Title
大学生は'99春の甲子園大会をどう見たか−
Author(s)
國吉, 和子
Citation
沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(17): 1-17
Issue Date
2000-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5856
大学生の郷土意識と社会的アイデンティティ(Ⅳ)
-沖縄の大学生は'99春の甲子園大会をどう見たか-
國吉和子
[目的] 本研究は大学生の郷土意識と社会的アイデンティティに関する一連の研究の 一部をなすものである。 先に行った「大学生の郷土意識と社会的アイデンティティ」の研究(國吉、 1998,1999,2000)では、郷士意識の高さを捉えるための一つの指標として 「甲子園の高校野球大会の観戦態度」の質問項目を用いたが、青森や岩手、長 崎、沖縄の4地点の大学生を対象にした調査結果では、「甲子園の高校野球大 会を見ているか」との質問に対する「みている」との肯定回答は、沖縄が約9 割を占め、他の3地点(5~6割)と比べて目立って高率を示した。しかも、 そのなかで「甲子園大会を出身県代表が出場する時だけみる」との回答が沖縄 は約6割を占め、その回答率も他の3地点(1~3割弱)と比べてかなり高率 であった。また、沖縄の20~80歳代(県内出身者)を対象にした同質問に対す る回答結果においても世代間に有意な差はみられず、どの世代とも「みている」 との回答が約9割、「県代表が出場する時だけみる」が6割前後で、大学生の 場合と同様にそれぞれ高い回答率を示した(國吉、1998)。 ところで、沖縄の甲子園大会出場の歴史は他府県とは異なったものである。 沖縄は他府県よりもかなり遅れて夏の全国高校野球第41回大会(1958年)から出 場することになったが、1945年~1972年の沖縄は米国施政権下にあって、他府 県との交流が極めて困難な状況にあった。甲子園大会初出場から41年(1999年 現在)が経過したが、その間、沖縄県勢の若者たちは、他府県勢との間の野球 経験の質的・量的格差のハンディキャップを背負いながら、その格差を埋める べく努力してきた。そしてまた、沖縄の多くの人々は、甲子園大会での県代表 の活躍に熱い期待と夢を託して毎年支援と応援に臨んできた。そして1999年春 の甲子園の選抜高校野球大会においては、遂に沖縄県代表のOS高校が初めて -1-優勝の夢を達成した。その時の沖縄は例年以上に歓喜に満ちあふれ、活気づいた。 このように、沖縄の人々の甲子園の高校野球大会への関心と思いはかなり高 く、しかも、甲子園大会での郷土チームの活躍への期待、特に全国制覇の夢は 沖縄の人々の個人的・社会的アイデンティティと深く関わっている。また、歴 史的な対ヤマト意識の問題も関わっているのかもしれない。 本研究では、’99年春の甲子園大会を沖縄の若者たち(大学生)がどうみた のか、そして彼らが沖縄県勢の活躍ぶりと全国制覇をどのように受けとめたの か、その内容を分析し、若者の郷士意識とアイデンティティの側面をみていく ことにする。加えて、性別比較による考察も行う。 [方法] 調査対象:県内の大学生242名(男149名、女93名) (被調査者は260名であったが、その中、18名は県外出身者ある いは外国人であったので、その18名は分析対象から外した)
調査時期:1999年4月19~20日(甲子園大会終了して約2週間後)に実施した。
調査方法:心理学関係科目の講義の時間に受講生(1~4年生)に一斉に調査 を実施した。 調査票の内容:甲子園の高校野球大会への関心3問/観戦経験の有無および 観戦方法7問/対戦結果の受けとめ方および若者への影響の認知 7問/マスコミの取り上げ方の認知1問/他1問、計19問、その なかの5問は記述式であった。 なお、本研究では数量化Ⅲ類の適用による解析を行ったが、そ の際に用いられた質問項目としては、上記19問の中、記述式の項 目およびデモグラフィック要因の項目を除き、以下のような8項 目23カテゴリーを用いた。 QL甲子園大会に関心があったか(1.かなりあった 2.まああった3.あまり+全くなかった) Q2・甲子園大会を毎年みていたか(1.毎年全日程みていた+ 県代表不出場でもよくみた2.県代表出場の時だけみて -2-いた3.殆ど+全くみなかった) Q3.今度の春の大会をみたか(1.みた2.みなかった) Q4.春の甲子園大会をどの期間みたか(1.全日程みた+OS 高校不出場でもよくみた2.0s高校出場の時だけみた 3.殆ど+全くみなかった) Q6.0s高校の試合で最も印象深かった試合は(1.4回戦 2.5回戦3.その他) Q8.0s高校とNS高校の対戦をみたか(1.みた2.関心 なくみなかった3.その試合を知らなかった) Q9.0s高校の優勝は沖縄の若者に影響を与えていると思うか (1.かなりの影響があると思う2.いくらかの影響が あると思う3.あまり+殆ど影響ないと思う) Q10.Cs高校の優勝はあなた個人に刺激になったか(1.かな りなった2.まあなった3.ならない+わからない) [結果] 1.全体的な結果および性別比較
まず、「甲子園大会への関心」については、全体的には「かなり関心あり」
の回答が37%、「まあ関心あり」が48%となっている。9割近くが甲子園大会 に関心を持っていることを示している(表1)。 男女別比較をすると、「かなり関心あり」の回答では男子の割合が女子より も高〈(44%、26%)、また「まあ関心あり」の回答では女子の割合が男子よ りも高くなっている(52%、45%)(P〈005)。 「野球が好きか」の問に対しては、「非常に好き」との回答が25%、「まあ 好き」が49%で、両方併せて「好き」が74%を占めている。また、「好きな方 ではない+どちらでもない」が26%となっている(表2)。 男女別比較では、「非常にすき」という回答が男子が35%、女子は10%、 「まあ好き」が男子が46%、女子は53%、一方「好きな方ではない+どちらで もない」という回答は男子が20%、女子は37%となっている。「野球がすき」と -3-表1.~あなたはこれまで甲子園の高校野球大会に関心がありましたか~ X2=11.048。f=2P<、005 )内は%. 表2.~あなたは野球が好きですか~ X2=21575。f=3P<、0001()内は%無回答除く 表3.~あなたは甲子園の高校野球の試合を毎年みていましたか~ x2=20.591。f=2P<0001 ()内は%. -4- かなりあったまああった あまり+全く なかった 計 男女 666716 (443)(45.0)(10.7) 244821 (25.8)(516)(226) 149 93 全体 9011537 (37.2)(47.5)(15.3) 242 非常に好きまあ好き 好きな方 ではない どちらとも いえない 全体 男女 516814 (345)(45.9)(9.5) 94820 (99)(52.7)(220) 15 (101) 14 (154) 148 91 全体 6011634 (25.1)(485)(142) 29 (121) 239 最初から最後までみた+県代表出場殆ど+全く 県代表不出場でもよくみたの時だけみたみない 計 男女 597020 (396)(47.0)(13.4) 125823 (12.9)(62.4)(247) 149 93 全体 7112843 (29.3)(529)(178) 242
表4.~今度の甲子園大会の試合をどの期間みましたか~ )内は%無回答除く. X2=7.693。f=2P<、05 いう回答は男子の方が女子よりも高率を示している(80%、63%)(P〈、0001)。 「甲子園の高校野球の試合を毎年みていたか」という問に対する回答では、 「みていた」というのが全体で82%、そのなかで「毎年最初から最後まで(全 日程)みていた+県代表が出場しなくてもよくみていた」が29%、「県代表が 出場した時だけみていた」が53%であった。また、「殆ど+全くみていなかっ た」の回答は18%であった。男女別比較では、「毎年最初から最後までみてい た」との回答者は男子に、「県代表が出場する時だけみていた」は女子の方に 多かった(P〈0001)(表3)。 それでは「今度の試合をみたか」という質問に対しては、「みた」という回 答が全体で約9割(86%)、そのうち、「全日程みた+OS高校が出場しなく てもよくみた」との回答が21%、「OS高校が出場する時だけみた」が65%の 比率を示した(表4)。男女別比較では、「OS高校が出場する時だけみた」が 3選択肢のなかで男女とも最も高い率を示しているが、その比率は女子の方が 男子よりも高くなっている(72%、61%)。(P〈05) 「OS高校が出場した1回戦~5回戦の試合をみたか」の質問への回答では、 全体として、「1回戦をみた」という回答が46%、「2回戦をみた」が41%、 「3回戦をみた」が48%、「4回戦をみた」が86%、「5回戦をみた」が83%で あった。1~3回戦あたりまでは観戦者は4~5割であるが、4回戦(準優勝 戦)と5回戦(優勝戦)ではかなり増えて8割以上の観戦者となっている。 -5- 全日程みた+OS高校OS高校出場の 殆ど+全く 不出場でもよくみた時だけみたみなかった 計 男女 409118 (26.8)(61.1)(12.1) 116615 (12.0)(71.7)(163) 149 92 全体 5115733 (212)(65.1)(13.7) 241
OS高校が出場した1~5回戦の試合であなたが見た試合は? % .000000000 1987654321 図
了
」
0 試合→1回戦 男女間差→P<、0001 2回戦 P<、001 3回戦4回戦 、.s、(P<・10)ns. 観戦なし 、.s、 回戦 ns. 5 表5.~OS高校が出場した1~5回戦の観戦タイプ~ 注)観戦方法については32の組み合わせ(観戦なし含む)があるが、実際の観戦者が いたのは25組であったので、その25組を各サンプル数の大きさとバランスを勘案 して5つのタイプに分類した。()内は%を示す。/は「あるいは」の意味。 -6- 「4/5/他の回戦」 観戦 「4+5回戦」観戦 「3+4+5/他 のPL戦」観戦 「1/2/3の中 2回観戦十4+ 5回戦」観戦 「1+2+3+4 +5回戦」観戦 観戦なし 計 男女 1 1 7 4 7455 1 1 1 2 4 1 8 1 6 4 3 4 1 14田Ⅲ
1 1 1 1 1 1 4 ● 9 1 5 3 1 6 7 3 I 1 1 1 1 2 1 5 1 6 1 1 ! 1 9 0 3 I 1 5 7・ 7 1 1 1朋旧Ⅲ
2 1 -く 149 93 全体 6153334934 (25.2)(21.9)(136)(20.2)(140) 12 (5.0) 242男女別比較では、1~2回戦までは有意な男女差がみられ、男子は5~6割、 女子では約3割が観戦しているが、3回戦ではそれぞれ5割、4割で、10%水 準の傾向差を示すに至り、そして4~5回戦では男女差は見られず、いずれも 8割以上の観戦者となった。(図1)。 観戦タイプ別(5タイプに分類)にみると、全体としては「1~5回戦観戦」 が25%、「1~3回戦中2回十4+5回戦観戦」が22%、「3+4+5/他のP L戦観戦」が14%、「4+5回戦観戦」が20%、「4/5/他の戦観戦」が14% であった。そのなかで、男子は「1~5回戦観戦」と「1~3回戦中2回十4 +5回戦観戦」がどちらも約3割、女子は「4+5回戦観戦」が約4割でそれ ぞれ最も高率となっている(表5)。 「OS高校が出場した試合のなかで最も印象深かった試合」としては、全体 的に「4回戦」(PL学園との試合)という回答が約8割(77%)を占めた。 男子が女子よりも高率を示した(84%、66%)。また、「5回戦」という回答は 全体で13%で、女子が男子よりも高率(25%、6%)であった。「その他」は 男女とも1割程度(11%、9%)であった(P<、0001)。 「今度のOS高校の優勝は若者に影響を与えていると思うか」に対しては、 「かなりの影響を与えたと思う」が約4割、「いくらかの影響を与えたと思う」 が5割で、男女間に有意な差は認められない。男女とも約9割が「今度の優勝 は若者に影響を与えている」と回答している(表6)。 その影響の主な内容として(記述式)、男女とも共通して「やればできる+ 努力すれば夢が叶えられる」(44%)、「沖縄人としての誇りが高まる」(33%)、 「活気がでる,スポーツヘの関心が高まる」(13%)等をあげている(表7)。 また、「OS高校の優勝は個人的に刺激になったか」の問に対しても、「刺激に なった」という回答が男女とも約8割を占めている(表8)。 「今度の試合でのOS高校の勝因」について尋ねたところ(3つ記述)、回答 の主なものは、1位が「OS高校のチームワークがよかった」(39%)、2位が 「伸び伸びとプレイしたこと」(34%)、3位が「ピッチャーがよかった」(32%) の順であった(表9)。表中の1~10位までのなかで、「チームワークがよかっ た」、「精神的強さ」、「練習・努力」等の回答は女子が、「ピッチャーがよかっ -7-
た」、「野球の技術・実力」、「運がよい」等は男子がそれぞれ高率を示した。 さらに、「OS高校が優勝した時の心境を一言で表現するとどんなことばを
思い浮かべますか」の質問(記述式)に対しては、1位が「すごい(すご_い)」
(25%)、2位が「やったあ」(12%)、3位が「長かった(やっと勝った)」
(10%)等となっている(表10)。また、「すごい(すご-い)」や「おめでとう」の回答は女子が、「やったあ」
は男子の方が高率を示した。さらに関連質問として「今度沖縄勢(OS高校)が 優勝したことについて恩ってこと。感じたこと」についての回答(記述式)では、242人中、有効回答は173(71%)であるが、そのうち「素晴らしい.すごい」
が60%、「沖縄は強い.沖縄のレベルは高い.沖縄が注目される」が24%、「今
後とも頑張ってほしい.夏の試合でも優勝してほしい」が16%を示した。
春の甲子園大会が終わって2週間後に沖縄でOS高校とNS高校の試合が行 われたが、「その対戦を観戦したか」の質問に対しては、「観戦した(みに行っ た+テレビでみた)」が13%、「行かなかった+関心なし」が40%、「その試合 があることを知らなかった」が47%であった。男女間に有意な差は認められな かった。 ところで、「今度のOS高校の優勝についてマスコミの取り上げ方をどう思うか」(記述式)については(242人中188人回答)、全体として「よかった」の
回答が51%で最も高率を示した。また、「過度」という回答は18%、「不足.もっ とやるべき」が15%、そして「何も感じない.わからない」というのが17%で あった。男女差は認められなかった。 表6.~OS高校の優勝は沖縄の若者に影響を与えていると思いますか~ X2=1897。f=2ns.()内は%・無回答除く. -8- かなりの影響いくらかの影響 あまり+ 殆どない 計 男女 57(38.8)68(46.3)22(15.0) 32(34.4)51(54.8)10(108) 147 93 全体 89(37.1)119(496)32(13.3) 240表7.~若者にどんな影響を与えていると思いますか(記述式)~ )内は%、無回答除く. X2=4.292。f=3ns. 表8.~今度のOS高校の優勝はあなた個人にとって刺激になりましたか~ )内は%・無回答除く. X2=1.668。f=2ns. -9- 「やればできる」 + 「努力すれば夢 が叶えられる」 「沖縄人と「活気がでる」 しての誇り」+「偶然勝った」 + 「スポーツ+ 「本土とのへの関心「一時的」 格差ない」高まる」 男女 583461715 (460)(286)(13.5)(lL9) 303185 (405)(419)(10.8)(68) 全体 (440)(335)(12.5)(100)88672520 かなりなった まあなった なっていない +わからない 計 男女 556426 (37.9)(44.1)(179) 284321 (304)(467)(22.8) 145 92 全体 8310747 (35.0)(451)(19.8) 237
表9.~今度のOS高校の優勝の主な要因は(3つ記述)~ (回答を10カテゴリーに分類) 位位位位位位位位位位 1234567890
******判
*** チームワークがよかった 伸び伸びとプレイした ピッチャーがよかった 野球の技術・実力 運がよい 精神的強さ(粘り、やる気) 監督の采配 練習・努力 沖縄の人の応援 その他 (38.6%) (344%) (32.6%) (285%) (265%) (228%) (16.7%) (140%) (7.9%) (13.6%) 3401786079 8776543312 注)*・**印は男女間の有意差を示す。 *は女性が、**は男性が高率を示す。 無回答除く。 表10.~OS高校が優勝した時のあなたの気持ちを一言で表現するとすれば、 どんなことばが思い浮かびますか(記述式)~ (回答を11カテゴリーに分類) 「すごい(すご~い)」 「やったあ」 「長かった」(やっと勝った) 「おめでとう」 「すばらしい」(よかった) 「うれしい」 「感動」・「喜び」 「びっくり」 「日本一」 「ありがとう」 「その他」 位位位位位位位位位位位 12345678901 *** 11 * 56(246%) 28(12.3%) 22(9.6%) 22(9.6%) 20(88%) 19(83%) 14(5.8%) 9(3.7%) 5(2.2%) 5(2.2%) 28(11.6%) 注)*・**印は男女間の有意差を示す。 *は女性が高率、**は男性が高率を示す。 無回答除く。 -10-2.数量化Ⅲ類による解析結果 上記の19問の中、記述式の項目およびデモグラフィック要因を除き、8項目 23カテゴリーを取り出し、それに数量化Ⅲ類を適用した。その結果、第1軸と 第2軸のそれぞれの固有値は.437,244であった。そして相関係数は661, .494であった。第1軸と第2軸による構造図は図2に示す通りである。 第1軸の負の方向に、「OS高校とNS高校の対戦をみた」、「毎年甲子園大 会を全日程みていた+県代表不出場でもよくみた」、「甲子園大会にかなり関心 あり」等が、また、正の方向に「春の甲子園大会みなかった」、「毎年甲子園大 会を殆ど+全くみない」、「OS高校の試合で印象深い試合なし」、「甲子園大会 に関心なし」等が布置されている。そこで、この第1軸をく野球観戦態度一 積極的一消極的〉の軸と命名した。 図2.1軸と2軸における各カテゴリーの布置 2軸 (郷土チーム意職)
qG撚非6
軸(野球観戦態度) n U 」Ⅱ D1-lxQ9第2軸では、負の方向に、「甲子園大会にまあ関心あり」、「県代表出場の時 だけみる」、「OS高校の優勝はまあ刺激になった」、「今度の優勝は若者にいく らか影響あり」、「OS高校の5回戦が印象深い」、「今度の甲子園大会で県代表 出場時だけみた」等が、正の方向には、「甲子園大会を毎年全日程十県代表不 出場でもよくみていた」、「OS高校とNS高校の対戦をみた」、「甲子園大会に かなり関心あり」、「OS高校の優勝は若者にかなり影響あり」等が布置されて いる。この第2軸をく郷土チーム意識一強一弱〉の軸と命名した。 この2つの軸にデモグラフィック要因や野球への態度などがどのように関わっ ているかについてみていくと、第1軸の野球観戦態度については、〈積極的〉 な方向に男子、「野球が非常に好き」、「野球まあ好き」、「1~5回戦観戦」、 「1~3回戦中2回十4+5回戦観戦」、「3+4+5回戦/他PL戦観戦」、 「甲子園大会を全日程十県代表不出場でもよくみる」、「県代表出場の時だけみ る」等が、〈消極的〉な方向には女子、「野球は好きな方ではない」、「4+5 回戦観戦」、「4/5/他戦観戦」、「観戦なし」、「甲子園大会を殆ど+全くみな い」等が位置している(図3)。 図3.1軸(野球観戦態度)における各デモグラフィック要因のサンプルスコア
上に‐
ラーーーニニク
受出場の艀 -12-第2軸の郷土チーム意識については、〈強〉の方向に、女子、「野球はまあ 好き」、「野球は好きな方ではない」、「3+4+5回戦/他PL戦観戦」、「4+ 5回戦観戦」、「4/5/他戦観戦」、「県代表出場の時だけみる」等が、〈弱〉 の方向には、男子、「野球が非常に好き」、「1+2+3+4+5回戦観戦」、 「1~3回戦中2回十4+5回戦観戦」、「観戦なし」、「甲子園大会を全日程み る+県代表不出場でもよくみる」、「甲子園大会を殆ど+全くみない」等が位置 している(図4)。 第1軸と第2軸の2つの軸を組み合わせて大学生の野球の観戦態度をタイプ 分けすると、「野球好き型」、「郷土チーム応援型」、「同調応援型」、「無関心型」 の4つに類型化される(図5)。 サンプルスコアの平均で性別比較をすると、男子は「野球好き型」、女子は 「同調応援型」の象限に位置づけられるが、各タイプに該当する比率を性別で みると、「野球好き型」は男子が39%、女子が21%、「郷土チーム応援型」は、 男子が33%、女子が45%であった。また、「同調応援型」では男子が15%、女 子が19%、「無関心型」では男子が12%、女子が15%を示した。 図4.2軸(郷士チーム意識)における各デモグラフィック要因のサンプルスコア -13-
さらに、野球への態度変数との関係でみると、「野球好き型」には、「1+2 +3+4+5回戦観戦」、「野球が非常に好き」、「甲子園大会を全日程みる+県
代表不出場でもよくみる」等の回答者が該当する。「郷土チーム応援型」には、
「3+4+5回戦/他PL戦観戦」、「野球が非常に好き」、「県代表出場の時だ
けみる」等の回答者が、そして「同調応援型」には、「4+5回戦観戦」、「4/5/他戦観戦」、「野球は好きな方ではない」が、そして「無関心型」には
「観戦なし」、「甲子園大会を殆ど+全くみない」等の回答者が該当する。
図5.数量化Ⅲ類による類型函,郷土典ム意職)
唖
野球好き型」 男38.9%女20.5% 」 X 「全日程十よくみる」 -14-[考察] 本研究では、先の研究の場合と同様に、甲子園の高校野球大会に対する関心 の高さが示された。今度の春の甲子園大会においても観戦者は9割を占め、そ のなかの6割強が「県代表のOS高校が出場する時だけみた」とのそれぞれ高 い回答率であった。そして、OS高校が出場した1~5回戦までを回戦別の観 戦者率でみると、1回戦~3回戦までは4~5割の比率であったが、その後は 急激にその割合が増し、4回戦(準優勝戦)と5回戦(優勝決定戦)において は、8割以上の観戦者率となった。これは、OS高校が1回戦から3回戦まで 勝ち抜いてきたために、応援する者(大学生)の郷士チーム優勝への期待感が 急激に高まり、それがさらに周囲に波及していったことによると考えられる。 そして、優勝が決定したその時の心境を彼らは「すごい(すご-い)」とか 「やったあ」、「長かった(やっと勝った)」等のことばで表現しているが、これ らのことばは、彼らが郷土チームと自己を同一視し、郷士チームの優勝に対す る同一視された達成感と満足感を反映しているといえよう。また、それらのな かには継承された歴史的な対ヤマト意識の高揚による自己表現の部分も包含さ れているのかもしれない。 さらに、大学生の多くが「今回のOS高校の優勝は沖縄の若者たちに影響を 与えている」と積極的に認知し、「やればできる」とか、「努力すれば夢が叶え られる」というような自己効力感を与えていると受けとめている。また、「O S高校の優勝は個人的にも積極的な刺激を受けた」との回答が多かった。 このような結果は、今度の沖縄チームの全国制覇が沖縄の若者たちのアイデ ンティティの中核部分をなす自己に対する評価と誇りを高揚させることに貢献 していることを示唆している。 ところで、甲子園大会の観戦者は全体で約9割いるが、その内訳は野球その ものが好きで観戦する者が3割台、郷土チームを応援することが主で、あるい は周囲からの影響を受けて応援する者が併せて5~6割を占めていることが数 量化類による解析で明らかになった。恐らく、後者の5~6割の者が特に郷士 意識およびアイデンティティと深く関わっている野球観戦者なのであろう。 一方、性別比較では、野球への関心は男女ともにあるものの、野球や野球観 -15-
戦態度、試合結果の受けとめ方等に男女の違いがみられた。野球への積極的な 関与は男子の方が女子よりも高く、野球そのものを楽しむ傾向も男子が強いこ とが示された。観戦の際に男子においてはプレイする者の動きに、女子の場合 には全体的.精神的な側面に比較的注意が向けられやすいことが示唆された。 OS高校の勝因として上げられたもののなかで男女差がみられた「ピッチャー がよかった」「野球の技術.実力」(男子が高率)、「チームワークがよかった」 「精神的強さ」(女子が高率)等の回答傾向の違いはそのことを反映していると いえよう。また、OS高校が優勝した時の心境を男子はプレイする者と一体と なった形で「やったあ」と表現し、女子はやや距離を置いた形で「すご-い」、 「おめでとう」と表現している。さらに、郷士チーム意識においては女子の方 が男子よりも比較的強い傾向を示した。 野球は男子のスポーツであり、男子は野球を「プレイする側」と「観客側」 の両方の立場から観戦することが容易であるのに対し、女子は一般的には「観 客側」の立場だけからの観戦になりやすいという男女問の関与および視点の違 いがある。そのような関与と視点の違いが男女間の野球観戦の認知.態度の違 いを生じさせるのであろう。本調査結果においてみられる男女差は、そのよう な背景の違いによるものと考えられる。 [付記] 本稿の一部は沖縄心理学会第23回大会(2000年3月)において発表したも のである。 -16-
引用・参考文献 Taylor,SE.,&Fiske,ST、1975Pointofviewandperceptionsof causalityJournalofPersonalityandSocialPsychology, 32,P439-445 坂西友秀1984観察者の帰属作用に影響する先行経験及び視点要因の 検討心理学研究55P235-241 北山忍1994文化的自己観と心理プロセス社会心理学研究10 P153-167 坂西友秀1996行為者と観察者の帰属の差異長田雅喜編「対人関係 の社会心理学」P69-80福村出版 國吉和子1998大学生の郷士意識に関する研究日本社会心理学会 第39回大会発表論文集P138-139 國吉和子1998沖縄人(ウチナーンチュ)のアイデンティティと郷土 意識(1)沖縄大学地域研究所年報第10号P33-57 國吉和子1999大学生の郷土意識に関する研究(Ⅱ)沖縄心理学 研究第22号P10-11 國吉和子1999大学生の郷士意識と社会的アイデンティティ(1) 沖縄大学紀要16号(通巻36号)P1-35 國吉和子1999大学生の郷士意識と社会的アイデンティティ(Ⅱ) 沖縄大学地域研究所年報第12号P3-18 沖縄タイムス社編1999沖縄・甲子園名勝負物語沖縄タイムスブック レット8 國吉和子2000大学生は'99春の甲子園大会をどうみたか沖縄心理 学研究第23号(印刷中) 國吉和子2000大学生の郷士意識と社会的アイデンティティ(Ⅲ) 沖縄大学地域研究所年報第13号P63-84 -17-