経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案
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(2) 58. (340). 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). Mäntymäki(2011)は,事例研究 を 帰納的理論構. 複数プレーヤーの意思決定によるゲーミング結. 築,解釈的査察,自然実験,文脈解説 の 4 つ に. 果を分析することによって,事例選択における. 分類をおこなったうえで,多数を占める帰納的. 恣意的な判断をより低減するといった効果も期. 手法に頼った理論構築の厳密性に関する限界を. 待できる.. 指摘している.そして,その限界を超えて事例 研究によってより精緻な理論構築を実現するた. 2.本研究のアプローチ. めに,対象とする事例に存在する因果関係につ. 本研究では,プラットフォームビジネス戦略. いての深い分析や,事例全体の文脈を重視した. 論を対象として,インテルの MPU 事業に「戦. 解釈といった,これまで対立すると考えられて. 略命題ゲーミング」手法を適用した.次節では,. いた 2 つの分析軸を両立する多元的なアプロー. 経営戦略分野における事例研究にゲーミングを. チの有効性を主張している.これは,Eisenhardt. 適用することによって得られる効果と,戦略命. (1989)が主張する,文脈を重視した理論構築の. 題ゲーミング手法の手順を示す.. 手順に沿った主張であり,事例研究から理論構 築をおこなう際の厳密性,一般性を高めること. 2. 1 経営戦略分野におけるゲーミングの適用. を目的とした方法論である.. ⑴ 一般のゲーミングモデルが有する特徴. Eisenhardt や Welch ら の 研究 は い ず れ も,. 多くの場合,社会活動に係る事象は,さまざ. 事例研究による理論構築に一定の科学的正当性. まな構成要素からなる非線形な性質をもった複. をもたせるうえで有効である.. 雑な全体事象である.ある意思決定が全体事象. われわれは,富永(1969)が指摘するところ. におよぼす影響を推測することは容易ではな. の,経営戦略論における事例研究と理論構築に. い.なぜなら,人は常に逐次的思考をおこなっ. 内在する,非同質性および流動性によって生じ. て お り,複雑 な 構造体 を 全体事象 と し て 俯瞰. る困難さを解決することを目的として, 「戦略. し,理解できるようには訓練されていないため. 命題ゲーミング」と呼ぶ手法を提案する.戦略. である.この問題を解決する一つの方法として,. 命題 ゲーミ ン グ は,Eisenhardt ら の 手法 を 補. Duke(1974)は 抽象化 と 構造化 に よ る ゲーミ. 完し,より高い自由度で仮説検証を実現するこ. ングをあげている.これは逐次性を極力排除し,. とを目的とする.既存命題を精緻化するための. 全体事象をシステマティックに表現する手法の. 適切な事例が豊富に存在するとは限らないと. ひとつであり,対象とする事象と,その全体シ. いった制約や,対象となる事例を選択する段階. ステムに影響を与える要素を体系的にゲームへ. において,研究者が仮説にとって都合の良い事. 組み込むことを前提に,個別に分析・抽象化し,. 例を恣意的に選択する可能性を否定できない,. 構造化したモデルから,ゲーミングの参加者は. といった一般的な困難さを改善しようとする手. 全体事象に対する洞察を得ることが可能となる. 法である.まず,既存命題を検証することが可. と述べている.つまり,ゲーミングとは,ある. 能な仮想的事例をゲーミングモデルとして設計. 全体事象について複数の観察者が個々にその特. する.つぎに,ゲーミング結果から既存命題に. 性を理解し,その理解を共有し評価することを. 対する反証を提示し,既存命題の条件設定が適. 可能にする言語としての機能をもつということ. 切ではないことをあきらかにする.そして,条. である.複雑な経営戦略の領域にゲーミングを. 件を細分化して仮説検証をおこない,仮説を肯. 導入することによって,これまでには得られな. 定する条件の成立範囲を限定していく.この一. かった,あらたな洞察が得られる可能性がある.. 連の作業によって仮説の成立条件を決定し,既. Greenblat(1994)は,ゲーミ ン グ は シ ミュ. 存命題の精緻化をおこなうのである.同時に,. レーション設計者が仮定した人々の反応ではな.
(3) 図表 砂口&佐藤. 23 巻 3 号. 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). 表1. (341). 59. 一般のゲーミングモデルが有する特徴. 表 1 一般のゲーミングモデルが有する特徴. 際の事例を完全に再現することは困難である. く,実際に人々がどのように反応するかを知る 表 2 経営戦略論に資するゲーミングモデルが有する特徴 そして,仮に再現できたとしても,それがモデ 機会を与え,現実の状況に特有の多元的な複雑 性を導入し,理解することを可能にする,と述. ルの完全性を証明することにはならない.実際. べている.つまり,さまざまな性質をもった構. の事例において,戦略的な意思決定が出力であ. 成要素が組み合わされた既知の構造からなる全. る事業結果に対してどのような影響をどの程度. 体事象が,ある結果に至るプロセスとその理解. 与えたのか,という説明ができることが重要な. に重点を置いたのがゲーミングであると解釈で. のである.ゲーミングモデルの妥当性について,. きる.複数の人の判断に基づくシナリオを抽出. 兼田(2005)は,現実の対象との関係でいえば. し,利用することが可能になるのである.. 準同型性が必要であるとしている.さらに,既. 新 井・出 口・兼 田・加 藤・中 村( 1998)は,. 知の性質をモデル化した部分モデルの組みあわ. 設計者あるいは研究者の立場からみれば,実験. せによって大規模で複雑なモデルを構成する,. の再現性という,もともと予想される結果の追. 構成的モデリングによるべきであるとしてい. 認より,設計者の予想を超えたゲーミングによ. る.構成的モデリングであることにより,部分. る創発効果,あるいは結果の多様性とその解釈. モデルを変更したり,組み換えたりすることに. の営みを評価すべきであると指摘している.ま. よって対象を説明できるようにすることが,モ. た,菱山(2014)は,ゲーミングはロールプレ. デルに反証可能性をもたせる行為であるとして. イを利用したマルチエージェントシミュレー. いる.つまり,数理モデルとして設計される際. ションの一形態であるとして,マルチエージェ. の内生変数の設定が既知の理論式から構成され. ントとして人の参加を得ることによって,あら. ており,なおかつ対象に対する説明性を有する. たな相互作用に関する知見が得られる可能性が. ことが,ゲーミングを科学的検証方法のひとつ. あるとしている.これらの主張は,ゲーミング. として成立させる必要条件なのである.. を実行することによって得られる結果そのもの. 以上にあげた一般のゲーミングモデルの特徴. よりも,その過程や結果の解釈における創発的. について,モデルが有する基本的な要点と,そ. な発見が重要であるということを示している.. のモデルからゲーミング結果として得られる効. 一方で,ゲーミングにおいては抽象化と構造. 果を表 1 にまとめる.. つぎに,戦略命題ゲーミング手法を経営戦略 化によってモデル設計が成立することから,実 図 1 インテルと補完事業者の関係.
(4) 60. (342). 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). 論に用いるにあたり,ゲーミングモデルに求め. し込んだ形や,組織や,オペレーションの巧拙. られる特徴を示す.. に大きく影響される.したがって,戦略を評価. ⑵ 経営戦略論におけるゲーミングモデルが有. することは一般に困難である.. すべき特徴. 下平・寺野(2004)は経営戦略に関わるこう. Greenwald and Kahn( 2007)は,複 数 の 要. した状況を,戦略とビジネス遂行の間の恣意性. 素が複雑に絡み合う全体的事象として企業活動. や乖離としてとらえ「社長のジレンマ」と呼ん. を捉えている.比較的単純な状況の競争戦略を. だ.戦略的決定をあつかうために,事例研究の. ゲーム論的に整理する一方で,人間によるゲー. 考え方をゲーミングに取り入れた.つまり,事. ミングによって,不確実で複雑な状況における. 例研究の「現実に企業でおこなわれている事例. ビジネスの「シナリオ」を描きだせる有用性と. を記述して検討を加えて学習する」やり方と整. 可能性を指摘している.つまり,戦略として考. 合するように,反復学習可能な方法を提案し,. えることのできるすべての選択肢を洗い出して. それを実現する「社長のジレンマ」ゲーミング. 検討するのではなく,ゲーミングのプロセスに. を開発した.経営学の知識として,主に経営品. おける,意思決定や行動の経過記録としてシナ. 質の側面をゲーミングモデルに盛り込むこと. リオをとらえることによって,無意味な組みあ. で,経営学の知識がないプレーヤーでも,一定. わせを排除し,検討に値する意味のある結果を. の経営戦略の決定に必要なバランスのよい決定. 生むことができる可能性について述べている.. を疑似体験し語れるようになるという効果を得. 分析対象を模擬的にモデル化したゲームにおい. た.中野・寺野(2006)は社長のジレンマを具. て,起こりうるあらゆる可能性を想定するので. 体化し発展させて,アサヒビールの新ビール開. はなく,シミュレーションの参加者である人間. 発のシナリオを組み込んで,中期的目標と事業. プレーヤーに役割を割り当て,人間プレーヤー. 構造の戦略的な整合性を学習するための事例と. の判断をうまく取り入れながら,ゲームを 1 段. なるように「社長のジレンマ」を特化したゲー. 階ごとに進めていくことで,起こりうる可能性. ミングモデルを開発した.同時に,ビジネス教. が高いシナリオや有意味なシナリオを得るので. 育における有効性指標の開発も試みた.下平・. ある.ここでシナリオとは,ゲームの中での決. 寺野,中野・寺野の研究は,ゲーミングによっ. 定の結果の列で構成される経緯のことである.. て生まれるシナリオを一種の事例とみなし,経. 戦略を決定の時系列に落とし込んだものがシナ. 営学の専門用語としての経営戦略について,特. リオであると解釈可能である.複数のシナリオ. に,経営方針と事業推進の構造の開発に焦点を. が有意義なものとして見出されると考えられ,. あてた学習をおこなうものであった.. それらのシナリオを事例として用いることで,. 経営戦略の領域にゲーミングを活用しようと. 「理論を検証し,検証に耐えない理論を排除す. する上記の先行研究から,モデルがもつべき基. る」働きを持たせることが可能と考えられる.. 本的なポイントと,ゲーミングの結果として得. 経営戦略論については,定型的なオペレーショ. られる効果を,2. 2 節で提案する戦略命題ゲー. ンのための,仕入れ数や生産数,販売価格や借. ミングを含めて表 2 にまとめる.. 入金額の決定は,経営戦略レベルの決定ではな. 以降に続く 2. 2 節では,本節に示したゲーミ. い.たとえば,Barney(2002)などの標準的教. ングの特徴を活用した戦略命題ゲーミング手法. 科書がこれを指摘している.経営戦略はビジネ. の特徴と,その実行手順を示す.. スを変換する方向や,新規事業の決定などをあ つかう.ある戦略の下での営業成績は,その戦. 2. 2 戦略命題ゲーミング手法の説明. 略的方向性を具体的なビジネスの仕組みに落と. 戦略的ゲーミング手法は,事例分析から導か.
(5) 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). 表2. (343). 61. 経営戦略論に資するゲーミングモデルが有する特徴. 表 2 経営戦略論に資するゲーミングモデルが有する特徴. れる主張の真偽を試すことができる境界状況を. は,命題の条件部を微小に変化させ,結論部が. 出現させ,その主張が導かれるに至るプロセス. 成立するかどうかを調べることである.事例研. を観察することにより,対立する主張が生まれ. 究における一般命題のような言明の意味を豊富. る要因を理解することを目的とする方法であ. にし,その過程でそれらの言明の真偽を確認す. る.戦略命題ゲーミングは,経営戦略理論を学. る範囲を広げ,同時に,マネジャーにとって自. んだことがないプレーヤーの学習に資すること. 社の状況にそうした一般的命題をあてはめると. を目的とするのではなく,科学としての経営戦. きに,ゲーミングを事例として用いる方法とし. 略論の命題群を積み上げていく方向性を持つも. て位置づけたものである.. のである.そのための方法論的基盤は Popper. さらに,ゲーミングの結果だけにかぎらず,. ゲーミングの結果を利用して仮想的な入力を加 (1957)の「社会科学における全称命題の発見」 図 1 インテルと補完事業者の関係 えた一種の感度解析的なシミュレーションの結 と「反証による社会科学理論の発展」をねらう ことである.それによって,同時に,マネジャー. 果を付加的に利用するという動学化も利用す. にとっての有用な知識を得られる可能性があ. る.これによって,戦略命題の解釈空間を条件. る.. 付きではあるが拡大し,戦略命題の分析や理論. Eisenhardt ら(1989, 2007)が 焦点 を あ て て. 拡張の試みをおこない,また,実践的な含意を. 1 増やす試みをおこなうことができる. 戦略命題ゲーミング手法を手順として以下に 示す. る.それに対し,戦略命題ゲーミングはあらた 手 順 な理論を構築することを目的としたものではな ⑴ 戦略理論 や 事例研究 よ り 導 か れ た 主張 を, い.既存の戦略理論の中の(基本的で重要な) 真偽判定可能な命題として命題の前提部を詳細 命題の反証をねらってゲーミングを用い,その 化・特定化し,反証可能な命題とする. 命題を証明する事例を局所的に動学化して,あ ⑵ 命題を解釈できる結果を出しうるゲーミン りえた状況についても分析可能にし,結果とし グモデルを作成する. て戦略の理論という知識を全体として拡大して ⑶ ゲーミングモデルは,過去の業績の時間変 いこうとするものである.局所的な動学化と いるのは,新規的な現象に対する事例をもちい た経営戦略理論 の構築に関する研究事項であ.
(6) 図1. 62. 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). (344). 補完事業者1. 補完事業者 (マザーボード). 補完事業者2. ライセンス・製品の流れ 規格情報の流れ. 補完事業者 (最終製品組立) 補完事業者 (チップセット). プラットフォーム企業 (ペンティアム). 図 1 インテルと補完事業者の関係. 化を定性的に再現できるものでなければならな. 3. 1 命題の精緻化・特定化. い.再現できるように,ゲーミングモデルの. PC 製品市場 に お け る イ ン テ ル と 補完事業. パラメータを調整したり,再構築したりして. 者の関係を図 1 に示す.インテルをプラット. チューニングをおこなう.. フォーム企業とし,チップセットおよびマザー. ⑷ 命題を反証できるように,ゲーミング実行. ボードを供給する事業者群を補完事業者 1,最. 計画を設計する.必要があればゲーミングモデ. 終組立製品である PC を供給する事業者群を補. ルを変更し,詳細化や簡単化をおこなう.変更. 完事業者 2 とする.これらの補完事業者は単一. した場合も再現性も確保する.. の企業を指すのではなく,各々の事業領域内で. ⑸ 人間プレーヤーが策定したゲーミングモデ. 活動する企業群をあらわす.インテルの MPU. ルによるゲーミングを実施する.. はチップセットおよびマザーボードを製造する. ⑹ ゲーミングの結果を評価し,命題の真偽を. 補完事業者 1 に販売される.一方で,MPU お. 確かめる.ゲーミングのプロセスから,命題の. よ び チップ セット,マ ザーボード の I/O に 関. 真偽を決定する要因を抽出する.. する規格情報は,補完事業者 1 から補完事業者. 3.事例の構造化. 2 へ,インテルから補完事業者 2 へ提供される. イ ン テ ル は MPU を 中心 と し た プ ラット. 本研究 で と り あ げ る イ ン テ ル の MPU 事業. フォーム に お け る プ ラット フォーム 企業 で. は,これまでにプラットフォームビジネス研. あ り,イ ン テ ル の 戦略的意思決定 は プ ラット. 究の対象として事例研究がおこなわれている.. フォーム全体のアーキテクチャや事業成績に強. た と え ば,Burgelman( 2002)や Gawer and. い影響力をもつ.ここで示すプラットフォーム. Cusumano(2002)に よって 戦略理論 が 構築 さ. とは,複数の種類の製品の共通基盤となるモ. れており,基本的な命題や対立する複数の主張. ジュールや部品を示す,いわゆる製品プラッ. が提言されている.これらの命題や主張の反証. トフォームではなく,その製品が創出する価. をねらい,事例を局所的に動学化するために,. 値 を 補完 す る 外部補完事業者 が 存在 す る,ビ. 本節に示す手順によってインテルの MPU 事業. ジネス・プラットフォームのことである.これ. を構造化する.. は,Gawer and Cusumano(2013)が, 『外部的 プラットフォームもしくは産業プラットフォー ム』として分類するプラットフォームであり,.
(7) 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). 「一つもしくは複数の企業によって製品やサー. (345). 63. る市場が成長することが十分条件である.」. ビス,技術が開発され,それらは特定の製品や 関連サービス,または部品技術の形で提供され. 3. 2 ゲーミングモデルの設計. ることによって,さらに多くの会社がさらに補. 図 1 に示す関係において,インテルがプラッ. 完的なイノベーションを構築することができる. トフォーム全体のアーキテクチャを決定するプ. 基盤」と定義するものである.そして, 『外部. ラットフォーム企業であるとするゲーミングモ. プラットフォームもしくは産業プラットフォー. デルの概念図を図 2 に示す.経営戦略に関する. ム』を 単 な る 製品プラットフォームと区別す. 定性的な意思決定を入力とし,内生変数による. る 特徴的 な 要因 と し て,ネット ワーク 効果 と. 演算結果を事業実績として出力するモデルであ. マルチサイド市場の 2 つをあげている.そし. り,下平・寺野,中野・寺野らのモデルと同様. て,Gawer and Cusumano(2002) ,Cusumano. に「定性的構造選択モデル」としての構造をも. (2010)が指摘するところの,プラットフォー. つ.. ムとして成功する企業の戦略は,つぎのような. プラットフォームのアーキテクチャを決定す. 成長する方策を述べた基本命題として取り出す. る,経営戦略に関する定性的な意思決定項目と. ことができる.. して,Gawer and Cusumano(2002)による「4. 基本命題. つのレバー」を導入した.「4 つのレバー」の. 「プラットフォーム企業が成長するためには,. うち,「内部組織」は最適化されていると仮定. そのプラットフォームの周りに出現しつつある. し,これを除く「企業の範囲」 「製品化技術」 「外. エコシステムに参加する補完事業者が利益を得. 部補完事業者との関係」の 3 つ,および「事業. る市場が成長することが十分条件である. 」. 投資」の 4 つを意思決定項目として用いた.プ. Gawer and Cusumano(2002)にある, 「イン. ラットフォーム企業はこれら 4 つの項目につい. テルは, (保有自体を PC ユーザが望んでいる. て意思決定をおこなうものとし,補完事業者 1. ような)プロセッサというプラットフォームを. および補完事業者 2 は,「事業投資」について. 作るのであって,プラットフォームの補完市場. のみ意思決定をおこなうこととした.. であるプログラムを直接作るのではない. 」と. 命題 A および命題 B の解釈を可能にするた. いう主張と,Burgelman(2002)にある, 「イン. め に,命題 A と 命題 B の 違 い で あ る「PC 市. テルが,プロセッサだけでなく,PC 製造に乗. 場に参入する/参入しない」は,「外部補完事業. り出していれば,もっと成長しただろう. 」と. 者との関係」として決定される.. いう主張を基本命題との関係としてそれぞれ記. 図 2 のゲーミングモデルには,4 種類の意思 決定項目 が L1, L2, L3, Ip, Ic1, Ic2 と し て 組 み 入 れ. 述すると,つぎのように言い換えることができ る.. てある.意思決定項目はゲームのプレーヤーが. 命題 A「プ ラット フォーム 企業 が 成長 す る. 決めて入力する外生変数である.. ためには,そのプラットフォームの周りに出現 しつつある最終製品市場に『自社は参入せず』 ,. 「企業の範囲(L1)」は,プラットフォーム企. エコシステムに参加する補完事業者が利益を得. る価値をどの程度に設定するかを決定する項目. る市場が成長することが十分条件である. 」. 業が,自社のコア製品が最終製品において占め であり,つぎの[1]~[3]より選択する.. 命題 B「プラットフォーム企業が成長するた. [1]:製品価値 の 40%[2]:製品価値 の 30%. めには,そのプラットフォームの周りに出現し. [3]:製品価値の 20%. つ つ あ る 最終製品市場 に『自社 が 参入 し て』 ,. 「製品化技術(L2)」は,プラットフォーム企. エコシステムに参加する補完事業者が利益を得. 業が,自社のコア製品に関する技術情報を補完.
(8) 64. 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). (346). ※ PF:プラットフォーム ※ PL:プラットフォーム企業. 実績の20%が PF維持コスト. 市場規模 予実比. 総コスト=PL売上 の40%×予実比+ 維持コスト. PF維持コスト (実績). PL総コスト (実績). 実績値の対予測 値比率を計算 市場規模 (予測). 市場規模計算 *1. 市場規模 (実績). 企業の範囲 L1. 企業の範囲により 定まる係数で按分. PL占有市場規模 (実績). 補完事業者市場 規模(実績) 製品化技術 L2. 補完事業者競争力 補完事業者市場 按分計算*2. PL競争力,補完事業 者競争力合計で按分. PL売上 (実績) PL市場売上+補完 PL売上-PL総コスト 市場でのPL売上. PL獲得利益 (実績). 補完市場における PLの売上 競争力による按分. 補完市場における 補完事業者の売上. 補完事業者売上 (実績). 外部補完事業 者との関係 L3 PF全体における 事業者の競争力. PF全体における PLの競争力. 事業投資 Ip, IC1, IC2 補完事業者市 場規模(予測). 補完市場の40%を 競争力により按分. 補完事業者 コスト(実績). 補完事業者売上 -補完事業者コスト. 補完事業者 獲得利益(実績). *1:3つのレバーに応じてそれぞれ市場規模倍率(C1, C2, C3)を定める.各々の倍率を掛け合わせて,市場規模予測値に乗じる *2:外部補完事業者との関係によってPLの補完市場への介入度を決定.全体競争力とPL競争力,補完事業者競争力合計によって 補完事業者市場におけるPLの獲得市場と補完事業者獲得市場の合計に按分. 図 2 ゲーミングモデルの概念図 図2 ゲーミングモデルの概念図. 事業者 1 と補完事業者 2 に対し,どのように開. 業 お よ び 補完事業者 1, 2 が 自社 の 事業領域 に. 示するのかを決定する項目であり,つぎの[1] ~. どれだけの追加投資活動をおこなうかを決定す. [3]より選択する.. る項目であり,つぎに示す範囲内で数値の入力. [1] :補完事業者 1, 2 ともに有償開示 [2] :. をおこなう.. 補完事業者 1 に有償開示,補完事業者 2 に無償. [プラットフォーム企業]:0 < Ip < 200, [補 2) 完事業者 C(n=1, ] :0 < ICn < 400 n. 開示 [3] :補完事業者 1, 2 ともに無償開示 「外部補完事業者との関係(L3) 」は,プラット. フォーム企業が,補完事業者の事業領域に参入す るか否かを決定する項目であり,つぎの[1] ~ [4] より選択する.. [1] :補完事業者 1, 2 の事業領域に参入 [2] :. 本モデルはラウンド型ゲーミング構造を持 つ.第 n 期(n > 1)にそれぞれのプレーヤー が L1, L2, L3, Ip, Ic1, Ic2 を入力することよって,第. (n-1)期の実績を基に,既定の内生変数によっ て第 n 期の実績が計算される.内生変数の詳細. 補完事業者 1 の事業領域に参入[3] :補完事業. を附録 1 に示す.. 者 2 の 事業領域 に参入 [4] :補完事業者の事. 各ラウンドでの計算手順の概要を以降に示. 業領域に参入しない. す.まず,プレーヤーの入力値によって,市場 規模をつぎのように計算する.L1, L2, L3, は[1]. 「事業投資(Ip, Ic1, Ic2) 」は,プラットフォーム企. から[4]までの入力に対し,市場規模拡大倍.
(9) 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). (347). 65. 率があらかじめ設定されており,L1 および L2 で決定される市場規模倍率 ML1 および市場規模. た,市場規模実績値 の 20% を 技術情報 の 整備. 倍率 ML2 は,. とし,プラットフォーム企業がコストとしてこ. 𝑀𝑀�� �1� < 𝑀𝑀�� �2� =1 < 𝑀𝑀�� �3� 𝑀𝑀�� �1� < 𝑀𝑀�� �2� =1 < 𝑀𝑀�� �3�. や業界活動などのプラットフォーム維持コスト れを負担するものとする.最後に,売上実績か らコスト実績を減じた値を当期の獲得利益とす る. 4.ゲーミングによる分析. と す る. 「外部補完事業者 と の 関係(L3) 」は, プラットフォーム企業の参入が最終製品事業を. 4. 1 時間変化に対する定性的な再現性検証. 縮小させるケースでは,市場規模倍率 ML3 を,. 本ゲーミングモデルが過去の時間変化に対し. 𝑀𝑀�� �1� < 𝑀𝑀�� �2� = 𝑀𝑀�� �3� = 1 < 𝑀𝑀��� �4� 𝑀𝑀�� �1� < 𝑀𝑀�� �2� = 𝑀𝑀�� �3� = 1 < 𝑀𝑀��� �4�. て,定性的に再現性をもつことを確認するため. とし,プラットフォーム企業の参入が最終製品. タ・シミュレーションによって再現を試みた.. 事業 を 拡大 さ せ る ケース で は,市場規模倍率 ML3 を,. インテルは,i486 の後継として,1993 年に. に,インテルが実際に MPU 市場でおこなった ことを,本研究のモデルを用いたコンピュー. ペンティアムの販売を開始した.インテルは, ペンティアムやチップセットの仕様は公開しな. 𝑀𝑀�� �2� = 1 < 𝑀𝑀�� �4� = 𝑀𝑀�� �1� < 𝑀𝑀��� �3� 𝑀𝑀�� �2� = 1 < 𝑀𝑀�� �4� = 𝑀𝑀�� �1� < 𝑀𝑀��� �3�. かったものの,ペンティアムのインターフェー. とする.また,Ip, Ic1, Ic2 が 0 の場合,市場規模 倍 率 Mlp, Mlc1, Mlc2 は 1 と し,Ip, Ic1, Ic2 が 0 以 外. 者がペンティアムに対応したチップセットを製. の場合は,市場規模倍率 Mlp, Mlc1, Mlc2 が一定の. ティアムの互換製品を市場から排除することを. 割合で増加する.. 目的として,インテルはペンティアムに関する. 上記 に し た がって 計算 さ れ た 市場規模倍率 Mlp, Mlc1, Mlc2 を前期市場規模実績に乗じること. 知的財産権を主張し,ペンティアムの設計技術. によって,今期の市場規模実績を決定する.. た.しかし,ペンティアムの性能を最大限に発. ス仕様をライセンスすることによって,他の業 造・販売することを積極的に推進した.ペン. や製造技術をオープンに提供することはなかっ. 市場規模実績を基に, 「企業の範囲(L1) 」の. 揮させるために必要なチップセットについて. 設定 に 応 じ て プ ラット フォーム 企業占有市場. は,自らが市場に参入するとともに,他ベンダー. 規模 が 計算 さ れ,市場規模実績 か ら プ ラット. にペンティアムとのインターフェースに関する. フォーム 企業占有市場規模 を 減 じ た 部分 が そ. 情報 を 提供 し た.ま た,最終製品(PC)販売. れぞれのプレーヤーの競争力に応じて按分さ. 業者や周辺機器ベンダーが積極的にペンティア. れ,当期の売上となる.市場競争力は,プラッ. ム市場へ参入することを促進するために,本格. ト フォーム 企業 が もっと も 高 く,補完事業者. 的にマザーボード市場にも参入した.ペンティ. 1,補完事業者 2 の順に初期値が下がる設定と. アムが周辺機器をコントロールするための仕様. する.補完事業者の市場競争力は「製品化技術. (PCI バスや USB など)は一般に無償で公開さ. (L2) 」の設定に応じて一定の割合で加算される. ま た, 「事業投資(Ip, Ic1, Ic2) 」に よって も,一. れ,周辺機器ベンダーはこれらの仕様を基に機 器の製造・販売が可能となった.. 定の割合で加算される.. インテルが供給する 3 つのペンティアム製品. コ ス ト 実績 は,各 プ レーヤーの 売上実績 に. 群について,それぞれの製品群が最終製品(PC). 対して一定の割合で発生するものとする.ま. に 占 め る 価格 の 平均割合 を 調査 し た 結果 は,.
(10) 66. 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). (348). 図3 図3. 市場規模推移の比較. 図3. シミュレーション・データ. 実績値. 図 3 市場規模の推移の比較. [ Core-i3:28.8%] , [ Core-i5:28.6%] , [ Core-i7:. 推移を図 4 に示す.市場規模は JEITA のデー. 27.8%]となっている.いずれの MPU 群も製品. タを基に,日本市場における PC 出荷台数にて. 価格の 30% 近くを MPU が占めており,インテ. 代用した1).インテル獲得利益は Gartner Data. ルが占有する市場は全体市場の 30% 弱を占めて. Quest のデータを用いた.実績値,シミュレー. いることを示している(附録 2) .. ション結果ともに,1993 年(もしくは R1)の. 以上の過去事例に基づき,ペンティアム投入. 値を 100 として変換した数値をプロットした .. 時にインテルが採用した戦略を前章の意思決定. 2000 年 の IT バ ブ ル 崩壊 の 影響 を 受 け て,. 項目に置き換えると,つぎのとおりとなる.. 2001 年にはインテルの営業利益の実績値は前 年比マイナスとなっているものの,1993 年のペ. L1=2(最終製品 で あ る PC に 占 め る MPU の. ンティアム発売以降のインテルの利益推移は類. 価値を約 30% 程度に設定) L2=3(I/O に関する規格情報を無償で提供). 似の傾向を示している.このことから,本研究. へ参入,PC 市場へは参入しない) Ip, Ic1, Ic2=0(追加投資はゼロ). た構造化がインテルの事業成績に対して,厳密. L3=2(チップセットおよびマザーボード市場. で用いたモデルは定性的な成長の傾向が同様な ものとみなせるという意味で,本モデルに用い 性は欠けるものの一定の説明性を有するものと 判断する.. 上記の L1, L2, L3, Ip, Ic1, Ic2 を入力値として,10. 期(10 ラウンド)までコンピュータ・シミュ. レーションをおこなった.1993 年から 2002 年 までのインテルの営業利益の推移と,本研究 のシミュレーションによって得られた R1 から R10 までの市場規模推移を図 3 に,獲得利益の. . 1)世界市場における PC 出荷台数を用いるべき であるが,データが非常に高価であるために日本 市場 に お け る PC 出荷台数 に て 代用 し た.絶対数 は異なるものの,傾向は類似しており代替可能と 判断した..
(11) 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). (349). 67. 図4 図3. 図3. インテル獲得利益推移の比較. シミュレーション・データ. 実績値. 図 4 インテル獲得利益の推移の比較. 4. 2 ゲーミング実行条件. を得た.. 本研究では,横浜国立大学で開発されたゲー ミ ン グ 環境 で あ る YBG(Yokohama Business. 4. 3 初期条件の設定. Game) (白井,2010)を利用してゲーミングを. 過去にインテルがペンティアムを市場に投. 実施 し た.現在,YBG は 日本 の 100 以上 の 教. 入する際,最終製品市場である PC 市場に参入. 育機関でビジネス体験授業にも利用されてお. することはなかった.もし,PC 市場に参入し. り,特殊なゲーミングをおこなうものではなく,. ていたと仮定した場合に,(1)技術的競争劣位. 一般的なゲーミング環境であるといえる.. にある補完事業者の同市場への参入が進まず,. 本論文のゲーミングを実施するにあたり,大. PC 市場 の 成長 が 阻害 さ れ た 可能性 が 考 え ら. 学教員 1 名と勤続 20 年程度の社会人 2 名の合. れ,一方で,(2)インテルの参入によってイノ. 計 3 名で構成されるチームを 2 チーム構成し,. ベーションが促進され,新規ユーザが増加する. それぞれのチームが独立に同じゲーミングをお. ことによって補完事業者が積極的に市場へ参入. こなった.両チームの 3 名のプレーヤーはそれ. し,PC 市場の成長が促進されたという可能性. ぞれ,プラットフォームリーダーであるインテ. も考えられる.そこで,本研究ではそれら 2 つ. ル,補完事業者 1,補完事業者 2 として意思決. の場合についてゲーミングをおこなった.. 定をおこなった.各プレーヤーは自社が好業績 をあげることを目的とし,1 ラウンドが 1 年程. 4. 4 実行結果. 度に相当するものとして,全 10 ラウンドを 1. ゲーミング結果の中から基本命題の反証にか. つのゲームとするゲーミングをおこなった.次. かわる 3 つの結果を図 5 から図 7 に示す.. 節に示すように,異なる 2 種類の初期条件を設. (1) プ ラット フォーム 企業 の 参入 に よ り 最終. 定し,それぞれのモデルを 2 つのチームが 1 度. 製品市場である PC 市場が縮小するケース. ずつおこない,4 つのシナリオ(ゲームの結果). この結果を図 5 に示す.図で縦軸[左]がプ.
(12) 図5 68. 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). (350). 図5. ROUND. 1期. L1:自社製品の価値 L2:技術情報 ライセンス. L3:参入事業領域. I:開発投資. C1. 2期. 3期. 4期. 5期. 6期. 7期. 8期. 9期. 10期. 30%. 30%. 30%. 40%. 40%. 20%. 20%. 30%. 30%. 30%. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. C2. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. C1. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 不参入. 参入. 参入. 参入. 参入. C2. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. P. 100. 100. 100. 100. 200. 200. 100. 100. 100. 100. C1. 400. 400. 200. 200. 0. 0. 200. 0. 0. 0. C2. 100. 50. 200. 150. 100. 50. 400. 300. 300. 50. 図 5 (結果 1 番)市場規模と獲得利益の推移. ラットフォーム企業,補完事業者 1 および 2 の. に 示 す.縦軸[左]が プ ラット フォーム 企業,. 獲得利益を,縦軸[右]が市場規模実績を示す.. 補完事業者 1 および 2 の獲得利益を,縦軸[右]. プラットフォーム企業は,1 期から 3 期まで. が市場規模実績を示す.. 最終製品市場に参入しなかったが,自社利益の. 図 6 に示すとおり,ひとつのチームでは「参. 拡大を図り,4 期から最終製品市場に参入した.. 入事業領域(L3) 」がすべて不参入となってお. その結果,自社の利益は大きく拡大したが,市. り,全期を通じてプラットフォーム企業が最終. 場規模は縮小に転じた.5 期でも最終製品市場. 製品市場に参入することはなかった.プラット. に参入したが,さらに市場規模が縮小し,自社. フォーム企業がみずから最終製品市場に参入す. の業績も悪化した.6 期以降,プラットフォー ム企業が最終製品市場への参入をやめて市場拡. る代わりに, 「企業の範囲(L1)」および「製品. 大を図った結果,市場の拡大が続いた.6 期に. 化技術(L2)」を操作することによって,プラッ. はプラットフォーム企業の業績は悪化したが,. 1 期から 7 期までは市場は順調に成長したもの. 7 期以降は市場拡大につれて業績が改善し,収. の,自社の事業は赤字が続いた.8 期以降,プ. 益が拡大した.. ラットフォーム企業は自社事業の収益改善のた. (2) プ ラット フォーム 企業 の 参入 に よ り 最終 製品市場である PC 市場が拡大するケース 2 つのチームによるそれぞれの結果を図 6, 7. トフォーム事業をコントロールしようとした.. めに,「企業の範囲(L1)」および「製品化技術. (L2)」をもっとも自社に有利と思われる設定(補. 完事業者にはもっとも厳しい設定)とした.そ.
(13) 図6 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). 図6. ROUND. 1期. L1:自社製品の価値 L2:技術情報 ライセンス. C1. 2期. 3期. 4期. 5期. 6期. 7期. 8期. 9期. 10期. 20%. 20%. 20%. 30%. 40%. 40%. 40%. 40%. 40%. 40%. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 有償. C2. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 有償. C1. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. C2. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. P. 100. 100. 50. 50. 50. 50. 50. 50. 50. 0. C1. 400. 200. 200. 200. 200. 200. 100. 200. 100. 50. C2. 150. 250. 300. 300. 350. 300. 350. 400. 250. 200. L3:参入事業領域. I:開発投資. 図7. 図 6 (結果 2 番,3 番)市場規模と獲得利益の推移. 図7. ROUND. 1期. L1:自社製品の価値 L2:技術情報 ライセンス. C1. 2期. 3期. 4期. 5期. 6期. 7期. 8期. 9期. 10期. 20%. 20%. 20%. 30%. 30%. 30%. 40%. 40%. 40%. 40%. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. C2. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 有償. 有償. C1. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. 不参入. 参入. 参入. 参入. 参入. C2. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. P. 200. 200. 200. 100. 100. 100. 100. 100. 100. 100. C1. 200. 400. 400. 400. 0. 0. 200. 0. 0. 200. C2. 400. 400. 400. 400. 300. 300. 400. 300. 200. 300. L3:参入事業領域. I:開発投資. 図 7 (結果 4 番)市場規模と獲得利益の推移. (351). 69.
(14) 70. (352). 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). の結果,プラットフォーム企業は自社の収益改 善に一定の成功を収めたが,市場は縮小に転じ ることとなった.. 命題 C S → Q 命題 C の否定 S < notQ. 一方で, 他方のチームでは図 7 に示すように,. 上で,命題 C は「プラットフォーム企業であ. 1 期から 5 期まではプラットフォーム企業は最. るインテルが成長するためには,そのプラット. 終製品事業には参入しなかった.6 期ではじめ. フォームの周りに出現しつつある PC 市場に『自. て最終製品事業に参入し,最終製品事業への参. 社が参入する』ことが十分条件である. 」であり,. 入が市場を拡大させたことをみて,7 期以降も. 命題 B と関連させて考慮している.notB が成立 すれば notC は成立する.一方,notC が成立し. 最終製品事業への参入を続けた.その結果,市 場は継続的に大きく成長し,それに伴いプラッ トフォーム企業の獲得利益も大きく拡大した.. ても notB が成立するわけではないが,notB に. 関する諸条件への示唆が得られる可能性がある ため,分析する.. 4. 5 命題の反証. さらに,各ゲーム結果を吟味して,入力値を. 基本命題や命題 A, B などの検証と反証につ. 変更することで命題の意味解釈を広げることが. いて述べる.まず,各命題をゲーム結果にどの. できると考えられる場合に,もともとのゲーム. ように対応させるかを示す.説明を簡潔にする. の結果に対する感度解析的な方法として,入力. ために,命題の中の言明をあらわす以下のよう. の一部を変更する.人工的に入力を変更してシ. な記号を導入する.. ミュレーションするのである.本論文では,図. P「そのプラットフォームの周りのエコシス. 5 の結果を使い,6 期から 8 期までの入力を 3. テムの補完事業者とプラットフォームとを合計. 期連続して同じ値とした.この結果が図 5─2 で. した市場全体が成長する」. あり,これによって,レバー 1,2,3 の効果を. Q「そのプラットフォーム企業の利益が成長. 命題 A に関連させて解釈できる.. する」. ま た,図 5 の 結果 を 命題 B と 命題 C に 関連. R「プラットフォーム企業が補完市場である. させて解釈できるようにするために,図 5 の 9. PC 製造に補完事業者のひとつとして参入しな. 期と 10 期を,8 期の入力と同じレバー設定に. い」. したものを図 5─3 として計算した.. S「プラットフォーム企業が PC 製造をおこ. 命題 A と B やその否定が,ゲーム結果におい. ない PC 市場に参入する」. て成立している状況をまとめるとつぎの表 3 の. このとき各命題はつぎのようになる.. ようになる.表 3 は,各命題が 3 つの連続する. 命題の検証や反証に当たって「成長する」と. 期において成立するゲーム結果を示している.. は,市場や利益について 3 期連続の傾向を示す. ゲーム結果 1 番から 3 番は命題 A について. こととする.つまり,たとえば 1 期から 3 期ま. の知見である.プラットフォーム企業であった. で市場が成長し利益が増加すれば,成長したと. インテルが PC 市場という補完市場に参入せず. みなす.. に成長することと,レバー 1 と 2 の設定によっ. 基本命題 P → Q 基本命題の否定 P < notQ. て,補完事業者が利益をあげることとが同時. 命題 B (P < S)→ Q 命題 B の否定 (P < S) <notQ. バスの規格の開発や,USB の規格開発による. 命題 A (P < R)→ Q 命題 A の否定 (P < R) <notQ. に起こっていることがわかる.言い換えれば, エコシステム全体の成長を促すことが自社の 成長に必要である.インテルの場合には,PCI 補完事業者のビジネスが拡大した(Gawer and.
(15) 図5-2 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). 図5-2. ROUND. 1期. L1:自社製品の価値 L2:技術情報 ライセンス. L3:参入事業領域. I:開発投資. C1. 2期. 3期. 4期. 5期. 6期. 7期. 8期. 9期. 10期. 30%. 30%. 30%. 40%. 40%. 20%. 20%. 20%. 30%. 30%. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 無償. 無償. C2. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 無償. 無償. C1. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. C2. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. P. 100. 100. 100. 100. 200. 200. 100. 100. 100. 100. C1. 400. 400. 200. 200. 0. 0. 200. 0. 0. 0. C2. 100. 50. 200. 150. 100. 50. 400. 300. 300. 50. 図5-3. 図 5―2 (結果 5 番)図 5 の 6,7,8 期をシミュレーションで変更した場合. 図5-3. ROUND. 1期. L1:自社製品の価値 L2:技術情報 ライセンス. L3:参入事業領域. I:開発投資. C1. 2期. 3期. 4期. 5期. 6期. 7期. 8期. 9期. 10期. 30%. 30%. 30%. 40%. 40%. 20%. 20%. 30%. 30%. 30%. 有償. 有償. 有償. 有償. 有償. 無償. 無償. 無償. 無償. 無償 無償. C2. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. 無償. 無償. 無償. 無償. C1. 参入. 参入. 参入. 参入. 参入. 不参入. 参入. 参入. 参入. 参入. C2. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入. 不参入 100. P. 100. 100. 100. 100. 200. 200. 100. 100. 100. C1. 400. 400. 200. 200. 0. 0. 200. 0. 0. 0. C2. 100. 50. 200. 150. 100. 50. 400. 300. 300. 50. 図 5―3(結果 1 番)図 5 の 9 期と 10 期をシミュレーションで変更した場合. (353). 71.
(16) 72. 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). (354). 表3. 表 3 命題が成立するゲーム結果の期間とレバー設定の対応. ゲーム結果番号. 結果1番. 結果2番. 結果3番. 結果4番. 結果5番. (P∧R)→Q. (P∧R)→Q. (P∧R)∧notQ. (P∧S)→Q. S∧notQ. A. A. notA. B. notC. 図5-3 7期-10期. 図6 3期-5期. 図6 5期-7期. 図7 8期-10期. 図5-2 4期-6期. 命題. 該当箇所. 30% 30% 30% 20% 30% 40%. L1:自社製品の価値. 40%. 40%. 40%. 40% 40% 40% 40% 40% 40%. L2:技術情報 ライセンス. C1. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. C2. 無償. 無償. 無償. 有償. 有償. L3:参入事業 領域. C1. 参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. C2. 不参入. 不参入. 不参入. 参入. 参入. I:開発投資. P. 100. 100. 0. 50. 50. 50. 50. 50. 50. 100. 100. 100. 100. 200. 200. C1. 0. 0. 0. 200. 200. 200. 200. 200. 100. 0. 0. 200. 200. 0. 0. C2. 300. 300. 50. 300. 300. 350. 350. 300. 350. 300. 200. 300. 150. 100. 50. Cusumano, 2002)ことがこれに対応すると解. 投資のパターンのちがいはそれぞれの命題が成. 釈できる.. 立することには関わらない. (つまり,シミュ. 結果 3 番(図 6 の 5 期から 7 期)ではレバー. レーションとして結果 5 番の 3 期間の投資額を. 1 の 設定 と し て,自社製品 が 全製品(PC)の. 変更して結果 4 番と同じにした場合でも,結 果 5 番について命題 notC が成立する.また,結. コストの 40% を占める.市場が成長している にもかかわらず,プラットフォーム企業の利益 が伸びていない.その理由は,市場が成長する. 果 4 番の 3 期間の投資額を結果 5 番に変更して. 計算しても,結果 4 番について命題 B が成立す. ことによってプラットフォーム企業の売り上げ. る. ). も増加するが,同時に,プラットフォームを維. 結果 4 番 と 5 番 の ゲーミ ン グ モ デ ル の 設定. 持するためのコスト,たとえば MPU の周辺技. の違いは,プラットフォーム企業が PC 市場に. 術の開発や広告宣伝費などが増加し,MPU の. 参入した場合の PC 市場の伸び率のちがいであ. 売り上げ増と相殺するためである.. る.結果 4 番の場合は,PC 市場の成長率が高. ゲーム結果 4 番と 5 番を比較することで,命. くなる.つまり,PC 市場の伸び率が,プラッ. 題 B についての解釈が可能である.つまり,PC. トフォーム企業も PC 市場に参加して PC を顧. 市場にいつ参入すべきかの考察が可能になる. 命題 B は(P<S) → Q であり命題 B の否定 notB. 客に届けるスピードを増すことでさらに市場拡. も notB は成立するとは限らない.結果 4 番と. ることができる.結局,プラットフォームの補. 大のスピードに寄与する場合があるということ. は(P<S) <notQ である.命題 C の否定 notC は S<notQ なので,notC が成立する条件であって. である.. 5 番をみると,レバー設定は同一である.3 者. 完事業者に技術情報などを無償提供するといっ. の投資額は 3 つの期で異なるパターンであるが,. た方法で,プラットフォーム上での補完事業者. これらの分析によって命題 A と B を比較す.
(17) 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). (355). 73. のビジネスの拡大を促し,さらに,最終ユーザ. を担当したプレーヤーの一人は,PC 市場に参. で構成される PC 市場の成長率を見きわめるこ. 入することにリスクを感じながらも,「シナリ. と が,プ ラット フォーム 企業 の 成長 に とって. オを理解し,機が熟した」と感じた時に PC 市. 重要であることがわかる.PC 市場の成長をプ. 場に参入することを決めている.これは,プラッ. ラットフォーム企業が早められるならば,プ. トフォーム企業の経営判断に対して,市場がど. ラットフォーム企業も最終的なシステムとして. のように応答するかを理解することが重要であ. のプラットフォーム製品である PC 市場に参入. ることを示唆している.. することによって,自社の成長を早めることが. 以上のことから,この度の戦略命題ゲーミン. できるといえる.. グで扱った戦略命題と手法,分析結果に関して,. PC 市場の成長率を見極めることは簡単では. プレーヤーは特に異常な現象を感ずることはな. なかったと考えられる.PC 製造にあたっては,. い決定をおこなっているととらえられる.した. 自社で工場を持つほかに OEM を利用すること. がって,本手法によって得られたゲーム結果の. も可能であるほか,資金手当てや人員が必要で. 分析が異常で特異なものではないととらえてよ. あるため,実施形態は単純ではない.したがっ. いことを示している.. て,成長率の見極めは困難である.. 5.結 論. 4. 6 戦略命題ゲーミング手法の妥当性と命題. 本研究は,戦略命題ゲーミング手法を適用す. 内容の意義についてのアンケート. ることにより,ゲーミング結果に至る複数のシ. 戦略命題ゲーミング終了後,ゲーミングに参. ナリオを仮想的事例として用い,既存理論の命. 加 し た 社会人 プ レーヤーを 対象 に,プ ラット. 題を成立させる条件を分析可能であることを示. フォーム企業と補完事業者のビジネスの成長に. した.戦略命題ゲーミング手法は,事例研究に. 関するアンケート調査をおこなった.すべての. よって得られた理論を一般化する過程におい. プレーヤーが,プラットフォームが成長するた. て,富永(1969)が指摘する非同質性および流. めには補完事業者の事業発展が必要であり,プ. 動性によって生じる困難さを回避するという点. ラットフォーム企業は補完事業者の事業を推進. において,有効性をもつといえる.. するべきである,と回答している.また,プラッ. 本研究における戦略命題ゲーミングの適用例. トフォーム企業が PC 市場に参入することにつ. として,インテルの MPU 事業をとりあげた.. いて,補完事業者はこれを脅威と感じており,. プラットフォームビジネス戦略における既存の. プラットフォーム企業も,市場成長を阻害する. 基本命題「プラットフォーム企業が成長するた. リスクとして認識していた.. めには,そのプラットフォームの周りに出現し. プ ラット フォーム企業を担当した二人のプ. つつあるエコシステムに参加する補完事業者が. レーヤーはいずれも, 「プラットフォーム企業. 利益を得る市場が成長することが十分条件であ. は 補完事業者 と 共栄共存 す べ き」 「プ ラット. る. 」について,その前提条件となる,最終製品. フォーム企業は技術情報をオープンにすべき」. 市場に参入すべきである/参入すべきではない,. と回答しており,「プラットフォーム企業が成. という 2 つの成立条件について真偽判定をおこ. 長するためには,そのプラットフォームの周り. なった.その結果,補完製品市場の成長性につ. に出現しつつあるエコシステムに参加する補完. いてプラットフォーム企業が持つ見通しと参入. 事業者が利益を得る市場が成長することが十分. のタイミング,補完事業者への製品技術のオー. 条件である.」という基本命題を直感的に理解. プン性保持による命題の詳細化が,これら 2 つ. していることがわかる.プラットフォーム企業. の前提条件をいずれも矛盾なく成立させ,結果.
(18) 74. (356). 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). として基本命題を成立させる条件であることを 示した.つまり,PC 市場の成長性が高く,かつ, 補完事業者への技術情報をオープンにするとい う方針が,基本命題を成立させるひとつの事例 となることを示した.補完市場への参入によ る自社製品の市場の成長を狙うことは,Gawer and Cusumano(2002)のレバー 3 として考慮さ れる補完市場の成長性への見通しの確かさ,レ バー 2 としての補完事業者への技術のオープン 化の程度という要因が大きな影響を持つことが 隠されているのである.さらにまた,ゲーミン グをおこなったプレーヤーに対する戦略ゲーミ ング方法論から得られる知見に対するアンケー トでも,上記の知見の妥当性が確認された. 本論文の限界として,戦略命題ゲーミングの 方法は,多くの主観的な要素を含むことがあげ られる.第 4 章で述べたように,基本命題の設 定や,反証のためのゲーミングモデルの構築, プレーヤーによるゲーミングの解釈は,いずれ も機械的にはおこなうことができず,発見的で ある.どのようにして,どの程度まで客観性を 保持できるかについては,別の基本命題を設定 した研究などを通じておこなう今後の研究課題 とする.. 参考文献 新井潔・出口弘・兼田敏之・加藤文俊・中村美枝 子(1988) 『ゲーミ ン グ シ ミュレーション』 , 日科技連出版 . 兼田敏之(2005)『知的 エージェン ト で 見 る 社会 1 社会デザインのシミュレーション&ゲー ミング』,共立出版株式会社 . 下平利和・寺野隆雄(2004)「ビ ジ ネ ス ゲーム を 通じたケースメソッドへの接近─筑波大学経 営システム科学専攻における「社長のジレ ンマ」モデル実践の経験から」, 『シミュレー ション&ゲーミング』,14 ⑵, pp. 144─156. 白井宏明(2010)「ビジネスゲームによる体験型 教育」,内野明編『ビジネスインテリジェン スを育む教育』4 章,白桃書房,pp. 73─98. 富永健一(1996)「社会科学方法論 の 現状 と 科学 哲 学」, 『科 学 基 礎 論 研 究』,7 ⑷, pp. 156 ─ 163.. 中野健次・寺野隆雄(2006) 「ケース と ビ ジ ネ ス ゲームの融合─ビール会社経営における意思 決定の学習─」 , 『シミュレーション&ゲーミ ング』 ,16 ⑴, pp. 13─27. 菱山玲子(2014) 「マルチエージェントシミュレー ションにおけるゲーミングの利用」 , 『情報処 理』 ,55 ⑹, pp. 557─562. Barney, J. B. (2002). Gaining and Sustaining nd Competitive Advantage, 2 ed. Pearson Education, Inc.(岡 田 正 大 訳『企 業 戦 略 論』 (上・中・下) ,ダイヤモンド社,2003 年. ) Burgelman, R.(2002), Strategy Is Destiny: How Strategy-making Shapes a Companyʼs Future, Free Press.(石橋善一郎・宇田理訳『イ ン テルの戦略─企業変貌を実現した戦略形成プ ロセス』 , ダイヤモンド社,2006 年. ) Cusumano, M. A.(2010), Staying Power, Oxford University Press.(鬼澤忍訳『君臨する企業 の「 6 つの法則」─戦略のベストプラクティ スを求めて』日本経済新聞社,2012 年. ) Duke, R. D.(1974) , Gaming: The Future’s Language, Sage Publications, Inc.(中 村 美 枝 子・市 川 新 訳『ゲーミングシミュレーション 未来との 対話』 ,ダイヤモンド社,2001 年. ) Eisenhardt, K. M. (1989) Building Theories from Case Study Research, The Academy of Management Review, 14 ⑷, pp. 532─550. Eisenhardt, K. M. and Graebner, M.(2007) Theory Building From Cases: Opportunities And Challenges, Academy of Management Journal, 50 ⑴, pp. 25─32. Gawer, A. and Cusumano, M. A.(2002)Platform Leadership: How Intel, Microsoft, and Cisco Drive Industry Innovation, Harvard Business School Press.(小林敏男訳『プラットフォー ム・リーダーシップ─イノベーションを導く 新しい経営戦略』 ,有斐閣,2005 年. ) Gawer, A. and Cusumano, M. A.(2013)Industry Platforms and Ecosystem Innovation, The Journal of Product Innovation Management, 31 ⑶, pp. 417─433. Greenwald, B. and Kahn, J.(2007)Competition Demystified: A Radically Simplified Approach to Business Strategy, Portfolio.(辻谷一美訳『競争 戦略の謎を解く』 ,ダイヤモンド社,2012 年. ) Popper, K. (1957) The Poverty of Historicism, Routledge.(岩坂彰訳『歴史主義の貧困』 ,日 経 BP, 2013 年. ) Welch, C., Piekkari, R., Plakoyiannaki, E., & Paavilainen-Mäntymäki, E.(2011)Theorising from case studies: Towards a pluralist future for international business research, Journal of International Business Studies, 42 ⑸, pp. 740─762..
(19) MAG = (0.075L� + 0.825)(0.2L� + 0.6)𝑓𝑓(𝐿𝐿� ) 経営戦略論の事例研究における戦略命題ゲーミング手法の提案(砂口・佐藤). 附録 1 PC 本体販売価格 に 占 め る MPU 販売価格 調査. イ ン テ ル が 供 給 す る Core-i3,Core-i5, Core-i7 の 3 つ の MPU 製品群 に つ い て,そ れ ぞれの製品群が最終製品(PC)に占める価格 の平均割合は以下のとおりである(表 4 参照) .. (357). 75. L3=1 のとき f(L3) =0.85; L3=2 or 3 のとき f(L3). =1; L3=4 のとき f(L3) =1.15. ※ 2:プ ラットフォーム企業の参入が最終製品 事業を拡大させるケース L3=1 のとき (L f 3) f 3) =1.7; L3=2 のとき (L =1; L3=3. f 3) f 3) のとき (L =2; L3=4 のとき (L =1.15. Core-i3:28.8% Core-i5:28.6% Core-i7:. 1. 3 市場規模実績(Mact ). 27.8% . 市場規模実績は,意思決定項目によって定め ら れ た 市場規模倍率(MAG)を 市場規模予測. 性能が高い MPU を採用する PC は,メモリ. に乗じることによって決定し,次の計算式に. 容量やハードディスクドライブ容量は大きくな. よって定義する.. り,グラフィック ・ ボードなども高性能 ・ 高価 格な製品を採用することが多くなる.その結果, Core-i3 よりは Core-i5,そして Core-i7 と,PC 販 売価格に占める MPU の価格の比率は低下して. M��� = 𝑀𝑀��� ∙ MAG . ⑵ . 1. 4 市場競争力(Ppl , Pc1 , Pc2 ). いる.しかし,いずれの MPU 群も製品価格の. コア技術(製品)を有するプラットフォーム. 30% 近くを MPU が占めており,インテルが占. 企業に近い補完事業者ほど,本来保有する市場. 有する市場は全体市場の 30% 弱を占めているこ. 競争力は高い.ライセンシーに対して,プラッ. とを示している.. トフォーム企業による技術情報の開示度が上が れば,補完事業者の競争力は上がる.プラット. 附録 2 ゲーミングモデルの計算式. フォーム企業の市場競争力は一定とし,ライセ. 1. 1 市場規模予測(Mfor ). ンシーである補完事業者の市場競争力は「製品. 市場規模予測は期初に設定され,期末の獲得. 化技術(L2)」の設定に応じて次の計算式によっ. 利益を計算する起点となる.1 期目の市場規模. て定義する.. 予測 は 1000 に 設定 し,2 期目以降 は 前期市場 規模実績 を 当期市場規模予測 と し て 割 り 当 て. 「製品化技術(L2)」が[1]の 場合「製品化. る.. が[3]の場合,それぞれ以下の計算式にした. 技術(L2)」が[2]の 場合「製品化技術(L2) 」. がって市場競争力を計算する. 1. 2 市場規模倍率(MAG). 市場規模予測に対して,実際の市場規模がど れだけ拡大もしくは縮小するかを決定する係数 で,4 つの意思決定項目から計算する.. . P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� �. ⑶ . P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) MAG = (0.075L� + 0.825)(0.2L� + 0.6)𝑓𝑓(𝐿𝐿� )(� 0.25� + �) P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) (1) ⑷ P�� = 50.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) 5)(0.2L� + 0.6)𝑓𝑓(𝐿𝐿� )(� 0.25� + �) (1) ⑴ P�� = 30.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) ⑸ P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) ※ 1:プ ラットフォーム企業の参入が最終製品 事業を縮小させるケース. . 28.
(20) 図表 砂口&佐藤. 附録 1. 76. 23 巻 3 号 P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� �. 横浜国際社会科学研究 第 23 巻第 3 号(2019 年 1 月). (358). 表4. P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) 表 4 PC および MPU のリテール価格一覧 P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) P�� = 50.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) PC および MPU のリテール価格一覧. P�� = 30.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ). (3). P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� �. MC��� = M���. ∑P �� P� + ∑ P��. = 50.0�1 40.0(1 + + 0.25𝐼𝐼 0.25𝐼𝐼��� ) �� = PP�� � P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 50.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) P�� = 50.0�1 + 0.25𝐼𝐼� � P�� = 30.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) (出典:2016 年 2 月 9 日 Amazon web site 検索結果より著者作成) PP = 40.0(1 40.0(1 + + 0.25𝐼𝐼 0.25𝐼𝐼�� �� �� = ��)) P = 40.0(1 40.0(1 + + 0.25𝐼𝐼 0.25𝐼𝐼�� MPL��� = M��� (0.5 − 0.1L� ) �� = ��)) P�� P�� = 50.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ). (3). (4). (5) (出典:2016 年 2 月 9 日 Amazon web site 検索結果より著者作成) P�� = 30.0(1 + 0.25𝐼𝐼�� ) 1. 5 補完事業者市場規模予測 1. 7 補完事業者市場実績(MCact ) P�� = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼MC �� )for ) (4) P = 40.0(1 + 0.25𝐼𝐼 �� �� それぞれ補完事業者は,期初にコストを予算 補完事業者が参入する市場規模は,市場規模 化しておくために,補完事業者市場規模の予測 を お こ な う.プ ラット フォーム 企業 の 競争力 (Pp)と,補完事業者の競争力(PCi)の合計によっ. 実績からプラットフォーム企業専有市場を減ず (5) ることにより決定し,次の計算式によって定義 する.. て按分され,次の計算式によって定義する.. . MC���. ∑P �� = M��� P� + ∑ P�� . ⑹. . 1. 6 プラットフォーム企業占有市場実績(MPLact ). ∑P �� 自社 の = M に よって 他 の 事業者 を 排除 MC専有技術 ���. ���. P� + ∑ P�� し,プラットフォーム企業が専有する市場規模 は,プラットフォーム企業が定める「企業の範. MPL��� = M��� (0.5 − 0.1L� ). 囲(L1) 」によって決定し,次の計算式によっ て定義する.. MPL��� = M��� (0.5 − 0.1L� ) . MC��� = M��� − MPL���. ⑺ . MC��� = M��� − MPL��� 1. 8 補完事業者市場における売上. ⑻ . (6). (SALE_Cpl , SALE_Ccn ). 各補完事業者が獲得する市場は,市場競争力. (6) に応じて按分される.また,プラットフォーム 企業が補完事業者市場に参入するかどうかに. よっても影響をうける.「外部補完事業者との(7) 関係(L3)」の設定により,3 つの場合に分け て補完事業者市場を次の計算式によって定義す る.. (7). ⑴「外部補完事業者との関係 (L3)」が[1]の場. (8).
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