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CO2削減賦課金と蓄電池の導入が石炭火力の利用率と CO2排出量に及ぼす影響の評価

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Academic year: 2021

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(1)

CO

2

削減賦課金と蓄電池の導入が石炭火力の利用率と

CO

2

排出量に及ぼす影響の評価

An Impact Evaluation of Introducing a CO

2

Reduction Surcharge and Storage Battery

System on the Availability of Coal-fired Power Generation and CO

2

Emissions

矢 部 邦 明

*

・ 林

泰 弘

*

Kuniaki Yabe Yasuhiro Hayashi

(原稿受付日 2020 年 12 月 3 日,受理日 2021 年 4 月 13 日) 1.はじめに 温室効果ガス排出量の大幅削減のためには,再生可能エ ネルギー(再エネ)の大量導入と,比較的効率の低い石炭 火力などの発電量を減らすことが効果的である.一方,太 陽光(PV)・風力発電のような自然変動電源(VRE)の比率 が大幅に増加すると,需給を一致させて系統周波数を維持 したり,適正電圧を維持したりするのが難しくなる.そこ で,一定量の回転系電源の確保・VRE の出力抑制・蓄電池 導入などの対策が必要となる.また,低効率石炭火力の廃 止について,資源エネルギー庁の審議会で議論されている が1),VRE 増加に対応した低出力運転や起動停止による効 率低下を考慮した「低効率」の線引き,調整力・安定供給 への貢献の評価や,熱利用・バイオマス混焼等を考慮した 公平性確保などの課題が多く,慎重な制度設計が必要とな る.2020 年度の容量市場メインオークションで,約定価格 が全エリアで上限値となったことや,2021 年 1 月に LNG 需給の逼迫などにより,卸売電力価格が高騰したことから も,今後の石炭火力の廃止には,安定供給を前提条件とし た慎重な検討が必要となっている. 筆者らは,これまで安定供給を制約とする発電コスト最 小化の計算を行い,「CO2削減賦課金」と蓄電池の導入効果 を評価してきた.再エネ賦課金が,系統電力の消費電力量 に応じて課すのに対し,これに代わる「CO2削減賦課金」 は,CO2排出量に比例して課すため,消費者にも小売電気 事業者にも,排出係数の小さい電力を調達するインセンテ ィブが生まれる.2030 年の九州をモデルとした計算2)では, 石炭火力と LNG コンバインドサイクル(LNGCC)における 燃料単価,及び起動費用や負荷追従力の違いから,この賦 課金単価を上げると徐々に石炭火力の発電量とCO2排出量 とが減少し,単価10,000 円/ton-CO2程度以上では,賦課金 込みの可変費が逆転してLNGCC の方が安くなるため,石 炭火力の発電量が顕著に減少することを示した.また,蓄 電池導入によって,太陽光・風力の出力抑制量が大きく減 少するが,平準化によりベース電源である石炭火力の発電 量を増やせる効果があり,蓄電池のみでCO2排出量を大き く減らすのは困難だった.地域間連系線の運用制約を模擬 した全国大のモデルによる評価 3)では,賦課金なしと,単 価10,000 円/ton-CO2の場合について,CO2排出量等を比較 し,九州の場合と類似した結果を得た.また,蓄電池導入 は,系統規模ではなく,太陽光・風力の導入比率に応じて, 東北と九州に重点的に導入すると,効果的であることを示 した4) 本稿は,再エネ賦課金に代えて「CO2削減賦課金」を導 入した場合について,この賦課金単価によって,低効率石 炭火力の発電量が減り,LNGCC にシフトする状況をシミ ュレーションする.2030 年の沖縄を除く全国を対象に,供 給計画で示された容量のVRE が導入され,蓄電池の導入に よってVRE の出力抑制が削減された状況を仮定し,最も経 済的な運転を行う場合の CO2排出量とコストを評価する.

Corresponding author: Kuniaki Yabe, E-mail:[email protected]早稲田大学スマート社会技術融合研究機構

〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町 513 121 号館 412 号室 Abstract

As the Japan’s feed-in tariff scheme, a renewable energy surcharge is charged in proportion to the grid power consumption. Authors proposed to replace this with a “CO2 reduction surcharge” which is charged in proportion to CO2 emissions. This paper evaluates nationwide effects of introducing this surcharge and storage battery when renewable energy is largely introduced. By optimizing hourly thermal power generation output of each type, PV/wind energy curtailment, charge/discharge amount and tie line power flow, the annual thermal power cost in Japan is minimized with linear programming methods. Then the CO2 emissions and costs are evaluated. Results show the introduction of storage battery decreases PV/wind energy curtailment, but CO2 emissions are not decreased because the energy share of coal-fired power generation is increased. When the surcharge unit price is increased, the availability and capacity of lower efficiency coal-fired power generation are decreased. Results also show that CO2 emission intensity can be decreased to 0.2kg-CO2/kWh when most of coal-fired plants are abolished, but then more capacity of LNG combined cycle power generation and more fuel costs are required.

Keywords : Renewable energy, Storage battery, CO2 emission, Economic evaluation, Coal-fired power generation

第37 回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンスの内容を もとに作成されたもの

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従来から,大量の再エネを含む将来の電源構成と,その運 用,及び出力抑制や蓄電池などの対策が,日本全体のCO2 排出量やコストに与える影響について多くの研究が行われ てきた.結果は,条件設定等によって異なるが,現実的な 条件を考慮するほど,計算時間が膨大,または困難になる. 東京大藤井・小宮山研究室では,10 分きざみ 1 年間の大 規模な計算を行っており,杉山ら 5)は,北海道で原子力の 部分負荷運転により設備利用率が50%台に低下し,風力の 電力量抑制率が40%に達するという結果を得ている.川上 ら 6)は,これに電力以外の分野も入れて,最適電源構成や CO2排出量原単位などを評価している. 一方,山本ら7)は,1 時間刻みの計算とする代わりに,PV・ 風力の短周期変動率から周波数調整力(LFC)必要量を求め, 火力・揚水式水力によるLFC の供給量がこれを上回ること を制約条件とすると共に,火力の暖機運転や部分負荷運転 を離散的な運転モードとして設定し,各モードの合計値で ある設備容量と,各モードへの配分で決まる運転状態とを 最適化するマルチモード電源構成モデルを開発し,火力の 部分負荷効率や,起動コストなどを反映した評価を行った. この手法を使って著者ら8)9)は,全国を6 地域に分け,地域 間連系線の利用可能容量を考慮した評価を行った.ただし, 計算時間短縮のため,北海道・四国・九州から最適化して 連系線潮流を決め,これを制約条件として他の地域を最適 化する簡略化を行なった. 小林ら10) は,新電力による石炭火力の計画を考慮した電 源構成最適化計算を行い,蓄電池の低価格化や,北本連系 の増容量がCO2削減に効果的であることなどを示している. 永富ら11) は,藤井・小宮山研のモデルを基にしつつ,LFC 調整力については,山本らの手法を継承して,2040 年の電 源構成と運用を最適化し,北海道・東北で容量がGW クラ スの蓄電池が必要という結果を得ている. これらの論文と比較した本稿の特徴は,計算時間短縮の ため,電源設備容量を極力外生変数として与える一方,火 力の起動コスト・部分負荷での効率低下・出力変化速度上 限を考慮すると共に,VRE の短周期変動に対応した周波数 調整力の確保,地域間連系線の季時別の利用可能容量など の運用制約を織り込んだことである.石炭火力については, 熱効率によって3 種類に分類し,それぞれの発電量の変化 に注目し,廃止の影響を評価した.また,揚水運転時にLFC 運転が可能な可変速揚水を,固定速揚水と区別し,需要家 設置の蓄電池もLFC 運転可能とするなど,安定運用のため の諸条件を反映させた上で,全国大で1 時間ごと 1 年間分 の経済運用シミュレーションを行っている. 2050 年に CO2排出実質ゼロを目指す場合,CO2回収・貯 留(CCS)を伴わない火力は,最長でも今後 30 年しか利用で きないが,当面は既存火力を調整力・慣性力として利用す るのが経済的である.今後,合理的にCO2削減を進めるた めには,CO2削減賦課金のような炭素価格の導入により, 代替可能な低効率石炭火力から順次削減して行くことが有 効と考えられる.トレードオフ関係にあるCO2排出量とコ ストの重み係数に相当する賦課金単価をパラメータとして, 削減シナリオごとの費用対効果をシミュレーション計算に よって示すのが本稿の目的である. なお,CO2大幅削減には,再エネ大量導入と同時に,蓄電 池・電気自動車・ディマンドリスポンス活用や水素製造等 による VRE 出力抑制回避が必要条件となるので,本稿で は,契約電力削減等を目的とした需要家による蓄電池導入 を前提とする. 2.計算方法と設定条件 2.1 目的関数と計算方法 沖縄を除く全国9 地域の合計火力発電費を目的関数とす る.容量と毎時出力を固定している原子力と再エネ,及び 容量を固定している蓄電池のコストは定数なので目的関数 に含めない.需給の一致や周波数調整力の確保などは地域 ごとの制約式とし,それらと地域間連系線の容量制約の下 で火力発電費OBJ を最小化する. 𝑂𝐵𝐽 = % &% 𝑓𝑖𝑥𝑐(𝑎, 𝑝) ∙ 𝐶𝐴𝑃(𝑎, 𝑝) ! " + % % {𝑢(𝑓) + 𝑐 ∙ 𝑒(𝑓)} ∙ 𝐹 #$%& '() (𝑎, 𝑓, 𝑡) * ; (1) ただし 𝐹(𝑎, 𝑓, 𝑡) = % 𝑋(𝑎, 𝑝, 𝑚𝑜𝑑𝑒, 𝑡) 𝜂!,,-./ !,,-./ + % 𝑢!,0,-./∙ 𝑀𝑊(𝑎, 𝑝, 𝑠𝑚𝑜𝑑𝑒, 𝑡) !,0,-./ ここで,大文字は内生変数,小文字は外生変数で, a:地域 (北海道/東北/東京/中部/北陸/関西/中国/四国/九州) 𝑝:火力種別{SC 級, USC 級, IGCC, LNGCC, LNG 汽力 (LNGST), 石油火力(Oil)} 𝑓𝑖𝑥𝑐(𝑎, 𝑝):設備の固定費単価相当年経費[円/MW/年] 𝐶𝐴𝑃(𝑎, 𝑝):地域 a の設備𝑝についての合計容量 [MW] 𝑢(𝑓), 𝑒(𝑓):燃料 f の単価[円/MJ],排出量原単位[ton-CO2/MJ] c:CO2削減賦課金単価[円/ton-CO2], 𝐹(𝑎, 𝑓, 𝑡):地域 a の時間 t-1~t での燃料 f の消費量 [MJ] mode:(運転モード種別)100%, 90%, 75%, 60%, 50%(LNGCC のみ),45%(LNGCC 以外), 30%(LNGCC 以外)負荷での運転

smode:(起動モード)cold-start のほか LNGCC のみ hot-start, banking(暖機運転)もあり

𝑋(𝑎, 𝑝, 𝑚𝑜𝑑𝑒, 𝑡):地域 a,火力種別 p の各運転モードでの時t-1~t の送電端出力[MWh]

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𝜂!,,-./:p の熱効率と各運転モードでの部分負荷効率及び 所内率を考慮した効率[MWh/MJ] 𝑢!,0,-./:p の各起動モードでの燃料消費量[MWh/MW] 𝑀𝑊(𝑎, 𝑝, 𝑠𝑚𝑜𝑑𝑒, 𝑡):t-1~t に各起動モードにある地域 a, 種p の設備量[MW] 汎用最適化計算ツールGAMS と,ソルバーCPLEX を使 い,線形計画法で最適解を求めた. 2.2 発電設備の設定 発電設備容量については,基本的にはLNGCC のみ下限 値付きで最適化し,他の主要電源の設備容量は表 1 に示す 固定値とした. 原子力は,既に60 年運転が認可されているものを除き, 2030 年度に運転開始後 40 年以下の設備を対象とし,新設 は,原子炉の工事まで進んでいるもののみ算入した.原子 力は,今後の不確定性が大きいが,本稿では,長期エネル ギー需給見通しでの発電量比率の見通し 20-22%を実現可 能な容量設定とした. 火力は,2030 年度に運転開始後 50 年以下の設備を対象 とした.先行研究 2)では40 年運転として,老朽火力の早 期廃止を前提としたが,今回は,廃止・存続の比較を行う ため50 年とした.新設分は,供給計画に挙げられていたも のから,運転開始が2024 年度以降のものと,建設中止と長 期計画停止中のものを除いた.LNGCC の容量は,2030 年 度に50 年以下の運転期間のものを最小容量とした.石炭火 力は,熱効率によって,超臨界圧相当(SC)・超々臨界圧相 当(USC)・石炭ガス化複合発電(IGCC)の 3 種に分類した. 熱効率42%(以下,全て HHV 基準)程度の SC について は,USC 級と分類し,亜臨界圧は SC 級,加圧流動床は USC 級に分類した. PV・風力以外の再エネ設備量は,広域機関の広域系統長 期方針で示されている想定シナリオ①12) (2030 年長期エ ネルギー需給見通しでの導入量を地域ごとの認定量等に応 じて按分)を採用した.PV・風力の導入容量は,2029 年度 の供給計画13)での地域別想定値を採用した.これは,長期 エネルギー需給見通しよりも,2 割程度大きい. 広域開発電源のうち,原子力と揚水式水力は,実際の立地 点ではなく,あたかも持分比率の容量が自地域にあるかの ように目的関数や制約式で扱った.実際の潮流は,地域間 連系線を通るので,あらかじめ連系線の利用可能容量から, 自社地域外の持分原子力の送電端出力を控除した.この設 定は,自社地域外原子力が連系線を優先的に利用できるこ とになるが,現行の間接オークション方式においても,長 期固定電源から調達する受給契約等は,承認されれば優先 的に約定される.広域開発の石炭火力(電発の火力と新地 火力)は,実際の立地点の電源とした.この場合,立地地 域で持分以上に安価な石炭火力を使ってしまう可能性があ る一方,再エネ余剰分と石炭火力とが,地域間連系線の空 容量を経済性で競争する状況(ノンファーム型接続)を模 擬できる. 表 2に主な火力の条件設定を示す.実際はプラントごと の差があるが,記載の通りグルーピングすることによって, 簡略化した.所内率・固定費(資本費・運転維持費)・燃料 単価については,発電コスト検証WG での設定14)を使い, 資本費は,割引率3%として計算している.実際の運転年数 は,プラントごとに条件次第で変化するが,ここでは40 年 間使用する場合の均等化年経費単価を用いた.CO2排出係 数は,環境省の2020 年報告用の数値である.可変費は,燃 料費とCO2削減賦課金の和なので,賦課金単価を高くして 行くと,石炭火力の可変費がLNGCC より高くなり,経済 表 1 地域ごとの主要電源容量 [MW] 地域 PV 風力 原子力 LNGCC 北海道 2,350 1,310 1,491 ≧1,139 東北 9,780 5,130 1,279 ≧6,701 東京 18,530 370 9,141 ≧20,586 中部 11,390 600 2,517 ≧16,275 北陸 1,700 770 1,298 ≧425 関西 7,080 230 7,178 ≧6,651 中国 8,020 940 1,373 ≧1,685 四国 3,650 740 890 ≧585 九州 13,540 2,610 2,360 ≧2,825 計 76,040 12,700 27,597 ≧56,872 地域 LNGST 石油 SC USC IGCC 北海道 78 1,164 1,255 700 0 東北 600 154 884 5,800 0 東京 2,555 1,633 1,143 5,695 1,333 中部 1,400 1,826 1,671 3,770 0 北陸 0 500 500 1,900 0 関西 2,655 2,602 1,533 4,400 0 中国 690 430 1,935 2,600 166 四国 350 0 368 3,294 0 九州 600 0 3,400 3,060 0 計 8,929 8,309 12,688 31,219 1,499 注)SC:超臨界圧相当,USC:超々臨界圧相当 表 2 主要な火力の諸元 火力種別 LNGCC SC USC IGCC 熱効率 (HHV) 52% 39% 42% 48% 所内率 2% 6.2% 固定費 円/kW/年 8,612 20,280 燃料単価 円/kWh 10.50 6.07 5.30 4.63 CO2排出係数 0.350 0.893 0.829 0.726 LNGCC と可変費同等条件* 8,147 10,840 15,589 出力変化速度上限 なし 60%/h 60%/h なし 最小停止時間 4 時間 8 時間 注)熱効率は発電端,他は送電端,排出係数[kg-CO2/kWh] *可変費が LNGCC と同等となる賦課金単価[円/CO2-ton]

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性が失われる.例えば,式(1)で,部分負荷での効率低下と 起動時の燃料消費を無視し,次の式(2)が成立する時の c を, 表 2に「LNGCC と可変費同等条件」として示した. {𝑢(𝐶𝑜𝑎𝑙) + 𝑐 ∙ 𝑒(𝐶𝑜𝑎𝑙)} 𝜂12,)&&% = {𝑢(𝐿𝑁𝐺) + 𝑐 ∙ 𝑒(𝐿𝑁𝐺)} 𝜂45622,)&&% ・・・(2) 部分負荷効率と起動コストを考慮すると,実際は,もっ と低い単価で可変費が同等となる.SC と USC の出力変化 速度は,定格容量基準で 1%/分として,1 時間後の出力が 60%以下の変化となる制約を置いた.現状の石炭火力の中 には,DSS 運転をしていないものもあるが,2030 年時点で は機動力のない火力は運用が困難になってくるものとして, 表 2の通り,停止から再並列までの最小時間を設定した. LFC については,火力は全て定格容量基準で±5%の調整 幅を持つものとした.火力・揚水式水力・蓄電池のLFC を 合わせて,PV・風力・需要による 1〜20 分程度の短周期変 動(PV:毎時出力の 10%,風力:定格出力の 10%,需要: 地域により1.2〜2.4%)15)を補償できることを毎時の制約条 件とした.運転モードごとのLFC の設定,コールドスター ト・ホットスタート・暖機運転時の燃料消費,及び部分負 荷効率の設定や,LFC 制約式などについては,著者らの先 行研究7) 8) 9)を参照頂きたい. 2.3 蓄電設備の設定 表 3に地域別の揚水式水力と,蓄電池の設備容量を示す. 揚水式水力は,東京・関西・中部に多く,東北・北陸で 少ないなどの特徴がある.なお,貯水量について,最大出 力の一律8 時間分に設定した. 蓄電池としては,2 時間容量の Li-ion 電池(単価 6 万円 /kWh)のみの設定とした.年間最大需要を減らしたい産業 用・業務用需要家と,FIP(Feed In Premium)制度に移行した メガソーラー等の発電事業者が,電気料金削減と販売収入 増大の目的で導入することを想定したからである.著者ら の先行研究 4)で求めた地域別最適導入量を採用した.条件 によって最適設備量は変化するが,後述する計算結果が示 す通り,蓄電池はPV・風力の出力抑制量削減と負荷平準化 に貢献するので,需要家と再エネ発電事業者主体に,経済 目的で十分な容量が導入されるものと想定した. 2.4 地域間連系線容量の設定 広域機関は,2029 年度までの地域間連系線の運用容量を 公表しており,至近年度については,特に周波数維持が利 用可能容量の上限を決める北陸・関西間と中国・九州間に ついて,平休日・昼夜・月別(3・9・11 月は前後半別)の 運用容量を公表している16).本稿では表 4 の通り,2021 年 度の運用容量を採用した.ただし,東北・東京間と東京・ 中部間は,予定されている増容量を反映させた.マージン については,厳気象対応電源の広域調達分など,不確定な 要素が大きいので,緊急時の周波数維持に必要な最小限(北 海道本州間と東京中部間)のみを考慮した17) 原子力の広域電源については,2.2 で述べた通り優先的に 連系線を使えるものとした.例えば,東北から東京への利 用可能容量は,2029 年度の運用容量 10,280MW から,女川 3 号・東北東通・大間の東京持分を控除した 8,332MW とし た.石炭の広域電源については,原子力のような優先利用 の扱いをしていないので,例えば四国・九州で,電発の橘 湾・松島・松浦火力を持分以上に地元で使ってしまう可能 性があるが,今回は,石炭火力の設備利用率低下の状況を 模擬するため,最適運用の対象とした. 本稿では,基本的に送電端で最適化計算をしており,地 域内の送配電ロスは含めていないが,地域間連系線では, 送電ロス率を,交流連系2%,直流連系 4%と設定した.託 送供給約款での特別高圧の送電ロス率は地域によって 1.3 〜2.7%とばらつきがあり,しかも実際のロス率は,発電所 の場所や毎時の運転状況で変化する.直流連系でのロス率 も不明だが,今回は上記の一律のロス率で簡略化した.こ の設定によって,例えば,隣接地域に同じ負荷率の火力が 表 3 蓄電設備の地域別容量設定 [MW] 地域 固定速揚水 可変速揚水 Li-ion 北海道 300 700 224 東北 710 0 1,817 東京 12,203 1,480 0 中部 4,092 0 0 北陸 110 0 166 関西 3,988 1,246 0 中国 2,123 0 597 四国 686 0 85 九州 1,100 1,200 1,784 計 25,312 4,626 4,672 表 4 地域間連系線の利用可能容量設定 [MW] 連系線 利用可能容量 順方向 逆方向 北海道→東北 740 410 東北→東京 8,332 6,310 東京→中部 2,400 2,400 中部→北陸 300 300 中部→関西 *280〜1,350 *2,000〜2,500 北陸→関西 *724〜1,324 *700〜1,600 関西→中国 2,780 *4,010〜4,210 関西→四国 1,400 1,400 中国→四国 1,450 1,450 中国→九州 0〜460 1,630〜2,810 北陸→中部+関西の計 *1,300〜2,100 *700〜1,600 *)昼/夜間・平/休日・月によって変化する最大最小を示す

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あった場合でも,需要が増加すれば自地域の火力を増出力 し,需要が減れば連系線からの受電を減らす自地域電源優 先の運転になる. なお,1 つの連系線潮流の向きを正負に対応させ,1 変数 とした場合は,線形計画法を適用できない.地域内の需給 一致の制約式において,潮流方向によって損失分の有無が 変化するからである.そこで,非負の内生変数2 つを順方 向・逆方向潮流に対応させた.この場合,どちらか一方は ゼロとなる制約を入れなくても,コストを最小化すること で,一方がゼロとなっていることを結果から確認した. 2.5 毎時需要・発電出力・定期点検 供給計画での 2029 年度の送電端需要は 872.1TWh であ り,各社が公表している2018 年度実績 890.3TWh と比較し て2%程度少ないが,本稿では 2018 年度の毎時需要実績を そのまま用いる. 再エネ出力は気象条件等によって変化するが,本稿では 2018 年度実績を基に,表 1 の設備容量と既設容量との比で 定数倍したものを用いた.出力抑制量は,PV・風力のみ最 適化し,他の再エネは出力抑制を考慮しない. 原子力の発電出力については,現状,再稼働が進んでい ない地域が多いことから,実績値を用いず,次のように設 定した.ユニット 1 基ごとに年間 73 日間の点検期間を設 定し,年間の設備利用率を80%とする.系統規模に対して 再エネ比率が高い地域では,定期点検の時期の設定が発電 余剰発生や,LNGCC の最適設備量に及ぼす影響が大きく, 毎時の需要から,再エネと原子力の出力を差し引いた値が, 負になる場合があるので,できるだけゼロに近くなるよう に原子力の点検期間を設定した.この補修計画は非常に難 しい最適化問題である一方,実務上は理論通りに計画する のが難しいものであり,今回は試行錯誤で設定した. 揚水式水力は,年間1 ヶ月の停止を行うものとし,ユニ ット数の多い東京は,年間時間稼働率の上限を一律 11/12 (=91.7%)に設定した.他の地域については,ユニットご とに定期点検の月を適宜割り振った. 火力は,需要から再エネ・原子力出力を控除した値が, 大きい月は稼働率が高く,小さい月は低くなるように,70 〜95%の時間稼働率上限を,5%刻みで各月に割り振り,年 間平均を85%とした. 3. 計算結果と考察 3.1 蓄電池導入の影響 著者らの九州を対象にした研究 2)では,蓄電池導入によ りPV・風力の出力抑制が減少するが,抑制ゼロが最適では ないことが分かった.また,文献3)では,例えば,東北から 東京への潮流について,同期安定性の制約による4,200MW を上限容量とし,更に広域電源については,原子力だけで なく石炭火力も地域間連系線を優先利用できることとして 控除したため,1,430MW を年度一定の利用可能容量とした. この時,蓄電池なしでの東北のPV 発電電力量の抑制率は 33.9%が最適値となった. 一方,今回は利用可能容量を表 4 の通り,8,332MW と大 きく設定しており,最適化計算の結果,東北エリアのPV 抑 制率は,図 1 に示す通り,6.7%と大きく減少した. 出力抑制は,現行制度とは異なり,需給の一致やLFC 確 保等の制約の下で,目的関数の燃料費が最小となるよう経 済性から最適値を決めている.抑制が必要な時には,その 時点のPV と風力の出力に対し,同一の比率で抑制する設 定としたが,通常はPV 出力の大きい昼間に抑制されるた め,PV の抑制率が風力よりも大きくなる. 表 5に,蓄電池導入が,地域ごとのCO2排出量原単位(需 要端)と,石炭火力・LNGCC の設備利用率に与える影響を 示す.東北と四国には,東京・関西向けの石炭火力がある ため,自地域需要あたりの排出量が多くなっている.北海 道は,比較的発電設備量が多い中で,今後増設が進む LNGCC の設備利用率が小さくなっている.東北は,蓄電池 図 1 蓄電池導入による PV 抑制率の変化(賦課金なし) 1.9% 6.7% 0.3% 1.6% 0.7% 0.0% 6.3% 2.5% 15.8% 4.9% 1.8% 1.6% 2.3% 1.0% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 16% 北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 全国 PV 年間発電電力量抑制率 蓄電池なし 蓄電池あり 表 5 蓄電池導入の CO2原単位・火力設備利用率への影響 地域 CO2原単位 [kg-CO2/kWh] 石炭火力 設備利用率 LNGCC 設備利用率 北海道 0.357→0.359 73.4→74.4% 5.0→ 2.7% 東北 0.605→0.566 77.0→84.3% 56.5→26.2% 東京 0.259→0.275 84.3→84.4% 39.7→46.5% 中部 0.372→0.368 83.7→83.6% 33.0→32.1% 北陸 0.477→0.485 80.0→81.4% 25.0→28.1% 関西 0.279→0.280 83.8→83.5% 19.6→20.9% 中国 0.467→0.464 80.0→81.0% 17.5→ 8.5% 四国 0.797→0.798 81.7→81.9% 5.5→ 4.5% 九州 0.441→0.438 76.1→77.6% 15.6→ 5.2% 計 0.371→0.372 80.6→82.1% 34.4→32.4%

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導入によりLNGCC の設備利用率が大きく減っている.表 には示していないが,LNGCC の年間発電量は 32.5→ 15.1GWh となり,東京への融通も 50.0→37.3TWh と減って いる.この理由を,5 月 5 日の毎時発電出力構成(図 2,図 3)を例として説明する. この日は,需要は少ないが,風力発電出力が比較的大き く,図 2 では,昼にPV・風力の出力抑制を行っている.PV 出力がない時間帯は,石炭火力が90%負荷で運転する一方, LNGCC も点検中を除く全設備が 50%負荷で運転しており, PV の発電量が増えると,石炭火力の出力を 45%(LFC 供 給の最低出力)まで絞る一方,連系線の利用可能容量 (8,332MW)まで東京に向けて送電している.蓄電池を導入 すると(図 3),同じ時間帯に一部を充電,一部を放電に使っ てPV・風力の出力変動に対応できる LFC を供給する.こ のため,LNGCC の多くの設備は停止し,石炭火力は LFC を供給できない定格運転から最低出力の30%まで出力を変 動させている.東京への送電は,最大6,392MW まで減って いる.このように蓄電池がLFC を供給するために,LNGCC 出力を絞る一方,PV 出力時間以外の石炭火力の定格運転を 増やして燃料費を削減している.同様の状況は,九州でも 見られる.全国大でも,蓄電池導入は石炭火力の設備利用 率をわずかに上昇させるので,PV・風力の出力抑制回避に よるCO2削減効果は相殺され,排出量は,わずかに増加し ている. 3.2 CO2削減賦課金を導入した場合の結果 賦課金単価をパラメータとし,蓄電池ありで,LNGCC 以 外の設備量を固定した場合の,火力設備利用率とCO2排出 量原単位の変化を図 4 に示す. 式(2)で求め,表 2 に示した定格運転で可変費が LNGCC と同等となる賦課金単価は,SC 級の場合 8,000 円/ton-CO2 程度だが,その前後で SC 級の設備利用率は大きく低下し ている.USC 級については,同様に 12,000 円/ton-CO2程度 で大きく低下している.IGCC は,15,000 円/ton-CO2で低下 が始まっている.このように,効率の低い石炭火力から利 用率が低下する一方,LNGCC の利用率が上がってベース 電源として使われるようになってくる. LNGCC の設備容量は,12,000 円/ton-CO2までは変わらな いが,15,000 円/ton-CO2では,北陸・関西・中国・四国・九 州で計8,167MW が増設された.東京・中部ほかと異なり, これらのエリアには十分な容量のLNGCC がないので,石 炭火力が割高になった状況では,LNGCC 増設が必要にな ることを,この結果は示している. CO2排出量原単位は,賦課金ゼロでも電気事業者の2030 年度目標の0.37kg-CO2/kWh 程度となっているが,賦課金単 価を上げていくと,10,000 円/ton-CO2で0.3kg-CO2/kWh 程 度まで,低下させることが可能だった. 3.3 石炭火力廃止の経済性評価 前節では,石炭火力の設備量を表 1 の値に固定して計算 したが,設備利用率が一定値以下まで低下すると,廃止し たほうが低コストとなる.全ての設備量を内生変数として 図 2 東北エリア 5 月 5 日の発電出力構成(蓄電池なし) 図 3 東北エリア 5 月 5 日の発電出力構成(蓄電池あり) -10 -5 0 5 10 15 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112131415161718192021222324 Ge ne ra tion Output [G W] ⾵⼒抑制 PV抑制 連系線受電 揚⽔発電 ⾵⼒ PV LNGCC ⽯炭 その他再エネ 原⼦⼒ 揚⽔動⼒ 連系線送電 -10 -5 0 5 10 15 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112131415161718192021222324 Ge ne ra tion Output [G W] ⾵⼒抑制 PV抑制 連系線受電 蓄電池放電 揚⽔発電 ⾵⼒ PV LNGCC ⽯炭 その他再エネ 原⼦⼒ 蓄電池充電 揚⽔動⼒ 連系線送電 図 4 賦課金単価による設備利用率とCO2原単位の変化 0.371 0.2 0.22 0.24 0.26 0.28 0.3 0.32 0.34 0.36 0.38 0.4 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0 3,000 6,000 9,000 12,000 15,000 CO 2 排出量原単位 [kg -CO 2 /kWh] 設備利用率 CO2削減賦課金単価[円/t-CO2] IGCC利用率 USC利用率 SC利用率 LNGCC利用率 CO2原単位

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最適化すれば,一度に最適解が得られるが,計算時間が膨 大となる.そこで,SC のみ,容量を表 1 の値を上限として 最適化し,単価を上げて行って容量ゼロが最適となる,つ まりSC 廃止が経済的となる場合を調べた.更に,SC の容 量をゼロとした上で,USC の容量を最適化し,廃止が経済 的になる場合を調べ,表 6 の設備容量を得た. まず賦課金ゼロでは,蓄電池なし(Case B0)でも SC の容 量が表 1 から226MW 減っている.これは,北海道で LNGCC 増設と原子力再稼働により予備力に余裕が出てくることを 示しているが,全国的には SC は安価な電源として設備利 用率72.2%で活用される.賦課金ゼロ・蓄電池あり(Case 0) では,北海道と九州で,SC 容量が計 463MW 減となった. これは,蓄電池によってLFC の必要量が確保され,LFC 確 保等のため必要だったSC が減ったためと考えられる. 賦課金単価3,000 円/ton-CO2 (Case3)では,関西・中国・九 州を除く地域でSC がゼロとなった.この 3 地域でも,計 6,868MW から 1,448MW に減少した.一方,全国加重平均 のLNGCC の設備利用率は,32.6→46.7%と上昇した.表 2 に示した通り,定格運転でSC と LNGCC 可変費が等しく なるのは,賦課金単価8,147 円/ton-CO2の時だが,固定費負 担・部分負荷効率低下や起動コストなどを考慮すると, 3,000 円/ton-CO2でもSC を廃止・削減し,LNGCC で調整 力を確保したほうが経済的になったと解釈できる. 賦課金単価6,000 円/ton-CO2 (Case 6)では,全国で SC 容 量ゼロが最適となり,九州で927MW の LNGCC 増設が必 要になった.この時,USC の設備利用率は 82.3%で,図 4 とほぼ同じであった. 図 5は,各ケースにおける全国の種別ごとの発電電力量 と,需要端でのCO2排出量原単位,図 6 は,火力と蓄電池 の年経費(固定費と燃料費)とCO2排出量である.Case 0 をCase B0 と比較すると,蓄電池導入で出力抑制が減った ためにPV 発電電力量が若干増加する一方,表 5 で示した 利用率の変化によって,LNG が減って石炭が増えている. この結果,蓄電池の固定費増分より燃料費減分が大きく, 合計費用は減少し,CO2排出量はほとんど変化しない. 長期エネルギー需給見通しの発電量構成(ベストミック ス)と,Case 0 とを比較すると,原子力 20-22%が 20.6%, 再エネ22-24%が 27.9%となり,非化石電源比率は,目標の 44%に対し 48.5%となる一方,石炭 26%が 33.7%,LNG27% が 17.8%となった.CO2排出量原単位は,電気事業者の目 標値を実現しているが,更なる削減は,石炭からLNG への シフトによって可能である. Case 3 では,SC の容量が大幅に減少して,石炭の発電量 比率が目標の26%にまで減る.設備費は減るが,LNG 燃料 費の増が大きく,合計費用は増加する.更に,Case 10 では, USC の容量もゼロになって,固定費が減り,燃料費と合計 が大幅に増える一方,CO2は,Case 0 の半分近くまで減少 している.2030 年時点で USC 級まで廃止すると,運転開 始後10 年程度のものが含まれる.法定償却年数を考慮した 計算と,本稿の40 年均等化費用での計算とでは,結果が異 なるが,2050 年実質排出ゼロに向けた将来対策としては, Case 10 も必要となるであろう. 2018 年度の電気事業からの CO2排出量は3.72 億 ton で あり,CO2削減賦課金の単価を6,450 円/ton-CO2とすれば, 再エネ賦課金相当の2.4 兆円を集められる.つまり,当面 は再エネ賦課金と同程度の負担で,SC の廃止を規制でなく. 経済性から進めて Case 6 程度までの CO2削減が期待でき 図 5 各ケースでの発電電力量とCO2原単位 20.6% 20.6% 20.6% 20.6% 20.6% 10.0% 10.4% 10.5% 10.5% 10.5% 2.8% 2.8% 2.8% 2.8% 2.8% 7.7% 7.7% 7.7% 7.7% 7.7% 7.0% 7.0% 7.0% 7.0% 7.0% 33.2% 33.7% 26.0% 24.6% 1.2% 18.8% 17.8% 25.4% 26.7% 50.3% 0.370 0.370 0.325 0.317 0.199 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

CaseB0 Case0 Case3 Case6 Case10

CO 2 排 出 量原単位 [kg -CO 2 /kWh] LNG 石炭 その他 再エネ 水力 風力 PV 原子力 CO2原単 位 図 6 各ケースでの火力・蓄電池の年経費とCO2排出量 0.916 0.911 0.693 0.664 0.563 0.563 0.563 0.571 0.727 1.642 1.665 1.238 1.165 1.864 1.755 2.482 2.605 4.835 5.108 5.080 5.163 5.191 5.832 3.147 3.146 2.760 2.693 1.688 0 1 2 3 4 0 1 2 3 4 5 6

CaseB0 Case0 Case3 Case6 Case10

CO 2 排出量 [億トン ] ⽕⼒・蓄電池年経費 [兆円 /年 ] LNG燃料費 ⽯炭燃料費 蓄電池固定費 ⽯油⽕⼒固定費 LNG⽕⼒固定費 ⽯炭⽕⼒固定費 CO2排出量 表 6 各ケースでの賦課金単価・蓄電池・火力設備容量 ケース 賦課金 [円/t] 蓄電池 SC [MW] USC [MW] LNGCC [MW] CaseB0 0 なし 12,462 31,219 56,872 Case0 0 あり 12,225 31,219 56,872 Case3 3,000 あり 1,448 31,219 56,872 Case6 6,000 あり 0 31,219 57,799 Case10 10,000 あり 0 0 75,826 注)赤の斜体の数字は固定値,他は最適化の結果を示す

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る.しかし,今後CO2排出量が順調に削減され,またFIT 買取に必要な賦課金総額が増えていくと,CO2削減賦課金 の単価も高い設定が必要となる. 朝野ら18)は,2030 年度の再エネ賦課金単価を 3.5〜4.1 円 /kWh と試算している.再エネ比率は 28%と本稿と同程度 だが,内訳は異なる条件での試算である.しかし,この再エ ネ賦課金総額2.88〜3.38 兆円/年を CO2削減賦課金で賄う

場合,2030 年度までに Case 6(CO2排出量約2.7 億 ton)を

実現した上で,Case 10 を目指して賦課金単価 10,000 円/ton-CO2としても,総額2.7 兆円/年しか集められず,FIT 買取 費用が不足する.更に単価を上げても良いが,Case 10 では, 発電原価自体も上がっており,自家発等に対する競争力が 今以上に低下してしまう.CO2削減賦課金を自家発にまで 適用することにより,FIT の買取費用を賄うことができる であろう.更に,発電以外のガス・石油需要に対してもCO2 削減賦課金を課すことにより,排出実質ゼロに向けて,CCS や水素利用といった新技術を早期に開発・導入していく資 金が集められるものと期待される. 4.まとめ 地域ごとの電源構成の違いや,地域間連系線の制約等を 反映したモデルを作成し,2030 年度における全国大での火 力・揚水・蓄電池の毎時出力,VRE 出力抑制および地域間 連系線潮流をコスト最小となるように最適化した.蓄電池 導入とCO2削減賦課金単価が,CO2排出量とコストに与え る影響に注目して評価した結果,次のことが分かった. ① PV・風力の出力抑制率は,地域間連系線と蓄電池の導 入によって大きく削減できるが,燃料単価の安い石炭 火力がベース電源として活用される間は,CO2排出量 を大きく削減するのは難しい. ② 再エネ賦課金に代えて CO2削減賦課金を導入し,その 単価を上げて行くと,効率の低い石炭火力から順に, LNGCC に対する経済性が失われ,設備利用率が大き く低下するので,CO2排出量を削減できる. ③ CO2削減賦課金の単価6,000 円/ton-CO2程度とすれば, SC 級石炭火力の廃止が進む.更に 10,000 円/ton-CO2程 度とすれば,USC 級も廃止が経済的になり,CO2排出 量原単位を 0.2kg-CO2/kWh 程度まで削減できるが, LNG 燃料費増で発電コストは上昇する. 地域によって既存設備の条件が異なる中で,石炭火力の 運転を規制によって制限する場合は,発電事業者間の競争 や,系統の安定運用に問題を生じさせないように慎重な制 度設計が必要となる.また,今後予想される再エネ賦課金 の増額は,系統電源よりも自家発を経済的に有利にさせる ほか,電化率の向上を妨げる恐れがある.系統電源のみCO2 削減を進めても,実質排出ゼロを目指すのは困難である. CO2削減賦課金を自家発や電力以外のエネルギー消費に対 しても導入することによって,公平性を担保したCO2削減 が進められるものと期待される. 今後の課題として,火力機の並列容量減少による慣性力 低下の考慮がある.特に単独系になった時の安定運用が懸 念される北海道と九州においては,再エネ導入拡大の制約 になる可能性がある.地域間連系線の新設・増容量を含め た最適化も,電源計画・運用に影響を与える課題である. 整備が進められている容量市場や需給調整市場の動向等を 踏まえた発電事業の経済性評価も必要である.再エネの主 力電源化と,それに伴う安定供給対策として,事業の収支 に影響する制度の見直しが継続して行われると予想される からである.電気自動車を含めた蓄電池の利用については, 電力系統への貢献をマネタイズする仕組みを含め,誰がど のように導入するのが経済的かの検討が課題である.2050 年実質排出ゼロに向けては,CCS や水素利用などを含めた 評価も必要である. 参考文献 1) 電力・ガス基本政策小委員会第 5 回石炭火力検討 WG 資料 3,「非効率石炭火力のフェードアウトに向けた各 種施策の検討状況について」,(2020). https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denr yoku_gas/sekitan_karyoku_wg/pdf/005_03_00.pdf (アクセス日 2021.3.17) 2) 矢部邦明・林泰弘:CO2削減賦課金と蓄電池導入効果の エネルギーチェーンによる経済性・環境性評価,エネル ギー・資源学会論文誌,Vol.41 No.1, (2020). 3) 矢部邦明・林泰弘:CO2削減賦課金の導入が全国大の CO2排出量とコストに及ぼす効果の評価,エネルギー・ 資源学会第39 回研究発表会,(7-3), (2020). 4) 矢部邦明・林泰弘:地域間連系線と蓄電池の最適運用に よる全国大の CO2削減効果の評価,電気学会令和2 年 電力・エネルギー部門大会,211, (2020). 5) 杉山達彦・小宮山涼一・藤井康正:「全国の電力基幹系統 を考慮した最適電源構成モデルの開発と太陽光・風力 発電大量導入に関する分析」, 電学論 B, Vol.136, No.12, pp.864–875 (2016) 6) 川上恭章・小宮山涼一・藤井康正:「高時間解像度の発電 部門を持つエネルギーシステム技術選択モデルによる CO2削減シナリオの分析」, 電学論 B, Vol.138, No.5, pp.382–391 (2018) 7) 山本博巳・矢部邦明・坂東 茂・永井雄宇:「再生可能 エネルギー大量導入が電源の設備量と運転モードに及

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ぼす影響評価―揚水式水力の精緻化と全国大での試算 -」,電力中央研究所報告,Y14002(2014) 8) 矢部邦明・山本博巳:「自然変動電源が集中導入される 地域に蓄電池を導入する効果の評価」, 電学論 B, Vol.137, No.1, pp.16–26 (2017) 9) 矢部邦明・山本博巳:「自然変動電源の地域集中が電源 構成と出力抑制に及ぼす影響評価」, 電学論 B, Vol.137, No.7, pp.499–510, (2017) 10) 小林勇介・吉田好邦:「電力小売自由化と再生可能エネ ルギー普及の CO2排出量への影響評価」,日本エネルギ ー学会誌, Vol.96 No.2, pp.42-51 (2017) 11) 永富 悠・松尾雄司・小笠原潤一,「LFC 調整力を考慮 した電源構成モデルによる 2040 年の電源構成の分析 と政策課題に関する検討」,エネルギー資源学会論文誌, Vol.40 No.2, pp.8-20 (2019) 12) 電力広域的運営推進機関,広域系統長期方針<参考資 料>(2017), pp52-55. https://www.occto.or.jp/kouikikeitou/chokihoushin/files/170 330_choukihoushin_sankou.pdf(アクセス日 2021.3.17) 13) 電力広域的運営推進機関,2020 年度供給計画の取りま とめ, (2020) https://www.occto.or.jp/kyoukei/torimatome/files/200331_k yokei_torimatome.pdf(アクセス日 2021.3.17) 14) 発電コスト検証 WG,長期エネルギー需給見通し小委員 会に対する発電コスト等の検証に関する報告 参考資 料 (2015). https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_poli cy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_wg_02.pdf (ア クセス日 2021.3.17) 15) 電力系統利用協議会,平成 25 年 風力発電連系可能量 算定に係わるデータの実績に基づく検証結果ならびに 自然変動電源の導入拡大に対する系統への影響確認結 果 (2013). 16) 電力広域的運営推進機関,第 5 回運用容量検討会資料 1-2,「2020~2029 年度の連系線の運用容量」,(2020) https://www.occto.or.jp/iinkai/unyouyouryou/2019/files/201 9_5_1-2.pdf (アクセス日 2021.3.17) 17) 電力広域的運営推進機関,第 48 回調整力及び需給バラ ンス評価等に関する委員会資料3 別紙 2,「2022~2029 年 度 の 連 系 線 の マ ー ジ ン ( 長 期 計 画 )」,(2020) https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/2019/files/chous ei_48_bessi_02.pdf (アクセス日 2021.3.17) 18) 朝野賢司・尾羽秀晃:「2030 年における再生可能エネル ギー導入量と買取総額の推計」,電力中央研究所研究資 料Y19514(2020).

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