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富士山噴火と周辺の海溝型地震の発生には時間的な関連性があるのか 2×2分割表による独立性検定を用いて

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名古屋地学 83 号,25–32 ページ(2021 年 3 月)

Nagoya Journal of Space and Earth Sciences, no. 83, pages 25–32, 2021

富士山噴火と周辺の海溝型地震の発生には時間的な関連性が

あるのか —2×2 分割表による独立性検定を用いて̶

林 譲治

Jouji HAYASHI

国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学応用生命科学部非常勤講師([email protected]) 〒501-6264 岐阜県羽島市小熊町島 701 番地 キーワード:富士山噴火,海溝型地震,発生間隔,ノンパラメトリック手法,2×2 分割表,独立性検定 1. はじめに 2011 年 3 月 11 日東北地方太平洋沖地震とその 4 日後 に富士山の直下で発生した地震は,およそ 1200 年前に富 士山・貞観噴火,日本海溝・貞観地震,南海トラフ・仁和 地震へと連続した変動や 1707 年宝永地震の 49 日後に発 生した宝永噴火の再現に繋がるのではないかと,様々な 場面で論及された(例えば,須藤, 2014; 巽, 2016; 鎌田, 2019)。こうした富士山噴火と地震活動の関連性は,木村 (1985),中村(1975),小山(1998)ほかにより示されて いて,小山(1998)は,1)南海トラフにおけるマグニチ ュード(M)8 クラスの地震は,資料が不十分な 1605 年 地震と 1944 年地震を除けば,11 地震の全てについて時間 的に近接して(±25 年以内)に富士山の火山活動に何ら かの変化が生じている点,2)相模トラフで生じる地震も 富士山の火山活動との関連があるようにみえる点などを 指摘した。しかし,小山(1998, 2002)を見る限り両者の 活動の関連性に十分な統計的な検証が行われているとは いえない。そこで林(2012)は,西暦 650 年から 2011 年 までの期間において,富士山の噴火と M7.9 以上の海溝型 地震の発生について,両者の発生年の相関関係を統計的 に検討したが,資料の信頼性と統計的な検証に問題があ った。 富士山の噴火や海溝型地震(以後,本論では単にイベ ントと称する)の発生間隔は,正規分布に従っていると いう仮定ができないために一般的なパラメトリック手法 が使えない。そこで本論では,これらのイベントを対象 にして,1)発生区域と発生間隔の特徴,2)活動期間と 重複期間から2×2分割表に対応する各度数を求めて独立 性の検定を行い,区域間のイベント活動と発生間隔の相 関関係について検討した。対象としたイベントは,西暦 669年から 2018 年まで(1350 年間)の富士山の噴火とそ のおよそ 600 km 以内の海溝型地震とし(表 1),2 イベン トの間隔は,小山(1998)より長い 30 年以内(1 イベン トの前後 15 年間)とした(注1)。富士山(B 区域)のイベ ントは,噴火の可能性がある 18 回の記述(小山, 1998, 2007)のなかで,確実性の高いイベント(B2:N = 10)を 扱い(注2),更に溶岩流出や大規模な噴煙活動を伴ったイベ ントを B3(N = 6)に分離した。南海トラフ∼駿河トラフ (A 区域,N = 9)と相模トラフ∼日本海溝(C 区域,N = 13)のイベントの発生年,場所,及びマグニチュードは, 地震調査委員会(2011, 2013, 2014, 2019)に基づき,宇佐 見(1996),小山(1998),鎌田(2018)により一部を訂正 した。前者は南海トラフ付近の A1 区域(N = 3)と南海 トラフ東部∼駿河トラフ付近の A2 区域(N = 6)に,後 者は相模トラフ付近の C1 区域(N = 6)と日本海溝付近 の C2 区域(N = 7)に細分した(図 1)。また,いわゆる 連動型地震の場合は先行したイベントの発生年(全てA2) を用いた。 本論では火山活動と地震活動との関連に関するメカニ ズム的な議論(中村, 1975; 木村, 1985; 小山, 2002 など) については扱わなかった。 2. イベントの発生間隔と区域の特徴 (1)イベントの発生間隔

本論では,A 区域(A1 区域,A2 区域),B 区域富士山 噴火 B(B2,B3),C 区域(C1 区域,C2 区域)における 32回の地震もしくは噴火イベントを対象としている(表 1)。これらのイベントは,調査期間(1350 年間)に単純 平均すると 42 年の間隔で発生して,その間隔より短い 30 年間に 2 つのイベントが発生するペアは 20 組(注3)存在す る(図 2-(1))。また,3 イベント以上が 30 年以内の間隔 で続けて発生している事例は,以下の 3 セット(注3)(この 中に 16 組のペアがある)である。12 イベントについて は,前後 30 年間に他のイベントは発生していない。 1) 864 年貞観噴火 → 869 年貞観地震 → 878 年駿河ト ラフ地震 → 887 年仁和地震 2) 1677 年地震 → 1703 年元禄関東地震 → 1707 年宝永 地震 → 1707 年宝永噴火 3) 1896 年明治三陸地震 → 1923 年関東地震 → 1933 年 昭和三陸地震 → 1944 年昭和東南海地震(→ 1946 年 昭和南海地震) このうち 1),2)は有名で,3)には富士山の噴火活動

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がない。また,2)の 1677 年地震に対しては規模や発生 場所について異論がある(宇佐見, 1996)が,それを除い ても 3 イベントが関係している。 次に,イベントが集中する期間とそうでない期間の特 徴をみてみよう。本論で検討している「2 つのイベントが 30年間に発生した」という条件は,先発したイベントの 発生年に 15 を加えた年数と,後発したイベントのそれか ら 15 を引いた年数が重複する場合に成立する。そこで, 組とセットに対して初めのイベント発生年の15年前から 最後のイベントの 15 年後までの期間をイベントの集中 期,それ以外を非集中期とし,それぞれの期間を合計し た。 その結果,集中期は 1350 年の調査期間に 7 回(合計 352年間,調査期間の 26%)あり,およそ 190 年に 1 回 であった。この期間中には 20 回のイベントが発生し,そ の発生間隔はおよそ 17.6 年/回であった。3 イベント以上 のセットからなる集中期は 3 回あり,約 450 年に 1 回の 頻度であった。富士山噴火を伴った 1),2)のセットの間 隔は約 850 年であった。一方,非集中期は,調査期間か ら集中期を除いた 998 年間(調査期間の 74%)に 12 回 イベントが発生しているので,およそ 83.3 年/回の発生頻 度となった。概略すると,およそ 60%のイベントが調査 期間のわずか 25%の集中期に発生し,その発生頻度は非 集中期の 4.6 倍であった。 (2)イベントの発生区域の特徴 日本列島ではイベントの発生場所が西に移動する傾向 が指摘されているので(津久井ほか, 2008; 石渡, 2019), 図 2-(1) に示した 20 組のセットにおいて,東のイベント の発生年から西のそれを引いて前後関係をみると,正(西 側が先発)が 6 組,負(東側が先発)が 14 組あり,後者 が約 2 倍多かった(図 2-(2))。ただし,西側が先発する組 は 15 年以内の年差であったのに対し,東側が先発する組 の年差は 30 年の間に分散していた。 区域間毎に,先発する区域とその組数をみてみよう(図 2-(3))。 A 区域(N = 9)と B2(N = 10)は,東先発と西先発の いずれも 2 組ずつの計 4 回,B2(N = 10)と C 区域(N = 13)は東先発が 3 組,西先発が 2 組の 5 回であった。A 区域(N = 9)と C 区域(N = 13)は東先発 6 組,西先発 表 1 富士山とその周辺の主な地震の一覧表。富士山の噴火記録と周辺の海溝型地震の活動を年代順に示した。a∼c,C1∼C2 は 震源域を示す。 図 1 位置図。本論では,富士山からおよそ 600 km 以内で発 生した太平洋側の海溝型地震に対し,西側を A(A1, A2),東側を C(C1, C2)とした。A の区分は瀬野(1995) に,海溝と富士山の位置は気象庁(2013)による。

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1組の計 7 回であった。従って,各区域で発生したイベン トのほぼ半数以上に,他の 2 区域で発生したイベントが 確認できる。さらに,細分した区域間でみると,組となる 割合は近い区域間が高く,A1 区域(N = 3)と C2 区域(N = 7)などの離れた区域間では少なかった。また,それぞ れ 6 回ずつ発生した富士山噴火(B3)と C1 区域間は, 各々半数(東先発 2 組,西先発 1 組)にもう一方のイベ ント発生があった。津久井ほか(2008)や石渡(2019)の 図 2 富士山の噴火活動と地震活動の発生 年の関係。 (1)富士山噴火と地震活動の時系図。 四角内の数値はイベント発生年(西 暦)を表しており,太線の四角は±30 年以内に他の区域のイベントが生じて いるものを示す。四角間を結んだ矢印 の矢先が後に発生したイベントで,矢 先の数値は東側のイベントの発生年か ら西側のイベントのそれを引いた年数 である。青矢印と青字(正の値)は東 側のイベントが,赤矢印と赤字(負の 値)は西側のそれがより後に発生して いる。富士山の大規模な噴火(B3)を 斜体(淡桃色)で示す。 (2)各区域間のイベントの発生年差。 同じ区域毎にイベントの発生年差をま とめた。西方が後発である赤字(負の 値)がその逆の 2 倍多い。 (3)前後 30 年間に他区域で発生した イベント数。イベントの組の中で,区 域内のイベントが先行した数をその区 域の矢印の先に示した。青は西が先 行,赤は東が先行したイベント数であ る。例えば,A(N = 9)と C(N = 13) との間では,西側先行(青)が 1 組, 東側先行(赤)が 6 組の合計 7 組あっ たことを示す。B 区域(B2, B3)と C 区域(C1, C2)の間が同じ数値となっ ているのは,C 区域のイベントは B3 とのみ対応しているからである。

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指摘のように活動区域が西に移るという傾向が再確認で きた。 3. イベント活動の相関関係 調査地域では,イベントの 60%が 25%程の集中期に発 生し,その半数近くには別の区域に組となるイベントが ある関係から,演繹的には何らかの関連性がありそうだ と指摘できる。しかし,その結論は統計的な検証を受け たとはいえない。そこで,イベントが発生した年から前 後 n 年間(±15 まで)の期間(活動期)と,その活動期 が別の区域の活動期と重なった期間(重複期)から,ノ ンパラメトリック手法の2×2分割表による独立性の検定 を行い,2 区域間の活動期の相関関係を調べた。なお,1 活動期あたりの度数を求めたため一般的な2×2分割表で は扱わない小数点以下の処理を行っている。また,少な い標本数に対して実施するイエーツの補正なども検討し たが,結果に大きな差がなかった。これらの妥当性につ いては今後の検討課題として残した。 (1)方法 1) 対象とする区域のイベント群を I と J とする。イベン トの発生年に±n 年(n は 0 から 15 まで)を加えた期 間(活動期)を合計し,I 活動期間 J1・,J 活動期間 J・1 (注4)を求める。 2) I と J の活動期が重なる期間(重複期)を合計し,I・J 重複期間 J11(注4)を求め(表 2),表 3 の 2×2 分割表に 従って,残りの非 I 活動期間 J2・ , 非 J 活動期間 J・2 , I・ 非 J 活動期間 J12 , 非 I・J 活動期間 J21 , 非 I・非 J 活動 期間 J22を求める。 3) 表 3 で求めた各期間を(2n+1)で割って 1 活動期あ たりの総度数 S,I 活動度数 f1・ , J活動度数 f・1 , I・J 重 複度数 f11 , I・非 J 活動度数 f12 , 非 I・J 活動度数 f21 , 非 I・非 J 活動度数 f22の各観測度数 fijを求める(表 4)。 4) 観測度数 fijに対応する期待度数 eijを から求める(表 5)。 5) 2×2 分割表(自由度 1)から,統計検定量 T(カイ 2 乗値)を によって求め,検証する仮説 帰無仮説 H0: I 活動期と J 活動期は独立である(以後, 独立と記す) 対立仮説 H1: I 活動期と J 活動期は独立であるとはい えない(以後,相関と記す) に対して,統計検定量 T が 5%有意水準(自由度 1; a = 0.05)の限界値 3.84 より大きい場合,対立仮説 H1 の相関が 95%の信頼性で確かであると判定する。 表 2 活動期間・重複期間の測定値。各イベントの発生年に n(0 から 15 まで)を加えて活動期と活動期間, および他区域の活動期間と重なる重複期と重複期間(区域間を「×」で示した)を求めたが,活動期 や重複期が同一年になった期間は除いた。 表 3 活動期間と非活動期間の関係。表 2 に示した I 活動期間 J1・と J 活動期間 J・1と I・J 重複期間 J11,調査期間(1350)を本表の 2×2 分割表に代入して,それ以 外の期間を求めた。行列は入れ替えても同じ結果になる。

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(2)結 果

A 区域,B 区域,C 区域の各区域間(細分した区域間 を含む)において 95%信頼性で相関を示した区域間とそ の n の範囲(図 3)と結果の一部(表 6, 7)を示した(注5)

1) A 区域と B 区域:A-B2(本方法の区域間をハイフン (-)で結ぶ)が n = 0,A-B3 と A2-B2 が n = 0∼1,A2-B3が n = 0∼2 において相関を示し,A1-B2,A1-B3 は 独立となった。相関を示す期間は,噴火規模が大きく かつ距離の近い A2-B3 で長くなり,富士山の噴火規 模 B2 および A 区域の場合に短くなった。また,距離 の遠い A1 区域と富士山の噴火 B 区域とは独立となっ た。 2) B 区域と C 区域:B3-C1 が n =3∼14 において相関を 示したが,その他の区域間はいずれも独立となった。 3) A 区域と C 区域:A 区域(A1, A2)と C 区域(C1, C2)

の各区域間ではいずれも独立となった。 4. 各区域間のイベントの関連性と今後の活動について イベントは25%程の集中期に多くの組やセットを形成 し,富士山の大規模噴火 B3 と C1 区域の海溝型地震のよ うな密接な関連性を示唆する区域もあった。さらに,1 活 動期あたりの度数を求めて2×2分割表による独立性検定 を行ったところ,A 区域または A2 区域の海溝型地震と富 士山噴火(B2, B3)が n = 0 から n = 0∼2 に,富士山の大 規模噴火 B3 と C1 区域の海溝型地震が n = 3∼14 に相関 を示し,一方,C1 区域と C2 区域,C1 区域と A2 区域な どの海溝型地震間や,あるいは,A1区域と富士山噴火(B2, B3),C2 区域と富士山噴火(B2, B3)などの区域間では 独立となった。 従って,A区域の海溝型地震とB区域の富士山噴火(B2, B3)は同年から数年間に,富士山の大規模噴火 B3 と C1 区域の海溝型地震は数年∼30 年弱の間に相関があること が確認されたが,これは,従来から指摘されている南海 トラフ地震と富士山噴火の関連性に加えて,小山(1998) が指摘した相模トラフ地震と富士山噴火との関連性につ いても統計的に検証したことになる。 では,本論の結果からは今後のイベントの発生がどの ように推論できるであろうか。B3 の富士山の大規模噴火 と C1 区域の相模トラフ地震とは,5・6 年から 30 年弱の 間に相関があり,南海トラフ東部∼駿河トラフで発生す る海溝型地震 A2 と B 区域の富士山噴火は,数年間の相 関があったので,今後いずれかのイベントが発生した場 合には,これら 3 区域のイベントの連鎖発生の可能性が あり,特に,互いに半数のイベントが対応する組があっ た富士山の大規模噴火(B3)と C1 区域の相模トラフ地 震にはより注意が必要であろう。しかし,C2 区域で発生 した 2011 年東北地方太平洋沖地震の後に富士山の噴火, および周辺での海溝型地震が発生するかどうかは,C2 区 域が海溝型地震の C1 区域や A 区域,あるいは,富士山 噴火(B2, B3)との間において独立であったので,これら のイベント間は偶然性を超えるものではなく,本方法を 用いた統計的検討からは何ともいえない。 今回 669 年から 2018 年までを調査期間としたため,今 後調査区域内でイベントが発生した場合,結果が変わる 可能性が考えられるので,2021 年に 1 回のイベントが B3 区域内に発生した場合の B3-C2 と,C1 区域内に発生した 場合の C1-A2 について独立性検定を行ったが,いずれも 独立となり,この条件では結果は変わらなかった(注6) 今後の課題として,本手法の統計学的検証と時空間隔 の統計的手法の検討,発生年と発生回数などを変更した シミュレーション,更には扱わなかった相関をもたらす メカニズムの解明などを上げる事ができる。 表 4 観測度数。表 3 で求めた各期間を(2n+1)で割って各度数を求めた。また本 論の有効数値は 2 桁としたが,一部観測値などは 3 桁となっている。 表 5 期待度数。表 4 で求めた観測度数を表中の式に入れて 求める。 図 3 相関関係図。相関(95%信頼性)を示した区域間(矢 印)と n 年(矢印上の数値)である。ただし,ここで 示される n 年はそれぞれのイベント発生年を基点とす るので,実際には 2n 年の間隔となる。B3-C1 は n = 3 ∼14 であるので,一方のイベントの発生前後の 5・6 年 から 30年弱の間にもう一方のイベントの発生に相関が あることを意味する。

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5. まとめ

西暦 669 年から 2018 年までの 1350 年間に南海トラフ ∼駿河トラフ(A 区域:A1, A2),富士山噴火(B 区域; B2, B3),相模トラフ∼日本海溝(C 区域:C1, C2)にお いて発生したイベント(富士山噴火と海溝型地震)には, 30年以内に連続して発生したペアが 20 組あり,その中 には 3 イベント以上が連続する 3 セット(ペアが 16 組) があった。ペアとなった組の発生年の前後 15 年間までを 集中期とすると,調査期間内には 7 回の集中期(調査期 間の 24%)があり,イベントが 18 年/回の頻度で発生し ていた。残りの 76%の非集中期にはイベントが 83 年/回 の頻度で発生し,集中期がおよそ 5 倍高い発生頻度であ った。また,東方の区域のイベントが先発する傾向が再 確認され,さらに,いずれも 6 回発生した富士山の大規 模な噴火と相模トラフ地震のペアは 3 組ずつであった。 各区域で発生したイベントの相関関係を調べる目的で, イベント発生年から前後15年間までに活動期と重複期を 設定し,ノンパラメトリック手法の 2×2 分割表による独 立性検定を行った結果,富士山の噴火活動は,南海∼駿 河トラフの海溝型地震と発生同年から数年間に,相模ト ラフの海溝型地震と 2・3∼30 年近くの間に相関が示され たが,その他の区域間のイベントには相関があるとはい えなかった。 2011 年東北地方太平洋沖地震からの連鎖が心配されて いる富士山噴火や海溝型地震は,本方法の結果からは何 ともいえないが,今後,相模トラフでの海溝型地震,富 士山の大規模な噴火,および南海トラフ東部∼駿河トラ フでの海溝型地震のいずれかが発生した場合には連鎖的 な活動に注意が必要であろう。 6. 謝 辞 本論は菊池富男氏の統計処理に関する Excel ファイル KTS&C(http://ktsc.cafe.coocan.jp),高梨和幸氏の「緯度経 度から距離を算出」する Excel ファイル Ver.2.0(http:// labo.ninpou.jp),および鎌田輝男氏(2018)の地震検索シ ステム EQLIST Ver.4.5 によりまとめることができた。以 上の方々に感謝いたします。 7. 注 釈 注 1) 調査期間を 669 年から 2018 年までの範囲とした 関係で,684 年白鳳地震の前,2011 年東北地方太平洋 沖地震の後のイベントについては,「前後発生から 30 年」の条件が満たされていない。この点に関し,調査 期間を拡大しても計算結果にはほとんど違いがないの で,特に断りのない限り本論の議論から除外した。 注 2) 小山(1998, 2007)が記述した 18 回のイベント(B1) のうち,8 回のイベントは信頼性に乏しいとの記述が 表 6 統計分析集計表 1(No.1∼2)。A2-B3 と B3-C1 の結果を示す。B3(N=6)‒A2(N=6) の場合,先に示した B3 が J1・, A2が J・1の 測定値である。表と本文の順が異なっている。信頼性 95%をピンク色で,99%を橙色で示した。

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あるため,扱わなかった。 注 3) 2 つのイベントの組み合わせに対しては組,3 つ以 上のそれについてはセットを用いる。 注 4) 区域内においてイベントの活動期が重なった期間 は除いた。また,重複期についても同様に除いた。イ ベントの発生年に±n 年を加えて活動期を設定してい るので,イベントの間隔は 2n である。 注 5) 表の組み合わせの順と本文の順が異なるので注意 が必要である。本論では,「独立とはいえない = 相関」 を 95%信頼性(ピンク色)で検討したが,99%(橙色) の信頼性で判定した結果も示した。オッズ比は表 4 に おいて ( f11×f22 ) / ( f12×f21 ) で求めた値であるが,こ こでは扱わない。 注 6) 計算結果を省く。「2021 年のイベント発生」とした のは,最も統計量が大きくなるからである。しかし, 複数のイベントの発生や新たな知見などにより本論の 結果が変わる可能性は否定できない。こうした今後の 活動結果により検定を修正する方法としてベイズ統計 が知られているが,本方法に適応できるかは,今後の 課題としたい。 8. 文献・URL 林 譲治, 2012, 巨大地震が相関関係を示す諸変動. 岐阜 県地学教育, 48, 1-20. 石渡 明, 2019, 日本地震周期表:大地震の西進傾向と将 来予測. 日本地質学会第 126 年学術大会, T6-P-2, 181. 地震調査委員会, 2011, 三陸沖から房総沖にかけての地震 活動の長期評価(第二版)について. 70p. 地震調査委員会, 2013, 南海トラフの地震活動の長期評価 表 7 統計分析集計表 2(No.3∼10)。ほとんどの区域間で独立(95%信頼性)となった。

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(第二版)について. 94p. 地震調査委員会, 2014, 相模トラフ沿いの地震活動の長期 評価(第二版)について. 81p. 地震調査委員会, 2019, 日本海溝沿いの地震活動の長期評 価. 144p. 鎌田 浩, 2019, 富士山噴火と南海トラフ. 講談社ブルー バックス, 270p. 鎌田輝男, 2018, 地震検索システム EQLIST Ver.4.5, http://www5b.biglobe.ne.jp/~t-kamada/index.htm 木村政昭, 1985, 地震と地殻変動. 九州大学出版会, 195p. 気象庁, 2013, 日本活火山総覧(第 4 版)Web 掲載版, http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/so uran/menu_jma_hp.html 小山真人, 1998, 歴史時代の富士山噴火史の再検討. 火山, 43, 323-347. 小山真人, 2002, 火山で生じる異常現象と近隣地域で起き る大地震の関連性. 地学雑誌, 111, 222-232. 小山真人, 2007, 富士山の歴史噴火総覧. 富士火山, 山梨 県環境科学研究所, 119-136. 中村一明, 1975, 火山の構造および噴火と地震の関係. 火 山, 第 2 集, 20, 229-240. 瀬野徹三, 1995, プレートテクトニクスの基礎. 朝倉書店, 190p. 須藤 茂, 2014,「巨大地震の後に火山噴火」は俗説か? GSJ地質ニュース, 3, 312-315. 巽 好幸, 2016, 富士山大噴火と阿蘇山大爆発. 幻冬舎新 書, 227p. 津久井雅志・中野 俊・齋藤公一滝, 2008, 9 世紀にアムー ルプレート東縁に沿って起きた噴火・地震活動につい て. 火山, 53, 79-91. 宇佐見龍夫, 1996, 新編日本被害地震総覧 416‒1995,増補 改訂版. 東京大学出版会, 493p.

参照

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