歩行姿勢に基づく見た目年齢評価式の開発
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(2) 8. バイオメカニズム. 24 20. ⏨ᛶ㸸52ྡ ዪᛶ㸸51ྡ. 15 ྡ. Kinect Ṍ⾜⤊ 70 cm. 6m. 4.5 m Kinect ࡽࡢ㊥㞳. 図1. 1.25 m. ேᩘ. Ṍ⾜㛤ጞ. Kinect ㄆ㆑㛤ጞ. 10 5 0. 0m. 10௦ 20௦ 30௦ 40௦ 50௦ 60௦ 70௦ 80௦. 図2. 実験レイアウト. 被験者の性別及び年齢層. 対する関心も強く持っている様子が見受けられる. つまり,歩行姿勢の見た目が若いもしくは老いたと. .方法. 言う評価を受ける事は,被評価者の歩行に対する意 識を向上させ,歩行能力向上の為のトレーニングや 姿勢指導を受ける動機付けとして効果的であると考 えられる. 観察者が歩行者を主観評価した研究としては,光 らせた主要関節点の運動のみから他者に関する様々. 本章では,実験方法について述べる.実験は歩行 測定と主観評価の 2 種類実施した.. 2.1. 歩行測定. (1) 実験方法. な情報を読み取る知覚現象(バイオロジカルモー. 図 1 に示す実験レイアウトで歩行測定を実施し. ション)が挙げられる.歩行者の性別を観察者が歩. た.被験者は,図 2 に示す性別及び年齢層(18〜89. 行姿勢からどの様に認識しているかについて報告さ. 歳)の 103 名とした.被験者のリクルートは,年代. れており,歩行者の腕振りや歩行速度の変動は,観. 及び健康状態の偏りを避ける為,著者ら所属の会社. 5). 察者の性別認識を妨げる事 ,歩行者の肩が腰より. 従業員,地域在住高齢者,デイサービス施設利用者. 横揺れが大きいと男性,逆であると女性と観察者は. の中から無作為で抽出した.その際,杖や歩行器を. 6). 認識する事 が報告されている.しかしながら,観. 要さずに自立歩行が可能で,歩行測定が行える方を. 察者が歩行姿勢から歩行者の年齢を,どの様に認識. 対象にした.このうち,比較的軽度な介護支援を要. しているかを明らかにした研究はみられない.また,. する高齢者(男性 5 名,女性 7 名,年齢 80.3±6.9. 基本属性における歩行姿勢の特徴とどの様な共通点. 歳,要支援 1:5 名,要支援 2:6 名,要介護 1:1 名). や違いがあるのかも明らかでない.これらの知見の. は 12 名含んでいた.対象動作は,正面の Kinect に. 獲得は,歩行能力評価の幅を広げ,被評価者の歩行. 向かって歩く 6 m の定速歩行とし,普段通りの歩行. に対する意識向上に有益である.. を 3 試行実施した.. 本研究は,高齢者の歩行能力評価に有益な知見を. 計測項目は,著者らが開発した歩行姿勢測定シス. 得る事を目的に,歩行姿勢に基づく見た目年齢評価. テム(アシックス社及び NEC ソリューションイノ. 式を開発し,その有用性について考察した.まず,. ベータ社製)を用いて得られる身体特徴点 20 点と. 年齢や性別の観点で,歩行動作に対する観察者の主. し,サンプリング周波数 30 Hz で計測した .なお,. 観評価の特徴を明らかにした.次に,歩行姿勢に基. 本実験は,アシックス臨床研究倫理審査委員会での. づく見た目年齢評価式を導出し,基本属性や見た目. 承認(承認番号:16004)を受け,被験者から実験へ. 性別における歩行姿勢の特徴とどの様な共通点や差. の参加同意を得た上で実施した.. 異があるか比較し,有用性について考察を加えた.. 4). (2) 評価項目 歩行姿勢の運動学的分析値(以下歩行姿勢項目と 称す)は,高精度な 3 次元動作解析システム(MXT10 及び MX-T40,Vicon 社製)との精度検証実験.
(3) (�) 表1. 歩行姿勢項目. 歩行姿勢に基づく見た目年齢評価式の開発 P6 , P7. ▮≧㠃. 変数. 軸/面. 項目. P1. 矢状軸. 歩行速度. P2,P3. 時間軸. ピッチ,左記左右差. P4,P5. 水平軸. 頭の横ズレ,左記振れ幅. P6,P7. 矢状軸. 頭の奥ズレ,左記振れ幅. P8,P9. 水平軸. 肩の横ズレ,左記振れ幅. P10. 矢状軸. 肩の奥ズレ. P11,P12. 前額面. 肩水平角,左記振れ幅. P13. 水平軸. 直進性振れ幅. P14. 矢状面. 腰の曲がり. P15. 前額面. 腰水平角振れ幅. P16. 水平面. 腰の回転振れ幅. P17,P18. 矢状面. 肩矢状面角振れ幅,左記左右差. P19,P20. 前額面. 肩前額面角振れ幅,左記左右差. P21,P22. 矢状面. 肘矢状面角振れ幅,左記左右差. P23,P24. 前額面. 肘前額面角振れ幅,左記左右差. P25,P26. 矢状面. �の上がり,左記左右差. P27,P28. 水平面. 歩行角膝,左記左右差. P29,P30. 前額面. 膝の開き,左記左右差. P31. 矢状軸. ストライド. P32. 垂直軸. つま先の上がり. P33. 垂直軸. フットクリアランス. P34. 水平軸. 歩隔. P35,P36. 水平面. 歩行角つま先,左記左右差. P4 , P5. ๓㢠㠃. P11 , P12. P10 P17 , P18. P1. P21 , P22. P13. P2 , P3 P15. P23 , P24 P25 , P26. P27 , P28. P32. P33. P35 , P36. P31. 図3. P8 , P9. P19 , P20. P14 P16. 9. P29 , P30 P34. 歩行姿勢項目. ๓᪉. ᚋ᪉. ഃ᪉. 図4. 4). で妥当性が確認出来た 36 項目 とし,表 1 及び図 3. スティックピクチャー動画の例. に示す.肘水平面角は肘矢状面角及び肘前額面角で 代用可能な為,除外した. Kinect が身体特徴点を認識し始める 4.5 m の距 離を越えてから 1.25 m までの区間で,Kinect 側か. 行った.. らの 3 歩分の 1 歩行周期を分析区間とした.なお,. 観察者は,一般成人男女 20 名(男性 10 名,女性. 接地判定は,胸腰の鉛直方向変位の極小値から求め. 10 名,年齢 31.2±6.5 歳)とし,各被験者の動画を. た.各項目の算出方法は先行研究 と同様とし,各. 4). 約 5 秒観察し,見た目の年齢層及び性別を回答する. 被験者の平均値を分析対象とした.. 主観評価を実施した.年齢層判定は,何歳代に見え. 2.2. 主観評価. (1) 実験方法. るかという質問をし,10 代から 90 代までの 9 つの 年齢層から 1 つを選択する形で実施した.性別判定 は男性に見えるか, 女性に見えるかという質問をし,. 前節で測定した身体特徴点座標のうち,左右つま. 2 つの選択肢から 1 つを選択する形で実施した.な. 先を除く 18 点を用いて,図 4 に示す 3 方向(前方,. お,観察者には,あまり深く考えずに直感で回答す. 後方,側方)のスティックピクチャー動画を全被験. る事を注意点として指示し,事前に被験者の性別や. 者分作成した.なお,身長による主観評価への影響. 年齢層の割合についての情報は一切伝えずに実施し. を除外する為,全座標値を身長で除して規格化を. た..
(4) 10. バイオメカニズム. 24. (2) 評価項目. 囲で約 4 分の 3 であった.. 歩行動作に対する観察者の主観評価の特徴を明ら. 一方で,性別に関して,実際の性別割合と主観評. かにする為,被験者の年齢層及び性別に対する正答. 価の割合を比較すると,前者がほぼ半々であるのに. 率を求めた.. 対し,後者は約 1.5 倍も男性と評価する回答が多. また,観察者間の主観評価再現性を確認する為に,. かった.また,性別全体の正解率は約 7 割で,男性. 年齢層及び性別共に検者間信頼性(ICC(2,20))を. の正解率が約 8 割,女性の正解率は約 6 割であり,. 求めた.ここで検者間信頼性とは,複数の検者によっ. 男女間で差が見られた.. て検査・測定されたデータの信頼性を意味し,本研. (2) 信頼性. 究では 20 名の観察者が主観評価を行った際に値が どの程度一致しているかを表す指標である. さらに,基本属性や主観評価と関係性の強い歩行 姿勢項目を明らかにする為に,基本属性や主観評価. 年齢層及び性別の信頼性結果を表 2 に示す.共に 0.9 前後の高い信頼性を有する事が確認出来た.そ こで,20 名分の平均値を歩行姿勢項目との関係性を 検討する主観評価の代表値とした.. 値を従属変数,歩行姿勢項目を独立変数としたス テップワイズ法による重回帰分析もしくは多重ロジ スティック回帰分析を行った.ここで,重回帰分析 及び多重ロジスティック回帰分析とは,多変量解析 ᭷ຠᅇ⟅ᩘ㸸2059㸦↓ຠ㸸1㸧 350. える影響度を分析する際に用いられる.従属変数の. 300. ⏨ᛶ㸸1230. 250. ዪᛶ㸸829. データ尺度により適用される手法が異なり,実年齢 の様な量的データの場合は重回帰分析,性別の様な. ᅇ⟅ᩘ. 手法の一種であり,従属変数に対して独立変数が与. 2 値型の質的データの場合,多重ロジスティック回. 200 150. 100 50. 7). 帰分析が適用される .. 0. なお,統計処理は,多重ロジスティック回帰分析. 10௦ 20௦ 30௦ 40௦ 50௦ 60௦ 70௦ 80௦ 90௦. は R-2.8.1,他は全て SPSS Statistics 19(IBM 社製). 主観評価ヒストグラム. 図5. を用いた. 100. 主観評価. 本節では,年齢層や性別の観点で,主観評価の回 答分布や実際の基本属性に対する正解率,信頼性に ついて述べる. (1) 正解率 全 20 名の観察者から全 103 名の被験者に対し,. 100. 80 74.3. 60 52.0. 40 20. 19.5. 0. ᛶูṇゎ⋡ [%]. 3.1. ᖺ㱋ᒙṇゎ⋡ [%]. .結果. 80. 60. 69.9. 79.3 60.3. 40 20 0. 0. s10 s20 ᐇᖺ㱋ᒙ ぢࡓ┠ᖺ㱋ᒙࡢᕪ [௦]. య. ⏨ᛶ. 年齢層と性別の正解率. 図6. 回答された年齢層及び性別のヒストグラムを図 5 に,それらの平均正解率を図 6 に示す. 年齢層に関して,図 2 に示す実際の被験者の年齢. 表2. 年齢層及び性別の信頼性. 層分布と比較すると,主観評価では 30 代と評価す. 属性. ICC(2,20). る回答が多い事が確認できる.また,年齢層の正解. 年齢層. 0.939. 率は約 2 割で,±10 代の範囲で約半分,±20 代の範. 性別. 0.885. ዪᛶ.
(5) (�). 歩行姿勢に基づく見た目年齢評価式の開発 表3. 3.2. 歩行姿勢の特徴. 見た目年齢と歩行姿勢の関係. B. 本節では,年齢層や性別の観点で,主観評価及び. 定数. 11. SEB. β. VIF. p. 7.737. 0.464. 基本属性と関係性の強い歩行姿勢の特徴を明らかに. P1. −0.058. 0.004. −0.707. 0.000. 1.208. する.. P14. 0.134. 0.029. 0.236. 0.000. 1.368. 0.000. P35. 0.038. 0.012. 0.155. 0.002. 1.312. P16. −0.091. 0.022. −0.200. 0.000. 1.202. 見た目年齢層を従属変数,歩行姿勢項目を独立変. P7. 0.291. 0.079. 0.172. 0.000. 1.153. 数としたステップワイズ法による重回帰分析の結果. P28. 0.016. 0.004. 0.179. 0.000. 1.152. を図 7 及び表 3 に示す.なお,B は偏回帰係数,. P5. 0.159. 0.048. 0.154. 0.001. (1) 見た目年齢と歩行姿勢の関係. SEB は標準誤差,β は標準偏回帰係数,VIF は分散. ANOVA. 2. 1.155 2. p<0.05;R =0.821,自由度調整済み R =0.807. 拡大係数をそれぞれ示し,図中の矢印の太さは β の 絶対値の大きさを,色は正負を意味する.全 36 項目 のうち,多重共線性を考慮し,ストライドと肩の奥. 表4. ズレを除く 34 項目を投入した結果,7 項目が採用さ. B. れた.回帰式は p<0.05 で有意で,自由度調整済み 2. 定数. 実年齢と歩行姿勢の関係. SEB. β. 78.968 10.503. VIF. p 0.000. R は 0.807 で適合度は高いと評価し,VIF は全て多. P1. −0.563. 0.113. −0.391. 0.000. 1.122. 重共線性の問題が起こるとされる 10 より低かっ. P6. −2.817. 0.766. −0.293. 0.000. 1.161. P35. 0.746. 0.335. 0.174. 0.028. 1.114. P26. 2.566. 1.079. 0.180. 0.019. 1.040. P28. 0.242. 0.119. 0.156. 0.044. 7). た . 各項目間の β を比較すると,絶対値が高い順に歩 行速度,腰の曲がり,腰の回転振れ幅,歩行角膝左. ANOVA. 2. 1.069 2. p<0.05;R =0.468,自由度調整済み R =0.441. 右差,頭の奥ズレ振れ幅,歩行角つま先,頭の横ズ レ振れ幅であった. (2) 実年齢と歩行姿勢の関係. たステップワイズ法による重回帰分析の結果を表 4. 実年齢を従属変数,歩行姿勢項目を独立変数とし. に示す.前項と同様に 34 項目を投入した結果,5 項 目が採用された.回帰式は p<0.05 で有意であった. 㢌ࡢዟࢬࣞࢀᖜ㸦. 㢌ࡢᶓࢬࣞࢀᖜ㸦. 㸧. 㸧. 2. が,自由度調整済み R は 0.441 で適合度は高いとは 言えなかった.ただし,従属変数に対する独立変数 の影響度合いを知る目的での参照は可能であり,. Ṍ⾜㏿ᗘ㸦. 㸧. 7). VIF は全て 10 より低かった . 各項目間の β を比較すると,絶対値が高い順に歩. ⭜ࡢ᭤ࡀࡾ㸦 ⭜ࡢᅇ㌿ࢀᖜ㸦. 㸧. 行速度,頭の奥ズレ,腿の上がり左右差,歩行角つ. 㸧 Ṍ⾜ゅ⭸ᕥྑᕪ㸦. 㸧. ま先,歩行角膝左右差であった. (3) 性別と歩行姿勢の関係 性別の観点で,多重ロジスティック回帰分析を行. Ṍ⾜ゅࡘࡲඛ㸦. 㸧. う前に,まず独立変数の絞込みを行った.性別を従 属変数,歩行姿勢項目を独立変数としたステップワ. ᶆ‽೫ᅇᖐಀᩘࡢ⤯ᑐ್㸦|ș|㸧 0.2 0.5. イズ法による重回帰分析を行った.なお,性別デー. ṇࡢ┦㛵. タは,男性を 0,女性を 1 とダミー変数化し,有意水. ㈇ࡢ┦㛵. 準は,独立変数候補を選定する目的の為,投入を. 図7. 見た目年齢と歩行姿勢の関係. 0.2,除去を 0.25 と高めに設定した.前項と同様に.
(6) 12. バイオメカニズム. 24 表5. 性別と歩行姿勢の関係. SEB. B. Wald. p. OR. 定数. 34.721. 10.015. 3.467. 0.001. 1.20E+15. P32. −0.217. 0.077. −2.801. 0.005. 8.05E−01. P2. −30.053. 9.739. −3.086. 0.002. 8.87E−14. P12. 0.472. 0.348. 1.356. 0.175. 1.60. P6. 0.737. 0.332. 2.217. 0.027. 2.09. P5. −0.794. 0.422. −1.883. 0.060. 4.52E−01. P23. −0.041. 0.019. −2.130. 0.033. 9.60E−01. P34. −0.477. 0.231. −2.066. 0.039. 6.20E−01. P36. 0.215. 0.110. 1.950. 0.051. 1.24. P35. −0.298. 0.117. −2.548. 0.011. 7.42E−01. −0.096. 0.047. −2.058. 0.040. 9.08E−01. P1 2. モデル Χ 検定. p<0.05;Hosmer-Lemeshow 検定. p=0.373,判別的中率 87.4%. 34 項目を投入した結果,12 項目が採用された.回帰. 表6. 2. 式は p<0.05 で有意で,自由度調整済み R は 0.591 で適合度は高いと評価し,VIF は全て 10 より低. SEB. B. 次に,AIC 基準の変数増減法による多重ロジス ティック回帰分析を行った結果を表 5 に示す.上記. β. VIF. p. 1.039. 0.129. P5. −0.106. 0.018. −0.441. 0.000. P34. −0.053. 0.009. −0.449. 0.000. 1.168. P13. 0.887. 0.279. 0.241. 0.002. 1.181. P23. −0.002. 0.001. −0.191. 0.011. 定数. 7). かった .. で絞込みを行った 12 の項目を独立変数に,性別を. 見た目性別と歩行姿勢の関係. ANOVA. 2. 0.000 1.203. 1.131 2. p<0.05;R =0.522,自由度調整済み R =0.503. 従属変数とし,有意水準は 0.05 で分析した.なお, Wald は Wald 統計量,OR はオッズ比をそれぞれ示 2. す.モデル Χ 検定は p<0.05 で有意であり,10 項. 値を示す.34 項目を投入した結果,4 項目が採用さ. 目が採用された.各変数の有意性は P12,P5,P36を. れた.回帰式は p<0.05 で有意で.自由度調整済み. 除く 7 項目で有意(p<0.05)であった.このモデル. R は 0.503 で適合度は高いと評価し,VIF は全て. の Hosmer-Lemeshow 検定結果は p=0.373 で適合. 10 より低かった .. している事が示され,予測値と実測値の判別的中率 7). は 87.4%で良好であった . 採用された 10 項目のうち,増加すると女性と判. 2. 7). 各項目間の β を比較すると,高い絶対値順に歩 隔,頭の横ズレ振れ幅,直進性振れ幅,肘前額面角 振れ幅であった.. 定される項目は肩水平角振れ幅,頭の奥ズレ,歩行 角つま先左右差であり,逆に減少すると女性と判定. .考察. される項目はつま先の上がり,ピッチ,頭の横ズレ 振れ幅,肘前額面角振れ幅,歩隔,歩行角つま先, 歩行速度であった. (4) 見た目性別と歩行姿勢の関係. 本章では,まず歩行動作に対する観察者の主観評 価の特徴とその理由について考察する.次に,見た 目年齢に影響を及ぼす歩行姿勢の特徴を論じた上. 見た目性別を従属変数,歩行姿勢項目を独立変数. で,実年齢や性別といった基本属性や見た目性別に. としたステップワイズ法による重回帰分析の結果を. おける歩行姿勢の特徴とどの様な共通点や差異があ. 表 6 に示す.なお,見た目性別は,男性を 0,女性を. るのか比較し,見た目年齢による歩行能力評価の有. 1 とダミー変数化した時の全 20 名の観察者の平均. 用性について考察する..
(7) (�). 5). *. 先行研究での正解率 と概ね一致していた.本研究. [cm]. 2. ⫪ࡢᶓࢬࣞ ࢀᖜ㸦 㸧. 1.5. 1.54 1.28. 1. の方が観察者数は格段に多く,妥当性は高いと考え られる.. 4.2. 0.5 0 ⏨ᛶ. 図8. 13. また,性別全体の正解率が約 7 割と言う結果は,. (*: p < 0.05). 2.5. 歩行姿勢に基づく見た目年齢評価式の開発. ዪᛶ. 肩の横ズレ振れ幅の男女差. 見た目年齢評価における歩行姿勢の特徴. 若く見える歩行姿勢の特徴は,速く歩く,背筋が 伸びる,腰が良く回転する,つま先が前を向く,膝 の向きの左右差を小さくする,頭の前後や左右への. 4.1. 主観評価の特徴. 揺れを小さくする,の 7 項目であり,その説明率は 80.7%であった.歩行速度は,他の項目に比べて 2〜 4 倍の寄与度になっており,速く歩く事は,若く見. (1) 見た目年齢 見た目年齢の評価において,30 代の回答が多かっ た.その理由としては,歩行速度は 60 歳頃から急速 3). える為に最も重要な意味を持つ事が分かった. また, 腰の曲がりや腰の回転振れ幅も次いで寄与度が高. に低下するとの報告 がある様に,若年層と中年層. く,背筋が伸びて,腰が良く回転する事も若く見え. では大きな変化がない印象を観察者が持っており,. る要因となる.さらに,つま先が前を向く,膝の向. 高齢層ではない印象を持つ場合にそれらの代表とし. きの左右差を小さくする,頭の前後や左右への揺れ. て中間の 30 代を選ぶ傾向になっていたと考えられ. を小さくする等の下肢や頭の動きも若く見える重要. る.. な要素となる事が分かった.. また,実際の年齢層に対する見た目年齢層の正解 率は約 2 割であった事から,それらの間には乖離が あり,関係性が強い歩行姿勢も両者で異なっている 事が考えられる.. 4.3. 歩行姿勢の特徴比較. (1) 見た目年齢と実年齢 図 9 に,見た目年齢と実年齢における歩行姿勢の. (2) 見た目性別. 特徴を比較する為,それぞれに関係する歩行姿勢項. 見た目性別において,男性が女性に比べて 1.5 倍. 目及びその標準偏回帰係数の絶対値(β)の比較結. も回答が多かった.その理由を考察する為に,先行. 果を示す.ここで β は歩行姿勢に対する寄与度の. 研究で性別認識に影響を及ぼす要因で挙げられてい. 大きさを表している.その結果,歩行速度,歩行角. 5,6). た歩行姿勢 4 項目. ,具体的には歩行速度,肩の横. 膝左右差,歩行角つま先が共通しており,腰の曲が. ズレ振れ幅,直進性振れ幅,肩矢状面角振れ幅の男. りと頭の奥ズレも前傾姿勢と言う意味では同様の傾. 女差を比較した.各項目に対し,対応のない t 検定. 向を表す為,これら 4 項目は両者共に関係性が強い. を行った結果,有意差が確認できたのは図 8 に示す. 事が分かった.. 肩の横ズレ振れ幅のみで.他の項目は有意な差があ るとはいえなかった.つまり,肩の横ズレ振れ幅は, 6). 特に歩行速度は,両者共に最も影響が強い項目と なっていた.歩行速度は,加齢に伴って低下する歩. 先行研究 と同様に,男性の方が大きい特徴が確認. 行能力の代表値として,先行研究でも多く報告され. 出来たのに対し,腰の動きは女性の方が大きいとい. ている. う傾向を確認できず,女性の判別が難しかったと考. 行速度が全体的な体力の水準だけでなく健康の状態. えられる.実際,図 6 に示した様に,女性の正解率. もよく反映する と報告されており,高齢者への歩. は約 6 割と男性の約 8 割に対して低くなっており,. 行能力評価を考えた場合,歩行速度を軸とすること. 結果として男性の回答数への増加を引き起こしてい. で,体力,健康,見た目年齢の 3 つの状態をよく反. たと考えられる.. 映できると考えられる.. 2,3). .高齢者に限っては,通常あるいは最大歩 8).
(8) バイオメカニズム. 14. 24. 㢌ࡢዟࢬࣞ㸦 㸧 㢌ࡢዟࢬࣞࢀᖜ㸦 㸧. 㢌ࡢᶓࢬࣞࢀᖜ㸦. 㸧. く,観察者からの見た目にも高齢者らしいと見られ る特徴の一つになっている事が分かった. 一方で,腿の上がり左右差は,実年齢との有意な. ┤㐍ᛶࢀᖜ㸦. 㸧. Ṍ⾜㏿ᗘ㸦. 㸧. 関係性は確認できたが,見た目年齢とは有意な関係 性があるとは言えなかった.前述の同じ腿の角度を. ⭜ࡢ᭤ࡀࡾ㸦 ⭜ࡢᅇ㌿ࢀᖜ㸦. 㸧. 評価している歩行角膝では左右差が確認できていた. 㸧. ⫝๓㢠㠃ゅࢀᖜ㸦. 事を考慮すると,歩行姿勢は見る角度によって,左. 㸧. 右差の認識に違いが生まれる事を示唆している.歩 ⭣ࡢୖࡀࡾᕥྑᕪ㸦. 㸧. Ṍ⾜ゅ⭸ᕥྑᕪ㸦. 㸧. 行角膝は,1 歩行周期での変化が小さく,図 4 で示 した様に前方から常に左右の腿の角度の差を確認し. Ṍ⾜ゅࡘࡲඛ㸦. 㸧. 易い.一方,腿の上がりは,左右の腿で逆位相の動 きとなっており,一方の腿が上がるタイミングでも. ᶆ‽೫ᅇᖐಀᩘࡢ⤯ᑐ್㸦|ș|㸧. Ṍ㝸㸦. 㸧. 1 ぢࡓ┠ᖺ㱋 ᐇᖺ㱋 ぢࡓ┠ᛶู. 0.8. う一方の腿は後退する(下がる)状態になり,腿の 上がりの左右差を確認し難い.つまり,観察者が歩 行姿勢の左右差を判断する場合,前額面上では認識. 0.6. し易いが,矢状面上では認識し難しい傾向がある事. 0.4. が示唆される. また,腰の回転振れ幅,頭の奥ズレ及び横ズレ振. 0.2. れ幅の 3 項目は,実年齢とは有意な関係性があると 0. は言えなかったが,見た目年齢とは優位な関係性が 図9. 歩行姿勢の特徴比較. みられた.つまり,加齢による運動学的特徴の変化 はみられないが,腰の回転が大きく,頭の前後や横. 次いで,前傾姿勢を表す腰の曲がりや頭の奥ズレ. への揺れが小さいと若年層に見え易い事が分かっ. も両者共に 2 番目に影響が強い歩行姿勢項目になっ. た.この傾向は,先行研究で報告されている女性の. ていた.一般的に,安静立位時における体幹の傾き. 歩行姿勢の特徴 に一致していた.つまり,女性特. 角度は増加するほど,10 m 歩行時間が長くなる,換. 有の特徴が,主観評価では若年層と感じる年齢層の. 言すれ ば歩 行 能 力 が 低 下 す る 事 が 報 告 さ れ て い. 要素になっている点は興味深い.観察者の深層心理. 9). 11). る .つまり,本結果により,静的な状態だけでな. として,若年層の歩行は,どちらかと言うと女性の. く,動的な状態でも,体幹の傾き角度が増加するほ. 歩行を想定している事が示唆される.. ど歩行能力が低下する事が示唆され,脊柱アライメ. なお,実年齢における歩行姿勢の特徴は,一般的 2,10). ントの改善は,見た目年齢を含めた歩行能力向上に. な高齢者の歩行姿勢の特徴. 重要な側面の一つになると考えられる.. 研究の被験者データが幅広い年代の母集団を成して. さらに,歩行角つま先や歩行角膝左右差において も, 両者共に影響が強い歩行姿勢項目となっており,. と一致しており,本. いると言える. (2) 見た目年齢と見た目性別. 体力的要素ではバランス能力と関係性が強いと考え. 図 9 に,見た目年齢と見た目性別における歩行姿. られる.著者らは,高齢者が,加齢に伴うバランス. 勢の特徴を比較する為,それぞれに関係する歩行姿. 能力低下に対応する為,つま先を外向きに開き,支. 勢項目及びその β を比較した結果を示した.その. 持期底面を広げて歩く傾向がある事を報告してい. 結果,頭の横ズレ振れ幅のみ共通していた.. 10). る .つまり,本結果により,がに股傾向の歩行姿. 男性の方が頭の横方向への加速度が大きいとの報. 勢は,高齢者の安定歩行戦略としての側面だけでな. 11). 告 や,頭に近い肩が腰より横揺れが大きいと観察.
(9) (�) 6). 者は男性と認識するとの報告もあり ,頭や肩の横. 歩行姿勢に基づく見た目年齢評価式の開発. 15. 両面が重要になる事が示唆される.. 揺れは男性特有の歩行姿勢の特徴であり,かつ男性 的な印象を与える重要な要素の一つであると考えら. .結言. れる.換言すれば,頭部周辺の横揺れが小さく安定 していると,観察者は若年層と捉える場合と女性と. 若く見える歩行姿勢の特徴は,速く歩く,背筋が. 捉える場合の 2 要因が関係していることを示してお. 伸びる,腰が良く回転する,つま先が前を向く,膝. り,全節同様に若年層と想定する歩行はどちらかと. の向きの左右差を小さくする,頭の前後や左右への. 言うと女性の歩行に近いことが示唆される.. 揺れを小さくする,の 7 項目であり,その説明率は. 6). 一方で,先行研究 を支持する形で,直進性振れ. 80.7%であった.速い歩行速度や歩行中の脊柱や下. 幅が大きい,換言すると腰の横揺れが大きいと女性. 肢アライメントの改善と言う若年層歩行の特徴だけ. に見え易いと言う結果が確認できたが,見た目年齢. でなく,骨盤を良く回転させながら頭は安定すると. に及ぼす影響はみられなかった.また同様に,歩隔. 言う女性歩行の特徴 も,若く見える要因になる事. や肘前学面角振れ幅についても,値が大きいと男性. が示唆された.. 11). に見え易い結果が確認でき,足や肘を開いた歩行姿. これらの結果は,歩行姿勢の運動学的特徴を観察. 勢は,観察者に対し堂々とした男性的な印象を与え. 者の主観的側面から捉えた新しい知見であり,歩行. やすいと考えられるが,見た目年齢との関係性は確. 能力評価の可能性の幅を広げられる事から,健康増. 認できなかった.. 進に向けた取り組みへの応用が期待される.. (3) 見た目年齢と性別 表 3 及び表 5 で,見た目年齢と性別でそれぞれ関 係する歩行姿勢項目を比較すると,歩行速度,頭の 横ズレ振れ幅,歩行角つま先の 3 項目で共通してい た. 各項目の β 及び OR をそれぞれ解釈すると以下 の事が言える.歩行速度は,速いほど若く見え,10 10. m/min 速くなると 2.63 倍((1/0.908) 倍)男性と の関係性が強くなる.また,頭の横ズレ振れ幅は, 頭の横揺れが大きいほど老いて見え,1 cm 横揺れ が大きくなると 2.21(1/0.452)倍男性との関係性 が強くなる.さらに,歩行角つま先は大きいと老い 10. て見え,10 deg 開くと 19.77 倍((1/0.742) 倍)男 性との関係性が強くなる.換言すれば,速い歩行速 度は男性特有の特徴と,小さい頭の横揺れと前を向 いたつま先は女性特有の特徴と一致しており,これ らの要素は若く見える要素と一致している事が分 かった. つまり,脚力に関わる筋力要素は男性と,頭から つま先までの安定した歩行姿勢に関わるバランス要 素は女性と一致している点は興味深い.若く見える 歩行の実現には,男性の特徴である身体的な力強さ と女性の特徴であるバランス能力の高さ,それらの. 参考文献 1) 平成 28 年版厚生労働白書,12-13,69-70,125,(2016). 2) 柳川和優:高齢者の歩行動作特性,広島経済大学研究双書 (第 30 冊),11-29,(2008). 3) Himann, J. E., Cunningham, D. A., Rechnitzer, P. A. and Paterson, D. H.:Age-related changes in speed of walking, Med Sci Sports Exerc, 20(2), 161-166,(1988). 4) 市 川 将,武 市 一 成,田 川 武 弘,寺 島 宏 紀,永 井 克 幸: Kinect v2 を用いた歩行解析システムの開発,第 37 回バ イオメカニズム学術講演会講演予稿集,249-252, (2016). 5) Kozlowski, L. T. and Cutting, J. E..:Recognizing the sex of a walker from a dynamic point-light display, Percept Psychophys, 21(6), 575-580,(1977). DOI:10.3758/ BF03198740 6) Mather, G. and Murdoch, L.:Gender Discrimination in Biological Motion Displays Based on Dynamic Cues, In Proceedings of the Royal Society B:Biological Sciences, 258(1353), 273-279,(1994). DOI : 10.1098/rspb. 1994.0173 7) 対馬栄輝:SPSS で学ぶ医療系多変量データ解析,25-30, 82-84,106-107,東京図書,(2008). 8) 青柳幸利:【背景編】高齢者における歩行機能の重要性: 老化のメカニズムと予防法,9,有限会社ノーブル・プレ ス,(2012). 9) 坂光徹彦,浦辺幸夫,山本圭彦:脊柱後彎変形とバランス 能力および歩行能力の関係,理学療法科学 22(4),489494,(2007). 10) Ichikawa, M., Tagawa, T., Takashima, S., Torii, Y. and Nishiwaki, T.:Effects of age and gender on mediolateral balance control in gait, In Proceedings of Poster Session1: ISPGR Congress2013, 49-50,(2013). 11) Bruening, D. A., Frimenko, R. E., Goodyear, C. D., Bowden,.
(10) 16. バイオメカニズム. 24. D. R. and Fullenkamp, A. M.:Sex differences in whole body gait kinematics at preferred speeds, Gait Posture, 41. (2), 540-5,(2015). DOI:10.1016/j.gaitpost.2014.12.011.. Development of an evaluation formula for apparent age based on the walking posture Masaru ICHIKAWA, Kazunari TAKEICHI, Takehiro TAGAWA, Ryota SHINAYAMA, Tsuyoshi NISHIWAKI Institute of Sport Science, ASICS Corporation Abstract In this aging society, the importance of extending healthy life further increases. One of the measures and policies is the evaluation of walking ability based on gait kinematics. The purpose of this study is to obtain useful findings for the evaluation of walking ability in elderly people. 20 observers watched 103 whole body gait motions measured by Kinect v2 and performed subjective assessments on the motions. Influences of individual attributes or subjective assessments on the whole body gait kinematics were discussed. 7 anti-aging factors for apparent age based on the walking posture were selected. Those were faster walking speed, straight back, greater pelvic rotation in transverse plane, smaller toe-out angle, smaller mediolateral difference of knee direction, and smaller head sways in both anterior-posterior and mediolateral directions. Walking speed was an especially important factor for walking ability in not only physical capacity but also physical appearance. The importance of spinal alignment and lower extremity positioning was also discussed. Furthermore, it was suggested that specific factors for apparent age were associated to female-specific motions such as stable head and greater pelvic rotation. These findings could expand possibilities of the evaluation of walking ability applied to health promotion. Key Words:gait, kinect v2, subjective assessment, kinematics, aging.
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