人工知能学会共同企画 -人工知能とは何か?:[エッセイ集]2.7 人のための人工知能 -学問・技術は人のために-
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(2) 2 エッセイ集…7 人のための人工知能. して理解されてきている多くの知見を情報処理とし. 単な理解と,予測される結果に対し準備された操作. てモデル化することで人のための人工知能を実現し. を実行する機能とを提供できているに過ぎない.. ていく.. 人のための人工知能が実現する最初のステップで. 人とのインタラクション. は,この「情報」に加え,システムが人や環境から「知 識」を獲得していく.人の言葉の意味も理解できる. 社会的知性は人との関係性をベースにしているの. ようになる.すると,周囲環境の意味やリスク等を. で,人とシステムのインタラクション機能が必須で. 人に説明することが可能になる.ただ,判断基準は. ある.インタラクションは相互理解のベースになる. 持たないので,人の判断を仰ぎながらともに問題解. ものであり,音声認識,言語理解をはじめ顔・ジェ. 決を進めていく.. スチャ認識などの認識技術だけでなく,複数感覚を. 大切なことは,問題解決をシステムだけで行うの. 用いたインタラクション等により,人とシステムの. でなく,問題解決の過程を人とシステムの間でやり. 関係を向上する.. とりしながら進めることであり,そこからの相乗効. インタラクション研究は盛んに行われており,. 果を生むことにある.この過程により,人々は今ま. UX デザイン,ユーザビリティ,ヒューマン – コン. でより多くの難しい問題を解決可能になるとともに,. ピュータインタラクション,インタラクション分析. 新しい知的過程を楽しむことができるようになる.. 評価,メンタルモデルなど幅広い.しかし,これら. 元々,余暇の活動などを考えてみると,我々はそ. インタラクション研究の焦点は,使いやすさ,分か. れらを楽しむこと自体を目的として行動しているの. りやすさ,操作しやすさ,柔軟性等インタフェース. であって,何か目標を達するために余暇を過ごして. そのものの機能特性が中心である.. いるわけではない.仮に余暇の中で目標を設定する. 人のための人工知能の場合,インタラクションの. ことがあったとしても,それは,少なくともその目. 目的は,人に問題解決の過程を楽しんでもらうこと. 標に到達するまでにどのような過程をたどったかと. にある.したがって,インタラクションを用いた状. いう観点,たとえば「思い出」「経験」に価値があ. 況の理解や人の知識の学習に加え,インタラクショ. るのであり,目標設定は知的過程を楽しむための手. ンのイニシアチブやタイミングなどを制御する動的. 段かもしれないのだ.. なインタラクション過程が研究の中心となる.. 人のための人工知能は,そのような知的過程を演. 人のための人工知能が実現する未来. 出し,人や社会を活気付けてくれるのではないだろうか. (2016 年 7 月 1 日受付). 人の設計するものは,結果に注力するため,結果 に到達するまでの過程を意識しない傾向がある.一 方,人が求める欲求は,物を所有することでなく, 利用・経験する過程へと拡がりつつある.. 辻野広司 [email protected]. 従来扱えなかった「情報」が共有できるようにな. 1986 年東京工業大学修士課程修了.1987 年(株)本田技術研究 所入社.2003 年より(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ ジャパン.2011 年同社取締役.2013 年より代表取締役社長.知能 システム,脳科学などの研究に従事.. り,その利用が進んでいる.これは人類にとって新 しい経験である.しかし,現在のところ,情報の簡. 情報処理 Vol.57 No.10 Oct. 2016. 971.
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