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琵琶湖流入河川,安曇川の河川水位と瀬切れ

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Academic year: 2021

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.緒

琵琶湖に直接流入する一級河川が 本ある).琵琶 湖の主要漁獲対象魚であるアユ( ) は,琵琶湖流入河川で産卵し,孵化仔魚は琵琶湖に流 下し,一部は春から夏に流入河川を 上して成長し, 残りは琵琶湖で成長した後に秋の産卵期に流入河川へ 上する.このように琵琶湖とその流入河川を回遊し て生活する魚類にとって,河川の流況は移動の成否に 重要な条件となる.とくに河川の表流水がなくなり瀬 切れが生じると,河川性生物の生息場所が失われる,) ばかりでなく,河川性動物の移動を阻害し,生活史に 大きな影響を与える,)ことは広く指摘されている. 国内でも瀬切れは, 静岡県安倍川), 福井県北川), 愛媛県重信川)などの報告がみられ,各所で起こって いるようだが,全国の天井川の / があるとされる滋 賀県)での事例が圧倒的に多い.実際に,琵琶湖流入 河川では瀬切れが毎年頻発している, ).たとえば, 年 月には,余呉川,姉川・高時川,芹川,犬上 川,宇曽川,愛知川,野洲川,草津川,四ツ谷川,鴨 川,安曇川,石田川などの琵琶湖流入河川において瀬 切れが生じていた).また, 年 月∼ 月に行わ れた琵琶湖流入河川におけるアユの産卵調査において も,調査した 河川中,安曇川,石田川,姉川,愛知 川において河川が渇水または渇水寸前の状態であった と報告されている ).このような瀬切れは,当然なが らアユなどの琵琶湖と流入河川の間の回遊行動を阻害 する. 琵琶湖流入河川には各所に水位計が設置されてお り,その計測値は滋賀県土木防災情報システム )上で リアルタイムに表示されている.ただし残念ながら, これらの水位計は主に高水に対する防災用に設置され ているもので,平水時あるいは低水時の状態が正しく 示されているかどうかはは っ き り し な い こ と が 多 い).したがって現段階では河川の流況は目視等によ る観測が必要となるが,継続的な観測は,滋賀県北部 に計画されていた丹生ダムの姉川支流高時川における 観測 )や静岡県安倍川・大井川下流部)以外には報告 年 月 日受付, 年 月 日受理 *龍谷大学先端理工学部 Masahide YUMA **応用地質㈱地球環境事業部応用生態工学研究所 Yukio ONODA ***龍谷大学里山学研究センター Masato OTA

研 究 論 文

琵琶湖流入河川,安曇川

河川水位

瀬切

遊磨 正秀

・小野田 幸生

**

・太田 真人

*** 要 旨 琵琶湖流入河川においては瀬切れが頻発している.その一つである安曇川の下流部に伏流時水位をも計 測できる低水位対応型水位計を設置し, ― 年に記録した河川水位から瀬切れの発生状況を把握し た.安曇川下流部においては 月から 月まで様々な時期に瀬切れが生じていた.瀬切れ時の河川水位と 降水量,農業用水取水,琵琶湖水位との関係を検討した結果,農業用水の取水や琵琶湖の低水位が関与し ていることが示唆された.琵琶湖と流入河川を回遊する魚類等の保全のためにも,低水位環境をモニタリ ングができる水位計ならびに流量監視カメラの設置が必要であることに加え,農繁期・農閑期および治水 期・非治水期の各季節における河川・琵琶湖における水管理の再検討が必要である. キーワード:低水位対応型水位計,安曇川,瀬切れ,農業用水,琵琶湖水位 26 環 境 技 術 ―142―

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をみない. 本稿で対象とした安曇川は,琵琶湖流入河川では第 位の流域面積をもつ).河口から約 . ㎞のところ に「かっとり簗」が設置されており,北船木漁業協同組 合により 月から 月にかけて簗漁が行われている. 琵琶湖より安曇川に 上してくる魚類を対象としたも ので, ∼ 月は主にウグイ( ) が漁獲され,それに続いてアユが漁獲される.この簗 漁で獲られたアユは,上賀茂神社で執り行われる葵祭 りのときには,氷と塩でしめたアユを干した「干しア ユ」として献上されるなどの伝統をもち, 年には 水産庁により「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財 産百選」に選定されている.にもかかわらず,この簗 が設置されている安曇川の河口付近では頻繁に瀬切れ が生じている(写真 ).しかしその瀬切れ発生の様 相は明らかでないことから,河川に低水位対応型水位 計を設置し,瀬切れの実態を明らかにすることを試み, 河川流量にかかわる降水や取水,および流出先である 琵琶湖の湖水位との関連を解析した.

.研究の背景

安曇川の簗場における漁獲は北船木漁業協同組合簗 組の方々により簗帳に記録されている.簗帳には,増 水時や渇水時における簗の撤去,および漁獲なしの記 録が見られる.簗帳の 年から 年の記録につい て,降雨後の増水時の簗撤去による無漁獲 を考慮した上で,簗場(安曇川南流)が瀬 切れしていると考えられた日数を表 にま とめた.その結果, 年 月のほぼ全日 が,また 月ではどの年もほとんど瀬切れ が起こっていたと考えられるだけでなく, 年によっては 月から 月にかけて,どの 月においても少なからぬ日数の瀬切れが生 じている様相が明らかになった. 河口近くにある簗場の河川水位は琵琶湖の水位に影 響されると考えられる.琵琶湖の水位は瀬田川洗堰操 作規則( 年 月制定)により 月中旬以降,低水 位に保たれ,湖水位が低いと河口付近の河川水位も下 がる可能性がある.そこで琵琶湖の水位と簗場におけ る瀬切れ日の関係を図 に示した.これによると,琵 琶湖水位が低いから簗場における瀬切れが生じていた わけではないことがわかる. 簗漁は 月∼ 月に行われるため,残念ながらその 他の季節の状況が把握できない.このことから通年の 安曇川の流況状態の把握を試みることとした. 表 安曇川簗場における月別瀬切れ日数 月 月 月 月 月 月 簗帳記録 (H )年 / ―/ (H )年 / ―/ (H )年 / ―/ (H )年 / ―/ (H )年 ― / ―/ (H )年 / ―/ 写真 安曇川簗場における瀬切れ( 年 月 日) 図 琵琶湖水位と降水量,および簗漁記録から判断された瀬切れ期間(a. 年,b. 年) Vol. No. ( ) 27 ―143―

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.研究の方法

安曇川(南流)の河川水位の変動を記録するために, 河口(琵琶湖)より . ㎞にある本庄橋下流側右岸縁 (St. )およびその約 m 上の簗場下流側左岸縁(St. )に水位計を設置した(図 ).河川水位の計測には, 水 位 計 ロ ガ ー(MC― WA,STS 社)を 用 い,瀬 切れ時の伏流水の水位も計測できるように長さ約 . m,外径約 ㎝の二重鉛管(図 )を(有)木村建鐵(滋 賀県高島市)の協力を得て制作し,これを河床の約 m 下まで打ち込み,河床の約 . m 下の水位までを計 測できるように,鉛管中に水位計ロガーを懸架して水 圧を測定した.なお,鉛管上部は土砂が鉛管に流入し ないように蓋を付けてある.また,簗場河川敷にある 北船木漁業協同組合の簗小屋の外に大気圧測定用の同 型ロガーを設置し,水圧と大気圧の差から懸架位置の 水深を求めた.ロガー記録の回収を 年 月 日か ら 年 月 日まで約 ヵ月ごとに行った.なお, ロガーの計測は 時間ごとに行ったが,ここでは午前 時の記録を用いた.さらに,水位計鉛管の天端の高 度を,㈱新洲(滋賀県栗東市)の協力により計測し, 鉛管内のロガーの懸架位置と水深から,河川水位の標 高を算出した.なお,水位計設置にあたっては滋賀県 より「河川区域土地占有許可 滋賀県指令西振管第 号」の許可を得た. 一方,本庄橋の上流・下流の安曇川の流況写真を 年 月 日より 年 月 日まで,ほぼ毎日撮 影 )し,橋より上流および下流それぞれ約 m の範 囲における瀬切れの有無を判定した. 安曇川流域の降水量については,滋賀県土木防災情 報システム )より,安曇川(高島市安曇川町田中,安 曇川河口より約 ㎞上流付近)と村井(高島市朽木村 井,安曇川河口より約 ㎞上流付近)の記録を参照 した.琵琶湖水位は,国土交通省水文水質データベー ス )の記録を参照し,琵琶湖基準水位(B. S. L.)の 東京湾中等潮位(T. P.)+ . m より湖面標高を 求めた. 図 安曇川における低水位対応型水位計の設置場所 図 安曇川下流部に設置した低水位対応型水位計の 構造 28 環 境 技 術 ―144―

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.結果および考察

. 水位計記録 安曇川下流部に設置した つの水位計の記録を図 に示した.St. (本庄橋)の水位は 年 月 頃 か ら急に高くなり, 年 月頃まで以前とは異なる値 を示したこと,および最初に瀬切れが生じるのが簗場 の約 m 下の瀬である(次節参照)ことから,本稿 では St. (簗場下)の水位記録に基づいて解析を進 めることとした. . 瀬切れの判定および簗場下渇水位 本庄橋より上流(簗場側)の写真映像より,瀬切れ かどうかを判定した.瀬切れは,簗場の約 m 下流 の平瀬から生じ始める.St. (簗場下)の水位計に より記録された水位標高と流水状況を比較すると, 年および 年は瀬切れ状態のときと流水状態の ときの河川水位(標高)がはっきりと分かれており, 瀬切れ気味とした状態は瀬切れ状態の上限水位と流水 あり状態の下限水位に近い値であった(図 a,b). なお,写真が撮影されなかった日のデータは除いてあ る.その結果,対象期間における瀬切れ時の St. (簗 場下)の水位標高の最大値(以下,簗場下渇水位とす る)は . m と求められた. 一方, 年および 年は,瀬切れ時の河川水位 (標高)が高くなっていた(図 c,d).これが,河床 の変動によるものか,機器の問題かが明確でなかった ことから,以後の解析においては 年と 年の記 録を用いることとした. . 安曇川簗場における瀬切れ日数 前節で求めた簗場下渇水位をもとに,St. (簗場下) 水位計の水位が簗場下渇水位より低くなる日を瀬切れ と判定し,その瀬切れ日数を月別に集計した(表 ). 図 安曇川下流部に設置した つの水位計による河川水位変動と琵琶湖水位( 年 月― 年 月) 簗場下渇水位は,簗場下で瀬切れが発生すると考えられる水位を表す(詳細は本文参照). 図 安曇川簗場下の河川水位と通水状態(a. 年∼d. 年) Vol. No. ( ) 29 ―145―

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その結果, 年は 月と 月に瀬切れしていた日が かなり多く, 月および 月, 月にも瀬切れをして いる日が多いと判定された. 年は 月まで瀬切れ がなかったが, 月以降,瀬切れしていた日が多かっ たことが示された. 節において示した簗帳の記録は各年 月から 月 中旬までであるが,水位計の記録から, 年には 月, 月,また 年は 月から 月にかけての秋季 以降にも頻繁に瀬切れを起こしていたことがわかる. 瀬切れは河川流量の減少により起こる現象であり, 当然,降水量に左右される.また,安曇川では河口より 約 ㎞上流にある安曇川合同井堰(高島市安曇川町 長尾)などから農業用水を取水しており,合同井堰で は 月 日から 月 日まで毎秒 . t を,それ以外 の期間は毎秒 . t を取水する計画 )となっている. そこで,農繁期( 月 日∼ 月 日)と農閑期( 月 日∼ 月 日)の各月の瀬切れ日数を降水量とと もに比較すると,どちらの時期も降水量が少ないと瀬 切れ日数が多くなり,農繁期は,農閑期と同じ降水量 でも瀬切れ日数が多かった(図 ).このことから, 安曇川における瀬切れは農繁期の農業取水が関与して いたことが示唆される. . 琵琶湖水位と安曇川の水位変動 琵琶湖においては, 月中旬から 月中旬は,瀬田川 洗堰操作規則( 年制定)により琵琶湖の水位を低く 保たれることから,琵琶湖水位と安曇川の水位の関係 を,農繁期と農閑期,および治水期( 月 日∼ 月 日) と非治水期の各期を考慮して改めて比較した(図 ). 農繁期では,非治水期( 月 日∼ 月 日,図 a) と治水期( 月 日∼ 月 日,図 b)ともに琵琶 湖の湖面標高が m 以上でも瀬切れが生じている. 一方,農閑期では,治水期( 月 日∼ 月 日,図 c) と非治水期( 月 日∼ 月 日,図 d)ともに安 曇川の瀬切れは,琵琶湖の湖面標高が m より低い ときで生じていた.このように農繁期では湖水位が高 くても瀬切れが生じていることから,その時期に安曇 川の河川流量が少なくなって瀬切れが生じており,そ の流量減少は農業用水取水である可能性が示唆され る.一方, 年と 年の 月以降は,非治水期で ありながら,湖水位が− ㎝前後(湖面標高,約 m) 表 St. (安曇川簗場下)における瀬切れ日数 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 年 ― ― ― ― 年 図 琵琶湖水位と安曇川簗場下の河川水位(a―d) 図中点線は簗場下渇水位を表す. 図 農繁期と農閑期における各月の降水量(安曇川 と村井の観測値平均)と瀬切れ日数( 年 月∼ 年 月,ただし農繁期と農閑期の境と なっている 月, 月のデータを除く) 30 環 境 技 術 ―146―

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と低い状態であった(図 )ことから,瀬切れが多く 起こっていた(表 )と考えられる.ただし,農繁期・ 農閑期および治水期・非治水期の切り替わり時期にお ける簗下水位の変化は,降雨の影響のため明確ではな く,また農繁期の夏季は河川周辺陸域での蒸発散量が 多く,降雨量ほどの河川流量が見込めない場合もあり うることから,瀬切れ要因に関して現時点では可能性 を示唆するにとどめざるを得ない. . 魚類の回遊と河川の水位管理 本稿で扱った安曇川では,春から夏にかけて主にア ユを対象とした簗漁が行われ,また ∼ 月には本庄 橋の下流側で採卵用ビワマス( sp.)の 簗漁も行われている.安曇川においてはこの時期にお いても瀬切れが観測されている(図 ,表 ).琵琶 湖流入河川の中では,安曇川では姉川(長浜市)と並 んで,ビワマスの産卵床が最も多く観察されている ) そのビワマスの繁殖期において姉川などの琵琶湖流入 河川においても瀬切れが観察され,ビワマスの 上阻 害が報告されているが,降雨により河川の水量が回復 した折にビワマスが産卵 上 し て い る と 推 察 さ れ る ) 琵琶湖において最も重要な水産魚種であるアユは, 琵琶湖流入河川下流において ∼ 月に産卵を行い, 孵化仔魚は琵琶湖へ流下して湖内で一冬を過ごし,春 から初夏にかけて一部のアユが河川を 上する一方, 夏まで琵琶湖内に残って成長したアユ(コアユ)は秋 に流入河川に 上して産卵する).このように琵琶湖 とその流入河川を回遊するアユにとっても河川の通水 状態は重要な問題である.実際,アユの産卵に関して は,古くから今日にいたるまで瀬切れの影響が指摘さ れ,滋賀県水産試験場が行っているアユの産卵調査に おいて,安曇川(南流)では ∼ 月に頻繁に瀬切れ あるいは瀬切れ寸前の状態が記録されており,そのよ うな折には産卵がほぼ認められていない ).さらに琵 琶湖のアユの産卵場所は河口近くの浅瀬に集中してい る )ことから,回遊時期だけでなく,その 週間ほど の卵期の間も瀬切れが生じて卵が干出しないことが必 要であり,かつ孵化後,アユ仔魚を琵琶湖へ流下させ てくれるだけの水量が必要である.このため,アユ産 卵期に頻繁に生じる瀬切れ(図 ,表 )は,通水時に 上できる可能性のある親魚よりも,孵化仔魚の生存 (流下)により大きな負の影響を与えると考えられる. これらの水産有用魚種以外にも,ウグイは ∼ 月 に琵琶湖より 上して産卵し,ハス( )は夏季に流入河川を 上して繁殖する. また, ∼ 月に河川中下流域で繁殖するトウヨシノ ボ リ( sp. OR)の 仔 魚 は,孵 化 後,琵 琶湖に流下し, ∼ 月にその若魚が流入河川を 上 する ). ただし,上述のビワマスの例のように,回遊だけで あれば河川流量が回復した折に行うことができる.こ れは親魚や若魚など,移動能力を備えているものに対 して言えることであり,上記アユの場合において示し たように,孵化まで一定期間を要する卵や遊泳能力が 乏しく流下に河川の流れを利用しているものに対して は言えない.このようにさまざまな魚類がさまざまな 時期に琵琶湖とその流入河川を回遊し,それぞれの場 所を利用して生活していることから,各季節の河川の 通水状態(図 )はそれらの魚類の個体群維持に大き な影響を与える. ここで扱った琵琶湖流入河川の河口付近という環境 は特殊なものともいえる.それは,近江地域の地質・ 地形上の特徴から砂礫が搬送され),川底が泥質にな らずに,河口近くでありながらそこに砂礫の瀬が形成 されることである.その砂礫の瀬がとりわけアユの産 卵に適している.さらに安曇川の場合,河床低下が生 じており,その証拠に先に紹介した安曇川合同井堰の 下に設置されている全面魚道は,実は約 . m の河床 低下から合同井堰を守るための床止め工の役割を果た している ).このような河床低下は下流部まで及んで いるはずであるが,河口近くには固定された簗場があ り,その簗付近に砂礫が堆積することにより,伏流し やすい河床となっているという人為的な要素も加わっ ていると考えられる.さらに,河川周辺に広がってい る田圃では圃場整備が進められ,乾田化にともない圃 場とその周囲の地下水位は季節により低下している. 加えて,本稿で示唆したように,農業用水の取水も加 わって,河川本川の流量が減少している.このような 人為的な操作も重なると,表流水がより乏しくなって 伏流化を促し,河口付近の平瀬が瀬切れしやすくなる ことは自明のことである. 本稿で用いた水位計は,低水位対応型のものであり, 伏流水の水位をも計測できていた.事実,簗場から約 ㎞上流に設置されている滋賀県の防災用の常安橋水 位計の計測値と本研究の水位計の計測値を比較する と,常安橋水位計では低水位が計測しきれていないこ Vol. No. ( ) 31 ―147―

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とがわかる(図 ).しかしながら本研究の水位計は 年以降,当初とは異なると思われる値を示した. 本研究の水位計は鉛管を橋脚等に固定したものではな く,河床に打ち込んだだけのものであるため,河床変 動の影響を受けたものかもしれないが,鉛管の標高を 再度計測しなかったのは不手際であった. 繰り返しになるが,河川の流水情報は,防災用の水 位計ではすべてを測りきれないものであることは確か である.琵琶湖と流入河川を回遊する魚類等の個体群 の維持・保全のために,瀬切れを起こしやすい場所を 中心に,流水水面までの距離から水位を求める電波式 タイプのものではなく,改めて河床まで打ち込みしっ かり固定された管中の水面位置や水中圧力を測るタイ プの水位計を増設することが必要であろう.なお,本 稿で求めた簗場下渇水位はあくまで対象調査期間にお けるものであり,河床変動等により変化するものと考 えられる.このためもあり,水位計記録だけでは瀬切 れが生じているかどうかを判断できないため,各橋梁 への監視カメラの増設が必要である.ただし,水位・ 流量に関する数値データ解析のためには水位計記録は 必須であり,それを用いて,農繁期・農閑期および治 水期・非治水期の各季節における各河川における水管 理を再検討すべきである. 謝辞:本研究にあたり,秀工技社(京都府久世郡久御 山町)の尾崎弘幸氏には水位ロガーの設置に関して, ㈱新州(滋賀県栗東市)の井上均氏には水位計の標高 測定に際してお世話になった.(有)木村建鐵(滋賀県 高島市)には水位計鉛管を設計・制作していただいた. 北船木漁業協同組合(滋賀県高島市)は水位計の設置 作業を行ってくださり,また簗帳の閲覧をお許しいた だいた.同漁業協同組合(当時)の田中いづみ氏には 安曇川流況の写真撮影に協力いただいた.また,過去 の滋賀県防災データについて,滋賀県土木交通部流域 政策局から提供いただいた.これらの方々にあわせて 御礼申し上げる. なお本研究は, 年龍谷大学理工学学術研究助成 基金,文部科学省基盤研究 A( ),文部科学省 基盤研究 A( ), 年度私立大学学術研究 高度化推進事業オープン・リサーチ・センター整備事 業( ), 年 JST シーズ発掘試験研究( ― ― ), 年 JST シーズ発掘試験研究( ― )の 補助を受けた. 参 考 文 献 )内藤正明 監修;琵琶湖ハンドブック三訂版, p.,滋 賀県, .

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review of the consequences of decreased flow for instream habitat and macroinvertebrates, Journal of the North American Benthological Society, ,( ), p. ― , .

)Beamish, R. J. and Northcote T. G.; Extinction of a population of anadromous parasitic lamprey, , upstream of an impassable dam, Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Science, , p. ― , . )中野裕,土肥唱吾,峰松勇二,井上幹生,三宅洋;瀬 切れ区間における河川動物群集の時間的変動,環境シ ステム研究論文集, ,p. ― , . )静岡河川事務所;“安倍川の現状”,https://www.cbr. mlit.go.jp/shizukawa/river/kassui/archives.html,(参 照 ― ― ). )齊藤重人,水野雅光, 光浩,大石三之,千田庸哉; 北川における魚がすみやすい川づくり,リバーフロン ト研究所報告,( ),p. ― )Wikipedia;“天 井 川”,https://ja.wikipedia.org/wiki/ 天井川,(参照 ― ― ). )遊磨正秀,丸山敦,山中裕樹,太田真人;琵琶湖の回 遊魚と流入河川の河口付近環境,「琵琶湖の保全再生 と里山・里湖」龍谷大学里山学研究センター 年次 報告書,p. ― )滋賀県土木交通部流域政策局;“瀬切れ河川における 現実的な水環境確保方策の検討”, ,https://www. 図 安曇川の常安橋水位(滋賀県)と簗場下水位(本研究)の比較 図中破線は簗場下渇水位を表す. 32 環 境 技 術 ―148―

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River Water Level and Droughts in Ado River,

An Inlet Stream of Lake Biwa, Central Japan

Masahide YUMA*

, Yukio ONODA**

, Masato OTA***

*Faculty of Advanced Science and Technology, Ryukoku University **OYO Corporation, Global Environment Business Division,

Ecology and Civil Engineering Institute

***Research Center for Satoyama Studies, Ryukoku University

ABSTRACT

Droughts have been often observed in the inlet streams of Lake Biwa, central Japan. Water level gauges corresponding to underground flow were laid in the lower reach of Ado River, one of those streams, and the days with drought from to were estimated. Droughts occurred in various seasons from May to December. A comparison of river water level during drought, rainfall, agricultural water intake and lake water level revealed that the latter two factors might be possibly concerned with the drought. For the conservation of migratory fishes between Lake Biwa and its tributaries, it is desirable to lay the water level gauges and monitoring cameras those effectively monitor the river flow conditions including low levels and droughts, and have enough discussions on sound water management in rivers and lake in relation to agricultural use and lake level control.

Key Words: Water level gauge corresponding to underground flow, Ado River, drought, agricultural water intake, Lake Biwa water level

Vol. No. ( ) 33

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