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鑑賞者の感覚が作りだす美術作品に関する諸考察

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Academic year: 2021

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(1)鑑賞者の感覚が作りだす美術作品に関する諸考察 教科・領域教育学専攻  芸術系(美術)コース.       M09196c       喜多愛. 1.研究動機   キュビスム以降、作者主体となって展開し. 第3章 作品と対時する鑑賞者. てきた美術活動は、徐々に鑑賞者が主体となり、.   第1節 鑑賞活動の広がり. 作品とのつながりを強めつつあるように思われ.   第2節 現代の鑑賞者たち. る。その一因として、美術鑑賞の対象が、物理.   第3節 より豊かな鑑賞活動のために. 的なr現るもの」としての作品から、視覚以外. 結. の感覚も伴って鑑賞される、r体験するもの」へ. と変化しつつあることが挙げられる。鑑賞活動. 3.概要. の前提条件として、物理的に存在していた美術.  第」章では、まず「現るもの」として成立し. 作品が無形化し、思想や意味に主眼を置くコン. た視覚芸術が示す「視覚」の働きについて、ま. セプチュアル・アートが登場した20世紀以降、. た本研究で扱うr感覚」の定義について述べる。. 鑑賞者の意識や認識が、作品を成立させる絶対. また、いくつかの美術作品を例示しながら、作. 条件としてその重要性を高めてきた。視覚だけ. 者によって認識される鑑賞者の重要性について. ではなく他の感覚を刺激する作品が生み出され、. 確認した。研究動機でも触れたが、20世紀以降. ある意味では、ぐっすりと眠っていると言える. の美術作品においては、「発想や構想こそ最優先. 鑑賞者の意識の覚醒を促している。本研究では、. されるべきで、作品の形式、制作方法は二義的. この「現るもの」として存在してきた美術作品. なものでしかない」とする主張の基に、より自. が、どのような変遷を遂げ、どのような必然性. 由な表現形式によって展開されてきている。造. を持って「体験するもの」として現在の私達の. 形表現の多様化は、作者のイメージや思想の発. 前に現れたのだろうか。. 露であると同時に、鑑賞者への直接的な意識変 革のアプローチでもあるのだ。そのような作品. 2.論文の構成. 形態の広がりを探ることで、鑑賞者が作品の成.  序. 立に関与するようになった過程について迫って.  第1章 拡大する現代美術と鑑賞者. いくことができると考える。.   第1節 芸術作品をめぐる概念.   第二章では、歴史的な美術作品の変遷を辿.   第2節 作品に関わる鑑賞者の存在. りながら、作品と作者、鑑賞者の関係の変化を.   第3節 場の拡張による作品展示の変化. 追っていくことにする。先史以降、美術は、作.  第2章 作者と鑑賞者をつなぐ場となる作品. 品とそれを作る人、視る人という三角関係の申.   第1節 鑑賞者の成立と美的芸術の発展. で発展してきた。この関係は時代によりそれぞ.   第2節 作者主導で行われる作品制作. れの繋がり方や距離感を変え、美術表現を変化. 一372川.

(2) させてきたと言える。また、美術作品の形式や. ト型の作品やキュレーションについて述べる。. 主題の変化の背後には、それを支える社会情勢. 国際展は、様々な問題や危険性をはらみつつ、. や技術の進歩が存在している。それらも含めて. 鑑賞のかたちの新しい可能性を見ることができ. 現在に至る美術活動の動向を見ていきたい。. る。そしてまた、鑑賞者が主体的に作品の成立.  20世紀にはいると、作者自身の感情や精神を. に関与することについて、そのような変化が及. 激しく表出しようとする芸術の傾向がみられ、. ぼす影響について考えたい。鑑賞者の意識や感. 鑑賞者を置き去りにして分岐し発展し展開して. 覚に拠った作品表現は、鑑賞者による作品の自. いったような印象がある。しかし、作品の可視. 由な見方、感じ方を容認するということである。. 的な要素を通して、観客の不可視的な意識の変. しかし、視覚以外の感覚からも受け取る情報の. 化を喚起させようとする作者の試みによって、. 多さ、複雑さは、作者の意図を掴むことを難し. 作品の成立条件として鑑賞者が位置づけら札、. くさせている。作品の「面白さ」イコール「分. その存在感を強めることになる。「作者の意識や. かりやすさ」として捉えられてしまうようにな. 思考を媒介するもの」として捉えられ、多様な. れぱ、それは美的体験ではなく、ユンターティ. 表現方法によって制作されてきた美術作品は、. メントの一環に過ぎなくなるのではないだろう. 視覚だけでなく他の感覚も併せて総合的に認識. か。このようなr体験するもの」としての作品. される、美的体験としての空間形成へと変化し. 特有のマイナス面や、現代社会における鑑賞活. ていくことになる。これを「現るもの」として. 動の意義についても見ていくことにする。. の作品が「体験するもの」へと性質が変化して.  美的体験の場としてめ美術作品には、問題点. いく兆しと見ることはできないだろうか。場や. と同時に、これまでの美術鑑賞のかたちとは異. 空間として広がる作品は、そこに鑑賞者自身が. なる、新しい鑑賞活動の可能性も見出される。. 入り込むことで空間全体を体験することになる。.  現在までの長い歴史のなかで、作品と作者、. その鑑賞体験は目に見える事物以外の、極めて. 鑑賞者という三つの立場が成立し、その変遷と. 個人的な感覚をも伴って行われるために、作品. 共に発展してきた美術活動が、鑑賞者と作者、. に介入する作者の意図を汲むことが難しくなる。. 鑑賞者と作品という繋がりをより緊密にし、不. このことは、作者による作品の完全なコントロ. 可分の存在として強い結びつきを持つものへと. ールの放棄を意味しており、このように、鑑賞. 展開していく。作品と対時する鑑賞者は、時に. 者が作品を成立させる要素となったことは、作. 作品そのものとなって他の鑑賞者の視線を受け. 品における主体性が作者から鑑賞者へと遷移し. 止める。そのような複合的な鑑賞活動は、作品. たと考えられる。平面なり立体なり、作者の思. の面白さや作者の思考をより深く理解するため. 考や感情の発露として、鑑賞者を想定すること. の一つの鑑賞のかたちであると考えられる。. なく発表されてきた作品が、いかにして鑑賞者.  本研究においては、三つの立場から、作品の. を作品の枠内に置くようになった過程について. 多様化とそれがもたらす鑑賞活動の新しいかた. 見ていくことにする。. ちについて、文献や実体験をもとに考えたい。.  第三章では、世界各地で勃興している国際展.           主任指導教員 初田 隆. に焦点を当て、そこで行われているプロジェク.            ◎指導教員 大西 久. 一373⊥.

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