整理している(文部科学 省, 2018)。教育現場での学習評価は、資質・能力の観 点によって実施されていくことになる。よって、「情報 科教育法Ⅱ」のルーブリックにおいては、縦軸には資 質・能力の観点による3 つの柱を評価項目として設定 して、横軸には尺度を5 段階で設定する。 それぞれの評価項目の考え方であるが、「知識及び 技能」においては、学習指導要領をベースとして、情 報や情報技術に関する知識と技能を身に付けるための 模擬授業が遂行できることを達成目標とする。「思考力、 判断力、表現力等」においては、複数の情報を結び付 けて、問題の発見や解決に繋がる模擬授業を遂行でき ることを達成目標とする。「学びに向かう力、人間性等」 においては、情報社会に主体的に参画できようになる ためのアクティブ・ラーニング型の授業が遂行できる ことを達成目標とする。 このような考え方に基づき、「情報科教育法Ⅱ」の受 講学生と共同で作成したルーブリックは表1 の通りで ある。 表 1 「情報科教育法Ⅱ」のルーブリック 4.1 対象授業 「情報科教育法Ⅱ」は、教科「情報」の教職課程に おける指導法の授業として、3 年生向けに開講してい る教科である。2020 年度の履修者数は 2 名である。使 用している教科書は、現行の教科「情報」の学習指導 要領に基づく教科書である、「高校社会と情報」(実務 出版)である。この教科書をベースとして、学習指導 5 4 3 2 1 知識及び技能 Webサイト制作、プログラ ミング、シミュレーション など、コンピュータを用い た実習形式の模擬授業を30 分実施することができる。 教科書の内容のみなら ず、周辺情報や関連情報 を踏まえて、模擬授業が 20分間実施できる。 事前準備を行い、スムー ズに模擬授業が15分実施 できる。 文章やメール作成などを、コ ンピュータを活用した実習形 式の模擬授業が10分間実施で きる。 教科書の内容やキーワード を理解して、模擬授業が5 分間実施できる。 思考力、判断 力、表現力 情報社会や情報技術におけ る問題や課題を自ら見出 し、生徒に問いかけること ができる。 情報技術に関連する知識 や用語などを説明する 際、例えや具体例などを 含めることができる。 情報技術やシステム構成 などをイメージさせる図 を使ったスライドを作成 することができる。 生徒に知識を定着させるため の補助教材を作成することが できる。 学習指導案を作成して、授 業の展開案を他人に説明が できる。 学びに向かう 力、人間性 グループワーク型の授業に おいて、専門的な介入を実 施したり、効果的なフィー ドバックを行い、授業をマ ネジメントすることができ る。 グループワーク型の授業 を取り入れ、ファシリ テーターとして振る舞う ことができる。 生徒の意見を総括して、 授業に反映することがで きる。 生徒に問い掛けをして、発言 を促すことができる。 教科書の内容に基づき設問 を考え、生徒に考えさせる ことができる。

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要領の改訂点を盛り込みながら授業を進めている。こ のような進め方をしているのは、現在の3 年生が卒業 する時期と、新学習指導要領が改定されるのが共に 2022 年であるため、学生が教員になることを想定する と、授業では新学習指導要領の内容を考慮しておく必 要があるためである。 授業では各学生が、教科書の1 単元ごと模擬授業を 行う。教師役の学生が生徒役の学生に対して模擬授業 を実施して、教員としての経験を積むとともに、授業 担当の教員や生徒役の学生からフィードバックを行う ことで、指導法の向上を図るものである。 4.2 研究の進め方 研究方法は、「情報科教育法Ⅱ」を前半と後半に分け て、授業の前半(1~7 回目)ではルーブリックを使用 せずに模擬授業を進め、後半(8~15 回)ではルーブリ ックを使用した模擬授業を行う。その後、学生の学習 到達レベルの差などを把握して、ルーブリックを導入 した指導方法の効果と課題を明らかにする。 学生の学習到達レベルの差などは、学生へのインタ ビューによる意識調査によって把握することとする。 インタビュー調査を採用した理由は、被験者が2 名し か確保できないため統計的な分析ができないことと、 被験者の考え方や捉え方などを深掘りする必要がある と考えたためである。 主なインタビュー項目は、ルーブリック導入前とル ーブリック導入後において、学生の授業目標が明確化 されたかや、授業設計が立てやすくなったという全体 的な視点のものと、「知識及び技能」、「思考力、判断力、 表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の各視点で どのような変化があったかである。インタビュー結果 についてはIC レコーダーに録音し、後に文書化して 資料としている。 「情報科教育法Ⅱ」へのルーブリック導入における 効果と課題について、履修学生は以下のように回答し ている。なお、ここではインタビュー調査を実施した 被験者を、学生A と学生 B とする。 学習指導要領や改訂内容を見ても、どこまで 自分の到達レベルを引き上げればよいか具 体的なイメージが湧かなかったが、ルーブリ ックがあると到達レベルが明らかになり、自 分に足りない点を把握できた。(学生 A) 教師役にフィードバックする際に、評価基準 が共有されているため、フィードバックしや すい。(学生 A) 自分がどういうステップで指導技術を上げ ていけば良いか目標が明確になり、毎回の授 業で目標が立てやすい。(学生 B) これらの回答より、ルーブリックによって教科「情 報」の学習到達レベルが明確になり、自身や他者の課 題を把握しやすくなっていることが分かる。また短期 的にどのレベルを目指せばよいかが明確になったため、 計画的に授業に取り組むことができるようになってい る。次に「知識と技能」の観点では、以下のように回 答している。 教科書の内容のみならず、授業で関連する情 報を調べて授業で扱うなど、工夫するように なった。(学生 A) 授業の流れなどをしっかりと想定して模擬 授業にのぞむようなるなど、模擬授業の準備 に時間を掛けるようになった。(学生 B) これらの回答より、ルーブリックにより模擬授業に 向けて、入念な準備と工夫をするようになったことが 分かる。次に「思考力、判断力、表現力等」の観点で は、以下のように回答している。 情報通信機器やその関係性についてイメー ジを持たせるために、説明用スライド内に図 を多用するようになった。(学生 A) 情報科目の用語は英語の横文字が多いので、 身近なものに置き換えたり、例えを多用する ようになった。(学生 B) これらの回答から、ルーブリックにより授業で使用 するスライドで図を使ったり、例えを活用したりする ようになり、表現力を向上させようと意識しているこ とが分かる。次に「学びに向かう力、人間性等」の観 点では、以下のように回答している。 生徒に主体的に授業に参加してもらうため に、生徒に問いかけをしたり、生徒の意見を 授業に繋げたりすることが意識できるよう になった。(学生 A) グループワークを成立させるのは難しい。た だし、ルーブリックが無かったら、実践する ことが無く、課題として認識していなかった。 (学生 B) これらの回答より、ルーブリックにより生徒への問 いかけやグループワークを実施しようとしており、ア クティブ・ラーニング型の授業を意識する姿勢が現れ たことが分かる。また課題の面では、以下のように回

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答している。 到達度合はいずれの項目もレベル 3 までは到 達できたが、15 回の授業でレベル 5 まで到達 するのは難しいと思われる。(学生 A) 生徒役が学生と教員の 2 名しかいないため、 グループワークを実践するのは難しい。(学 生 B) これらの回答より、授業の時間や参加人数からクラ スを想定した実践ができず、想定していた学習到達レ ベルに達することができなかったことが分かる。 インタビュー調査の結果から、「情報科教育法Ⅱ」に おけるルーブリックの効果を検証する。ルーブリック を導入したことにより、「情報科教育法Ⅱ」の学習到達 目標が明確になった。これは教員と学生間に「情報科 教育法Ⅱ」における共通の物差しが共有されたことに より、学生のゴールが明確になり、計画的な学習に繋 がったと考えられる。また目標レベルと学生とのレベ ル差を把握しやすくなったため、学生自身の課題を把 握しやすくなった。これらより、教職科目におけるル ーブリックの効果は「目標と課題の可視化」であると 言える。 また授業の準備として、授業用スライド作成に工夫 をしたり、関連情報を事前に入念に調べたりするなど、 模擬授業の準備に多くの時間を割くようになった。さ らにアクティブ・ラーニング型の授業を実践しようと するなど、幅広い授業形態を取り入れようとする意識 の向上にも繋がった。これらより、教職科目における ルーブリックの効果は「授業への動機付け」もあると 言える。 一方で、限られた授業コマ数内ですべてのレベルに 到達するのは時間的な制約から困難であったり、グル ープワークの模擬授業を行おうとするにも、人数の条 件が整っていないと成立しなかったりすることが明ら かとなった。これらを満たすためには、教育環境を鑑 みた上でルーブリックを作成する必要があることが示 唆される。 7. まとめ 本研究では、大学の教職課程の授業である「情報科 教育法Ⅱ」において、ルーブリックを導入することで、 学生の学習効果が向上するのではという問題意識から、 効果と課題について検証してきた。分析の結果から、 本研究の成果は次の2 点に集約される。 第1 に、「情報科教育法Ⅱ」におけるルーブリックの 効果は、「目標と課題の可視化」と「授業への動機付け」 を明らかにした点である。これらの効果は、一般的な ルーブリックの効果として指摘されているものである が、教職課程の授業でもその効果を発揮することが確 認できた。 第2 に、「情報科教育法Ⅱ」におけるルーブリックの 課題は、ルーブリックを活用する場合、授業コマ数や 学生の人数などの教育環境を考慮して、ルーブリック を作成する必要があるという点である。特に教職課程 の授業では、学習指導要領に沿った授業が行う必要が あるため、教育環境が置き去りになりやすい。よって、 学習指導要領と教育環境のバランスを取った上で、ル ーブリックを作成する必要がある。 以上より、本研究によって「情報科教育法Ⅱ」にお けるルーブリックの効果と課題を提示することができ た。これらの成果は、2022 年からの教科「情報」にお ける学習指導要領の改訂によって、大きな変革が求め られる教員の育成を担う大学教員に有効な知見を与え るものである。 ただし、本研究では定性調査であるインタビュー調 査を採用したため、統計的な裏付けが無く、一般化に はまだ留意する必要がある。今後は、定量的な調査を 踏まえ、教職科目におけるルーブリック導入の効果と 課題に関する研究を深化させていきたい。 参考文献 [1] 文部科学省, 「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説」文部科学省, 2018 年 7 月. [2] 文部科学省, 「総則・評価特別部会 資料 6-2 学習評価に関する資料」, 文部科学省, 2016 年 1 月. [3] 文部科学省, 「教職課程コアカリキュラム」, 文部科学省 教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会, 2017 年 11 月. [4] 藤田雅也ほか,「鑑賞学習ルーブリックの作成とその活用に関する一考察」, 美術教育 No.301, 2017 年, pp24-30. [5] 寺嶋浩介, 林朋美, 「ルーブリックの構築により自己評価を促す問題解決学習の開発」, 京都大学高等教育研究 Vol.12, 2006 年, pp63-71.

参照

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